歴史認識は歴史的世界構造を変えない限り変わらない
いわゆる従軍問題について、政府は河野談話を見直さない方針であることを決定したようです。
結論から言えば、私はこれを支持します。
昨今の中韓のわが国に対する挑発行為は常軌を逸しているのは、日本人の多くが感じているところです。
あの毎日のように吐き出される、「オレの歴史観だけが正しい。だから手をついて謝れ」といった謝罪強要だけにとどまらず、あることないことを世界にふれて回るに至っては韓国のおでこに手を当てて「熱ないの」と聞きたいくらいです。
韓国が好きでも嫌いでもないと思っているこの私ですら、あれを聞かされると一日が暗くなりますよ。しつこいを通り越してもはや病的です。
もはや中韓とは、相当に長期間の冷戦状態は避けられないと覚悟すべきでしょうね。
状況が変化するとすればパクか、習か、安倍の政権が交替する時ですが、それは今の時点では読めません。三政権もそれなりに国内的な安定構造があるからです。
パク、習政権には共通した体質があります。それは内部の経済・社会の混乱を、外部への緊張関係を作ることですり替えることです。古典的ですが、有効な手段です。
この東アジア3カ国のなかで、わが国だけが、そのような「内部矛盾の外部への持ち出し」をする必然性を持ちません。
たしかに、国民感情としては、「これ以上国内の問題に外国にとやかくいわれたくはない」「内政干渉をするな」「侮辱するのもいいかげんにしろ」という内圧が高まっているのは事実ですが、それはまだ抑制可能な範囲内です。
だとすれば、中韓の反日は風土病だと思って放っておけばいいのです。
韓国は、未来永劫にわたって反日を取り下げるつもりはないでしょうし、今、首相の謝罪を呑めば、その次は天皇の土下座を要求することでしょう。
中韓に対して必要な配慮は、距離をあけて「相手が喜ぶことをしない」ということです。
「敵が喜ぶこと」とは、ひとつには戦後実に35回もやって無意味だった謝罪(※)をしてみたり、逆に靖国参拝や問題の見直しのような中韓が狂喜乱舞するような歴史ネタをこちらから提供しないことです。
それを考えるヒントに、ボストン大学のウィリアム・グライムスが執筆した「安倍首相は米国に出入り禁止となるなかれ」という記事があります。
グライムスは知日派リベラルですので、そのバイアスはあると思って読むべきですが、要約すれば以下のこと述べています。(要約は站谷幸一氏による)
1.安倍政権の政策は米国にとって素晴らしい
2.しかし、安倍首相個人は問題だ
3.安倍首相の無神経な言動は米国の公式的見解からして弁護不能
4.その為、安倍首相の行動は周辺諸国との衝突と相まって、米国のアジア政策における影響力を低下させる障害でしかない
5.このままいくと米国は鳩山由紀夫と同じような処分を下すことになる
また、オバマ政権の対日担当の国務省ダニエル・ラッセル次官補は、3月4日の上院外交委員会のアジア太平洋小委員会でこう述べています。
「北東アジア地域での米国の同盟関係(日米同盟や米韓同盟)は、そのいずれもが中国を対象とはしていないことを明確にしたい」
あるいはこうも言っています。
「現段階ではわれわれの共通の協力や利害関係にもかかわらず、日韓関係は緊迫している。同盟諸国同士のそうした緊迫は懸念の対象であり、日韓両国の誠意ある対応を必要とする課題である。
難しい歴史問題への対処には、慎重さと自制を示す必要がある。共に癒やしを得られる方法で処理することが重要だ。米国は日韓両国と密接に協力し、緊張を減らす措置を取ることを奨励している」
要約すれば米国政府は
1・「米日同盟はアジア・太平洋の平和と繁栄の基礎である」
2・「「オバマ大統領の政策目標は、米国と日本との強く、成長する絆なくしてはまったく達成できない」
3・「日米同盟は中国を対象としてはいない」
4・「日韓関係が緊迫するので歴史認識の対処は慎重さと自制が必要である」
5・「米国は日韓両国と密接に協力し、緊張を減らす措置を取ることを奨励」
1は日米軍事同盟についての旧来の米国の原則的立場の確認です。
2はTPPなどの経済連携を指すと思われますが、問題は3と4です。
3で米国は中国を対象としないと明確に言い切っています。米中の軍事衝突は絶対にしたくないというオバマの考えがわかります。
つまり尖閣などに中国の進攻があった場合においても、米国は日米安保を発動しないということです。
4は、日本に対しての注文です。名指しは避けていますが、これは安倍が韓国に対して歴史認識で「慎重に自制しろ」と言っています。
5は、ハーグでの核安全保障会議での米国大統領を加えた米日韓の首脳会議などのような、米国が日韓を仲介する動きです。(韓国は拒否しました)
安倍の政権奪取後の政策は、TPPや辺野古、特定秘密法案、そして集団的自衛権にいたるまで、すべてが日米同盟強化のために捧げられていると言っても過言ではないはずです。
しかし、ここで留意しなければならないことは、米国がこの東アジアの緊張した国際関係の原因を日本が誤った歴史認識を持っているために国際緊張が高まっているかのように見ていることです。
バイデン副大統領が訪中した折も、習は「日本が誤った歴史認識で攻撃し、東アジアの緊張が高めている。安倍はチキンレースをしている」と発言しました。
わが国からすれば,毎年2桁の軍事膨張をして周辺国に圧力をかけておいて、よく言うよですが、それについてバイデンは無言でした。
残念ながら、おそらく米国は似た感想を持っていると思う方がいいでしょう。
米国内ではなんと日米同盟否定派の鳩山と同列に見るグライムスのような者も多く、国務次官補からは「歴史問題での慎重さと自制」を求められています。
ラッセル国務次官補は、安倍の歴史認識が日韓関係の緊迫の要因としていますが、これは実は米国と韓国は歴史認識の価値観を共有しているからです。
米国の歴史観は、「日本は戦前まで軍国主義の侵略国家だった。戦時中にさまざまな残虐行為やレイプを働いた。しかし、今は米国に破れて改心してパートナーとなっている」といったところです。
まぁ、悪法師の弁慶が、牛若丸に負けて忠実な家来になりました、というストーリーですな。
その弁慶にいまさら、「いや、あれはオレにも正当性があったんだ」などと家来ごときに言われたくないよ、というところですか(苦笑)。
まるでアメコミ的薄っぺらな歴史観ですが、そう米国が考えている以上、そういうものとして対応するしかありません。
オバマは、今の日米同盟に片足を置きながら、ゆっくりともう片足を中国の側に移そうとしています。これがG2(米中2大国支配)路線です。
この時期に、オバマを「あらら側」に押しやる利益は日本にまったくありません。
今は安倍は、デフレからの脱却、憲法改正、集団的自衛権などの難問を、じっくり国民と会話することが大事なのであって、拙速な歴史認識の変更については横に置くことです。
それが中長期的な国益なのだと分かりやすく国民に説明すべきです。
といっても、中韓は毎日のように歴史認識で批判を繰り返していますから、それには答えられる範囲で政府が原則的に対応し、民間レベルが対応するしかないでしょう。
歴史認識は、民間レベルにおいてしっかりとした検証機関を設けて、いわば福島事故の時の、「民間事故調」の歴史認識版「民間歴調」を作って、そこが検証していけばいいのではないでしょうか。
「民間歴調」のトップには米側から見てもリベラルである人物を据え、分科会でわが国の戦争犯罪と言われている南京事件や従軍問題などを調査します。
歴史観を統一する必要はなく、事実を洗い出すことに主眼を置くべきです。完成したならば英訳版も出版すべきです。
歴史観の変更というのは、非常に困難な事業です。
政府がいったん河野談話を政府見解で出してしまえば拘束力があります。(だから河野談話のようにあんなに慌てて拙速に作るなと言いたい)
民間が批判するのは自由ですし、むしろしたほうがいいと思いますが、民間の歴史認識見直しと政府の見直しとはまったく次元が違う問題なのだということをはっきり別けて考えておいたほうがいいでしょう。
たった1年や2年でできることではありません。
たとえば、関税自主権という主権国家としてとうぜんの権利を獲得したのが1911年(明治44年)ですから、結ばされた1958年(安政5年)から53年後です。
あるいは三国干渉に対してわが国はその屈辱を飲んで、日露戦争においてどれほどの犠牲を払ったことでしょうか。
歴史観は、歴史構造と共にあります。歴史構造の変革を伴わない歴史認識の変更などありえないのです。
そして現時点で、わが国にはそのような戦後歴史構造の改変に手をつけるだけの力量も覚悟もないのは自明です。
そうである以上、心配なのは安倍首相の「口」です。
あれだけ米国が喜ぶはずの政策をしていて裏切られてしまい、「出入り禁止処分だ」などと言われるのは、その軽い「口」のせいです。
比較して気の毒ですが、安倍には鳩山の人の良さと似た部分があって、保守層の支持者が喜ぶだろうということで後先なく発言したり、行動してしまう「軽さ」があります。
安倍の取り巻きに至っては、「我が世が来た」とばかりにはしゃぎすぎで、かえって安倍の足をひっぱる結果になっています。
こんなことを続けていると確実に高転びしますよ。
政治家はいい人である必要はまったくありません。むしろ今のような困難な時期には善人な政治家ほど危険な存在はありません。
今の時期には敵からも味方からも、喰えぬ奴と思われていて欲しいものです。安倍の祖父のように。
※「日本の戦争謝罪発言一覧」Wikipediia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E8%AC%9D%E7%BD%AA%E7%99%BA%E8%A8%80%E4%B8%80%E8%A6%A7
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-2eb5.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-e37c.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-f2e5.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-275e.html
ただ、菅氏は、河野談話の内容を見直すつもりはないが、元の証言など、それを裏付ける証拠の検証は続けるだろうとも述べた。検証の結果、疑問が生じた場合の対応には言及しなかった。
【見直し発言は安倍政権支持者への配慮】
ニューヨーク・タイムズ紙は、菅氏の談話見直し発言は、ナショナリスト議員らからの圧力のもと行われたとみている。これは、右寄りの安倍政権支持者をなだめるための政治的な術策にすぎない、との批評家の見解も取り上げている。
ブルームバーグなどは、安倍首相が河野談話を破棄するのではという韓国の懸念を根強く、両国関係悪化の要因だ、と報じている。実際、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は先週、国連の人権問題に関する会合で、日本が「犠牲者の尊厳と名誉」を侮辱していると非難していた。
【アメリカは河野談話支持を歓迎】
AP通信によると、米国務省のサキ報道官は10日、安倍政権が河野談話を見直さないとの発言を「前向きな一歩」と評価した。この問題をめぐり、同盟国である日韓の亀裂の深まりをアメリカは憂慮しているとみられる。
【韓国は日本の今後の対応を様子見】
朝鮮日報は、菅長官の発言について、韓国外交部当局者の「いつも繰り返している話。言葉だけでなく行動で示すべき」というコメントを掲載。河野談話継承の立場を明言しながら、談話の作成過程を検証する方針を示すなど、日本政府の動きへの不信感が強い。
同紙は日本に対し、河野談話の継承に加え、問題に関して、日本が法的な責任を認め補償することを求めている。12日に予定されている斎木事務次官の訪韓に対しては、どのような「手土産」で関係改善を図るのか、政府は様子見の姿勢だと報じる。
なお、韓国、中国から、菅氏の談話継承発言への公式な言及は今のところみられない。
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なぜあなたは、「韓国が好きでも嫌いでもない」のでしょう。そういう立場って、絶対にありえないと思うのですが。何の感情も持たないとでも言うのですか?
考え方変です。
投稿: | 2014年3月14日 (金) 17時23分
ご無沙汰しています。
種子です
閲覧はほぼ毎日なんですが、あの時の発言以来言葉を選ぶとコメント投稿を躊躇してしまう様になってます。
コメントへのコメントは基本すべきなんでしょうが
名無しさんへ一言
コメントを書き込みするのであれば、先ずハンドルネーム位は書き込みましょう。
実名で書いているブログ主様に失礼ですよ。
韓国を好きでも嫌いでもない。
普通の日本人なら一番多い感情だとおもいます。
私は、どちらかと言えば嫌いなほうでしょうが嫌韓運動するほど毛嫌いもしてません。一時期流行った韓国人アイドルグループの楽曲などはきらいじゃありません。むしろ好んで聞いてた事もあります。
韓国人の知人もいますが悪い人ではありません。
私は韓国を好きになるほど韓国の事を知りません。嫌いになりたくなる事件はまぁ多々ありますが、
右か左か。好きか嫌いか。
日本人として二択しかないのおかしくないかな?
原発に関しても
即時全廃と再稼働の二択ではなく利用しながら徐々に減らす選択もあって当然だと思いますし…
中庸
どっち付かず
優柔不断
言葉は良いイメージではありませんが、日本人の日本人らしい一面だと思います。
投稿: 種子 | 2014年3月14日 (金) 20時31分
連投失礼します。
上記のコメントにコメントに基本
のあとは
控えるべきなのでしょうが
でした。
投稿: 種子 | 2014年3月14日 (金) 20時34分
種子さん。おひさしぶりです。
また来てくださね。
さて名無しさん、「好きでもきらいでもない」という意味ですが、私は韓国との憎悪の応酬に巻き込まれたくないという意味です。
また国際関係は人間関係と異なって好き嫌いでどうにかなるものではありません。
というわけで、そのような表現を使っています。
投稿: 管理人 | 2014年3月15日 (土) 05時22分
どうみても名無しのほうが頭おかしいだろ。
いきなり個人ブログに乱入して管理人に2択強要とは何様のつもりだよ。
国際情勢や貿易・農畜産業などはあくまで冷静・冷徹に分析してナンボのことですしですし、
Kポップや韓流ドラマに元から興味の無い人も、いわゆる反韓デモや大久保のヘイトスピーチにはもうウンザリしてる人も多いでしょう。
また、韓流ブームには飽きたけど、キムチやチゲ鍋大好きな人は沢山いますよね。
種子さんのおっしゃるとおりです。
投稿: 山形 | 2014年3月16日 (日) 06時16分
私も、韓国を、好きか、嫌いか?
と、問われると、私も、「信念を持って、好き、嫌いとは、言えない。」状況です。
理由は、つい、この間まで、軍事政権だった韓国政治と、戦後の自身の民間交流の範囲での、情報と、体験では、文化も宗教、生活環境も、違う韓国人の考えを思えば、島国、日本(本土)とは、考えが、異なって、当たり前だと思いますので、戦前の状況を、親から多少、聞いていた自分でも、好き、嫌いの2択を、即答できないで、居ます。
同じ日本復帰した琉球国である沖縄県でさえ、
管理人さんは、元沖縄居住者ですから、よくお解かりでしょうが、
琉球民族と、大和民族、アイヌ民族の習俗、宗教など、かなり違うので、正直、沖縄本島での、習俗、生活に根ざした考え方を、本土人が、理解するのも、その逆も、かなり難しくお互い努力の必要な状態ですから、極端な話、ウクライナ国の現状と、日本における沖縄の状態は、似ているものを、暗に、肌感覚で感じますし、今、米国は、沖縄の日本復帰は、早まった政策だったと、反省しているかもしれません。
対、沖縄でさえ、習俗、風俗が、かなり違いますから、韓国人との考えが、民間レベルで、どれくらい違って、当たり前かは、おして知る状況だと、個人的には、思います。
よって、沖縄、韓国、いずれも、お互い、相手国と民間レベルで、本音を話さない限り、理解しにくいですし、沖縄、台湾、韓国も、天皇中心国家思想は、大和朝廷思想を、ある意味、押し付けられた時期もありますので、やはり民族思想としては、お互いを、否定せず、お互いを理解しあう努力が、今の自分には、必要なことだと思ってます。
しかしながら、今のパク大統領の自己的な歴史認識を、他国に強要するのは、いかにも、大人げないと思いますね。
子供のころ、同級生が、在日韓国、北朝鮮人と、理由は、わかりませんが、石を投げたり、子供同士けんかしたりしている場面は、良く見ましたが、今、思えば、なぜ、子供達が、嫌韓行動を、実行していたかは、結局、当時の大人に、マインドコントロールされていたに、過ぎず、戦後生まれのわれわれの年代が、自己の意思で、そういう行動を採ったとは、思えないのです。
投稿: りぼん。 | 2014年3月16日 (日) 11時05分