続小泉劇場その2 薄氷上の焚き火 電力供給
しかし残念なことには、肝心の彼の「ワンフレーズ脱原発」の中身は眼を覆うほど空疎なものです。
小泉さんは、「即ゼロがいい。その方が企業も国民も様々な専門家も準備が出来る」 と言っています。
できてませんよ。今の電力供給は薄氷の上で焚き火しているようなものです。
(写真 武豊2号機 遠藤巧 「現場千本ノック」より)
上の写真は3.11以降に無理矢理に再稼働された武豊火力発電所です。激しく老朽化しているのが分かります。
全体に錆が浮き、排気ダクトもツギハギだらけ、まるで壊れたロボットのようです。
このダクトは長年使用していなかったためにこんな状態なのです。それがいきなりの電力不足で、もうスクラップを待っていた発電所はいきなり操業を急がされました。
もはや全面的改修などする時間の余裕もなく、ダクトから火を吹けば応急パッチで塞いでいるような状態です。
このようなスクラップになる予定の老朽火力を再稼働して、どうにか電力供給を続けているのが、今の日本の現状なのです。
現在の予備電源率は10%を割り込んで、関西電力など去年夏前にマイナスになる可能性すらありました。
「関西では、大飯原発3、4号機(計236万キロワット、福井県)が今月中旬までに稼働停止した。自社電源のみでは予備率がマイナスになる可能性があったが、他電力会社からの融通などで供給力を積み増し、電力需給が最も厳しい来年2月でも3%を上回る予備率を確保する。」(産経新聞13年9月29日)
このような電力の予備率が極端に薄い状況で、もし一基の火力発電が大規模故障した場合ブラックアウト(長期広域停電)もありえる状況だといってよいでしょう。
現に、2012年2月3日、九州電力の新大分火力発電所(大分県大分市)のトラブルで計13台の発電機が一時停止し、東京、中部、北陸、関西、中国、四国の6電力会社から計240万kWに及ぶ電力の緊急融通を受けています。
ところが、この緊急融通した中部電力自身も薄氷状態だったのです。
「九州電力に電力の緊急融通を実施したこの日、中部電力では予備率が一時的に3.5%まで下がる恐れがありました。供給力に直せば、わずか80万kW程度。これはたとえていえば、ジェット機が海面スレスレを飛んでいるような危機と紙一重の状態です」(武豊発電所所長永崎重文氏)
中部電力には80万kW以上の火力発電機が6基あるが、当日、一つでも故障していたら、ブラックアウト(広域大規模停電)につながりかねない事態であったそうです。
「電気は原発を止めてもたっぷりある」というのは神話にすぎません。もう少し現実をしっかりと見るべきです。
ある電力会社の火力発電所にはそこかしこに、「負けないぞ」という標語が貼られているそうです。
なにが「企業も準備できる」ですか。もうとっくに現場の電力マンは死力を尽くして電力供給を支えているのですよ。
これが「原発ゼロ」の現実です。口で原発ゼロを叫ぶのは簡単です。しかし、どうやって原発が抜けた穴をふさぐのか代案を示して下さい。
今のような綱渡りはいつまでも続きません。代案を示すのが政治家の仕事ではないのですか。
私は、北海道と東北7県を合わせた中規模国家並の電力を食いまくっている東京都にだけは脱原発を言われたくはありません。
他県の火力発電所で生活を支えてもらっていながら、「東京から脱原発を発信」もないものです。身勝手にもほどがあります。
そこまで原発ゼロをやりたいのなら、東京都各区に一基の火力発電所を建設してエネルギー自給をしてからにしてください。
さて、それにしても細川氏という人は首相在任中に 真夜中に突然記者会見を開いて「国民福祉税7%」と消費税増税をブチ上げ、根拠を問われると「腰だめ」と答えて失笑を買って辞めた隠れもないルーピーです。
あの時は、陰で小沢氏の振り付けどおりに踊ったわけですが、今度は小泉氏が振付師ですか。
おそらく間違って知事に就任してしまえば、1億円不正疑惑を蒸し返されて短期で辞任に追い込まれるのでしょうが。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-c2a3.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-8f29.html
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コメント
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細川さんと言えば、華々しくデビューしたのもつかの間、夜中の記者会見と短命首相と言う印象しかありません。御殿様も陶芸に専念していれば良いものを、何の為に復活してきたのか判りません。
小泉さんも同じで、政界を離れた人間が何が目的か目立とうとするのか?何かやりたいなら、首相時代にやり残した物があるのなら、もう一度政界復帰すれば良いのであって、ただ目立とうとする意図しか感じられません。
脱原発・・・良いでしょう!!でもそれを言うなら、管理人様が仰る通り、都内各区に発電所を作るから、脱原発に向かう・・・くらいの実現の可否はともかく具体的な方策を示して欲しいですね。
他県頼りのエネルギー構造を解消してからの話でしょう。
ただ、マスコミは大喜びでしょう。話題性はグッとアップしたと思います。風に流されやすい日本人ですから、大風が吹けば一気になびくかも知れません。
投稿: 北海道 | 2014年1月14日 (火) 09時16分
火力だけとは言わないまでも、アニメの世界のように東京都は全面太陽光パネルと風車だらけ(コンバーターや蓄電池がどうなってるのか知らんけど)、にすることを実現してから論議すべきネタですな(苦笑)。
少なくとも福島や新潟の原発の電力に依存し続け、山間部のこれまた奥只見や田子倉といった巨大な水力発電ダムに頼ってきたからこその、東京の繁栄です。
口だけで「政治が決断すれば可能」なんてバカでもいえますよ。菅さんのFIT大優遇みたいに(笑)。
小泉さんはとんでもない間違いをしているようですが、日本にオンカロのような施設や海外も含めて代替施設となるものを実現するまで、それに合わせて23区内に原発を新設してはいかがでしょうか?
少なくとも福島や新潟といった東北電力管内からの電力融通なんかいりませんよね。
接続は当然切らせていただくのが前提で構わないですよね!
ブラックアウトの恐怖?
ああ、私達は2011.3.11夜の東北全域停電を体験していますから。
できれば東京も1度体験なさってはいかが?
時折余震が続く中で電池が切れるまでのワンセグや、まだアナログだった小型テレビ。
ラジオから入る不明確ながら「これまでにない酷いことが起きている」とは理解しながらも、深夜のさめざめとした快晴の星空は、感動的な美しさでしたよ!
投稿: 山形 | 2014年1月14日 (火) 11時30分
だいぶ遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
私は東京都が脱原発目指すのは大賛成です。
素人の意見なのでコスト等は深く考えていませんが・・・
東京湾の埋立地に最新式の火力発電所を建設して、東京都の電力を100%自給してもらいたいです。
東京都は太平洋に広大な海を持っています。
メタンハイドレートがあるそうです。
都の予算をつぎ込んで電力のみならずエネルギーの完全自給を目指してもらいたいものです。
冷やかしで言ってはいませんよ。
できるのであれば、都の政策として是非とも実現して欲しいです。
投稿: 南の島 | 2014年1月14日 (火) 19時15分
「原発問題は国政の課題であって都知事にはなんの権限もない」という意見に反論の余地はありませんが、であるならば現政府は一刻も早くエネルギー政策の具体的な道筋を国民、そして世界に宣言するべきではないでしょうか。それがあって初めて再稼働が必要か否か、必要であればどこをいつまで動かすのか、再生可能エネルギーはどのように取り入れる事が得策なのか、といった個々の具体的な議論をする場が様々なレベルで作られていくのだと思います。今の安倍政権を見ていると、既得権益を得るためのモンスターシステムを維持するために再稼働させたくて仕方が無いという感じがしてなりません。震災からもうすぐ3年が経とうというのに、未だ”ゼロか推進か”という思考停止状態にはいい加減飽きました。個人的には「即ゼロ」発言に目を瞑りさえすれば、今回の小泉さんの「脱原発」発言はそれなりに意味のあることだと思います。
一昨年の衆院選以降、一日も欠かす事無く拝読させて頂いております。
本年も宜しくお願い致します。
投稿: 神奈川都民 | 2014年1月15日 (水) 02時12分
北海道様。年賀状を賜りありがとうございました。
遅れましてお恥ずかしいかぎりです。私はブログではダラダラ書くくせに、ペンで書くのが大の苦手という困った奴です。
改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
神奈川都民様。初めまして。今後ともよろしくお願いいたします。またの投稿をお待ちしております。
投稿: 管理人 | 2014年1月15日 (水) 03時57分