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アジア・太平洋地域の流れに背を向ける沖縄反戦運動 

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ありがたいお言葉に感謝します。ほんとうに励まされます。 

毎日書いていると、時折なんのために書いているのかわからなくなるときがあります。 

特に先だってのコメント氏のように、どうしてこう解釈できてしまうのかと思うようなことを嘲笑的に言われると、まったくがっくりきます。 

そのような時に杖のように立ち上がる気力を頂くのは、皆様の温かいコメントです。 

さて、今回のテーマは、沖縄の位置をアジア・太平洋地域の拡がりの中で見ることです。 

ヨーロッパ地域の安定は、NATOという集団安保体制によって守られています。加盟国一国への侵略を他の諸国もまた同時に侵略と捉えるシステムによって、地域の安定が維持されています。

逆に加盟国一国の侵略は、他の国によって制裁を受けるという逆の関係も定められています。 

NATOでは同盟国が主体で地域安全保障を担うことができますが、残念ながらアジアは発展途上国と新興国が過半を占めるために米国が中心にならないと出来ません。 

将来的にはASEANフォーラムが進化して、日本やオーストラリアまで含んで米国とリンクするようなシステムに発展していくのでしょうが、まだ先の話です。

なにせ米国に並ぶ国力を持つわが国ですら、たかだか集団的自衛権という国の自然権に属するものすら、あの大騒ぎですから。 

誤解されているようですか、在日米軍は日本のためだけに配備されているわけではありません。 

アジア・太平洋地域の諸国民のためにも配備されています。特に沖縄はその地政学的位置のためにその中心に位置しています。 

下の地図を見て下さい。MV-22オスプレイの行動半径を描いたものです。 

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これを見れば、オスプレイが、よく言われるような尖閣、台湾有事、朝鮮有事だけてはなく、広くスプラトリー諸島を含む南沙諸島や、西沙諸島までカバーしているのがわかるでしょう。 

つまり沖縄は、台湾のみならず防衛力の貧弱なフィリピンやベトナムまで含めたトータルなアジア・太平洋地域の安全保障の拠点なのです。

この対象国は、いうまでもなく軍拡と膨張を続ける中国です。

ヒラリー・クリントンは国務長官時代にASEANの会議に出席した時に、このようなシーンを目撃したことを回想録に書いているそうです。

中国の楊潔篪外相は領土問題が取り上げられると、アジア諸国の代表をゆっくりと見まわたしながら、傲然とこういい放ったそうです。

中国は大国である

このことをまったく理解しなかった男がこともあろうに、国防長官の椅子に座っていたことがあります。それがドナルド・ラムズフェルドです。 

ラムズフェルドはイラク戦争に暴走したあげく米国を戦争の泥沼にと追い込み、その反動で海外基地の縮小・米本土回帰に走ろうとしました。  

その先にあるのは、米国が現に果たしている各地域への安全保障インフラの責任をを放棄しかねない危険なものでした。米国一国孤立主義までもう一息だったかもしれません。 

ともすれば関与を薄めて、かつてのモンロー主義的国家に回帰しようとする米国をなんとかしてアジアに繋ぎ止めて置きたいとする、それがアジアの流れなのです。 

オーストラリアは海兵隊駐留を望み、 華僑が作った都市国家である シンガポールも米海軍の寄港を要請し、フィリピンは再び米軍に戻ってきてくれることを請い願い、ベトナムという旧敵までが米軍と協力関係を作ろうとしています。  

このように程度の差こそあれ、アジア太平洋地域では多くの国が米国と同盟・パートナー関係を結ぶとともに、多国間協議制度に加わることを安全保障の基本政策としています。  

この数年、このような米国の軍事的優越性を前提に、2国間同盟や多国間協議制度などからなる多層的な安全保障の枠組みを、「アーキテクチャ」(建築構造)という概念で表現しています。  

あるいは、地域安全保障体制のインフラと呼ぶ場合もあります。それを現す言葉をご紹介しましょう。

「現在のところ、アメリカがもたらすものが我々にはベストだろう。中国はアメリカほど温和でないと見ている。(中略)アメリカは覇権国だが穏健な覇権国だ。私はアメリカとなんとか上手くやっていける。いまある覇権国がそのままあればよいではないか
(リー・クアンユー「未来への提言」)

これはその優れた知性と胆力に裏打ちされたタフネゴシエーターぶりを、各国の政治指導者からマスターと仰がれているシンガポールのリー・クアンユー元首相の発言です。  

これを以下の台湾の発言と並べてみるとまったく同一の文脈だとわかるはずです。昨日も紹介した台湾・淡江大学国際事務・戦略研究所の王高成教授の発言です。

日米安保条約は冷戦終結後、アジア太平洋の安全を守る条約となった。条約の継続的な存在は台湾の安全にとって肯定的なものだ、と指摘する」

日米同盟も、その他の2国間同盟や多国間協議制度と密接に連関することで、アジア太平洋地域における安全保障アーキテクチャの構成要素として中軸的地位を占めています。 

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 (写真 「新基地反対」を叫ぶ福島瑞穂氏。、原発、辺野古、どの分野でも言っていることは電波系一色だが、同調する人がどの分野でも金太飴なために治癒しない)  

ところでアジア・太平洋地域の国々が「米国よ行くな」と叫んでいる時に、唯一米軍に退去を請願する国境地域の首長がいました。それがわが国の沖縄県知事です。 

いかに他のアジア・太平洋諸国の現状認識とズレまくっているかよくわかるでしょう。 

アジア地域で反米闘争をして米軍を叩き出す運動をしているのは、私が知る限り唯一沖縄の反戦・反基地勢力だけです。  

そのズレの原因は、沖縄の反基地勢力が、米軍の存在を本土政府と沖縄との狭い眼鏡からしか見ていないことにあります。  

常に、沖縄県の不平等を叫び(それは一定事実ですが)、基地がない沖縄を叫ぶ相手は常に本土政府です。  

本土政府だけしか彼らの視野にはありません。本土政府を責めれば、沖縄の米軍がいなくなるような安易な錯覚にとらわれています。 

言い募られた本土政府も、日本だけで決められる話じゃないよという類の話なので、なんとかなだめようと復帰から累積10兆円の振興予算を配り続けてきました。 

それが沖縄社会・経済に著しい歪みを与えたことは今まで見てきました。  

もっと大きな視野でアジア・太平洋地域を見ようとしないために、常に米軍が沖縄にいる必要などないと主張し続けて、とうとう「米軍はグアムに出て行くんだ」などというあらぬファンタジーが再生産され続けられるというわけです。 

もう少し冷静にアジア・太平洋を見れば、そんな条件など皆無な厳しい状況のが分るはずなのに、自分たちが作り出したイリージョンに酔っています。 

なぜ、沖縄の基地負担が隣国の台湾、そしてベトナム、フィリピン、オーストラリアなどのアジア・太平洋諸国の人々ための負担だと考えられないのでしょうか 

そのように考えることができれば本土-沖縄の古いしがらみから少しは楽になれるはずなのに、と私は思います。  

                                   (この項やっと終わり)

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沖縄問題」カテゴリの記事

コメント

いつも、管理人さんの記事には舌を巻いています。
日々更新ありがとうございます。

現実をスタート地点に持ってくるリアリストである
ので、無意味なイデオロギー的空想がなく、したが
って実践的な結論が語られるので退屈しません。多
くのファン(アンチも)がいるのでしょうねぇ。

でも、今回の最後のトコロは賛成できません。

>なぜ、沖縄の基地負担が隣国の台湾、そしてベトナム、フィリピン、オーストラリアなどのアジア・太平洋諸国の人々ための負担だと考えられないのでしょうか。

そら、一般民は意識が高いわけではありませんから。
まあ二割の人が賛同したとしても、残りは「何かくれ」
と言うだろうし、「私には難しいことはワカラナイよ」
と無関心でしょう。

私は、危険な地政学的条件は別から見れば東アジアの
ハブという事ですから、日本国の治安が保証されると
いう条件も含めて、特別区として発展できると思うの
ですが・・まあ、モナコ公国のイメージですけど。

日本国の実権握る頭のカタイ霞ヶ関のヤル気のない
官僚には無理ですから、沖縄の若い政治家がやらない
と変わらないのは解っていますが・・

投稿: アホンダラ | 2014年8月27日 (水) 01時56分

口蹄疫の記事のころから、いつも拝見しています。
膨大な資料とその検証、リアリズムに貫かれた冷静な視点、そして対象への慈しみ、いつも頷かされることばかりです。
宮崎の児湯郡出身で、大学時代を沖縄で過ごしたこともあり、何度か議論に参加しようかと思ったこともありましたが、管理人様のあまりに高度な分析に、却って議論の邪魔になると思い書き込みは控えてきました。

沖縄時代を思い出すと、まさに当時は人間の鎖で普天間基地を囲む運動の真っ最中でありました。
当地のメディアでの過熱ぶりとは対照的に、大学内を始め私の周囲は、いわゆる基地運動に対して妙に無関心だったのを覚えています。
県外出身の私だけでなく、地元の人もそれほど熱心に関わっていた人は少なかったのではないでしょうか。
一方で、私の周りの付き合いの範囲では、米軍基地関係者の知り合いがいる人も結構いたこともあり、「決して米兵だけが悪いことをするのではない」という意見もそれなりにありました。
(もちろん当時の流れの発端となった事件への怒りと、被害者への同情は、皆同じでしたが)
意外に地元は基地のある現実を日常として受け入れていたのではないか、と思います。
ですから、なおのこと県外メディアが旗を振り基地撤去を叫んでいたことに違和感があり、あの当時の違和感の正体が管理人様の記事で見えてきた気がしています。

管理人様の記事が、情報が溢れ却って感情的に判断しがちな昨今、少なくない人の冷静な判断に寄与していると思います。
口蹄疫の時は宮崎を離れた身ながら、管理人様の記事に救われた思いでした。ほんとうにありがとうございます。
とりとめのない文章になりましたが、管理人様のご健康をお祈りしています。

投稿: ひろゆき | 2014年8月27日 (水) 15時25分

ミズポたんも何が「新基地反対」なんだか…。キャンプシュワブの埋め立て拡張なんだが。
それも、あくまでも「普天間基地廃止」のために、仕方なくやってるだけだというのに。
こいつらも「美しい海を守れ」と叫んでる連中も纏めて、スプラトリーに行ってやってみせろや!と。

投稿: 山形 | 2014年8月28日 (木) 06時45分

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