ウクライナ紛争その4 EUなんかに入るのはお止めなさい
もし、私がウクライナ人から、「EUへ加盟したいんだが、どう思う」と聞かれたら、ゼェ~タイにお止めなさいと答えると思います。いいことないですよ、あそこは。
ウクライナはEU加盟によって、法の支配、恐怖からの解放、腐敗の一掃、そして自由市場が得られると思っているのでしょうが、その望みは叶うでしょうか。
まぁ 「自由市場」とやらだけは叶えられでしょうが、それはウクライナ人が素朴に思っているのとは真逆です。
まず、その前に簡単にウクライナの独立からの経済を振り返ってみましょう。
ウクライナ自体の経済構造は、ソ連の一共和国だったために大変にいびつでした。
旧ソ連は、傘下の共和国に、お前はナニを作れ、お前はコレを作れというような、ソ連を一国と見立てた垂直分業システムを持っていました。
ウクライナには、そのうち戦車や航空機、艦艇などの軍需工業と、小麦生産があてがわれました。
逆に言うと、他の分野はひどく貧弱です。スホーイ27やT72などの戦闘機や戦車は山ほどあっても、民需品はないに等しいのです。
ちなみに、中国のスホーイもバッチモンの空母もみなウクライナ製です。あ、チェルノブイリもウクライナでしたっけね。
その上すべて国有企業でした。独立後しばらくは国有経済のままで゛、ようやく「オレンジ革命」で解体されました。しかし、その時に大変な汚職が起きました。
国民の財産のはずの国有企業が、国民が知らないうちにただ同然で払い下げられていたのです。これで誕生したのが、今のウクライナを代表する6大財閥です。
(写真 ユーリ・ティモシェンコ。投獄のせいかだいぶふけた。もっとも牢獄は豪華。Wikipedia)
あのユーリ・ティモシェンコもこれで巨富を得ています。彼女の場合は、ラザレンコという地方政治家に政治資金を与えました。
そして、彼が首相に就任すると、ティモシェンコの会社UESUにウクライナ全土をほぼ独占するガスの輸入・販売権を与え、この会社はウクライナGDPの30%を占めるという法外な利潤を叩き出していました。
こうして彼女は一気にウクライナでもっとも富裕な人物になったのです。
彼女は政治犯でなかったにかかわらず、EUの「連合協定」の民主化要求で釈放されました。
このような独立後のドサクサに紛れて国有資本を私物化する者は多く、彼らの財閥は輸出利益の免税などの特権を得て、それをせっせとタックス・ヘーブン(租税回避地)のキプロスに逃避させ蓄財に励みました。
これは今の中国にも言えることですか、政府高官と財閥が癒着し腐敗したダーティ・マネーをやりとりしたあげく、それを海外に持ち出すという構図です。
おそらく国外へ逃げた金だけで、数百億ドルと言われ、このダーティ・マネーを巨額な投機にまわそうとして、折から猛威をふるっていた国際投機資金と結びつきました。
これが今でもある、ティモシェンコとジョージ・ソロスとのご縁です。この勢力が作ったのが、政権党の「祖国」です。
もうひとつ馬鹿にならない実入りが、ロシアからの天然ガスのトランジット(通過)代でした。
ウクライナには西欧への動脈が伸びていますが、この利権も一部の人たちに独占されて、巨富を築いたのがビクトル・ピンチュクです。
このピンチュクが作った政党が、これも今政権与党にいるUDARです。
しかし、これらはリーマン・ショック以降ガタガタになり、今やウクライナのGDPは独立前の1989年の75%程度まで落ち込んでいます。
国民の平均賃金は隣のポーランドの3分の1で、月収は3万円ほどだと言われ、人口は1989年から680万人も減って、現在4500万人にまでになっています。
旧宗主国・ロシアからの150億ドルの巨額支援と、18億5千万ドルの天然ガス代金の不払い、果てはガスの抜き取りなどでなんとかやりくりしていましたが、とうとうデフォールトしかないところまできています。
ウクライナは、いまや優秀な重工業と、世界有数の穀倉を持ちながら、ヨーロッパ最貧国となってしまったのです。
この現状に国民の不満が溜まらないわけがありません。
この不満を背景にしてぐんぐんと勢力と伸ばしたのが、前回ふれたオレフ・チャフニボクの率いるスボボダのようなネオナチでした。
未確認情報では、彼らは欧米の情報機関によって育成され、近年ではシリアのテロリスト集団と資金的、人的つながりすらささやかれています。
というわけで、今回の新政権はこの怪しげな3ツの勢力の連合なのです。
長くなってしまいましたので、EUにはいったらどうなるのかは次回に回します。
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