農業関税は世界最低クラスだ
毎度のことですが、TPP交渉になるとマスコミはなぜか農業関税だけを取り上げます。
まるで、農業界との公約で農業重要5品目を死守しているからTPPが妥結しないのかという錯覚かうまれそうです。
いままで再三再四取り上げてきましたように、まったく違います。
米国がTPPで牛肉や豚肉の関税を言い募って来るのは、これがわが国の攻め口だと思っているからで、米国のほんとうの狙いは保険や医療分野などです。
おそらく今回も、農業外の分野についてそうとうに突っ込んだことを交渉しているはずです。
ただ、自民党が選挙公約として重要5品目という形で農業関税を死守することを誓ったために、それだけがクローズアップされているだけです。
まずは「そこからですか」という所から見ていきます。
下に、主要国の農業関税のグラフを載せておきます。資料は1999年とやや古いのですが、特定国同士のFTA・EPA関係にない限り、そう大きな変化はないはずです。
一目でわかるように日本は平均11.7%で、下から2番目の優等生です。そもそも、工業製品輸出国が保護関税国であるはずがないでしょう。
唯一米国には負けていますが、これは、米国が特異な輸入消費大国だからです。
関税はその国特有の事情があるので比較すること自体がナンセンスなのですが、どうしても比べるのなら、国の面積や生活レベル、工業化水準が近いEUでしょう。
(図 鈴木宣弘氏による)
EU平均は19.5%で、ノルウエーなどは実に127%です。新興国はインドが124.3%、ブラジルの35.3%など軒並み高間税で農業をガードしているのがわかります。
これでも日本の農産物関税が突出して高いというなら、なにを見てそう言っているのか論拠のデーターを教えてほしいものです。
よく情緒的に、わが国の農産物の関税がバカ高いので、消費者は世界一高い食糧品を食べさせられているというデマを言う者が絶えませんか、冗談ではありません。
野菜、鶏卵、果樹などの主要農産物の多くは無関税か平均3%以下。ほとんど関税に関してはノーガードだといっていいでしょう。
そういえば、放射能風評時に、「高関税でヌクヌクとしていたくせに、今は放射能の農産物を出荷するのか、TPP賛成!輸入食糧を食べさせろ!」と叫んだバカがここにも押しかけてきことを思い出しました(笑)。
それはさておき、逆に高関税のほうが例外にもかかわらず、この「例外」ばかりがマスコミで取り上げられるためにこんなミスリードが生まれています。
私は、小麦などの国が買い上げて統制したり、豚肉のような差額関税を作って貿易を歪めるのには反対ですが、必要な関税はすっきりとプラスする従価制度にして残すべきだと思っています。
そうでもないとまた、あのマッチョのフロマンに叩かれますよ。
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