• 20250117-013132
  • 20250117-015927
  • As20241225001545_comm
  • 20250115-143858
  • 20250113-081014
  • 20250114-011659
  • 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719

« USTR 「オレは全部ノーだが、お前は全部イエスと言え」 | トップページ | 米国の目論見は2国間交渉で日本の譲歩をもき取ることだ »

2014年2月25日 (火)

伝家の宝刀を取り上げられた裸のマッチョUSTR

118

米国が日本をファースト・ターゲットにしていることは、新たな米国の提案でわかります。

「米国は日本の重要5分野を含む農産品に対し最長20年の猶予期間を設けて関税を撤廃する案を提示。輸入車の関税撤廃を日本の農産品の市場開放と引き換えにする構えをみせることで、重要5分野の関税を維持したい日本に揺さぶりをかけている」
(産経2月23日)

話になりませんね。20年間というのは、TPPの猶予期間といわれる10年間の倍です。

通常のFTAでは米韓FTAでは、2年後の2016年には一般自動車、8年後の22年にはSUV(ライトトラック)の関税撤廃が決まっています。

これでは、日本は自動車業界はなんのメリットもないばかりか、重要5品目も守れないということになります。フロマンさん、なにトボけたこと言ってんだか、です。

さて日本では名前ばかり有名ですが、あまり知られていないのが、USTR(米通商代表部)はどこに所属し、なにをするための機関なのかということです。

日本流に考えると、米国の貿易一般の交渉事なら商務省がやればいいのですから、屋上屋になりはしませんか。

答えは、商務省貿易局は貿易交渉において一部の権限しか持たされていないのに対して、USTRは商務省には属さない大統領府直轄の機関です。

しかも、通商代表は閣僚ポストと同格な上に外交特権まで持つ大使待遇です。

閣僚&大使待遇ときていますから、すごいポストを作ったもので、通商代表の鼻の穴が拡がるのもむべなるかなです。

USTRは誕生自体は1963年ですが、初めは通商の締結・運用ていどのおとなしい存在でした。

それが1980年代に、WTOなどの多国間貿易交渉が増えたことに対応して、強大な権限を与えられて通商交渉全般を仕切らせる役割を与えられました。

1980年代と言われて何か思いあたりませんか?そうです、デトロイトで日本車が全米自動車労組の組合員によって10ポンドハンマーでブチ壊されていた時代です。

あの米国が日本の貿易攻勢におびえていた時代が、USTRの強大化した時代なのです。

議会が日本を標的にした包括通商法スーパー301条(不公正貿易国と行為の特定・制裁)の権限をUSTRに与えたあたりで、USTRは一挙にゴジラ化しました。

スーパー301条は、1988年に出来た不公正な貿易慣行を続ける国に対する制裁手続き条項です。

米国が輸入障壁のある国と指定して、3年以内に改善されないと思えば報復のため関税引き上げを一方的に実施できるというもの騒がせな条項です。

不満があればWTOなりに提訴すればいいのであって、それを一国の恣意で制裁を課せるというのですから、GATT違反に決まっています。

そしてこのスーパー301条というダンビラを振り回す特権を与えられたのが、他でもないこの大統領府直属のUSTRだったわけです。

USTRには、TPA(大統領貿易促進条項)に一括承認手続き」(ファースト・トラック)という特権が付帯しています。

国際交渉の結果はどこの国でも議会への報告と承認が必要ですが、一括承認続きとはUSTRが多国間貿易交渉でまとまった貿易上の合意事項を、ひとつひとつ議会で承認を経ることなく一括で通せるという権限です。

米国はなんてメチャクチャな権限を、一機関にすぎないUSTRに与えたものかと驚きます。

TPPならおそらく100本くらいの国内法を改定しなければならないはずですが、それを一本の法案でできるというんですから呆れます。議会無視の権限といっていいでしょう。

わが国なら、ひとつひとつ当該の省庁が作って国内法改正案を作って国会を通さねばなりません。

たとえば、米国が要求している知的財産保護の期間延長がTPPで合意されれば、これで改定しなければならない国内法は特許法から薬事法までかなりの数に登るはずです。

これをひとつひとつ国会で改正法案を可決して、ようやく批准の運びとなるわけです。考えただけで気が遠くなります。

TPPが国内法を超越する国際条約であるために、先に国際条約で合意して、その時に内容が初めて国民に明らかになり、初めて国内議論が始まるというゴールからスタートというヘンテコなことになっています。

ここがたぶんTPPの最大の矛盾で、国内法を外国によって変えることができるので、国家主権の毀損につながりかねません。

いちおう日本には国会批准という安全装置がついていますが、米国のTPAにはそれがないので、議会は怒りだして大統領宛てに民主、共和を問わず多くの議員が署名したTPP反対書簡を送りました。

そこで今のTPPがらみの交渉でUSTRは、この一括承認手続きができる「貿易促進権限」(TPA)を与えないことされてしまったのです。

ですからフロマン通商代表は、「日本の閉鎖市場をバールでこじ開けてやる」と息巻いたボーカス氏と同じ肩書でも、腰には何もぶら下げていない丸腰の裸のマッチョなのです。

いくらマッチョが、「お前は全部呑め!オレはひとつも呑まんゾ!」と喚いても、相手国から「TPA(貿易促進権限)も持たされてない弱虫なくせに、よー言うよ」とカラ元気を見透かされてしまう始末です。

これでは22日からのシンガポール会合でも、足元を見られて鼻であしらわれるのが関の山です。

こんなたいした権限もない新代表を、バトルロイヤル状態で末期症状を呈している今のTPP会合に投入しても、まぁどうにもならないでしょうね。

TPPの米国内のリミットは、米国中間選挙と見られていますから、おそらくはこのまま決まらないでオバマ氏はグズグズの姿勢のままそれを迎えることになります。

今や脇役だったはずの日本のほうが、なんとか米国に成果を出してやりたくて、手助けしているようなかんじさえ受けます。

余計なおせっかいで、米国内でも全米自動車労組を先頭に農業界までも反対に回っているのですから、さっさと脱退するか、このままいつまでもダラダラ決まらない交渉をしていればいいのです。

NZなどの6カ国のオリジナルTPPを米国中心のグローバリズムに改変しようとしたオバマ氏は、無理が分かって情熱を急速に失いつつあります。

政治的にも完全なレームダック(死に体)です。国内支持率は去年12月にはとうとう41%まで下落してしまいました。

おそらくはオバマ・ケア(医療保険改正)だけをなんとかモノにして、あとの期間は何もしないつもりです。

まぁ、やる気も元気も根性もないので、米国の没落を決定づけた大統領と後世言われること間違いなしですね。

ですから、外交的な揉め事に発展しかかっているTPPなどから早く自由になり、少しでも国内向け政治の前進をとりつくろって中間選挙に臨みたいのだと思います。

こんな落ち目の三度笠のオバマ氏に日本政府は付き合う必要はまったくありません。オバマ氏の任期が切れる3年後までにはTPPは露と消える運命にあるのですから。

今までの米国は、年次改革要望書のような利己的でわがままな経済的要求を他国に突きつけてきましたが、それは域内の安全保障に責任を持つという前提に於いてでした。

それを放棄して、「お前は全部イエスと言え。オレ様は全部ノーだ」と言われてもねぇ。

               。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.

■<TPP>関税以外も問題山積 米国の強硬姿勢に不満も

毎日新聞 2月24日シンガポール宇田川恵】環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉が難航しているのは、日米の関税交渉が進まないことに加え、知的財産権に関するルールなど、交渉参加国間で妥協点を探れない問題がなお山積しているためだ。「米国に譲歩する姿勢が見えない」と、難航分野で強硬姿勢を崩さない米国への不満もくすぶっている。

 「想定以上に積み残された課題が多い。がっかりしたような、やや安堵(あんど)したような複雑な思いだ」。日本側のある交渉関係者はこう話した。「安堵」というのは、今回の閣僚会合が始まる直前まで、日本だけが他の11カ国から攻められて孤立するという懸念があったためだ。

 これまでの交渉で日本はコメや牛・豚肉など重要5項目(586品目)の関税維持を強く求め、米国は関税全廃を要求してきた。「日本以外の交渉参加国すべてが100%かそれに近い自由化率を提示している」(交渉筋)といわれ、日本の形勢が悪いのは明らかだった。

 しかし、今回の閣僚会合や事務レベル協議では、関税以外の課題も山積していることが改めて浮き彫りになった。どんな物品が関税撤廃の対象となるかの基準を定める「原産地規則」の議論も集約にはほど遠い状態。24日に進展があったという知的財産権も、新薬の保護強化を求める米国に対し、早期に後発薬を開発したいマレーシアなどとの対立は根深い。

 各国間で「日米交渉が進めばTPPも進む」との共通認識はあるものの、「日本だけを攻める状況ではない」(日米以外の交渉関係者)。厳しい交渉環境の一因が「米国の強硬姿勢にある」との見方は強い。

 11月に中間選挙に入る米国は、製薬、農業、コンテンツ関連など国内の主要団体がTPP交渉に目を光らせ、安易な譲歩ができない。このため、日本との関税交渉だけでなく、他国との交渉でも大きな譲歩をしていないとされる。さらに、米議会が貿易協定に関する権限を大統領に一任する「貿易促進権限(TPA)」法案が成立するメドも立たないため、米国以外の参加国も最終的な譲歩案を出しづらいという事情もある。

 今回の閣僚会合では、「準備も整っていないのに妥結などできるわけがない」という不満の声が複数の国の交渉関係者から上がった。しかし、「最後の最後に合意の道筋が見えてくる場合もある」として、各国はギリギリの交渉を続けている。

« USTR 「オレは全部ノーだが、お前は全部イエスと言え」 | トップページ | 米国の目論見は2国間交渉で日本の譲歩をもき取ることだ »

TPP」カテゴリの記事

コメント

世界の警察もこの頃元気が無いですから、国内対策で一杯一杯だと思われます。シリア内戦もウクライナでも傍観者ですから。(裏で何かやっているのかまでは判りませんが)
日本が米国の「植民地?」か「属国?」としか見られていないのではないか?とも勘ぐってしまいます。
余りにもなりふり構わない言い分だと感じます。2国間協議でさえ纏まらないのに、11カ国ではまず無理でしょう。
国会決議もあるので、自民党と言えど譲歩には限界がありますので、先延ばし・・・WTOの様に空中分解するのではないでしょうか?
TPPに米国が参加した時点で、結果は見えているのでは?

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« USTR 「オレは全部ノーだが、お前は全部イエスと言え」 | トップページ | 米国の目論見は2国間交渉で日本の譲歩をもき取ることだ »