ラムズフェルド政策からオバマ・アジア・リバランス政策への転換
※前回の続きです。われながらあんまり読まれないだろうなと(涙)。
では、今の大統領のオバマはラムズフェルドの戦略を、どのように変化させてきたのでしょうか。
オバマの国際戦略には2つ柱があります。
ひとつは米軍2010 年の「4年毎の国防計画見直し」(QDR)で初めて登場し「エアシーバトル」戦略で、いまひとつは翌年の11年に発表された「アジア・リバランス政策」です。
これは事実上ドナルド・ラムズフェルドがしようとした、グアム集中・米本土回帰政策といった米軍再編を根本的に見直して、米国の影響力が希薄になりつつあったアジア・太平洋地域のパワーバランスをリバランス(再均衡)させる戦略です。
かつてのラムズフェルド戦略が海外基地からの撤収だったのと対照的に、オバマ戦略は前方展開基地、つまり沖縄基地などを重視し、そこに海兵隊の緊急展開部隊を置いて、空軍海軍(エアシーバトル)との密接な協力で事態に対処しようとしました。
オバマ自身は、中国に対して、民主党リベラルらしい妙な幻想があり、経済が発展すれば民主主義社会に脱皮していくだろうという甘い考えの持ち主だったようです。
その延長には、ブレジンスキーが提唱したG2(2大国支配)路線が待ちかまえていたわけですが、それに至る前に中国が南沙諸島でベトナム、フィリピンと衝突し、同時に尖閣上空に防空識別圏設定したあげくはロシアと準同盟関係まで結ぶに至って頓挫しました。
その結果、オバマ政権が当初から掲げていたにも関わらずお蔵入りしていた観のある「アジア・リバランス政策」が再び日の目を見ることになったわけです。
「アジア・リバランス政策」は、たラムズフェルド政策が、世界における米国の安全保障上の責任を放擲しかねない危うさがあったのに対して、中国の軍事的・政治的な台頭に対応して、米国が日本、ASEAN、オーストラリアなどと連携を強化し、アジアの経済構造・安全保障構造を安定させていくことを目的としています。
この具体的な一歩として、オバマは来日後の4月23日から29日までアジア歴訪し、それを国際社会に宣言しました。(韓国だけではテーマとはなんの関係もない従軍について執拗に絡まれましたが)
この「アジア・リバランス政策」の具体的な戦略上の最大拠点が沖縄であることは自明です。
このことに限らず沖縄反基地勢力は、「沖縄に米軍が即応基地を置いているということの政治的意味」自体がよく理解できていないようです。
たとえば、現実に尖閣に中国軍が侵攻しても、米国は自衛隊を支援するかどうかは微妙です。
しかし中国側からみれば、沖縄に海兵隊基地がある以上、「米軍が介入する可能性を排除できない」ということになります。
これだけで充分に「抑止力」になります。日本としては「尖閣は安保の適用範囲だ」と大統領に言わせたということだけで充分なのです。 (もちろん中長期的には違いますが)
だからコメント氏の言うように、「たかだか海兵隊3千人」だろうとローテーションでアフガンに行こうとどうしようと、沖縄に即応部隊の出撃拠点があれはそれでいいと割り切っていられるのです。
だからこそ、ラムズフェルドが「沖縄から海兵隊航空部隊の一部を移す」と言ったら、これは誤った外交的シグナルを発信してしまいうことになるのです。
それは、「米国は、東シナ海や台湾有事に関して無関心であり、介入する気はない」と米政府が公言していることと同じになってしまうからです。
実際、台湾はこのラムズフェルド発言に敏感に反応しました。コメント氏は知らないようですが、台湾は直ちに北京を標的とするミサイル開発を発表して牽制し始めたのです。
これは、中国から攻撃を受けたら、北京や上海をミサイル攻撃で反撃するぞというアピールです。
下の記事を読めば、たかだか海兵隊なんていえないでしょう。台湾は馬政権のよう親中派政権でも、日米安保が地域安定のインフラだと言っているのです。
台湾は日米同盟を自らの安全保障の重要な柱として認識していることはこの記事からも伺えます。
「馬政権は当初、中国の首都・北京を射程圏とするミサイル開発で中国を刺激することは避けたい考えだった。また、開発停止の背景には沖縄海兵隊を含む在日米軍の「抑止力」があった。安全保障の問題を専門とする台湾の淡江大学国際事務・戦略研究所の王高成教授は「日米安保条約は冷戦終結後、アジア太平洋の安全を守る条約となった。条約の継続的な存在は台湾の安全にとって肯定的なものだ、と指摘する」
(毎日新聞 2010年4月25日)
ラムズフェルド発言が今のような中国が東シナ海のみならず南沙諸島まで広く軍事的脅威を与えている状況ならば、もっとアジア全域に影響は波及したことでしょう。
このように沖縄の海兵隊と航空基地のもっている「政治的意味」は、米国のアジアの政治軍事的プレゼンス(存在感)そのものなのです。
グアムというはるか1000キロの太平洋の真ん中まで後退してしまえば、その政治的信号は「米国はアジアに関知しない」という意思表示をしたことになります。
このような誤った外交シグナルを送れば゛それに乗じて勢力圏拡大をしてくるのが中国です。
ですから日米両政府はそのような「誤解」を与えてはならないと、ラムズフェルド発言を即刻否定し、解任したのです。 (※解任理由は複数あります。直接には米軍の捕虜に対する拷問の発覚です)
これが沖タイ記事でジョーンズ氏が言うところの「政治的理由」なのです。
「政治的理由」というと、よく「大物代議士が暗躍して利権ウンヌン」という泥臭い話ばかり想像しがちですが、こういう国際的な「政治的理由」もあるのです。
ただし普天間移設に関しては、小川和久氏が「普天間問題」で述べているように本土政治家と、沖縄政財界との複雑な駆け引きがあったのは事実です。
しかし、当時はようやく日米当局者たちの努力の結果、名護市が容認になった時期でした。
このようなデリケートな時期に死に体同然の「脳味噌の足りない戦争屋」にチャブ台返しをされてははたまらない、そう日米当局者は考えたことでしょう。
ブッシュと二人三脚をしていた馬鹿コンビの片割れにふさわしい台詞でした。それゆえにあの発言が原因かどうかは定かではありませんが、失脚するハメになったのです。
それがラムズフェルド発言の即時否定とそれに続く解任です。これが沖縄タイムスがなにか秘密めかして書く「政治的意味」です。
(この項まだ続く)
お断り。
※「琉太」という人物がまったくルールを守りません。管理人として、私の記事の終了後に書き込みを認めるつもりでしたが、またもや無内容な超長文をダラダラと投稿してきています。
そしてあいも変わらぬ鼻持ちならない背伸びした態度が鼻につきます。ボクチャンのほうが頭いいだもんねといいたいようです。大いに笑いました。
まともに議論をするのではなく、相手のあら探しばかりやるタイプです。よく大学の左翼活動家にいる類型で、建設的議論ができません。討論とは相手を大きな声で言い負かすことていどにしか考えていないのです。
このテの極左活動家は私が学生だった70年安保の頃は掃いて捨てるほどいました。まったくうんざりです。
内容的には、まじめに討論する気はなく、いかに私の揚げ足をとって「勝つ」かということにのみ集中しています。ですから私が紹介した米国高官が某氏の論文に出ていて、その某氏が親米だからどうたらこうたらと意味のないことを書き込んでいます。頭大丈夫でしょうか。
私が論じているのは、親米だろうと反米だろうと関係ありません。その時期の米国がいかなる外交的転換をしたのかだからです。
私はこのような人との論争として書いているのではなく、大きなアジア・太平洋地域の安全保障の大状況をみています。
したがって、二度にわたって警告を無視した「琉太」と称す人物をアクセス禁止にします。二度と来ないで下さい。
管理人
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コメント
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はじめまして。
今年に入ってからほとんど毎日読ませていただいております。
そして最も信頼できるブログの一つとして、大変重宝させていただいています。
私のようにコメントしないだけで毎日訪問させていただいている人たちも、意外と多いのではないでしょうか。
そして真実の情報と正論を発するブログとして、なくてはならないものとなっております。
読まれないだろうなどと、弱音は無用だと思います。
これからも応援しております。
投稿: うえたん | 2014年8月26日 (火) 17時05分