小泉翁の妄執「原発ゼロ」の嘘 その6 「脱原発」ドイツという誤解
小泉翁は、「脱原発」を目指す一般社団法人「自然エネルギー推進会議」とやらまで作るそうです。
飯田哲也氏が始めた頃の自然エネルギーは新鮮だったことを思い出します。
しかしは今や、高額買い取りを求めて発電設備も建てずに用地と権利だけ取得して、それを転売することがはびこる手垢にまみれのものになってしまいました。
小泉翁のナンジャラ推進会議に賛同したひとりに菅原文太さんがいましたが、彼が未来の党の頃の嘉田知事にこう言っていました。
「嘉田さん、日本のメルケルになってほしい」・・・。あ~、いい役者だったのになぁ。ドイツを単純に山の彼方にある憧れの国と思ってるんですね。
確かに、ドイツは原発の代替として再生可能エネルギーを国策で導入しています。
「ドイツ・エネルギー水道連合会によると、2013年におけるドイツの総発電量のうち、再生可能エネルギーの割合が23.4%と、2012年の22.8%に比べて0.6%増え、過去最高となった。一方、原子力発電の割合は15.4%となり、2012年の15.8%に比べて0.4%減少した」
(ハフィントン・ポスト2014年1月15日)
(図 ドイツエネルギー水道連合会による)
ドイツは2022年までに原子力を段階的に廃止し、50年には電力の6割を再生可能エネルギー(再エネ)にすると宣言しています。
そのために、再エネによる発電を優先的に高額で全量買い取るというFIT(フィード・イン・タリフ)制度を作り、04年には太陽光の買い取り価格を引き上げたために太陽光への参入が激増しました。
2011年ドイツでは年間で7.5ギガワットの太陽光発電が設置され、その補助金総額は20年間累積で合計180億ユーロ(当時のレートで1兆8500億円)でした。
我が国は既にFIT初年度だけの認定設備が12.2ギガワット(2月末現在)ですから、ドイツの1.62倍です。そして買い取り額はその2倍ですから、20年間累積で約7兆円前後と推定されます。
1年間にするとざっと3500億円といったところでしょうか。これが薄く広く電気料金に上乗せされるわけですが、思い出して頂きたいのはFITという制度は「20年間固定買い入れ」なのです。
つまり初年度42円(太陽光)の価格のまま20年間、そしてこの制度を止めない限り毎年買い込む高額買電料は積み重なっていくのです。
しかも最初は1年間分ですが、次年度は2年間分、3年目は3年間分と積み重なっていきます。なんか年齢スライド型ローン地獄のようてすね。
ドイツでは、初期は我が国と同じくらいの3000億円前後でしたからあまり負担は見えなかったのですが、積もり積もって13年現在では、年間200億ユーロ(2兆4000億円)にも達するようになってしまいました。
するとさすが国民の負担も人口8000万人のドイツだと、一人当たり3万円という途方もない額になり、電力貧困層という電気代が払えない貧困層まで誕生するようになってしまいました。
これは税負担と電気料金上乗せの二重の形で消費者・国民が背負います。しかもこのFITで儲かるのは、太陽光発電装置を付けられる富裕階層だけという金持ちに優しい制度です。
もはや負担の限界を超えたと見るべきでしょう。
特に低所得者層への影響は大きく80万所帯が電気代の滞納をし、電気を止められそうになっています。
(図 同上)
電力料金の自由化移行の値上がりにより、上図のグラフの発電・発送電の実費コスト(紺色部分)が1998年と変わらないのに、2012年では家庭用では45%、産業用では39%値上がりしています。
この原因は、ドイツでは電気料金の半額弱までが再生可能エネルギーの賦課金負担という異常な構造となってしまっているからです。
日本の場合もドイツと似た電気料金の負担構造になることが予想されます。
「日本の環境省のワーキンググループによる報告書では、再生可能エネルギーの導入が低位・中位・高位だったと想定する3パターンにおいて、標準世帯(月300kWhを使用する家庭)における負担分は、電気料金とは別に、低位では2030年時点にピークとなり156円/月、中位では2030年ピークで291円/月、高位では2026年ピークで553円/月になるのではないかと想定している」(ハフィントン・ポスト2013年1月15日)
(図 環境省)
では、これだけの代償を払ってドイツが脱原発をしたかといえばとんでもない。
まだしっかり半数の8基の原発が稼働しており、ドイツ電力需要の全体の6分の1(約17%)程度はいまだ原子力依存です。
その比率は3.11前の日本の32%(10年12月)の半分ていどにすぎません。
さらにドイツは、メルケル政権の脱原発政策により、停電が増えて企業は海外生産にシフトしています。
ドイツ商工会議所がドイツ産業界の1520社を対象に行なったアンケートによれば、エネルギー・コストと供給不安を理由にして、5分の1の約300社が国外に出て行ったか、出て行くことを考えているという衝撃的数字が出ました。
ドイツは硫黄分の多い低品位の石炭火力にエネルギー源の70%もが移行したために、炭酸ガスだけではなく、大気汚染問題までが心配されています。
ドイツは脱原発政策によって、化石燃料に強依存したために、電気料金の値上げを招き、その上に代替電源に再エネをもってきたために更にその負担金が重なり、おまけにCO2までもが増大するという三重苦に陥ったわけです。
こんなドイツのどこが「理想」なのでしょうか?
※アップした後こりゃ長いやと自分でも思いましたので、後半をカットして明日に廻しました。
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コメント
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ドイツの惨状を見ても、環境省の想定って甘すぎるんじゃないかなあ…。
FIT導入が予定通り進んだとして、世帯当たり月300~500円なんて負担で済むんですかねえ。そんくらいなら仕方ないか…位の金額では済まないような。
送電網の整備が入ってないとか、強制的に受け入れる電力会社の設備増設といった費用は、算定に入ってるんでしょうか。
投稿: 山形 | 2014年7月17日 (木) 06時05分