TPP・5品目を交渉テーブルに出す?オバマ大統領欠席 年内妥結不可能か?
TPPでニュースが二つあります。ひとつが、お読みになった方の全員ががゲソッとした5品目を交渉テーブルに出そうか、ということです。
いうまでもなく、これをしたら、自民党は公約違反です。
私たち農業者はおろか、前回自民党に投票した人すべてにしっかりとその理由を説明してもらわねばなりません。
交渉妥結しました。実はこんなにダメでした、というなら一度死んでもらいます。冗談じゃありませんよ、まったく。
おそらく自民党内の中で半数を占めるTPP反対議員から怒号の糾弾を受けることでしょう。ぜひ、徹底的にやって下さい。
ただし、コメ、乳製品などのひとつひとつの品目は、関税表の中で枝分かれしてコメだけで58品目、5分野(いわゆる5品目)で586品目となります。
TPP交渉は「コメ」としての一括交渉ではなく、これら細分化されした一品目ずつのつぶし合いになっています。
ですからたとえば、コメ本体輸入で日本が勝っても、コメ加工品のパックご飯で譲歩するという可能性もありえるということになります。
今までの実績としてはペルーなどとの自由貿易協定では、交渉後の関税残存率は約4%です。
賛成、反対といった立場をぬきにしてみれば、この今までの交渉実績である4~5%の350~450品目ていどが目安となります。
ですから「重要5品目」中の一定の枝分かれした品目で譲歩の可能性かあるということです。
自民党内TPP反対グループが、政界最大の反対派グループだというのは悲喜劇的ですが、ともかく与党内反対派に気合を入れてもらうしかありません。もう少し詳報が入ったら続報致します。
さて、もうひとつがあの陰気なレームダック・オバマが、TPP首脳会合に出ないそうです。こっちは朗報といってよいでしょう。
妥結のボトルネックはふたつです。ひとつは知的財産権の扱い、もうひとつは農業分野です。
現在延々とした交渉によっても、わずか3分の1しか交渉議題が煮詰まっていません。知的財産権は、東南アジア諸国の死活問題なために厳しい抵抗に合っています。
農業分野は逆に、先進諸国の農畜産業界からの徹底的な反対に遭遇しています。
このままいくと結局なにも決まらないので有名なWTOの二の舞になってしまうので、打開策として交渉参加国を経済協力開発機構(OECD)への加盟・非加盟で先進国と新興国とを分けるという案が浮上しました。
つまり、これで先進国と振興国を分けて、新興国には知的財産権などの分野で猶予期間などを与えるという方向のようです。ちなみに1人あたりGDPが高いシンガポールは先進国に分類されるようです。
とはいいつつ、もっともゴネているのがなにを隠そう米国です。あの国は経済交渉となると、ダブルスタンダードはあたり前、二枚舌、三枚舌がヒラヒラします。
オバマケアで、わが国の足元にも及ばない国民皆保険のまねごとやりつつ、わが国の皆保険制度が崩壊しかねないことを言ってきています。
日本政府は弱腰にも、郵便局の簡保商品の販売を取りやめて、かわりにアフラックを売ることにしたそうです。
桜井君、その辺わかってるのかね。アヒルと遊んでいる場合じゃないよ(笑い)。
あるいは、自分の国の自動車の環境性能が悪いのを棚に上げて、わが国の環境基準が高いのなんのとほざきます。まったくバッカじゃないかと思います。
米国が閣僚会合の中で、以下を主張した模様です。
①特許権や著作権など知的財産の保護強化
②国有企業の優遇措置の見直し
③環境基準の扱い
①はジェネリック薬品の扱いや、細部では手術の術式まで討議されているようです。手術の術式です。あの国はそんなものにまで知的所有権をかけようとしているんですよ。
このジェネリック薬品は、世界に冠たる医薬・化学産業を持つ米国がかねてから、特許期間の延長を主張していました。
もし、米国の要求が通ると わが国も含めて、安いジェネリック薬品で薬価を押えている諸国にとっては事実上使用できなくなります。
日本の世界に誇る国民皆保険制度が成り立っているのは、安く薬が手に入るという点にもあるからです。
ベトナムなどの医療水準が遅れた新興国でも、多くの国民に良い医療を受けさせるためには安くて質のいい薬品が必要なのです。
そのように主張すると米国はたぶんこう言うはずです。
「ならば、民間医療保険を充実させたらいいではないか」。
それはどういう意味かといえば、米国の民間保険会社をドドっと参入させなさいということなのです。
米国の戦略はこうです。
まず、知的所有権という一見国民皆保険とは無関係なことでジェネリック薬品を潰す。
これで薬価が上がって皆保険制度の運営がピンチになります。
次に、「制度的事項」などの医療、・保険、政府調達分野で、オレの国の商品を売りたいからお前の国内の諸制度を変えろという内政干渉まがい、いや内政干渉そのものを協議させます。
米国が大好きな言い方で言えば「関税外障壁の撤廃」のことです。彼らが気にくわなければ、全部難くせをつけて「関税外障壁」で攻撃する、これがアメリカン・スタイルです。
たとえば我が国が、医療保険制度の保険補償をいくらにしていくのかという政策決定に医薬品会社を入れてこなかったのを認めろと米国は言ってきています。
これは一見分かりにくいですが、要は米国ファイザーのような米国医薬品会社に審議会で発言権を認めろということです。
これは既に米韓FTAをしている韓国でやって、医療保険制度が米国に牛耳られる状況に立ち至っています。
韓国は止せばいいのに米国医療そっくりの「特区」まで作って、ここで成功したら全国化する予定のようです。
わが国でも、このような「自由化特区」という案が経済競争力会議の民間議員から出てくる可能性かありますので警戒が必要です。
いいですか、これはわが国がわが国の国民に対して行っている健康、医療、保険、福祉といった分野です。
まさにわが国の主権中の主権です。自分の国の国民の健康も守れない国は、国てはありませんから。
また②は、明らかにベトナムの国有企業を名指しているようで、実は中国が参加に色気を見せつつできなかった最大の理由は国有企業の存在でした。
これを一般企業と同等の競争環境に置くと国有企業は崩壊の危機を迎えかねません。
これ社会主義をとるベトナムにとってはいらんお世話です。
③の環境基準は、米国が日本に自動車の環境基準を緩めるようにというたわけた要求を日米交渉の中でしているようです。
これらの項目で、おそらくは米国とベトナムがガチンコの対立をしていると思われます。アタマに来たらベトナムは米国に、「もう一回やって見ますか?」と聞けばよろしい。
さて、これを解決するべく「盟主」米国のオバマ大統領が乗り込むはずでしたが、これがとんだ屁たれ。
今や外国とどうのいうより、下手をすると連邦職員のレイオフどころか、債務不履行という最悪の事態に立ち至っているために見送りとなりました。
まことにオバマ大統領にとっては運が悪く、わがニッポンにとっては運がいいことです。
とりあえず、これでヌサドゥア会合はたいした収穫なくお開きになるはずです。
「交渉参加国は11月末までに交渉官による作業部会や2国間協議を開き、残された課題の最終調整を行い、12月の閣僚会合で最終合意を得るシナリオだ。」(産経10月6日)
しかし、今回のまたとない首脳会合というトップ同士の決着が流れた以上、そうそう簡単には年内妥結になどは至らないと思います。 一方オバマ氏の欠席を奇貨として、「習近平国家主席は交渉参加国を懐柔し、アジア・太平洋地域の経済連携の枠組みづくりで主導権を握る構えだ」(産経10月7日)
だそうです。 既に、ASEAN諸国のなかで領海紛争をもたないマレーシアに経済連携、安全保障の「包括的協力推進」を申し出て合意にたっしたようです。 これでは、TPP推進派が言っていた、TPP中国包囲論はとんだ絵に描いた餅になりますね(苦笑)。 私は初めからそんな中国包囲戦略はありえないと思っていたので意外でありませんが。 習氏に「マレーシアが地域で重要な役割を果たしていくことを楽しみにしている」なんていわしては米国の負けです。
できたら、続いて韓国にも交渉参加していただいて、各国交渉のテーブルで「歴史認識」なんぞを吹きまくってTPP自体を太平洋の藻屑にしていただきたいと思います。
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■「聖域」5品目の関税撤廃も 自民検討へ
中日2013年10月7日
ヌサドゥア(インドネシア・バリ島)=斉場保伸】自民党の西川公也環太平洋連携協定(TPP)対策委員長は6日、TPP交渉が開かれているバリ島で記者団に対し、「聖域」として関税維持を求めてきたコメなど農産物の重要5品目について、関税撤廃できるかどうかを党内で検討することを明らかにした。
自民党は昨年末の衆院選で、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」との公約を掲げ、重要5品目を守る姿勢を打ち出してきた。関税撤廃検討は、こうした公約を反故にするともいえる。これまで交渉の経緯を説明してこなかったこともあり、国内の反発は必至だ。
西川氏は重要5品目(関税分類上は586品目)の扱いについて「勘案しない姿勢が取り続けられるかどうかという問題がある」と説明。その上で「関税撤廃できるかどうか検討する」と語った。同時に関税撤廃で農林水産業が打撃を受ける場合に備えた対策の検討も表明した。
甘利明TPP担当相は「党がいろいろ考えていただけるのはありがたい。党と連携を取っていきたい」と話した。
■環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は年内妥結をもっとも急いでいた米国のオバマ大統領が国内事情により欠席する。主役の不在によって年内妥結に向けたシナリオはにわかに不透明になった。
各国の利害が交錯するTPP交渉は、首脳会合の中で政治的な妥協をはかるしかない。その機会がオバマ大統領の不在で失われた形となった。交渉妥結をもっとも急いでいた米国にとって手痛い誤算であろう。
オバマ大統領を欠いた8日の首脳会合では、それでも「大筋合意」の宣言をする方向だといわれるが、年内妥結の道は険しい。
<【ヌサドゥア=本田誠】6日閉幕した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、オバマ米大統領の首脳会合欠席の衝撃が広がる中で、目標の年内妥結に向け意見集約を進めた。難航分野で新興国に一定の譲歩を検討するなど、協議に進展もみられたが、具体的な詰めの作業はこれからだ。首脳会合は“主役”となる米大統領の不在で、重要な政治判断の機会を逃した形となり、年内妥結に向けた道筋は険しい。
「年内の交渉妥結に向けて日本として引き続き精力的に交渉を進めていきたい」
甘利明TPP担当相は同日の会合後、記者団に対し年内妥結に向け、交渉を一段と加速する考えを強調した。
閣僚会合で最大の焦点となったのは、特許権や著作権など知的財産の保護強化▽国有企業の優遇措置の見直し▽環境基準の扱い-の3分野だ。交渉では米国と新興国が激しく対立し、協議が行き詰まっていた。
打開策として、知的財産分野の一部で、日米など先進国がマレーシア、ペルー、ベトナム、ブルネイの新興4カ国に一定の配慮をし、目標到達期間で先進国よりも長い猶予期間を認めるなどの案が浮上した。
経済協力開発機構(OECD)への加盟・非加盟で先進国と新興国とを分け、1人当たり国内総生産(GDP)が高いシンガポールは先進国に分類する方向で検討している。
こうした議論を踏まえ、8日の首脳会合では「大筋合意」を宣言する見通しだ。しかし、それでも年内妥結に向けた課題は山積している。
先進国による知財分野などの譲歩案も、詳細は固まっておらず、新興国の納得を得られない可能性がある。また、最難関の農産品や工業品の関税撤廃については、閣僚会合で個別品目にわたる詳細な協議が見送られ、首脳会合以降に持ち越された。
交渉参加国は11月末までに交渉官による作業部会や2国間協議を開き、残された課題の最終調整を行い、12月の閣僚会合で最終合意を得るシナリオだ。
しかし、交渉推進の要だったオバマ大統領の欠席により、首脳会合における重要な“政治的判断”がなされる機会は損なわれた。今回の首脳会合は年内に12カ国の首脳が集まる最後の機会だっただけに、年内妥結に向けたシナリオにも、影響がでる恐れがある。
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コメント
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ファイザーにしろ、ノバルティスファーマにしろ、個人的には、富山の薬売りと言うか、国内のジェネリック薬品メーカーより、いい加減な臨床試験データーの捏造が、多い、欧米メーカーの医薬品、動物医薬品は、
大嫌いです。
日本の医薬品メーカーは、合併したりして、なんとか、医薬品販売を、続けておられるようですが、
安全、安心という面では、欧米医薬品メーカーや、保険業界などは、マネーゲームそのものとしか、思えませんね。
最初に、契約した外資系保険会社は、数年で、存在しなくなり、正直、僕には、信頼できません。
メッツライフアリコとか、ジブラルタルとか、ほとんど、数年で、M&Aを繰り返すので、日本人としては、保険会社としての信頼が、出来ないというか、本当に、
お付き合いできる会社かどうか、訳がわからないと言う感じです。
グローバル企業とは、こんなものなんでしょうか?
自分は、現状、どこの保険会社とどういう契約をしているのかも、わからなくなるくらい、短期間でのM&Aを繰り返している外資系会社は、どうも、僕の性分には、合いません。
現場を知らない公務員が、事務方として、TPPに、参加しながら、TPPの本質が、理解できていない国会議員が、交渉している日本の外交交渉力は、信用してよいのか?、僕には、信用できないですね。
重要5品目と、政府が、言った途端、関税法も、国会議員は、読んでないと言うのが、丸わかりですよね。
輸入検疫でも、牛肉だけでも、育種ごとに、区分されているので、牛肉=1品目なんて、単純では、ないのに。。。
マスコミも、不勉強で、いくら交渉内容は、秘密だと言っても、日本として、どういう決意で、どこに、落としどころを持っていくつもりなのか?
まったく、解らないのが、怖いところですね。
投稿: りぼん。 | 2013年10月 8日 (火) 21時12分