ウクライナ紛争その3 現政権に紛れ込んだネオ・ナチの面々
G8からロシアを追放だそうです。わが国は恒久的ではないという姿勢ですが、米英は永久追放を主張しているようです。
まぁプーチンは痛くも痒くもないでしょうね。
いくらロシアの天然ガスからの脱却などと会議で言っていても、LNG(液化天然ガス)のプラントは輸出国、輸入国双方に作る必要があり、早くても3年先の話でしょう。とても今年の冬には間に合いません。
仮に出来ても、輸出国から足元を見られていますから、えらく高いものにつくでしょう。
いかにロシア一国や、エネルギー源をひとつのものに強依存すると恐ろしいことになるか、これで分かります。
ケリー国務長官などは、ハーグに着いてから、「クリミア半島をめぐる情勢の緊迫化が、シリアの化学兵器廃棄に向けた国際的な取り組みに協力するロシアの姿勢に影響しないよう期待する」(ロイター3月25日)などと、ロシアの顔色をうかがっているようではどうにもなりません。プーチンは大笑いしたことでしょう。
さて暴力的クーデターで権力の座についたウクライナ現政権は、一体どんな人達なのでしょうか?
彼らを政権につけたこの暴動騒ぎは、極めて訓練されていて、しかも一部は武装していました。彼らには報酬すら支払われていたとの未確認情報があります。
ウクライナ現政権はEU寄りだという触れ込みですが、決して欧米的自由主義者などではありません。
プーチンは、「欧米のファシストたちがウクライナの主権を非合法的に奪っていった」と述べましたが、あながち根拠がないわけではありません。
現ウクライナ政権は、「祖国」などの国際投機資本、UDARなどの石油資本、そして残り大多数は、「スボボダ」のような西ウクライナのガリツィア地方にを根拠地にする極右民族主義者・ネオナチなのです。
ガリツィア地方と呼ばれる西ウクライナは、ハプスブルグ帝国の領土に属しており、帝国解体後はポーランドに属していました。
このガリツィア地方がソ連領ウクライナと統合されて今のウクライナになるわけですが、日常的にウクライナ語を話す西ウクライナと、帝政ロシア時代から「小ロシア」と呼ばれていて広義のロシア人のアイデンティティを持った東ウクライナとは相当に隔たりが大きかったといえます。
また産業構造も、東ウクライナは、旧ソ連の垂直分業により、今でもロシアとのつながりが深い航空宇宙関連企業や軍需産業がある一方、西ウクライナは西欧への輸出が多い穀物生産が中心です。
さて、ウクライナのネオナチは、「プラヴィー・セクトル」(民族主義右翼)と呼ばれ、有名なネオ・ナチ組織としては、最大党派の「スボボダ」(自由党)です。
以下、「ウクライナ愛国者」、「ウクライナ民族アセンブリ」、「ウクライナ自衛」などといった組織で、シンボルマークとしてトリズブ(三叉、ウクライナ紋章の柄)を着けています。
(写真 スボボダのウクライナ版ヒトラー・ユーゲントの行進風景。トリズブの替わりにハーケンクロイツがあれば1930年代と間違えそう。引用は上記より)
トリズブはウクライナの国章ですが、いまやウクライナ・ネオ・ナチのシンボルになっています。
(写真 暴動時のウクライナ極右団体。トリズブの腕章をつけている。ほとんどがヘルメット、覆面、手にはチェーンとスプレーガスとこん棒というお約束のスタイル。スプレーは警官隊の顔に吹きかけたり、火炎放射機のように使われているのが映像に記録されている。とうてい「市民の民主化要求デモ」ではない。引用はThe Red Phoenix)
彼らは強烈な反ロシア、反移民、反ユダヤ人のスローガンで統一されています。
「こうした団体は、悪名高いナチ協力者で、対ソ連戦を積極的に戦い、第二次世界大戦の両方の側によって行われた最悪の残虐行為のいくつかに関与したステパーン・バンデーラが率いたいわゆる“ウクライナ民族主義者組織”への崇敬の念を共有している。」(Eric Draitser)
(写真 ネオナチのデモ。掲げられているがウクライナ民族主義のカリスマであるステパーン・バンデーラ。 引用ロイター / Gleb Garanich)
彼らはこの「革命」に至った暴動の主役でしたが、こん棒とヘルメットで武装し、手製爆弾を警官隊に投げて多くの死傷者を出しています。
また攻撃対象も治安部隊だけではなく、警察署を襲って占拠して警官を拉致拘束し、親ロシアだと目されれば一般市民にも容赦ない暴行を加えています。
(写真 当初は市民デモと報道されたが、実態は市街戦。組織化された暴徒は古都キエフを容赦なく破壊し、火を放った。)
ほんとうかうそか分かりませんが、治安部隊の中にもネオ・ナチのシンパがいて、彼らがわざとデモ隊に発砲したのだという説まであります。(その逆にロシアの謀略だという説もあります)
「独裁者ヤヌコビッチに抵抗し、EU編入を求める市民デモ隊」という誤った西欧経由の報道が日本でもなされていたので、大きな誤解があるようですが、彼らは極右テロリストと言っていいような危険な存在なのです。
歴史上、彼らに良く似た政治団体を探すとすれば、ヒトラーの褐色シャツ突撃隊員(SA)や、ムッソリーニの黒シャツ隊が近いとDraitserは書いています。
驚くべきことに、このウクライナ・ファシストたちは、「革命」政権によって正規の治安部隊に組み込まれ、いまや銃で武装して司法権力を振り回す存在になってしまいました。
ヒトラーの私兵であった突撃隊(SA)が1933年の政権奪取後に、補助警官となったことのようです。SAは共産党や労働組合に暴虐の限りを尽くしました。
テレビでも報道されましたが、昨日まで治安部隊に爆弾を投げていたような男たちが覆面のまま楯を持って、政府庁舎を警備している異様な光景を覚えているでしょう。
あの男たちがネオ・ナチで、あのまま制服に着替えて正規治安部隊に変身しているのですから怖い。
彼らのボスたちは今や、軍事・治安部隊の司令官に任ぜられています。
ネオ・ナチのスヴォボダの創設者であるアンドリー・パルビーは、国防・安全保障委員会新長官。
右セクターという極右テロ組織の司令官ドミトロ・ヤロシは、今や国防・安全保障委員会副長官。
国防・安全保障委員会とは、ウクライナの軍、警察、裁判所、諜報機関を統括する)広い権限を持つ国家組織です。
最大のネオ・ナチ組織スボボダからは、他にも多くの閣僚を送り出しており、国防大臣はイホール・テニューフ、副首相はオレクサンドル・フチ、検事総長(司法大臣)はオレグ・マフニツキーといった具合です。
ただし、国防大臣のテュニーフは25日、クリミアを失ったことの責任を取り辞職しました。後任はコワリ。
それにしても、麻生財務大臣が逆説的意味を込めて「ナチスに見習え」といったことを、あれだけ批判した西欧のメディアは、ホントの本物のネオナチがこんなにいる新政権をよく承認したものです。
いちおう、首相のヤツェニュークはだけはネオナチではなく右翼の銀行家で、米国国務次官穂ヌーランドに約束したとおり欧米協調路線をもっていて、IMF、世界銀行による緊急援助と引き換えの要求を呑むと見られています。
これについては明日触れます。
※参考資料 Eric Draitserstop(1月30日stopimperialism.org)米国の左翼情報サイト
lhttp://stopimperialism.org/
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