河野談話検討報告書を読むその6 「最低限の儀式」としての聞き取り
河野談話は、歴史的事実関係のしっかりとした客観的な調査によるものではなく、強く「強制性」の認定を求める韓国側への政治的配慮が先行したものでした。
この「強制性」の意味は、「軍がにするために一般女性を強制連行した」という意味で、韓国はいまやそれをあざとく「日本軍の性奴隷」として使っています。
日本軍が「性奴隷」(sex slave)として奴隷狩りのように徴発し、まったくの無報酬で兵隊の性的玩具にしたという戦時性暴力問題にまで膨張してしまい、残念ながらそれが定説として国際社会に定着しています。
ある日本人が、米国人に「はかなりの高給が支給されていた」と話すと、「冗談だろう。奴隷なんだから」と一笑にふされたそうです。
つまり、いまや「性奴隷」は比喩的、文学的修辞ではなく、「性的奴隷制度」そのものと解釈されているわけです。脱力感すら感じます。
「(従軍問題は)過去の話ではなく、現在の問題です。韓国と特定の国の2国間の問題ではなく、戦時下の性暴力をなくそうという、人類の普遍的な問題なのです」
(アングレーム国際漫画祭におけるチョ・ユンソン韓国女性家族相の発言)
(アングレーム漫画祭の韓国政府出展作品より TBS『情報7days ニュースキャスター』2013年2月1日)
また、この漫画祭での韓国説明文に、日本側が問題を認めていないかのような記述があって問題となったように、韓国は国際社会に対して、わが国が「従軍」に対して謝罪や補償はおろか存在すら認めていないと主張し続けています。
河野談話うんぬんの前に、河野談話すら「なかった」ことになっているのですから、この日韓交渉は幻だったわけで、ぜひ今も存命の加藤紘一、河野洋平両氏にご意見を伺いしたいものです。
さて、検証報告書を読み進めていきましょう。
この韓国政府の根拠となる河野野談話は、まさに「日韓合作」そのもので、発表までに継続的「事前調整」がありました。
報告書はこう述べます。
「韓国政府は、日本政府による調査結果の発表に先立ち、1992年7月、問題等に関する調査・検討状況を発表したが、その際にも日本側に対し事前にコメントするよう要請し、結果として、両国で事前調整が行われた」
一国の外務公文書を公表前に外国に見せていて、事前に談合して、その圧力に沿って書き換えていたわけてす。
「『強制性』については、例えば、一部には軍又は政府官憲の関与もあり、『自らの意思に反した形』により従軍とされた事例があることは否定できないとのラインにより、日本政府としての認識を示す用意がある」
そして「強制性」があることを認めたことで、その仕上げとして「儀式」として元の聞き取り調査が始まります。
もはやこの調査は、真相解明どころか「強制性」を認めたのは、ちゃんと元から聞き取りした結果ですよ、という国内向けゼスチャーでしかありませんでした。
ここでも日本側は韓国側から一方的な注文を付けまくられることになります。
まず、団体の挺身隊協議会(挺対協)からの注文は、「強制性の認定」が前提とされてしまい、結論が拘束されるために日本側が拒否しました。
またもう一方の太平洋戦争犠牲者遺族会(遺族会)の側も細々と条件をつけましたが、日本側はすべて受諾して聞き取りを開始しました。
要求どおり大使館は使わずに聴取場所は、訴訟団体の「太平洋戦争犠牲者遺族会」の事務所で行ない、遺族会側の弁護士をつけることになりました。
なおこの時、遺族会側の弁護士として現れたのが、政治家になる前の福島瑞穂氏です。
また日本側の原則は調査そのものにはなく、既に原案が書かれている報告書に沿って、「真摯な姿勢を示すこと」にあったようです。
「日本政府の真相究明に関する真摯(しんし)な姿勢を示すこと、元に寄り添い、その気持ちを深く理解することにその意図があったこともあり、同結果について、事後の裏付け調査や他の証言との比較は行われなかった。聞き取り調査とその直後に発出される河野談話との関係については、聞き取り調査が行われる前から追加調査結果もほぼまとまっており、聞き取り調査終了前に既に談話の原案が作成されていた」
ポイントは、言うまでもなく、聞き取り調査する前から「原案は作成されていた」という部分です。
この聞き取り内容については報告書は触れられていませんが、これについて報告書は「はじめに」でこうあらかじめ書いています。
「検討チームにおいては、問題の歴史的事実そのものを把握するための調査・検討は行っていない」
そこで、この調査の責任者だった石原信雄元副官房長官の証言を参考にして、その聞き取り結果を見てみましょう。(※石原元官房副長官・国会証言及び産経新聞インタビュー13年10月16日による)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101610180011-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101608380010-n1.htm
日本側の要望としては韓国政府に対して、「韓国政府に「客観的に過去の事実を話せる人を選んでほしい」、「反日運動をやっていた人や、バイアス(偏り)のかかった人は排除して、真実を語る人を選ぶように要請」しています。
しかしこの希望は無視されて、日本で訴訟した原告が3分の1(5人)含まれています。
・聞き取りした元は16人
・氏名すら明確でない者が3人。
・生年月日が記載されているのは半数の8人。
・その生年月日すら、別の調査やインタビューには全く違うことを述べている者もいる。
・朝鮮半島で重視される出身地についても大半の13人が不明・不詳。
・ 大阪、熊本、台湾など慰安所がなかった地域で働いたという証言もある。
・氏名が確定しない者、出生地があいまいな者がほぼ全員
言うのも愚かですが、これでは調査とはいえません。
特にこのような賠償措置を用意している聞き取りにおいて、当人確認のためのなんらかの書類が必要なことはイロハのイで、聞き取りをした全員があいまいだったというのですから、呆れてしまいます。
にもかかわらず、日本大使館員たちはなんの文句もいわずに、淡々と「聞き取り」をしていたそうです。
もちろん氏名、出身地が欠落し、慰安所の場所さえいいかげんな調査などなんの意味もない茶番です。
このために、後に配布が追跡調査しようと考えても、まったく不可能になってしまいました。
これは売春婦だったことを知られたくないという羞恥心があったためと推測されますが、このような調査においては個人情報の秘匿は前提です。
このように聞き取りの結論は既に決まっている、河野談話を出す体裁を整えるためだけの「儀式」(報告書の表現)がこの「真相解明のための調査」だったのです。
(次回やっと河野談話だぁ!)
« 河野談話検討報告書を読むその5 韓国の罠にはまった宮沢政権 | トップページ | 河野談話検討報告書を読むその7 典型的冤罪図式の完成 »
« 河野談話検討報告書を読むその5 韓国の罠にはまった宮沢政権 | トップページ | 河野談話検討報告書を読むその7 典型的冤罪図式の完成 »
コメント