原発ゼロ政策が核武装計画と勘ぐられないために
わが国には、原爆5千発分の材料があります、というと驚かれる人が多いでしょう。しかし、このイランや北朝鮮がみたらヨダレを流すようなプルトニウムを日本は44トンも保管しています。
ただし、日本のこの厖大なフルトニウムの保持は、わが国が核サイクルを稼働させて循環することを前提にしてのみ認められています。
このことを小泉さんもかつての民主党政権も分かっていませんでした。素人同然の民主党ならともかく、6年間という長期政権をやっていた小泉さんが知らないのは問題ですね。
米国はいかなる政権も、核の拡散を容認してきませんでした。その原料となるプルトニウムは保管することすら許されていなかったのです。
今イランが、プルトニウムを作ろうとしてどれほどの国際的摩擦に遭遇しているのか見ればわかるでしょう。
この米国のような核保有国が作る核兵器クラブがIAEA(国際原子力機関)で、その重要な役割のひとつは、プルトニウムの厳格な管理です。
だから六ヶ所村の日本原子力燃料にも、IAEAの係官が常駐して監視体制を敷いています。
わが国で核爆弾5000発分ものプルトニウムを保管できるのは、この六ヶ所村の中間貯蔵施設の先の核サイクル施設が稼働できるという目標があるからです。
そしてこの核サイクル施設自体が、活断層や施設としての危険が明らかになり、稼働が怪しまれています。
これも規制委員会の審査を待つべきでしょうが、その結果次第でわが国は重大な外交的問題の岐路に直面することになります。
というのは、2012年に民主党政府要人が「原発ゼロ」を掲げて真っ先に飛んでいったのはワシントンだったというのはご存じでしょうか。
そこで彼ら民主党政権の政治家たちは、思わぬ手荒い歓迎を受けたと言われています。
米国側は、「原発ゼロ」が核燃料サイクルの中止を意味するのかと問うたとされています。
つまり、核燃料サイクルをせずに保管を続けることは、日本が核爆弾を作るという宣言と同義だと、米国側は捉えているのです。
それ以前に民主党政権は、ハト首相が東アジア共同体構想や、普天間問題などを言い出していましたので、米国側は日本の中国寄り核武装自立防衛路線の準備とまで疑ったようです。
おいおいハトさんにはそんな深慮遠望はないぜ、と思うのは日本人だけで、核サイクル施設の中止と原発ゼロ路線は、最終処分問題のきちんとした方針かない限り、核武装計画と同じと国際社会では受け止められるのです。
わが国は、国際社会から世界有数の工業国として技術的には原爆製造やその投射手段(高精度誘導ミサイル)まで保有していると思われていますから尚更、痛くない腹を探られるべきではありません。
小泉さんは、例によって深く考えずに、「原発ゼロ、核燃料サイクル中止」とまで日本記者クラブの講演で断言しました。
しかしこのような言説が、米国に「日本の核武装化」という懸念を与えることを、「日本一の親米派」であるはずの彼は考えなかったようです。どうしてあの御仁はこうも軽いのか!
たしかにドイツは脱原発を宣言しました。なぜ国際合意(といっても主に米国です)がすんなり出来たのかおわかりでしょうか。
それはドイツが「核武装」しているからです。え、と思われるかもしれませんが、ドイツはNATO加盟国として米国からニュークリア・シェアリングという形で核兵器を借りているからです。
平時においては、核兵器非保有国内に備蓄された核兵器は、米軍により防衛され、核兵器を起動する暗号コードは、アメリカのコントロール下におかれます。
しかし有事においては、核兵器は参加国の軍用機に搭載されて(この場合ドイツ軍)攻撃に使用される手筈です。このような仕組みがあるために ドイツは独自に核保有する必要がありません。
わが国とは根本的に核兵器のあり方が違うドイツを手本にできないのです。
ですから、わが国にとって核兵器転用可能なプルトニウム44トンの保管方法は、単に国内政治問題だけではなく、国際問題としても重要な問題だと認識すべきです。
だからこそ、核燃料サイクル施設を中止させるなら、なおさら最終処分方法を明確化せねばならないわけです。
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※ 日本学術会議の骨子は以下です。
① 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し
② 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
③ 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
④ 負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性
⑤ 討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性
⑥ 問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識
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コメント
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私もだいぶ前にコメントしたことがあったと思いますが、脱原発急進派の方々ってIAEAとNPTに関してスッポリと抜けたまま今に至ってますね…。
投稿: 山形 | 2013年11月21日 (木) 06時33分
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=07-02-01-04
米国アルゴース国立研究所が、1984年に、実験炉
を、開発、運用した IFR原型炉システムを、プラント化した、EBR2やその後継原発プラントに
ついて、管理人さまのご意見を、伺いたいのですが、
お願いします。
第4世代軽水炉は、日本のような地震国でも、有効性が あるのでしょうか?
いちおう、論文上は、自動スクラム安全装置以外に
第1次メルトダウンや全電源喪失後も、原子炉の自動停止(今は、圧力容器の破損を考えて、中央制御室で、各センサーの情報が、正しいと考えて、手動で、ゆっくり冷却すると言うのが、福島第1のBWRでは、
一般的な作業手順ですので、自動で、水温100度以下には、冷却できないのが、初期型BWRと聞いております。
なお、IFR軽水炉は、そのプラント内での燃料棒再処理システムを持っているので、高濃度放射線廃棄物の量は、かなり少なくなるようです。
第4世代原子炉が、第1世代原子炉より、安全性が、高いなら、40年と言う設計耐用年数を超えた原子炉は、水素爆発する前に、第4世代軽水炉に、切り替えた方が、再稼働するより、安全性が、高いかもしれないし、コストも、BWRの年1度の点検時に、第1世代を廃炉にして、第4世代に、移行すれば、最終的に、原発ゼロにしていくのに、つなぎの安定的電力供給プラントとして、ありえる話だとおもいますが、どうなんでしょうか?
ある意味、再稼働より、新設の方が、コスト的にも、安全度も、メリットが、あるかもしれないですよね。
残念ながら、第4世代軽水炉については、よく解らないのが、現在の私です。
電力会社が、再稼働に、熱心なのは、経営上の問題であって、安全、安心の問題では、ありませんし、
今のまま、50基の原発を停止させていても、燃料棒を冷却しつづけることも、冷却不能に陥って、水素爆発する可能性も、同じレベルで、危険性を、内包しているのが、現実ですよね。
投稿: りぼん。 | 2013年11月21日 (木) 09時16分
第4世代炉が実証段階から実用段階に入ってきています。問題はわが国で有効かということですが、もちろん非常に有効でしょう。もし第4世代炉ならば、あの事故はなかったでしょう。
ならば積極的にリプレイス(置換)すべきでしょうが、それを阻むのが国民感情とバックエンド問題です。
ここでもわが国のかかえる、では廃炉にした旧式炉をどうするのか、その最終処分地まで含めた廃炉技術が確立されているのかという問題につきあたります。
鶏が先か卵が先かですが、私は卵、つまりバックエンド問題の解決なきニワトリはないと思っています。
投稿: 管理人 | 2013年11月22日 (金) 14時19分