マレーシア機撃墜事件
情報が錯綜しているマレーシア機撃墜事件について、ロイターが20日付けで米国情報機関の分析とするものをアップしていますので、全文を転載いたします。
米国とロシア側の見解はまっこうから対立しています。
米国側はロシア領内から、撃墜に使われたSA11対空ミサイル(通称ブーク)が搬入されたとしています。
その証拠として、親露派武装集団と、露軍将校とみられる会話の盗聴内容を公開しています。(※この記録はあまりにも音声がクリアな上に内容的に無防備なために逆に信憑性が疑われています)
「ロシアは武装分離主義勢力への重火器の供給について引き続き否定しているが、米当局からは相反する証拠が次々に突きつけられている。米当局者の1人は『われわれはウクライナ内部にロシアの軍隊がいることを知っている』とし、『ロシアの軍隊、ロシアの軍備だ』と述べた。
ウクライナと米治安当局が公表した情報は、ロシア政府とウクライナの分離主義勢力との間ではマレーシア航空機撃墜以前に把握していたよりも密接な軍事協力が行われていたことや、ロシア軍当局者とウクライナ東部の親ロシア派との間で複雑かつ詳細な調整が行われていたことを示している」(ウォールストリート・ジャーナル 2014年7月21日)
一方、ロシアはインターファックス通信で反論を加えています。http://jp.rbth.com/news/2014/07/21/49247.html
ロシア国防省は7月21日に記者会見を開き、キエフ・ホリスピリ国際空港の管制官のツイートと、現地住民の証言から、撃墜されたマレーシア高空MH17便のわずか数キロ先をウクライナ空軍のSu-25が飛行していたことを発表しています。
もしそうならば、ウクライナ空軍機が、民間機撃になんらかの関与をしていたのか、あるいは親露派武装集団がこれを狙ってブークを発射したのが、過ってマレーシア機に命中したことが考えられます。
またウクライナ側は、ビタリー・ヤレマ検事総長は親露派が対空ミサイルをウクライナ軍から奪ったことはないと語っているようです。
ただし、この対空ミサイルがウクライナ軍からの流出とは決めつけられず、米国の主張どおりロシアからの供与された可能性も高いと思われます。
7月4日にAPはキエフ軍がスラビヤンスクからブークを移動させている様子を撮影した写真を配信しています。
しかしこの対空ミサイルをウクライナ軍が、ルガンスクから8キロの東ウクライナ地域に持ち込んでいたのが真実だとしても、空軍を持たない親露派に対してなぜこのような装備が必要だったのか、なにが目的だったのかわかりません。
最大の疑問点は、この危険な紛争地域上空をマレーシア機がなんの事前警告もなく飛行できたのでしょうか。
先ほどのウォールストリート・ジャーナルもこう述べています。
「SA11が分離主義勢力の手に渡った可能性について確信が高まったことで、新たな疑問もわいてくる。ウクライナや米当局は分離主義勢力がSA11を手に入れた可能性を知ってから時間があったとすれば、なぜ危険にさらされる可能性のある民間航空機に対してもっと迅速に警告に乗り出さなかったのか」
この撃墜事件の同時期にNATO軍は黒海で軍事演習「ブリーズ2014」を実施していたとされます。
これに参加していた米海軍のイージス艦「ベラ・ガルフ」やAWACS(早期警戒管制機)には、とうぜんこのマレーシア機は補足されていたはずで、なぜまったく警告を発しなかったのか疑問をもたれています。
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■マレーシア機撃墜、米情報機関の分析内容
2014年7月20日 ロイター
ウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事件を受け、ケリー米国務長官は20日、ウクライナの親ロシア派勢力への武器供与にロシアが関与したことを示す強力な証拠があると指摘した。
ケリー長官は米情報機関の最新の分析に基づき、航空機撃墜に使用された対空システムはロシアが同武装勢力に供与したと非難した。
マレーシア航空MH17便に搭乗していた乗客乗員298人は全員死亡した。ロシアは関与を否定している。在ウクライナ米大使館のウェブサイトに掲載された、撃墜事件をめぐる米情報機関の分析は以下の通り。
●ロシアからウクライナの分離派向けに搬送された武器が、過去1カ月の間に増加したことを確認した。ロシアは先週末には戦車、装甲兵員輸送車、ロケット発射装置などを搭載した車両約150台を供与した。また、ロシア南西部の施設でロシアが分離派の戦闘員らに訓練を提供している可能性を示す情報もある。これには防空システム訓練も含まれる。
●親ロシアの分離派武装勢力は地対空ミサイルシステムの操作が可能で、過去数カ月間に大型輸送機2機を含む10機以上を撃墜した。
●MH17便が交信を絶った時、ウクライナ南東部の分離派が支配する地域から地対空ミサイルが発射されるのを確認した。このミサイルはソ連時代に開発された「SA11」とみられる。
●ウクライナ政府が「ユーチューブ」に投稿した分離派のやり取りを傍受した内容によると、分離派は早ければ7月14日にはSA11地対空ミサイルを入手していた可能性がある。分離派はブク(SA11)の入手と配置について繰り返し言及していた。
●ソーシャルメディアに17日に掲載された内容によると、SA11は、分離派が支配するトレーズとSnizhneを通過した。いずれも墜落現場とミサイルが発射されたとされる地点に近い。この場所からSA11を発射すれば、MH17便を撃墜することは可能だ。
●ウクライナもSA11を使用するが、同国の防空システムが墜落現場の範囲内では活動していなかったと確信している。またウクライナは、今回の衝突では地対空ミサイルを使用していない。
●インターネットに掲載されている傍受された会話では、分離派の指導者が別の人物に対して一部の分離派が航空機を撃墜したと述べている。同機が民間航空機だったことが判明した後、分離派は航空機の撃墜やブク保有に関するソーシャルメディア上の書き込みを削除した。
●ウクライナ治安当局が報道機関に提供した音声データは情報アナリストが分析を行い、その結果、同データが分離派の指導者による会話であることが確認された。
●ソーシャルメディアに掲載された動画では、SA11が東部ルガンスク州クラスノドンを通ってロシアに戻っていく様子が撮影されている。少なくともミサイル1本がなくなっており、発射された可能性を示している。
●墜落現場での状況は、分離派が同地域を完全に支配していることをはっきりと示している。
※いったん別記事をアップしましたが、差し替えて明日にまわしました。
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コメント
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民間機が取るコースへの注意喚起を行うICAOでは、クリミヤなど南部は飛行禁止勧告をしていましたが、
ウクライナ東部の該当空域は入っていませんでした。
勿論他の航空会社も利用していましたし。
БУКが新露派勢力のならず者に渡っていた「確証」があるなら、なぜその情報が伝わらなかったのかは実に疑問です。
ともあれ、現場での横暴さや、遺体の扱いの非道ぶりばかりを発信する同じ映像ばかりが流されて…親露派とプーチン政権、かなり分が悪い状況ですね。
「真実」なんか本当に明かされるのか、実に心配です。
投稿: 山形 | 2014年7月22日 (火) 05時38分
山形さん。ウクライナ東部は、高度制限かかけられていたという説と、米国の航空会社は飛行禁止通達が出ていたという説があります。
いずれにせよ、度々ウクライナ空軍機が撃墜されている東部上空を飛行するというのは、経営危機に陥っているマレーシア航空が飛行距離を短くしたいためだと思われています。
また、親露武装勢力は、ミサイル発射と誘導の技術を持っていたとしても、軍用機向けの敵味方識別装置に加えて民間機を識別するトランスポンダーを受信する空港管制とリンクする装備を持っていなかったと思われています。
今の時点での推測では、やはり親露派による誤射の可能性が高いと考えられます。
ロシアはブークの提供はしていても、本事件には無関係です。
投稿: 管理人 | 2014年7月24日 (木) 02時59分