朝日新聞社説を笑うその2 「償い」事業を破壊したのは誰か?
朝日新聞社説(6月21日)は、元「従軍」に対する「償い」事業であるアジア女性基金(女性のためのアジア平和国民基金)を取り上げてこう述べています。
「アジア女性基金」について、韓国政府が一定の評価をしていたことも明らかにした」
「もっとも大切なのは元たちの救済であることは論をまたない」
朝日は簡単に韓国政府が「一定の成果を評価していた」などと書いていますが、違います。
それは基金実施前の態度です。確かに韓国政府は基金の実施前には「評価」しています。
報告書はこう述べています。
「慰安婦への「措置」について日本側が、いかなる措置をとるべきか韓国政府の考え方を確認したところ、韓国側は、日韓間では法的な補償の問題は決着済みであり、何らかの措置という場合は法的補償のことではなく、そしてその措置は公式には日本側が一方的にやるべきものであり、韓国側がとやかくいう性質のものではないと理解しているとの反応であった」
この時の韓国・金泳三大統領は、今のパククネ政権と違って「謝罪と補償をしろ」などと言っておらず、謝罪は求めても「賠償は韓国でやるから、そのことで韓国は道義的に優位に立てるのだ」とすら言っています。
つまり「補償」するのは日本側の勝手だが、韓国は日韓条約の建前はわかっているよ、という態度です。正直言って、へぇーわかっているじゃないの、と感心しました。
ですからこの日韓合意に基づいて1997年1月から、元の希望者に支給を開始するのですが、いきなりストップがかかります。
「その翌週の日韓外相会談において、柳宗夏韓国外務部長官より、先週末に「基金」が事業を開始し、元慰安婦に支給を行ったことは極めて遺憾である、この撤回と今後の一時金支給の中断を求めるとの発言があった。また、池田行彦外務大臣の金泳三大統領表敬訪問において、大統領より、この問題は国民感情の面から見ると敏感な問題である、外相会談でこの話が取り上げられたと報告は受けているが、最近とられた「基金」の措置は国民感情にとって好ましくない影響を強く与えるものであり、遺憾である、このような措置が今後再びとられることのないようお願いしたいとの発言があった」
おいおい、わずか1週間での中断です。なにがあったのでしょうか。
この韓国政府の豹変の原因は、韓国特有の「国民感情」という名の火病(ファビョ)が爆発したためです。
「これに対し、韓国のメディアは「基金」事業を非難し、被害者団体等による元7人や新たに「基金」事業に申請しようとする元に対するハラスメントが始まった。被害者団体は、元7人の実名を対外的に言及した他、本人に電話をかけ「民間基金」からのカネを受け取ることは、自ら「売春婦」であったことを認める行為であるとして非難した。また、その後に、新たに「基金」事業の受け入れを表明した元に対しては、関係者が家にまで来て「日本の汚いカネ」を受け取らないよう迫った」
ため息が出ます。この報告書に出てくる「被害者団体」とは挺対協だったことは、元朝日新聞の下村満子氏(元「朝日ジャーナル編集長)も認めています。
挺対協は、日本に対する謝罪と賠償を求めながら、聞き取り調査にも応ぜず、かたくなに日本攻撃を止めなかった勢力です。
この団体が基金の受け取りをしてもいいとした7人の元に対して、自宅にまで押しかけて「売春婦だったことを認めるのか。恥をしれ」「日本の汚いカネを受けとるな」とまで騒いだのです。
また韓国マスコミもこれに同調して反基金キャンペーンを爆発させて、基金に対して朝日が言うように好意的だった韓国政府にまで攻撃が及ぶ有り様でした。
激しいバッシングで「償い」金を貰った元は身の危険すら感じたと言います。
この韓国のマスメディアの過激さを表す記事に、1992年1月15日の韓国大手紙・東亜日報の記事があります。
この記事は「挺身隊」と「従軍」を混同して、こんな記事の見出しをつけています。
「12歳の女子挺身隊員」「天と地が共に憤怒する日帝の蛮行」「人面獣心」「非人道的残酷行為」・・・なんとも凄まじい。
しかしこれが韓国メディアの「従軍」の報道トーンで、「償い」金を受け取った元の老女たちにもこのような牙を向けたというわけです。
この個人補償を潰したのは、日本政府ではありません。韓国人が自らが、受け取ろうとする元に言葉の暴力で潰したのです。
そして 1998年3月に新大統領になった金大中氏によって、正式に韓国政府として「基金」を中止するようにとの申し出を受けます。
このニュアンスを報告書を読んで確認します。
「この時期、韓国政府は、金大統領自身本件について金銭の問題をなくせ、政府間のイシューにするなという意見であり、両国の問題は存在しないと思った方がよいとして、「基金」には申し訳ないが、政府間の問題にならないよう終止符を打つべき旨述べていた」
驚くべきことに韓国・金大中政権は、明確に「(問題の)金銭の問題をなくせ、政府間のイシューにするな」と言い、さらには「(従軍問題で)両国の問題は存在しない」とまで断言しています。
現在のパククネ政権とは真逆な態度です。
韓国政府は、河野談話が協議された時点から「謝罪」と「強制性」は要求したものの、「賠償」は勝手に日本がするものであって関知しないという態度を示しており、「賠償」は日本政府が「完全解決」を求めて独自に行なったものだという認識です。
そして韓国政府はこの問題は終了したと述べているわけで、少なくとも「日韓の未来志向」という約束は、金泳三、金大中両大統領在任中までは守られていたということが分かります。
ですから、日本が韓国内で「賠償」を行なって悶着を起こすくらいなら、止めろという態度であってそれはそれで筋が通っています。
これで分かるのは、当時の韓国政府の立場を現在のパククネ政権はなにも継承しておらず、変心したのは日本政府ではなく、韓国政府の側だという事実です。
この経過を見た上で、改めて、朝日新聞にお聞きしましょう。この日本の個人賠償を誰が潰したのでしょうか?
思えば、20年前に基金を潰されなければ、元たちの多くはまだ60代でした。有意義に「償い」金を使えたものなのにと残念でなりません。
このことにひとことも触れずに、「元の救済だということは論を待たない」などとキレイゴトをのたまわれても困ります。
誰が「救済」を妨害したのか、肝心な主語を書かないために、これでは朝日読者は「そうか、自民党政権が救済をサボって来たんだな」と勘違いするでしょう。というか、勘違いするように書いているんですが。
繰り返しますが、日本の「償い」は韓国人みずからが破壊したのです。それが故に、本来各500万円を支給されるはずだった元は個人攻撃を恐れて、また歴史の闇へと消えていったのです。
それにもかかわらず、基金事業開始の1997年1月から終了の2007年3月までの10年間に6億円の「償い」金が準備され、約3億円が元に手渡されました。
この基金枠はさらに増える可能性もあったわけで、韓国国内の妨害にあわなかったら、すべての元への「償い」を終了していたはずです。
「事業終了までに、元合計61人に対し、民間による寄付を原資とする「償い金」200万円を支給し、政府拠出金を原資とする医療・福祉支援事業300万円を実施(一人当たり計500万円)するとともに、これらを受け取ったすべての元に対し、当時の総理の署名入りの「おわびの手紙」をお渡しした」
日本側がなおも基金の賠償から福祉事業への転換を考えていたことに対する韓国政府の意見です。
「1999年3月下旬に行われた日韓の事務方のやりとりにおいて、突如韓国政府が方針を変え、この問題では何かしてもしなくても批判されるということを冷静に踏まえておく必要がある」
びっくりするほど冷静、かつ、冷淡な韓国政府の意見にこちらのほうが驚かされます。まさに韓国政府の仰せのようにわが国は「何かしてもしなくても批判される」のです。
「謝罪しない」と言っては批判され、謝罪すれば「賠償していない」と言われ、賠償を始めれば、韓国国内の反日勢力が寄ってたかって潰し、潰したら今度はまた「なんの償いもしていない」とどこまでもしつこく繰り返す、そのうち外国にまで行って大騒ぎする・・・、そう、当時の韓国政府の言うとおりです(苦笑)。
こうして日本の1991年の朝日新聞の植村記事から始まり、河野談話を経てアジア女性基金の終了する2007年まで足かけ16年続いた「従軍」問題は終了しました。
これを蒸し返して、「従軍」問題を反日外交の攻撃材料にしたのは、パククネ政権でした。
パク政権は、あたかも日本が一度たりとも「謝罪と賠償」をする努力をしなかったような攻撃をくわえました。これがまったくの偽りだということはこの報告書に詳細に述べられています。
さて、朝日は慨嘆調で、「韓国政府に登録した元の生存者は54人になった」と嘆きますが、もはや日本人にできることはなにもありません。
何かしようにも、「日韓の未来的志向」を信じて河野談話を作ってみれば反日カードとして20年も使われ、「償い」をしようとして基金を作ってみれば、「汚い金をもらうな。この売春婦め」と罵る韓国国内の勢力に潰される・・・、これが現実でした。
朝日はもう一回河野談話をやり直して、もう一度アジア女性基金を作れとでも言うのでしょうか。
朝日が「問題解決の原点に立ち戻れ」と言うなら、それはわが国に対してではなくいまや「従軍は性奴隷だった」とまで言う韓国政府に言いなさい。
韓国にこそ「河野談話の原点」に遡って、「外交的懸案として提起しない」という約束を履行することを迫りなさい。
「信義」を言うなら、なにひとつ約束を守らなかった韓国に言いなさい。
朝日によれば、「韓国政府は国際社会とともに対抗措置をとると表明した」そうです。
現実には、米国国務省が無視したように、韓国と共に立つ「国際社会」は中国くらいなものでしょうが、大変に結構です。
韓国がこの検証報告書に対して抗議したいのなら、韓国もぜひ「河野談話に介入していない」という証拠を出す必要があります。
ぜひ出して頂きたいものです。
そしてなにより、朝日新聞がせねばならないことは、他人に説教を垂れることではなく、朝日が日韓関係悪化に果たした大きな役割を第三者委員会を作って検証し、国民に20年遅れの訂正と謝罪記事を出すことです。
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管理主様の慰安婦問題の正確な記述、脱帽しましたm(__)m
ただ、「朝日は過去の記事を検証せよ」というくだり、お言葉ながら朝日は検証もしなければ謝罪もしません。そんなことする新聞なら最初からこんな捏造記事はださないでしょうから(`´#)
自分は知り合いの編集者に、植村隆、高木健一、戸塚悦朗、そして福島瑞穂の4人を“外患誘致罪”で告発するキャンペーンを打って欲しいと頼んでいます。あんまり乗り気じゃないようですけど…(--;)
これ、もうただの誤報でもなければ捏造でもない、国を売る行為です。挺対協自体は北朝鮮の下部組織といっても過言ではありません。その北朝鮮は、日本人を拉致し、覚醒剤を密輸し、核とミサイルで日本を恫喝している。上記の4人は、北朝鮮の手先の手先なのだから、もう外患罪を適用出来ると自分は思ってます!!
因みに福島瑞穂は、現在中国に逃亡中だそうです。
こういう人物に国会議員のバッジを与え続けたのは国民の責任。朝日のような自称メディア・本性政治団体を生き延びさせてきたのも国民の責任。
投稿: 播磨真悟 | 2014年6月28日 (土) 00時17分
福島瑞穂は、現在中国に逃亡中?>>>
まあ、宮崎口蹄疫渦のゴールデンウイーク中の代理責任者であったにも、かかわらず、自分の出身である宮崎の家畜農家さんを、捨てても、平気だった訳なので、日本国を売ることなど、当たり前と、思っているのでしょうね。
これは、私の個人的意見ですが、少なくとも、短期間であれ、責任者であったことは、事実ですし、その間、何の手立ても、しなかったのも、事実だと、思ってますから、こんな連中を、国会議員に、しているのは、なぜ、選挙区が、許しているのか、正直、わかりません。
投稿: りぼん。 | 2014年6月28日 (土) 12時22分
4年前のGW。宮崎で火の手が拡がる最中にみんなして「海外視察」に行ってしまった当時の農水大臣(カリブ旅行)や政務官たちを、忘れないで下さい。
農水省職員から農家に嫁いだ後、「風」に乗って当選してしまった当県選出のF山政務官なんか、よりによってデンマークの養豚視察でしたよ。
家と町内が火事ボーボーだってのを見ながら、ほったらかして旅行に出掛けるようなもんですな。
かつ、農水省出身ながら、省内で官僚たちがフォローしてくれないくらい人望も無かったんでしょうね。
実にお恥ずかしい…。
投稿: 山形 | 2014年6月30日 (月) 09時04分