TPP 米国がこれほどまで頑強なわけ
バラク・オバマ大統領は、大学時代のダチだったフロマンUSTR(米国通商代表部)代表を使ってゴネまくっているようです。
オバマは、国内の経済財政問題に有効な手だてを打てず、 シリアでの赤恥、ウクライナでの火遊びの失敗と失政の連続でこのままだと11月の中間選挙では歴史的大惨敗必至と言われています。
かつての支持層だった都市リベラル層からは愛想を尽かされ、伝統的保守層からも失笑される存在にすらなってしまいました。
合衆国海軍の原子力空母には、歴代の顕彰される大統領の命名するしきたりがあるのですが、ロナルト・レーガンは実在する巨大空母、オバマはボロボートといったありさまです。
なぜロバかって、まぁご想像どおりです。
オバマは既に立派なレームダックというかレーム・ドンキーです。
だからこそ、今のオバマは国内雇用改善のためにTPPをなんとかモノにしたいと焦っていると思われます。
3月末のオランダ核セキュリティ・サミットでは、安倍首相との会談で、他に沢山話すことがありそうなものなのに、核問題などそっちのけでTPP交渉の推進一色だったそうです。
やれやれ、もはや妄執の類ですね。だからこそ4月24日の首脳会談は「国賓で行ってやるから、お前が折れろ」というのがオバマの言い分なようです。
現在の状況は漏れ伝わるところでは、2月のシンガポール閣僚会合では、発展途上国と米国の対立で座礁。
それではエライさん同士角つき合わせても仕方がないので実務者レベルでなんとか打開の糸口を、ということで開かれた3月の事務方交渉もみごとに物別れ。
ならば搦手から攻めてみようということで、日豪EPAで米国も 関心を持つ牛肉関税を引き下げ、代わりにオージーの自動車関税を締結と同時にゼロとして、米国にプレッシャーをかけてみようということになりました。
いちおう日豪EPAをまとめてみると
・牛肉関税・・冷凍品35%から18年かけて19.5%に引き下げ
・ ・・冷蔵品15年かけて23.5%に引き下げ
・過去5年間の輸入量水準を超えた時に38.5%に戻すセーフガード
評価は難しいところですね。15年から18年という猶予の幅をどう読むかです。むしろ牛の畜産農家にお聞きしたいところです。
ただ交渉自体とすれば、オージーが車を作っていないことを考えると引き分けといったところでしょうか。
なぜか妥結を急ぐ日本側としてはこの日豪EPAの成果を引っさげて米国のフロマンを迎撃したかったわけですが、さすがは我らの裸のマッチョ・フロマン。
すごい「妥協案」を引っさげてきました。なんと言ったと思います。「関税撤廃にこだわらず、 一桁台ならいい」(爆笑)
もう私は笑いましたね。米国の「妥協」とは、こんなていどです。
「オレは前にこっちは全部ノーだが、お前は全部イエスと言えと言った。今度はオレが折れてやる。オレはノーだが、お前はちっとくらいはノーと言っていい」。ありがたや(笑)。
すごいね。米国の「妥協」って、あいかわらず自分は全部ダメだが、相手国への要求を少し負けてやる、なんですよ。
フロマンの交渉って、相手を殴り倒すことだと思っているようです。交渉とは互いに譲りあって落し所を探ることじゃなかったのですかね。
そもそも日豪合意の冷凍牛肉19.5%ですら国会決議に反するのに、それよりもさらに低い一桁台ですって。話になりませんね。
オージーの半分以下にしろということなど論外。バッカじゃないか、頭を冷やせ、フロマン。
たとえば米国は、自動車関税で、「トラック」に分類されたSUV車になんと未だ25%という法外な関税をかけています。
SUV車というのはスポーツ多目的車のことで、ジープ・グランドチェロキー、フォード・エクスペディションといった米車が日本で競争力を持つ数少ない分野です。
もちろん競争相手は多く、トヨタ・ランドクルーザー、英国ランドローバー・レンジローバー、独ベンツGLクラスなどの強力なライバルかひしめき合っています。
これらライバルに25%もかけているのですから、米国っていつから発展途上国になったのでしょうね。
ちなみに日本は自動車関税ゼロです。
ついでにこんな状況なのに、安倍首相はどうも24日の日米首脳会談までまとめたいという思いが強いようです。
哀れ、舌癌から退院したばかりの甘利大臣は、16日に訪米して交渉を詰めてくるといいます。なにをどう詰めるのでしょう。見物です。
自民党内は農水議員のみならず、半数以上の議員がカンカンになっています。
11日に農林水産戦略調査会、 農林部会、農林水産貿易対策委員会が緊急の合同会議を招集しました。
TPP交渉における 国益を守り抜く会を開催し、国会決議や党の公約を逸脱するものは絶対に受け入れられない、少なくとも日豪の合意がレッドライン( ぎりぎりの越えられない一線)であるとする決議」(山田としお参議院議員メルマガによる)をしたそうです。
ちなみに山田議員によれば、石破幹事長も 「日豪で決めた内容をさらに下回るものなど、豪州との信義に反し、 徹底した日本への不信を生む。国内では自民党は嘘つき政党だ とする非難を生む、とんでもないものだと怒り心頭」だそうです。
まさに石破さんの言う通りです。こんな傲慢極まる米国のヤクザまがいの要求に屈したら、今後日本は関税交渉はできなくなります。
百歩譲って日本がこの米国要求を丸呑みしても、USTRはTPPがらみの交渉で、一括承認手続きができる「大統領貿易促進権限」(TPA)がありません。
ですからこの弱い権限しかないからこそ、ゼロでなければイエスと言わないというフロマンの強硬無比な姿勢か生まれているわけです。
そもそもTPP交渉に関しては、オバマの与党民主党すら全米自動車労組などの反対で敵に回っていますから、11月中間選挙まではTPAが議会から与えられる可能性はゼロです。
だからこそ、オバマにとって、議会がTPAを出すしやすく材料が必要なのです。
だから、従来のネゴシエーターではなく、クライアントの利害第一の弁護士のフロマンを送り込み、非妥協的に重要5品目に関して関税撤廃を主張し続けているのです。
仮にこれでわが国が折れなかった場合でも、「日本の頑強な保護主義政策のためにTPP交渉全体が挫折した」と喧伝できます。
おそらく、オバマはもうTPP失敗の後の言い訳まで考えて動いているのです。
これに関しては TPP交渉に事前加盟交渉時に自動車関税で譲ったことが悔やまれます。
あれで、オバマは安倍は脅し上げれば、首脳合意の重要5品目も譲ると錯覚したのでした。
この強硬姿勢に負けると、「政治判断」ひとつで日本は牛肉関税をオージー並の10%台まで下げる可能性もなしとは言えません。
オバマ来日までが山場です。日本政府が安易な妥協をしないように、警戒しましょう。
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■日米TPP協議継続…牛肉関税10%前後攻防か
読売新聞
2014年04月11日
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を巡り、甘利TPP相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表が10日、東京都内で最終日となる2日目の閣僚協議を行った。
焦点である牛肉の関税について、米国側が現在38・5%の日本の税率を限りなくゼロに近い水準に引き下げることを求めたのに対し、日本側は20%前後に引き下げる考えを示した。
両国の意見の隔たりは大きく、今週末まで事務レベルの交渉を続ける方針を確認し、閣僚協議を終えた。甘利氏が来週にも訪米し、フロマン氏と再協議する可能性がある。交渉関係者の間では、最終的な着地点として、両国の主張の中間となる10%前後の攻防になるとの見方が浮上している。
■【ワシントン=斉場保伸】環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結に向け、甘利明TPP担当相は十五日、米通商代表部(USTR)のフロマン代表とワシントンで会談した。会談後の記者会見で甘利氏は「農産品分野などについて両国の立場の隔たりを狭めることの重要性で合意した」と述べ、農産物の関税の扱いなどで依然として隔たりがあることを明らかにした。
会談は予定よりも三十分オーバーし、二時間半に及んだ。甘利氏は「話し合いが膠着(こうちゃく)状態になっていたが、(対立点を)収れんさせていく手法について共通認識を持てた」と成果を強調した。
しかし、具体的な中身についてはこの日の会談で決着しなかった。甘利氏は「個別の品目の話もした。具体的な着地点が確定したわけではない。こういう方向で今後双方が各論に踏み込んでいこう、ということにした」と説明した。二十二日から始まるシンガポールでの閣僚会合に向け、事務協議を進める方針だ。
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戦後日本人は恥知らず糞にも劣る存在であるからして、アメリカの属国 日本に交渉の余地などありませんよ。戦後に宗主国様に交渉の席でテーブル叩いたのは田中角栄ただ一人、戦後の総理は吉田ドクトリンを墨守しているのだから。軍事力を丸投げし時点で日本に外交力などありゃしませんでしょ。そう言う私は右も左も大嫌い 特に能無し単細胞の右の主張を聞いていると反吐が出ます
投稿: ビバノン | 2015年8月24日 (月) 22時36分