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2013年10月24日 (木)

ドイツ型脱原発政策の落とし穴

006
もし、日本でドイツ型脱原発をすればどうなるのか、それは今のドイツをみればわかってきます。

ここで私が言うドイツ型脱原発というのはこの3点セットのことです。

原発の急進的削減
代替エネルギーとして再生可能エネルギーを位置づける
③太陽光発電に偏ったFIT制度(フィード・イン・タリフ 固定価格全量買取制度)の導入
 

これにもうひとつ加えれば、発送電分離=電力自由化がつきます。

わが国では①はかつての菅政権によって全面停止状態です。 

②、③のいずれも菅政権が政府既定方針として定めたままになっています。政権は替わり変わりましたが、簡単に政府決定を変更するのは難しいようです。 

つまりは、わが国も事実上ドイツの脱原発政策をコピーしているといっていいのです。

いやコピーどころかドイツはいまだ8基稼働中ですので、ドイツ以上の急進的脱原発政策を遂行中なのかもしれませんが。

さて、ドイツのFIT(ドイツ名EEG)についてNHK特集「揺れるドイツ自然エネルギー政策」(12年8月21日放映)は真正面からドイツの現状をリポートしています。 

いままで、マスコミは手放しでドイツやスペインの事例を礼賛に近い口調で報じてきました。 

いわく、「ドイツでは太陽光発電を個人住宅に大胆に導入した結果、こんなに電気料金が安くなった」、「ドイツでは屋根に設置した太陽光パネルで電気を売って脱原発をしながらお金を稼いでいる」、「もうヨーロッパでは20%を越えて原発はいらないと言われている」、ウンヌン。 

そしてお約束の、「それにつけても福島第1原発の事故が起きながら遅れているわが国は情けない」という嘆き節が続きます。

日本特有の「進んだドイツ、遅れた日本という図式が、このようなエネルギー問題にまで顔をのぞかせています。

本当にドイツはそんなに脱原発のパラダイスなのでしょうか?実情は、いままでこのブログで何度か書いてきたようにまったく違います。 

ドイツ再生可能エネルギー法(EEG)では、再生可能エネルギーが通常の電気買い取り価格よりケタ違いに高く買われてきました。

特に、太陽光発電は群を抜いて高い買い上げ価格が設定されました。 

これは高い固定価格だけではなく、いったん設定された価格を20年間の長期にわたって固定して全量買い上げるというプレミアムまでついています。

ということは、20年間電気料金は下がらないわけです。 

そして電気が予定よりできようとできまいと、仮にできた電気が周波数が狂ったものであろうと全量買い取るというのですから凄まじい制度を作ったものです。 

しかも毎年買い取り価格は下がっていきましたから、高い期間につけなきゃソンソンとばかりに我も我もと殺到したわけです。これがドイツやスペインの太陽光バブルです。

この中には地雷がたくさん隠されていました。ひとつは税金投入して買い支えているわけですから政府の予想を超える太陽光バブルに財政負担がショートしました。

NHK特集でも、「再生可能エネルギー全体のわずか15%でしかない太陽光発電に、電気利用負担者の負担金の5割にあたる7640億円が使われている」ことが報じられています。

また番組の中では短期的利益を狙う投資家たちが大量参入したことも描かれています。

番組では詳細はありませんでしたが、ひとつは投機的資金のメガソーラーなどへの参入と、もうひとつは市民の屋根にパネルをローンで設備を設置させ、売れた電気の収益の一部を渡すという商法です。

この方法が普及してしまったために、本来は買うことができない太陽光パネルを自宅に設置する低所得者層が急増しました。

一種の太陽光版サブプライムローンです。これがEEGの破綻とともにどのようになるのか心配されています。

EEGの再可能エネルギー買取費用の総額は、1年間で160億ユーロ=1.6兆円、2031年段階で1500億ユーロ=15兆円と予測されていますが、これも5割増にまでなると予測されていますからハンパではありません。

次に、低所得者層だろうと富裕層だろうと均等にそれを税金や電気料金上乗せの形で平等に負担しているために、現在では電気料金への上乗せ金額は1kwhあたりで3.6ユーロセントに値上がりしました。

これは火力発発電のコストの優に10倍ちかい数字です。これを知った低所得者層は高価な太陽光パネルを自分たちが設置することが難しいが、富裕層は設置できて儲けている、その上に税金負担か一緒とはおかしいじゃないか怒り始めました。

EEGは低所得者も富裕層も均等に広く薄く負担するという点で消費税に似ているといわれています。

しかし、一点違うのは、消費税は確かに低所得者にもかけられますが、徴収した後に社会保障という形でとりすぎた分を返還する逆進制がとられています。 

しかし、EEGにはそれがないために貧富の格差を拡げる悪平等な制度となっています。

ヨーロッパでは電力貧困層といって、高額になりすぎた電気料金を支払えない層が多く出てしまいました。

ドイツでは、とうとう80万所帯もの大量の「電力貧困層」さえ生まれてしまったのは、ご存じのとおりです。

ドイツの平均的な所帯の電気代は年間225ユーロ(2万6550円)増加し、来年には300ユーロ(3万5400円)にもなってしまいました。 

特に低所得者層への影響は大きく80万所帯が電気代の滞納をし、電気を止められそうになっています。

ドイツ連邦環境庁のフラスバート長官はコメントで、「エネルギー政策の転換によって生じるコストは、公正に分担されなければならない」、「過剰な電力料金が貧困者を生み出すような事態になってはならない。支払い能力のない消費者に対しては国が補助金を出すべき」だと制度の修正の考えを発言しています。

一方、電気料金がストレートに経営に跳ね返ってくる製造業者は死活問題であって、違憲だとして提訴しました。

ドイツの紡績会社では、電気料金の上昇か従業員一人あたりに換算すると年間5000ユーロ(50万円)の負担増になっている会社もあり、このままでは従業員の人件費をカットするしかないところまで追い詰められる会社が増えていきました。

繊維衣料品産業連盟のバウマン代表は、「エネルギー転換によって生じるコストは雪だるま式に膨れ上がる恐れがあり、計り知れない」として、再生可能エネルギーの助成金のために生じるEEGの分担金は違憲であるとの見解を表明し、提訴に踏み切りました。

しかもこれが国内のグリーン産業を育成するためなら我慢もできるでしょうし、国内での競争で切磋琢磨も可能でしょう。

ところが競合相手は中国製でした。中国は自ら赤字覚悟のダンピング的雪崩的輸出をおこなったために、ドイツQセルズの世界一シェアは瞬く間に瓦解し倒産に追い込まれてしまいました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-2.html

このドイツの太陽光パネルの市場動向わかるのは、ひとつには新興国のダンピング攻勢による国内産業への圧迫であり、今ひとつはこのような市場状況ではとうていイノベーション(技術革新)が起きる余地がないことです。

EEGは初期初期投資者のみが優遇される制度的特徴があるために、いかに早く参入し、いかに安く発電コストを抑えるのかが重要になります。

これではじっくりと中長期を考えた投資や、イノべーションが入り込む余地がありませんドイツは明らかに脱原発の入り口戦略を誤ったのです。

今、ドイツはユーロ安を起爆剤にして輸出攻勢を強めています。しかし、足元の国内では電力不安と電気価格高が恒常化したために、自動車産業のように外国に製造拠点を移転するところが増えていっています。

このドイツ再生可能エネルギー法(EEG)のコピーが日本における再生可能エネルギー法です。民主党政権瓦解の後は批判的検討が加えられるでしょうが、このような悪制度は1年間限りで廃止すべきです。

仮に廃止したとしても1年間分の初期参入者は20年間も権利が守られるのですから、なんともかとも・・・。

ドイツの失敗を見て感じるのは、脱原発=再生可能エネルギーではないことです。たしかに、脱原発の途も再生可能エネルギーの増加も間違いではありません。

しかし、再生可能エネルギーはその選択肢のひとつでしかないのです。

脱原発の入り口戦略を読み間違えると、社会的な混乱と生産部門の大混乱を引き起こし、国民の生活と雇用を直撃します。

そしてその社会的怒りは、ドイツのように脱原発という目標そのものに向けられます。

ドイツの失敗を見ると、脱原発を再生可能エネルギーと必要以上に結びつけて主張することは脱原発の意味からも危険だと思わざるを得ません。

それは思考の自由を奪い、選択の幅を縮め、硬直した政策しか生まないからです。

再生可能エネルギーに対して批判的なことを言うだけで、脊椎反射的に「原発の危険性を無視するのか」と返してくる者が後を断ちませんが、どうしてこの二者を強引に接着するのか理解に苦しみます。

原発が危険を内包しているというのは3.11以後あたりまえの認識で、再エネを批判するたびに「原発の危険を忘れたのか」とすごまれても困ります。

脱原発にはさまざまな方法があり、達成のためには相応の時間がかかることを覚悟しなければなりません。

今は危険をアッピールする時期ではなく、具体的に「原発ゼロ」社会を冷静に論じ合う段階なのです。

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

管理主様の「逆・ドイツを見倣え論」とでも言うべき今回の記事、そして小泉・元総理の脱原発論の矛盾を突いた記事、感服しましたm(__)m

原発の代替にならない再生可能エネルギー(この名称がまず詐欺臭い)ではなく、やはり原発の安全性を高めつつ、なだらかに原発を減らすのがいいと思います。

使用済み核燃料は、ガラス個化しつつ地上で保管。現状のウラン原発よりも使用済み核燃料を出す量が少ないトリウム原発に切り換える。既存のウラン原発をトリウム原発に改良するのは容易だそうです。但し、ウランよりもトリウム原発の安全性が高いと証明するのが絶体条件。

使用済み核燃料に関しては、管理主様がお考えになっておられるであろう“思想的なフィンランド方式”が一番いいかと思います。

そして、クリーン・コールやコジェネのような先進火力発電の増設。また、以前コメントさせて頂いた“芋火力発電”を柱にするというのが自分が考えるベターなエネルギー政策かと思います。

因みに、芋火力発電を提唱されておられるのは、近畿大学生物理工学部の鈴木高広教授です。

またいずれ芋発電に関しても、管理主様の御意見を是非お聞かせしてほしいです(*^^*)

それでは

播磨さん。ありがとうございます。このところ神経がささくれだつようなコメントに襲来されていたので感謝します。
たぶん来週になりますが、わたしなりの案も書こうと思っています。
おっしゃるような芋発電とかなどは、どんどん試していったら面白いのではないでしょうか。要はタービンが回ればなんでもいいのです。

本来、再生可能エネルギーはこのような愉快な「市民エネルギー」でした。
ところが飯田哲也氏のようなドイツ型脱原発を至上と思う運動家と、政商の孫氏などの手によって見る見るうちにグロテスクな改造をされていってしまいました。
初期の反原発運動や市民エネルギー活動にかかわっただけに、非常に残念な思いです。

>「原発の危険性を無視するのか」

毎度の詭弁ですね。

事故の危険性だけでなく使用済み核燃料の問題も無視している。

最終処分場がないだけでなく、中間貯蔵プールすら短期で不足するのに、
ドヤ顔で再稼働だ、などと言ってるのはナンセンスの極み。

小泉元総理が指摘するように、中間貯蔵プールの不足問題と、
住民感情を考えれば、安倍政権が無理矢理再稼働に走っても、
ごく少数しか再稼働出来ないのは明白。

そんな事をするくらいなら、他の発電でやった方がマシ。

それと、イモ火力の鈴木教授は、もちろん原発否定派ですよ。

ああ、それとドイツ人のクララさんが、現地情報を元に、あなたのような短絡的なドイツの電気代の話をとっくに否定してます。

ドイツの電気代と日本のテレビの嘘 - クララの八百八町: 808 Towns
http://bit.ly/LPvLIt
この間、テレビでドイツの電気代が紹介されましたが、驚きました。それは、1kWhあたりの電気代が29円だと報道されました。

いやいや、それは違いますよ。まず、値段は電力会社によって異なります。ドイツは、電力を供給する会社が自由に選べて、957社もありますよ。(ここは全社のリストでございます!)

私の故郷の田舎とはそれほど変わりませんが、気になるのはやはり都会ですから、日本人観光客が大勢訪れるミュンヘンを例にしてみましょう。

ここでは、安くて、年間に最大5600 kWh使用される前提で(これは4人家族当たりです)、固定価格687.96 €がかかりますよ。今日の為替レートで66,695.31円です。つまり、1kwhあたり12.26ユーロセントです。
しかも、全部再生可能エネルギーで出来ている電気だと保証されている電力供給会社です。 (このの円グラフ(上)は最も低下で契約できる会社で、その下はドイツの電源ミックスの円グラフ(2010年)です)

年間に固定価格を設定しない場合は、もっと安くできます。
1kWhあたりに11.29 セント、年間使用量が同じ5000kWhにすると、年間で、たった561.03ユーロ(54,389.90円)になります。(ただし、ここも、消費量が5000kWhを超えると、高くなります)。
その近所に販売店等、つまり営業上で使うと、料金は、年間に5000 kWhを使用する前提で、固定価格687.96 € (66,695.31円)がかかります。1kwh が15.68セント(15.2円)です。
それが一つの例ですけど、平均では21セントだそうです。  (29円ではありません。いつの数字だろう!むかつく、本当に)

yui とやらスゴイ攻撃的でね。
私は冷静な議論をしています。最終処分についてもそうとうに長い論考を書いていますし、あなたのイエスかノーかというような二元論ニ組みしないだけです。

その少し気にくわなけれどば、重複投稿して喰ってかかるという子供じみた姿勢こそが、説得力をなくすと気がつかないのですか?

まさに私が記事に書いたとおりの、「思考の自由を奪い、選択の幅を縮め、硬直した政策しか生まない」態度です。

「むかつく」のはシリーズ全体で読んでください。ドイツについてはおそらく40回以上書いているし、今後もかきますが、あなたのいうようなことはほぼ網羅しています。

ドイツの電気料金が多様であるのもとっくに書いています。
といってもあなたにとって不愉快なものは読まないでしょうが、今日の記事としてアップしておきます。別にこの人への反論ではありません。

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