河野談話検討報告書を読むその5 韓国の罠にはまった宮沢政権
この報告書が出てからというもの、産経を除くマスコミは短く報道するだけで、ほぼ完全にスルーで、セクハラ・ヤジ発言のほうが重要なようです。
この都議会セクハラ・ヤジ騒動に海外特派員協会が食いついたのは、日本が「女性蔑視国家」だという固定観念があるからです。
CNNはこう書きます。
「日本では職場の男女格差は一般的だ」(2014年6月.21日)
確かに女性が結婚後働きにくい条件があるのは事実で、改善の努力がなされるべきですが、わが国を簡単に女性が蔑視されている社会と決めつけてしまう欧米ジャーナリズムの姿勢にも疑問を持たざるを得ません。
この日本に対するバイアスのかかった見方を決定づけたのが、この韓国が世界に拡散した「従軍」問題であったことは間違いないでしょう。
(アングレーム漫画祭の韓国政府出展作品より TBS『情報7days ニュースキャスター』2013年2月1日)
さて、今になって悔いても仕方ありませんが、モノには止める潮時というものがあります。
まさにこの日韓交渉において、加藤談話で収拾できなかった1992年7月の時点がそれでした。
「加藤官房長官発表の後も、韓国の世論においては問題に対し厳しい見方が消えなかった。かかる状況を受け、内閣外政審議室と外務省の間で、問題に関する今後の措置につき引き続き検討が行われた」
宮沢訪韓時、そして加藤談話と二度目もの正式謝罪をしても、納得せずに持説に固執するのですから、もうこの時点で交渉を打ち切りにしてもなんの差し支えもなかったはずです。
にもかかわらず、優柔不断の宮沢政権は決めきらないまま韓国の主張する最後のレッドラインである「軍による強制」まで認める方向にズルズルと吸い寄せられていきます。
ここで韓国側に政権交替が起きます。1993年2月には今までの軍人政権から、初めての民間大統領としてキム・ヨンサム(金泳三)大統領が誕生します。
新大統領の方針が伝えられます。
「1993年3月13日、2月に就任した金泳三韓国大統領は、問題について、「日本政府に物質的補償を要求しない方針であり、補償は来年から韓国政府の予算で行う。そのようにすることで道徳的優位性をもって新しい日韓関係にアプローチすることができるだろう」と述べた」
このキム大統領の「道徳的優位」という外交交渉の場には場違いな表現に韓国らしさが滲んでいます。
韓国は自らの解放闘争の結果、戦って独立を得たわけではありません。
金九などによって組織された大韓民国臨時政府は、中国国内を転々としながら、1940年に重慶に落ち着いたものの、実際の抗日戦には無縁でした。
なお韓国の「建国」は、この大韓民国臨時政府の設立をもってなされたとされています。
しかし「臨時政府」は実体がなく、その軍隊である「韓国光復興軍」は一発の弾も撃たないまま日本の敗戦を迎えています。
それどころか、独立運動のリーダーだった金九は、独立運動内部の抗争で暗殺されてしまっていう有り様です。
連合国、つまりは米国による棚ぼたで転がり込んできた「建国」しか持ち合わせていないのです。
初代の大統領となった李承晩は、ハワイに住んで英語が達者だったために米国の傀儡として見込まれてその座に着いたにすぎません。
例えば同じアジアでも、ベトナムは二度にわたる仏米との激烈な独立戦争を経て独立と統一を勝ち取っています。インドはガンジー、ネルーを生みました。
ですからベトナム人は米国に、インド人は英国に「謝罪と補償」などは要求したことがありません。
一方、韓国は形だけの亡命政府はあったものの実体がなく、連合国には認知すらされていませんでした。
唯一抗日闘争らしきものをしたのがキム・イルソンですから、ここに根深い韓国の北コンプレックスかあります。
韓国の潜在意識に強烈に、日本を裁きたい、日本を罰したいという欲求はこの「建国」コンプレックスから生まれているのです。
したがって、問題は日本に対して「道徳的優位」を誇示できる数少ないテーマでした。
それはさておき、同年3月日韓協議でこのようなやりとりがあります。
「この対処方針の中で日本側は、「真相究明の落とし所として、日本政府として『強制性』に関する一定の認識を示す用意があることを具体的に打診する。また、韓国政府の仲介が得られれば、本件措置のパッケージの一環として元代表(複数可)との面会を実施する用意があることを打診する」としている。
同協議の場において、韓国側は、日本側の認識の示し方について、事実に反する発表はできないであろうが、(例えば、何らかの強制性の認定の前に、「軍は募集に直接関与したことを示す資料は発見されなかったが」等の)複雑な「前置き」は避けるべきと考える旨述べた」
ここで韓国が言っていることは、「軍が強制連行した資料が見つからない」などという言い訳じみた「前置き」は止めて、さっさと「軍の強制性」を認めろということです。
そしてなにより、日本側にとって魅力的に写ったであろう韓国側のオファーは、「補償は韓国側が予算を組んで来年から実施する」ということでした。
これは金銭負担ウンヌンではなく、法的には条約条の処理が終わっている戦後個人補償を求めないという韓国側の態度で、外務省にとっては願ったりだったわけです。
また日本側は、、韓国で最初の民間人政権に替わったという開放感も手伝ってか、「新しい日韓関係」を匂わせたキム・ヨンサム政権に期待度が高かったと思われます。
これを真に受けて一気にこの「軍の強制性」について歩み寄ろうという気運が、宮沢政権内に生れたことは想像に難くないことです。
「同年4月1日の日韓外相会談では、渡辺美智雄外務大臣より、「強制性」問題についてせ全てのケースについて強制的であったということは困難であるれ、「両国民の心に大きなしこりが残らないような形で、日本政府としての認識をいかに示すかぎりぎりの表現の検討を事務方に指示している。認識の示し方について、韓国側と相談したい」等と韓昇洲外務部長官に伝達した」
この渡辺外務大臣(みんなの党の渡辺前代表の父親)の韓国側への提案は、「しこりが残らないようなぎりぎりの表現」を、韓国側と協議したいということです。
これについての韓国側回答。
「は一部のみに強制性があったということでは通らないのではないか、(3)韓国政府としては、日本側と決着を図り、韓国世論を指導するとか押さえ込むということはなし得ない、要は日本政府の姿勢を韓国国民がどう受け取るかにつきる、との見解を述べた」
さて、ここで改めて韓国が認めろと主張する「軍の関与」という概念を押えておきましょう。「軍の関与」は、報告書でこう定義されています。
「慰安所の設置、の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所・の衛生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等」
この定義をみると、日本側の調査では、軍は慰安所の衛生管理や人身売買について監督していたことが分かります。
いわば、風俗店と監督当局の関係です。
一方、韓国の言い分である「官憲・軍の強制連行」とは、監督当局が自分で風俗店を開くために、婦女子を誘拐した監禁したりした、ということでまったく別次元の概念です。
こんな馬鹿げた韓国側の主張を、宮沢政権はとうとう丸飲みすることになります。
「『強制性』については、例えば、一部には軍又は政府官憲の関与もあり、『自らの意思に反した形』により従軍とされた事例があることは否定できないとのラインにより、日本政府としての認識を示す用意があることを、韓国政府に打診する』との方針が示されている。また、元の代表者からの事情聴取に関しては、『真相究明の結論および後続措置に関し、韓国側の協力が得られる目途が立った最終的段階で、他の国・地域との関係を考慮しつつ、必要最小限の形でいわば儀式として実施することを検討する』とされている」
ここで日韓外交試合終了のホイッスルが鳴りました。後はアディショナルタイムだけがわずかに残るのみです。
かくして、この日韓合意した「本人の意志に反しての強制があった」という結論に合わせて、「真相解明」の形式作りの「儀式」としての元聞き取りが始まることになります。
(続く)
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投稿: K | 2014年7月 2日 (水) 22時44分