LNGは最大期待エネルギー源、でも問題は山積
今日の書き込みにもありましたが、なにがデータ根拠か知りませんが、あいかわらず「実際に福島では、人が死んでいたり、白血病になっていたり、歯茎から血が止まらなかったり」なんていう極端な認識の人もいるようです。
あの、歯茎から血が止まらなかったら歯槽膿漏ですから、歯医者にお行きなさい。
避難による苦悩で亡くなったお気の毒な人は多数いますが、放射能が原因で亡くなった人がいたらぜひお教えください。
こういう風評を流す人のネタ元サイトは、行ってみればほぼすべての情報が、「隠された真実の○○」とか、「ある自治体で秘かに進む○○」とか、「○○という恐ろしい話を聞いた」、「実はもう既に・・・」という類のネット伝聞にすぎません。
ほんとうの一次情報は皆無か、あってもバイアスがかかっています。
出所すら不明なスパム伝聞をかき集めて、脅えた挙げ句ストレスで体調を崩すのは勝手ですが、おひとりでどうぞ。
何度か言って来ていますが、福島事故を「知る」ということと、原発の是非は次元がちがう問題です。福島事故を過大に煽れば、原発がなくなるわけではありません。
この当たり前のことか分からずに、過激にトンデモ発言すればするほど自分が純正な脱原発派だと勘違いしている人たちか多すぎます。
現在福島では、地道な医療関係者によるホールボディカウンターによる検診や、各自治体によるバッチテストなどが継続されています。
その結果はいずれも、「放射性セシウムが検出限界以下」(南相馬病院坪倉医師)、「66.3%が1ミリシーベルト未満」(伊達市)です。
今後も継続して健康診断をする警戒看視体制は必要ですが、事故直後ならまだしも今でも「チェリノブイリの10倍だ」というようなことを言うことは、まったくナンセンスです。
トンデモ情報ではなく真面目に放射能のことを知りたければ、佐藤順一氏の作った「放射について学ぼう」を一読してください。必要充分な知識が理路整然と学べます。※http://dl.dropboxusercontent.com/u/47386394/
すいません、前置きが長くなりました。本題に行きます。
さて天然ガスはおそらく原発の代替エネルギーのメーンストリームになるはずです。
その理由は、バランスのいいエネルギー源だからです。(欄外参照)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-c6d3.html
現在、わが国はLNG(Liquefied Natural Gas 液化天然ガス)の形だけで輸入しており、わが国は世界の4割を占める需要大国です。
LNGは天然ガスを液化したものであり、面倒なことには液化して専用船で運んで陸揚げし再ガス化する手間がかかります。
(下図参照 資源エネルギー庁による)
ところがあいにくなことには、天然ガスの7%程度しかLNG化されていません。
そのためにわが国の天然ガス事情は、国際市場価格が高止まりしている、海上輸送のコストがかかる、液化の手間がかかるといった三重苦にあえいでいます。
このボトルネックのために、LNGの取引量は天然ガス全体の7%にすぎず、石油や天然ガスに較べて世界市場は小さいのです。
これが原発ゼロとなった現在ズシッと日本経済の肩にのしかかっています。
一方LNGと違って天然ガスは、パイプラインでガス体のまま消費地に輸送されるのか大部分です。
ですからユーラシア大陸には天然ガスパイプラインが張り巡らされています。
(下図参照 JOGMEC・独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構による クリックすると大きくなります)
上図を見ると、天然ガスパイプラインの源はロシアだとお分かりになるでしょう。それはロシアが世界最大の天然ガス生産国だからです。
(下図 資源エネルギー庁)
天然ガスが直接輸入できれば、これ以上いいことはないわけですか、実は日本は今まで石油に頼ったエネルギー供給をしていたために、パイプラインが未発達です。
上のユーラシア大陸パイプライン地図を見ると、サハリンから北海道までは点線となって計画しているが未開通だとわかります。
今まで天然ガスのネックになっていたのは、日本まで来るパイプラインがないこと、国内のガスパイプラインの未整備、原油と連動する価格体系でした。
しかしこれも、現在急速にパイプラインの建設が進んでいます。
新潟-富山、彦根(滋賀県)-四日市(三重県)でパイプラインの敷設が進み、これを敦賀(福井県)まで延ばして、日本海側と太平洋側をつなぐ新たなエネルギーの動脈にできないかと経済産業省は考えています。
このガス・パイプラインの建設コストは、送電網建設よりはるかに安価であり、天然ガス・プラントが一基稼働すれば直ぐに採算がとれるとさえ言われています。
パイプラインの鋼管作りの技術は、わが国鉄鋼業のお家芸でしたが、外国ばかりで自国に作っていなかっただけです。
また、今まで原油価格と連動してきた価格体系も、米国で「シェールガス革命」が起きて世界のエネルギー地図が急速に塗り替わった結果、大きな変化のきざしが現れています。
米国のシェールガス革命に危機感をもったロシアは、東シベリアとサハリンの天然ガスを日本に安価で輸出することに前向きになっています。
天然ガス・プラント自体も、三菱重工が製造するガス・コンバインドサイクルを使用すればエネルギー効率が従来の2倍の6割にも達し、同じ燃料で2倍の発電量が得られます。
このように、天然ガスは国内の受け入れ基盤の整備、外国の供給事情の好転、発電プラントの技術革新などが立て続けに起きた結果、次代の主力エネルギー源とする条件は急速に整いつつあります。
問題はむしろ海外からのパイプラインです。それについては次回に。 .
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■テルツァキアンの判定項目は以下です。
①汎用性 ・・・どんな用途にでも利用可能
②量的柔軟性 ・・・微細にでも巨大にでも調整可能
③貯蔵性・運搬性 ・・・自在に移動することが可能
④ユビキタス性 ・・・時期と場所を選ばない
⑤エネルギー量 ・・・面積・体積・重量当たりのエネルギー量
⑥出力密度 ・・・時間当たりのエネルギー量
⑦出力安定性 ・・・エネルギー出力の安定性
⑧環境負荷 ・・・CO2や窒素酸化物・硫黄酸化物などの排出量
⑨供給安全保障 ・・・産出地の政治的安定性
これに私は「事故時の危険度」と「副産物」を加えています。
■参考文献
※ロシアから極東向けパイプライン が始動する - JOGMEC 石油・天然ガス ...(PDF)
※5 グローバル化するLNG市場 資源エネルギー庁ーhttp://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/1-2-1-5.html
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コメント
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我が国は島国て1億人を越す人口ですから、その時点で既に大きなハンディキャップがあります。
シーレーン確保やパイプライン敷設といった課題もありますね。
だからこそイランを含む中東とは良好な関係を保ちつつ、アメリカとの同盟という巧みな外交をしてきたわけです。
中国はどうしたいのやら。
投稿: 山形 | 2013年11月29日 (金) 09時48分