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TPPと日米関係変容の予兆 

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TPPが外交問題的側面を持っているのは間違いありませんが、それがどのように米国の外交政策と関わっているのでしょうか。

よく推進派から聞かされたTPP推進の理由に、「あれは中国包囲網の経済版だ。参加しないと米国との同盟も危なくなるぞ」というものがありました。

私はいつも内心ウソつけと思っていたのは、果たしてオバマに外交戦略といえるようなものがあるのかという疑問からでした。

オバマの外交的軌跡を見る限り、彼には外交的定見が見当らないような気がしたからです。しかし最近になって、ようやく見えて来たような気がします。

オバマには「定見がない」のではなく、「定見がふたつある」のです。

第1期オバマ政権のヒラリー・クリントン国務長官は、原則的に中国に対応していました。

しかし第2期に入り、それがジョン・ケリーに替わり、安全保障大統領補佐官もスーザン・ライス大統領補佐官に替わると変化が始まりました。(※ライス補佐官はブッシュ時代のコンドリー・ライス補佐官とは別人)

12013年11月、2014年1月の2回に渡って、ライスはこのような外交概念を使い始めます。(欄外資料1参照)

(米中2カ国の)新たな大国関係」

この「新たな大国関係」という概念は、中国の使う「G2」という考え方と平仄があってます。

補佐官の発言は大統領と同一と見なされるので、オバマもまたG2的考えの持ち主だと分かります。

別な機会に、オバマはこう言っています。

米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」(2013年9月10日シリア問題に対するテレビ演説における発言)

2013年12月に訪中したバイデン副大統領は、中国の防空識別圏については一切言及せずににこう習に述べています。

米中関係は21世紀で最も重要な2国間関係であり、この2国は信頼と積極的な意志に基づいて行動しなければならない

この一連の米国政府中枢の発言を総合すると、オバマはこう考え始めています。

①米国は、世界秩序の保護者(「警察官」)であることを止める
②中国との「新たな大国関係」(G2)を作る

では一体このG2とはなんなのでしょうか?

それはひと言でいえば、米国が中国を「敵」ではなく、大国のパートナーと認め、国際社会で互いに密接なステークホルダー(責任ある利害共有者)となっていこうという米国の新たな外交政策のことです。

実は、この「新たな大国関係」という外交概念は去年初めて登場したものではありません。

オバマは既に、2012年の大統領選の折に共和党候補ロムニーとの外交討論の時にこう述べています。

中国は米国にとってアバーサリー( 敵)であり、同時にポテンシャル・パートナー( 潜在的パートナー)

オバマのこの考えには原型があります。それはズビグニュー・ブレジンスキー(カーター大統領安全保障大統領補佐官)です。

彼はこのG2論の米国の提唱者で、既にオバマの大統領就任直前の2009年1月中旬の論文で、このように述べています。

米中両国は相互依存の重要性に鑑みて、包括的なパートナーシップに基づくG2の特別な関係を築くべきである米中両国は経済問題を超えて、中東紛争から核兵器削減、テロリズム対策、気候変動などの国際重要課題の解決に共同で取り組む必要がある

これが典型的米国民主党系リベラルの発想なのです。

つまりは、中国が膨張して米国の海洋権益を犯すのは望まないが、国際秩序の共同責任者に成長してくれるならば、むしろ積極的にパートナーシップを結ぶこともやぶさかではない、というものです。

彼ら米国リベラル、すなわち「米国型左翼」は、大戦で共に反ファシズムで闘った中国に対してのほうが、「軍国日本」よりよほど親近感があるという歴史的DNAを持っています。

ちなみにわが国を大戦に導いた米国大統領は民主党のルーズベルトであり、原爆投下を命じたのも同じく民主党のトルーマンでしたし、戦後最も日本を軽視した大統領はクリントンでしたが、これも民主党です。

米国民主党にとって「アジア」の主要なプレイヤーは日本ではなく、中国を指すのです。

オバマのようなハーバード出の米国民主党リベラルにとって、中国は冷戦によって断絶したとはいえ、まともな自由主義経済の国になるなら、「極右政治家」に率いられた日本よりよほどましなパートナー、というのが本心です。

このような米国リベラルの考えを読んで、習近平は米中2カ国で世界を仕切る「新たな大国関係」(G2)論を提案しました。

いや、習が米国の意図を「読んだ」というより、奇しくも中国も似た太平洋分割統治論を温めていたというべきでしょう。

このG2提案は、13年6月のオバマ・習会談でなされたもので、ここで習は驚くべき提案をオバマにしています。

太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある

この習の発言は、中国と米国で太平洋を二分割し、東半分、つまり中国流に言えば第2列島線(※)までを「中国の海」として認めよ、ということを意味します。

ここまで明瞭に世界の覇権国になると宣言する国は、米国以外中国しか存在しません。

このテーマもう少し続けます。

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■資料1ライス補佐官、米中「G2論」容認 尖閣主権「立場取らず」
日経2013/11/21

ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は20日のワシントンでの講演で、米中両国の「新大国関係」構築への意欲を明らかにした。米中の二大大国で世界を仕切るG2論を容認する考えも示唆した。

 中国との関係について「新たな大国関係を機能させようとしている。これは米中の競争は避けられないものの、利害が一致する問題では協力関係を深めようとしていることだ」と指摘した。

 中国の習近平国家主席が今年6月のオバマ米大統領との首脳会談で「新しいタイプの大国関係」を提案した。オバマ氏の側近であるライス氏の発言はこれを受け入れるとみられる可能性があり、波紋を広げそうだ。

 習主席の指す「大国関係」は米国が中国を対等な存在と認識し、軍事、経済の両面で、台頭を認めることを意味する。東シナ海や南シナ海で活発にする中国の海洋進出の容認にもつながりかねない。

 オバマ氏はこれまで「中国の平和的な発展は歓迎する」としながらもG2論には言及せず、事実上、拒んできた。米国が中国に求めるのは「大国としての責任」。東シナ海や南シナ海周辺国とのあつれきをいたずらに増幅させることではなく、アジア地域安定への貢献が念頭にある。

 ライス氏は沖縄県・尖閣諸島を巡る日中の緊張については「米国は主権の問題には立場を取らない」と表明。そのうえで「日中が対立を先鋭化しないよう平和的で、外交的な方法を探るよう両国に促している」と語り、尖閣が日本の施政権下にある点には触れなかった。

 クリントン前国務長官は今年1月、尖閣付近で挑発行為を繰り返す中国に関して「日本の施政権を一方的に害するいかなる行為にも反対する」と厳しく批判し、これが米政府の公式見解となっている。ライス氏の発言はクリントン氏と比べ後退した印象を与えかねない。

■資料2 防空圏批判なし
読売2月9日

<【ワシントン=今井隆】
オバマ米政権内で、外交政策に影響力を持つスーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)の中国への融和的な姿勢が際立っている。

訪米した岸田外相との7日の会談では、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が中国の設定した東シナ海の防空識別圏に厳しい姿勢を示したが、ライス氏は言及すらしなかった。


岸田氏はライス氏との会談で、中国の防空識別圏を改めて非難。ところが、外務省関係者によると、ライス氏は「中国との関係は、米国の中でも協力を進めていかなければならないという声もある。協力できる分野もあれば、対立分野もある」と米中関係の一般論にとどめ、防空識別圏の批判を一切口にしなかった。

日米関係筋は「中国を刺激したくないライス氏の姿勢の表れ」と指摘する。
(太字引用者)

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コメント

今後の日米関係はどうなるのでしょうね。今まで米国の核の傘にいたわけですが、


対する中国やロシアも同様に核ミサイルという手段を有しています。


オバマが、何の実績も無く「ノーベル平和賞」貰ったのって、いつでしたっけ。
あれ、60年前のケネディの真似ごとでしょうに。


時代は、単純な対ソ連ではなく、中国始め他の国が「核ミサイル」を持ってる時代です。

MDは装備してますが、恫喝されたら、どう対処するんでしょう。


あちらの騒ぎ立てる、不思議な南京以上の大虐殺以上になりますよ。
この現代社会で。

投稿: 山形 | 2014年2月27日 (木) 13時08分

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