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2014年3月

2014年3月31日 (月)

ウクライナ紛争その6 ウクライナの不完全燃焼的精神とIMF指令

 012

ウクライナ紛争を眺めていると、当事者のウクライナの国としてのひ弱さを感じてしまいます。

ウクライナさん、一体なにをどうしたいのだ、どういう国を作りたいのだという感じです。

そもそもウクライナの独立は、ウクライナ・ナショナリストの独立闘争によるものではなく、ソ連崩壊に伴ういわば棚ぼた式独立にすぎませんでした。

ラトビアなどのほうがはるかに激しい独立運動をしていて、それがソ連崩壊の口火になっています。

それに対して、ウクライナは気がついてみたら独立していていました、という感じで、旧ソ連の遺産である航空宇宙産業や艦船建造技術、そして艦船建造施設までごっそりと東ウクライナに残ってます。

よく勘違いされるのですが、旧ソ連は傘下の共和国を案外平等に扱っています。

欧米の植民地のような収奪はせずに、むしろ産業を拓殖していたわけです(ただしやり方は間違っていましたが)。

その恩恵をいちばん被ったのがウクライナでした。どこに植民地に最先端の航空宇宙産業を植えつける「宗主国」があるものですか

「ソ連」という徹底して設計主義で作られた国には、宗主国と植民地という欧米的関係をあてはめられないのです。

ウクライナの先進工業技術や施設は、ロシアのそれと一体でこそ初めて意味があるもので、ウクライナの独力では発展させることはおろか、維持すらままならないものでした。

現に、それを支えてきたロシア人技術者は、独立後ロシアに多くが帰還してしまっています。

えてして棚ぼたの遺産をもらった者にありがちですが、どう相続したものを大きくしたいいのか分からないのです。

困ったウクライナは、投げ売りのようにしてスホーイ設計局(現在は株式会社)の傑作戦闘機を中国に叩き売って先進技術を流出させてしまい、ロシアを怒らせています。

中国に空母「遼寧」を売ったのもウクライナです。わが国にとっても大変迷惑なことをしてくれました。

鉄鋼業はウクライナ唯一の輸出産業ですが、哀しいかなソ連時代の旧式炉で生産効率が悪い上に、安い製品しかできません。

2000年前後の新興諸国の需要で景気がよかった時代が終わり、今やロシアへの輸出で細々と食っていような状態です。

あるいは、天然ガスパイプラインが自国を通っていることをいいことに、料金は踏み倒すわ、止められれば勝手にコックを開けて盗むわと、おおよそ一国がやることとは思えないことをしてきました。

そして前回ふれた旧共産党幹部による国有企業のハゲタカによる簒奪と独占です。こんなていたらくの結果、国家財政は傾いてデフォールト(債務不履行)寸前です。

必然的な結果だったと言っていいでしょう。ウクライナの外貨準備高は150億ドルで、対外債務の10分の1でしかありません。

最大の輸出国にして支援国のロシアが支えていなければ、とうにデフォールトしていたでしょう。

ウクライナの対外債務1500億ドルの1割にあたる150億ドルがロシアからのものです。

今年中に返済期限が来る債務は100~120億ドルあるようで、6月末に大口の償還がある」(ニューズウィーク3月18日)といわれています。

それに対してEUからは110~130億ドルの支援約束、米国に至ってはしわいことに10億ドル約束ていどの援助しかありません。もちろんただの口約束にすぎません。

その上にウクライナには、18億5000万ドル分の天然ガスの不払いもありますので、ここでデフォールトされてしまうと、経済的に一番被害を被るのは他ならぬロシアということになります。

ロシアに言わせれば、「今までウクライナの苦しいところを支えていたのはオレたちだ。それを今さらEU加盟する、ふざけるな、後ろ足で泥をかけて欧米につくつもりか」というところでしょう。

そんなデフォールト前夜になって、今頃1周遅れの「独立闘争」を開始した勢力がありました。それがウクライナ・ネオナチの連中です。

彼らは、ロシアと戦って独立を勝ち取った経験を持たなかったために不完全燃焼でした。

親露派相手に「独立運動」をしてもしかたがないじゃないかと思うのですが、戦後まともな独立運動ができなかった屈折なのでしょう。

このへんの心理は、日本に対して独立運動をしたわけではなく敗戦による棚ぼたで独立したお隣の国の事情にやや似ています。

きちんと独力で闘い取った独立をしたインドやベトナムなどは、旧宗主国に対してあのようなおかしな心理にはなりません。

ついでに大国に挟まれた事大主義なところも似ています。地政学的にふたつの勢力がぶつかる地域は似たようになるものだとみえます。

そのコンプレックスを晴らすべく今になって暴力的クーデターを起こして、親露派のヤヌコビッチを追い出して政権にもぐり込みました。

しかし、このような無定見なクーデターをしでかす連中に、一国の運営などできるはずがありません。彼らは甘い見通しで欧米にすがりついただけだったにすぎません。

口悪く言えば、かつての宗主国のロシアから遺産相続を貰ったが食い潰しちまった。さぁこれからはしゃぶる相手は欧米様だ、というどころです。

彼らの中には、ウクライナという西欧とスラブがせめぎ合う地域を高く売りたいという意識があったことでしょう。

このように見てくると、私たち日本人は、ロシアから歴史的に圧迫を受けてきただけにウクライナに感情移入しやすいのですが、今回に関してはむしろロシアのほうが気の毒なくらいです。

さて、暫定政権のこんな甘い思惑とは別にIMFはいたって冷厳でした。IMFはウクライナ向けとして緊急支援枠として140億ドル~180億ドルを了承しました。

もちろんタダではありません。しっかり改革要求がついてきます。

財政の建て直しを名目とした緊縮財政です。

今まで2回のIMF支援策案は拒否されましたが、今回はウクライナも飲まざるをえなくなったようです。(欄外参照)

EUやIMF側は、ここでウクライナをデフォールトさせてしまうと、貸し込んでいるオーストリアやドイツの銀行まで連鎖させることになりますから、強力な圧力をかけたと思われます。

このためにロイター(3月27日)によれば、ウクライナ議会はIMF支援の受け皿として「危機対策法」を可決し、5割の補助を出していたガス料金補助を打ち切ることとなりました。国民からすれば、これは5割ものガス代値上げになります。

ウクライナは伝統的にガスによる集中暖房方式に頼っているために、このガス代値上げは国民の生活を直撃するはずです。

今年もヨーロッパ全域の寒波のために、ガス菅が破裂して事故が多発したそうですが、今年から寒波だけでなくガス代の大幅値上げまで心配せねばならなくなりました。

このガス代補助以外にも、ウクライナは元社会主義国家だけにいくつもの生活補助を持っていて(それがあるから平均月収3万円で暮らせるわけですが)、これに対してもバサバサ切られることになるはずです。

この低賃金と補助金カットに加えて、10%を越えるインフレが始まっており、ますます国民の生活は苦しくなる一方です。

5月の大統領選挙という天王山に向けて、「改革」を押しつけたい欧米と、受け入れたら国民からソッポを向かれて選挙に負けることがわかってきた暫定政権との綱引きとなります。

             ~~~~~~~~~~~

ウクライナ、ガス料金50%値上げへ
ウォールストリート・ジャーナル3月27日

ウクライナは家庭用ガス料金を5月1日から平均50%値上げする。インタファクス通信が26日、国営ナフトガス幹部の話として伝えた。必要な国際通貨基金(IMF)からの融資を確保したいウクライナ政府の思惑が背景にある。
 報道によると、この高官は値上げについて、2018年までに「経済的に適切な」水準に料金を引き上げる計画の一環だと説明した。
 また暖房料金も7月1日から40%値上げされる見通しだという。
 ウクライナは消費者向け天然ガスに巨額の補助金を出しており、予算が大きく圧迫されている。IMFによるこれまでの2つのウクライナ支援策は、政府がガス料金の値上げを拒否したため、白紙に戻った。』

2014年3月29日 (土)

週末写真館 長い冬が終わりました

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2014年3月28日 (金)

ウクライナ紛争その5 EUは過激なTPP

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では前回に続いて、このような状況のウクライナがEUに加盟することを考えてみましょう。

ひととでいえば、EUとは自国の主権を捨てて経済・社会・軍事的共同体を形成することです。

軍事はNATO(北大西洋条約機構)ですが、EUとNATOはほぼ重なっています。

プーチンは既に2008年のNATO-ロシアサミットで、クライナがNATOに加盟した場合ウクライナ東部とクリミアは、ロシア人保護のために併合すると宣言していました。

今回それが現実になったわけです。

それはさておき、TPPは経済分野だけで、財政、金融、軍事は枠外です。その意味でEUは、過激なTPPのような性格だと思えばいいでしょう。

EUは前身であったEEC(欧州経済共同体)の名どおり、「共同体」である以上、主権のかなりの部分を捨てねばなりません。それはどういうことでしょうか。

たしかに今までロシアに借金だらけだったり、油代金が積もりに積もっても、あるいはロシアに宗主国のような顔をされていたとしても、ウクライナは立派な主権国家でした。

しかし、EUというグローバリズム経済の「社会実験装置」に加盟すると同時に(それ自体かなりハードルが高いですが)、半主権国家に転落します。

あたりまえですが、EUは仲良し連合でもなければ、互助会でもありません。ドイツが盟主のグローバル経済の修羅場です。

ヤヌコビッチ前政権がEUとの「連合協定」を破棄したことで今回の紛争になったわけですが、ヤヌコビッチが拒否したのは単なる親露派だったからではなかったと思います。

欧州連合への加盟希望を表明している国に対しては、その地ならしとして加盟希望国の政治、経済、財政、金融、貿易、人権改善などを求められます。

服役中の反露派のティモシコの釈放などもこのEUの要求だったはずです。しかし、そんなものはほんの一角にすぎません。 ....

EUから見れば、ウクライナなど単なる巨額な負債を負ったデフォールト寸前の最貧国でしかありません。

本心でいえば、ウクライナなど加盟させたくはないはずですし、「連合協定」と引き換えに出さねばならない支援金も本心はビタ一文も出したくはない、それが財政危機に悩むEUの本音なのです。

元々はロシア主導の「関税同盟」(※)からウクライナを引き剥がすために、しかたなくウクライナと「連合協定」を進めているというのがほんとうのところだったはずです。

その時は10~20億ドルの短期支援でお茶を濁すつもりだったのでしょうが、しかし、今後、クリミアのロシア領編入という緊急事態を受けてウ~もス~もありません。

例によって国際社会のキャッシュ・ディスペッサーの日本は、米国より多い12億ドル(円借款)出すはめになりました。(やれやれ)

もちろんEUも、「ロシアがヤヌコビッチ政権崩壊前に確約した支援規模に匹敵する150億ドルを拠出」(ロイター3月6日)するそうですが、まちがいなく支援の見返りは安くないはずです。

たとえば、EUでは財政の権限はヨーロッパ中央銀行((ECB)しか持っていませんから、財政赤字削減のための政府支出の大幅緊縮が命じるはずです。

これはウクライナが独立国でありながら、自分の国の予算執行を自由にできないことを意味します。

ギリシアやポルトガルなどではECBの命令で、、一挙に公務員給与や社会保障費、公共事業費などに大鉈が振るわれ、政府資産の売却が進みました。

それと同時に、ECBは、グローバル化のための規制緩和を緊急支援の条件にするでしょう。

これにより、関税自主権は奪われ、外国産の高品質の工業製品や食糧が津波のようにウクライナに侵入します。

EU域内の外国企業は内国法人と同様の権利をもちますから、関税以外でも国内産業保護ができなくなります。

特許権などの知的財産権や環境基準ついても、EUと同じ基準が課せられるはずです。

このようなグローバル化の嵐が吹き荒れた場合、国内の中小零細企業は軒並み倒産の憂き目に合うでしょう。

唯一ウクライナを支えていた軍需産業と穀物、鉄鉱輸出も、ユーロの為替水準に合わせるために通貨切り上げになり、軒並み不振に陥ります。

特に今の時期はユーロは他の通貨に対して高値ですから、最悪の時期に加盟となることになります。

国債もギリシア10年もののように17.5%ていどくらいに跳ね上がるでしょう。

現時点のスペインの失業率は20%、ギリシアに至っては28%(!)です。ウクライナもこれに近い水準になるでしょう。

その時セーフティネットになるはずの社会保障費や福祉・医療関係予算は、緊縮財政で既にボロボロになっているはずです。

主権国家ならば、このように経済がボロボロになった場合の救命丸として為替の切り下げという特効薬があります。

国家には金融主権がありますから、貨幣を多く刷ることで為替安に導き、輸出競争力をつけたり、観光客に安さでアッピールすることも可能です。

古都キエフも暴動で焼け焦げましたが、復旧すれば観光客を呼べます。優しく親切なウクライナ人の気性は外国人旅行者を慰めてくれるでしょう。

しかし先ほど述べたように、ユーロという共通通貨になることでその不況の特効薬が使えません。

ユーロという共通通貨になっていい思いしたのはヨーロッパでは、今までそれなりに高い為替相場で苦しんできたドイツなどの先進国だけなのです。

EUはよくドイツの一人勝ちといわれますが、それはドイツ製品が無関税で域内に輸出できることと、それまでのマルクよりはるかに安いユーロの為替相場が使えて、急にドイツ製品大ディスカウント大会になったからです。

東欧一の工業地帯を持つウクライナは軍需産業に傾斜しすぎていますから、無関税で入ってくる高品質の輸入品に太刀打ちできるはずもありません。

おそらくドイツ製品が津波のように国内に入ってきます。その逆に、ウクライナ製品はユーロ相場に合わせたために値上がりして、売れなくります。

貿易はゼロサムゲームですから、ドイツ製品が勝てば、それだけウクライナの貿易赤字は増えるのです。

そして最後に、サービスや人の移動も自由化されますから、ネオナチの皆さんが大嫌いな「ユダヤ資本」や、外国人移民が流入するでしょう。

ちなみに外国人移民が増えた諸国は、軒並みに極右政党が伸びています。

また高賃金を求めて、医師、看護婦、技術者、教師、技術者などの技能職は外国に流出します。

というわけで、たしかにデフォールトが回避された代わりに、こんな未来が予測できます。

①関税自主権がないから国内産業はバタバタ倒れ、失業者が激増
②金融自主権がないので為替レート切り下げが自由にできず、輸出がピンチ
③財政自主権がないので緊縮財政を命令され、社会保障がボロボロ

④ヒトとサービスが自由化されるので外国人がワラワラ入ってくる
⑤共通通貨ユーロの縛りで為替高。来てほしい観光客は来ない

と、まるでいいところなしです。だからお止めなさい、と言っているのです。

こう整理してみると、たしかにTPPとEUはグローバリズムだけによく似ています。違うのは②③⑤です。

ただEUのほうがはるかに劇薬だということです。とてもじゃないが、今のウクライナが服用していいものではありません。

EUではなく、米国主導のIMFがやったらもっと冷厳にしめつけてくるだけで、内容的には似たようなものです。

EUに行くことはグローバル経済の餌食になるだけで、まったく救いにならないのです。ウクライナはいままでまともな市場経済を持っていませんでした。

ソ連型中央指令型計画経済から、国有財産の盗っ人による寡占経済、そして今の革命と混沌。

西欧を頼りたい気分はわからないでもありませんが、今のような未成熟な資本主義からいきなりグローバル経済の草刈り場に突入するのは、とてもお勧めできません。

関税同盟 2011年にプーチンが提唱したユーラシア大陸全域の「ユーラシア同盟」構想の中軸。プーチンは「リスボンからウチジオストックまで」という大経済共同体を構想した。EUとの協調をうたうが、実体は反EU圏であると見られていた。
その中軸が関税同盟。参加表明しているのは、ロシア、カザフスタン、ベラルーシなど。ウクライナにも呼びかけていた。

2014年3月27日 (木)

ウクライナ紛争その4 EUなんかに入るのはお止めなさい

048

もし、私がウクライナ人から、「EUへ加盟したいんだが、どう思う」と聞かれたら、ゼェ~タイにお止めなさいと答えると思います。いいことないですよ、あそこは。

ウクライナはEU加盟によって、法の支配、恐怖からの解放、腐敗の一掃、そして自由市場が得られると思っているのでしょうが、その望みは叶うでしょうか。

まぁ 「自由市場」とやらだけは叶えられでしょうが、それはウクライナ人が素朴に思っているのとは真逆です。

まず、その前に簡単にウクライナの独立からの経済を振り返ってみましょう。

ウクライナ自体の経済構造は、ソ連の一共和国だったために大変にいびつでした。

旧ソ連は、傘下の共和国に、お前はナニを作れ、お前はコレを作れというような、ソ連を一国と見立てた垂直分業システムを持っていました。

ウクライナには、そのうち戦車や航空機、艦艇などの軍需工業と、小麦生産があてがわれました。

逆に言うと、他の分野はひどく貧弱です。スホーイ27やT72などの戦闘機や戦車は山ほどあっても、民需品はないに等しいのです。

ちなみに、中国のスホーイもバッチモンの空母もみなウクライナ製です。あ、チェルノブイリもウクライナでしたっけね。

その上すべて国有企業でした。独立後しばらくは国有経済のままで゛、ようやく「オレンジ革命」で解体されました。しかし、その時に大変な汚職が起きました。

国民の財産のはずの国有企業が、国民が知らないうちにただ同然で払い下げられていたのです。これで誕生したのが、今のウクライナを代表する6大財閥です。

Yulia Tymoshenko November 2009-3cropped.jpg

(写真 ユーリ・ティモシェンコ。投獄のせいかだいぶふけた。もっとも牢獄は豪華。Wikipedia)

あのユーリ・ティモシェンコもこれで巨富を得ています。彼女の場合は、ラザレンコという地方政治家に政治資金を与えました。

そして、彼が首相に就任すると、ティモシェンコの会社UESUにウクライナ全土をほぼ独占するガスの輸入・販売権を与え、この会社はウクライナGDPの30%を占めるという法外な利潤を叩き出していました。

こうして彼女は一気にウクライナでもっとも富裕な人物になったのです。

彼女は政治犯でなかったにかかわらず、EUの「連合協定」の民主化要求で釈放されました。

このような独立後のドサクサに紛れて国有資本を私物化する者は多く、彼らの財閥は輸出利益の免税などの特権を得て、それをせっせとタックス・ヘーブン(租税回避地)のキプロスに逃避させ蓄財に励みました。

これは今の中国にも言えることですか、政府高官と財閥が癒着し腐敗したダーティ・マネーをやりとりしたあげく、それを海外に持ち出すという構図です。

おそらく国外へ逃げた金だけで、数百億ドルと言われ、このダーティ・マネーを巨額な投機にまわそうとして、折から猛威をふるっていた国際投機資金と結びつきました。

これが今でもある、ティモシェンコとジョージ・ソロスとのご縁です。この勢力が作ったのが、政権党の「祖国」です。

もうひとつ馬鹿にならない実入りが、ロシアからの天然ガスのトランジット(通過)代でした。

ウクライナには西欧への動脈が伸びていますが、この利権も一部の人たちに独占されて、巨富を築いたのがビクトル・ピンチュクです。

このピンチュクが作った政党が、これも今政権与党にいるUDARです。

しかし、これらはリーマン・ショック以降ガタガタになり、今やウクライナのGDPは独立前の1989年の75%程度まで落ち込んでいます。

国民の平均賃金は隣のポーランドの3分の1で、月収は3万円ほどだと言われ、人口は1989年から680万人も減って、現在4500万人にまでになっています。

旧宗主国・ロシアからの150億ドルの巨額支援と、18億5千万ドルの天然ガス代金の不払い、果てはガスの抜き取りなどでなんとかやりくりしていましたが、とうとうデフォールトしかないところまできています。

ウクライナは、いまや優秀な重工業と、世界有数の穀倉を持ちながら、ヨーロッパ最貧国となってしまったのです。

この現状に国民の不満が溜まらないわけがありません。

この不満を背景にしてぐんぐんと勢力と伸ばしたのが、前回ふれたオレフ・チャフニボクの率いるスボボダのようなネオナチでした。

未確認情報では、彼らは欧米の情報機関によって育成され、近年ではシリアのテロリスト集団と資金的、人的つながりすらささやかれています。

というわけで、今回の新政権はこの怪しげな3ツの勢力の連合なのです。

長くなってしまいましたので、EUにはいったらどうなるのかは次回に回します。

2014年3月26日 (水)

ウクライナ紛争その3 現政権に紛れ込んだネオ・ナチの面々

042

G8からロシアを追放だそうです。わが国は恒久的ではないという姿勢ですが、米英は永久追放を主張しているようです。

まぁプーチンは痛くも痒くもないでしょうね。

いくらロシアの天然ガスからの脱却などと会議で言っていても、LNG(液化天然ガス)のプラントは輸出国、輸入国双方に作る必要があり、早くても3年先の話でしょう。とても今年の冬には間に合いません。

仮に出来ても、輸出国から足元を見られていますから、えらく高いものにつくでしょう。

いかにロシア一国や、エネルギー源をひとつのものに強依存すると恐ろしいことになるか、これで分かります。

ケリー国務長官などは、ハーグに着いてから、「クリミア半島をめぐる情勢の緊迫化が、シリアの化学兵器廃棄に向けた国際的な取り組みに協力するロシアの姿勢に影響しないよう期待する」(ロイター3月25日)などと、ロシアの顔色をうかがっているようではどうにもなりません。プーチンは大笑いしたことでしょう。

さて暴力的クーデターで権力の座についたウクライナ現政権は、一体どんな人達なのでしょうか?

彼らを政権につけたこの暴動騒ぎは、極めて訓練されていて、しかも一部は武装していました。彼らには報酬すら支払われていたとの未確認情報があります。

ウクライナ現政権はEU寄りだという触れ込みですが、決して欧米的自由主義者などではありません。

プーチンは、「欧米のファシストたちがウクライナの主権を非合法的に奪っていった」と述べましたが、あながち根拠がないわけではありません。

現ウクライナ政権は、「祖国」などの国際投機資本、UDARなどの石油資本、そして残り大多数は、「スボボダ」のような西ウクライナのガリツィア地方にを根拠地にする極右民族主義者・ネオナチなのです。

ガリツィア地方と呼ばれる西ウクライナは、ハプスブルグ帝国の領土に属しており、帝国解体後はポーランドに属していました。

このガリツィア地方がソ連領ウクライナと統合されて今のウクライナになるわけですが、日常的にウクライナ語を話す西ウクライナと、帝政ロシア時代から「小ロシア」と呼ばれていて広義のロシア人のアイデンティティを持った東ウクライナとは相当に隔たりが大きかったといえます。

また産業構造も、東ウクライナは、旧ソ連の垂直分業により、今でもロシアとのつながりが深い航空宇宙関連企業や軍需産業がある一方、西ウクライナは西欧への輸出が多い穀物生産が中心です。

さて、ウクライナのネオナチは、「プラヴィー・セクトル」(民族主義右翼)と呼ばれ、有名なネオ・ナチ組織としては、最大党派の「スボボダ」(自由党)です。

以下、「ウクライナ愛国者」、「ウクライナ民族アセンブリ」、「ウクライナ自衛」などといった組織で、シンボルマークとしてトリズブ(三叉、ウクライナ紋章の柄)を着けています。

Photo

(写真 スボボダのウクライナ版ヒトラー・ユーゲントの行進風景。トリズブの替わりにハーケンクロイツがあれば1930年代と間違えそう。引用は上記より)

トリズブはウクライナの国章ですが、いまやウクライナ・ネオ・ナチのシンボルになっています。Ukr_fascists1

(写真 暴動時のウクライナ極右団体。トリズブの腕章をつけている。ほとんどがヘルメット、覆面、手にはチェーンとスプレーガスとこん棒というお約束のスタイル。スプレーは警官隊の顔に吹きかけたり、火炎放射機のように使われているのが映像に記録されている。とうてい「市民の民主化要求デモ」ではない。引用はThe Red Phoenix

彼らは強烈な反ロシア、反移民、反ユダヤ人のスローガンで統一されています。

「こうした団体は、悪名高いナチ協力者で、対ソ連戦を積極的に戦い、第二次世界大戦の両方の側によって行われた最悪の残虐行為のいくつかに関与したステパーン・バンデーラが率いたいわゆる“ウクライナ民族主義者組織”への崇敬の念を共有している。」(Eric Draitser)

(写真 ネオナチのデモ。掲げられているがウクライナ民族主義のカリスマであるステパーン・バンデーラ。 引用ロイター / Gleb Garanich)

彼らはこの「革命」に至った暴動の主役でしたが、こん棒とヘルメットで武装し、手製爆弾を警官隊に投げて多くの死傷者を出しています。

また攻撃対象も治安部隊だけではなく、警察署を襲って占拠して警官を拉致拘束し、親ロシアだと目されれば一般市民にも容赦ない暴行を加えています。

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(写真 当初は市民デモと報道されたが、実態は市街戦。組織化された暴徒は古都キエフを容赦なく破壊し、火を放った。)

ほんとうかうそか分かりませんが、治安部隊の中にもネオ・ナチのシンパがいて、彼らがわざとデモ隊に発砲したのだという説まであります。(その逆にロシアの謀略だという説もあります)

「独裁者ヤヌコビッチに抵抗し、EU編入を求める市民デモ隊」という誤った西欧経由の報道が日本でもなされていたので、大きな誤解があるようですが、彼らは極右テロリストと言っていいような危険な存在なのです。

歴史上、彼らに良く似た政治団体を探すとすれば、ヒトラーの褐色シャツ突撃隊員(SA)や、ムッソリーニの黒シャツ隊が近いとDraitserは書いています。

驚くべきことに、このウクライナ・ファシストたちは、「革命」政権によって正規の治安部隊に組み込まれ、いまや銃で武装して司法権力を振り回す存在になってしまいました

ヒトラーの私兵であった突撃隊(SA)が1933年の政権奪取後に、補助警官となったことのようです。SAは共産党や労働組合に暴虐の限りを尽くしました。

テレビでも報道されましたが、昨日まで治安部隊に爆弾を投げていたような男たちが覆面のまま楯を持って、政府庁舎を警備している異様な光景を覚えているでしょう。

あの男たちがネオ・ナチで、あのまま制服に着替えて正規治安部隊に変身しているのですから怖い。

彼らのボスたちは今や、軍事・治安部隊の司令官に任ぜられています。

ネオ・ナチのスヴォボダの創設者であるアンドリー・パルビーは、国防・安全保障委員会新長官。

右セクターという極右テロ組織の司令官ドミトロ・ヤロシは、今や国防・安全保障委員会副長官。

国防・安全保障委員会とは、ウクライナの軍、警察、裁判所、諜報機関を統括する)広い権限を持つ国家組織です。

最大のネオ・ナチ組織スボボダからは、他にも多くの閣僚を送り出しており、国防大臣はイホール・テニューフ、副首相はオレクサンドル・フチ、検事総長(司法大臣)はオレグ・マフニツキーといった具合です。

ただし、国防大臣のテュニーフは25日、クリミアを失ったことの責任を取り辞職しました。後任はコワリ。

それにしても、麻生財務大臣が逆説的意味を込めて「ナチスに見習え」といったことを、あれだけ批判した西欧のメディアは、ホントの本物のネオナチがこんなにいる新政権をよく承認したものです。

いちおう、首相のヤツェニュークはだけはネオナチではなく右翼の銀行家で、米国国務次官穂ヌーランドに約束したとおり欧米協調路線をもっていて、IMF、世界銀行による緊急援助と引き換えの要求を呑むと見られています。

これについては明日触れます。

※参考資料 Eric Draitserstop(1月30日stopimperialism.org)米国の左翼情報サイト
lhttp://stopimperialism.org/

2014年3月25日 (火)

ウクライナ紛争その2 オバマの秘密戦争

035

オバマは見かけはノーベル平和賞までもらったパシフィスト(平和主義者)ですが、他国の主権や国民への無人機攻撃を好む人物です。

バラク・オバマが大統領に就任した時、多くの人は「戦争と核のない世界を実現しようとする理想的指導者」が現れたとたと期待しました。

しかし、現実のオバマがやったことは、ブッシュ・ジュニア時代の対テロ戦争を継続し、無人機や特殊部隊を使った作戦に切り替えただけにすぎませんでした。

むしろ、米本土から軍事衛星を介して操作される無人機攻撃はピークを迎え、頻繁な一般人誤爆を招きました。

Photo

(写真 ウサーマ・ビン・ラーディン暗殺作戦の時のホワイトハウス・シチュエーションルームのオバマ。見ている画面には特殊部隊員のヘルメットマウント・カメラからの映像が写っているといわれる。 すべての関係重要スタッフがいるが、このような写真が公開されるのは極めて珍しい。この作戦は主権国パキスタンに無断で行なわれて、猛烈な抗議を受けた。Wikipedia)

それだけではなく、彼の政権は共和党政権以上に他国に対する陰謀工作や外国要人に対する盗聴を好むようになっています。

近年では同盟国のメルケルの個人携帯まで盗聴していたことがバレて、大恥をかいたばかりです。

このオバマの陰謀工作の一環が、他ならぬウクライナのヤヌコビッチ政権打倒だったようです。

さてウクライナのネオ・ナチは、歴史的にナチス・ドイツの手先であると共に、戦後は貴重な旧ソ連圏内の反共組織として米英の情報機関によって手厚く保護されてきました。

一説によれば、彼らは2004年以降、バルト3国にあるNATOの訓練施設で軍事訓練を受けていたとさえ言われています。

オバマはそれを引き継いで発展させ、今回のウクライナ政権転覆に利用したのです。

「2月24日クーデターの数週間前、反政府抗議行動を支援する為、当時キエフにいた、アメリカ国務次官補(欧州・ユーラシア担当)ビクトリア・ヌーランドが、ヤツェニュークに、新指導者となることを求めて電話したことが記録されている。
ヤツェニュークは銀行家で、極めて欧米指向で、国際通貨基金や、国際銀行による、ウクライナ債務の“緊急援助”と引き換えの緊縮政策要求に、必ず同意すると見られている。」(Brian Becker Global Research 2014年3月8日)

ヌーランドが会議をした2日前の22日に、にヤヌコビッチは国外へ亡命していますから、まさにクーデター直後ということになります。

このまだキエフの街に残り火がくすぶっている時期に、米国務省高官がキエフにまで直接来るという意味は、自らが作り出した成果の確認と、今後についての打ち合わせ以外考えられません。

ちなみにヌーランドは共和党員で、夫はネオコンとして有名なカール・ケーガンです。

「voice of Russia」(ロシアの声)は本当かどどうか確かめようがありませんが、こう書いています。

100億ドルうんぬんは眉唾だとしても、欧米、なかんずく米国がこのウクライナ政変の影の主役であることは相当な確率でたしかだと思われます。

「ウクライナのコレスニチェンコ地域党議員は、同国で起こっている出来事について、「外国のスパイ」から資金援助を受けていると述べた。
コレスニチェンコ氏は、「キエフの状況は1年以上かけて準備された。外国のスパイたちは、クーデターを起こすために、最近数年間で100億ドル以上の資金を提供した。スパイたちは、非政府組織を装って最高会議で活動している」と述べた。」
コレスニチェンコ氏はこれより先、ウクライナで起こっている出来事は、「欧州と米国が計画したクーデターだ」と述べている。」(2月23日)

この写真の中央の女性が米国務長官補ビクトリア・ヌーランドです。左側の人物がネオナチ政党スボボダの指導者であるオレフ・チャフニボクです。

nuland in ukraine

画像

(写真 Global Research )

上のスボボダの集会の時のチャフニボクの写真を見ると、彼のネオ・ナチの本性がわかるでしょう。今の西欧は、政治家かこんなナチ式敬礼をしただけで失脚なんですが。

さて、この写真が撮影された会議で、ヌーランドが招集したのは反ロシア派の3名です。

まず、ユーリー・ティモシェンコ率いる「祖国」のヤツニュク。次に「UDAR」のビタリ・クリチ。そして先ほどから出ている「スボボダ」のオレフ・チャフニボクです。

ティモシェンコは、民主革命の美しいヒロインの顔の下に、国有企業の不正払い下げで巨額の富を稼いだ人物で、殺人容疑でこの会議の時には牢屋の中でした。(革命後釈放)

彼女は国際投機資金のジョージ・ソロスとのつながりも深いとされています。

「UDAR」の後ろ盾はウクライナのパイプライン業界の大立者の大富豪ビクトル・ピンチュク、そして先ほどから出ているチャフニボクが率いる「スボボダ」はネオ・ナチです。

チャフニボクは、今やちょっとした人気者で、この春に予定ざれていた大統領選に出馬するかもしれません。なんと5割の有権者が彼に投票する答えているそうです。

ただし欧米は自分たちが作った政権がネオ・ナチ政権になることを反対するでしょうし、もし当選したのなら、ロシアが大反発するのは明らかです。

「ウクライナでは、ファシストへの支持が急増している。2006年、スヴォボダは選挙で、0.36パーセントの得票だった。2012年には、10.45パーセントの得票と、450議席中の37議席で、ラーダ(国会)で四番目に大きな党となった。
2月始めに行われたある世論調査では、54パーセントが、もし彼がヤヌコビッチに対抗して出馬すれば、大統領としてチャフニボクに投票するだろうと回答した。(世論調査は、ヤヌコビッチ打倒の三週間前に行われた)」
(同 Global Research)

このようにウクライナ新政権は、国際投機資本、石油パイプライン資本、そしてネオナチの合体によってできあがったものです。

これまでも米国は、選挙で民主的に選ばれた政権を軍事クーデターなどの不正な手段で倒してきました。

そしてパペット(操り人形)政権を作ったあとは、それを裏から操ってきたことは知られています。

このウクライナ紛争は、この米国の伝統芸です。

ただ、ひとつ大きく違ったのは、米国大統領が無人機攻撃や盗聴が趣味の暗い性格だったことくらいです。

そしてもうひとつは、この米国の動きはプーチンに筒抜けでした。

プーチンは、反政府勢力がソチ五輪に合わせて最終総攻撃をする情報を得ていて、それに対応してかなり早い時期にクリミア制圧作戦を企図したと思われます。

新政権樹立と共に大量に出てきた米国国務次官補ヌーランドの電話盗聴のYouTube流出やネオ・ナチとの写真などのリークも、ネタ元はロシアの情報当局以外ありえません。

つまり、オバマはプーチンの絵図の中で思惑どおり動いてくれる道化だったのです。

2014年3月24日 (月)

ウクライナ紛争その1 米国の弱腰とロシアの強気

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玄人の方も大分読み間違ったようですが、プーチンがクリミア編入まで一気に走ってしまいました。

時間を置くことの膠着状況を嫌ったのでしょうが、徹底的にプーチンにオバマがなめられたということです。ここまでくると政治家としての格が違うというかんじまで受けてしまいます。

オバマとケリーは、「世界の警察官を止める」という宣言どおり、ウクライナ紛争においても早々と軍事的手段による抑止を捨ててしまいました。(欄外参照)

オバマが断固たる経済制裁と言っていたので、ガスプロム((GAZPMM・露大手石油会社)の資産凍結くらいするのかと思っていましたが、なんと30人くらいの政府高官の在米資産凍結程度ですから、もう何もしないほうがマシというものです。

欧州のメディアからも、「子供の風呂桶に浮かぶプラスチック製のワニ」とか、「海外に口座など保有しない2級政治家の資産をどのようにして凍結できるんだ」と嘲笑されている始末です。

逆にロシアが報復制裁として、かねてからガスプロムが警告していたとおりに、ウクライナへの料金未払い(溜めも溜めたり、18億5000万ドル!)に対して供給停止するほうが、よほど衝撃的効果を生むでしょう。

ロシアの天然ガスに依存する欧州

 (図 ヨーロッパとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン網 ロイター3月4日より)

それはさておき、EUの消費する天然ガスの25%はロシア・ガスプロムから供給を受けており、その8割がウクライナを通過します。

ちなみに、ウクライナは確信犯的代金不払いと、違法な抜き取りなどの常習犯で、かつて供給停止を受けています。

まぁ、止められても素知らぬ顔でまた抜き取っていたんですが(笑)。

よく大国ロシアが、小国ウクライナをいじめてガスを止めたという言い方をされますが、この場合、それではロシアが可哀相です。

メルケルは制裁を口にしていますが、ここまでエネルギー源を握られては無理です。

天然ガスは、LPG(液化天然ガス)と違って安価である代わりに代替が効かず、LPGなら、「わかった、別の国から運ぼう」で済むのですが、パイプライン供給のためにどうしようもないわけです。

そのヨーロッパ向け供給の3分の1がウクライナを経由ですから、ロシア軍がクリミア半島を制圧しただけで、先行き不安から欧州の天然ガス相場が10%急騰したそうです。

「欧州の各国政府や発電会社は、アゼルバイジャンと結ぶ天然ガスパイプライン、中東やアフリカ、北米などからの液化天然ガス(LNG)輸入などのプロジェクトに数十億ドルを投じてきた。
米国からの輸出開始は2015年以降、東地中海や東アフリカからの輸出は20年ごろ以降となりそうで、
ロシア産に代わる供給元の確保は遅々として進まないだろう。また量的に見ても、ロシア産の輸入を大幅に減らすには不十分だろう。」(ロイター3月4日)

その意味で、EUとロシアは強い経済的相互関係に結ばれていて、双方共に簡単に制裁・報復などできないのです。

もちろん力関係的に有利なのは言うまでもなくロシアで、ガスの圧力を下げるなどの方法でも譲歩を引き出せます。

今回の事態が続く限り国際天然ガス市場は高値に貼りつくでしょうから、その意味でもロシアのにんまりする顔が目に浮かびます。

米国ですら、シェールガスが実際にベース・エネルギー源になるまであと3年間はかかるとみられていて、ロシアが天然ガスの供給を止めた場合、原油価格の高騰を被ることは一緒です。

いうまでもなくわが国も被害を被ります。安倍首相は中韓を除いて国際協調の人ですからロシアへの制裁を口にしていますが(たぶん内容は事前通告済み)、せいぜいが査証( ビザ)発給要件緩和に関する協議を停止ていどです。

また、ロシアはイラン問題でも揺さぶり揺さぶりをかけています。

「ロシア・リャブコフ外務次官対米制裁を、米英ロなど6カ国とイランとの核協議に絡める可能性も示唆。核協議が失敗に終われば、対イラン政策で弱腰と批判されているオバマ政権が打撃を受ける可能性がある。」(ロイター3月19日)

オバマが、「軍事的手段はとらない」と早々に宣言したことが、ロシアのクリミア併合につながった最大の原因でした。

ロシアや中国のような「力による現状変更」を望む国にとって、オバマとケリーによって最良の国際環境を得たことになります。

以後、国際社会は超大国・米国の軍事的抑止という重しがはずれ、各国が好き勝手にエゴをぶつけ合って、その場その場で折り合っていく帝国主義の時代になったことになります。

                  ~~~~~~~~~~~~

■米国、ウクライナで軍事行動に関与せず=オバマ大統領 サンディエゴのKNSDテレビとのインタビュー
ロイター2014年 03月 20日

[ワシントン 19日 ロイター] -オバマ米大統領は、米国がウクライナで軍事行動に関わることはないと発言、外交を通じてロシアとの対立を解消する意向を強調した。

大統領は「ウクライナで軍事行動に関わるつもりはない」と発言。「もっと良い道がある。ウクライナの人々でさえ、米国がロシアに軍事的に関与することは不適切で、ウクライナにとっても良いことではないと認めるのではないか」と述べた。   

2014年3月22日 (土)

週末写真館 春のクロッカス

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毎年春になるとクロッカスが咲きます。
いつ植えたのか覚えていません。
朝になると、優雅に花弁を拡げて、朝陽を全身に浴びようとします。
まるで太陽を拝む行者のようです。
そして日が落ちる頃になると、静に花弁を閉じて眠りにつきます。
春の訪れ。お帰りなさいクロッカスさん。

 

2014年3月21日 (金)

空気が悪い那覇に鉄道が通る

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今日はしみじみと軽い話題。

那覇って県外の人は南洋の静かな田舎町、裏通りにはサンシンの音が漂い、なんてイメージがあるかもしれませんが、いやなかなかそうでもないのです。

那覇市自体は30万人ていどですが、那覇広域圏とでもいうべきエリアがど~んと拡がっているので、朝、国道58号線の渋滞にひっかかろうものなら、東京の渋滞なんぞ物の数ではありません。 

4年ほど前に沖縄を再訪した時にはそれがもっと酷くなっていました。那覇空港から市内までが渋滞し、うっかり国際通りになどに入ろうものならまるで駐車場状態です。 

タクシーを国際通りで降りて、平和市場の裏のガーブ川沿いの農連市場あたりにたどり着くと、やっとああ帰ってきたぜぇ~という気分になれました。 

ガーブ川は我部川というのがほんとうの名前なんですが、ガーブと呼んでいます。 

こ汚い川ですが、この近くを徘徊して、オバーのマチヤグワをのぞき、そこらへんの大衆食堂でテビチなどをしゃぶって裏町散歩するのが、私の沖縄観光なのです。 

ここから壺屋まで歩き、できるだけ国際通りには出ないようにしています。だって沖縄県民ですら、「あれは国際通りではないさ、臭い通りさ」というくらい排気ガスかすごいんですよ。 

那覇に勝つのは、北京、バンコックかカトマンズくらいですね。 

地方というのはえてしてそうなんですが、車社会の極です。一家に一台なんて可愛いものではなく、ひとり一台くらいないと仕事も生活もできません。 

東京のような重厚な鉄道網を持つ地域の方には感覚的に分からないでしょうが、鉄道がないために出勤はすべてひとりずつ車に乗るのですから非効率な上に、環境によろしくないのは言うまでもありません。 

といっても、多くの県庁所在地には鉄道が通っていて、駅が街の中心なのですが、沖縄はそれがありません。

那覇市及び那覇市周辺では人口増加が著しく、2010年は那覇都市雇用圏人口は約80万人、うるま市以西で106万人ですから、ここに鉄道がないというほうが無理があります。 

ですから、鉄道駅があれば分散するはずの街のヘソが国際通りという一本道に集中してしまい、朝夕の渋滞が日常になります。 

渋滞解消でモノレールを作ったようですが、なんかハンパで、おまけにのろいんだな、これか。 

戦前は軽便鉄道もあったようですが、戦火で破壊され、その後の米軍統治ですっかりアメリカ流自動車社会になじんでしまったために、そもそも県内で沖縄縦断鉄道を作れという機運がいっこうに盛り上がりませんでした。 

基地があるからと言う意見もありますが、私が見る限り充分に通すスヘースはあります。 

もし、米軍基地に引っかかって四の五の言うなら、「悲願の鉄道を通す邪魔をするなぁ!」とそれこそ「オール沖縄」で戦えばいいのです。 

鉄道建設をすれば建設業も儲かるし、駅を中心としてショピングモールもできるし、観光客にも便利だし、なにより那覇とその周辺地域を空気汚染から解放できて、いいことづくしだと思います。

なぜ作らないと思っていたところ、とうとう出ました!

沖縄県も2013年6月に那覇と名護の鉄道計画を出したのです。

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上図は沖縄県が立てた「鉄軌道を含む新たな公共交通システム導入促進について」(2013年6月5日)、という文書に載っているものです。※http://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/kotsu/kokyokotsu/h24train.html

那覇空港駅から沖縄県庁・浦添市・宜野湾市(普天間)・うるま市・恩納村を経由して名護市に至る鉄道路線計画です。

できたら辺土名まで通して欲しかった。ヤンバルは名護で終わりではないですよ。第2次計画で是非お願いします。

路線延長は約69キロメートル。最高時速100キロメートルの電車を走らせて、那覇空港と名護市を約58分で結ぶといいます。モノレールとか、戦前の軽便鉄道と違って本格的鉄道です。

しかも、鉄道の新路線計画にありがちな需要込みをかさ上げもなく、控えめな受容予測でもなんと単年度で黒字可能というのですから、嬉しい。

これができれば、那覇のベッドタウンの浦添や宜野湾まで数十分の通勤が可能になります。

すごいぞ。もし出来たなら、その時は沖縄に必ず乗りに行きます。鉄道の車窓から見える東海岸、ああ夢だなぁ。駅弁もつくらないかなぁ。

■写真 バナナの花です。やや不気味。

2014年3月20日 (木)

環境テロリスト・シーシェパードの誕生その2 ジャパン・バッシングの道具

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(先週からの続きです)

グリーンピースの「オペレーション・エイハブ」は、大型ゴムボートで調査船に幅寄せするという過激なものでしたが、それが全米に放映され大反響を呼びました。

一躍、グリーンピースは凛々しい動物保護運動家のヒーローに飛び出したのです。

米国民の熱狂を見て膝を打ったのが、デトロイトやピッツバーグの財界人でした。

それまで彼らは反核運動などをしていたグリーンピースなどという「ロン毛のクソガキども」には目もくれませんでしたが、彼らの利用価値の大きさに初めて気がついたのでした。

それは、他ならぬ日本に対するバッシングの道具としてです。

彼ら米国財界人は、日本が対等な貿易国ではなく、「可愛く賢いクジラ」を食べるような非文明人として米国民にアピールしたかったのでした。

いうまでもなく、自動車輸出と捕鯨はなんの関係もありませんが、大戦の時のレトリックと同じく、「日本人はこんなに残酷な人種だからテッテイ的に叩きのめさねばならない」という世論を作り出せればオーケーなのです。

「残酷なジャップ」に捨て身で阻む勇敢なエコロジストの青年たち!おお、いい絵になるじゃありませんか!

そして80年代、ジャパン・バッシングの絵作りのために、巨額の献金が米国財界から滔々と流れ込むようになります。

いままですりきれたジーンズと、手作りの事務所で活動していた彼らは一躍リッチになったというわけです。

その米財界の期待に応えるようにして、いっそうグリーンピースは過激に「残酷なジャップ」を襲撃するようになりました。

1989年、スーパー301条という日本制裁法の交渉のために訪米した竹下首相を、グりーンピースら、捕鯨反対の大手モで出迎えます。

もちろん日米経済問題と捕鯨がなんの関係もないのは百も承知で、米国民に反日意識が刷り込めればいいのです。

同年1月には、とうとう心配された調査船との衝突事故がひき起こされましたが、米国民にとって当然悪いのは日本です。

91年12月にも同様の妨害行動が行なわれ、95年2月には調査船の第18利丸への無許可乗り込みが起きました。

また、フランスからの処理済みプルトニウム移送にも、数ある原子力利用国の中で日本だけをあえて取り出すようにして抗議行動を続けています。

これはグリーンピース本来の反核にかこつけていますが、わが国がプルトニウムを原爆製造に使用する意志などまったくないのは誰も知るところです。

にもかかわらず、わが国のみを執拗につけ狙い、まるで核武装する陰謀でもあるかのような宣伝を続けます。

ましてプルトニウム移送は核ジャックの可能性があるために、その航路すら秘密にされているのに、追跡して全世界に「ここにいますよ。ただ今抗議中」とやりまくるのですからなんとも非常識な連中です。

なぜ、彼らは日本のみを執拗にターゲットにするのでしょうか

それは今お話した日米関係を背景にして彼らの行動を見ると、一目瞭然です。

日本を叩けば金になる、身も蓋もない言い方をすれば、そういうことです。

同じ捕鯨国でも、白人国で米国に冷凍魚ていどの輸出しかないノルウエーを叩いても1セントの金にもなりません。

それどころかバイキングの末裔たちからは断固たる反撃が返ってくることがわかっているからです。

実際、シーシェパードは、ノルウェイの捕鯨船を破壊した時に、怒ったノルウェイ漁民にかえり討ちにあってデコボコにされたあげく、頭目のポール・ワトソンは牢屋に入れられたりしています(笑)。

Photo_2 (写真 シーシェパードの抗議船。なかなかのセンスだが惜しくも自沈。彼らは調査船にぶつけられたと主張。ワトソンは調査船から銃撃された主張している。鯨類研究所が銃で武装しているとは大笑い)

それに対して日本はおとなしく逃げまどうばかりです。叩けば大金になる上におとなしい「残酷なジャップ」、これこそ絶好のターゲットだったのです。

90年代に入ると、1993年の宮沢-クリントン会談から始まる「年次改善要望書」に始まる米国の意のままにわが国を変えていく「構造改革」が始まりました。

これは新会社法、新独占禁止法、新建築基準法、そして2005年の郵政改革法案の流れへと続いていきます。

これは常に日本を従属的地位につけておくためにの内政干渉まがいの介入でした。

これを可能にする国際世論l作り、米国世論操作の先兵が、グリーンピースであり、シーシェパードだったのです。

環境運動がジャパン・バッシング・ビジネスに化けたのです。

このような政治的意図を持つダーティな資金提供を得て、グリーンピースは、小さな反核グループから、いまや巨大な多国籍環境保護団体へと成り上がりました。

つまり、グリーンピースこそ、日本を標的にすることが金脈であることを発見し、それをビジネスモデル化した最初の環境保護団体なのです。

そして日本叩きを原資にして、いまや多国籍企業と化したグリーンピース本部の幹部の移動はファーストクラス、年収は数百万ドル、泊まるホテルはスイートと噂されています。

これが、1971年9月15日、すり切れたジーンズにロングヘアーを海風になびかせて、「レンボー・ウォーリア号」で、アリューシャン核実験海域にむけての航海に向かった彼らの成れの果ての姿です。

このような堕落の過程で、オリジナルのグリーンピース・メンバーはそのほとんどが失望し、去っていきました。

「グリーンピース・クロニクル」(1979年)を書いたボブ・ハンターもそのひとりでした。

そして別の意味でグリーピースを去った(というか除名された)オリジナルメンバーのひとりに、後のシーシェパードの指導者ボール・ワトソンがいました。

そのとき、ワトソンは、このグリーンピースのジャパン・バッシングというビジネスモデルをもっと過激に、もっと派手に演出できる団体の構想をもっていたのです。

それがあのシーシェパードです。彼らには理想などありません。あるのは、ギラギラした金儲けヘの欲望だけです。

2014年3月19日 (水)

自主避難者の終わらないディストピア

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原発事故で自主避難した人たちが各地で訴訟を起こしています。(欄外参照)

その中には福島県内ならいざ知らず、神奈川、東京などの人も含まれていているそうです。

賠償額はおおよそ平均数百万から1500万円で、本来彼らが受け取るべき補償額の一部だとしています。

つまりは、こんなものはごく一部で新たに新法を作って今の避難区域の避難者ベースの補償金を寄越せということのようです。

神奈川ですってさ(苦笑)。怒るより呆れてしまいます。そういえば神奈川から石垣島まで逃げた人もいましたっけね。

この脱出した人に忠告したいのですが、よもや飛行機で石垣島に行ったんじゃないですよね。

飛行機で高度を上げると、宇宙線は倍になります。おおよそ高度15㌔上がるごとに線量は倍となるんです。

ですから、一般の飛行機が飛ぶ高空(10㌔~12㌔)では5.8マイクロシーベルト/hとなってしまいます。

放射線医学研究所によればこんな被爆量となります。
・成田-ニューヨーク往復・・・150~200マイクロシーベルト
・成田-ソウル往復    ・・・5マイクロシーベルト

胸部レントゲンの実効線量(*年齢によって違います。だいたい子供は成人の8倍敏感)が50マイクロシーベルトだから、NYに行くとその4回分を一気に浴びることになります。

そこまで心配するなら、石垣までは船で行ってね。だって神奈川の線量はこんなところです。

神奈川県の2011年6月18日午前9時~19日午前9時まで
                             ・・・0.056マイクロシーベルト
・同  事故後の最大値              ・・・0.069

ということは、石垣島まで飛行機で約2時間かかるとして11.6マイクロシーベルトの線量を浴びることになります。

神奈川でジッとしていればいいのに、脱出したおかげでいっぺんに約200倍も浴びることになるのです。

ちなみこの航空機の飛行中の放射線量は、飛行機のクルーの要請で計測されたものですが、年がら年中飛行している彼らに特にガンが多いというデータはありません。

では、2011年9月、福島事故から半年後の東日本の放射線量をみてみましょう。

●東北、関東の空間放射線量(2011年9月4日午前9時~5日午前9時)
・福島県浪江(避難区域)・・・15.5マイクロシーベルト
・福島県福島市      ・・・1.2
・茨城県           ・・・0.083
・千葉県           ・・0.043
・東京都           ・・0.056
・神奈川県         ・・・0.049
 

ここまでが、福島と南方にあたる関東の数値です。東京、神奈川に行くと、福島より100分の1にまで放射線量が下がることが分かります。

では、福島県北方にあたる東北各県はどうでしょうか。 
・宮城県           ・・・0.061
・岩手県           ・・・0.023
 

もうひとつおまけに大阪の空間線量です。
・大阪府           ・・・0.076マイクロシーベルト 

大阪市は東北より高いですな。大阪市民の皆さん、自主避難しなくていいんでしょうか。

ちなみに、日本の農水産品を放射能が危ないと言って輸入禁止にした韓国・ソウルの線量をはこんなかんじです。なんと東京の倍ですから、失笑してしまいます。

・ソウル           ・・・0.14

改めて言う必要もありませんが、福島県をのぞいては、事故後半年で通常の空間線量に戻っています。それは大阪の線量を見ればわかるはずです。

もちろんホットスポットは地形的に存在しますが、限定的なものです。

常識ですが、原発事故がなくても放射線量ゼロということはあり得ません。宇宙から絶えず放射線が地上に降り注いでおり、また地盤からも地域によって(大阪はそう)は放射されているからです。

ときどきグリーンピースや週刊誌などがとでもなく高い数値を発表しますか、それは放射性物質がたまりやすい側溝で測ったものが大部分です。

もっともこう書いたところで、この人たちは、バンダジェスフスキー氏の「低線量内部被曝で心筋梗塞になったり、小児ガンになる」という説を妄信しているのですから、どんな低くてもダメなんでしょうが。

避難区域を除いてまったく避難する必要はありません。必要がないのにデマに乗せられて避難したにすぎません。

こんな自主避難まで補償をする法律ができれば、首都圏、東北の数千万人規模の住民すべてに適用せねばなりません。そうしなければ悪平等だからです。

もはや数千億、いや兆のケタの財源が必要となります。

そりゃそうでしょう。勝手に自主避難したことによる精神的苦痛があるなら、逃げなかったことによる「精神的苦痛」だってあるわけですからね。

たとえは私のように馬鹿な煽動には踊らされず、「被曝」地に踏みとどまって放射能の計測を続け、自主的に除染活動をした「精神的苦痛」などはどうなるのでしょう

故郷や地域の仲間をさっさと捨てて、逃げる必要がまったくないのに遠く九州、沖縄まで逃避して家庭崩壊したのが賠償対象になるなら、はるかに「危険」な場所で持ちこたえて戦った私たちはどう報われるのでしょうか。

少なくとも私は金で報われようとは思いません。住んでいる地域を微力でも守れたことの充足感だけで充分です。

だから、逃げた連中が金を要求する精神が分かりません。身勝手に逃げておいて金をくれ、冗談じゃない!これが「残った」私たちの本音です。

この人たちは単に金目当ての武田邦彦氏などの悪質な煽動家に騙されて、不必要な避難を自己選択したにすぎません。

3年前、私はこのブログで、いやになるほどこんな人たちを相手にせざるをえませんでした。

らのあまりの口汚さに、私の方が山本太郎議員のようにストレスで円形脱毛になったほどです。(うそ)

そのような時に、Sさんという主婦の「放射能パニックからの生還」と題されたインタビューを読んだことがあります。

彼女は放射能パニックの症状に陥ったのは、ネットで流される武田邦彦や、早川由紀夫、小出裕章、岩上安身、上杉隆、広瀬隆、クリストファー・バズビー各氏などの煽り情報によってでした。

彼らが執拗に流布した「放射能の恐怖」は、強い感染力をもっており、『原発避難論』という本に描かれた自主避難者の全員がこの人たちの影響下にありました。

福島第1原発事故は、多大な被害を日本社会にもたらしましたが、その直接の放射能被害そのものよりも、「放射能パニック症候群」に罹った人々による流言蜚語や差別行動によって、更に傷を深めてしまいました。

自主避難者だけで1000名を超えたほどです。

そして彼らは被害者でありながら、同時に根拠のない風評や差別によって加害者に転化してしまいました

この人たちは他者の声に耳を貸しません。

偏った一定の情報にのみ集中し、沢山の立場の違う情報を集めて考えるといういたって常識的なことを、Sさんはこう述べています。

御用学者とされた正確な情報を発信する人の話が間違っていたと思い込み、話を聞きませんでした

彼女のいうこの「御用学者」とされたのは、放射線医学の専門家である中川恵一氏などですが、彼はごく常識的知見を言っているのに、袋叩きに合い、病院の仕事にも差し障りが出るほどだったといいます。

当時は、原子力や放射線の専門家が一括りで「原子力村」とされてしまい発言権を奪われていました。

当時の民主党菅政権の情報の出す遅さも手伝って、国民は何を信じていいのかわからず、したり顔で過激なことを言うジャーナリストや学者の意見が跋扈していました。

彼ら煽動家は、小出氏を除いてただのひとりも原子炉や放射線の専門家はおらず、ただでまかせに煽っていただけです。

その小出氏すら正しいのはGEマーク1型炉の知識だけで、あとはかなりいいかげんなことを言っているのが後の検証でわかっています。

このような中、彼女は「認識の壁」を自らの周りに作り出していたわけです。

すると、その恐怖心を核にする小さなコミュニティがネット上で無数に存在していることがわかり、その中に閉じこもると絶対的安心感が湧くという心理状態になったようです。

そして、この狭いサークル特有の、「自分たち以外はすべて放射能の恐怖を理解しない馬鹿な人たちであり、自分と見解をことにする人たちは敵だ」と見なすようになります。

この人たちにとって、3.11以後の日本社会は、「邪悪な原子力ムラ」とそれに洗脳されている人たち、それに対して「正義の闘いを挑む脱原発派」に二分されてしまったわけです。

そこには彼女が告白しているように、「脱原発を唱えることで、特別な使命を持った選民意識を持てましたし、自己愛が満たされ」た心理的背景があったようです。

彼女の場合、中年期を迎えたことによる迷い、仕事や住宅環境、家庭内の出来事などの悩みが、脱原発を唱えることで解消できるような錯覚に陥ったのです。

さてここで、ひとつの考え方が疑似宗教に転じてしまう三ツの要素が出揃いました。

それは、その考え方が、自分の不安心からの「救済」を約束し、その代償として絶対的「帰依」することを命じ、それに従わない周囲の人たちを「回心」させる、という三要素です。

この手記に書かれている「居心地のいい場所で、現実の世界にはない絶対的安心感を抱けました」という気持ちの安らぎは、まさに宗教が与える法悦感そのものでした。

煽動家たちの言葉を絶対真理として帰依するだけではなく、多くの人が脱原発に無関心なのは、邪悪な政府がなにか大事なことを隠しているに違いないと考えるようになります。

彼らのサイトにいけば、毎日のように「ロシア軍の秘密情報」や「米国の専門家」が、「福島県はもう人が住めない土地になっている。全員避難しなければならない。大量の子供たちが小児ガンに罹っているが、隠ぺいされている」と説いています。

なにせ去年の12月30日には福島第1でまた核爆発が起きたそうで、北極のシロクマが大量死したなんて「ロシア軍秘密情報」があるくらいです。言うまでもなくデタラメです。

彼女自身もこんな真理を、「カルト宗教への依存」と酷似した心理状況と言っています。

そしてカルト宗教特有のハルマゲドン願望がでてきます。

きっと福島第1原発4号機は倒壊して、大量のプルトニウムが溢れ出て、何万人も死ぬに違いない。

他の原発でもまた核爆発が起きて、日本列島は死の土地になるのだ、というディストピア(逆ユートピア)を真剣に信じ始めます。

カルト宗教へ依存する人の多くがそうであるように、彼女もまた家庭内でのいさかいが絶えなくなり、いっそう彼女を苦しめました。

そのときには、信心深い人たちだけが選ばれて救われると信じて、四国や石垣島まで逃げるのです。

自主避難者の多くは、夫が職業のために別居したり、一緒に移住しても良い職業に出会えなかったりして家庭が不和になりました。離婚率も高いといわれています。

また、しょせん疑似宗教は本物の宗教のまがい物にすぎませんから、一時は「安らぎ」を与えるかも知れませんが、そこから新たに原子力のない社会をリアルに構想することは不可能です。

なにせ口から出る言葉は、「即時原発ゼロ」「再稼働反対」だけなのですから展開のしようがないじゃないですか。

なまじ具体論を語ったばかりに、飯田哲也氏などは、山本太郎氏から「推進派」扱いです。

沖縄県は最多の避難者678名を受け入れていますが、地元の給食センターで福島県産農産物を使うななどと陳情し、摩擦を起こしています。

「事故後しばらく、『沖縄に避難したいが、福島産米を使っているようだ。大丈夫なのか』といった電話が相次いだ。多くは福島県以外の人だった」。沖縄は本県産米の全国有数の消費地で、給食も原発事故以前は2割が本県産米だった。2012(平成24)年度以降は使っていない」(福島民友新聞14年1月4日)

また、那覇市で青森からの雪のプレゼントの行事を企画した「『はぐくみ児童クラブ』で三線(さんしん)を指導する当間栄助(57)は、「ウチナーンチュ(沖縄の人)は避難者に同情的だが、避難者が放射能への不安を強調すればするほど『避難者こそ放射能を運んできたのでは』との反感が生じる。避難者は自ら、沖縄で暮らしにくくしていると残念そうな表情をみせる」(同)

このような自主避難者の奇矯な行動が地元の顰蹙を買って、いっそう受け入れ地域と摩擦を起こしていき、住みずらくなっていき、ストレスが溜まるという悪循環に陥っています。

早く脳内地獄から覚醒して、つまらない馬鹿騒ぎは止めてほしいものです。

ひっそりと新たな地域に馴染んで暮らしている多くの自主避難者にとっても、このような賠償訴訟は迷惑なはずです。

事故直後は誰しもパニックになったものです。しかし3年もたって、これだけ福島事故の情報が出ているのに、いまだ放射能パニックが治癒しないとなると、もはや単なる愚行にすぎません。

あ、そうそう、自主避難賠償訴訟団の皆さん、賠償支払いは家ができるほどしこたま稼いだ武田邦彦氏か、福島事故のA級戦犯・管直人元首相に請求してくださいね。

最後に、石垣島へ逃げた自主避難者歌人の一句。
「子を連れて 西へ西へと 逃げてゆく 愚かな母と 言うならば言え」(俵万智)

はい、当たり。そのとおり

※参考資料 福島民友新聞 原発災害「復興」の影
http://www.minyu-net.com/osusume/daisinsai/serial/fukkou-kage/

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■福島第1原発事故 自主避難者集団訴訟を検討 国などに賠償請求 ADR成果見込めず 山形
毎日新聞 2012年12月13日 地方版

福島第1原発事故の影響で県内に避難する自主避難者について、「原発被害救済山形弁護団」(安部敏団 長)は12日、国と東京電力を相手取り、損害賠償を求めた集団訴訟を検討していることを明らかにした。3日に自主避難者が多い新潟県の県弁護士会とも協議 し、栃木県や群馬県など福島県の隣接県弁護団が集団訴訟で連携することを確認したという。県内では公的仲介機関「原子力損害賠償紛争解決センター」による 裁判外紛争解決手続き(ADR)が進行中だが、十分な成果が見込めないとして提訴を検討することにした。

 弁護団は、4月19日に県弁護士会の有志で結成。現在は山形に避難している中で約210世帯が登録しており、そのうち約8割が自主避難者だという。ADRを申し立てている31世帯のうち、自主避難者は24世帯を占めている。

 弁護団では当初、「一刻も早く避難資金を得るためには、訴訟よりADRが効果的」としてADRの申し立 てを進めてきた。7月に申し立てを行った南相馬市の70代の夫婦は強制避難者で、13日にも和解が成立する見込みだが、求めていた1カ月35万円の避難に 伴う精神的苦痛による慰謝料は認められていない。その他の避難にかかる経費はスタッドレスタイヤ購入費など約100万円分が認められ、慰謝料については2 次申し立てか訴訟を検討している。

 一方、自主避難者によるADRでは、避難にかかる一部の費用は認められつつあるものの強制避難に比べ格 段に安く、今年7月以降の経費については一切認められていない。このため、一部の自主避難者からはADRをあきらめ、提訴に踏み切りたいと要望する声もあ がっているという。新潟県では、すでに避難者に集団訴訟について説明を進めており、山形県弁護団も集団訴訟を検討することにした。

 県弁護団の外塚功弁護士は「山形、新潟、群馬など自主避難者の多い県で先駆けて訴訟を行っていきたい」と話し、安部敏団長は「時間だけが過ぎるのを待っていられない」と語気を強めた。

裏返しのエリート意識です。

2014年3月18日 (火)

ウクライナの先に尖閣が見える

041

ポスト・ウクライナという情勢が既に生れつつあります。

冷戦後、米国一極盟主型になったように見えた世界構造が、大きく流動していくのではないかという予感がしています。この変化は思いの外急速に進むかもしれません。

その大きな衝撃的きっかけをつくったのはプーチンでした。プーチンは冷徹な眼でいまのEUと米国の弱点を見抜きました。

彼らは一見強い軍事力と経済力を持っていても、それを経済的相互依存関係が強い場合、制裁に使用できないのです。

オバマは、プーチンとの電話会談で、ロシアとの貿易・投資を凍結や、ロシアをG8(主要8カ国)メンバーからはずすなどといったようですが、せいぜいできるのはG8からの排除ていど。

貿易・投資制限などヨーロッパの反対でできるはずもありません。

もちろん、戦後世界の戦勝国の集まりにすぎない国連は、ロシアの拒否権で一切機能しません。

では独自にEU・NATOが制裁できるかといえば、ドイツのようにエネルギー源の3割までもが当事国のロシアに握られていては不可能です。

ロシアが制裁の報復に天然ガスのコックを締めたら、今の脱原発による薄いエネルギー供給体制では、ドイツ経済は1か月たたずに崩壊します。(欄外参照)

おそらくロシアが制裁報復を宣言しただけで、ユーロの為替は暴落することでしょう。

つまり、プーチンはいくつかの強い立場を持っていてこのウクライナ紛争に臨んだことがわかります。

米国は軍事制裁できない

ヨーロッパのエネルギー源を握っていることで、強い経済の相互依存性を持っていることによって制裁を回避可能である。

国連常任理事国はロシアの拒否権行使で無力化できる。

さらにもうひとつつけ加えるなら

④当事国のウクライナは経済が弱体化し、政治的にも分裂していたために、EU寄りの現政権の先行きは脆弱で、時間をかければ元のロシア寄りに引き戻せる

ウクライナはリーマンショック以降、極度の経済破綻を起こしていました。

ウクライナは潜在的に大きな工業力と、農業も高い穀物生産を持つ国にもかかわらず、経済運営の失敗と、国論の二分化、エネルギーをロシアに握られることによって、いまや国土が分断される危機に立ち至っています。

このことはわが国も他山の石とすべきでしょう。

ところで、このプーチン・ロシアに近い立場の国が世界にもうひとつあるのを思い出されたでしょうか。

そうです、あの迷惑な隣国わが中国です。

かの国は、プーチン・ロシアの持つ②③を兼ね備えており、相手国が④のような場合、①の可能性さえなければ、国際世論など無視できることを発見したはずです。

では、プーチン・ロシアを中国の立場に置き換えてみましょう。

中国が尖閣や南シナ海でプーチン的膨張政策を取った場合、米国はどう出るでしょうか

米国はプーチンにも言ったように、「確定された国境線の変更は許さない」とか「代償を受けることになる」「航海の自由に対する挑戦」といった口先の批判は国務省あたりがするでしょう。

そして経済制裁もちらつかせるでしょうが、もちろんできません。米国経済のサプライチェーンが既に中国に大きく依存してしまっているからです。

「たかだかアジア」のことで経済制裁することによって、「メイドイン・チャイナ」の米国製品が輸出不可能になることは、米国経済界が許さないはずです。

農業界も、聞いたこともない「岩礁」をめぐる紛争ごときで、穀物の最大の買い手の中国に制裁するなんてとんでもないと叫ぶでしょう。

米国ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストであるマイケル・オースリンは、こう述べています。

米アップルのiPhoneが中国で組み立てられていること、中国政府と日本政府で2兆ドル近い米国債を保有していることは誰もが知っている。
それでも平均的な米国民は、アジアの安定と平和を維持するために米国人が血を流す価値はない、米国政府が継続的に防衛予算を割く価値すらないかもしれないと考えている。日本や韓国といった豊かな同盟国がどうしてもっと大きな役割を果たさないのかと疑問に感じている。
遠くの海にある岩礁をめぐって戦闘するという考えを受け入れることができないのである
。」

http://military38.com/archives/30289016.html

オバマは、自身の選挙公約に「米国の青年の血を一滴も流さない」と言って当選した男ですが、まさにその公約どおり、オバマは国防費を大幅削減し、米軍は通常訓練すらままならぬ状態に陥っています。

自慢の空母打撃群も、このままの状況が推移すれば、「11隻のうち3隻を運用停止にせねばならない」とヘーゲル国防長官は発言しています。

オバマは「アジア・ピボット」(アジアへの戦略的回帰)を唱えましたが、実態はゼロです。

カトリーナ・マクファーランド国防総省次官補は、3月4日、米バージニア州アーリントンで開かれた国防関係の会議に出席し、こう述べています。

いま、(米軍によるアジア重視路線は)見直しの対象になっている。率直にいって、もう実行できないからだ」 (日経新聞3月14日)

ウクライナが沖縄に見えてきます。

中国の尖閣進攻が開始されても、沖縄の第3海兵師団は待機のままでしょう。

米海軍も尖閣に五星紅旗が翻ろうが、南シナ海が中国の海になろうが、「沈黙の艦隊」を貫くと思われます。

ただし、いちおう米軍が「いる」ということは魔除けのイワシの頭ていどにはなりますから、今は日米安保を焦って解消に走らないほうがいいと思います。

ただし、あくまでも魔よけ程度の御利益しかないことは心に留めておいたほうがいいのかもしれません。

そう考えてくると米国がなぜあれほどまでに、安倍に対して靖国参拝や歴史問題などに「失望」し、強く自制を求めたのか理由がわかってきます。

単なる歴史観の米中韓の共有だけでは説明がつきません。

米国がわが国領土に対して、中国の軍事侵攻を傍観し、その結果わが国の領土が失われる、あるいは防衛できても大きな損害を出した場合、もはや日米同盟の価値はかぎりなく意味を失います。

結果、日米同盟解消というシナリオが現実味を帯びます。

その場合米国にとっての最悪シナリオは、太平洋に核武装能力を持ち、世界第3位の経済力と技術力を備え、そしてなによりかつて米海軍と死闘を演じた世界唯一の国、すなわち日本が再び「潜在的敵」として登場することです。

言うまでもなく、そうなることは米国の国益に大きく反します。米国はこのような事態はなんとしても避けねばならないわけです。

そのためには「米国が日本のために戦えない」ということを日本に分からせてはならないのです。

したがって、米国の国益は、日中の緊張緩和にあるとオバマは考えています。

このプーチンが引き起こしたウクライナ紛争によって新たな時代が生れようとしています。

それは米国の経済力と軍事力によって担保された一極平和の時代が終りに向かい、替わってむき出しの国家利害と国家利害のぶつかり合う「ネオ帝国主義の時代」にです。

時針の針は、不幸にも100年前の第1次大戦前に巻き戻ったのかもしれません。

核軍縮を唱え、ノーベル平和賞を得たオバマが作り出した世界が、「ネオ帝国主義の時代」だったとは、なんとも皮肉が効きすぎている話ではないですか。

わが国は、当分の間は日米同盟強化を堅持するとしても、いつプーチン化するかわからない中国を前にして、それに対応する知恵が必要とされる時代を迎えたようです。

ウクライナが尖閣にならないようにせねばなりません。

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クリミア、ロシア編入賛成93% 出口調査
時事3月17日

【シンフェロポリ(ウクライナ)時事】ロシアが掌握したウクライナ南部クリミア半島で実施されたロシアへの編入の是非を問う住民投票は16日夜(日本時間17日未明)、投票が締め切られ、出口調査によると、ロシア編入賛成が93%に上り、承認される見込みとなった。

露政府、最強の武器は年間16兆円のエネルギー輸出-制裁対抗
ブルームバーグ 3月17日

クリミア自治共和国がウクライナからロシアへの帰属替えを選んだ16日の住民投票結果を受け、米国と欧州はロシアに対しクリミアを編入しないよう警告した。欧州連合(EU)は17日、ロシアとクリミア、元ウクライナ当局者ら21人を対象に資産凍結と査証発給禁止の措置を決め、オバマ米大統領はロシア政府関係者7人に対する制裁を発動した。

世界最大の石油生産国であるロシアの原油、燃料、ガスをベースとする工業用原材料の欧州と米国への輸出額は2012年に約1600億ドル相当に上った。カナダのカールトン大学の欧州・ロシア・ユーラシア研究所のディレクター、ジェフ・サハデオ氏は、ロシアのエネルギー輸出を止めれば同国政府が必要とする外貨の流入が落ち込むが、欧州の消費者が払う代償も極めて高い上にプーチン大統領の方針転換にはつながらないかもしれないと指摘する。

サハデオ氏はオタワからの電話インタビューで「短期的にはこの方法を取るのは非常に困難であり、ロシアの行動に影響を及ぼすかどうかさえも不明だ」と指摘。欧米諸国が「エネルギー関連の制裁を選択すれば、どの国が最初にそれを無視するかという問題になる」と述べた。

原題:Russia’s $160 Billion Energy Stick Hinders CrimeanSanctions (2)(抜粋)

2014年3月17日 (月)

プーチンをなぜ国際社会は止められないのか?

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ウクライナ問題は米国にとって、後に米国盟主時代の終わりの始まり、あるいはグローバリズムからの逆流と記録されるでしょう。

かつての米国ならば、まちがいなく黒海が射程に入る海域に空母打撃群を急派したでしょう。いま地中海にようやく展開していまが、遅すぎます。

クリミアにロシア軍(ロシアは自警団といっていますが、もちんウソ)が入った時点で抜く手も見せず、空母打撃群の急派をせねば政治的に無意味です。

紛争当初オバマがしたのは、イージス艦を一隻だけを申し訳のように送っただけでした。

このような時期にこそ米国のプレゼンス(存在感)を見せつけるために、11ある空母打撃群を莫大な費用をかけて訓練し維持してきたわけで、政治・軍事的カードを遅れて出してはマヌケです。

これはオバマの弱さはいうまでもないことですが、もうひとつの要因は冷戦期にはなかった経済のグローバル化が陰を落しているからです。

今世界には、冷戦期のようにスッキリと対立する政治・経済ブロックに分かれていた時には存在しなかった、経済的な相互依存関係が強固に張りめぐらされています。

冷戦期のような軍事的パワー替わって、もうひとつの切り札として経済制裁というカードが重大な役割を持つようになっています。

たとえばイランへの経済制裁は、軍事力でなし遂げられなかった核開発を断念させつつあります。

それはイランが石油以外のカードを持たなかったために、経済的疲弊が極点に達したからです。

しかし、イランへの経済制裁はもうひとつの副次的効果を与えました。

皮肉にもイランの制裁による天然ガスの供給の穴は既にロシアが埋めており、ロシアはそのことで欧州市場に強い経済関係を築くことに成功しました。

ロシアは欧州に対して、かつて実際にやったようにパイプラインを締めるぞという恫喝をかけられる立場になると同時に、自らも重要な販路を失うという経済的返り血を浴びる立場にもなったわけです。

一方、欧米も経済制裁のカードをちらつかせながらも、EUの中軸であるドイツは自らのエネルギー源の3割という圧倒的シェアを握るロシアに対して軍事制裁はいうに及ばず、経済制裁すらもできない立場になりました。

かつての1956年のハンガリー動乱でも、米国はヨーロッパに介入できませんでした。それは第3次世界大戦を恐れたからです。

ましていまは単独でヨーロッパの紛争に軍事力を行使することなどは不可能です。

あえてあるとすれば、セルビアに対して実施したようなNATOとの共同作戦ですが、それすらもできない以上、米空母はペーパータイガーだということをプーチンに見破られたことになります。

つまり、プーチンはそのような経済の相互関係が支配する今の国際情勢で勝てるという判断の下に、危ないウクライナ・チキンゲームに出たことになります。

しかし、プーチンはこの「勝利」が危うい均衡に立つことを知っているはずです。

もし、現実にロシアがウクライナ領に軍事侵攻すれば、NATOも動かざるをえないかもしれません。(微妙ですが)

プーチンは、ウクライナ現政権に対して経済的、政治的締めつけはしても、クリミア自治政府の独立をもって落し所とするはずです。

ロシアに編入まですることは、この危うい均衡を破ることになるので、構えだけ見せて実際はしないのではないでしょうか。

ロシアは、親欧米派のウクライナ暫定政権発足を受けて、昨年末に約束した150億ドルの対ウクライナ金融支援を30億ドル実行済みの段階で凍結しています。

また、ロシア産天然ガスのウクライナへの供給価格の割引を停止し、天然ガス代金15億ドルを滞納していることを理由に、ウクライナ向け天然ガス供給を停止する構えも見せています。

今後、ウクライナに対してはロシア系住民が多く住む東部の状況をにらみながら、この2枚のカードを繰り出してくると考えられます。

ただし、ウクライナへの天然ガス供給を止めると、その先の欧州各国への供給も止まるために、そこまでやるかどうかは不透明です。

欧米諸国の資本流出や制裁措置によってロシア経済は既に為替の暴落などの悪影響が出ていることからみても、そこまではやらないと思われます。

さて最大の敗者は言うまでもなく、米国です。今回のオバマの弱腰によって米国は、経済制裁はできない、かといって軍事制裁などは話の外という徹底した弱体ぶりを世界中に印象づけたはずです。

これほどまでに米国がひ弱く見えたのは、戦後始めてではなかっのでしょうか。これを見て、米国が結ぶ多くの同盟関係は一斉に揺れ動くことでしょう。

さて、これを興味深々で見ていたのが中国です。中国は、この顛末を見るなり、いままでのあいまいな立場から、プーチン支持に回りました。

しっかりオバマは、プーチンだけではなく中国にも足元を読まれてしまったことになります。

中国は、経済的依存性によって米国ができることが少ないことを見てとったはずです。

長くなりましたので、もう一回続けます。

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■プーチン露大統領は来週決断
ブルームバーグ2014.03.15

ケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相は14日、ロンドンで6時間にわたり会談したが、ウクライナをめぐる対立の打開には至らなかった。ウクライナ南部のクリミア半島はロシアへの帰属替えの是非を問う住民投票を16日に予定している。

ケリー長官が会談後の記者会見で述べたところによると、プーチン露大統領は「日曜の住民投票が終了するまではウクライナについて何も決断を下さない」。ラブロフ外相は別の記者会見で、ロシアは住民投票で示される「クリミア住民の意思を尊重する」と言明した。危機解決について「共通のビジョンがない」とも述べた。

米国と欧州連合(EU)は制裁をちらつかせ、クリミア併合を思いとどまるようロシアに迫っている。ウクライナ政府によればロシアは南部クリミアを掌握し、ロシア・ウクライナ国境の兵力を増強している。エストニアの国防相はこの日、ロシアがウクライナ東部に侵攻する準備を整えていると訴えた。

ケリー長官は、ロシアが方向を変えなければ相応の「結果」に直面すると繰り返し、ウクライナにおけるロシアの「合法的な権利」を守るより良い方法があると説いた。

ラブロフ外相は、ウクライナ東部で13日に起こり犠牲者を出した親ロシアと反ロシアのデモ隊の衝突に怒りを表明した。その上で、ロシアはウクライナ東部を「侵略する計画はない」と言明した。

ホワイトハウスのカーニー報道官はワシントンで、「ロシアが緊張緩和を選択するという状況にならなかった」ことは「遺憾だ」と述べ、米国はクリミアの住民投票が「実施された場合に対応する用意がある」と記者団に言明した。

ケリー長官は、クリミア半島および国境地帯へのロシア軍の配備を米国は深く憂慮しているとし、軍の行動を凍結すれば外交努力の時間が得られると強調。「言葉よりも行動を」と呼び掛けた。

2014年3月15日 (土)

週末写真館 土浦港散策

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2014年3月14日 (金)

環境テロリスト・シーシェパードの誕生その1 当たり屋戦術の創始者グリーンピース

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シーシェパードがまたアメコミ的調査捕鯨攻撃をしかけているようです。

なんですか、あの船首にシャチの口みたいなのを描いた船は、バッカじゃねぇか!(笑)

前回はバットマンカーもどきの黒塗りのステキな奴でしたが壊れて、あえなく自沈しちゃいましたね(こんどは失笑)。

Photo (写真 シーシェパードのポスター。もはや2流どこのハリウッド。中央の悪党づらが頭目のポール・ワトソン。目下、国際指名手配中。海賊旗みたいなのが彼らの旗。どこまでもマンガ的だが、やることはエグイ。)

乗っている船はテレビで流されていて、その内容はご想像どおりアメコミ・アクションムービーです。

悪い日本の捕鯨船が鯨を殺しまくっています。哀れ可愛い子鯨も刃に(悲鳴)。

そこに敢然と登場したのがジュリー・ロジャーズひらめかせたシーシェパード!(音楽高まる)

てな調子で、まるでキャプテン・アメリカって調子。視聴率もよろしいようです。

実際、カリフォルニアにはシーシェパードの店なんかあって、シーシェパード・カードも売っていて、カードを使うと自動的に数%シーシェパードの懐に転がり込まれる仕組みです。

まるっきり商売ですが、そのとおり、私はあれはビジネスだと思っています。

ただ、その「商売」の仕方がエグくて、調査船のスクリューを狙ってロープを投げたり、劇薬の入った瓶などを投げ込んだりしています。

海賊行為」という立派な犯罪行為で米連邦高裁はSS(シー・シェパード)を「海賊」と認定すると判決を下しています。

そのためにケネディ大使は、シーシェパードを内心ひいきにしているらしいのですが、残念ながら大っぴらには支持できないようです。

ちなみに彼女の従兄弟のロバート・ケネディ・ジュニアは、シーシェパードの顧問弁護士をやっているようです。

あの国のリベラルな富豪やスターたちの寄付はハンパじゃないようで、クリスチャン・ベールとか、オーランド・ブルームなどがシーシェパードに寄附しているのがリストアップされています。ファンの方、お気の毒。

というわけで、寄付を集めるには目立たにゃならんというわけで、「アグリー・ジャプ」攻撃に今日も飛び回っているわけです。

さて、あまり知られていないようですか、シーシェパードを作ったポール・ワトソンはグリーンピースの古いメンバーのひとりでした。

彼はグリーンピースから、彼らの「ビジネスモデル」をそっくり盗み、今や本家に並ぶ興隆を見せています。

本家としては面白くないので、本家グリーンピースと、分家シーシェパードの仲は険悪です。近親憎悪とでもいうんでしょうかね。

前の時も、シーシェパードが調査船の位置がわからなくなり、グリーンピース船に問い合わせたところ、にべもなく「だれが教えてやるもんか」と拒否されています。

というわけで、彼らがいかなる団体なのかを知るには、彼らのルーツであるグリーンピースから知る必要があります。

グリーンピースは今やとてつもない巨大な団体になってしまいました。会員290万人、支部数世界41カ国、専従スタッフだけで1万人以上はいると思われます。

立派な多国籍企業といってよいでしょう。まちがいなく世界最大の「環境保護団体」です。

十数年前の一時期、恥ずかしながら私も会員になったことがありました。

しかし、入ってすぐに私が疑問に感じたのは、納めた会費の使途が一切明らかにされていないことでした。

年次会計報告が一般会員には公開されず、単なるニュースレターしか来ないのです。

ニュースレターには、「こんなにグリーンピース大活躍」みたいな宣伝ばかりです。

これは環境保護団体としてはおかしいのではないかと、私は再三にわたてグリーンピース・ジャパン事務局に予算支出内訳を問い合わせたのですが、ナシのつぶてでした。

私はグリーンピースという組織は、なにか人に言えないような大きな「秘密」のようなものでもあるのかしら、と当時思った記憶があります。

結論から言うと、「その人にいえない秘密」とは、80年代から滔々とグリーンピースに流れ込んだ米国財界の日本制裁の世論作りのための金ではなかったかと思います。

初期のグリーンピースは、1975年に「オペレーション・エイハブ」を立ち上げる時まではっきりと反核団体といっていい団体でした。

つまり反捕鯨ではなく反核運動団体だったのです。

その規模も小さく、今のような各国に支部を持つなどというのは夢のまた夢といった小グループだったのです。逆にいえば、本来の運動体としてまっとうだったとも言えます。

この反捕鯨闘争の「オペレーション・エイハブ」で、グリーンピースは年来の抗議船戦術を「進化」させました。

エイハブは、メルヴィルの「白鯨」の船長の名前で、モビィ・ディックと格闘して死んでしまいます。

いいネーミングです。こんな初期グリーンピースのメンバーの叙情性は今でも私は好きです。

ただ、あのエイハブという名は、鯨を勇魚(いさな)と呼び、銛を片手に格闘した日本の鯨捕りにこそふさわしいのですがね。

この時、ポール・ワトソンはまだ下っぱで、大学でのインテリ・ヒッピーが多かった初期メンバーと異質なタイプだったと伝えられています。

貨物船の船員上がりで、ガッシリした体躯に払い下げの戦闘服を着込み、操船に馴れた実務派だったようです。

この肌合いの違いから、後に彼はグリーンピースの中で孤立し、やがてタテゴトアザラシ事件の時に暴力ざたを引き起こして除名されることになります。

それはさておき、彼らはそのときから、ゾディアックという強力なエンジンを搭載した大型ゴムボートを日本の捕鯨船との間に割り込ませ、接触事故を誘うというきわめて危険な戦術をとり始めました。

それまでは調査船と並行して抗議する程度だったのが、「実力行使」に手を染めたのです。

このとき調査船が少しでも舵を誤れば、ゴムボートは上院ごと調査船にまきこまれてしまいます。

実に危険な戦術で、万が一事故が起きた場合、日本側は彼らを「殺した」として国際的批判を浴びて、調査捕鯨も中止に追いこまれるでしょう。

それを狙った戦術だったわけですが、これは相手国が日本だったから取れた戦術です。

もしこれがフランスならば、ウーもスーもなく調査船に乗った特殊部隊員に捕縛されてしまったことでしょう。

実際、後にフランスは目障りなグリーンピースの抗議船を爆破することも平気でしています。

ですから、「平和主義」の日本だと思って初めからなめていなければ出来ない方法だったわけです。やれやれ。

ちなみに、分家のシーシェパードが捕鯨国が日本だけではないのに、執拗に日本ばかりつけ狙うのも一緒で、実際ノルウェイに同じまねをした時は、見事返り討ちにあっています。

さて、彼らの抗議の横断幕は、捕鯨船に対してではなく、ゴムボートを撮影しているテレビカメラに向かって掲げられていました

つまり、抗議の横断幕は調査船からは何も見えず、映しているテレビカメラにだけ向けていたのです。彼らがどちらを向いて「抗議」しているのかよく分ると思います。

この映像を米国のテレビ局に提供することで、グリーンピースは一躍時代の寵児に躍り出たのです。

これこそが今、シーシェパードの取っている暴力戦術の原型です。

グリーンピース自身は違うと言いますが、言い逃れのしようもなく、非暴力直接行動の原則を逸脱するものでした。

ガンジーやルーサー・キング師、あるいはダライ・ラマ14世などの非暴力直接行動は、抗議の対象に危険を承知で「我が身を投げ出す」ことにより、敵対者をも覚醒させるという方法でした。

しかし、グリーンピースの「発明」したこの戦術は、テレビ宣伝目当ての当たり屋まがいのもので、精神の高貴さとはほど遠いものでした。

そして今や、彼らの分派であったシーシェパードがグロテスクなまでにそれを戯画化してみせています。

しかし、これが受けました。バカ受けしたといっていいでしょう。

1980年代当時、日米経済摩擦を抱えて日本に苛立ちと不安を募らせていた米国民は、「可愛いクジラを殺す残酷なジャップ」に果敢に突撃するグリーンピースの「勇姿」に熱狂しました。

ここからグリーピースの繁栄と堕落がはじまったのです。

つまり、日本だけを標的にして、ジャパン・ディスカウントをする勢力と、「環境保護」を掲げる連中の利害が見事に一致したわけです。

ここに新たな「ジャパン・バシング・ビジネスとしての環境運動」という奇妙な新種が登場したのです。

それがグリーンピースであり、その過激な分派がシーシェパードだったわけです。

地球の壮大な変動周期とは

066
温暖化二酸化炭素説というのは、あまたある気候変動説(おそらく10くらいはあります)のひとつくらいならほどがいいのです。

そうですね、人為的温室効果ガスはもあるでしょうね、という程度なら私もそのとおりだと素直に思います。 

ところがIPCC二酸化炭素説王朝が成立し、他の説を「粛清」すると、二酸化炭素だけですべての気象変動を説明できるような錯覚が生まれました。 

特にマイケル・マンのホッケースティック曲線のように、あたかも二酸化炭素の増大が地球温度とパラレルになって見えるはなはだ怪しげなグラフが出てからは、もういけません。 

他の説は皆忘れられるか、こっそりと異端審問にかけられて葬られてしまいました。

たとえば、IPCCは太陽の活動の影響を、二酸化炭素の温室効果の7%ていどと過小評価をしています。

忘れられた学説でいちばん有名なのは、おそらく旧ユーゴ(セルビア)のミルティン・ミランコビッチという天才の唱えたその名もミランビッチ・サイクルだというのは衆目一致するでしょう。 

これは数万年単位でなぜ地球に氷河期が来て、その後に温暖期(間氷期)が来るのかを、公転軌道と地軸の傾きから説明したものです。

地球の軌道が楕円だということをご存じでしょうか。 

約10万年の周期で地球は正円になったり、楕円になったりすることは知られていました。 

楕円軌道の時と正円軌道の時はなんと1800万キロも離れているのですから、地球に影響が出ないはずがありません。。(下図Wikipedia 楕円軌道)

実際、楕円の軌道の時は外周が太陽から離れてしまいますから地球は冷えていき、その逆に近づくと温暖化します。 

実は21世紀の地球公転軌道は、太陽に近づいている軌道上を回っていますから温暖化しているというわけです。 

次に、地球は公転しながら自転軸が変化しています。その傾きは21.5度から24.5度です。(図 同)

この傾きが大きいと夏が暑くなり、冬は寒くなるといった季節さが激しくなります。ちなみに現代は23.4度で傾きが大きいほうの時期になります。この周期は約4万1000年です。 

さて、これでお終いかと思ったらもうひとつあります。それが地軸そのものの回転運動です。独楽が首を振るように太陽と月の引力の影響で、自転軸が回転しています。 

これを歳差(さいさ)運動と呼び、その周期は約2万5800年です。(図 同)

さあ、この3ツの壮大な地球の軌道や自転軸の回転による周期が、地球の気象を決定づけています。

整理すると、周期の長い順番から
①約10万年周期の地球公転軌道の離心率の変化
②約4万1千年周期の地軸の傾斜角の変化
③約2万6000年周期の歳差運動

の3つが重なり、日射量の周期的変化が生じ、日射量の極小期が氷河期に当たり、極大期が間氷期(温暖期)にあたります。

ファイル:Milankovitch Variations.png

上図のPrecessionというのが歳差運動のことで、その下のObliquityは自転軸の傾斜角、3番目のEccentricityは公転軌道の離心率です。 

この三つの周期で地球気候が決まる分けてすが、その計算式は専門家にも複雑怪奇だそうです。 

しかし、それが正しいと立証されたのは、70年代に、海底のボーリング調査によって、採取されたサンプルの有孔類の酸素同位体比からえられた気象変動周期とミランコビッチ周期がぴったりと一致したためです。

これにより、太陽の日射量と氷河期の成立には強い相関関係があると分かりました。

国立天文台の伊藤孝士氏は、自転軸は傾きが大きければ極地方に入射する日射量は大きくなって氷床は溶けて小さくなり、傾きが小さければ極地方に入射する日射量が減って氷床は成長しやすくなる、と述べています。

この他に地球気候に大きく影響を与えているのは地球の自転、海流や気圧の変化により約30年前後の周期で大気と海洋が連動して変化する太平洋振動などもあり、そのうえに太陽黒点の変動も重なっているわけです。

こんなに変数が多いのに、どうして人為的二酸化炭素ガスだけが、地球気象の決定要因だと断言するのか理解に苦しみます。

2014年3月13日 (木)

歴史認識は歴史的世界構造を変えない限り変わらない

003

いわゆる従軍問題について、政府は河野談話を見直さない方針であることを決定したようです。

結論から言えば、私はこれを支持します。

昨今の中韓のわが国に対する挑発行為は常軌を逸しているのは、日本人の多くが感じているところです。

あの毎日のように吐き出される、「オレの歴史観だけが正しい。だから手をついて謝れ」といった謝罪強要だけにとどまらず、あることないことを世界にふれて回るに至っては韓国のおでこに手を当てて「熱ないの」と聞きたいくらいです。

韓国が好きでも嫌いでもないと思っているこの私ですら、あれを聞かされると一日が暗くなりますよ。しつこいを通り越してもはや病的です。

もはや中韓とは、相当に長期間の冷戦状態は避けられないと覚悟すべきでしょうね。

状況が変化するとすればパクか、習か、安倍の政権が交替する時ですが、それは今の時点では読めません。三政権もそれなりに国内的な安定構造があるからです。

パク、習政権には共通した体質があります。それは内部の経済・社会の混乱を、外部への緊張関係を作ることですり替えることです。古典的ですが、有効な手段です。

この東アジア3カ国のなかで、わが国だけが、そのような内部矛盾の外部への持ち出し」をする必然性を持ちません

たしかに、国民感情としては、「これ以上国内の問題に外国にとやかくいわれたくはない」「内政干渉をするな」「侮辱するのもいいかげんにしろ」という内圧が高まっているのは事実ですが、それはまだ抑制可能な範囲内です。

だとすれば、中韓の反日は風土病だと思って放っておけばいいのです。

韓国は、未来永劫にわたって反日を取り下げるつもりはないでしょうし、今、首相の謝罪を呑めば、その次は天皇の土下座を要求することでしょう。

中韓に対して必要な配慮は、距離をあけて「相手が喜ぶことをしない」ということです。

「敵が喜ぶこと」とは、ひとつには戦後実に35回もやって無意味だった謝罪(※)をしてみたり、逆に靖国参拝や問題の見直しのような中韓が狂喜乱舞するような歴史ネタをこちらから提供しないことです。

それを考えるヒントに、ボストン大学のウィリアム・グライムスが執筆した「安倍首相は米国に出入り禁止となるなかれ」という記事があります。

グライムスは知日派リベラルですので、そのバイアスはあると思って読むべきですが、要約すれば以下のこと述べています。(要約は站谷幸一氏による)

1.安倍政権の政策は米国にとって素晴らしい
2.しかし、安倍首相個人は問題だ
3.安倍首相の無神経な言動は米国の公式的見解からして弁護不能
4.その為、安倍首相の行動は周辺諸国との衝突と相まって、米国のアジア政策における影響力を低下させる障害でしかない
5.このままいくと米国は鳩山由紀夫と同じような処分を下すことになる

また、オバマ政権の対日担当の国務省ダニエル・ラッセル次官補は、3月4日の上院外交委員会のアジア太平洋小委員会でこう述べています。

「北東アジア地域での米国の同盟関係(日米同盟や米韓同盟)は、そのいずれもが中国を対象とはしていないことを明確にしたい」

あるいはこうも言っています。

「現段階ではわれわれの共通の協力や利害関係にもかかわらず、日韓関係は緊迫している。同盟諸国同士のそうした緊迫は懸念の対象であり、日韓両国の誠意ある対応を必要とする課題である。
難しい歴史問題への対処には、慎重さと自制を示す必要がある。共に癒やしを得られる方法で処理することが重要だ。米国は日韓両国と密接に協力し、緊張を減らす措置を取ることを奨励している」

要約すれば米国政府は

1・「米日同盟はアジア・太平洋の平和と繁栄の基礎である」
2・「「オバマ大統領の政策目標は、米国と日本との強く、成長する絆なくしてはまったく達成できない」
3・「日米同盟は中国を対象としてはいない」
4・「日韓関係が緊迫するので歴史認識の対処は慎重さと自制が必要である」
5・「米国は日韓両国と密接に協力し、緊張を減らす措置を取ることを奨励」

1は日米軍事同盟についての旧来の米国の原則的立場の確認です。

2はTPPなどの経済連携を指すと思われますが、問題は3と4です。

3で米国は中国を対象としないと明確に言い切っています。米中の軍事衝突は絶対にしたくないというオバマの考えがわかります。

つまり尖閣などに中国の進攻があった場合においても、米国は日米安保を発動しないということです。

4は、日本に対しての注文です。名指しは避けていますが、これは安倍が韓国に対して歴史認識で「慎重に自制しろ」と言っています。

5は、ハーグでの核安全保障会議での米国大統領を加えた米日韓の首脳会議などのような、米国が日韓を仲介する動きです。(韓国は拒否しました)

安倍の政権奪取後の政策は、TPPや辺野古、特定秘密法案、そして集団的自衛権にいたるまで、すべてが日米同盟強化のために捧げられていると言っても過言ではないはずです。

しかし、ここで留意しなければならないことは、米国がこの東アジアの緊張した国際関係の原因を日本が誤った歴史認識を持っているために国際緊張が高まっているかのように見ていることです。

バイデン副大統領が訪中した折も、習は「日本が誤った歴史認識で攻撃し、東アジアの緊張が高めている。安倍はチキンレースをしている」と発言しました。

わが国からすれば,毎年2桁の軍事膨張をして周辺国に圧力をかけておいて、よく言うよですが、それについてバイデンは無言でした。

残念ながら、おそらく米国は似た感想を持っていると思う方がいいでしょう。

米国内ではなんと日米同盟否定派の鳩山と同列に見るグライムスのような者も多く、国務次官補からは「歴史問題での慎重さと自制」を求められています。

ラッセル国務次官補は、安倍の歴史認識が日韓関係の緊迫の要因としていますが、これは実は米国と韓国は歴史認識の価値観を共有しているからです。

米国の歴史観は、「日本は戦前まで軍国主義の侵略国家だった。戦時中にさまざまな残虐行為やレイプを働いた。しかし、今は米国に破れて改心してパートナーとなっている」といったところです。

まぁ、悪法師の弁慶が、牛若丸に負けて忠実な家来になりました、というストーリーですな。

その弁慶にいまさら、「いや、あれはオレにも正当性があったんだ」などと家来ごときに言われたくないよ、というところですか(苦笑)。

まるでアメコミ的薄っぺらな歴史観ですが、そう米国が考えている以上、そういうものとして対応するしかありません。

オバマは、今の日米同盟に片足を置きながら、ゆっくりともう片足を中国の側に移そうとしています。これがG2(米中2大国支配)路線です。

この時期に、オバマを「あらら側」に押しやる利益は日本にまったくありません。

今は安倍は、デフレからの脱却、憲法改正、集団的自衛権などの難問を、じっくり国民と会話することが大事なのであって、拙速な歴史認識の変更については横に置くことです。

それが中長期的な国益なのだと分かりやすく国民に説明すべきです。

といっても、中韓は毎日のように歴史認識で批判を繰り返していますから、それには答えられる範囲で政府が原則的に対応し、民間レベルが対応するしかないでしょう。

歴史認識は、民間レベルにおいてしっかりとした検証機関を設けて、いわば福島事故の時の、「民間事故調」の歴史認識版「民間歴調」を作って、そこが検証していけばいいのではないでしょうか。

「民間歴調」のトップには米側から見てもリベラルである人物を据え、分科会でわが国の戦争犯罪と言われている南京事件や従軍問題などを調査します。

歴史観を統一する必要はなく、事実を洗い出すことに主眼を置くべきです。完成したならば英訳版も出版すべきです。

歴史観の変更というのは、非常に困難な事業です。

政府がいったん河野談話を政府見解で出してしまえば拘束力があります。(だから河野談話のようにあんなに慌てて拙速に作るなと言いたい)

民間が批判するのは自由ですし、むしろしたほうがいいと思いますが、民間の歴史認識見直しと政府の見直しとはまったく次元が違う問題なのだということをはっきり別けて考えておいたほうがいいでしょう。

たった1年や2年でできることではありません。

たとえば、関税自主権という主権国家としてとうぜんの権利を獲得したのが1911年(明治44年)ですから、結ばされた1958年(安政5年)から53年後です。

あるいは三国干渉に対してわが国はその屈辱を飲んで、日露戦争においてどれほどの犠牲を払ったことでしょうか。

歴史観は、歴史構造と共にあります。歴史構造の変革を伴わない歴史認識の変更などありえないのです。

そして現時点で、わが国にはそのような戦後歴史構造の改変に手をつけるだけの力量も覚悟もないのは自明です。

そうである以上、心配なのは安倍首相の「口」です。

あれだけ米国が喜ぶはずの政策をしていて裏切られてしまい、「出入り禁止処分だ」などと言われるのは、その軽い「口」のせいです。

比較して気の毒ですが、安倍には鳩山の人の良さと似た部分があって、保守層の支持者が喜ぶだろうということで後先なく発言したり、行動してしまう「軽さ」があります。

安倍の取り巻きに至っては、「我が世が来た」とばかりにはしゃぎすぎで、かえって安倍の足をひっぱる結果になっています。

こんなことを続けていると確実に高転びしますよ。

政治家はいい人である必要はまったくありません。むしろ今のような困難な時期には善人な政治家ほど危険な存在はありません。

今の時期には敵からも味方からも、喰えぬ奴と思われていて欲しいものです。安倍の祖父のように。

※「日本の戦争謝罪発言一覧」Wikipediia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E8%AC%9D%E7%BD%AA%E7%99%BA%E8%A8%80%E4%B8%80%E8%A6%A7

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-2eb5.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-e37c.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-f2e5.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-275e.html

2014年3月11日
菅義偉官房長官は10日、日本政府は、いわゆる「河野談話」を見直す意図はない、と明言した。談話は1993年、戦時中の従軍制度への旧日本軍の関与を認め、心からの「お詫びと反省」を述べたもの。閣議決定はされていないが、河野洋平官房長官(当時)により、内閣の意思として発表された。

 ただ、菅氏は、河野談話の内容を見直すつもりはないが、元の証言など、それを裏付ける証拠の検証は続けるだろうとも述べた。検証の結果、疑問が生じた場合の対応には言及しなかった。

【見直し発言は安倍政権支持者への配慮】

 ニューヨーク・タイムズ紙は、菅氏の談話見直し発言は、ナショナリスト議員らからの圧力のもと行われたとみている。これは、右寄りの安倍政権支持者をなだめるための政治的な術策にすぎない、との批評家の見解も取り上げている。

 ブルームバーグなどは、安倍首相が河野談話を破棄するのではという韓国の懸念を根強く、両国関係悪化の要因だ、と報じている。実際、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は先週、国連の人権問題に関する会合で、日本が「犠牲者の尊厳と名誉」を侮辱していると非難していた。

【アメリカは河野談話支持を歓迎】

 AP通信によると、米国務省のサキ報道官は10日、安倍政権が河野談話を見直さないとの発言を「前向きな一歩」と評価した。この問題をめぐり、同盟国である日韓の亀裂の深まりをアメリカは憂慮しているとみられる。

【韓国は日本の今後の対応を様子見】

 朝鮮日報は、菅長官の発言について、韓国外交部当局者の「いつも繰り返している話。言葉だけでなく行動で示すべき」というコメントを掲載。河野談話継承の立場を明言しながら、談話の作成過程を検証する方針を示すなど、日本政府の動きへの不信感が強い。

 同紙は日本に対し、河野談話の継承に加え、問題に関して、日本が法的な責任を認め補償することを求めている。12日に予定されている斎木事務次官の訪韓に対しては、どのような「手土産」で関係改善を図るのか、政府は様子見の姿勢だと報じる。

 なお、韓国、中国から、菅氏の談話継承発言への公式な言及は今のところみられない。

2014年3月12日 (水)

脱原発派の主張をやんわりと受け止めてしまった安倍首相

052
お嫌いの方は名前を聞くだけでげーっのようですが、私は安倍晋三という政治家を面白い人だと思っています。

やはり「昭和の妖怪」とまで言われた岸信介の血なんでしょうかね。一筋縄では行かないのです。

彼の政治のおかしみはその「あいまいさ」にあります。別な言い方をすれば、遠回しに攻めることもできる人物なのです。

その本領が発揮されているのが外交分野で、今彼はロシア制裁について言を左右しています。米国に対しては総論賛成、各論、つまり制裁にはう~んなのです。

オバマみたいなぶざまな外交しかできない人には、安倍は狡猾な奴と写るでしょうね、きっと(苦笑)。

それはさておき、昨日も触れましたが、安倍首相は再エネのFIT(全量固定価格買い上げ制度)について「3年ていど導入を最大限加速する」という形で後3年間程度の期限を示唆しました。

ニュースなど見ても、脱原発派の皆さんの反応がないので、やや拍子抜けしています。

これは婉曲な表現ながらも、あと3年、つまり2017年頃までにあの悪名高きFITを止めるかもしれないということですよ。意味分かってます?

政治的表現で「3年ていど導入を加速する」ということは、3年たったらその先は分からないということですよ。

ハッキリ言えば、どう見ても腐敗の温床になっている太陽光の部分は切除して、次の段階を目指すということです。

経済産業省は、太陽光の実態にやっと重い腰を上げてメスを入れましたが、これは官邸のFITへの不信の反映です。

安倍首相が、菅直人の置き土産のようなこの制度を快く思っているはずがありません。ただ、彼は前政権のように子供じみたちゃぶ台返しをしないだけです。

この伏魔殿になりかかったFIT制度を何かしらの再編、有体にいえば段階的値下げから消滅に向かうのは避けられないでしょう。

今まで経産省官僚は、FITによる電気料金値上がり分は消費者や企業に電気料金として転化しています。

これがドイツのような賦課金という名の税金徴収を伴うものなら財務省がらみになるために経済産業省の独断では出来ませんが、今の形ならば整理していくことも容易です。

このあたりは、経産省はしっかりと「ドイツの悲劇」を学んでいます。

ドイツは電気料金のうち、36%ていどが再エネ関係の賦課金(税金と一緒)という重税構造ですが、わが国は総括原価方式で消費者に転化可能です。

おそらくは原発停止による輸入燃料コストの上昇と再エネFITによる電気料金の高騰を、一回国民や企業にしっかり味合わせてから、こう言うのではないでしょうか。

これ以上の電気料金の値上がりは、デフレから完全に脱却したとはいえない今の経済状況では、国民と企業の忍耐の限界を越えている

FITが消滅したら再エネのような不安定で、高価なエネルギー源は市場淘汰されるしかありません。

現にドイツは、太陽光のFITを大幅縮小し、洋上風力発電にスイッチしました。

日本もおそらく同じ道を歩むはずです。つまり太陽光のFIT大幅縮小と、かろうじて残ったとしても風力へのシフトです。

しかし日本はドイツと違って海岸線が急に深くなっているために洋上風力発電適地は限られています。また洋上風力発電所は巨大なコストがかかります。

したがって、FITの廃止、ないしは段階的縮小と共に再エネの伸びは事実上停滞せざるを得なくなります

その時、脱原発派が唱えていた[脱原発=再生可能エネルギー]という基本図式が崩壊します。

安倍首相は(意図したかどうかわかりませんが)、結果として脱原発派の論理支柱を、議論ではなく現実の結果において崩したことになります。

すなわち、脱原発=再エネ=発送電分離(電力会社解体)というシナリオを、あえてFITを続けることによって国民に原発即時ゼロ派の政策の実現不可能性を実証して見せた、ということになります。

私は今のような原油高の時期に、電力自由化とセットで原発即時ゼロを叫ぶことは正気の沙汰ではないと思っています。

たとえば電気料金は、小売りの自由化程度で下がるものではなく、もっと大枠の天然ガス国際市場でわが国が売り手市場になっていることに原因があります。

わが国のエネルギー供給が、原発停止により不安定になっている時に、売り手がディスカウントしてくれると思っているほうがマヌケです。

好むと好まざるとに関わらず、原発が運転停止し、20~30%のエネルギー源が失われている現状ではエネルギー価格は高止まりのままです。

というように、安倍首相は真正面から脱原発を否定しませんでした、と書くと、猛烈なブーイングが飛んで来ます。こんな感じでしょうか。

安倍は再稼働すると言ったろ。
いえ、再稼働を決めたのは野田政権です。

原発輸出を推進しているだろう。
いえ、それは管政権です。

再エネはどうなってるんだ。
FITはそのまま管内閣から受け継いで推進していますし、止めるとはひとことも言っていません。

東電解体はどうなったんだ。
東電は事故の後始末の問題があるので別問題ですが、旧来の幕藩体制といわれた電力業界については、電力自由化もすると言っていますし、小売りはもう始まるようです。

ね、たぶん気がついてないでしょうが、脱原発派の主張は既に巧みに安倍氏の政策に折り込まれているのですよ。

脱原発派は総選挙、参院選、都知事選と三連敗です。小泉、違った細川だった(笑)、宇都宮両氏の即時ゼロなんて誰が考えても不可能なスローガンでした。

もう口酸っぱく言っていますが、脱原発派は「放射能の危険」ばかりの勉強に偏っていて、エネルギー論がないのです。

唯一の具体論があの飯田哲也さんのドイツの劣化コピーで、右へ倣えなんですから、勝てる道理がありません。

ドイツ自体の方法論も問題山積みだった上に、それの直輸入劣化バージョンですから、やるまでもなかったと、私は思います。

飯田哲也さんが考えた、脱原発=再性可能エネルギー=電力自由化とい3段仕掛けは、他ならぬ安倍さんによって形をやや変えて実行に移されました

結果は、いかがだったでしょうか。再エネの非力さはさらけだされ、そのブースターと期待されたFITにはケーキにたかるアリが群がるといった有り様です。

あと残る、電力自由化も明るい未来は期待できません。小売り自由化でも、電気料金もいっかな下がらないどころか、かえって混乱しか残らなかったのがやがて分るでょしう。

なぜ分るのかって。ドイツのように発送電分離してこその小売り自由化だからです。小売りだけ先行しても意味がありません。

しかもドイツの場合、結局発送電分離しても、既存の電力会社間の合併再編が進んだだけでした。このように、ドイツ型脱原発論はわが国で定着することはないと思います。

しかし賢明というか、狡猾というか、安倍首相は脱原発派の論理を頭から否定するのではなく、実際やってみせて結論を国民に見せたのでした。

脱原発派の中で唯一具体論を持っていたのが飯田哲也さんですから、あと数年後のFIT終了時には、あの山本太郎議員的ゴリゴリの政治主義者だけしか残らないのかもしれません。

2014年3月11日 (火)

再エネFIT制度、今や投機屋と詐欺師の巣に

 056

東日本大震災から3年目を迎え、いまだ復興の途上にある被災地の皆様に心から応援の言葉を送ります。

この震災と津波は、多くの悲劇を生みましたが、同時に人間の崇高さも沢山教えてくれました。

あえて今、ひとり上げるとすれば宮城県三陸町防災担当職員だった遠藤未希さんです。

彼女は津波の来襲から町民を救うために、最後の最後まで放送で呼びかけ続けて自らも津波に呑まれて亡くなりました。

彼女は24歳、半年後に結婚を控えたいちばん幸福な時期でした。

このような人々がどれほど沢山いたことか。私たちはあなた方を誇りに思います。本日午後2時46分黙祷を捧げます。

震災や原発については今後も、さまざまな形で記事の中で触れていきたいと思います。
がんばれ、東北!

                      ~~~~~~~~

安倍首相はこのほど打ち出したエネルギー基本計画で再生可能エネルギーについて、「3年程度導入を最大限加速する」という表現で期限を切りました

これはあまりに実効性の薄い再エネの実力を見切ったものです。

太陽光は最大のメガソーラである浮島発電所の発電実績は1年稼働して、柏崎刈羽原発1号機のわずか15時間分ていどでしかありません。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-cf07.html

到底ベース電源の資格などないことは明白です。そのようなことはヨーロッパの先駆例で既にあきらかなのにもかかわらず、脱原発=再エネという誤った固定観念から開始してしまいました。

今後、太陽光から洋上風力などの方向にシフトすることは必至だと思われます。

そのうえ、菅元首相が強引に始めた固定価格全量買い取り制度(FIT)は、今や投機屋と詐欺師の巣になりかかっています。

まず、出るべくして出たFITがらみの不祥事からみていきます。

「国が普及を進めてきた再生可能エネルギー業界に2月14日、ついに経済産業省の“メス”が入った。再生エネルギーで発電した電気を電力会社に一定価格で買い取ることを義務づけた固定価格買取制度(FIT)の認定を受けたにもかかわらず、運転を始めていない太陽光発電約670件について、認定取り消しを検討すると発表したのだ。前代未聞の事態の背景には、「いくらでもズルができる」と業界関係者が明かす制度の致命的な甘さがあった。」(産経3月8日)

この制度の根本的欠陥は、その買い取り価格が、あまりにも常軌を逸して高いことでした。

民間による参入奨励のために、買電価格を42円などという価格にすれば、ケーキに群がる蟻のような人達をひきつけるのはあたり前です。

しかもいったん42円と決まれば、20年間固定価格というボーナス付きです。

ドイツをまねしたものですが、かの国でもボロボロなのによくもこんな欠陥制度を議導入したものです。

結果、わが地域にもチラシにまで、「高価借り上げ!太陽光発電用地急募!」という広告が頻繁に入るようになり、今まで資材置き場だった場所にはフェンスが張られ、「太陽光発電事業用地」と書かれた看板が立つようになります。

この42円買い取りは初年度限定だったために、まさに異常な新規参入があり、それが次年度で38円に下がると、その勢いは止まるどころか、3年目になればもっと下がる、今年度中にといっそう駆け込みで加速する有り様です。

これで、肝心の再エネが伸びればまだ我慢もできるでしょう。ところか、実態はかけ離れたものでした。

「実は国が認定した設備容量は2249万キロだったが、実際に運転を開始したのは382.7万キロワットで、2割にも満たないことが経産省の調査で判明。しかも、認定から1年以上たっても土地・設備を確保していない業者が全体の3割に上っていることも分かった。(同)

呆れてモノが言えません。公称249万キロワットに対して国が支援している枠に対して、実際に運転を開始しているのはたった2割!悲惨といんうより、もはやお笑いです。

これはいったん用地を確保して申請さえしてしまえば、10桁の認証登録番号を貰えて、いわば「席が取れる」からです。

いったん席を得てしまえば、いつまで発電しろという縛りがないわけですから、寝かせておいて「席」を他人に転売するなどということが頻発しました。

もちろん多額のサヤをつけてです。合法ですが一種の詐欺です。脱法ハーブではありませんが、脱法再エネです。

また転売こそしないまでも、太陽光パネルはどんどん中国製が流入して安くなっていますので、もっと安くなるまで待とうという業者も大量に出ました。

さすが、経済産業省もまずいと思ったのか、制度を厳しく運用するという方針に転換しました。もし、民主党政権がいまだ続いていたならば、これすらも行われなかったでしょう。

このように再エネ、なかでも太陽光発電の欠陥が初年度からさらけ出されたことになりました。

もう少し続けます。

                        。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚

■甘かった再生エネ電気買取制度 業界関係者「いくらでもズルができる」
産経ビジネス13年3月8日

3割の業者は1年経っても土地・設備すらなし!

 「現行制度だと、いくらでもズルができる」。関西で太陽光発電事業を行う関係者は、FITについてこう指摘した。

 FITは、コストの高い再生可能エネルギーの育成を目的に、平成24年7月に始まった制度。初年度は利益を確保しやすい高めの買い取り価格が設定され、太陽光なら1キロワット時当たり42円(10キロワット以上)で20年間買い取る-という好条件が設定された。

しかも、業者が新規参入しやすいようにと、土地や設備を事前取得しなくても計画認定は受けられる。結果、翌年10月までに新たに稼働した再生エネの発電設備容量は585万2千キロワットで、導入前と比べて約3割増えた。

 この大半を占めるのが主力の太陽光(非住宅)だ。だが、実は国が認定した設備容量は2249万キロだったが、実際に運転を開始したのは382.7万キロワットで、2割にも満たないことが経産省の調査で判明。しかも、認定から1年以上たっても土地・設備を確保していない業者が全体の3割に上っていることも分かった。

 国の認可事業に、なぜこのような事態が起きたのか。理由は、買い取り価格設定の方法にあった。

 パネルが値下がりするまで…

 FITでは、電力会社が再生可能エネルギーを買い取る価格は、再生エネルギー事業者が設備の認定を受けた時点の額が最長20年間にわたって適用される。このため、1キロワット時当たり42円という「高値」が設定された初年度には、土地や設備の取得の前に「ひとまず認定」を目指す業者が続出。翌25年度に価格が約38円に値下がりすると、業界内では「早め認定が必須」とのムードが高まり、さらなる“駆け込み認定”が相次いだ。

認定業者が増えれば、設備投資に必要な太陽光パネルはニーズが高まり、価格も当然上がってしまう。認定いつ運転を始めてもいいことになっている業者側としては、設備投資費を抑えるにはパネルの値下がりを待ってから購入するのが得策だ。このため、当面事業を始めるつもりはいが、将来性に期待してとりあえず認定を受けた-という業者も後を絶たない。

 政府はようやく認定取り消し作業を進めようとしているが、前述の関係者は「制度に穴があったのに、政府はずっと放置していた。認定を受けてすぐに事業を開始した参入業者が損をしてしまう不公平な構図だ」と厳しく批判する。

 土地争奪戦はさらに過熱?!

 だが、四季の気候変動が激しく土地の狭い日本では、「事業を進めたいが、適当な土地が見つからない」という事業者も、少なからず存在するという。

制度開始後は、孫正義社長率いるソフトバンクが京都市内でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の運転を開始するなど、業種を問わず参入企業が殺到。“太陽光バブル”に沸く一方、水面下では発電所建設用地の争奪戦が繰り広げられた。

 太陽光発電には広大な土地が必要で、自治体などから借りるケースが多い。当然、好条件の土地には複数の企業が殺到することも多く、ある業者は「狙っていた土地があったが、他社に競り負けて獲得できなかった」と打ち明ける。国の認定を受けなければ銀行から設備投資資金を借りられないなど、資金繰りのため認定を急ぐケースもある。

 太陽光発電事業を調査する独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究員は、「国内でメガソーラーを置ける土地は今後さらに減少し、企業間の土地争奪戦が過熱する恐れが高い」と懸念する。

NEDOは26年度から、海や池、湖上に水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)を陸上と同コストで設置する国内初の技術開発に乗り出しており、水上を新たな導入場所として開拓する方針だが、水上のコストは陸上より3割も高いのが現状だ。

 東日本大震災以降、再生可能エネルギー普及促進に“前のめり”で取り組んできた日本政府。だが、普及のためにと甘く設定した制度は、その信用性すら揺るがしかねない問題を顕在化させた。FITはあり方そのものを今一度再考すべき時を迎えている。

2014年3月10日 (月)

東京大空襲と米国のトラウマ

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今から69年前の3月10日。 東京下町は焼き払われました。

たったひと晩で約8万から10万人の非戦闘員が殺されましたが、数字が明確でないのは、戸籍を役場ごと消失したり、死体すら見つからなかったケースか多かったからです。

この夜、私の大叔母が死んでいます。家は全焼し、大叔母の骨すら見つかりませんでした。骨壺には自宅があった辺りの石が入っているそうです。

大空襲は、まさしくジェノサイドと呼ぶにふさわしい計画的的、かつ冷血なものでした。

その夜、米軍は非戦闘員の居住する人口密集地帯の風上に焼夷弾を投下し、そして時間をおいて人々が逃げる方向の風下を焼夷弾で遮断しました。

そして逃げ場を封じた上で、焼夷弾の業火で包囲し10万人余を生きながらにして焼き殺したのです。

このような所業を単純な軍事作戦と呼ぶのは当たらないでしょう。目標は民間人大量虐殺であるからです。

言い逃れようもなくこれは戦争犯罪です。

B29の下腹は、燃え盛る炎で血で赤く染まったようにてらてらと光って見えたそうです。

軍事物資を作る町工場が下町に散在していたからだと米国は言います。そのようなことは屁理屈にすぎません。

彼らは後の本土空襲において、米軍捕虜がとらわれている収容所は正確に爆撃目標から外しているからです。精密爆撃は充分可能だったのです。

一方、市民の住宅は言うに及ばず、学校、病院に至るまですべてが徹底的にみさかいない爆撃を受けています。

広島における爆撃照準点は島病院という医療施設ですらあったのです。

またこの東京においても、後の広島においても、市街地を爆撃するのに一切の事前警告は行われませんでした。

なぜ事前警告をしなかったのでしょうか。

よしんば町工場で軍需物資を作っていたとしても、工場が焼かれれば機能しないはずです。事前に大量の宣伝ビラを撒けば市民は避難可能だったはずです。

にもかかわらず、米国は執拗に日本の子供を、老人を、女性を標的にして、生きたまま焼き殺しました。

頭から粘着性を帯びた焼夷弾を浴びせると、払って払ってももつきまとうそうです。そして人は生きながらにして松明のように燃えて死ぬのです。

米国の目的は、「畏怖と衝撃」を日本人に与えることでした。

戦略爆撃の最大の目的は、軍事目標を破壊することではありません。日本人の米国に抗う精神をへし折ることです。

「畏怖と衝撃」、この言葉はイラク戦争の緒戦における米軍の空爆に付けられた作戦名でもあります。

アメリカ人は戦後もなお、本質においてなにひとつ変わっていないようです。

私は戦場の極限状況においての狂気をあるていどは許せます。人は自らの生の切所において、狂気に支配されやすいものだからです。

しかし、ある意味もっとも恐ろしいことは、人が人をボタンひとつで大量に人を殺すことができてしまう心理です。

殺戮する対象を人として見なさず、記号と統計数字で理解します。対象は照準器に写るドットの影にすぎず、もはや喜怒哀楽を伴った「人」ではないのです。

私は絶対に人として許してはならないことがあると思っています。そのひとつがこの1945年3月10日の東京です。

長崎より死亡者が多いのに比して、あまりにも知られていないのは残念です。

そして、この東京大空襲は単なる始まりでしかありませんでした。

東京を壊滅に追い込んだ米軍機の群れは、東京を破壊し尽くすと、次々と日本の大都市、そして中小都市に至るまで徹底した爆撃を加えていきます。

上位7都市は以下です。(太平洋戦争研究会による。カッコ内は死者数)

・広島市 約14万人(原爆による。1945年末までの死亡者数)
・東京都区部 約10万人
・長崎市 約7万人(原爆による。1945年末までの死亡者数)
・大阪市 約1万人
・名古屋市 約7800人
・神戸市 約6200人
・横浜市約4600人
千人以上の死者を出した都市を北からあげます。
・青森市(約1800人)
・長岡市(約1200人)
・富山市(約2300人)
・日立市(約1300人)
・千葉市(約1200人)
・川崎市(約1000人)
・静岡市(約1600人)
・浜松市(約3200人)
・福井市(約1600人)
・津市(約1600人)
・堺市(1900人)
・和歌山市(約1100人)
・明石市(約1500人)
・岡山市(約1700人)
・呉市(約2100人)
・高松市(約1300人)
・八幡市(現北九州市の一部、約1100人)
・大牟田市(約1300人)
・佐世保市(約1000人)
・鹿児島市(約2400人)
・計 本土空襲による被災都市180箇所 
・死亡者累計50万人以上
日本全体の罹災人口は約1千万人。実に当時の人口約7千万人の14%が家族を殺されるか、家を失ってしまったことになります。

この人間の行為とも思えない爆撃の指揮官はカーチス・ルメイといい、あろうことか戦後日本国政府は彼を「航空自衛隊の育成に貢献した」として叙勲しました。

昭和天皇は、彼の叙勲式に欠席することでご意志を示されました。戦後一貫して政治発言を拒否された陛下の唯一の戦後の「政治的発言」でした。

さて、米国はこの東京大空襲や、それに続く広島、長崎を「戦争犯罪」と呼ばれるのを極端に嫌がります。

私たち日本人がそのように米国の戦争犯罪を指摘すると、ヒステリックに「歴史修正主義」、時には「極右」扱いで葬ろうとします。

つまり、「確定した歴史認識に対してチャチャ入れるな」というわけです。

昨今の例では、作家百田尚樹さんの東京都知事選の演説が物議を醸したことが記憶に新しいところです。

この東京大空襲、そして広島・長崎は、米国にもトラウマを与えました。

広島に原爆投下をしたエノラゲイの乗員のひとりは爆撃直後こう叫んだそうです。「おお、なんてことを俺たちはやらかしちまったんだ」。

以後米国人は、日本が「唯一の被爆国」と言う度に、彼らの心の奥に鋭い針が刺さったはずです。

いわばこれが米国の原罪です。彼らはこれから逃れるために情報操作を行いました。

それが、本土空襲や原爆投下も、「核を落すことで戦争が終わった。さもなくば100万人の米国の若者と、それ以上の日本人が死んでいたはずだ」という論理です。

この論理に従うと、私たち日本人も、「戦争を終わらせてくれて、平和憲法をプレゼントしてくれたアメリカさん、ありがとう」と言わねばなりません。

実際そのように言う日本人も多いのは事実です。

ところが、当時日本にはこれ以上戦い続ける継戦能力は残っていませんでした。必死に和平の道を探っていたのが、当時の日本政府だったのです。

もちろんそれを一番よく知っていたのは米国でした。

そこで彼らは、「日本人は残虐だったから原爆を落されても仕方がない。彼らは罰を受けねばならなかったのだ」という自己正当化の論理を作り出します。

彼らはいまだに教師が子供にこう教えています。

「戦前まで日本人は残虐で、大量虐殺、強姦を繰り返した卑怯な民族でした。だから、文明国はこの野蛮国を懲罰して、民主主義国家にしてあげました。改心した日本は今はいい友人になりました」、と。

例えば、今米国のべストセラー本は、米国捕虜が終戦直後、原爆を投下された広島の中心部を汽車で通過した時を追憶する時このようなコメントを残しています。

 “Nothing! It was beautiful.”(何もなかった。美しかった)

続いてその元米国捕虜はこう述べています。

“I know it’s not right to say it was beautiful, because it really wasn’t. But I believed the end probably justified the means.”

(実際には美しくはなかったので、美しいというのは正しくないと分かっていた。しかし、おそらく目的は手段を正当化すると信じた)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1232?page=3

まさにすり替えてす。しかし「目的が手段を正当化」できると人間は思い込むことで人は、いくらででも自らの残虐行為を合理化できるのです。

このような情報操作によって、米国は精神的トラウマから逃れて戦後国際秩序の覇権国家になったわけです。

ここにおいて、「戦勝国」中国、あるいは笑止なことに自分を「戦勝国」と錯覚している韓国の反日と米国の利害は一致したわけです。

したがって、米中韓は日本の異議申し立てに対して「戦後秩序への挑戦」という同一の概念をシェアしているのです。

私たちが、従軍、あるいは南京大虐殺と呼ばれる戦時の冤罪に対して異議申し立てをする場合の最大の壁は中韓ではなく、米国だと思っておいたほうがいいでしょう。

2014年3月 8日 (土)

週末写真館 夜明け前の霞ヶ浦土浦岸

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私は霞ヶ浦の東岸に住んでいるので、あまり土浦側には行ったことがありませんでした。
土浦岸は、ちょうどアゲハ蝶のようなかたちの霞ヶ浦が、羽根を伸ばした左の羽根の突端にあります。
かつて土浦港は、県西から湖を渡って潮来に至り、そこから利根川を経て海に出る内水面交通の要衝でした。
あの有名な予科練もこの街にあり、山本五十六もこの街に住んでいたことがあります。
唄にもあるでしょう、♪今日も飛ぶ飛ぶ、霞ヶ浦にゃって。
今はすっかりひなびた町になって、この土浦港にはなんとこじゃれたヨットハーバーがあります。
漁師のおっちゃんが威勢よく朝の湖の波を蹴立てている私の村とはえらい違いですね(笑)。

※画像はクリックすると大きくなりますので、拡大して見て下さい。

2014年3月 7日 (金)

一ファンさんにお答えして 屈辱を忘れるな、そして聡くあれ

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一ファンさん。過分なお言葉とご批判を頂戴いたしました。

私はわが国のねじれてしまった歴史が復元されるまで、かなりの時間と努力が必要だと思っています。

ねじれと言ったのは、戦前と戦後があたかも「違った国」であるかのような私たち日本人の中にある錯覚です。

そうではありません。その栄光も悲惨も含めてわが国はひとつの歴史軸の中を生きています。

あのドイツのように都合よく、「ヒットラーの時代」と戦前を切り捨て、その代償に勝者に向けて「戦後の顔」を取り繕うほどわが国は器用ではありません。

しかし、わが国もドイツを笑うわけにはいきません。

私たちの国は、わが国の精神的中心である「天皇」を護持できた代償として、占領軍である米国によって徹底的な改造を受けました。

それは社会構造のみならず精神にも及び、無味無臭な国家になりかかっていたようにも見えた時期があります。

今、私たちの国は、戦後実に70年近くに及ぶ放心状態から徐々に醒めようとしています。

それは冷戦期というある意味、米国側陣営に属してさえいれば何も考えずに済んだ思考停止の時代が終りを告げ、米国の歴史的没落によって起きるであろうありとあらゆる地殻変動に自前の答えを用意せねばならなくなったからです。

今私たち日本人は、自分たちの国は何者であったのか、そして何者として今後生きていくのかという本質的な問いを自らに問いかける時期なのだと思います。

「米国の没落」とひとことで言っても、19世紀の覇権国家であった英国がそうであったように、あるいは20世紀の旧ソ連の崩壊のように数十年規模でゆっくりとなされるものです。

米国はバラク・オバマという男によって、不幸にも覇権国家の崩壊過程に決定的に踏み込んだと見るべきです。

それは、戦後70年の長きに渡って作られてきたわが国の社会構造、産業構造、外交姿勢、そして国民の精神のあり方まで含めて自分を取り戻す時代にいやがおうでも来つつあることを示しています。

歴史認識ということは、実は今の自分たちの国柄を語ることです。

私たちの国が、中韓が口汚く罵るような醜悪極まりないような国家であったのか、あるいは、戦前期という時代を多くの失敗を重ねながらも泥だらけで生き抜こうとした涙ぐましいひとつの国だったのか、私たち日本人がしっかりと検証せねばならないことです。

それは日本を愛するということを大前提にして、是々非々で見ようとすることです。

そうすれば、戦前が「軍国主義国家だった」というような単純で乱暴な裁断はできなくなるでしょうし、逆に「栄光の大日本帝国」という自画自賛にも立てなくなるはずです。

さて、一ファンさんがおっしゃる無数の名もなき先祖たちの声は、靖国の杜に行くと誰しもが感じるでしょう。

私も毎年、父母の墓参りを兼ねて参拝しています。そして、この霊に対して恥ずかしくない生き方を私がしているのかを問うことにしています。

この「日本」という瑞穂の国を守るために死んでいった無数の人々の霊は、私の心の中心にいつもいます。

わが国は、これから覇権国家なき混沌状況の国際社会を生きていかねばなりません。その状況は、戦前の昭和10年代を彷彿とさせるものがあります。

その時必要なものは冷徹な現実感覚と国の芯です。

変わらない芯を持ちながら、いや持たねば柔軟に状況に対応できない難しい時代が始まっています。

私の青年時代のような安直に米国に頼ったり、逆に反米を掲げればすべてが解決する魔法は既にありません。

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米国は一国孤立主義で充分にやっていける希有な国家です。彼らは今後、中国と組んでわが国を陥れることすら厭わないでしょう。

その予兆は、中国の防空識別圏や、靖国参拝に対する「失望」表明に現れています。彼ら米国は、確かにあの時私たちを裏切りました。

私たち日本人は、あの屈辱を忘れてはなりません。

どこの国に、名も知れぬジャングルで、インパールの山中で、レイテ島で、硫黄島で、沖縄で、広島で、東京で葬られることもなく死んでいった人々の霊に、国家指導者が手を合わせてはならない国があるというのですか!

ただし、この怒りは呑み込まねばなりません。なぜなら、日本人はナイーブであることは罪悪だと考えねばならない時代に突入しているからです。

あまりこのような大時代的な表現は使いたくないのですが、あえて言うなら、今この時期は「国難の時代」だからです。

慎重に米国のエゴの量を測定し、彼らのエゴを物柔らかに指摘し、わが国の国益が損なわれるようなことがあるなら倍返しで外交的「貸し」とすることです。

外交は端的に貸し借りです。

バイデンに制止された時、安倍さんの脳裏には中韓と国内しかなかったように見えます。

あの時、安倍さんは参拝を見合わせる代償として、米国が中韓と日本の間で姑息に中間的立場で乗り切ろうとすることに釘を刺し、同盟国としての責務を果たせと要求すべきでした。

参拝は日本人の心の問題ですが、同時に外交カードでもあるのです。

中韓は真の「敵」ではありません。彼ら、なかんずく中国に対しては最大限の警戒心を持たねばなりませんが、真に恐れるべきは彼らではありません。

わが国を世界で唯一単独で軍事占領できる国、あるいはグローバル資本の盟主は米国です。それを思い知ったのがかつての大戦であり、直近ではTPPだったはずです。

だからわが国は戦後、米国と軍事同盟を結び、あえてTPP交渉に加盟するリスクを取ったのではなかったのでしょうか。(ただし私はTPP参加自体に反対ですが)

潜在的に最大の「敵」は米国であることを忘れてはなりません。

バラク・オバマ風に言うなら、「同盟国。そして最大の潜在的敵」が米国なのです。

しかし、いやむしろそれが故にというべきでょうか、将来は別にして(不幸にもその時期が来る予感がしますが)、今は米国との同盟を維持し、むしろ強固にしていくことがこの時期の日本の国益です。

初めに私は「ねじれてしまった歴史が復元されるまで、かなりの時間と努力が必要」と書きました。

それは「この屈辱を忘れるな、そして聡くあれ」という意味です。

2014年3月 6日 (木)

キャロライン・ケネディ大使閣下に見る白人リベラルの傲慢とは

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キャロライン・ケネディ米国大使閣下は、史上もっとも人気のない米国大使になりそうです。来るやいなや、「失望」したり「非人道的」で怒ったりお忙しいことです。

彼女は、わが国の沿岸のイルカ追い込み漁を非人道的といって非難しました。

彼女はこう述べています。

Deeply concerned by inhumaneness of drive hunt dolphin killing..USG opposes drive hunt fisheries.
(米国政府はイルカの追い込み漁に反対し、イルカが殺される追い込み漁の非人道性を深く懸念している)

いきなり、「米国政府は」ときましたか。「失望」発言でもそうですが、まだ来たばかりで最初から任地の国民を叱りっぱなしの大使というのも珍しいですね(苦笑)。

さすがケネディ王朝のプリンセス、目線が違う。なんかいそうだなぁ、こういうタイプの女性教師。

大富豪の家の出で、大学は超一流、おまけに美人でと天が二物も三物も景気よくやっちゃったが、いい性格だけはくれなかった、という人。

で、お嬢様、田舎の新任の学校に来ると気に障ることばかり。

え、イルカ食べるの野蛮人!戦争神社(←ホントに米国リベラルでこう言う人います)に参拝するって信じられない極右!もういや!先進国の常識教えてやるわ!ってなとこでしょう。

そうそう、この人、オバマの大の支持者だったのですが、オバマがあまり屁タレなんで、「がっかりしたわ。もっとリベラルかと思った」とのたまうたような人です。

他国、しかも自分の任地の沿岸漁や食の伝統もなにひとつ知らないで、いきなり叱りつける態度、鼻持ちならないなぁ。

こういう言われたかすると、私なんぞ、ええそのとおり、ワシらイルカは食いますが、非戦闘員20万人の頭の上に平気で核兵器は落としたりするようなことはしませんよ、と言いたくなります。

大使閣下、お約束どおりオバマ来日の折りには、ぜひ大統領閣下を広島にお連れください。

大使の肩書を押し出して、のっけから「合衆国政府はイルカ漁に反対しています」ときたもんだ。

日本の田舎町の極小規模のイルカ伝統漁をつかまえて、「合衆国政府」と超大国の看板で迫って来るというやり方、大使閣下、権力の使い方間違ってますよ。

さて、数年前に、和歌山県のイルカ漁を撮影した映画"The Cove"がアタデミー賞を受賞しました。

私はまだ観ていませんが、太地漁協から猛烈な反発を喰っています。

隠し撮りをしたり、太地の海が水銀汚染されているかのようなひどい表現をしたり、、捕獲方法が残酷であるかのような誇張した演出手法が地元の人々の反発を招きました。

このてのハリウッドの政治的なプロパガンダにはときおりうんざりさせられます。これが今のシー・シェパードの調査捕鯨への襲撃と一対であることは間違いありません。

私がかつてパタゴニアへの公開質問書の第2項に、米国の先住民の沿岸捕鯨もシーシェパードは襲撃したが、それをパタゴニアは肯定するのか、と問うたのは、この和歌山の太地の伝統的沿岸捕鯨を念頭においた質問でした。

もし、これを否定するとなると、当然のこととして年間400頭ていどのイヌイットによるホッキョクグマやイルカなどの捕獲も否定されていくことになります。

つまりは、海洋哺乳類や極圏に住む哺乳類は聖域であり、いっさい人間が触ってはならない、ということになります。

大型海洋哺乳類は、海洋で食物連鎖の頂点にいます。したがって、頭数の淘汰が自然界ではかかりにくいことになります。

となるとどうなるのか?鯨類が食べる大量の食料としての食物連鎖下位生物が減っていくことになります。

今、手元に資料がありませんが、大型鯨類の食する量は膨大なものです。その為に他の魚類の繁殖が圧迫されています。

また、大型鯨類自身も食料が不足して、群れの中でストレスを溜めていくことが観察されています。

そのことにより、大型海洋哺乳類自身も群れを維持していくことが難しくなります

では、このような自然界の食物連鎖を正常に維持するにはどうしたらいいのでしょうか。方法はそう多くはありません。

人間が生態系に一定のルールの下で介入することです。

一定の科学的なルールを作って人為的なコントロールをすることで、食物連鎖の機能を正常に保つことかできます。これを資源生物学と呼びます

今、わが国の調査捕鯨はその資源生物学的データを採取するためであって、商業捕鯨をしているわけではありません。

グリーンピースは鯨肉が市場に出ていると批判していますが、日本人は捕獲した鯨を食べもしないで捨てるなんてバチ当たりの真似が嫌いなだけですよ。

この調査捕鯨はIWC(国際捕鯨委員会)が認めたものでまったく合法です。これすら禁止すれば、大型海洋哺乳類の生態系の実態解明ができなくなります。

たとえば日本でいえば北海道のエゾジカの淘汰などがその例になります。エゾシカは可愛い動物ですが、捕獲を禁止されているために急増してしまい、環境キャパシティを越えてしまいました。

結果として、シカも食糧不足になり飢えた個体が多数目撃されるようになります。また樹木や農産物への被害がひどく林業や農業に多くの害を出しました。

今、一定数を人為的淘汰をすることで、正常な頭数に戻す試みが数年前から始まっています。

私自身が関わった例では霞ヶ浦の外来魚ハクレンの捕獲がありました。ハクレンは藻を食べる大型種ですか、湖の閉鎖的生態系では食物連鎖上位のために増える一方でした。

増えすぎても、日本人の嗜好にいま一つ合わないために減るということがありません。漁網が破られたりする被害が頻発しました。

そのために市民と漁民が協力してハクレンを捕獲してバランスを保つ活動が行われました。

このように自然界は放置することが最善ではなく、適切な人為的なコントロールによってバランスが保たれるケースがあります。

今の反捕鯨白人諸国は、いままで自らが鯨類を絶滅寸前にまで追い込んだことを都合よく忘れ、日本人にその原罪のすべてをなすり付けることで、「可愛いイルカを食べるな」と叫んでいます。

「賢くかわいいイルカを守ろう」で済めばいいのですが、「日本人は残酷だからイルカやクジラを食べる」というような醜悪なジャパン・ディスカウント(日本の地位低下)に転化させたのが、この映画やシーシェパードたちです。

かつて鯨の肉を食べようともせず、鯨油のみを絞ってボイと捨てて絶滅寸前に追い込んできたのは誰であろう、今、反捕鯨諸国の連中、なかんずくアメリカ人ではなかったのですか。

一方、私たち日本人は一物全体として鯨を余すところなく食しました。

肉はもちろん、サエズリといわれる舌も、果てはヒゲすらも文楽の操り糸として利用し尽くしたくらいです。

日本人は、鯨を「勇魚」(いさな)として敬って捕獲したからこそ、その生命のすべてを自らのものとする文化をつくりあげたのです。

キャロライン・ケネディ大使、価値観の違う「非人道的な」蛮地にいるのはおつらいでしょうから、どうぞ早めに母国にお帰りなさい。

中国の防空識別圏や度重なる領海侵犯についてはひと言も発言せず、わが国に来て数か月で「失望」している大使などは日米友好の妨げになるだけです。

大使閣下、今や、スウィート・キャロラインじゃなくて、ビター・キャロラインですな。

2014年3月 5日 (水)

「河野談話」誕生秘話 石原元副官房長・慙愧の証言

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韓国が激烈なジャパン・ディスカウント(日本の地位低下運動)をしていることは、日本人で今や知らない人もいなくなりました。

韓国の定番テーマは、わが国が「従軍」、韓国が世界に発信している表現を使えば「sex slave」(性奴隷)として、戦時中に20万人もの韓国女性を韓国から強制連行したということのようです。

当時の朝鮮の人口は約2000万人、女性が約半分として1000万人、そのうち30歳以下人口は約3割として300万人ですから、日本は若い女性の実に7%も娼婦として強制連行したことになります。

真実なら大変なことです。

これは今や歴史的事実として国際的に定着し、これに異を唱える者は「極右の歴史修正主義者」という扱いを受けます。

私は今、安倍政権がこのテーマを取り上げるのは、時宜にかなっていないと思っていますし、やるべきではないと思いますが、国民は政府とは別に事実は事実として押えておくべきでしょう。

あらかじめ言っておきますが、私は韓国を好きでも嫌いでもありません。私が知りたいのは「事実」です。

さてこの韓国側の主張の根拠となっているのは、主要に三つです。

時系列順で並べれば、ひとつめは1983年に出版された吉田清治なる人物の『私の戦争犯罪』なる「証言」、二つ目は1991年の朝日新聞による「軍が女子挺身隊としてを強制連行した」とする報道、今ひとつは1993年に出された「河野談話」です。

流れとしては、吉田清治氏の「証言」により「従軍」の問題化が始まり、朝日新聞の記事がそれを一気に日韓国際問題にまで拡大させ、それを日本政府として追認し、謝罪した公式見解が「河野談話」ということになります。

このうちもっとも重要なものは、日本政府による謝罪にまで至った「河野談話」です。

「河野談話」により、この問題は日本政府がお墨付きを与えたということで国際社会に流通しているわけです。

この「河野談話」については、当時官房副長官(事務方トップ)で、この元聞き取り調査の談話のまとめ役をした石原信雄氏の2月20日の国会証言と2月24日の講演が出ており、その他にも産経新聞のスクープ記事が出て、その内幕が徐々に明らかになりつつあります。

日本政府は調査にあたって、韓国政府との信頼関係を前提として始めています。

今の冷えきった日韓関係では考えられませんが、当時の日韓関係では、宮沢訪韓を控えて、なんとか事態を鎮静化させたいという両国間の暗黙の了解が存在したようです。

特に日本側には、「強制連行は認められないが、一定の強制性を認める」という妥協策をあらかじめ考えていたようです。

そしてそれによって「日本の善意」を韓国に感じてもらい、この問題の幕引きをしたいと考えていました。

それは当時の金泳三大統領が、「強制性を日本が認めればこれ以上追求しない。終りにしよう」という言葉を、うかつにも信じてしまったからです。

だから自分には非がないと思っていても、とりあえず頭を下げて融和を図ることが美徳とされる日本人らしい発想です。しかし、それはあまりに日本的解決方法でした。

韓国政府の人選は、日本側の期待を裏切って明らかに意図的な操作がされていました。

①韓国での元16人の聞き取り調査対象となった元はわずか16名

②日本政府は韓国政府に客観的に過去の事実を話せる人を選んでほしいという要請し、韓国側は「反日運動をやっていた人や、バイアス(偏り)のかかった人は排除して、真実を語る人を選ぶということで人選を(韓国政府に)任せた」。

③産経新聞(2013年10月16日)が入手した聞き取り調査報告書によると元16
人中
氏名すら明確でない者が3人
生年月日が記載されているのは半数の8人
・その生年月日すら、別の調査やインタビューには全く違うことを述べている者もいる。
・朝鮮半島で重視される出身地についても大半の13人が不明・不詳
・ 大阪、熊本、台湾など慰安所がなかった地域で働いたという証言もある。
・日本で賠償訴訟を起こした原告が5人含まれる。

まずこの調査母集団がわずか16名ということに驚かされます。

結果論になりますが、これだけ大きな歴史的後遺症を残し、わが国の原罪のように糾弾されている案件の調査対象がたったの16名とは!

少なくとも、従軍が20万人いたと韓国政府は言うのですから、その当時相当数が存命だったはずです。

名乗り出るのが恥ずかしいというのはわからないではないですが、後に団体の訴訟では、補償が取れるということで大量の名乗り出た者が原告になりました。

このような国家が関与したことについては最低でも数百名の調査を下敷きにすべきなのは言うまでもないことで、いかに政治的動機によって拙速な調査だったのかが分かります。

次に氏名が確定しない者、出生地があいまいな者がほぼ全員だったことです。

当時の朝鮮は日本統治時代であり、戸籍制度は国内と同一ですので、姓名、出生地がわからないことは考えられません。

特にこの出生地は、「強制連行」された場所になるわけですから、のちに追加調査をする上で決定的な事項です。

これが欠落した証言をそのまま採用した理由を知りたいところです。

またこの中には、日本側が拒否した賠償請求運動関係者が3分の1も占めています。

彼女たちはあらかじめ補償を要求して、日本側の支援団体と一体の動きをしている人達であって、その証言の中立性に疑いが出ます。

その上、この訴訟の原告側弁護士までが調査団の聞き取りに立ち会ってしています。その弁護士の名は福島瑞穂氏といいます。

これが彼女のデビューで、これで一躍彼女は有名人になり、のち社民党党首にまでなったのはご存じの通りです。

証言の中味を見ると、慰安所が存在しなかった大阪、熊本に強制連行されたという明らかな虚偽もあります。

この時の聞き取りと、のちに同一人物が賠償訴訟した内容には大きな差があり、しかも二転三転していることが指摘されています。

石原信雄氏が講演で、「(韓国側に信頼して任せた人選の)前提条件に問題ありとなれば、何をか言わんやだ」と言っているのは、いかに韓国政府の寄こした「証人」がいい加減なものであったかを物語っています。

調査が行われた会場は、日本大使館、あるいは韓国政府の公館ではなく、訴訟の大元である「太平洋戦争犠牲者遺族会」という民間団体の事務所でした

この「太平洋戦争犠牲者遺族会」の常任理事だった梁順任氏は、のちに裁判で多額の補償金がとれると金を集めて着服したことにより詐欺罪で逮捕されます。(欄外資料4参照)

この会長の娘婿が、朝日新聞韓国特派員だった植村隆記者です。

記事内容は別にして、一方の利害関係者の情報提供によるインサイダー記事な上に、一方の当事者と利害を共有する人物の記事だったわけです。

バイアスがどうのという以前の報道倫理の次元の問題です。

この朝日新聞1991年8月11日付け記事『元朝鮮人従軍 戦後半世紀重い口開く』(欄外資料3参照)は、当時大きな反響を国内外に呼びました。

この記事の直後には問題のシンボル的な人物となった金学順氏などがソウルで記者会見し、一気に日韓の国際問題に拡大していきます。

ここに、現在まで拡大再生産しながら続く「従軍」問題の原型が出来上がりました。

これについて当時の事情をもっともよく知る立場にいた元官房副長官の石原信雄氏の証言を読むと、氏の忸怩たる気持ちが痛いほど伝わってきます。

なお、当時日本側の最高責任者だった宮沢喜一氏は死去、この案件の責任者だった河野一郎氏は沈黙を守っています。

この宮沢-河野両氏の、「相手が怒っているんだからともかく謝っておこう。強制の証拠はないが、広い意味でなら認めよう」という悪い意味で日本的なぁなぁ,まぁまぁ対応が、後々までわが国を苦しめ続けているわけです。 

                     ~~~~~~~~~~

●石原信雄氏国会証言
裏付け調査はしていない
「聞き取り調査が終わった7月30日夜、ソウルで田中耕太郎・内閣外政審議室審議官は「(元の)記憶があいまいな部分もあり、証言の内容をいちいち詳細には詰めない。自然体でまるごと受けとめる」(朝日新聞1993年年8月5日)

●石原信雄氏証言
いかなる意味でも、日本政府の指揮命令系統のもとに強制したことを認めたわけではない」(オーラルヒストリー アジア女性基金」。女性のためのアジア平和国民基金、2007年)

●1997年、東良信内閣外政審議室審議官(当時)の自民党の勉強会での発言
「(強制性認定の)明確な根拠として使えるものではなかった

●2013年10月、石原信雄官房副長官(当時)の発言
私は報告書は見ておらず、担当官の報告を聞いて判断したが、談話の大前提である証言内容がずさんで真実性、信憑性を疑わせるとなると大変な問題だ。人選したのは韓国側であり、信頼関係が揺らいでくる」(産経新聞13年10月16日)

●談話作成の過程で韓国側とすり合わせをしたことに関しての石原信雄氏の国会証言、「私は承知していないが、この種のものをまとめる段階で、何らかの事務的なすり合わせはあったのかもしれない。作成過程で意見のすり合わせは当然行われたと推定される

●石原信雄氏2007年民主党の会合での発言
事実判断ではなく、政治判断だった

●「政府はこれまでの姿勢を転換し強制連行の事実を認める方向で検討に入っているが、その証拠となる資料が発見されないことから対応に苦慮している」(読売新聞1993年3月4日)

韓国政府は(略)金銭的支援は独自にやるので日本は強制連行を認めればよいという姿勢が鮮明になってきた」「このため政府は強制連行を認めないままでは事態の打開は困難と判断(略)認める方向で検討に入っている」(同)

「『日本軍がの強制連行を行なっていた』とする公文書類資料は発見されなかった。河野は「組織として強制連行を行っていても、無理にでも連れてこいという命令書や無理に連れてきましたという報告書は作成されることはないだろう」という見方を示し、強制を認めた根拠として『募集・移送・管理等の過程全体をみてであり、自由行動の制限があったこと』を挙げている」(同)

●談話作成に関与した谷野作太郎内閣外政審議室長(当時)1993年3月23日、参院予算委員会での証言
「単に物理的に強制を加えることのみならず、脅かし、畏怖させて本人の意思に反してある種の行為をさせた場合も含む」

●石原信雄氏国会証言
かなり(強制の定義を)広げた。宮沢首相や河野洋平官房長官は、日韓関係を将来良くしようと考えたら、彼らの言い分をある程度もう認めざるを得ないという気持ちがあった

(談話発表後も韓国が問題を繰り返していることに対して)日本政府の善意が生かされていない。非常に残念だ

われわれはあの(河野)談話によって、国家賠償の問題が出てくるとは全く想定していなかった。 当然、当時の韓国側も、あの談話をもとに政府として要求するということはまったくありえなかった。問題はすべて強制だとか、日本政府として強制したことを認めたとか、 誇大に宣伝して使われるのはまことに苦々しくて仕方ない。もちろん、こういうものをいったん出すと悪用される危険はある。 外交関係とはそういうものだから。だけど、あまりにもひどいと思う

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■資料1 河野談話全文
「関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」

 いわゆる従軍問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。

 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くのが存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及びの移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。

 なお、戦地に移送されたの出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。

 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。(1993年8月4日、外務省ウェブサイトより)

■資料2 産経新聞2013年10月16日http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101608380010-n1.htm

●資料3 朝日新聞1991年8月11日 
従軍問題の火付け役となった植村隆記者記事

「日中戦争や第二次大戦の際、「女子挺(てい)身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり、「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表、十六団体約三十万人)が聞き取り作業を始めた。同協議会は十日、女性の話を録音したテープを朝日新聞記者に公開した。テープの中で女性は「思い出すと今でも身の毛がよだつ」と語っている。体験をひた隠しにしてきた彼女らの重い口が、戦後半世紀近くたって、やっと開き始めた。

尹代表らによると、この女性は六十八歳で、ソウル市内に一人で住んでいる。(中略)女性の話によると、中国東北部で生まれ、十七歳の時、だまされてにされた。ニ、三百人の部隊がいる中国南部の慰安所に連れて行かれた。慰安所は民家を使っていた。五人の朝鮮人女性がおり、一人に一室が与えられた。女性は「春子」(仮名)と日本名を付けられた。一番年上の女性が日本語を話し、将校の相手をしていた。残りの四人が一般の兵士ニ、三百人を受け持ち、毎日三、四人の相手をさせられたという。「監禁されて、逃げ出したいという思いしかなかった。相手が来ないように思いつづけた」という。また週に一回は軍医の検診があった。数ヶ月働かされたが、逃げることができ、戦後になってソウルへ戻った。結婚したが夫や子供も亡くなり、現在は生活保護を受けながら、暮らしている。」

■資料4 「日本から補償金」3万人だます 韓国の団体幹部ら摘発
産経新聞 2011年.5月.9日
「ソウル市警察当局はこのほど、 日本統治時代の戦時動員被害者に対し、日本政府などから 補償金を受け取ってやるといって弁護士費用などの名目で 会費15億ウォン(約1億2千万円)をだまし取っていた 団体幹部など39人を、詐欺の疑いで摘発したと発表した。
被害者は3万人に上る。

摘発されたのは「太平洋戦争犠牲者遺族会」「民間請求権訴訟団」など対日要求や反日集会・デモを展開してきた団体。 古くからの活動家で日本でも知られる梁順任・遺族会会長(67)にも 容疑が向けられており、 対日補償要求運動にブレーキがかかりそうだ。

発表によると、梁会長らは遺族会や訴訟団など各種団体を組織して 会員を募集。その際
「動員犠牲者でなくても  当時を生きた者なら  誰でも補償を受け取れる」などと嘘を言った例もあり、 会員を集めると手当を支払っていたという。 警察発表では、梁会長らはソウルでの日韓親善サッカーの試合の スタンドに約500人の会員を動員し、日本政府に謝罪と補償を要求する横断幕を掲げる“偽装活動”をしてきたとしている。」  3

●資料5 「公文書と呼ぶにはお粗末だ」現代史家の秦郁彦氏
産経新聞2013.10.16

河野談話の主な根拠が、元16人の証言だったことは、河野洋平氏が自認しているところだが、日本政府は調査団がソウルで実施した聞き取り調査報告書の公開を拒んできた。

 20年ぶりに陽の目を見たこの報告メモに目を通し、理由が分かったような気がする。身の上、氏名、年齢さえあやふやなが多く、公文書と呼ぶには恥ずかしいほどお粗末なものだったからである。

 この半年前に安秉直ソウル大教授と韓国挺身隊問題対策協議会が2年がかりで聞き取り調査した40人余のうち、信頼性の低い21人分は切り捨て、19人分の結果を刊行していた。ところが、日本政府のヒアリングに韓国政府が差し向けたのは、切り捨て組の面々だったと思われる。

 すでに強制性を認め謝罪に徹する気になっていた河野氏にとって、聞き取り調査は国民向けの形式行事にすぎなかった。それを知りつつ韓国側の非礼、非協力に堪えた調査団の屈辱を思えば、責める気も萎えてくる。

2014年3月 4日 (火)

ウクライナに善玉、悪玉はいるのか?

253

ウクライナが分裂の様相を呈し始めました。

ロシアにとってウクライナは、ロシア本土の西欧勢力からの緩衝帯であり、旧ソ連時代に移り住んだロシア系住民が東部を中心にして多数居住しています。

軍事的にも黒海に突き出したクリミア半島は、地政学的要衝ですからロシアは譲る気はありません。

もしここで欧米に譲れば、ロシアの軍港があるセヴァストポリは西欧勢力圏の中に浮かぶことになります。

プーチンにとって、ウクライナ自体が元々は旧ソ連圏です。ここで敗北することは、旧ソ連の崩壊に継ぐ、2度目の敗戦のはずです。国威に賭けて退かないことでしょう。

プーチンの強さは、軍事力行使を逡巡しないことです。ロシア議会も、このような国運を賭けたことには直ちに大統領支持で一枚岩に団結しています。

これが、オバマと決定的に違うところです。オバマはアフガン問題で躓き、エジプトで躓き、シリアで躓き、あげくにこともあろうにシリアではロシアに助けてもらう赤恥をかいています。

彼の無能ぶりは世界が認識しており、オバマやケリーがなにを言おうと関係ありません。

よしんば、オバマが(ありえませんが)ロシアとの軍事衝突も辞さないと言ったとしても、米国議会は承認しないでしょう。

こんな腰の定まらない大統領に率いられた「戦争」なんぞ負けるに決まっているからです。

また財政難でのたうつEUには軍事力行使の余力がありませんし、国内もまとめきらないでしょう。

特にドイツはウクライナ経由の天然ガスを供給されており、脱原発で恒常的エネルギー不足ですから英米仏と同一歩調はとらないでしょう。

では国連はといえば、元から拒否権を持つ常任理事国が起こした戦争に対してはお手上げという構造的欠陥を持つ上に、事務総長がこれ以下を想像するのが難しいような人物です。

パン・ギムンがやった唯一の「実績」と言えば、韓国人の大量登用と、サムスン製品の大量買いつけ程度ですから、初めから居てもいなくても一緒で、いないほうがましなくらいです。

というわけで、欧米、国連は何もできません。

したがって、プーチンにとってG8から排除されることなど、「二度目の敗戦」をするよりましですから、痛くも痒くもありません。

キエフまで進攻するかどうかは別にして、このままの介入路線を走ることでしょう。

ロシアの後ろ楯をもらったヤヌコビッチ氏は、正当な選挙による大統領職であることは間違いありませんから、ロシアの亡命政権からウクライナ軍に「大統領」として現在の臨時政府に不服従を呼びかけるでしょう。

東側圏のウクライナ軍はそれに従う可能性が高いとみられます。既にクリミアの海軍司令官はヤヌコビッチ側に走りました。

その場合、最悪は、ロシア軍に応援された東ウクライナ軍と西ウクライナ軍の内戦ですが、おそらくはそうならないでしょう。戦力差が大きすぎます。

ロシアは、欧米を完全に敵に回して西側圏まで制圧する気はないはずですので、ウクライナは東側+クリミア半島と西部に分割されるでしょう。

もちろん、欧米はこれを批判するでしょうが、政権のレジティマシィ(正統性)はヤヌコビッチ政権側にありますし、民主的手続を経ないトゥルチノフ大統領代行政権を「正統」と言い張るのは相当に厳しいと思われます。

とまれ、好むと好まざるとに関わらず、クリミアの要衝にいち早く特殊部隊を投入して軍事制圧し、既成事実を作ってしまったプーチンの勝ちです。、

この地は、歴史的に西欧とスラブが角遂する地です。多くの血を吸ったクリミア戦争もこの地で勃発しています。

元はといえば、亡命したヤヌコビッチ政権がロシア寄りになったのは、極度の経済危機を迎えているウクライナにEUが支援をしなかったために゛天然ガス・パイプラインを握られているロシア寄りにならざるをえなかったからです。

かつてのチェコスロバキアやユーゴと同じく、東欧諸国には、複数言語、複数民族、複数習俗などといった国がいくつもあります。ウクライナも同じように東西は別民族です。

こう考えると、このどちらが「正義」なのでしょうか?

いずれにしても、マスメディアが好きなロシア=悪玉 欧米=善玉という単純な色分けでみないことです。

かつてセルビア問題が起きた時に、欧米はクロアチアの宣伝に騙されて、セルビアが民族浄化をしていると思ってNATO空軍を投入しました。

セルビアは完全な悪玉に仕立て上げられたあげく事実上敗北し、戦後も厳しい道のりを歩んでいます。

しかし、後になってこれはすべてクロアチアが依頼した米国宣伝会社演出のプロパガンダだと判明します。

今、欧米経由でさまざまな情報が入ってきていますが、それを日本のマスコミのように鵜呑みにしないことです。

最後にわが国ですが、はっきり言って西欧勢力とスラブ勢力の争いなど対岸の火事です。

北方領土を考えるとプーチンに肩入れしたらと思わないではありませんが、そのことによるただでさえ冷えきった米国との関係が完全冷凍状態にあるのも剣呑です。

もし安倍首相に覚悟があるなら、ウクライナ平和会議のようなものを東京で開催するくらいのことをすると面白いのですが。

わが国は幸いにもG8メンバーであり、かつ部外者ですから充分にやる資格はあると思います。

どうでもいいことですが、3月の米中会談を控えて米国と蜜月を演じたい中国の習は、今悶々として米露どちらを選択するか悩んでいるかと思うと、このやりきれないようなウクライナ問題にもようやく微苦笑が浮かんできます。

2014年3月 3日 (月)

米国をG2論に走らせてはならない

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前回オバマが「G2」(米中二大国)政策をとった場合の憂鬱な想像をしました。

その場合、日本が置かれた条件を思いつくままに上げればこのようなものです。

①人口1億2千万人、世界屈指の技術力をもつGDP世界3位規模の工業国である
②日米同盟崩壊によって、集団的防衛体制(日米安保、NATOなど)を持たない孤立した国家となる
③エネルギー自給率、食糧自給率共に低く、シーレーンによって輸入されている
④防衛力は中規模であり優秀であるが、専守防衛のみに偏っている

⑤MD(ミサイル防衛)はすでに持ち、潜在的核兵器開発能力を持つ
⑥憲法問題など多くの防衛関係の法整備が不十分である

以上のような国が、史上かつてない軍拡膨張し続ける中国との最前線に孤立して立たされるとした場合、かつてのフランスのような核武装と軍拡の選択をとらざるをえないと想像しました。

ただフランス型といっても、フランスのように海外植民地を持たないので、もっとコンパクトなものになるでしょう。

いずれにしても、この道は修羅の道です。できる限り回避せねばなりません。

ところで、現時点でオバマは外交に自信を失い、やることなすことすべて裏目裏目、内向的な政権運営になっています。

これにつけ込むように中国は、中華帝国再興の野望をもってオバマに取り入ろうとしています。

このようなG2へ転がり落ちる危険な時期にあたっていることを、日本は自覚しておかねばなりません。

今、日本が注意せねばならないのは、このようなオバマと習につけ入る隙を与えないことです。

いくつか外交的シグナルが出ています。

ひとつがこの間かまびすしい靖国問題に対する米国の「失望」発言です。米国は反日活動を執拗に続ける韓国や中国に対してではなく、わが国に対して「失望した」と声明しました

この発端となった靖国参拝の価値観としての是非はここでは問いません。朝日新聞の世論調査でも63%が支持していますが、これは国内政治です。

外交的には今やることではないと思います。

靖国や歴史問題に触れるなということではなく、触れるなら周到に米政府内部に根回しし、かつ戦略的にしろと言っているのです。

それが出来ないままでなされている現状だと、中国を喜ばせるだけです。

この両者はまったく別次元のテーマであるにもかかわらず、米国に対して「安倍はナショナリスト政治家だ」という信号を送ってしまいました

このような日本対するジャパン・ディスカウント(日本の地位低下)の情報は、既にワシントンの中韓ロビイストによって文字通り山ほど拡散しており、それを安倍自身が追認した格好になりました。

ことに安倍がバイデン副大統領との直接の電話会談の中で靖国参拝の制止を振り切った形になってしまったことは、明らかな外交上の失敗です。

安倍はバイデンの制止を聞くという「貸し」を作っておき、その機が熟するまで気長に待つべきでした。

なぜ安倍は生き急ぐのでしょうか。靖国神社は逃げません。ここまで現実主義外交を積み重ねておきながら、なぜこのような失敗をしてしまうのか。

ついでに言うなら、安倍の側近たちにくだらない感情論を黙らせなさい。「米国に失望した」なんて言ってなんの益になりますか。そんなことは思っていても黙っていなさい。

発言の重みを知らない首相近辺の連中の舌禍にはうんざりです。

衛藤首相補佐官は、自分のカウンターパートが、G2路線のライス大統領安全保障補佐官だと自覚して発言しなさい。首相補佐官はただの代議士ではないのですよ。

歴史認識問題を政治家が発言する場合、必ずわが国メディアによって歪曲報道されて米国に伝わることを肝に命じたほうがいいと思います。

やるならやるで、徹底した米国内部の根回しと戦略性、理論武装が不可欠です。それらすべてがないままに放言しているのか、安倍周辺です。

これら一連の靖国騒動が、オバマを中心とする米国政府と米メディアに、「安倍は極右政治家だ」という誤解を与え、アジア外交のもう一方の極である中国の側にオバマを押しやってしまったことは否めません。

これは日米同盟を引き裂くことを最重要課題としている中国を大きく利しました

中国はオバマの足元を見透かすように防空識別圏という露骨な版図拡大のジャブを繰り出しましたが、副大統領が訪中するという好機がありながら対応は口先だけに止まり、民間機には中国に従うように命じてしまいました。(欄外資料2参照)

これで中国は米国の本音を見破ったことでしょう。米国は南シナ海、東シナ海を地理的名称どおり「中国の海」とすることを容認したのだ、と。

言葉を変えれば、今でこそ同盟関係にある日本に配慮しているが、尖閣において米国は介入せず、もう一押しで更なるG2関係に持ち込めるという感触を得たはずです。

更に、同時期中国は韓国と共に安倍の靖国参拝を、「戦後世界秩序への挑戦」として煽りました。

これは言うまでもなく、中国自身の膨張政策を歴史認識にすり替えようとする詭弁ですが、この中国発の反日キャンペーンに、ものの見事に米国大手紙のワシントン・ポストニューヨーク・タイムズは乗りました。

続いて習は、既に13年10月のAPECバリ会合で、ロシア大統領のプーチンに2015年開催の「反ファシスト戦勝70周年記念会議」を呼びかけて合意しています。

これに、オバマを引きずり込み米、英、中、ロなど大戦の戦勝国首脳が一堂に会して戦後の秩序を再確認し、ファシズムの台頭を共同で防ぐ声明を打ち出す予定です。

これを中国は、「ファシスト日本の復活を阻止するための国際包囲網」として世界に大きく宣伝することとでしょう。

この戦勝国会議を3月の米中首脳会談で提案され、残念ながらオバマが乗る可能性は極めて高いと思われます。

既に習はベルリン訪問時にホロコースト博物館に行き、ホロコーストと南京事件を重ね合わせたプロパガンダをしようとして、ドイツ政府に拒否されています。

戦後一発の弾も撃たなかった国が、建国以来戦争漬けの中国に軍国主義呼ばわりされたくはないと思いますが、中国が周到な情報戦を世界規模で仕掛けていることにわが国も自覚的に立ち向かわねばなりません。

このように中国は、日本を国際的に孤立させ、TPPを不発に終わらせた上で、新たに中国も含めた太平洋政治-経済圏構想を米-中二軸構想で押し出すかもしれません。

このようにオバマは中国をアバーサリー(敵)とする立場から軸足を動かし、ポテンシャル・パートナーとしての関係に変化させる兆しが見える場所に、今私たちは立っています

わが国は、このようなオバマに対して、民主主義と日米同盟の強化の原則を幾度となくオバマに熱く語りつつ、米国の変心に備えるべきです。

TPPに於いても、米国の対中包囲網に参加するなどという甘えた戯れ言から醒めて、中国に傾斜する米国が自国の利害をむき出しでわが国に向ってきていることに強い危機感を持たねばなりません。

尖閣問題はほぼ確実に米国は介入しないでしょう。したがって、わが国は独力で対処する準備が必要です。

これが出来ないようなら、わが国はG2の奴隷となるか、「フランス」になる覚悟をせねばなりません。

現時点では、オバマは、米国の世論が中国に批判的なことを反映してダライラマと会談するなどして危ういバランスをとっています。

まだオバマは「向こう側」に行く決意をしたわけではなくふたつの価値観の間でグラグラしているようです。

このような微妙な時期にわが国が舵を取り間違えてはなりません。

オバマはこの下の写真どおり夫人にもソッポを向かれる薄型最軽量の人物ですが、まだ3年も任期があるのです。

Photo

(写真 マンデラ氏の葬儀会場で、夫人の横でデンマーク美人首相シュミット氏とたわむれるオバマ大統領。この後、夫人から離婚を宣告されたという噂が流れ、支持率はいっそう急落した)

私は政治、特に外交において左右の理想主義は信じません。有害であるとさえ思っています。

それは鳩山が行った左翼的「友愛外交」の無残な結果をみれば分かるでしょう。彼の友愛とは調和ではなく、破壊と混乱の代名詞でした。

逆にもし、安倍が復古的外交路線を考えているなら100%失敗します。外交とはそのような自己陶酔的観念の入る隙間のないパワーポリティクスだからです。

日本は、兎のように聡くなければ生き残れません。

2014年3月 1日 (土)

週末写真館 村の神社のあたり

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村のはずれに小さな祠があります。
今はブランコなどもあって子供たちが遊ぶ姿もみられます。
その年の番の氏子さんたちは、毎年の手入れや祭を取り仕切ります。
秋ともなれば、祠の外は彼岸花が咲き乱れ、鄙びた風景に色を添えます。
今日もまたおばぁちゃんが自転車を引いてお買い物カから帰って来ました。
なにか時間が止まったような午後です。

 

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