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2013年11月

週末写真館  霞ヶ浦名物朝もやの美しさ

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朝もやは霞ヶ浦湖畔の名物です。
まさに地名どおりの「霞の入江」です。
もやが風に流れて漂う様はなんともいえず美しい風景です。
そしてそのもやの中から、巨大な火球が天に登っていきます。
わずか十数分の間の出来事です。

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LNGは最大期待エネルギー源、でも問題は山積

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今日の書き込みにもありましたが、なにがデータ根拠か知りませんが、あいかわらず「実際に福島では、人が死んでいたり、白血病になっていたり、歯茎から血が止まらなかったり」なんていう極端な認識の人もいるようです。

あの、歯茎から血が止まらなかったら歯槽膿漏ですから、歯医者にお行きなさい。

避難による苦悩で亡くなったお気の毒な人は多数いますが、放射能が原因で亡くなった人がいたらぜひお教えください。

こういう風評を流す人のネタ元サイトは、行ってみればほぼすべての情報が、「隠された真実の○○」とか、「ある自治体で秘かに進む○○」とか、「○○という恐ろしい話を聞いた」、「実はもう既に・・・」という類のネット伝聞にすぎません。

ほんとうの一次情報は皆無か、あってもバイアスがかかっています。

出所すら不明なスパム伝聞をかき集めて、脅えた挙げ句ストレスで体調を崩すのは勝手ですが、おひとりでどうぞ。

何度か言って来ていますが、福島事故を「知る」ということと、原発の是非は次元がちがう問題です。福島事故を過大に煽れば、原発がなくなるわけではありません。

この当たり前のことか分からずに、過激にトンデモ発言すればするほど自分が純正な脱原発派だと勘違いしている人たちか多すぎます。

現在福島では、地道な医療関係者によるホールボディカウンターによる検診や、各自治体によるバッチテストなどが継続されています。

その結果はいずれも、「放射性セシウムが検出限界以下」(南相馬病院坪倉医師)、「66.3%が1ミリシーベルト未満」(伊達市)です。

今後も継続して健康診断をする警戒看視体制は必要ですが、事故直後ならまだしも今でも「チェリノブイリの10倍だ」というようなことを言うことは、まったくナンセンスです。

トンデモ情報ではなく真面目に放射能のことを知りたければ、佐藤順一氏の作った「放射について学ぼう」を一読してください。必要充分な知識が理路整然と学べます。※http://dl.dropboxusercontent.com/u/47386394/

すいません、前置きが長くなりました。本題に行きます。

さて天然ガスはおそらく原発の代替エネルギーのメーンストリームになるはずです。

その理由は、バランスのいいエネルギー源だからです。(欄外参照)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-c6d3.html

現在、わが国はLNG(Liquefied Natural Gas 液化天然ガス)の形だけで輸入しており、わが国は世界の4割を占める需要大国です。

LNGは天然ガスを液化したものであり、面倒なことには液化して専用船で運んで陸揚げし再ガス化する手間がかかります。
(下図参照 資源エネルギー庁による)

ところがあいにくなことには、天然ガスの7%程度しかLNG化されていません。

そのためにわが国の天然ガス事情は、国際市場価格が高止まりしている、海上輸送のコストがかかる、液化の手間がかかるといった三重苦にあえいでいます。 

このボトルネックのために、LNGの取引量は天然ガス全体の7%にすぎず、石油や天然ガスに較べて世界市場は小さいのです。 

これが原発ゼロとなった現在ズシッと日本経済の肩にのしかかっています。 

一方LNGと違って天然ガスは、パイプラインでガス体のまま消費地に輸送されるのか大部分です。 

ですからユーラシア大陸には天然ガスパイプラインが張り巡らされています。
(下図参照 JOGMEC・独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構による クリックすると大きくなります)

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上図を見ると、天然ガスパイプラインの源はロシアだとお分かりになるでしょう。それはロシアが世界最大の天然ガス生産国だからです。
(下図 資源エネルギー庁)

天然ガスが直接輸入できれば、これ以上いいことはないわけですか、実は日本は今まで石油に頼ったエネルギー供給をしていたために、パイプラインが未発達です。

上のユーラシア大陸パイプライン地図を見ると、サハリンから北海道までは点線となって計画しているが未開通だとわかります。

今まで天然ガスのネックになっていたのは、日本まで来るパイプラインがないこと国内のガスパイプラインの未整備、原油と連動する価格体系でした。

しかしこれも、現在急速にパイプラインの建設が進んでいます。

新潟-富山、彦根(滋賀県)-四日市(三重県)でパイプラインの敷設が進み、これを敦賀(福井県)まで延ばして、日本海側と太平洋側をつなぐ新たなエネルギーの動脈にできないかと経済産業省は考えています。

このガス・パイプラインの建設コストは、送電網建設よりはるかに安価であり、天然ガス・プラントが一基稼働すれば直ぐに採算がとれるとさえ言われています。

パイプラインの鋼管作りの技術は、わが国鉄鋼業のお家芸でしたが、外国ばかりで自国に作っていなかっただけです。

また、今まで原油価格と連動してきた価格体系も、米国で「シェールガス革命」が起きて世界のエネルギー地図が急速に塗り替わった結果、大きな変化のきざしが現れています。 

米国のシェールガス革命に危機感をもったロシアは、東シベリアとサハリンの天然ガスを日本に安価で輸出することに前向きになっています。

天然ガス・プラント自体も、三菱重工が製造するガス・コンバインドサイクルを使用すればエネルギー効率が従来の2倍の6割にも達し、同じ燃料で2倍の発電量が得られます。

このように、天然ガスは国内の受け入れ基盤の整備、外国の供給事情の好転、発電プラントの技術革新などが立て続けに起きた結果、次代の主力エネルギー源とする条件は急速に整いつつあります。

問題はむしろ海外からのパイプラインです。それについては次回に。 .

                。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。. 

■テルツァキアンの判定項目は以下です。

汎用性      ・・・どんな用途にでも利用可能
量的柔軟性   ・・・微細にでも巨大にでも調整可能
貯蔵性・運搬性 ・・・自在に移動することが可能
ユビキタス性  ・・・時期と場所を選ばない
エネルギー量  ・・・面積・体積・重量当たりのエネルギー量
出力密度     ・・・時間当たりのエネルギー量
出力安定性   ・・・エネルギー出力の安定性
環境負荷    ・・・CO2や窒素酸化物・硫黄酸化物などの排出量
供給安全保障 ・・・産出地の政治的安定性
 

これに私は「事故時の危険度」と「副産物」を加えています。 

■参考文献 
ロシアから極東向けパイプライン が始動する - JOGMEC 石油・天然ガス ...(PDF)
※5 グローバル化するLNG市場  資源エネルギー庁ーhttp://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/1-2-1-5.html

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福島県伊達市バッチテスト結果 66.3%が1ミリシーベルト未満

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環境リスク学の泰斗である中西準子先生のブログからの転載です。貴重な情報をありがとうございます。

中西準子先生のご本は、3.11の被曝リスクを考える時に常に参考にさせていただいた記憶があります。

かつての公害原論・宇井純先生のテンプラ学生としては、いつもながら中西先生には教えられるばかりです。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak656_660.html#zakkan657

伊達市 PDFファイルは、ここをクリック

福島第1原発から伊達市までは約60㎞です。下図の緑線のすぐ外側です。

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以下引用

                      .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

伊達市は、8割もの市民にガラスバッジをつけてもらい、個人被ばく量の測定をしてきた。今回、その結果が11月21日発表された。1年間継続して測定し、集計した結果は、その8割だとのことだが、これだけ本格的な結果は他にはない。

66.3%が1ミリシーベルト未満 伊達市の外部被ばく検査分析 実測値は予測の半分
福島民報11月26日

伊達市が昨年7月から1年間、全市民を対象に実施した外部被ばく検査で、市は21日、詳細な分析結果を公表した。

年齢ごとの年間被ばく線量で、国が除染の長期的な目標としている1ミリシーベルト未満だった人の割合は、6歳までは83・21%、7~12歳が81・53%、13~15歳が77・01%、16~20歳が68・49%、21~60歳が65・49%、61歳以上が62・12%。市民全体では66・3%の人が1ミリシーベルト未満だった。

年齢が高くなるにつれ、1ミリシーベルトを下回る割合が低い傾向が出た。市の担当者は「子どもは学校など放射線量が低い所で生活する時間が長い。被ばく線量も低くなったのではないか」とみている。

その他、屋外活動8時間、屋内活動16時間を前提に空間線量から年間被ばく線量を割り出す予測値と、実測値との差も分析。実測値は国が示す計算式を用いた予測値の半分ほどの値になった。

平均空間線量が毎時0・230マイクロシーベルトだった梁川町白根地区では、予測値が1ミリシーベルトだったのに対し、実測値は0・521ミリシーベルト。予測値の約52%にとどまった。空間線量が毎時1・071マイクロシーベルトの霊山町下小国地区では、予測値が5・419ミリシーベルト。実測値は1・893ミリシーベルトで、予測値の約35%だった。

また、市が当面の年間被ばく線量目標としている5ミリシーベルトを超えた15歳以下の子どもはいなかった。仁志田昇司市長が市役所で記者会見した。

検査は市がバッジ式積算線量計を全市民に配布。約8割に当たる5万2783人が1年間、測定した。

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なぜGE Mark Iは引退(廃炉)せねばならないのか

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ものには順番があります。事の軽重を計らずに、枝葉末節で騒ぎ立てても脱原発なんかできるはずがありません。 

その判断基準は、「これだけいいことかある」というポジティブ評価だけではなく、「これだけリスクか少ない」というネガティブ評価のほうが大事なのです。 

マイナス評価が少ないほど良好なわけで、重大事故の危険がないか、あっても少ないこと が大事です。 

何度もくりかえしていますが、再稼働を決定するのは、一義的に科学的知見に基づく原子力規制委員会の仕事です。 

この規制委員会の安全審査を飛び越えて再稼働したり、廃炉にしたりすることは政治の優越を認めることになって危険です。 

では現況はどうなのでしょうか。日本の原発は2基を除いてすべて稼働していませんし(現在停止中)、福島第1原発は5号炉、6号炉の廃炉も決定しました。 

事故を起こしていない5号、6号炉を廃炉にすることにしたのは、それが再稼働することは国民世論が許さないだろうということと、事故を起こした1、2、3、4号炉と同型の旧型BWR(沸騰水型炉)であったと思われます。
(下図http://blogs.yahoo.co.jp/bone_marrow_bank/8982228.htmlクリックすると大きくなります)

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GE Mark Iの根本的な問題は、格納容器が小さいことです。 

これはこのMarkⅠ自体が、当時の技術者が事故が起きた場合、水素ガスが大量発生することを知らなかったためです。 

もし60年代の設計者がこれを知っていたら、こんな窮屈な格納容器を作らなかったでしょう。 

30年から40年古いということは、単なる施設の老朽化だけの問題ではなく、設計思想が古いということなのです。 

さて、この福島事故のような事故が発生した場合、冷却装置が機能しなくなったため、核燃料棒が非常な高温になりました。

制御棒はスクラム(緊急停止)には成功していますが、 挿入と引き抜きの2系統駆動系が必要なので、その駆動系が弱点だとする説もあります。(欄外参照)

水と反応した時、水素ガスが発生放射性物質を帯びた水素ガスを大量に発生させ、この小さな格納容器に溢れることになります。 

米国の脱原発運動家でもある原子力技術者のアーニー・ガンダーセンは、「 フェアウィンズ」(2012年2月6日)の中でこう推測しています。 

「格納容器のてっぺんにある多くのボルトで止められた蓋(※トップフランジ)が膨張した空気によって持ち上げられて伸びてはずれ、そこからガスが建屋内に漏洩した。」 

そしてこのことにより、原子炉建屋内に溢れだした水素ガスに引火して水素爆発を起こしたとしています。 

つまり彼の説によれば、ベントとは関係なく、圧力容器は破損して既に建屋内部に水素ガスが溢れだしていたということになります。

GE Mark1型原子炉の日本での原発は、福島第1・1、2、3、4、5号、敦賀1号、女川1号、島根1号、伊方1、2、3号の11基です。(図 同 クリックすると大きくなります)

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ただし、BWR自体は、いわばヤカンを火にかけて蒸気を発生させているようなものなので構造が単純で、全交流電源停止という事態さえなければ災害に強いとはいえます。

この格納容器が小さいという欠点は、メーカーもよく分かっており、東電が稼働を申請している柏崎刈羽などの改良型BWR(ABWR)では容積が1.6倍に大きくなっています。 

また、再循環ポンプを圧力容器に入れて保護を厳重にしたり、配管が多数あった弱点を単純化したりという改良を加えています。 

今の日本の原発の主流はこの形式です。浜岡、滋賀、大間、島根などがABWRです。
(ABWRについては東芝原子力事業部HP参照)
http://www.toshiba.co.jp/nuclearenergy/jigyounaiyou/abwr.htm

一方、PWR(加圧水型原子炉)の構造的欠陥は、熱交換機などに細管が集中しているために、構造が複雑で災害に対して脆いという点です。

PWRでもBWRと同じように、水循環系を2ツにして冗長性を増した改良型PWR(APWR)が実用化されています。
(※APWRについては三菱原子力事業部HPhttp://www.mhi.co.jp/atom/hq/apwr/参照)

というわけで、BにもPにもそれぞれ欠陥はあり、それぞれ福島事故やスリーマイル事故(TMI事故はPWR)を起こしていますし、その改良型も存在しています。 

だからこそ是々非々の対応が必要で、ある意味同じ型式であっても同一条件なものはふたつとないのです。ここに規制委員会の役割があります。 

ただひとつ、大づかみに言えば、もはや水素爆発を想定していない1960年代に設計されたMarkⅠは、老朽化うんぬんではなく設計思想の古さ故に引退(廃炉)しかないと思われます。 

他に規制委員会の基準にも明記されていますが、敦賀、東通、大間、志賀、美浜などの活断層上の原発にも再稼働には疑問符が付けられます。 

また、それ以外の原発も、現時点で安全基準に100%合格する原発などは存在しませんから、一定期間かけた再稼働のための補強工事が必要なわけです。 

しかし、ただの耐震強化や津波対策ならともかく、原子炉容器自体を拡張することは不可能なのですから、やはりGEMark1型原子炉には引導が渡されると思われます。

つまり、GEMark1型11基+活断層上の原発には未来がなく、残りの原発も多額の補強資金をかけてまで再稼働させるかどうなのか瀬戸際だというのが現状です。 

ただし、これだけの原発を一定期間に廃炉になるとすると、廃炉技術を早急に確立しなければなりませんか。なにせいままで廃炉にした経験があるのは実験炉だけですから。 

ですから、段階的削減するとしても、廃炉で発生する厖大な核廃棄物の処分地も確定する必要があるでしょう。.

                。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

※BWRの欠陥の詳細については以下を参照ください。
http://www.asahi-net.or.jp/~pu4i-aok/cooldata3/nuclear/bwr.htm

※資料 原発:弱点は? 沸騰水型、相次ぐ制御棒脱落事故 複雑な構造、操作ミス誘発
毎日新聞  2007年4月4日

 北陸電力志賀原発(石川県)や東京電力福島第1原発などで、原子炉の出力を調整する制御棒が操作ミスで抜け、核分裂反応が連続して起こる「臨界」になる事故が相次いでいたことが発覚した。
国内の原発は沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類に大きく分かれるが、制御棒脱落はBWRだけで
起きた。
両者の仕組みや、利点・欠点をまとめた。

◇  「欠陥」否定も改造検討へ

■  仕組みは2タイプ

 原子力発電は、ウラン235の核分裂反応によって生じる熱を利用して水から水蒸気を作り、タービンを回して
発電する。
火力発電との違いは、熱の発生に重油などを燃やすか、核分裂反応を用いるか、という点だ。

 BWRとPWRは、水蒸気の作り方に違いがある。
BWRは核分裂反応を起こして高熱になる炉心の熱で冷却水を直接、沸騰させる。
PWRは炉心の1次冷却水をBWRの2倍程度に加圧して高温高圧状態で蒸気発生器に導き、2次冷却水を間接的に沸騰させる。

 PWRは米海軍の原子力潜水艦の動力用として開発され、1950年代に実用化された。
一方、BWRは50年代に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した。

 国内では、日本原子力発電敦賀原発1号機(BWR)が70年3月に運転を開始。
続いて、関西電力美浜原発1号機(PWR)が同年11月に営業運転を始めた。
現在運転中の商業用原発55基のうち、BWRは東北、東京、中部、北陸、中国などの各電力会社に計32基、
PWRは北海道、関西、四国、九州などの各電力会社に23基ある。

 東京電力は「原電敦賀1号機での先行実績があることや、それ以前からのGE社との関係を踏まえ、BWRの導入を決めた」と話す。
日本原子力産業協会によると、世界的には3対1程度の割合でPWRの方が多い。

■  駆動部が“泣き所”

 いずれの型も燃料集合体の間の制御棒を出し入れして原子炉の出力を調整する。
制御棒には、核分裂反応に必要な中性子を吸収するハフニウムやホウ素などが含まれ、挿入すると出力を下げることができる。

 原子炉内の冷却水が沸騰するBWRは原理がシンプルだが、放射性物質を含んだ水や蒸気がタービン周辺を汚染する欠点がある。

また、発生する泡による影響を避けるため、制御棒を炉心の下から挿入する構造だ。
出力を下げる際や緊急時には、重力に逆らって制御棒を押し上げる必要があり、制御棒駆動部はBWRの“泣き所”とされる。

 元原子炉設計技術者の科学ライター、田中三彦さんは「1本の制御棒につき、挿入用と引き抜き用の2系統の駆動系が必要。BWRの複雑な構造が、操作ミスの背景にある」と指摘する。

 これに対し、東京電力原子力技術・品質安全部の宮田浩一課長は「下から挿入することをデメリットとは思わない。強い水圧で強制的に制御棒を入れる点にはよい面もある」と反論する。

 駆動機構を改造し制御棒を抜けにくくした改良型BWR(ABWR)も4基稼働中だ。
通常時はネジのようにらせん状の溝を切った棒をモーターで回転させて制御棒を上下させる。

緊急時には水圧で一気に制御棒を挿入できる。
しかし、3月30日に東京電力が公表した過去のトラブルの中には、96年6月にABWRの柏崎刈羽原発6号機で、205本の制御棒のうち4本が脱落したケースが含まれていた。

 操作ミスが原因で、東電は「欠陥ではない」としながらも、BWRを使う電力会社やメーカーで作る協議会で、ハード面の改造も視野に検討を始めるという。

■  加圧水型は細管

 一方のPWRは2次冷却水に放射性物質を含まない利点があるが、蒸気発生器がアキレスけんだ。

2次冷却水に効率的に熱を移すため、高温高圧の1次冷却水を直径約2センチの細管数千本に通す。
過去には細管に穴が開くなどのトラブルが相次いだ。
91年2月には関西電力美浜原発2号機で細管1本が破断。
国内の原発として初めて緊急炉心冷却装置が作動する重大事故が起きている。

 田中さんは「BWRにもPWRにも潜在的な不安個所はほかにもある。将来起こりうる事故やトラブルについて、国や電力会社はもっと情報を公開すべきだ」と話す。

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知られざる電力予備率10%切れの危機的状況

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今の電力事情を象徴する例をもうひとつ上げましょう。和歌山県の関西電力海南火力発電所です。

ここは、原油の値上がりなどの経済的理由で、需給関係を見ながら稼働させる長期計画停止状態にありました。

通常火力発電所は夏のピーク時をにらんで5月くらいから稼働し、秋になると定期点検に入ります。
(下図参照 BSフジ 環境ジャーナリスト枝廣淳子

ガリレオX「火力発電所の舞台裏 夏を迎える発電の現場を訪ねて」より)

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また、4年ごとに大きな定期点検に入っていくサイクルを繰り返します。
(下図参照 同)

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ここも定期的な長期停止状態にあったために設備の各所に錆などの劣化がみられています。
(下写真 同)

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この海南発電所も武豊発電所と同じで10年以上の稼働停止のために配管や排気ダクトが錆でボロボロになっていました。

これを同じく11年夏の原発停止を受けて全面的再点検作業に入り1万数千箇所の点検修理を行ってようやく再稼働にこぎつけています。

この海南2号機の再稼働のために要した人員は延べ12万にも達し、一日880人もの作業員が投入されました。

いかに時間を切られた困難な作業だったのかがわかります。

この海南発電所も老朽化している上に、定期点検もままならぬ状態なために、まさにだましだまし使っている状態で、武豊発電所もそうでしたが、壁の要点検ボードは要点検箇所で満杯です。

トラブル件数は再稼働した2011年夏からうなぎ登りです。これか「全一日未満」の軽微にすんでいるのは、作業員の使命感に支えられた夜間修理などの賜物だそうてす。(下図参照 同)

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このような現場の努力の他に、長時間の発電所のダウンに備えて海南発電所では敷地内に緊急設備電源などを設けて備えています。

このような緊急設備発電装置は全国各所に222基あるそうです。(下写真 同)いざとなって修理に数日かかるとこの緊急設備を動かして穴を開けないようにするわけです。

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このように、全国の現場の電力マンたちの献身的な努力と、定期点検の先延ばしでどうにか電力が足りているという状況です。

通常は予備電源率は10%ていどで運転されています。さもないとなにかあった場合に対応ができないからです。

このような電力の予備率が極端に薄い状況で、もし一基の火力発電が大規模故障した場合ブラックアウト(長期広域停電)もありえる状況だといってよいでしょう。

現場を預かる火力発電所の技術者は、「もし一基でも止まったら大停電だ」という思いで、毎日を過ごしているのだそうです。
 

現に、2012年2月3日、九州電力の新大分火力発電所(大分県大分市)のトラブルで計13台の発電機が一時停止し、東京、中部、北陸、関西、中国、四国の6電力会社から計240万kWに及ぶ電力の緊急融通を受けました。 

ところが、この緊急融通した中部電力自身も薄氷状態だったのです。 

「九州電力に電力の緊急融通を実施したこの日、中部電力では予備率が一時的に3.5%まで下がる恐れがありました。供給力に直せば、わずか80万kW程度。これはたとえていえば、ジェット機が海面スレスレを飛んでいるような危機と紙一重の状態です」(武豊発電所所長永崎重文氏) 

中部電力には80万kW以上の火力発電機が6基あるが、当日、一つでも故障していたら、ブラックアウト(広域大規模停電)につながりかねない事態であったそうです。

「電気は原発を止めてもたっぷりある」というのは神話にすぎません。もう少し現実をしっかりと見るべきです。

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中部電力武豊火力発電所を知っていますか?

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電気が点いているからなんとなく電力危機をやり過ごしたと思っていたら大間違いです。

たとえば、中部電力武豊(たけとよ)火力発電所を知っていますか?

  (写真 武豊2号機 遠藤巧 「現場千本ノック」より)

上の写真は3.11以降に無理矢理に再稼働された武豊火力発電所です。激しく老朽化しているのが分かります。

全体に錆が浮き、排気ダクトもツギハギだらけ、まるで壊れたロボットのようです。

このダクトは長年使用していなかったためにこんな状態なのです。それがいきなりの電力不足で、もうスクラップを待っていた発電所はいきなり操業を急がされました。

もはや全面的改修などする時間の余裕もなく、ダクトから火を吹けば応急パッチで塞いでいるような状態です。

この武豊2号機は72年に運転開始、37年間働き続けて4年前から停止してスクラップを待っていたのです。

「野球で言えば、体力の限界から二軍のベンチに座っていた選手が一軍に呼び戻され、浜岡という主軸選手の代わりに踏ん張れと言われたようなもの」。(永崎重文所長)

このスクラップを待っていた武豊2号機が操業している理由は、ご承知のように菅元首相の突然の浜岡原発停止「要請」です。

この浜岡の停止「要請」は、やがて全原発のストレステストという言い分ですべての原発にまで拡大されていきます。

もちろんなんの法的根拠もありません

もしなんでも「要請」ひとつで政策執行ができるのなら、法律も議会なんぞまったくいりません。

実は、菅氏は三権分立否定主義者で、首相に独裁的権限を集中させるというのが彼の年来の主張でした。(※欄外資料1参照)

その意味で彼は議会制民主主義者というより、あの時代の学園によくいた革命的独裁を愛する小児的革命家のひとりだったのかもしれません。

要するに、自分の気の向くままやりたいようにやる、これが彼の理想政治だったわけです。

そもそも菅氏が原発ゼロを国民に提起したいのなら、為政者としての当然の義務としてやるべきことは山積していたはずです。

たとえば、原発停止によるエネルギー損失の手当てをつけること、ゼロまでの道筋を立てること、新たな原子力規制機関のあり方を決めること、そして最小限の被害で済むように危険な原発から一基一基止めていく手順、そしてこれらを議論できる政府から自由を保障された受け皿づくりなど。

事故収束時の首相がやらねばならないのは、これらの議論の基礎を整えることであって、拙速な停止要請パーフォーマンスではなかったはずです。

これらすべてを国民的議論にかけるなら、結論が出るまで最低3年から5年はかかったはずです。

菅氏が手本にしたであろうアンゲラ・メルケル氏ですら、その手順を踏んでいます。

ただし、倫理委員会という限定付きの形にしたためにエネルギー専門家や経済界の意見は無視されました。この急進さが今になってドイツを苦しめています。

そうであったとしても、メルケル氏が止めたのは、原発の半数にすぎません。だからドイツは16%の電力をいまだ原発に依存しています。それでいいのです。

というか、それが正常なのです。それですら、ドイツは大停電間際までなんども行っています。

期間未定で全部止めてしまったわが国がどうなるのかは、火を見るより明らかです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-06d7.html

それを与党内部ですら満足な討議もせず、自分の一存で決めてしまう。このような所業を働く権限など一体誰が与えたのでしょうか。

彼ほど遅効性害毒をまき散らしていった首相は、憲政史上稀です。

「遅効性」といったのは、その時には分かりにくくても、やがて1年、2年たつ内にはっきりと社会が損害を被っていることがわかる類の遅効きの仕掛けだからです。

それに便乗した当時のマスメディアの流す「電力会社悪玉論」を背景にして、政治パーフォーマンスのために目をつけたのが浜岡原発でした。

これも元はといえば、菅氏が自らの原発事故処理の失敗を、すべて東電の不手際にすり替えるプロパガンダでした。

東電本社の目を覆うばかりの無様な失敗はいうまでもありませんが、だからといって「東電=原子力村=悪」というような単純な図式が成り立つものではありません。

彼は自らの失敗を目くらましするための身代わり羊を、電力会社に求めたのです。

つまりは福島第1と似た地理的条件の浜岡は、その祭壇に捧げられた供物だったことになります。

中部電力は結局、この首相の横車に抗しきれず、浜岡4号炉、5号炉を停止し、さらに定期点検中の3号炉の運転再開を見送りました。

これによって失った発電量は、中部電力の12.4%にも及んだために、スクラップ待ちしていた武豊2号機か稼働までに要した準備期間はわずか81日間でした。

ダクトだけではなく、中央制御コンピュータまでがメーカーから、「中部さん、これは古くて修理は無理ですよ」と言われたのだそうです。

それを克服して操業の火を入れてみると、今度はタービン軸の異常温度上昇が起きてターヒン回転数が制御できなくなってしまい、それをベテランの老技術者の熟練の技で落として乗り切るということまであったそうです。

原因は、調査の結果、長年使わなかったダクトの錆が一気に剥がれて冷却装置が詰まってしまったためでした。

「この錆を全員で夜を徹して落として、すべての錆を落としたのが操業開始1日前でした。皆、泣きました。皆、拍手しました。皆、握手しました。」(武豊発電所員)

今の日本の電力事情は、この武豊発電所のように今まで止めていた旧式の火力発電所の錆を落として凌いでいるだけです。

このひとりの独善的人物が始めた全面停止という暴挙が、まったく先が見えない薄氷を歩くような電力事情を電力現場に強いていているのです。 

このような電力マンが、「お前ら電気が余っているのは知ってるぞ」と罵声を浴られながら火力発電所の錆を落としている時に、菅直人氏その人はといえば、悲惨な電力事情と再エネ法を置き土産に、優雅な「エコカン」豪邸に納まっていたのです。

現在、中部電力は原発停止によって不足する電源の代替として火力発電を増やしているために、原油、天然ガスなどの燃料費が増大しています。

中部電力は2013年度前半期に赤字を計上、通期でも650億円の赤字になると予想を公表しました。通期赤字はこれで3期連続となりました。

中部電力は人件費の2割カットなどで対応していますが、経営状況は逼迫しています。

2013年9月に、中部電力は経産省に家庭用電気料金の平均4・95%の値上げを申請する一方、政府の認可が必要ない企業向け電気料金はすでに8・44%の値上げを決めています。

大手企業は自家発電装置によってなんとか凌ごうとしていますが、それを持たない中小企業などには製造コスト増大にたちどころに跳ね返る厳しい状況です。

これが続けば来年4月の消費税増税とあいまって、デフレからの脱却はいっそう遅れることが予想されます。

これによる中部圏への影響は、工業が集積する地域だけに深刻です。

現場の発電事情についてもう一回続けます。

                  .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

※資料1 菅直人氏(当時・副総理兼財務相時)の参院内閣委員会での発言  

「私は、ちょっと言葉が過ぎると気を付けなきゃいけませんが、議会制民主主義というのは期限を切ったあるレベルの独裁を認めることだと思っているんです。
しかし、それは期限が切られているということです。ですから、四年間なら四年間は一応任せると、よほどのことがあればそれは途中で辞めさせますが。しかし、四年間は任せるけれども、その代わり、その後の選挙でそれを継続するかどうかについて選挙民、有権者が決める」
 

「選挙で絶対的多数議席を有している政党が内閣を構成する仕組みであるのだから、立法と行政は、総理のリーダーシップの下、絶対的多数政党が一元的に行うのが正しい姿であること」

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週末写真館 晩秋の蓮田

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さぁ、蓮はいま盛りです。
といっても、一般の方にはただの沼です。
写真上から2、4枚目のような美しい花はとうに枯れてしまいました。
ところが沼の底では、蓮が地下茎を張りめぐらしてあのレンコンを作って待っているのです。
この晩秋から冬にかけて、農家は胸まで水に漬かってハスを、いやレンコンを掘りあげています。

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まず廃炉にすべきは老朽化したBWR(沸騰水型)原子炉だ

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最近でこそあまりl聞かなくなくなりましたが、原発事故=天災論というのが事故後かなり力をもった時期があります。もっはら原発擁護派の皆さんか言っていたことです。 

それは、津波対策が講じられていた東海第2や、高台にあった女川が事故に至らなかったこと、あるいは新型である福島第2が外部電源の復旧と、冷却機能を早期に回復したことなどがあったからです。 

このことから、福島第1原発ですらスクラム(非常停止)ができていたのだから、津波による全電源喪失さえなければ、あるいはIC(非常用復水器)を作動させていたら(※)・・・、という「たられば願望」的論調が生れました。 (※ICについては別稿で詳述したいと思っています)

最大公約数的な福島第1の事故が起きた原因は、ハード面ではこのようなことがを上げられています。

➊原子力施設が十分な大津波対策を実施していなかった
❷旧型で運転から30年以上経過する沸騰水型型原子炉(BWR)だった
❸原子力施設に対しての送電施設が脆弱だった
➍電源喪失で機能しなくなるような緊急冷却装置が脆弱だった
 

もらろんこれらの指摘は正しいのですが、事故は、突然起きる天災などによる偶然因子のみに支配されているわけではありません。 

事故に至るまでに、かならず予兆のようなものがあります。細かい事故が多発し、その積み重ねが重大事故の原因のリード線になっている場合が少なくないからです。 

原発事故も同様です。福島第1は敦賀と並んで、事故の常習犯でした。東海第2もトラブルが頻発しています。 

下図は、原子力施設情報公開ライブラリ(NUCIA)データベースの1999〜2010年のトラブル等発生率を炉齢別・型式別に比較です。(戒能 一成氏 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)作成による) 

福島第1のような旧型BWRが、新型BWRと比較して2倍の事故回数であることがわかります。

また圧力水型(PWR)は、新型BWRより更に低い事故回数であり、新型PWRは旧型BWRの8分の1しか事故を起こしていません。

Photo

次に、原発ごとの事故発生率をみます。(同)Photo_2

福島第1の事故頻度は極めて高く、同じ東電の福島第2は2004年に一時的に福島第1と並ぶ事故率になりますが、すぐに改善されて事故を急減させています。 

一方福島第1は2007年に年6回というピークに達して以降、さすがに年4回ていどまで下げながらも横ばいを続けて高止まりとなったまま運命の3.11を迎えました。 

このようなひんぱんに事故を繰り返し、それが低減せずに高止まりとなるような施設には、なんらかのトラブル要因が潜在し続けており、それの除去ができなかったことを物語っています。 

このことから、おそらくは全電源喪失によらずとも、地震による冷却系パイプの破断が生じていたという説にも信憑性がでてきます。 (※事故調によっても明らかになっていません)

また、年に4回から多いときで8回という事故回数は、ひっきりなしに現場は事故対応に追われていただろうことも推測できます。 

このことが、現場を疲弊させ、事故対応能力を磨耗させていただろうこともありえるかもしれません。 

ではここで、他の電力会社の騰水型(PWR)と比較してみましょう。(同)

Photo_3
企業別に見た場合、東電が圧倒的に多いことが目につきます。敦賀、東海第2も原電ですが、いずれも東電管内です。

では、これに対して電力会社がどのような事故後の対策をとったのかが分るグラフが下です。(同)

Photo_4 

多くの電力会社が、2005年から09年にかけて、地震対策や、旧式化する発電所の強靱化に努めていたことに対して、東電のみはまったく補強対策を怠り、対策費が下げ止まっているのが見て取れます。 

東電がこの時期に、ディーゼル非常用発電機だけでも高い場所に移設していれば,、事故はなかったかもしれないというのに。 

つまり、事故率は全国でもっとも高いにもかかわらず、対策費はもっとも低いという経営を、東電がしていたことが明瞭になりました。 

これらのグラフを見ると、福島第1の重大事故は、東電の経営体質とその施設の高経年化、BWRの本質的欠陥などの原因により起きるべくして起きた人災であると、私は考えます。

このような結果から、あくまで一般的にですが、わが国で優先的に危険と見なすべきは以下だと考えられます。
①高経年化した40年以上の原子炉
②BWR(沸騰水型炉
)(※追記 これはBWR一般ではなくマークⅠ、Ⅱなどの初期型老朽炉を指します)
③東京電力管轄の原子炉(※追記 これも個々の規制委員会の審査を経るべきです)

味噌もクソも一緒にしないで、なにから優先的に廃炉にしていくのかを真面目に考えねばなりません。

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原発ゼロ政策が核武装計画と勘ぐられないために

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わが国には、原爆5千発分の材料があります、というと驚かれる人が多いでしょう。しかし、このイランや北朝鮮がみたらヨダレを流すようなプルトニウムを日本は44トンも保管しています。

ただし、日本のこの厖大なフルトニウムの保持は、わが国が核サイクルを稼働させて循環することを前提にしてのみ認められています

このことを小泉さんもかつての民主党政権も分かっていませんでした。素人同然の民主党ならともかく、6年間という長期政権をやっていた小泉さんが知らないのは問題ですね。 

米国はいかなる政権も、核の拡散を容認してきませんでした。その原料となるプルトニウムは保管することすら許されていなかったのです。

今イランが、プルトニウムを作ろうとしてどれほどの国際的摩擦に遭遇しているのか見ればわかるでしょう。 

この米国のような核保有国が作る核兵器クラブがIAEA(国際原子力機関)で、その重要な役割のひとつは、プルトニウムの厳格な管理です。 

だから六ヶ所村の日本原子力燃料にも、IAEAの係官が常駐して監視体制を敷いています。

わが国で核爆弾5000発分ものプルトニウムを保管できるのは、この六ヶ所村の中間貯蔵施設の先の核サイクル施設が稼働できるという目標があるからです。 

そしてこの核サイクル施設自体が、活断層や施設としての危険が明らかになり、稼働が怪しまれています。 

これも規制委員会の審査を待つべきでしょうが、その結果次第でわが国は重大な外交的問題の岐路に直面することになります。 

というのは、2012年に民主党政府要人が「原発ゼロ」を掲げて真っ先に飛んでいったのはワシントンだったというのはご存じでしょうか。

そこで彼ら民主党政権の政治家たちは、思わぬ手荒い歓迎を受けたと言われています。 

米国側は、「原発ゼロ」が核燃料サイクルの中止を意味するのかと問うたとされています。 

つまり、核燃料サイクルをせずに保管を続けることは、日本が核爆弾を作るという宣言と同義だと、米国側は捉えているのです。 

それ以前に民主党政権は、ハト首相が東アジア共同体構想や、普天間問題などを言い出していましたので、米国側は日本の中国寄り核武装自立防衛路線の準備とまで疑ったようです。

おいおいハトさんにはそんな深慮遠望はないぜ、と思うのは日本人だけで、核サイクル施設の中止と原発ゼロ路線は、最終処分問題のきちんとした方針かない限り、核武装計画と同じと国際社会では受け止められるのです。

わが国は、国際社会から世界有数の工業国として技術的には原爆製造やその投射手段(高精度誘導ミサイル)まで保有していると思われていますから尚更、痛くない腹を探られるべきではありません。

小泉さんは、例によって深く考えずに、「原発ゼロ、核燃料サイクル中止」とまで日本記者クラブの講演で断言しました。

しかしこのような言説が、米国に「日本の核武装化」という懸念を与えることを、「日本一の親米派」であるはずの彼は考えなかったようです。どうしてあの御仁はこうも軽いのか!

たしかにドイツは脱原発を宣言しました。なぜ国際合意(といっても主に米国です)がすんなり出来たのかおわかりでしょうか。 

それはドイツが「核武装」しているからです。え、と思われるかもしれませんが、ドイツはNATO加盟国として米国からニュークリア・シェアリングという形で核兵器を借りているからです。

平時においては、核兵器非保有国内に備蓄された核兵器は、米軍により防衛され、核兵器を起動する暗号コードは、アメリカのコントロール下におかれます。 

しかし有事においては、核兵器は参加国の軍用機に搭載されて(この場合ドイツ軍)攻撃に使用される手筈です。このような仕組みがあるために ドイツは独自に核保有する必要がありません 

わが国とは根本的に核兵器のあり方が違うドイツを手本にできないのです。 

ですから、わが国にとって核兵器転用可能なプルトニウム44トンの保管方法は、単に国内政治問題だけではなく、国際問題としても重要な問題だと認識すべきです。

だからこそ、核燃料サイクル施設を中止させるなら、なおさら最終処分方法を明確化せねばならないわけです。

                      ~~~~~~

※ 日本学術会議の骨子は以下です。

① 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直
② 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
④ 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性
⑤ 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性
⑥ 問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識

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核変換技術が実現すれば核のゴミ保管期間は激減する

008
脱原発派(急進派)の皆さんは、10万年変異がない地層はわが国にないという一点ばかりの主張を繰り返します。失礼ながら、よく毎回飽きないものだと妙に感心しています。 

この「10万年保管せねばならないから捨て場がない」という思考停止から解放したのが、先日来お話している暫定保管です。

そしてもうひとつがこの核変換技術(旧称・消滅技術)です。
(下図参照 大強度陽子加速器施設J-PARCによる)

これは、長寿命核種を取り出し、中性子を当てることで核分裂を起こし短寿命核種に変換する技術です。 

この技術が実現すれば一挙に廃棄物の量を7分の1にし、数万年単位の保管を一挙に百数十年ていどにまで縮小できる技術と言われています。

文科相省は2014年度(平成26年度)の予算としてJ=PARC(大強度陽子加速紀器施設)に核変換の実験施設建設の設計費を要求し、実験に向けています。

ただし、お断りせねばならないのは、下の資料をご覧になればわかるとおり、この核変換技術には原子炉が必須です。

つまり、原子炉の副産物である核のゴミを「消す」ためには原子炉が必要であるというパラドックスがあることを忘れてはならないでしょう。

おそらく、モラトリアム的に地層処分しながら「時間稼ぎ」をしている百年間のうちには、(たぶんそこまでかからないで)このような核変換技術、ないしはそれに類似した短寿命化技術は実用化すると思われます。

その程度に安定した地層はわが国にも無数にありますから、地層暫定埋設は現実味がでてきます。

「オンカロみたいなのはないだろう」という小泉さんのレトリックに惑わされないでください。

私には、この核のゴミ短寿命技術は、狭い国土で数万トンの量を抱えた日本に必ず持たねばいけない技術のように思えます。

しかしどうも、頑固な脱原発派(急進派)は今のファナティクな様子を眺めていると、それすらも原子炉の延命につながると反対しそうです。

去年、原子力規制委員会の田中俊一氏に対しても、日本原子力研究所出身だというだけで「原子力村」と決めつけて、氏がなんの意見も言わないうちから批判キャンペーンをしていました。

今となっては、田中委員長が極めて誠実な科学者であることは誰しも否定しないでしょう。

「原子力村」に対する妄想的陰謀論は、昨今もカン元首相が拡げていましたが、ほんとうに彼らにそのような力があるかどうかは別にして、彼らの専門技術なくしては核のゴミ問題の解決もありえないのです。

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■資料

以下引用
原子力百科事典ATOMICAの消滅処理の記述
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=05-01-04-02

1)<概要>
 
消滅処理とは、毒性が強いあるいは毒性が長期にわたる放射性核種に中性子等を照射し、核変換を行い、安定あるいは、半減期の短い核種に変えてしまうことで、核変換処理ともいう。以下の方法が研究開発の対象になっている。
(1)
高速増殖炉またはアクチノイド専焼炉における中性子照射によるアクチノイドの消滅処理
(2)
加速器陽子照射によるアクチノイドの核破砕処理および未臨界炉との組み合わせによる加速器駆動炉(ADS)による消滅処理
(3)加速器の
ガンマ線照射によるセシウム、ストロンチウム元素などの消滅処理滅処理の

(1)意義ならびに原理
 使用済
核燃料再処に伴って発生する高レベル廃棄物に含まれる有害な長寿命核種を何らかの方法で安定核種あるいは短寿命核種に変換すること、すなわち消滅処理が可能になれば、高レベル廃棄物の管理に新しい対処の余地を与えることになり、重要な意義を持つことになる。

 放射性核種の半減期は環境変化の影響を極めて受け難い物理量であると考えられていたが、高圧、電磁場あるいは化学構造などの影響により極端な状態においては、1%程度の半減期の変化が期待できるとの報告がなされている。

核反応によって放射性核種を安定核種または短寿命核種に変換する方法は、反応断面積が小さく、大量の衝撃粒子を要すること、副次的にさらに多量の放射性核種のできる恐れもある。照射粒子としては陽子、中性子が有効である。

 実際面からみても、放射性廃棄物中の熱源の大部分を占めるストロンチウム-90 、セシウム-137、長半減期核種のヨウ素-129とテクネチウム-99およびマイナーアクチノイドの超ウラン元素(TRU)を除く核種は10年程度放置すれば、ほとんど自然に消滅するので消滅処理の対象にはならない。

(2)消滅処理の研究開発
 わが国では、1974年頃から日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)において消滅処理の研究に着手し、TRU核種混合物を燃料とする高速
増殖炉タイプの専焼炉に関する概念の確立を図ってきた。

また、1979年頃からは高エネルギー陽子による核破砕反応を利用した消滅処理の検討を開始し、大型加速器を強力核破砕中性子源に用いてTRU核種の消滅と核燃料を増殖する複合システム概念の構築を実施してきた。

昭和62年度から、国の機関による群分離・消滅処理の研究は「フェニックスプロジェクト」として科学技術庁(現文部科学省)が総括することになり、新たに動力炉・核燃料事業団(現日本原子力研究開発機構)が参加し、原研、動燃(現日本原子力研究開発機構)が中心となって産学官協力の形で進められ、昭和63年度からはオメガ計画として展開されることになった。

オメガ計画は、高レベル廃棄物中の長寿命核種の消滅処理と、この消滅処理を効率よく行うための長寿命核種の群分離処理の研究開発を目的としている。消滅対象核種は、ネプツニウム、アメリシウムなどマイナーアクチノイドの超ウラン元素(TRU)および熱源として主要なストロンチウム-90、セシウム-137と長寿命核分裂生成物のヨウ素-129とテクネチウム-99である。消滅方法として原子炉および加速器を利用する方法が現在検討されている。

さらに前者は高速炉にリサイクルする場合および消滅処理専用の専焼高速炉とする場合がある。後者では高エネルギー陽子ビームおよび電子ビーム発生によるガンマ線を利用する方法がある。

(A)原子炉による核種変換
最初に消滅処理が考えだされたのが原子炉による方法である。1972年米国オークリッジ国立研究所におけるPWR(加圧型
軽水炉)によるTRU消滅の提案である。

その後、高速増殖炉も含めて原子炉による消滅方法は数多く研究され、現在では原子炉によるTRUの消滅処理の可能性は理論的に確立されており、現在の技術で充分実現可能なために最も有望視されている。
(略)

(B)陽子加速器による消滅法
 大出力加速器からの高エネルギー陽子で原子核を叩くと核破砕反応で原子核が壊される。この反応を利用してTRUを消滅処理する技術の検討が、原研(現日本原子力研究開発機構)では1979年頃から開始され、オメガ計画の一環として、高エネルギー陽子による破砕反応生成物が詳細に検討されている。

(略)

(3)消滅処理の研究の新たな展開
 科学技術庁(現文部科学省)では、1987年より日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)および動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)における群分離・消滅処理分野の研究をまとめて、フェニックスプロジェクトとした。さらに、同年6月に決定された「原子力開発利用長期計画」に沿って、これらの研究は高レベル廃棄物の最終処分の軽減化のみならず、原子力技術開発に関連する創造的・革新的要素を含んでおり、他の分野への波及効果も期待でき、資源の効果的利用を図ることにもなると位置づけられた。

(略)

4)消滅処理から核変換処理への用語変更の経緯
(略)
日本原子力学会が判断した。「消滅」という言葉のイメージから「消滅処理」により放射性物質自体がなくなってしまうと誤解される。
(略)

引用終了

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最終処分量から逆算して原発稼働数を決定すべきだ

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原発の再稼働に対して、今のままのなし崩し的な開始を政府が考えているなら、私は反対です。

自民党が、規制委員会の安全審査に委ねるとした方針まではいいでしょう。安全審査においては、政治判断が介入すべきことではありませんから。

菅元首相のように、浜岡を止めて国民に喝采を受けたのに味をしめ、ストレステストに名を借りて全原発を超法規的「要請」ひとつで停止に追い込むような政治の優越を繰り返してはなりません。

今、もし菅氏が立場が逆だったら、まったく無審査で再稼働を「要請」していたに間違いありませんから。

その意味で、信頼性がおける規制委員会のような第三者機関に判断を委ねることは、正しい方法だったと思います。 安全審査においては科学は政治に優越すべきなのです。

しかし問題はそこからです。そこで政府は止まってしまっています。もっとも重要な原子力のバックエンド問題になにも答えていないのです。

原子力の問題はなにも施設の安全性だけではないのです。むしろこういう大きなグランドデザインこそが政治の領域なのです。

再稼働するなら、以下のバックエンド問題の方針を示してからにすべきです。

①核燃料サイクル計画の継続か否かの判断
②最終処分の保管方法の決定
③最終処分地の選定の開始時期
④その選定方法

この最終処分の場所とその収容量が決まらないことには、いくつの原発をどれだけの期間動かして、どれだけの廃棄物が出るのか、という目安がつかないからです。

最終処分による計画保管量が定まれば、自ずとどれだけの核廃棄物を年間に廃棄できるのかが決定され、それによって稼働数が決まります。

この考え方は、出口(核廃棄物)の量から逆算して総量規制をするものです。いわばフィンランド方式とても呼べばいいのでしょうか。

どれだけ処分できるのかも決まらないで、核のゴミだけがひたすら毎年1000トンも溜まっていくという事態はもう二度とすべきではありません。

ですから、政府はまず最優先で最終処分地問題を、その方法とともに決定するべきです。

その前提として長年こだわってきた核サイクルを、今後も存続させるのかについて意思決定せねばなりません。

それを考える上で有益な提案は、日本学術会議の提言(高レベル放射性廃棄物の処分について(回答) - 日本学術会議)でした。 (骨子は欄外参照)

日本学術会議も指摘しているように、これで今まで「最終処分地に適した地層がない」という思考停止に陥って、徒に時間ばかりが浪費されていました。

我が国で万年単位で安定した地層を探すのは困難だからダメ、といつまで言っていても仕方がありません。

それは脱原発派(急進派)の皆さんにも言えることで、「最終処分ができない。ほらみろ、即時停止だ」と短絡しますが、今貯まっている約2万8千トンといわれる使用済み燃料や、プルトニウムは一体どうするつもりなんでしょう。

原発が再稼働してもしなくても、既にしこたま核廃棄物は貯まっているのですよ。

特に核廃棄物で問題になるのはプルトニウムです。既にわが国は、核兵器の原料になるプルトニウムを44トン(2011年末現在)も保有しています。

この問題をめぐって、日本人が意識の外に追いやっていたもうひとつの原子力の安全保障上の問題が静かに発生していました。

長くなりそうなので次回に続けます。

■写真 昨日からアップしているのはさくら草です。実は春のものです。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-a46d.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-ebe9.html

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核燃料サイクル計画は放棄するしかない?

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小泉さんにいわれるまでもなく、わが国の原子力政策の最大の弱点は、(かく言う小泉政権も含めてですが)今までの歴代政権が結論をなし崩しにしてきたために、核廃棄物の最終処分についての明確なグランドデザインが存在しないことです。

このグランドデザインができて、それに基づいての最終処分方法と場所が明確になるまで再稼働は認めるべきではありません 

この最終処分問題の決断を避けて、規制委員会の安全審査にすべての判断を委ねるような政府の考え方は大いに問題です。

最終処分の前提として、核(燃料)サイクル施設の計画をこのまま続けるのか、放棄するのかが問われています。

このまま続ければ、六ヶ所村の再処理工場は早晩パンクします。 

というのは、再処理工場の処理能力は年間800トン程度であり、現在全国各地の使用済み燃料プールに保管されていたり、既に六ヶ所村の中間貯蔵施設にある核廃棄物は約2万8千トにも登るからです。(※1万7千トンという数字もあります)

では、この時点で、原発をすべて止めてこれ以上増えないようにしたとしても処理に35年かかる計算です。 

原発を稼働させるとなるともっとやっかいです。原発から発生する使用済み燃料は年間1000トン超と見られているために、再処理量は保管分はおろか1年間の排出量にも及ばないことになります。 

これを今の政府方針である「全量再処理」するとなると年間排出分だけで最低でもあとひとつ、保管分まで含めればその数倍の再処理工場が必要となるわけです。 

このようなバックエンド処理費用だけで、電気事業連合会は総額18兆8千億円かかると試算しています。(2003年12月現在) 

つまりハッキリ言って、再処理は操業開始以前から完全なデッドエンドになっており、これ以上従来の「全量再処理」路線を進むのは不可能だと言っていいでしょう。まったくなにを考えているのか。

た、これにかかったコストはすべて総括原価方式で電力消費者に転化される仕組みです。 

これについて、政府は4ツのシナリオを検討しました。 

「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」によるシナリオがそれです。(2005年)

・シナリオ1 全量再処理(現行路線)・・・使用済み核燃料は六ヶ所再処理施設で再処理を行う。処理能力を超えた分は中間貯蔵を経た上で同じように再処理を行う。→現行路線 

・シナリオ2 部分再処理・・・使用済み核燃料は六ヶ所再処理施設で再処理を行う。処理能力を超えた分は中間貯蔵を経た上でそのまま埋設して直接処分する。 

・シナリオ3 全量直接処分(ワンススルー)・・・使用済み核燃料はすべて中間貯蔵を経た上でそのまま埋設して直接処分する。アメリカ、ドイツ等で採用。→再処理の否定 

・シナリオ4 当面貯蔵・・・使用済み核燃料はすべて当面の間中間貯蔵する。

シナリオ1は現行の原子力政策大綱(2005年10月)どおりのものですが、シナリオ3は再処理自体を否定するものですが、政府は判断を先送りしたままになっています。

これ以上展望のない全量再処分などに固執することは愚かだと思います。

おそらく政府は、今までこの計画につぎ込んだ約10兆円の税金を考えると、いまさら中止はできないという気になっているのだと思います。

今話題となっている諫早干拓事業などと一緒で、巨大国策事業がいったん開始されると、もはや過程での見直しが効かず、いったん執行された予算を使い切るまでつき進むという官僚の悪癖です。

この結果、諫早のように現地農民と漁民の対立という事態まで引き起し、さらに解決を複雑にさせるということになります。

全量再処理は、もんじゅが絶望的な以上(※)、今の数倍の規模の再処理工場が必要となり、処理した後も不透明です。もう20年間実証炉が止まったままでは説得力ないですね。(※もんじゅの評価については異論が存在します。)
               核燃料サイクル(出所:資源エネルギー庁)

費用が天文学的になるだけで、処理済み核廃棄物が徒に積み上がっていくだけです。

となると、もはやシナリオ3、すなわち全量直接処分(ワンスルー)方式に切り換え、暫定処分によって地層処分するほうが傷が浅いと思われます。

暫定処分ならば百数十年の期間となり、その間の研究による長寿命核種の大幅短縮化を図ります。

このていどの期間ならば安定した地層は全国各地に存在しますので、政府がいまのようなあいまいな姿勢ではなく、本腰を入れた地層処分の候補地を探さねばなりません。

まぁ、安倍さん、せっかくあなたの「政治の師匠」がああまで最終処分問題を叫んでいるのですから、安定した今の政権期に地層処分の決定をすべきですね。ただしあくまでも暫定保管で、ですが。

次回、別な角度からこの問題を考えてみます。

※参考資料 中国新聞2004年6月11日
http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/nuclearpower/japan/040530_01.html

                。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚

■もんじゅ再稼働めどたたず
日経新聞 13年5月29日

原子力機構の点検漏れで規制委 高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で約1万点の機器の点検漏れが見つかった問題で、原子力規制委員会は29日、日本原子力研究開発機構に対し安全管理体制を見直すよう命令することを最終決定した。規制委は15日の処分決定後、原子力機構に対し弁明を求めていたが不服申し立てが無かったため、処分が正式に決まった。安全管理体制が整うまでもんじゅは運転再開に向けた準備作業ができなくなる。

資料 日本における核燃料サイクル施設 

濃縮施設 国内での処理能力は1890トンU/年で国内需要の約三分の一である。

転換・加工施設 成形加工能力1,823トン-U/年、転換加工能力475トン-U/年

再処理施設 2002年末までに5600トンUの処理がイギリス・フランスに委託された。

  • 日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所 (茨城県東海村) 稼働1981~2007年 累計処理量1,140トン-U。
  • 日本原燃・再処理事業所 (青森県六ケ所村) 2011年10月アクティブ試験中、2012年10月しゅん工予定であるが、使用済み核燃料の受入は2000年より始まっており当施設では3,165トンを保管している。

廃棄物管理施設

廃棄物埋設施設

  • 日本原燃・濃縮・埋設事業所 (青森県六ケ所村) 低レベル放射性廃棄物の埋設 1992年より稼働中。累計搬入量218,707(200リットルドラム缶換算、保管容量412,160本)
  • 日本原子力研究開発機構・廃棄物埋設施設 (茨城県東海村) 極低レベル放射性廃棄物の埋設 1995年より稼働中。1995年より稼働、1,670トンを埋設し1997年10月には埋設地の保全段階へ移行。
  • 高レベル放射性廃棄物の地層処分施設は場所を公募・検討中。2033~2037年頃に施設の建設を開始する予定である。

この他、放射性物質等を陸揚げするむつ小川原港へは、専用道路が通っている。(Wikipediaによる) 

 原子力機構が23日に起こした加速器実験施設「J―PARC」(茨城県東海村)の放射性物質漏れ事故についても、安全意識の向上を求めた。

 もんじゅについて規制委は、原子炉等規制法に基づく保安措置命令として、機器の点検状況を管理するシステムの構築を要請。保安規定も変更し、安全を最優先とする活動方針を定め、組織内の責任を明確にするように求めた。

 規制委は15日に原子力機構に体制見直しを求める方針を決め、不服があれば弁明するよう伝えた。しかし鈴木篤之前理事長は17日に引責辞任し、弁明もしなかった。今回の決定で、年度内を目指してきたもんじゅの再稼働のメドは立たなくなった。

 規制委はもんじゅの敷地内の断層を調査する有識者会合を設置することも決定した。6月13日に事前会合を開き、6月中下旬に現地調査する。

 J―PARCの放射性物質漏れ事故について規制委の田中俊一委員長は「放射線を扱う心構えが欠如していた」と批判した。原子力機構に再発防止策の提出を求めるとともに、全国の主な加速器施設の安全性も調査する。

 同施設では23日、警報が鳴った後にも排気ファンを回し、放射性物質を外部に放出してから実験を続けた。放射性物質漏れの公表も1日半遅れた。この事故で33人の被曝(ひばく)が確認され、最大被曝線量は1.7ミリシーベルトだった。規制委は国際的な事故評価尺度(INES)で9段階の下から3番目に当たるレベル1と暫定評価した。

 これまでトラブルを繰り返してきた原子力機構は東京電力福島第1原発事故後も安全軽視の姿勢が改まらず、組織的な問題が指摘されている。下村博文文部科学相は28日、原子力機構の運営体制を抜本的に見直す改革本部を設置した。

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週末写真館 私の好物、素敵な夕焼け

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世の中に夕陽評論家みたいな商売があったら、ぜひなりたいものです。
私は、田園の夕陽も、湖畔の夕陽も、はたまた盛り場の夕陽も大好きです。
人間の存在を無視したような荘厳な夕陽もいいですが、
昨日のような淡い青や緋色が街や里を覆っていく、優しい夕暮れもまた素敵です。

あ、このいちばん上の写真のふたつの頂を持つのが、ベリーフェーマス筑波山です。

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バランスのいいエネルギー源の見方  テルツァキアンの9項目プラス2

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コメントで色々なご意見が聞けて楽しいですね。

原発の耐用数制限の問題、最終処分のあり方、核廃棄物と原発稼働数との関係(総枠規制)、あるいは核リサイクル施設の存続、代替エネルギーなど、実に多くの議論すべきことがあります。

簡単に「原発ゼロ」と言って済ませられる問題ではありません。

原発問題というのは、放射能リスクばかり強調されがちですが、むしろエネルギー問題だと私は思っています。

原発のリスクをなくすということは、別なリスクを取ることでもあります。その新たなリスクの大小が、代替エネルギーを選ぶ基準となります。  

原子力に安全上の危険性がある、さらに廃炉や最終処分というバックエンドまで考慮するとけっこう高いモノにつくなどというのは、今さら小泉さんに教えてもらわなくとも国民的常識になっているわけですね。 

じゃあ原子力を止めるか、もっとどんどん減らしていきましょうという漠然とした合意は、今の日本にできています。新規に原発を作るのは限りなく無理です。 

この私もあせって即時ゼロにするには反対ですが、計画的に減らしていくべきだと考えています。

その場合、規制委員会の言う安全審査以外にもっと大枠で判断する要素が要ります。

その重要な指標のひとつが、最終処分地にどれだけ埋設できるのかとういう量です。

日本にも100年前後の暫定埋設ならば十分可能な地層はいくつもありますから、そこで暫定埋設できる量が、原発から排出される廃棄物の総量+現在保管している分と均衡していなければなりません。

これが原発の総量規制という考え方です。これについては別の機会にじっくり考えていきたいと思います。

さて、当座考えねばならないのが、なにが原発の代替エネルギーになるのかということですが、その選択を決定するのが、「エネルギーの価値尺度」です。

まだるっこいようですが、ここからお話していきます。

ガス・コンバインドサイクルなどの技術的進歩は、この価値尺度の一部でしかありません。 

よく素人が技術的ブレークスルーに接すると、すぐこれこそが次世代の救世主と思ってしまうものですが、シェールガスや、メタンハイドレートのような新たなジャンルが誕生したのでなければ、その影響はこの価値尺度の枠の中で判定されるべきです。

そうしないと、新たな技術やエネルギー源が誕生するたびに宣伝文句に踊らされるはめになります。 

さて、このエネルギー価値尺度で世界的にもっとも有名なのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のテルツァキアン教授によるエネルギーの価値を判定する9の基準というリストです。(欄外参照)

学者の言うことですから、やたら小難しい用語で書かれていますが、要は「安全・安心・安定」ということです。

これはエネルギー源の利用価値を計るもので、「産出/投入比率」と合わせて使われているものです。 (欄外資料2参照)
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-3.html 

テルツァキアンの判定項目は以下です。

汎用性      ・・・どんな用途にでも利用可能
量的柔軟性   ・・・微細にでも巨大にでも調整可能
貯蔵性・運搬性 ・・・自在に移動することが可能
ユビキタス性  ・・・時期と場所を選ばない
エネルギー量  ・・・面積・体積・重量当たりのエネルギー量
出力密度     ・・・時間当たりのエネルギー量
出力安定性   ・・・エネルギー出力の安定性
環境負荷    ・・・CO2や窒素酸化物・硫黄酸化物などの排出量
供給安全保障 ・・・産出地の政治的安定性
 

そしてこのテルツァキアンの9項目に、私は福島第1原発の過酷事故以後は10番目として「危険度」が付け加えられるべきだと考えています。 

そこで私は10番目の判定基準として危険度を入れたいと思います。

事故時の危険度・・・過酷事故時にいかなる危険があるのかの度合い

また、専門家によっては、派生して出来る副産物を上げる人もいます。

たとえば石油は生成の過程で膨大な石油化学製品を生み出しますが、再生可能エネルギーはまったくなにも生み出しません。 原子力は原爆というものすごい副産物を生み出します。

そこで11番目の判定基準として
副産物・・・製造時にどのような派生品を生み出すのかの度合い
 

欄外の表を見ながら読んで頂きたいのですが、この9+2の判定基準でみると、最高得点なのは石油です。 

○が壮観なほどズラっと並んでいます。まさにエネルギーの優等生です。だからこそ、石油は現代エネルギーのチャンピオンになったわけですが。 

石油は⑧の環境負荷でCO2を出すことと、⑨の安全保障という点が産地が世界の火薬庫のような中東湾岸ですので、これが低い以外は平均して高い利用価値があるとされています。

私が勝手に追加した11番目の副産物も、プラスチック、ビニール、化学肥料などを先頭にして膨大なジャンルがあり、それがなくては現代生活が営めないほどです。 

しかし今や、むしろその高い利用価値が禍して、過剰に投機マネーが流入したり、原油争奪の国家間紛争が起きたりして、そのつど原油価格が大きく変動してしまう欠点を持っています。 

その為に数度の石油ショックで学んだ先進各国は、石油依存経済から脱却しようとしています。

●原子力は、どんな用途にでも使えるわけではなく、また移動することなどはぶっそうなのでやめて欲しいので汎用性とユビキタス性に難点がついています。 

かつて冷戦初期に、米国もソ連も原子力爆撃機などというもの騒がせなものを作ろうとしましたが、堕ちたらえらいことなので計画が中止されました。 

脱線ついでに、鉄腕アトムは原子力エンジンで動いています。足から出ているのは原子炉からの直接排気で、おいおいやめてくれよ(笑)。ちなみに妹はウランちゃん、弟はコバルト君です。 

原子力は「環境負荷」において、福島第1原発事故以前はCO2が出ないことで高得点でしたが、今そのように思っているのは日本の環境省くらいなものでしょう。 

環境負荷もなにも、事故がいったん起きれば一国の3分の1が住めなくなる可能性が高い(※)わけですから、10番目に「安全性」という評価項目かあれば、原子力は最低最悪の得点であることはいうまでもありません。

11番目の副産物は核のゴミから 出るプルトニウムです。原爆を作る気ならともかく、これほど始末に悪いものはありません。 

●石炭は、貯蔵性、運搬性、体積・重量あたりのエネルギー密度、出力安定性は高得点ですが、あまりにも窒素・硫黄酸化物やCO2の排出か大きく環境に負荷をかけすぎるために今後を期待できるエネルギーではありません。

●水力も出力密度と産地の安定はあるのですが、貯蔵出来たりするものではなく、どうしても巨大なダム施設を作ってしまうため環境負荷が高く、日本ではこれ以上の建設は無理です。(※小型水力発電所は期待できます) 

●天然ガス。平均して特に大きな欠点が見当たらないのが天然ガスです。汎用性、貯蔵性、運搬性にはやや石油より落ちるものの欠陥といえるものは見当たりません。 

エネルギー密度、出力密度、出力安定性などのエネルギー効率は高い能力をもっています。クラスで二番目にできるおとなしい子というかんじでした。 

これが天然ガス界の革命児のシェールガスや、ガス・コンバインドサイクルなどの新技術で、一躍石油に替わる次世代のエネルギーの主力の地位に躍り出ました。 

特に天然ガスは石油、石炭、水力で問題となる環境負荷が少ないのが特徴です。 

天然ガスをまとめてみると 

①中東などの政治的に危ない地域に偏在することなく、豊富に世界各地に存在する。
②CO2や酸化物の排出も少なく、化石燃料の中で最も良好な環境能力をもつ。
③シェールガスなどによる新たな天然ガス革命により、価格が安価になる期待がある。
④過酷事故が起きる可能性が少なく、仮に起きても原発事故とは比較にならない。
 

非常にバランスの取れたエネルギー源だと分かります。 

ですから、世界のエネルギー専門家の共通した意見では、天然ガスこそが21世紀のベース電源に成長するのではないかと期待されています。

再生可能エネルギーは、脱原発のシンボルのように扱われたために実力以上に人気が高いエネルギー源です。 

環境負荷が少なく、国内で生産されるという点では高評価ですが、それ以外ではすべての評価項目で「悪い」がついてしまっています。

これは再生可能エネルギー推進派のみなさんは反論がおありでしょうが、客観的に見た位置は、残念ですが一国の主要ベース電源(基盤電源)とするにはもっともふさわしくないエネルギー源だと評価されています。 

ただしそれは全国共通のベース電源としてであり、そのように再生可能エネルギーを位置づけること自体が間違っています。 

私はいままで利用されず眠っていた地域のエネルギーを市民参加型で利用できる地産地消型エネルギーとして発展していくべきだと思います。 

ですからなおのこと再生可能エネルギーを活かすには、他のエネルギー源との組み合わせ方をどのようにしていくのかを工夫したり、どこに何を設置したら効率がいいのか、どのような地域送電網があるのかを真剣に考えねばならないのです。 

以上のように、様々なエネルギー源があります。

脱原発だから再生可能エルギーしかないんだなどと思わずに、また逆に原子力は絶対に必要だなどとも思わずに、バランスよく考えていったらいいのだと思います。

※追記 「原子力事故が起きれば国の3分の1が住めなくなる」という表現は、今回の福島事故を表現するものとしては不適切です。帰還困難地域は限定的です。これは「最悪シナリオが発生した場合に」ということでご理解ください。 

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小泉さん、あいかわらずハッタリばかり

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自民党もよくまぁ、これほどなめられたものです。 

もはや議員ですらなく、いわば素浪人同然の小泉さんにいいようにかき回されています。

初めは酔狂の類かと思っていました。

ご存知のように小泉純一郎という人物は、自己顕示欲と嫉妬をシャッフルして、ハッタリ風味でコーティングしたような人です。(←あまり喰いたくないな)

勘違いで始めた「郵政改革」が、敵を作為的に作る政治手法と、論理構築を省いたワンフレーズ・ポリティクスで爆発的な成功を納めてしまったのが日本の不運というものでした。

彼の発言はまず直球にきます。

郵政改革ならば、「民間でできることを公務員がやるのか。小さい政府を作ろう」と投げ込んできます。 

そして次の小泉さんが投げる弾にご注意ください。ここで彼はウソをバネにして自分の都合いいことに引き込みます。

「民間に任せれば公務員は大削減できるのだ。そうすれば国民は税負担が軽減される」と続けるのです。

はい、嘘です。当時の郵政公務員は、身分は公務員ですが郵政事業から報酬を得ていて、税金はびた一文使っていませんでした。

ですから民営化しても公務員数は頭数だけは減りますが、実質同じです。 

次に小泉さんは、郵貯のお金が財政投融資に繰り込まれて、官僚や政治家が癒着していいように使える「闇の資金」になっていると攻撃しました。

これも嘘です。彼が首相として民営化を叫ぶ前の2001年には財政投融資は郵貯から完全に切り離されています。

もう一丁。当時彼は「官業が民業を圧迫している」と言いました。

またまた嘘です。87年に郵貯の金利は民間と連動しており、92年には財務省と貯金の限度枠を1000万円とする定額合意すらできていました。 

こんなものは民間の金融業はありませんから、むしろ逆差別です。

そして決め手が「守旧派をやっつけろ」です。

小泉さんは反対する相手を一刀両断で「守旧派」と決めつけて、自民党内の民営化反対の候補に刺客戦術までとったのです。

この「守旧派」自民党ジジィが、若い女性の刺客に次々に倒されるのを見て興奮したのが、「小泉劇場」でした。 

この郵政選挙で小泉さんは望外の自民大勝を得ます。そしてうんざりするような長期政権が始まります。

彼の在任中に中央と地方、正規雇用と派遣の間には埋めがたい格差が誕生します。この格差はいまだ埋められていません。 

それを作った責任者がこの小泉純一郎という男なのです。

私は、このような小泉さんがあっさり引退して悠々自適はないだろうなとは思っていました。

しかしそれは俗世間に対する塩辛いひと言ていどだろうと思った私が甘かったようです。

今の小泉さんの「脱原発」発言は慎重に計算されており、的確に衆目を集める時と場を計算して行われています。

どうも彼は政治活動を再開したいようです。しかも「ワンフレーズ脱原発」で。 

小泉さんはいまや、「即ゼロがいい。その方が企業も国民も様々な専門家も準備が出来る」 と言っています。

できてませんよ。後述しますが、今の電力業界は、業界として滅亡危惧種入り寸前です。茨城県など、稼働停止している原発にまで課税するというんですから、もはやいじめ。

「即時ゼロ」の道筋はというと、こうです。

政治で一番大切なことはまず方針を示すことだ。原発ゼロという方針を政治が示せば必ず知恵のある人がいい案を作ってくれる」。

なにいってんだか、そんな便利な「知恵者」とやらは世界中にいませんよ。初め私は小泉さんが突如思いついたから発言しているのかと思いました。

ところがよく読めば、なんのことはない、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」(古い)の類じゃないですか。

フィンランドのオンカロでひらめいちゃったらしいですが、オンカロは原発止めるために作ったのではなく、動かすために作ったのです。このオンカロがいっぱいになる80年後までの時間稼ぎにすぎません。

蓄電技術があれば、なんて言っているようですが、ほんとうに調べてしゃべっているかしら。

蓄電技術は割に合わないコスト喰いで、それでなくても割高な再エネに蓄電器つけたら、法外なものになります。

というわけで、道筋もなんにもなく、無内容にただ思いつきで吠えているだけです。

それでいて、というかむしろ無知ほど強いものはないからか、方針だけは過激です。

「即時全面停止」などという立場は、今の脱原発派の中でも最急進派で、もはや山本太郎氏といい勝負です。 

段階的フェードというなら議論の余地がありますし、この私もそうですが、「即時ゼロ」などは論外です。議論の余地もない愚論、暴論でしかありません。

ところが、朝日新聞はこのようなことを「院政政治」と呼ばずに、「世論の支持が広がれば無視できなくなる」とまで持ち上げています。 

そうですかね。「小泉爆弾」が炸裂したのが、2011年夏あたりだったら、この私も含めて影響力があったでしょう。なんせ化けの皮が大分はがれても、元の「大宰相」ですからね。 

しかしそのあと、2年半以上たって国民は学んだのです。 

今すぐに原発が停止してしまえばどういう状況になるのか、ピンとこなくてもジワジワ分かって来ています。 

小泉さんのいう脱原発の理想郷を実現したはずのドイツかどうなったのか、私のブログ読者以外にもゆっくりと分かってきています。 

そう、2年半たって私達は冷静に脱原発を考えられるスタート地点にいるのです。それを「郵政民営男」に振り出しに戻されたくはありません。 

実は原発がゼロになった状態を想定するのは簡単なのです。答えは簡単。ただ今現在がそうだからです。 

わが国では9月17日に、国内で唯一稼働していた福井県の大飯原発4号機が定期点検のため停止し、現在ただの一基も原発は稼働していません。 

原発を止めると、代わりに火力発電所の運転を増やさなければなりません。半分止めたドイツもそうでしたし、全部止まっているわが国はドイツ以上にそうでした。

関電はわが国でも原発依存度が高いのですが、2012年3月期の連結最終損益は、2530億円と過去最大の赤字に転落しました。

東電のような事故補償や事故処理コストがないにもかかわらずに赤字転落したのは、原発の停止によって燃料費が2010年の2倍の8000億円に増えたからです。

これは単に一企業の利益だけの問題ではなくなりました。なぜなら電気事業法によって、電気料金は総括原価方式なので、コスト増は電気料金に上乗せされるからです。

そして原発ゼロは、日本経済全体に暗い影響を与えています。 

みずほ総研は、GDPの約1割が燃料費で消えていると発表しています。 

・2011年の燃料輸入額・・・21兆8000億円
・              ・・・前年から4兆4000億円増
・              ・・・GDP(国内総生産)の0.9%が燃料費で消滅
・              ・・・貿易収支は31年ぶりの赤字に転落

当然、電気料金はぐんぐん上昇していきました。完全に化石燃料コストと電気料金値上がりは同調しているのかわかります。(下図参照 東電HP) 

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「燃料費調整として、ひっそりと1年のうちに537円もの値上がりが発生しているのも事実」(グリーンピース2012年9月3日 )だそうです。

小泉さん、どの国でも失敗している脱原発=再エネ政策を改めて持ち出すあなたの神経がわかりません。 

あなたは国を滅ぼしたいのですか。 国を滅ぼしても自分の理想を遂げたいのが運動家だとすれば、さてあなたはいつから運動家になったのでしょうか?

晩節を汚していただきたくないものです。横須賀でオペラでも唄いながら機嫌よく散歩でもしていて下さい。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-26ea.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-4813.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-1cf4.html

       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/24-881d.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-5925.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-8e91.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/1000-1b70.html

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(10) FITで守られた再エネによる電力業界の混乱と疲弊

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みんなの党が選挙公約(アジェンダだったっけか。わかんない言葉を使わないでね)で、再エネ(再生可能エネルギー)を「50年までに8割」などと無知なことを言っていますが、電力構造的に絶対に無理です。

渡辺さんはチャーチルが海軍大臣時代に言った有名な言葉を知らないみたいですね。

これはエネルギー論の第1章1節に出てくるような言葉で、少なくとも脱原発というエネルギー問題を論じようとする人は絶対に知っておかねばならない言葉です。

至って短いので、直ぐに覚えられますよ。

供給安定保障の要諦は、一に多様化、二に多様化、三に多様化

エネルギー源を何かひとつのものに頼っていると、それが国際政治や経済の影響、あるいは事故でポシゃったらパーになります。

だから電源や、供給源(供給国)はできるだけ多角化しておかねばなりません。 

フランスのように半分以上のエネルギー源を原子力に依存するのも問題ですが、かといって8割を再生可能エネルギーにしたら、目も当てられません。 

本気でそんなことをしたら、真夏の6時から9時に頻繁に停電が繰り返されることになります。

その大きな理由は先日から何回か述べたように、電力というのはその時間の消費と生産がぴったりとマッチングしていなければならないからです。 

たしかに小泉さん言うように蓄電技術は存在しますし、電力会社、自動車会社、住宅メーカーなどは多額の研究費をかけています。

しかし今の10倍の蓄電能力をもつようになったとしても、24時間火力を運転するほうがはるかに安く上がるのです。

仮に天候任せの再エネ(再生可能エネルギー)が8割を占めたら、系統送電網はガタガタになり停電が頻発してしまいます。

つまり、火力による出力調整機能があってこその再エネなので、再生可能エネルギーを8割も大量導入した場合は、需給バランスの維持が不可能になってしまうのです。 

また、逆に再エネの尻拭いを強制させられている既存の火力は、再エネ発電所がダウンした時と、夜だけ動いてくれればいいということですが、そんな虫のいい条件なんかアリでしょうか、ということです。

現実にはこんなふうに1時間ごとに出力がジグザグするような場合、その都度、出力増加(ランプアップ)、出力低下(ランプダウン)をするわけにはいきません。 

なぜなら、そんなことを1時間ごとにおこなっていたら手間と経費がかかり過ぎてバックアップ発電所はそのためのコストのほうがかかってしまうからです。 

では、どうするのでしょうか。 ヨーロッパではこうしています。

ドイツの場合、再エネの電力は、電力卸市場(EEX)に全量売ることが定められています。(下図参照 クリックすると大きくなります)

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図 再生可能エネルギー大量導入時の火力発電所の運用
(経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会第23回資料 「再生可能エネルギーを巡る事実関係」2012年5月)

通常の発電業者は、電力系統の運用者に運転計画を提出し、計画不履行の場合、罰金を食います。

そこで、再エネのバックアップをする火力発電所は、その増減を見越して、あらかじめ「ネガティブ・プライス」としてその出力低下分の費用をマイナス計上してしまうのです。 

たとえばドイツなどでは発電量に応じて、あらかじめ「マイナス10ユーロセント/kWhを、いわば「罰金」として支払っています。

しかし、優先的に系統電源に給電される再エネのほうは、FITの固定価格制度に守られて本来、卸電力市場の常識である「ネガティブ・プライス」を支払う必要がありません。 

つまり、再エネは天候に左右される不安定な発電しかできないにもかかわらず
まずは、
優先的に系統送電網に給電できる資格をもち
かつ、他電源のバックアップ発電所を常に必要
さらに、固定買い取り制度に優遇されてネガティブ・プライス支払う必要がない

しかも、市場相場の倍の固定価格で全量買い取ってもらえる

という4重の優遇措置を受けていることになります。まったく、おいおいの存在なのがお分かりいただけましたか。

間違いなく既存の買電事業者は、再エネ事業者のことを、親(国)にベタベタに甘やかされた出来の悪いパラサイト・シングルみたいに見ているでしょうね。

再エネのことを「間欠性電源」と呼ぶ場合がありますが、これは通常の恒常的電源供給者からの痛烈な皮肉が込められています。

電源が間欠、つまりできたり出来なかったりするなんて、中世ならいざ知らず現代ではありえませんもんね。こんなもんはまっとうな電源じゃない、と既存の発電業界は言っているわけてす。

「間欠性電源業者」がリスクを負わないという性格は、送電部門も手を焼いています。

電力卸売市場に参加している送電業者にとっては(※ドイツは発送電分離しています)、泣いても笑っても再エネを全量買い込む義務ができてしまいました。そのため売り損も相当でています。

たとえば、風が吹く好天の休日にガンガン再生エネルギーが発電してしまい、火力を全部止めても間に合わず、丸損承知で買わざるを得なかった電力を小売りに叩き売るなどということが現実に起きているわけです。

なんと素晴らしくも、考え抜かれた不平等な制度でしょうか! 

エネルギー問題の専門家である、マサチューセッツ工科大学教授リチャード・シュマレンジャーはこう述べています。 

固定価格買い取り制度は電力需給に一致に関するすべてのリスクを、他の市場参加者に押しつけてしまった。」

どうしてこんなにドイツは、再エネを市場メカニズムの「外」に遠ざけてしまったのかため息が出ます。 

これでは再エネが増加するほど、ドイツ人は不幸になるに決まっているではありませんか。

実際、ドイツなどではバカバカしくて火力発電所などやっていられるかという発電業者が増えた結果、既存火力発電所には投資インセンティブ(意欲)が激減していき、メンテナンスさえもままならなくなりました

いかに再エネが、FIT(フィードインタリフ・全量固定価格買い取り制度)という鎧で守られている限りわがまま放題の乱入者かお分かりいただけたかと思います。

本来電力需給と原料需給という市場メカニスムで運用されるべき電力市場が大きく歪められているのです。

このようなFITというひいきの引き倒しのようなシステムを作れば、かえって再エネの健全な発展を阻害し、社会のやっかいものにさせてしまうことになるのです。

私は、再エネに限らず新たなエネルギー源は、初期に多少の面倒は見てやっても、それは速やかに終わらせ、通常の市場競争の中に置くべきだと考えています。

そうすれば、自ずとなにが使える新エネルギーなのか分かってくるはずです。

ところがドイツのように甘ったれたFITを長期間続けると、補助金を貰って当たり前となってしまい自立したエネルギー源に育っていかなくなります。

このようなことにひとこともふれず、「脱原発」と再エネをムード的に叫んで、○○年後には脱原発だ、再エネ8割だと言う人たちは信じるに値しません。一度頭を分解掃除したらいかがでしょうか。

※参考文献「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」 

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(9) 再エネはとんだ自己チュウだった

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ここまでで再エネ(再生可能エネルギー)の特殊性が分かって頂けたかと思います。

何といっても他の電源と決定的に違うのは、再エネには不安定な性格という宿命的欠陥があるのです。

「テルツァキアンの9項目」(※)でいう量的柔軟性出力安定性に決定的に欠けています。

これは基盤電源としての必須条件である、一定の電圧と周波数で電流を安定して流す定常性が欠落していることになり、大きなマイナスです。

この気まぐれ病があるために、再エネはもっとも古い人類とのつきあいがあっても、近代工業社会では徐々に忘れ去られていったわけです。

それが蘇ったのは、言うまでもなくチェルノブイリ以降の原子力に対する懐疑からでした。

様々な実験的取り組みが行われてきましたか、福島事故以前には、小規模な系統送電網内の中に紛れ込むていどの発電量だったので問題が出にくかったのです。

ところが、これを一気にドイツのように原子力の代替と位置づけて、国家規模での電源インフラとして使うとなると、先日みた様に電力供給全体が不安定になって、下手をするとブラックアウト(停電)になってしまうことが分かってきました。

もう少しそのへんを細かく見ていきましょう。これが理解いただけると再エネを大量導入した場合どうなるのかがわかるはずです。

よく再エネにはスマートグリッドが必要だと言いますが、そのほんとうの理由は単にこっちが雨が降っているから別な地方から電気をもらってこようという地域シフトの問題だけではありません。(もちろんそれもあります)

再エネは24時間、その発電量に応じて他の火力発電がつききっきりでフォローしている保護者付きの「半人前」の電源なのです。

下図は、太陽光が増加したスペインの1日の需給運用のグラフです。(資源エネルギー庁作成)

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 (図 「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」電力改革研究会より)

この図は、実際に再エネが拡大した場合、他の電源がどのような関係でそれを補完するために増減をするのかを示した貴重なものです。

単一の電源の増減グラフはよくあるんですが、複数電源を一目で見られるようにしたものは希少です。

電気というのは生ものです。生鮮品なのです。多くの人はこの電気の本質を忘れて議論しています。

だから再エネが設備容量ベースで22%だといわれるとマンマ額面どおりに信じて、22%常に供給できるんだぁと単純に信じてしまいがちです。

残念ながら違います。再エネはそれに実効発電率をかけねばなりません。しかもその時間ごとに。

太陽光の場合平均10%をかけますが、それとてあくまで平均で、一日のうちのにも増減しています。それを表したのがこのグラフです。

上図をみると、現実に太陽光や風力が増えた場合、いかに瞬間、瞬間の電力需給を他の電源がマッチングさせて停電させないために苦労しているのかが分ると思います。

ドイツでは連邦ネットワーク庁という中央電力供給指令所のような部署がコンピュータ管理をしているようですすが、担当者はいつもポケットに胃腸薬を入れているみたいです。(冗談)

たとえば、上図左の赤い楕円部分に注目ください。

夜間の電力需要が少ない時間帯に、なにを考えたのか強風が吹いたとみえて風力(薄緑)が突然発電し始めて、火力(黄色)はたちまちただ1基のみまでに停止しているのがお分かりでしょうか。

逆に、一番電気が欲しい夜6時から9時(図右端)には風がやんでしまったと見えて火力がフル稼働の27基全開で出力して供給を支えています。

一日のうちにたった1基から、フル稼働の27基までという恐ろしい振り幅です。

まさに文字通り風と晴れに振り回される電力事情になってしまったのです。

次回、もう少し再エネ導入以後のドイツ電力事情を探ります。

※テルツァキアンの9項目 
ピーター・テルツァキアンMIT教授によるエネルギー源判定基準のこと
① 汎用性(どんな用途でも利用可能)
② 量的柔軟性(微細でも巨大でも自在に出力調整が可能)
③ 貯蔵性・運搬性
③ ユビキタス性(時期と場所を選ばない)
④ エネルギー密度(面積・堆積・重量当たりエネルギー量)
⑤ 出力密度(時間当たりエネルギー量)
⑦ 出力安定性
⑧ 環境負担(CO2 の排出に限らない)
⑨ エネルギー供給安全保障(政治的リスク)

※参考文献「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(8) 初期投資者以外、皆不幸になるFIT制度

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すごい地震でした。お見舞いありがとうございます。どうやら被害はないようです。

さすが3.11とその後の余震群で馴れていた私も、一瞬またあの悪夢が再来したかという悪寒が走りました。

今回は私の住む地域周辺でしたが、どうも陸にも海にも地震エネルギーが溜まっているようです。

フィリピンの台風30号被害はすさまじいことになっているようです。心痛みます。3・11の時の温かい支援を忘れてはいけません。早急に支援をせねばなりません。

さて、私は太陽光発電の初期導入者ですので、なんやかやでもうかれこれ16年近くも再エネにつきあってきましたが、正直に言ってあまり出来のいい電源には思えません。

「電気を愛おしい」と思う節電スピリットは叩き込まれましたが、実のところ、さてこの15年で元がとれたのかどうなのかはなはだ怪しいと思っています。

いいのは春だけ、梅雨はもちろんだめ、暑すぎる夏もだめ、秋雨もアウト、冬の曇天は息も絶え絶え。 太陽光に向いているのは砂漠でしょうな。

これは私の個人的な感想ではないとみえて、ドイツのメルケル政権のレットゲン環境相は2012年2月に公式文書の中でこう述べています。

「太陽光発電の助成コストに歯止めをかけるシステムはうまく機能している。太陽光発電の買い取り価格は2008年に較べてほぼ半分になった。」

この環境相の「うまくいった」発言は、決して太陽光発電が「うまくいった」のではなく、「助成金コストに歯止めをかけること」、つまり逃げ出すことが「うまくいった」のです。誤解なきように。(欄外資料1参照)

ドイツはFIT(ドイツ名EEG)の買い取り額を20~30%切り下げ、太陽光発電に見切りをつけました。このレットゲン発言には続きがあります。

「今後、われわれは、コストが比較的安い再生可能エネルギーの電源を集中的に拡大していかねばならない。それは陸上風力と洋上風力である。」

このレットゲン環境相は、与党CDU(キリスト教民主同盟)の中で「隠れ緑の党」と呼ばれてきたゴリゴリの環境派です。その彼をして、はっきりと太陽光発電には未来はない、と宣告されてしまったことになります。

レットゲンも認めているのは、いままで太陽光に最も高い買い取り価格を与え、それに20年間固定といったボーナスをつけてきたFIT(固定・全量買い取り制度)は過ちだったという「敗北宣言」でした。
※関連過去記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-e850.html
          http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-ceb6.html

しかしドイツの消費者からしてみれば、いままでさんざん高い電気を買わされ、太陽光助成のために税金を払わされてきた挙げ句、それはないでしょうという心境でしょう。

いままで、再生可能エネルギーは、EU域内は税金による助成を自由競争の建前で禁じ手きたために「賦課金」という形で消費者の電気料金に上乗せされてきました。実質は名が変わっただけてす。(下図参照)

Photo_3

(「脱原発を決めたドイツの挑戦」 熊谷徹)

実に36.3%もの賦課金、つまり税金が課せられています。(※EUでは再エネに補助金を出せないので、「賦課金」という形をとっています。)

ドイツは電気料金の半額弱までが再生可能エネルギーの賦課金負担という異常な構造なのです。

電力の自由化を脱原発政策と一体に同時実行したドイツでは、国民は情報開示と電源選択の自由というささやかなプラスを得て、それと引き換えに年々増え続ける賦課金負担と電力料金の値上げという重い荷を背負い込むはめになりました。

2011年ドイツでは年間で7.5ギガワットの太陽光発電が設置され、その補助金総額は20年間累積で合計180億ユーロ(当時のレートで1兆8500億円)でした。

ドイツでは、初期は我が国と同じくらいの3000億円前後でしたからあまり負担は見えなかったのですが、積もり積もって13年現在では、年間200億ユーロ(2兆4000億円)にも達するようになってしまいました。

するとさすが国民の負担も人口8000万人のドイツだと、一人当たり3万円という途方もない額になり、電力貧困層という電気代が払えない貧困層まで誕生するようになってしまいました。

これは税負担と電気料金上乗せの二重の形で消費者・国民が背負います。

しかもこのFITで儲かるのは、太陽光発電装置を付けられる富裕階層だけという金持ちにだけ優しい制度です。

おまけに、 これらの金はどこに行ったのかと言えば、太陽光発電に投資できたリッチな投資家と中国製パネルメーカーの懐に転がり込んだのです。(欄外資料2参照)

中国は中国とて、この国らしく生産調整に失敗し、数億枚のパネルの不良在庫を抱えて次々に倒産している有り様です(苦笑)。

この無計画な中国の太陽光発電施設の過剰生産によって、現在の世界の太陽光発電の需要は、セルベースで25ギガワットですが、供給能力はその2倍の50ギガワット以上あると言われるようになってしまいました。

馬鹿か!簡単なものだとはいえ、そんなに作ってどないすんの。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-37e2.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-2.html

ドイツではかつて世界一を誇ったQセルズが再建申請をし、外国からの投機資金が大量に流入しました。儲かったのは初期の投資家だけでした。

にもかかわらず、2011年1月には、700社の電気会社が6~7%の値上げをしました。

このレットゲン環境相の「太陽光撤退発言」には緑の党などが反対したのですが、結局この方向でドイツは舵を切り直しましました。あまりにも財政支出が大きすぎて、バランスを欠いているのは明白だったからです。

同じメルケル政権のレスラー経済大臣は、太陽光発電に与えてきた助成金を「甘い毒」とまで呼んで厳しく批判しています。

これはお金をもらう業者は一時的に潤っても、それにやがて頼る麻薬中毒患者のようになってしまうからです。

2012年4月1日から、ドイツ政府は太陽光発電の買い取り価格を20~26%に一挙に下げるだけでなく、毎月0.15ユーロセント下げていく決断をしました。

これは、たとえば10キロワット未満の屋上設置型太陽光発電の場合、2016年までにほぼ半分にまで買い取り価格が下がることを意味しています。(下図参照)

といっても、FITは約束した20年間は固定価格買い取り制度なので、初期参入者はぬくぬくと高価格で買い取ってもらえることには変わりありません。

Photo (同上)

このようにドイツは、スペインに継いで太陽光発電からの事実上の離脱を表明し、もう少し現実味のある再生可能エネルギーであるオフショア(洋上)風力発電へシフトを開始しました。

ただし先日からなんどか書いてきているように、風力発電のメッカである北部海岸地帯から900㎞もの送電網を建設するという代償を払ってですが。

ドイツがこの太陽光からの決別を開始した1年後に、日本は野心満々の大富豪某と超無能首相がハーメルンの笛に導かれるようにして、ドイツの後を追ってしまいました。

ヨーロッパ型FITは理論上は素晴らしいものでした。全量固定買い切りで初期投資を呼び込み、一挙に再生可能エネルギーを普及させて原子力の代替エネルギーに育てていくという構想でした。

しかし破綻の淵に差しかかっているEUと同様に、FITも理論と現実の間に隠れていたクレパスに転落しようとしています。

福島事故から既に2年以上たとうとしています。 私たち日本人も、「脱原発=再生可能エネルギー=正義」という 一元的な価値観から自由になって、冷静にエネルギー全体を眺めたいものです。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1

「ドイツ連邦議会(下院)は29日、太陽光発電の買い取り価格を大幅に引き下げることを柱とした「再生可能エネルギー法」改正案を賛成多数で可決した。4月1日以降に導入した太陽光発電は原則として、規模に応じて価格を約20~30%引き下げる。

ドイツは再生エネルギーの普及を図るため、送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買い取り制度」を採用。これにより太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。しかし価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が膨らんでおり、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換する。

法案によると、屋根に取り付けるなどの小規模発電は1キロワット時当たり24.43セント(約27円)から19.50セントに引き下げられる。規模が大きくなると引き下げ幅も拡大、5月以降も毎月価格を下げる。

太陽光発電は風力などに比べ、価格が高く設定されている。価格の見直しは定期的に行われていたが、これまでは10%前後の下げ幅だった。」(日経新聞3月30日)

資料2

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週末写真館 ポタージュのような濃霧に登る湖の旭

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霞ヶ浦は、その名の通り霧が多い地域です。
湖は巨大な蓄熱装置で、昼夜の寒暖差からトロっとした濃霧をよく発生させます。
湖面と空との境もおぼろな空間に、真っ赤な旭の火球がするすると登っていくのを見ると、荘厳な気分に打たれます。



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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(7) メルケル女史の脱原発という「正義」がもたらしたもの

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ドイツは、原発(半数)停止-再エネ拡大-電力改革の三つを同時にやるという急進政策をとりました。 

メルケルさんが、どれかひとつに絞って漸進的にやれば向こう受けはしないでしょうが、ドイツ社会に対するダメージはよほど少なかったでしょう。 

メルケルさんの脱原発政策で感じるのは全体を俯瞰するマクロ的視点の欠落です。 

大きく社会を守っていくというガバナンス(統治)的視点がなくて、「脱原発」というひとつの煎じ詰めた倫理的テーマに没入しています。

ですから大きな見取り図の中で政策決定をしていないので、後から後から当初考えもしなかった問題が芋ヅル式に出てくるはめになります。

太陽光に期待してガッポリ税金を投入したらダメで、ならばと風力にシフトしたら今度は送電網が長大に必要となり、作り始めたら反対運動に出くわし、隣国からできるまで風力は止めてくれと言われる、という具合にです。

脱原発をするにあたって、彼女が組織した諮問委員会の名称が「倫理委員会」だったというのも示唆的です。 

そこには宗教家や消費者、教育者は多数いても、肝心の原子力やエネルギーの専門家、電力事業者はひとりもいませんでした。

おそらく彼らを入れないことで、会議をやらない前から決まっていたはずの「脱原発」という結論の側に「正義」があることをアピールしたかったのでしょう。

「原子力村は汚らわしい」という観念が働いたのかもしれませんが、ドイツという世界有数の工業大国のエネルギー問題にひとりの専門家も呼ばれずに、この政策が決定されたことは驚きです。

脱原発政策によって打撃を受けることが必至な産業界が意見を聞かれもしていないのは、お気の毒というかなんともかとも。

彼女にとって脱原発は、選択された政策であるより、むしろ「倫理」あるいは「正義」だったのです。

この傾向は、それ以前の脱源発政策をになっていた社民党や緑の党とも共通しますが、むしろ「遅れてきた脱原発派」の彼女のほうが、いっそうその体質を鮮明にしています。
(※メルケル氏は第1次脱原発政策には一貫して反対していました)

そして不幸にも、わが国の脱原発派にも遺伝する体質となりました。彼らは「正義」のみを叫び、具体案は政府が考えればいいとばかりに初めから投げています。

正義に選択はありません。ただ唯一の道を正義の旗の下に突き進むのみです。

メルケルさんは、きっと「倫理」という錦の御旗を戴いて、脱原発という戦場に撃って出たかったのでしょう。

もし彼女が、もう少し「原子力からの解放」というテーマを原理原則的に捉えないで、柔軟で具体的な解決を考えたのならば、おそらくまったく違った政策を作ったことでしょう。

社会を電力不足や供給の不安定によってグラグラさせることが最善の道だったのか、ほんとうにそれ以外選択肢はなかったのか、保守政治家であったはずのメルケルさんにお聞きしたいものです。 

さて、彼女が選択した政策は、原発の半分を停止した上でその代替として再エネを位置づけ、そして発送電分離という電力自由化も同時並行で行うというものでした。

ドイツ政府は現在17基の原発のうち、老朽化している7基の原発を稼働停止にし、停止中の1基も再稼働を認めませんでした。22年までに残りのすべての原発の停止をする予定です。  

現在、半数弱の原発の稼働停止に過ぎませんが、既に大きな影響を社会に与えました。 

電力事情を判断する客観的判断基準があります。ひとつは電気料金、もうひとつは停電です。 

ドイツは2002年の第1次脱原発政策以来、電気料金は変わることのない右肩上がりを続けています。 

昨日も掲載したBDEW(ドイツ電気事業連)のグラフをみると、まさに2002年を基点として電気料金が上昇しているのがお分かりいただけたと思います。Photo_2

首都ベルリンの弁護士事務所で働くマリーナ・ヘッセは3人家族の主婦ですが、こう語っています。( ニューズ・ウィーク2012年10月31日号

一般市民が支払える水準に電気代を抑える方法も考えずに原発を止めるなんて、政府はなにを考えているのかしら。

彼女の嘆きには根拠があります。上図は、ドイツ家庭用電気料金に占める各種賦課金の割合を示したものです。

発送電の実費は変わらなくても、再エネ法賦課金(税金と同じ)と熱源供給型発電所促進税、電力税(環境税)の部分が年々重くのしかかって、電気料金を押し上げています。

いまやなんとドイツでは、電気料金全体に占める36.3%が各種再生エネルギーがらみの税金なのです。

脱原発政策によりドイツ経済が被った電気料金値上がりによる被害は、約340億ユーロ(1ユーロ=約118円換算で4兆120億円)に達するとOECDのエコノミストであるヤンホルスト・ケプラ氏は計算します。

もし原発を全廃すれば、そのコストは1200億ユーロ(14兆1600億円)を越える、と有力なシンクタンクであるライン・ウェストファーレン経済研究所のマヌエル・フロンデル教授は指摘します。

これらの金額は、ドイツのGDPの実に5%にも達します。いかに脱原発政策がドイツ経済に大きな打撃を与えたかお分かりになると思います。 

電気料金が上がれば、企業投資は冷え込み、それに連れて個人消費も落ち込んでいきます。

その結果、賃金が下がり、失業者は増大していくことになるとフロンデル教授は言います。

産業界は停電を懸念しており、生産施設を海外に移転させることを考え出し始めました。 

近隣諸国は、ドイツの電気輸入が増加して、ヨーロッパの電力を融通し合う国際送電網が不安定になることを懸念しています。 

代償は極めて大きい。経済が麻痺しかねない」。(フリッツ・バーレンホルト再生可能エネルギー会社RWEイノジーCEO) 

相場よりはるかに高く買い取ること強いられた消費者のドイツの平均的な所帯の電気代は年間225ユーロ(2万6550円)増加し、来年には300ユーロ(3万5400円)になりそうです。 

特に低所得者層への影響は大きく80万所帯が電気代の滞納をし、電気を止められそうになっています。いわゆる「燃料貧困層」が誕生したのです。 

既存の再生可能エネルギー発電施設だけで、これまで2000億ユーロ(23兆6000億円)以上の補助金が交付され、このうち半分の1000億ユーロは太陽光発電です。 

しかしこれだけ大きな負担をドイツ社会に与えた太陽光発電による発電量は、ドイツ全体の発電量のわずか4%にすぎません。 (※再エネ全体で22%)

その一方で、投資家や裕福な地主は、太陽光発電施設や風力発電への投資、土地貸与で懐を潤わせています。 

このように、原発政策による電力料金値上がりと、再生可能エネルギーの過剰な補助金導入政策のために、燃料貧困層と富裕層にドイツ社会が分裂していきました。

メルケルさんにお聞きしたい。これがあなたの「正義」なのですか? 

■写真 朝日の田園。よく分からないかもしれませんが、クリックすると大きくなります。

■参考文献 「ニューズ・ウィーク2012年10月31日号」元ベルリン支局長シュテファン・タイル氏の「脱原発優等生ドイツの憂鬱な現実」

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(6) なぜ脱原発政策開始と共に電気料金は高くなったのか

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先にもお話しましたが、ドイツの電気料金はバラバラです。再エネ(再生可能エネルギー)だけで2倍もの価格差かあります。

ですから、全体像をつかむには火力まで含んだ電気料金全体の推移を見る必要があります。

ドイツ電気事業連(BDEW)の平均的電気料金推移を見てみましょう。(下図参照) Photo_2

このグラフを見ると、2002年の脱原発政策以来電気料金は変わることのない右肩上がりを続けているのがお分かりになると思います。

図をみると、青色の発電・送電・配電コストという実費はこの10年来大きな変化はありません。

問題は、オリーブ色とグレイの再エネ法賦課金(税金と同じ)と熱源供給型発電所促進税とアズキ色の電力税(環境税)の部分が年々重くのしかかって、電気料金を押し上げていることです。

なんとドイツでは、36.3%が各種再エネがらみの税金なのです。これで不満がでないわけがありません。

その原因は、ドイツが原発に替わる代替エネルギーとして再エネを見込んでしまい、それに累積23兆円もの過剰な補助金を投入してしまったからです。

しかも初め20年間は固定価格で全量買い上げるというFIT(フィードインタリフ)という制度を作ってしまいました。この制度を模倣したものはわが国も去年から初めています。

ドイツ再エネ法(EEG)では、再エネが通常の電気買い取り価格よりケタ違いに高く買われてきました。特に、太陽光発電は群を抜いて高い買い上げ価格が設定されました。

これは単に高い固定価格だけではなく、いったん設定された価格を20年間の長期にわたって固定して全量買い上げるというプレミアムまでついています。

ということは、20年間電気料金は下がらないわけです。

そして電気が予定よりできようとできまいと、仮にできた電気が周波数が狂ったものであろうと全量買い取るというのですから凄まじい制度を作ったものです。

しかも毎年買い取り価格は下がっていきましたから、高い期間につけなきゃソンソンとばかりに我も我もと殺到したわけです。これがドイツやスペインの太陽光バブルです。

この中には地雷がたくさん隠されていました。ひとつは税金投入して買い支えているわけですから政府の予想を超える太陽光バブルに財政負担がショートしました。

NHK特集「揺れるドイツ自然エネルギー政策」(12年8月21日放映)でもこう報じられています。

「再生可能エネルギー全体のわずか15%でしかない太陽光発電に、電気利用負担者の負担金の5割にあたる7640億円が使われている」。

また番組の中では短期的利益を狙う投資家たちが大量参入したことも描かれています。

番組では詳細はありませんでしたが、ひとつは投機的資金のメガソーラーなどへの参入と、もうひとつは市民の屋根にパネルをローンで設備を設置させ、売れた電気の収益の一部を渡すという商法です。

この方法が普及してしまったために、本来は買うことができない太陽光パネルを自宅に設置する低所得者層が急増しました。

一種の太陽光版サブプライムローンです。これがEEGの破綻とともにどのようになるのか心配されています。

これにメルケルさんは補助金(※EUでは補助金ができないため「賦課金」名目)の半額、実に約12兆円を投じてしまい、それが回り回って太陽光パネルをつけられなかったドイツ国民の電気料金にも上乗せされることになったのです。

富裕層は太陽光パネルをつけたり、メガソーラーや風力発電所に投資して儲けることができましたが、貧困層はひたすら電気料金の負担の増加に苦しんだわけです。

脱原発政策は、意図せざる電力格差社会を生み出してしまったのです。

では、なぜその再エネで2倍におよぶ価格差が生じてしまったのでしょうか。

それは電力自由化の行き過ぎて販売部門にだけに会社が集中して過当競争になっているからです。

実はドイツは再エネ拡大だけではなく、電力自由化もほぼ同時期に行っています。(※電力自由化は1998年、脱原発は2002年から))

電力自由化とは、おおざっぱにいえば、今まで発電から販売まで一貫経営で地域独占していたものを、発電、送電、販売を切り離して、参入自由の自由市場にして競争させようという政策です。

つまりドイツでは、脱原発政策により半分の原発を止めた上に、再エネ拡大政策と電力自由化をするという三つの電力改革をしていたことになります。

この三つはひとつひとつとってもたいへんなテーマですが、それを同時に、しかも急進的にしようとしたのがドイツだっのです。

■写真 日の出です。ナニカよくわからないかもしれませんが、クリックすると大きくなります。

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脱原発を具体的政策で論じよ!

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昨日からのつづきです。

yuiさんという方は、私がこう書いたのが勘にさわったようです。 

「再生可能エネルギーに対して批判的なことを言うだけで、脊椎反射的に『原発の危険性を無視するのかと返してくる者が後を断ちませんが、どうしてこの二者を強引に接着するのか理解に苦しみます。」 

これをyui氏は、「毎度の詭弁」と決めつけています。 

なにが「毎度の詭弁」なのかよくわからないのですが、私は論理積み上げ型なので詭弁などという器用なことをすることができれはむしろありがたいくらいです。

たぶん、最終処分地などの問題もあるぞと言いたいのではないかと思いますが、なにぶん思慮不足の上に舌足らずです。 

私が批判された記事でそう言った意味は、事故からもう2年8か月もたっているのにあいかわらず「原発ゼロ」とか「原発の危険性」という言葉で、何か言った気になりなさんな、ということです。 

「原発ゼロ」というゴールはいいのです。日本人の多かれ少なかれ、程度の差はあれそう思っているでしょう。

しかし、それが世論の圧倒的多数にならないのはなぜかを考えてみることです。 

それはたぶん国民が、脱原発運動(急進派)の「原発ゼロ」の論理にまったく説得力を感じていないからです。 

もしあったのなら既製野党は、「原発ゼロ」が争点となって衆院選や参院選で勝利し、自民党の大勝を阻止できたでしょう。 

脱原発(急進派)の人たちは、いつまでも「原発ゼロ」というスローガン政治から出られないために、放射能の危険性についてはマニアックに詳しいくせに、エネルギー政策にはとんど無知です。

つまり、「放射能は危険だ」というプロパガンダばかりやってきてしまったために、具体的にエネルギー政策をどうするのかというという方向の思考が欠落したままなのです。「

危機ばかりを訴えるという反体制的スタンスばかりでは、ではどうしてやるのだという与党的思考は生まれません。

脱原発派(急進派)の皆さんは、原発をともかく停止するという一点のみに集中しすぎて、あとはオーダーメイドのドイツ製既製服を着込んでしまいました。

あまりしっかりと着たもので、もはや脱ぐと下には何も着てないようです。(下品な比喩を失礼) 

脱原発のイデオローグであった飯田哲也氏が関わった未来の党の無残な失敗はこれを象徴しています。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-9.html 

私は上の関連記事を読まれればわかるように、去年の12月の段階から今後脱原発の論点はこうなるだろうと考えていました。 

別にいばるわけではありませんが、当時このようなことをトータルに提示した者は、ブロッガーのなかでもごくわずかしかなかったと思います。 

①使用済み燃料の最終処分はどうするのか
②代替エネルギーは何を考えるのか
③その拡大のための財源はどうするのか
④電気料金値上がりによる国民生活や経済への圧迫をどのように回避するのか
⑤脱原発が完了するまでの期間の原子力安全・規制機関はどのようにあるべきなのか
⑥化石燃料の増大によるCO2対策はどうするのか
 

これらにひとつひとつ丁寧な回答を与えないで、批判されれば「原子力の危険性を無視するのか」と感情的に逆切れするばかりでは、解決をもっと遅らせるだけです。

もう少し真面目にこれらの難題に向き合ったらいかがですか。

真面目に、自分の頭で、こつこつと考えずに、「原発ゼロ」、「再生可能エネルギー」と結論だけ叫べば世の中がひれ伏すと錯覚してはダメです。 

このところ盛んに世の中を騒がせている小泉さんなどはまさにその典型で、最終処分地とか蓄電池とか色々言い散らしていますが、なんの具体性もありません。

この人自民党の首相だったのに、脱原発問題がエネルギー問題そのものだと理解していないらしいのです。

さらに言うに事欠いて、「色々な政党で話合えばいい案ができる」ですと!バッカじゃないか、と久しぶりに思いました。

そのような建設的合意ができなかったから、衆参選挙で野党が負けたんでしょう。

野党は選挙を前にして(今もそうですが)、自民党を政治的に攻撃する材料として、「原発ゼロ」を使っているから、自民党はその実現不可能性を言っているだけでよかったわけです。

片や政治スローガンとして「原発ゼロ」を叫び、片やクソリアリズムで応酬する、こんな不毛なイデオロギー対立から早く自由にならねばなりません。あらためてこう呼びかけます。

原発政策を具体的政策で論じよ!

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(5) ドイツの電気小売り事情 yui氏にお答えして

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yui という人からドイツの電気料金はもっと安いという指摘がされましたので、本日の記事を差し替えて、かなり前に書いた記事(12年9月28日)を再編集して掲載しておきます。

ドイツの電気小売りは最盛時には1000超あまりもあり、電気料金の乗り換えのための専門サイトまであります。

ドイツがEUの指令に従って1998年に電力の自由化をおこなったからで、そのために電力会社の地域独占が消滅しました。

そして電力の自由化と共に、いままでひとつだった電力料金はバラエティに富んだものになり、化石燃料や原子力を電源とする会社は料金が低く、再生可能エネルギーを取り入れる会社は高いという価格差が生じました

その電源の内訳は開示が義務づけられており、電力料金票をみると使用電力量と料金以外ズラズラとさまざまな情報開示されています。これは連邦法で定められた情報開示義務です。

情報開示はこんな具合です。
電力がどの電源から作られているのかの内訳
・1キロワット時に要したCO2排出量
・同じく核廃棄物の排出量

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上図は、現実のドイツの料金プランですが、一目でお好みの電源を供給する会社を選択できます。(日テレ報道番組による)

下図は安い再性可能エネルギーで有名なプリオシュトローム社の電気料金内訳です。

ここはこの数年、格安の再生可能エネルギーを販売して業績を伸ばしている会社です。

Photo_2 (図 「脱原発を決めたドイツの挑戦」 熊谷徹)

ご覧のように1キロワット時あたりのCO2排出はゼロ、同じく核廃棄物排出ゼロとなっていますから、100%再生可能エネルギーということになります。

電力価格も安価な料金の雄である「イエロー」が化石燃料も原子力も利用しているのに、年間電力料金が776.21ユーロですから、安全な上にぐっと割安感があります。

ではどうしてプリオシュトロームがこんなに安いのでしょう?もちろんこれには種も仕掛けもあります。

電源の内訳まではおおざっぱな表示義務しかないため、「排出ゼロ」電力=自然エネルギーの表記だけでは再生可能エネルギーとはかぎらないのです。

この会社は北欧の水力発電からの電気を輸入しています。

大型ダム発電が自然エネルギーだと言うのはウソではありませんが、環境破壊を伴うために狭義には再生可能エネルギーの範疇には入れてカウントしていません。(※水力は再エネであるという説もあります)

ドイツの場合、そこは一括りにして「排出ゼロ」で済ましてしまっています。

また国産エネルギーの表示義務はないので、格安販売会社は外国からの買電が頼みの綱で、原子力はフランス、水力はノルウェイやスウェーデンなどに頼っています。

もちろん国産の再生可能エネルギーの会社はマルクト・リヒテナウ社のようにいくつも存在します。

ただし、値段はぐっと高くて、先のプリオシュトローム社の2倍の863.3ユーロ(約8万6千円)しています。

マルクト社はドイツ国内の再生可能エネルギーを優先して使用しているためどうしても高めになるようです。

というわけで、このように同じ自然エネルギーといっても2倍も価格差があるのですから、一口にドイツの自然エネルギーの価格はいくらと言い切れないのがお分かりでしょう。

コメントのように再エネは安いとだけ言われても、再エネ販売会社は山ほどあり、それぞれの内訳をみて判断せねばなりません

それはさておき、この会社もそうですが1000社超あるといわれる電力販売会社は文字通り「販売」だけで、発電所はおろか送電網すら持っておらず、大手電力会社から電気を卸してもらって小売りしている会社だそうです

まぁいずれにせよ、日本の場合、外国との系統送電網自体がありませんからこのテは使えませんし、脱原発エネルギーに水力発電を入れてもいいことになると日本は電源比率23%の水力発電太国でもありますから、少々事情は違ってくるでしょう。

このような電気料金のバラつきがあるために、正しいドイツの電気料金事情をみるにはどれかひとつ好みの電力小売り会社のみを見てもわかりません。

このへんが遠い日本では分かりにくく、コメントにあったようにクララさんのような発信力が強い脱原発支持者の声のみがこちらに届くということになります。

後もうひとつは、ドイツの脱原発運動はわが国もそうですが、クララさんのような比較的裕福な都市中産階級によって担われており、生活が苦しい層の声はなかなか伝わらないことです。

今欧州では電力貧困層という電力料金の値上げのために、料金を払えなくなった所帯数が増えて社会問題になっています。これについてはこのシリーズのあとでふれます。

おまけに、ユーロと円の為替相場は大きく円安に触れているので、どの時点で円換算しているのかという問題もあります。(下図参照)

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だから、おおざっぱにはこのように言えるという限定付きで比較する必要があります。ある特定の小売り会社のある特定の時期を切り取って高い安いと言ってみても仕方がないのです。

そのために、もう少し多様な角度から分析するために、ドイツの電力事業連(BDEW)が出した平均の電気料金のグラフをシリーズ次回見てみます。

長期のドイツ国内の電気料金をみることでドイツ電力事情の全体像がわかるはずです。またその内訳を知ることで、なにが料金値上げ圧力になっているのかもわかるでしょう。

さて、遠い日本に住む私達が、ドイツの脱原発政策に熱狂するのも勝手ですが、ドイツの実態を少し批判的に紹介しただけでまるで脱原発運動に敵対しているかのようなyuiさんのような態度では、国民の共感は得られませんよ。

どうしてこう感情的なのでしょうか。

何度も繰り返していやになりますが、私は脱原発派ですよ。ただし穏健派です。

今の運動主流の急進的廃止路線や、再エネと自由化をドイツ流に強引に結びつけた路線には批判的ですが。

今の急進派の皆さんは、無批判にドイツにモデルをとっているようですが、もう少し距離をあけて冷静にみたらいかがでしょうか。

そうしないと、このyui という人のように、「思考の自由を奪い、選択の幅を縮め、硬直した政策しか生まない」ことになりますよ。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-9812.html

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山本太郎議員の天皇知らず 

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山本太郎議員の「直訴」があったようです。社民党を除き共産党を含むすべての政党から批判を受けています。 

まぁ、「政治行動」としてはとるに足らないもので、天皇陛下にそんなまねすんなよ、でお終いにすべきです。 

擁護者の皆さんは「平成の田中正造」と褒めそやしていますが、不敬罪という重罪下で、死刑覚悟で切羽詰まった直訴という道を選ぶしかなかった正造とは同列にすべくもありません。 

正造自身は、大変な尊皇家であって、直訴の前に議員を辞職して遺書を書いてから行動をとっています。その潔癖さが故に、彼の行動は多くの国民の共感を得ることができました。 

正造をいつでもどこででも自由に発言ができる山本氏の行為と比較するのは、対象を間違っています。

彼の今回のパーフォーマンスは、天皇を「最高権力者」と見立てて救済を請願した行為ですから、取りようによっては明治欽定憲法の天皇の地位を復活させたいようにすらとれます。

となると山本氏は、2.26事件における北一輝ばりの天皇による国家改造を志す政治家ということになりますから、もはや立派な極右政治家と呼んでもいいでしょう。

もちろんそれは冗談ですが、ほんものの極右である小林よしのり氏が山本氏に声援を送っているようなので、あながち冗談ではなかったりして。 

さて、一部の人が擁護しているように、この事件は脱原発を訴えたから批判を受けたというより、天皇を単なる「いちばんエライ人」ていどにしか認識していない耐えられない彼の軽さに、大部分の国民が不快感をもったのでしょうね。 

かつてイ・ミョンバク大統領が竹島に上陸して、その前後に「日王にひさざまづかせて謝罪させる」と発言したことが大きく取り上げられたことがありました。

反日が国是の韓国では天皇という呼称は日本如きが使うのはもったいない、日本の王、つまり日王と呼ぶべしと宣言しているようです。

それはともかく、その時のわが国は、イ大統領の「上陸」という政治的挑発よりも、天皇に対する土下座要求をしたことに反応しました。 

この「天皇」に対する日本人の民族的感性はなかなか外国人には説明が難しいのですが、日本という国や民族の奥深くにある尊いものを汚されたとでも表現したらいいのでしょうか。 

河合隼雄氏が興味深いことを書いています。 

河合氏はユング派の心理学者でしたが、ユングの深層心理学を学ぶうちに日本文化に根ざした心理療法にたどり着いた人です。 

彼は、その文脈で天皇が何かと考えたのですね。河合氏は、『中空構造の日本の深層』という本で、古事記から天皇をとらえていきます。 

彼は、天皇を外国の国王や皇帝と較べることが間違いではないかと思うようになります。 

では戦前言われたような「神」かといえば、これもまた違うのではないかとも思っています。 

日本でいう「神」は西欧的キリスト教の一神教的絶対神ではありません。 

古事記に描かれているように、多くの神々の中心に座していて、深く尊敬されているが権力を行使しない「神」が天皇なのです。 

「何かをする」のは、時の為政者たちであって、天皇は中心に座して祭祀を執り行い世の平安を祈念するわけです。 

ですから、よくある天皇に対する外国人の誤解は「日本の最高権力者」という上下関係で見てしまうことです。

マッカーサーなどは、わざわざ天皇とのツーショットに、無礼にも作業服を着て現れ、自分が天皇に代わる最高権力者であることを日本国民に分からせようとしました。

天皇とは、マッカーサーと権力争いするような存在ではなく、むしろ民族の深い内側にある祠のような場所におわす存在なのです。

韓国の「日王」呼ばわりも似た誤解から来ています。天皇はエンペラーでもゴッドでもないし、ましてやキングなどではないのです。

ですから、このような民族の深い魂の「中空」にある天皇に対して、それを利用して自分の主張を遂げようとする心根自体がわが国民の禁忌に触れるわけです。

山本議員は、法律に書いてないだろう、みたいな自己弁護を言っていますが、英国には明文憲法がなくコモンセンスが判断基軸になっていることを知らないようです。

なぜ人を殺してはいけないかという問いのようなもので、そのていどのことは常識で判断しろよ、という類のことです。 

「直訴」は内容的には、「福島の現実を知ってほしかった」そうですが、足繁く福島の避難者をお見舞いなさっている天皇に対して、放射能が怖くて最近まで行ったことさえなかった山本氏がとやかく言えた筋ではないでしょう。 

なお、山本氏が「救え」と主張している福島県南相馬の子供3200人の内部被曝の検査結果によれば、全員検出限界値以下でした。(欄外参照) 

私は、山本議員の辞職勧告決議には反対です。決議に強制力はありませんが、そんなことをすれば、彼は「脱原発の殉教者」に祭り上げられることでしょう。 

彼にふさわしいのは失笑なのですから。.

              。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

※「新党今はひとり」HPhttp://taro-yamamoto.jp/

福島・南相馬の子供3200人、異常なし・内部被曝を検査
日経新聞 13年9月24日
 

福島県南相馬市は24日、市内の小中学生を対象に内部被曝(ひばく)検査をした結果、受診した約3200人全員で放射性セシウムが検出限界以下だったと発表した。市内で日常の内部被曝は低く抑えられているとしている。  

 検査は市の学校検診の一環として、今年5~8月に市立総合病院などでホールボディーカウンターと呼ばれる装置を使って実施。市内の小中学校に通う3299人のうち、約98%の3255人が受診。セシウム134と同137が体内にどれくらいあるかを調べた。 

 検査を担当した市立総合病院の坪倉正治医師は「今後も継続的に検査する仕組みを整える必要がある」と話している。〔共同〕

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週末写真館  ひさしぶりの霞ヶ浦

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この数週間、ご無沙汰していた霞ヶ浦に行ってきました。毎日見てはいたのですが、じっくり写真を撮るのはひさしぶり。

湖は台風の大雨のために満タン状態。怖いくらいに水があふれていました。船溜まりも場所によっては桟橋が水没しているところもあり、出漁がむずかしそうで心が痛みます。

人の苦労をよそに、前回見なかったコガモの大群のご一行が来訪していました。2番目がよくわからないかもしれませんが、ご一行の朝食風景です。

夏の間はサギたち留鳥しかいなかったので、一気に湖がにぎやかになりました。

これから渡り鳥の来訪する季節に入ります。湖がもっとも輝く時期です。

写真は上3枚と、下から2枚目が早朝。後は夕方です。クリックすると大きくなりますので、ぜひ大きくしてご覧ください。

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ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(4) 前ドイツ送電網管理責任者は語る

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原発ゼロと一口で言ってもドイツとわが国では条件が違いました。

ドイツは
①停止させた原発は7基(後8基)で、17%の電源は原子力から供給されていた。
②再生可能エネルギーの拡大政策で、16%を依存していた。

一方日本は
①原発は規制委員会の審査終了まで2基で、事実上原発からの供給は途絶えていた。
②再生可能エネルギーは3%程度だった。

両国の条件はまさに互い違いで対照的ですね。

ではこのような条件で、原発(半数)停止後のドイツの電力供給はどのようなことになっていったのでしょうか。

結論から言えば、まるで薄氷の上を歩くようだと評されています。

2001年から11年間も連邦ネットワーク庁(BNA)長官をしてきたマティス・クルト氏(下写真)は、メルケル政権の脱原発政策のいわば大道具監督だったような人です。

連邦ネットワーク庁(BNA)とは、インターネットとは関係なく送電網のコントロールをしている官庁で、まさメルケル氏の原発停止後の最前線を担った部署です。

彼は原子炉が一挙に7基止まった時のことをこう述懐しています。

↑ Matthias Kurt氏

送電網の状態が不安定になり、大規模停電の危険性が以前に較べて高まりました」。

この時は一気に約7ギガワットも消滅したのですからハンパではありません。

このBNAは非常に強い権限をもっており、送電系統にトラブルが起きそうな場合、地方政府の許可なしで発電所を再稼働したり、逆に止めたりすることができます。

また再生可能エネルギーに対しても同等に強い権限を持っており、たとえば強風により風力発電量が異常に多い場合、その送電をカットすることもできます。

過剰な電流をそのまま流すと、送電ケーブルに負荷がかかりすぎて故障の原因になるからです。

2011年にBNAがこのような送電網への強制介入をした回数実に308日間で1000回に登りました。

これは脱原発政策以前の2003年にはたった3回にすぎなかったことを考えると、実に330倍です。

いかにFIT(固定全量買い取制度)で激増した再生可能エネルギーと、停止した7基の原子炉が大きな負担を送電網にかけているのかお分かりになると思います。

さて当時、経済活動の中心地であったドイツ南部のバイエルン市とバーデン・ヴュルテンベルク州は、原子炉が電力需要の半分を供給していましたから、これが一気にゼロとなるとその分をよそから引っ張ってこなければならなくなったわけです。

この時に両州の電力が枯渇状況となり、ドイツ南部の送電網は大混乱をきたしました。

ドイツ南部地帯は、ドイツ産業の心臓部で、日本で言えば、京浜工業地帯への送電が混乱したようなものです。

ここで停電でも起きようものなら天文学的損害が出るわけで、送電網の責任者であるクト氏は毎日生きた心地がしなかったでしょう

そしてこの「原子炉一気止め」の後に来たのが、再生可能エネルギーの不安定さでした。

それまでは、確かに再生可能エネルギーは増え続けて来ましたが、原子力と火力の安定供給で電力供給に支障が出ることはありませんでした。

しかしその片翼だった原発が半身不随になってしまったわけです。

今まで淡々と供給されてきた電気が、毎日、いや毎時刻みに刻々と変化をするのですから送電網管理者の側はたまったものではありません。

この恐怖を味わったBNAは対策を考えざるをえなくなりました。それは日本の夏場対策と対照的に、厳しいドイツの冬場対策でした。

2011年8月、冬を前にしてBNAはコールド・リザーブ(予備発電所)を用意したことを発表しました。

これは今までCO2問題で稼働を止めていた老朽石炭火力発電所を8基稼働させることにしたのです。

ドイツ南部とオーストリアで再稼働させることで、なんとか厳しい冬を乗り切ろうとしたわけです。

クルト元長官は、もっとも厳しいシミュレーションに基づいて供給を予測したと述べています。

つまり、毎日曇天が続き、おまけに風も吹かないという天気です。このような最悪シナリオを描かずに、原発をゼロにすることは自殺行為だからです。

このバックアップ用コールド・リザーブは作っておいてよかったのがすぐに証明されました。

12月8日には送電業者のテネット社がオーストリアの火力発電所からさっそく電気を購入して穴埋めをしています。

実はこの時、ドイツ北部では電気はやや余っており、おまけに強風で風車はブンブン回っていました。

しかし、かんじんのドイツ南部工業地帯への送電網の拡充が遅れていたために余っているのに送れないという悲喜劇のようなことが起きたのです。

翌年2012年は記録的な大寒波がヨーロッパ全域を襲いました。まさにBNAが予想していた「最悪シナリオ」です。

寒波により電力需要は毎日ピークを更新する反面、太陽光パネルは曇天と雨でまったく電気を作らず、風車も回らないという事態が現実のものとなったのでした。

この時のことをクルト元長官はこう述べています。
一部の地域で電力需要が予測を上回ったためにコールド・リザーブを投入しました。この時に送電網のどこかが故障していたら停電が発生していたでしょう。」

結局この2012年の大寒波は、在来型の石炭、褐炭、原子力が電力供給を支えきり、再生可能エネルギーの不安定さが改めて再認識された結果になりました。

よく太陽光発電の転換効率が高いという論者の中には、米国エネルギー省エネルギー情報局((DOE・EIA)の数値を引き合いに出す人がいます。

しかし、これは一年中雨の降らないネバダ州の砂漠地帯での数値だったりします。

現実にはこのドイツBNAのように「最悪シナリオ」を想定して現実の脱原発施策を考える必要があります。

昨日書いたように、北ドイツから南ドイツへ巨額の投資をして送電網を増設している最中ですが、なかなか建設用地が確保できず苦労しているようです。

現在ドイツは送電業者が電力停止をした場合に、損害を受けた企業は送電業者から年に最高6万ユーロ(600万円)の補償を受けられる制度を作っています。

これにより送電業者は年間1億ユーロ(100億円)ていどの追加資金が必要となり、これも電気料金に上乗せされていくことになります。

このような「脱原発大国ドイツ」の裏側を知り尽くしているクルト氏がやや皮肉に、自ら「早すぎる喝采」と言うのはなんとなく分る気がします。

ドイツはこの時原発を全面停止したわけではなく、6分の1の電源は原発が供給していました。

にもかかわらず、このような薄氷の事態か生まれたのです。

今、わが国は完全停止の状況ですが、この状況を永遠に固定化するために「原発ゼロだ。再生可能エネルギーで代替できる」という小泉氏のような人がいます。

これらの人は、11年の夏にドイツ以上の電力崩壊を乗り切った「日本のクルト氏」が大勢いたことを忘れています。

わが国の幸運は、原発停止の時点で、再生可能エネルギーの供給量が低かったことにより、崩壊と不安定が同時に襲ってこなかったことです。

このドイツと日本の経験から言えることは、原発の停止と、再生可能エネルギーの大規模導入を同時にやっては絶対にならないという教訓です。

■参考文献 主要国のエネルギー政策 - 資源エネルギー庁http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2011energyhtml/1-2-2.html

■関連過去ログhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-6147.html

※アップ後に改題いたしました。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

BNA元長官マティス・クルト氏インタビュー

「エネルギーシフトにのぞむにあたり、ドイツはここまでとてもよく対処しています。しかし、だから大丈夫と考えるのは早計です。厳しい冬を乗り越えた今だからこそ油断大敵で、気を引き締めてかからなければなければなりません。

エネルギーシフトの成功を喜ぶのは少し早すぎます。まだドイツの電力のおよそ6分の1は原発によるものです。エネルギーシフトの本当の試練は、これらの原発を稼働停止しはじめてから始まるのです。われわれは、今後10年かけて大変な問題に取り組んでいかなくてはなりません

自然エネルギー施設の拡充方針に反対する人はいません。しかし問題は建設地の確保で、特に南ドイツでは不足しています。現在建設中の発電所では不十分なのです。すべての関係者には、この冬の経験を通じて新規建設の必要性を認識して欲しいと思います。

今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです

極度の寒波とガス輸送の停滞により、予想を超えた困難に直面しました。…非常に逼迫した状況で、数日間は予備電力に頼らねばなりませんでした。万が一の場合もう後がないわけで、極めて異例な措置でした。」
(フランクフルター・アルゲマイネ紙)

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