NHK世論調査とスウェーデンにみる脱原発世論とは
国民の原発についての意識の世論調査(2013年6月)の結果があります。
NHKが2013年1月に行った世論調査で、アンケートのお題は、安倍総理大臣が、2030年代に原発の稼働ゼロを目指すとした民主党政権のエネルギー政策を見直しの賛否です。(長い)
・賛成 ・・・43%
・反対 ・・・21%
・どちらともいえない・・・30%
最大分布は43%の「見直し賛成派」で、第2位の「どちらともいえない」と合わせると73%にも達しました。
2012年秋に「民意」とされていた[6割の国民が原発ゼロを望んでいる」(東京新聞)という流れが、転換点を迎えて大きく減少に向っていることが分かります。
原発ゼロを支持した層は分解して、一部は現実主義的な「見直し賛成」と、判断保留の30%に別れたようです。
これは、スウェーデンの国民投票結果と、1986年から2010年までの世論調査の推移と重ね合わせてみると分かりやすいと思います。
スウェーデンのヨーテボリ大学・世論メディア研究所が実施した原子力についての意識調査があります。
上の意識調査を見ると、赤線(見にくいですが上の線)の原発廃止の意見はチェルノブイリ事故があった1986年を頂点として毎年減少し、16年後の2002年を境目にして原発利用と逆転しているのが分かります。
次に1980年に行われたスウェーデンの国民投票結果ですが、ひとつの事案で国民投票までやって白黒をつけたというのは、原発事故の当事者でもないにかかわらず、いかに国民を二分した課題だったのかが分かります。
国民投票で示されたスウェーデン国民の「民意」の内訳はこうです。
①10年以内の原発全廃止・・・39.7%
②化石燃料依存から脱却し、社会に十分なエネルギーを再生可能エネルギーで生産できるようになるにつれて徐々に原発廃止・・58%
③無記入 ・・・3.3%
脱原発に投票したのは約4割、一方「徐々に原発を廃止する」と、「無記入」(現状維持=賛成)で合わせて約6割です。
ちなみに小泉純一郎氏や山本太郎氏のような、「即時ゼロ」という極端な選択肢は含まれていません。
つまりスウェーデン人は急激な脱原発ではなく、代替エネルギーをしっかりと確保しながら原子力依存を減らしていくことを選んだのです。
この国民投票の結果を受けて、2010年まで「原発モラトリアム」という建設凍結政策がなされました。
というか、なされたはずですが、実は2基が新設されており、期限切れの10年には、代替エネルギーの見通しがつくまでという条件付きでモラトリアムは終了しています。
さてここで問題となるのは、世論調査の設問の立て方です。
「30年後ゼロ政策に対して」という前提ですが、賛成、反対という二項対立的な聞き方をしています。
こんな聞き方をすれば、大部分の人々が「そりゃあ、なけりゃあないほうがいいに決まっている」と思って、「反対」と答えてしまうかもしれません。
もし、本格的に原発政策について調査したいのなら、もっと絞り込んで具体的に聞くべきです。私ならこう聞きます。
●[原子力発電の今後どのようにあるべきかについてお聞きします]
①一切の原発の再稼働は認めない・即時ゼロにすべきだ
②原子力の代替エネルギーが確保され、国民生活や経済に影響がなくなってから中長期的に廃止の方向に向うべきだ
③安全と審査された原子力発電を維持し続けるべきだ
④わからない
②の中長期的は中期的「30年ていど」、「長期的50年ていど」のふたつに分けてもいいかもしれません。
さて上の設問を先日の東京都知事選候補に当てはめてみましょう。
①の即時ゼロ ・・・宇都宮氏・細川氏
②の長期的削減・・・舛添氏
③の再稼働 ・・・田母神氏
①の得票率合計・・・39%
②の得票率 ・・・43%
③の得票率 ・・・12%
ちなみに②と③を足すと56%です。
さきほど述べたように、スウェーデンはチェルノブイリ事故直後をピークとして、脱原発支持は急速に落ちていきました。
この傾向が日本にも当てはまるなら、事故後16年後の2027年頃には脱原発と原発利用が入れ替わります。
いや既に、わが国では既に3年を待たずして入れ替わっていますから、よほど脱原発派がまともな具体政策を出せない限り再逆転は不可能となります。
この事故後の大事な3年間の間に、脱原発派が飯田哲也氏以外まともなエネルギー政策を出せなかった空白は大きいと思います。
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