« ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(9) 再エネはとんだ自己チュウだった | トップページ | 小泉さん、あいかわらずハッタリばかり »

ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(10) FITで守られた再エネによる電力業界の混乱と疲弊

312
みんなの党が選挙公約(アジェンダだったっけか。わかんない言葉を使わないでね)で、再エネ(再生可能エネルギー)を「50年までに8割」などと無知なことを言っていますが、電力構造的に絶対に無理です。

渡辺さんはチャーチルが海軍大臣時代に言った有名な言葉を知らないみたいですね。

これはエネルギー論の第1章1節に出てくるような言葉で、少なくとも脱原発というエネルギー問題を論じようとする人は絶対に知っておかねばならない言葉です。

至って短いので、直ぐに覚えられますよ。

供給安定保障の要諦は、一に多様化、二に多様化、三に多様化

エネルギー源を何かひとつのものに頼っていると、それが国際政治や経済の影響、あるいは事故でポシゃったらパーになります。

だから電源や、供給源(供給国)はできるだけ多角化しておかねばなりません。 

フランスのように半分以上のエネルギー源を原子力に依存するのも問題ですが、かといって8割を再生可能エネルギーにしたら、目も当てられません。 

本気でそんなことをしたら、真夏の6時から9時に頻繁に停電が繰り返されることになります。

その大きな理由は先日から何回か述べたように、電力というのはその時間の消費と生産がぴったりとマッチングしていなければならないからです。 

たしかに小泉さん言うように蓄電技術は存在しますし、電力会社、自動車会社、住宅メーカーなどは多額の研究費をかけています。

しかし今の10倍の蓄電能力をもつようになったとしても、24時間火力を運転するほうがはるかに安く上がるのです。

仮に天候任せの再エネ(再生可能エネルギー)が8割を占めたら、系統送電網はガタガタになり停電が頻発してしまいます。

つまり、火力による出力調整機能があってこその再エネなので、再生可能エネルギーを8割も大量導入した場合は、需給バランスの維持が不可能になってしまうのです。 

また、逆に再エネの尻拭いを強制させられている既存の火力は、再エネ発電所がダウンした時と、夜だけ動いてくれればいいということですが、そんな虫のいい条件なんかアリでしょうか、ということです。

現実にはこんなふうに1時間ごとに出力がジグザグするような場合、その都度、出力増加(ランプアップ)、出力低下(ランプダウン)をするわけにはいきません。 

なぜなら、そんなことを1時間ごとにおこなっていたら手間と経費がかかり過ぎてバックアップ発電所はそのためのコストのほうがかかってしまうからです。 

では、どうするのでしょうか。 ヨーロッパではこうしています。

ドイツの場合、再エネの電力は、電力卸市場(EEX)に全量売ることが定められています。(下図参照 クリックすると大きくなります)

Photo

図 再生可能エネルギー大量導入時の火力発電所の運用
(経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会第23回資料 「再生可能エネルギーを巡る事実関係」2012年5月)

通常の発電業者は、電力系統の運用者に運転計画を提出し、計画不履行の場合、罰金を食います。

そこで、再エネのバックアップをする火力発電所は、その増減を見越して、あらかじめ「ネガティブ・プライス」としてその出力低下分の費用をマイナス計上してしまうのです。 

たとえばドイツなどでは発電量に応じて、あらかじめ「マイナス10ユーロセント/kWhを、いわば「罰金」として支払っています。

しかし、優先的に系統電源に給電される再エネのほうは、FITの固定価格制度に守られて本来、卸電力市場の常識である「ネガティブ・プライス」を支払う必要がありません。 

つまり、再エネは天候に左右される不安定な発電しかできないにもかかわらず
まずは、
優先的に系統送電網に給電できる資格をもち
かつ、他電源のバックアップ発電所を常に必要
さらに、固定買い取り制度に優遇されてネガティブ・プライス支払う必要がない

しかも、市場相場の倍の固定価格で全量買い取ってもらえる

という4重の優遇措置を受けていることになります。まったく、おいおいの存在なのがお分かりいただけましたか。

間違いなく既存の買電事業者は、再エネ事業者のことを、親(国)にベタベタに甘やかされた出来の悪いパラサイト・シングルみたいに見ているでしょうね。

再エネのことを「間欠性電源」と呼ぶ場合がありますが、これは通常の恒常的電源供給者からの痛烈な皮肉が込められています。

電源が間欠、つまりできたり出来なかったりするなんて、中世ならいざ知らず現代ではありえませんもんね。こんなもんはまっとうな電源じゃない、と既存の発電業界は言っているわけてす。

「間欠性電源業者」がリスクを負わないという性格は、送電部門も手を焼いています。

電力卸売市場に参加している送電業者にとっては(※ドイツは発送電分離しています)、泣いても笑っても再エネを全量買い込む義務ができてしまいました。そのため売り損も相当でています。

たとえば、風が吹く好天の休日にガンガン再生エネルギーが発電してしまい、火力を全部止めても間に合わず、丸損承知で買わざるを得なかった電力を小売りに叩き売るなどということが現実に起きているわけです。

なんと素晴らしくも、考え抜かれた不平等な制度でしょうか! 

エネルギー問題の専門家である、マサチューセッツ工科大学教授リチャード・シュマレンジャーはこう述べています。 

固定価格買い取り制度は電力需給に一致に関するすべてのリスクを、他の市場参加者に押しつけてしまった。」

どうしてこんなにドイツは、再エネを市場メカニズムの「外」に遠ざけてしまったのかため息が出ます。 

これでは再エネが増加するほど、ドイツ人は不幸になるに決まっているではありませんか。

実際、ドイツなどではバカバカしくて火力発電所などやっていられるかという発電業者が増えた結果、既存火力発電所には投資インセンティブ(意欲)が激減していき、メンテナンスさえもままならなくなりました

いかに再エネが、FIT(フィードインタリフ・全量固定価格買い取り制度)という鎧で守られている限りわがまま放題の乱入者かお分かりいただけたかと思います。

本来電力需給と原料需給という市場メカニスムで運用されるべき電力市場が大きく歪められているのです。

このようなFITというひいきの引き倒しのようなシステムを作れば、かえって再エネの健全な発展を阻害し、社会のやっかいものにさせてしまうことになるのです。

私は、再エネに限らず新たなエネルギー源は、初期に多少の面倒は見てやっても、それは速やかに終わらせ、通常の市場競争の中に置くべきだと考えています。

そうすれば、自ずとなにが使える新エネルギーなのか分かってくるはずです。

ところがドイツのように甘ったれたFITを長期間続けると、補助金を貰って当たり前となってしまい自立したエネルギー源に育っていかなくなります。

このようなことにひとこともふれず、「脱原発」と再エネをムード的に叫んで、○○年後には脱原発だ、再エネ8割だと言う人たちは信じるに値しません。一度頭を分解掃除したらいかがでしょうか。

※参考文献「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」 

|

« ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(9) 再エネはとんだ自己チュウだった | トップページ | 小泉さん、あいかわらずハッタリばかり »

原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

国家のエネルギーの根幹である電力を、投機対象にしてしまうようなFIT制度そのものが根本的に間違っていると思います。

以前の記事のコメントでも散々「自由競争」を主張する方が、こんな不平等を批判しないのが不思議で仕方ないですね。

私もいきなり「頭のおかしい人」とか「東電の犬」などとそれこそ馬鹿馬鹿しい中傷を受けましたが、ただの無知なのか、それとも孫さんのような政商の犬なんでしょうかね?

投稿: 山形 | 2013年11月13日 (水) 08時45分

茨城県 原発停止中も核燃料税課税へ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131113/k10013029251000.html
茨城県東海村にある東海第二原子力発電所が、震災以降、運転再開の見通しが立たなくなっているなか、茨城県は、原発が運転していなくても電力事業者に「核燃料税」を課税できる制度を来年度から導入する方針を固めました。

>管理人さんは茨城県民ですがどうお考えなのでしょうか。

投稿: エステル | 2013年11月13日 (水) 20時52分

エステルさん、私は茨城県民ではありませんがコメントさせてください。

昨日13日、総務省は鹿児島県薩摩川内市が求めていた川内原発の使用済核燃料税の5年間の延長に同意しています。税率は1体あたり25万円で、年間3億9200万円になるそうです。

核燃料棒は運転停止中でも周辺自治体にとっては危険なものです。もし、今まで課税できなかったのなら、その方が問題なのではないでしょうか?
使用済核燃料に課税できるのですから、停止中でも核燃料棒への課税を求めるのは、至極当たり前だと思います。

投稿: 南の島 | 2013年11月14日 (木) 09時25分

小泉氏の発言のすべてを、良しとは、しませんが、
このまま、根拠もなく、安全宣言をして、さらに、設計耐用年数を超え、さらに、40年実用稼働させることには、反対ですね。

今の安倍政権では、ベトナムやトルコに対して、三菱系のPWRを売り込むそうですから、輸出する以上、再稼働を認めることになるでしょうね。

BWRマーク1は、米国の設計者自身が、欠陥設計と認めている訳ですし、仮に、安全性を、国内50基で、点数化すれば、安全性か、危険性かは、ともかく、序列ができるのは、明白で、現状の送電網を使う以上、発送電分離したところで、コスト問題と、安全問題を、天秤にかけて、当面は、いくつかの原発を、動かすことや、動かしながら、廃炉技術を確立させないと、
すでに、地上にある、第2使用済み燃料棒保管プールも、数年で、満杯になるはずですので、再稼働しなくても、中間保管施設は、どこかに、新築しない限り、
とても、50基全部を、あと40年、使い続けることは、無理でしょうね。

どちらみち、AWRの格納容器は、欠陥があることが、わかっているのですし、廃炉費用も、水素爆発していない原発の方が、福島の4基より、費用が、安いことは、解っているので、すでに、実用化されている石炭ガスタービン発電や、地形的に、優位性がある地熱発電や、海水温度差発電など、太陽光のような、もともと、宇宙空間での発電のために開発された、小規模発電に、頼るのでない、時代ごとのベストミックスを、実施していただくのが、個人的希望ですね。
太陽光は、いわゆる原発事故の責任回避として、政治家が、飛びついただけで、国家全体のエネルギー政策なしで、今後のエネルギーを決めることは、情けないと思えます。

安倍政権では、国家が、一時的に、経済安定できるかもしれませんが、衆議院、参議院とも、与党優位ですので、牽制球としての発言は、あっても良いと思えます。

もう、すべての役人は、まともな安全指針を持てないまま、財務省の意向で、再稼働に向かっているのでしょうから、責めて、安全率の高い原発から、稼働すべきなんでしょうが、今、各電力会社は、安全面の不備があるものも、最低、減価償却期間は、稼働させたいと言う、本末転倒な申請をしているので、もうすこし、まともな議論をしてほしいのですが、、国家機密指定になれば、全部、再稼働することに、なるかもしれないと言う危機感は、ありますが。。。

いますぐ、50基全部に、再稼働を与えるのも、どうかと、思いますがね。

投稿: りぼん。 | 2013年11月14日 (木) 18時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ドイツの脱原発は隣の家の青い芝(9) 再エネはとんだ自己チュウだった | トップページ | 小泉さん、あいかわらずハッタリばかり »