« 米国をG2論に走らせてはならない | トップページ | 「河野談話」誕生秘話 石原元副官房長・慙愧の証言 »

ウクライナに善玉、悪玉はいるのか?

253

ウクライナが分裂の様相を呈し始めました。

ロシアにとってウクライナは、ロシア本土の西欧勢力からの緩衝帯であり、旧ソ連時代に移り住んだロシア系住民が東部を中心にして多数居住しています。

軍事的にも黒海に突き出したクリミア半島は、地政学的要衝ですからロシアは譲る気はありません。

もしここで欧米に譲れば、ロシアの軍港があるセヴァストポリは西欧勢力圏の中に浮かぶことになります。

プーチンにとって、ウクライナ自体が元々は旧ソ連圏です。ここで敗北することは、旧ソ連の崩壊に継ぐ、2度目の敗戦のはずです。国威に賭けて退かないことでしょう。

プーチンの強さは、軍事力行使を逡巡しないことです。ロシア議会も、このような国運を賭けたことには直ちに大統領支持で一枚岩に団結しています。

これが、オバマと決定的に違うところです。オバマはアフガン問題で躓き、エジプトで躓き、シリアで躓き、あげくにこともあろうにシリアではロシアに助けてもらう赤恥をかいています。

彼の無能ぶりは世界が認識しており、オバマやケリーがなにを言おうと関係ありません。

よしんば、オバマが(ありえませんが)ロシアとの軍事衝突も辞さないと言ったとしても、米国議会は承認しないでしょう。

こんな腰の定まらない大統領に率いられた「戦争」なんぞ負けるに決まっているからです。

また財政難でのたうつEUには軍事力行使の余力がありませんし、国内もまとめきらないでしょう。

特にドイツはウクライナ経由の天然ガスを供給されており、脱原発で恒常的エネルギー不足ですから英米仏と同一歩調はとらないでしょう。

では国連はといえば、元から拒否権を持つ常任理事国が起こした戦争に対してはお手上げという構造的欠陥を持つ上に、事務総長がこれ以下を想像するのが難しいような人物です。

パン・ギムンがやった唯一の「実績」と言えば、韓国人の大量登用と、サムスン製品の大量買いつけ程度ですから、初めから居てもいなくても一緒で、いないほうがましなくらいです。

というわけで、欧米、国連は何もできません。

したがって、プーチンにとってG8から排除されることなど、「二度目の敗戦」をするよりましですから、痛くも痒くもありません。

キエフまで進攻するかどうかは別にして、このままの介入路線を走ることでしょう。

ロシアの後ろ楯をもらったヤヌコビッチ氏は、正当な選挙による大統領職であることは間違いありませんから、ロシアの亡命政権からウクライナ軍に「大統領」として現在の臨時政府に不服従を呼びかけるでしょう。

東側圏のウクライナ軍はそれに従う可能性が高いとみられます。既にクリミアの海軍司令官はヤヌコビッチ側に走りました。

その場合、最悪は、ロシア軍に応援された東ウクライナ軍と西ウクライナ軍の内戦ですが、おそらくはそうならないでしょう。戦力差が大きすぎます。

ロシアは、欧米を完全に敵に回して西側圏まで制圧する気はないはずですので、ウクライナは東側+クリミア半島と西部に分割されるでしょう。

もちろん、欧米はこれを批判するでしょうが、政権のレジティマシィ(正統性)はヤヌコビッチ政権側にありますし、民主的手続を経ないトゥルチノフ大統領代行政権を「正統」と言い張るのは相当に厳しいと思われます。

とまれ、好むと好まざるとに関わらず、クリミアの要衝にいち早く特殊部隊を投入して軍事制圧し、既成事実を作ってしまったプーチンの勝ちです。、

この地は、歴史的に西欧とスラブが角遂する地です。多くの血を吸ったクリミア戦争もこの地で勃発しています。

元はといえば、亡命したヤヌコビッチ政権がロシア寄りになったのは、極度の経済危機を迎えているウクライナにEUが支援をしなかったために゛天然ガス・パイプラインを握られているロシア寄りにならざるをえなかったからです。

かつてのチェコスロバキアやユーゴと同じく、東欧諸国には、複数言語、複数民族、複数習俗などといった国がいくつもあります。ウクライナも同じように東西は別民族です。

こう考えると、このどちらが「正義」なのでしょうか?

いずれにしても、マスメディアが好きなロシア=悪玉 欧米=善玉という単純な色分けでみないことです。

かつてセルビア問題が起きた時に、欧米はクロアチアの宣伝に騙されて、セルビアが民族浄化をしていると思ってNATO空軍を投入しました。

セルビアは完全な悪玉に仕立て上げられたあげく事実上敗北し、戦後も厳しい道のりを歩んでいます。

しかし、後になってこれはすべてクロアチアが依頼した米国宣伝会社演出のプロパガンダだと判明します。

今、欧米経由でさまざまな情報が入ってきていますが、それを日本のマスコミのように鵜呑みにしないことです。

最後にわが国ですが、はっきり言って西欧勢力とスラブ勢力の争いなど対岸の火事です。

北方領土を考えるとプーチンに肩入れしたらと思わないではありませんが、そのことによるただでさえ冷えきった米国との関係が完全冷凍状態にあるのも剣呑です。

もし安倍首相に覚悟があるなら、ウクライナ平和会議のようなものを東京で開催するくらいのことをすると面白いのですが。

わが国は幸いにもG8メンバーであり、かつ部外者ですから充分にやる資格はあると思います。

どうでもいいことですが、3月の米中会談を控えて米国と蜜月を演じたい中国の習は、今悶々として米露どちらを選択するか悩んでいるかと思うと、このやりきれないようなウクライナ問題にもようやく微苦笑が浮かんできます。

|

« 米国をG2論に走らせてはならない | トップページ | 「河野談話」誕生秘話 石原元副官房長・慙愧の証言 »

環境問題」カテゴリの記事

コメント

畜産農家の私にとって、世界有数の穀物輸出国のウクライナ情勢は気になります。
日本はウクライナからの穀物輸入は多くはありませんが、世界の穀物需給状況が逼迫している現在、戦争によりウクライナの穀物生産や輸出に影響が生じたら、日本でも食料価格の高騰は避けれれないでしょう。
戦争に至らずに膠着状態が続いたとしても、穀物先物取引価格は敏感に反応するはずです。

農業だけでなく、輸出入に頼る私たちの暮らしは、国際的な平和関係の上に成り立っています。

海外農業投資をめぐる状況について (ウクライナ)農林水産省http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/toushi/pdf/ukuraina.pdf

投稿: 南の島 | 2014年3月 4日 (火) 13時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 米国をG2論に走らせてはならない | トップページ | 「河野談話」誕生秘話 石原元副官房長・慙愧の証言 »