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2014年10月

伝染病の火薬庫・中国

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先週、ロシア通信社の衝撃的なニュースが駆けめぐりました。

「中国南部の広東省でエボラ出血熱に感染している疑いが持たれていた43人は、分析の結果、陰性だった」(ロシアの声9月22日) 

この初報は「陰性」と「陽性」を取り違えるという誤報であることがすぐに判明して削除されたのですが、やはり中国に出たかと身構えてしまいました。  

というのは、中国にエボラ出血熱が出れば、その経済的関係の深さから言ってもはや日本上陸までは秒読みだからです。  

この「ロシアの声」の報道自体は直ちに否定されましたが、多くの防疫関係者は米国の次に出るのは中国だろうと考えています。  

いやむしろ、既に発生していてもなんの不思議もないからです。  

「ロシアの声」は現時点で広東省では今も3000人以上が、エボラ出血熱に感染している疑いが持たれている」と報じています。

「これらの人々は全員、エボラが猛威を振るっているアフリカ諸国から戻ったばかりで、その後、隔離された。今のところ中国、そしてアジア地域全体でも、エボラ出血熱の感染は確認されていない。しかし中国政府は、エボラの流行が深刻な脅威を与えていることを認めている。これを受け、アフリカに実験ワクチンJK-05を数千回分送ることが決まった。JK-05は、中国軍向けに中国の軍事医学アカデミーで開発されたもので、エボラ出血熱の治療薬としての臨床試験は完了していない」(同)

そして高等経済学院の教授で、エビデンス(証拠)に基づく医療(EBM)専門家協会の会長を務めるワシリー・ヴラソフ氏は、現在の状況を受けてこう述べたとしています。

中国の医療関係者たちは、必要な場合に、アフリカにいる中国人に実験薬を投与する許可を得た。(略)アフリカには中国人が大勢いる。そのため、彼らが第一の保護対象となる。しかし、この実験薬は、実際に保護の役目を果たすのだろうか?」(同) 

中国はあまりにアフリカに深入りしすぎました。産経新聞によれば、ある中国外交関係者はこう述べたそうです。 

「中国はここ10年でアフリカ諸国との結びつきを急速に強めている。現地の天然資源や成長市場を狙ってインフラ整備計画に数十億ドル規模の資金を提供するなど、アフリカ最大の貿易国になっている」 

2004年頃から資源外交のかけ声と共に、中国はアフリカの豊富な資源の獲得も目指しました。 

それは日米欧のような公的機関による無償援助ではなく、経済的な得失を考えた投機資金でした。 

中国はアフリカの天然資源を担保に自国製機材を輸出し、その代金を資源で受けるわけですが、自国製機材の価格を安く設定し、安く資源を輸入するという手法をとりました。 

この方法で現地政府に取り入り、(とうぜん現地政府に賄賂攻勢をしたわけですが)安価で性能の悪い中国製工業製品の輸出先を広げました。 

例えば、この方法で自動車会社「中国第一汽車集団公司(FAW)」は、安価しか取り柄がない多くの車をアフリカに輸出することができるようになりました。 

もっとも他の諸国と異なったのは、現地の石油や鉱山を押え、そこに採掘権を確保するやいなや、数万人規模の中国人労働者を送り込んだことです。 

今やアフリカ各地には、アフリカに渡った80万人から100万人を超えているといわれる中国人労働者のチャイナタウンが各所にあります。 

100万人規模まで膨れ上がると、現地住民との人口比率が逆転した地域も生まれ、もはや移民政策、いや態のいい「棄民」ではないかと強い批判を浴びています。

AFP東京発10月30日によれば、エボラウイルスの発見者であるピーター・ビオット氏は空港でのサーモはほとんど効果がなく、WHOの動きはあまりに遅かったと指摘した上でこう述べています。

「数万人規模の中国人が今、アフリカにいる」「だからそのうちの1人が中国に帰国するのは不可能ではない。そのことのほうが、アフリカ人が中国入りすることよりも、私は懸念している」「中国の公共病院の治療の質も懸念材料だ」

0036afc (IPSJapan) 

一方、アフリカ諸国での中国の存在感が高まるにつれ、人的交流も活発化し、アフリカ人もまたビジネスチャンスを求めて中国国内に大量に流入するようになりました。

「広東省広州市には商売をするため、中国にやってきたアフリカ人による居住区までできている。中国のアフリカ進出が目立ち始めた2004年ごろに形成された。(略)広州現地では住人の肌の色から「チョコレート村」と差別的な表現で呼ばれているという」(拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏)

今や、密入国者も含めてアフリカ人「移民」の規模は、中国当局自身も把握できておらず、「密入国者も含めると10万人(※)を超えるともいわれている」と産経新聞は報じています。※在中アフリカ人労働者の数は諸説あります。 

この巨大な「チョコレート村」こそが、帰国したアフリカ帰りの中国人労働者と並ぶ、「エボラの火薬庫」となっています

「コミュニティーに集まった黒人の比率は、西アフリカ出身者が7割ぐらい。その中にエボラ出血熱の保菌者が入り込んでいる可能性は捨てきれない。中国ではSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行以降、防疫体制をかなり強化しているが、エボラ出血熱のウイルスは潜伏期間が長い。検疫の網をすり抜けていてもおかしくはない」(富坂氏) 

2002年から03年にかけて流行したSARSは、広州市が最初の発生地区でした。もし広州で発生すれば、隣接する香港に必ず飛び火します。

その場合、SARS発生時も約1750人が感染し、死者約300人を出しただけに高い確率で同じ事態が起きるでしょう。
 

また、FAO(国連世界食料機関)の専門家は、「中国当局の許可なしに、専門家を感染地に派遣調査することはできない。中国の本当の伝染状況を把握するのは困難である」と指摘していました。  

中国の政治-社会体制はあれからまったく変化していません。今回も肝心な情報はまったく公表されないままです。  

新型インフルエンザの時にWHOの関係者がこう述べていたことを、忘れるべきではありません。 

中国当局は、最悪の状況に追い込まれない限り、われわれには本当のことを明かさない

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WHOの無能・無気力・無責任

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エボラ出血熱が年12月にザイールで発生して以来、途中で米CDCが加わったといえど、その闘いは国境なき医師団(MSF)という一NGOが一身に担ってきました。  

MSFは、実に計16人の医療従事者がエボラ熱に感染し、うち9人が死亡しています。いかにMSFが感染現場に密着し、人々を死の淵から救い上げたのかがわかって胸が詰まります。 

今月になってNYで感染が確認された患者も、MSFの一員として、最前線で戦った若き医師でした。

では、肝心の多くの予算と「国際公務員」という特権を享受しているはずのWHOの姿は、どこに消えたのでしょうか。

CNNやニューズウィークは相次いで、AP通信のWHOの内部文書報道を取り上げています。米国でこのような追随報道が出るのは、裏が取れたということです。(欄外参照)

「AP通信が内部文書の内容として伝えたところによると、WHOは『エボラ熱対応にかかわった者はほぼ全員、明らかな予兆を見逃していた』『事態は最悪の状況に向かって進行していた』との認識を示し、西アフリカでの発生以降、拡大阻止の機会を逃してきた経緯を振り返っている。
伝統的な伝染病封じ込め作戦がこの地域では通用しないことに、WHOの専門家は気付いていなかったとも指摘している。
同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた」(CNN10月19日)

事実CDCなどから「感染者数を少ない見積もりすぎている。事実はその倍だ」などの痛烈な批判を浴びているのは事実です。

今回は「エボラ対策を助けるどころか妨げになっている」と現地の保健当局や支援団体から批判されているというのです。ひとことで言えば、いないほうがましということになります。

WHOは、これは内部文書の下書きだと弁明していますが、下書きだろうとなんだろうと、このようなWHOの評価は西アフリカ現地の医療関係者の間では定着しているということにほかなりません。

WHOは明らかな初動ミスをしています。それは余りに感染規模を少なく見積もったために、限られた人員と予算しか組まなかったために、そのために初動制圧に失敗し、感染を拡げてしまいました。

つまり、WHOは危機管理においてしてはならないといわれる、「楽観論で見積もり、悲観論で実施する」ことをしたのです。

そのひとつの原因はWHO内部の硬直した官僚主義だ、とニューズウィーク(10月28日)は伝えています。 

アフリカ各国の事務所長の人選は、アフリカ担当部長の好き勝手に左右されたために、独立王国となってしまっています。 

その上に、マーガレット・チャン事務局長は指導力が欠如した上に、アフリカに進出が著しく、大きな利害関係を持つ中国の利害に影響されているとの指摘もあります。 

02(写真 ニューズウィーク10月28日 パンギムン氏とマーガレット・チャン氏の凍えるようなツーショット。チャン氏のファッションセンスもまた底冷えしそう。辞めた大臣みたいに勝負カラーなんだろうか)

 「同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた」(CNN)http://blog.livedoor.jp/fukokukyouhei/archives/15240665.html 

では、これも時系列で今回のエボラ出血熱の動きをみてみましょう。 

2013年12月6日 ギニアで最初の患者が死亡
●14年3月20日(※以下同年)ギニア保健省 2月9日の時点で病名不明の患者36名が罹患、うち23名死亡
●3月23日 ギニアの患者、仏政府リヨン研究所でエボラと確定診断。罹患80人、死亡59人
3月23日 ギニア政府WHOにエボラの発生を通告し、WHOがエボラの発生を宣言
●3月25日~29日 ギニア東部に拡大。モーリタニア国境制限(29日に完全閉鎖)
●28日 EU50万ドルを拠出
●30日 西アフリカ諸国経済共同体から2.5万ドル拠出
●31日 米国CDCチーム5名を派遣
●4月1日 サウジ、ギニア、リベリアからの巡礼のビザ交付を停止
●4月16日 欧州モバイル研究所の移動検査室で07年のコンゴ株と97%同一と判定
●5月27日 シェラレオネで発生
●6月17日 リビア、モロビアで7名発生
6月23日国境なき医師団、制御不能と発表
●6月26日WHOレスポンス強化と発表
●7月中 シェラレオネ全域に拡大
●8月1日 マーガレットチャン事務局長、西アフリカ諸国大統領とエボラ対策強化を話し合い
※WHOの活動は8月から始まる
 

13年12月6日に発生して、3月23日にフランスリヨン研究所でエボラと確定診断されるまでの3カ月間、感染現場で孤軍奮闘してのは国境なき医師団です。 

それに遅れて3月31日に米国CDCが加わります。 

では記事冒頭の問いに戻りましょう。昨年12月から今年3月までというもっとも重要な感染初期に、WHOは何をしていたのでしょうか?

なにもしていません。漫然とフランス政府の確定診断を受けて、3月23日に発生を宣言しただけです。 

ここからさらに無駄に時間は費やされ、拡大がギニアの国境を越えて西アフリカ全体へと拡がる状況に、とうとう6月23日に国境なき医師団が「制御不能」を宣告します。 

これを聞いて3日後にWHOはあわてふためいて「レスポンスの強化」を発表しますか、具体的には担当官を派遣して情報収集する程度だったと思われます。

第一「レスポンス」とはなんなのでしょう。「応答の強化」ということでしょうが、いかにエボラ発生現地の情報をここまで火が広がるまで無視してきたのかバレてしまう台詞です。 

そしてこの国際公務員たちは、現地に出かけても首都のクーラーの効いた部屋に閉じこもって、感染現場で医療支援をすることはありません。 

この後、エボラはどんどんと拡大を続けてとうとう7月にはナイジェリアでも発生をみます。 

つまり、発生国がリビア、モロビア、シェラレオネ、リベリア、ナイジェリアなど複数国にまたがったわけです。 

このような状況が、NGOとCDCだけでコントロールできるはずがありません。それは感染症医療が、厖大な医療機材の輸送、人員の確保、感染対処やデマへの教育などがあるからです。今回派遣される米陸軍も、この輸送業務にあたります。 

このような巨大なエボラ制圧作戦が、崩壊国家と呼ばれる西アフリカ諸国に担えるはずもなく、それを支えた国境なき医師団には頭が下がる思いです。 

これに対しては、いうまでもなく国際社会が総力で制圧に当たるしかなく、それを組織するのがWHOと国連の本来の任務だったはずてす。 

にもかかわらすWHOと国連は無能をさらけ出しました。もはや任務放棄に等しい罪です。 

「国境なき医師団」(MSF)のジョアンヌ・リュー会長は、先月国連でこう訴えています。 

「国際社会の反応は常に不充分でスピード感にかけている」「世界はこの感染症を封じ込めるのに失敗しつつある」(ニューズウィーク同上) 

会長は直接名指しは避けていますが、エボラの拡大をまったく顧みなかったWHOと国連に対するものと思っていいでしょう。 

申し訳のようにパンギムン事務総長は、エボラ対策の支援金を1億ドル募りましたが、呆れた国際社会からの反応はたった10万ドルだったそうです。

WHOと国連が重い腰を上げたのが8月。既にエボラの火が燃え盛ったあとでした。

かつてパンギムン事務総長を評した言葉を思い出します。

「歴史的にレベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能。核拡散の脅威や難民危機にも関心を示さない潘のおかげで、国連はあってもなくても関係ない存在に堕ちた」(2009年06月23日ナショナル・インタレスト誌)

この言葉は、もうひとりの「国連・無能の殿堂」入りを果たしたマーガレット・チャンWHO事務局長にも与えられるべきでしょう。

※マーガレット・チャン関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/3-31ed.html

国境なき医師団への寄付金については(MSFは目的指定基金ができます)http://www.msf.or.jp/news/detail/special_1686.html  

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■初期対応に失敗」 WHOの内部文書が流出 エボラ熱流行
CNN.co.jp 10月19日  

世界保健機関(WHO)がエボラ出血熱についての内部文書の中で、初期対応の失敗を認めていることが19日までに分かった。AP通信が伝えた。一方、WHOは内部文書は事実確認などを経ていない下書きにすぎないと説明している。  

AP通信が内部文書の内容として伝えたところによると、WHOは「エボラ熱対応にかかわった者はほぼ全員、明らかな予兆を見逃していた」「事態は最悪の状況に向かって進行していた」との認識を示し、西アフリカでの発生以降、拡大阻止の機会を逃してきた経緯を振り返っている。

伝統的な伝染病封じ込め作戦がこの地域では通用しないことに、WHOの専門家は気付いていなかったとも指摘している。

同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた。

WHOは18日、この文書は事実確認や審査を経ていない下書きの段階だと主張。当面は事態への対応に全力を注ぎ、流行が収まった時点で徹底的な検証を公表するとの方針を示した。

WHOによると、エボラ熱への感染が確認された患者はこれまでに9200人、死者は4500人を超えている。診察を受けられなかったり隠れていたりする患者を含めると、実際の人数はさらに多いと推定される。

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今回のエボラ疑い事件は幸運だった

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昨日のリベリアから帰国した日系カナダ人ともいわれる男性(※)がとりあえず陰性(シロ)だったので、ほっとなさった方も多いと思います。※情報は複数あります。 

今わかっている時系列を追ってみます。 

・27日午後3時35分 リベリア滞在歴があるこの男性、ロンドンから羽田空港に到着
・ 検疫所で医師が熱を測ったところ、37.8度であることが確認
・同日午後6時25分 防護服を着せられて、都内の国立国際医療研究センターへ出発
・同日午後8時20分 塩崎厚労相が記者会見し、「 塩崎厚労相は「きょう、羽田空港に午後、西アフリカに滞在歴のある男性が到着して、発熱されている。万が一のことを考えて、搬送し、検査を行っている」と公表
・同日午後10時30分頃 男性の血液が、遺伝子検査のため、武蔵村山市の国立感染症研究所に搬入
・同時刻頃 男性が乗っていた航空機を運航する全日空では、機内の消毒作業を実施
・28日午前5時30分 男性の検査結果陰性であると発表
・同日午前9時半頃塩崎厚労相記者会見 「(エボラ出血熱は)発症後、3日間は陽性の結果が出ない場合があることから、引き続き入院してもらい、健康管理を行う」と述べた
 

日本の限定された条件の中としては、防疫当局はよくやったと思います。ただし、これはテストケースだと思ったほうがよさそうです。 

今回わかったことは、「感染疑い患者」が出た場合、指定病院への搬送などの手順は守られたようですが、問題は「みなし患者」として扱うべきかどうかについて厚労相の方針が定まっていなかったことです。

そのために、疑似患者である男性と同乗していた乗客は、足止めされることなく帰宅しています。

この措置には疑問を感じます。もし男性が陽性(クロ)だった場合、社会の中に散ってしまった同乗者を同定していかねばならないからです。これが大変な作業だということは、諸外国の例でわかっていたはずです。

おそらく、検疫所は男性に下痢、嘔吐などの症状が出ていなかったために感染疑いが低いと判断したのだと思います。

しかしもしエボラ出血熱だと思われる症状を呈していた場合、そのウイルスをどこで分離して確定診断するのでしょうか。

BSL-4ラボの問題をどのメディアも見事にスルーしていますが、PCR検査でクロ判定が出たら、そこから先の確定診断はどうするつもりだったか、私にはさっぱりわかりません。おそらく厚労省もわからなかったはずです。

私はこの確定診断が出来ない条件下では、徹底して私は「みなし患者」として通常国より厳しい方法で管理すべきだと思います。

エボラ出血熱の初期症状は発熱だけで、ほとんど風邪と誤診されます。

数日後に下痢や嘔吐といった症状が出て、急激に感染力が高まりますが、発熱段階の感染力はウイルスか少ないために感染はないとされています。

ですから、今回は居合わせた人は安全と判断して間違っていないのですが、この体調もまた男性の自己申告に頼るしかないわけです。 

今回の最大の幸運は、男性の自己申告があった(※)ことで、男性がリベリアからの帰国と熱っぽいことを申請しなかった場合は、今回の展開は異なったものになったことになります。 ※申告しなかったが、サーモで引っかかったという説もあります。

男性はリベリアから帰国したために、エボラと症状をただちに結びつけたでしょうが、この渡航地が仮にドバイや広州、あるいはニューヨークやダラスだった場合、エボラとは結びつけなかったはずです。

つまり自己申告は、そんなにあてにならないということです。 

またこの男性は報道関係者で、おそらくエボラ取材に行った帰りだったことも幸いしました。これが一般のビジネスマンならそこまで考えたかどうかといったところです。 

私は、この疑似患者の男性の自己申告をすべて信じるのではなく、安全パイを見て、陰性と数回確認されるまで、同乗者を空港内に隔離してとどめ置くべきだったと思います。

今回の検査はPCR検査に頼っています。シェラレオネの国境なき医師団のエボラ患者管理センターによれば、発症直後のPCR検査が陰性だった14例のうち、9例が2回目の検査で陽性になったといいます。

つまり、初回でシロでも、6割が2回目以降にクロに逆転する可能性が高いのです。

したがって、体内ウイルスか増加するとみられる72時間は、隔離して経過観察をしながら検査を繰り返す必要があります。最低3回検査をする必要かあります。

その結果クロ判定された場合、ただちに個人情報保護を解除して患者の本名を公表するべきです。そうしないと接触感染を防げないからです。

危機管理においては最悪を想定すべきという鉄則を忘れるべきではありません。

その最悪シナリオは、疑似患者の男性が感染者だった場合で、しかも実は下痢、嘔吐などが始まっていたが気がつかなかったくらい少量だった場合です。あるいは、自覚症状を隠していた場合です。

その場合、今回の対処方法では同乗者が同定できません。マスコミはたった1回の検査でシロだったと浮かれて報道していましたが(速報まで出した局があるそうですが)、バッカじゃないかと思いました。あと2回はやらないとわからないのですよ。

Yの感染した医師野場合も2回やってシロ、その間市中を移動し、その間に嘔吐が出て3回目の検査をした結果クロでした。マスコミさん、もう少し勉強しなさい。

同乗者には気の毒ですが、最低3回の検査の判定が出るまで(おそらく72時間以上)隔離観察をしたほうが無難ではないでしょうか。

さてもうひとつの幸運は、空港の水際作戦で引っかかったことてす。しかもサーモの設定温度以下でした。

エボラ出血熱の恐ろしさのひとつは潜伏期間が長いことです。最長21日間もあると言われています。

潜伏期なので発熱がないために空港のサーモをすり抜ける場合が圧倒的多数なはずです。

自宅に帰って、「あれ、熱がある。下痢もあるぞ。風邪かな」と考えては売薬を飲みながら通勤し、とうとう耐えられなくなって地元の病院に駆け込むというケースが圧倒的だと思われます。

その場合、その地元病院は感染症指定病院である幸運はまずないでしょう。医師も看護師も訓練を受けていないと考えたほうがいいわけです。

その場合、ダラスの病院ケースのような2次感染が拡がっていきます。

今回のケースはラッキーだったと考えて下さい。男性もシロ、空港で引っかかった、近くに感染症指定病院もあった、初回で気も緩んでいなかったという幸運に恵まれました。

今回はいわばストライクゾーンに直球で入ったからよかっただけです。次回もまたこのような幸運に遭遇するとは限りません。

防疫当局には、今回のケースを徹底的に分析して、あらゆるケースでのガイドラインを作ることを勧めます。

国境なき医師団への寄附について
https://www.msf.or.jp/donate_bin/onetime.php
※緊急支援対象から「エボラ出血熱 緊急援助2」を選択してください。
電話 0120-999-199 でも受け付けています。(9:00~19:00/無休/通話料無料)
国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。

・私はMSFへの目的指定寄附がもっとも有効にエボラ患者への支援になると考えています。ぜひお願いします。

 

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政府は責任をもってBSL-4施設を稼働させよ

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(昨日からの続きです)

27日、リベリア帰りの男性が発熱していることがわかり、隔離されたそうです。とうとう来たかというところです。

感染研は検査してシロだと28日朝に発表しましたが、これは血液、尿、粘膜からのサンプル採取でしかなく、ウイルス抽出・分離をしていないみなし診断にすぎません。

「厚労省は血液検査をすると言っていますが、何度も書いてきているように、もちろんこれは簡易疑い段階の診断にすぎません。「感染研村山庁舎で患者の血液や尿、のどから採取した粘膜などを検査するが、ウイルスを取り出したり、培養したりすることは許可されておらず、確実に感染しているとの判断はできない」(毎日新聞10月16日 欄外参照) 

エボラウイルスは、米国初の感染死亡者のダンカン氏がそうであったように、わずかな接触から移る場合があります。この時も彼には患者と接触したという自覚はありませんでした。

発症初期にはインフルエンザのような症状なので、知らないうちにまき散らす可能性が高いのです。だからこそ、しっかりとした確定診断をせねばならないわけです。

さてわが国が医療先進国とは名ばかりの、エボラウイルスに対して丸腰同然だということをお話ししてきました。

受け入れ施設は全国で100床に満たず、BSL-4というエボラウイルスを分離して確定診断できる施設がないために、医師は患者の体内のウイルス量を勘でみるしかありません。

そもそも、エボラだという確定診断ができないのですから、簡易診断で判断するだけです。

つまり、わが国はエボラに対処できない国なのです。このことをはっきりと私たちは認識せねばなりません。

ではなぜ、日本のエボラ対策に緊急、かつ絶対に必要なBSL-4施設がないのでしょうか?

理由は無理解な「市民運動」の反対にあります。

BSL-4施設は、脅威度の高いレベル4(P4)を扱う施設ですから、排気や廃液の特殊設備をもつことが法で定められています。

日本において技術的にはまったく問題なく建設することができます。ところが今まで建設した2カ所の施設は、本来の感染症の確定診断に使われていません。

国立感染症研究所は東京都武蔵村山市に建設しましたが、建設反対運動のために稼働していません。現状はただの箱です。

また理研も同様の計画でつくば市に建設したものの、おなじようなP4反対運動のために使用できず、今は本来の目的ではないただの遺伝子組み換え実験施設として利用されているだけです。

一部住民は「地震やテロの危険がある。ウイルスを自分の街に持ち込むな」と主張しています。公平を期するために彼らのパンフの一部を引用します。

「米軍基地(通信施設)や航空自衛隊府中基地に隣接して建設されること自体がテロの危険性があると言えます。特に、航空自衛隊府中基地は、現在航空総隊司令部があり、横田基地に移転・統合された後も支援集団司令部(輸送に関する司令部)が残るきわめて中枢機能をもつ特殊な基地です。(略)
テロの標的となる危険性が高い特殊な自衛隊基地に隣接して国立衛生研は建設されようとしているのです。昨年の新潟中越沖地震で、柏崎刈谷原発は、火災が発生、放射能漏れを引き起こし、安全性について重大な疑問を投げかけました。今に至るも操業は再開できていません。
「震度○○、マグニチュード○○までは絶対に安全」とよく言われます。しかし、過去の災害を見ても設計時の予想をはるかに超える地震や災害によって、常にその設計は再考を迫られてきました。
地震に100%安全だ、という設備や建築物は基本的にあり得ないのではないでしょうか」
http://www.hmw.or.jp/~eiseikenmondai/q_and_a.html

私にはこのようなP4反対運動の主張は既視感があります。瓦礫処理反対運動という「住民運動」がかつてありました。

この人たちは被曝してもいない宮城県の「放射性瓦礫」に怯え、焼却したことで放射能が漏れた影響て頭痛や鼻血や、ときには脱毛が見られたそうです。

こういう人たちにははっきり言ってやったほうがいいと思いますが、それは単なる妄想か心気症(※)にすぎません。

このP4反対運動の人たちも、地震のリスクを無限大に見積もり、印象操作のように「地震が来る。テロが来る」と叫んでいます。

そしてお定まりのように、無理筋で原発や安保問題を接着していきます。

いつもこのような人たちを見ると思うのですが、どうして空気に動かされるだけで、立ち止まってひとつのテーマで建設的議論をしないのでしょうか。

現在検討中の長崎大学の施設に対しても同様の反対運動がなされていますが、今回もまた「市民団体」は、「しんぶん赤旗」や共産党議員の応援を受けているようで、かの政党の影響下にあるものと思われます。

そもそも、この人たちが言うように簡単にBSL-4レベルのウイルスが住宅地に漏れるくらいなら、初めからバイオ施設として機能しません。

この人たちのパンフを読むと、長文にも関わらず、なぜBSL-4の施設が今日本に必要なのかについて言及がありません。聞く耳を持たないのです。

原発の場合は「太陽光がある」と叫んでいればよいのでしょうが、BSL-4施設には代替が存在しません。エボラと戦うには絶対にいるのです。

施設の目的を問わないで、ただひたすら自分の所に火の粉がかかるのを恐れているだけです。

危険だと言う立場もあっていいと思いますが、ならば、かえってその危機因子のトゲを一本一本抜いていき、合意を積み重ねていかねばなりません。

「うちの街にウイルスを持ち込むな」と叫んでいますが、逆に国内にエボラウイルスなどを持ち込ませないためにこそ、しっかりとした防護措置をとったBSL-4施設が必要なのです。

こういったことがわからないようでは話になりません。これではただの住民エゴと言われても仕方ありません。

しかしその議論に参加すると、「建設協力」になるからと忌避します。ですから、建設目的には踏み込みたくないのです。

これでは永久に解決するわけはありません。

おそらく、今回改めてエボラから日本を守るためにはBSL-4施設が必要だと丁寧に説明すれば、かならず大多数の地元の人達は納得してくれると思います。

しかし、今鹿児島川内市でおきているように、かならず一部の政党を背景にした人達は感情的に反対を叫ぶでしょう。

このような一握りの人々に日本人全体の健康を委ねていいのでしょうか。いいはずありません。

残念ながらかつてこんな反対運動に馴れていない国立感染症究所は、巨額の税金を投入して、閣議決定までもらいながら、あっさりと「住民の気持ちを尊重して」稼働を断念しました。

感染症研究所は、海外から襲って来るBSL-4レベルの確定診断ができないことを熟知しながら、その建設を放棄したのです。無責任のそしりをまぬがれないでしょう。

結局、一部住民のエゴと、感染症研の責任放棄の狭間に落ちて、日本で喫緊に必要とされている確定診断施設が宙に浮いたということになります。

このような事態に対しては、一独法にすぎない感染症研に任せるのではなく、政府が責任ある判断をして、稼働していない村山市とつくば市のBSL-4施設を稼働させ、長崎大学の施設の建設も急ぐべきです。

※なんかヘンだなと思ったら、扉写真落としてました(笑)。

                ~~~~~~~~~

※追記 28日朝に感染していないとの発表がありましたが、しばらく経過観察するために入院させるとのことです。もちろん簡易診断です。

※心気症 器質的身体疾患がないにも かかわらず、自身の身体状態に対して、実際以上に過度に悲観的な悩み・心配・ 思い込みを抱え続け、その結果、身体・精神・日常生活に支障を来たしてしまう精神疾患 の一つ

■エボラ熱検査 28日未明に結果判明へ 

日本テレビ系(NNN) 10月27日27日、西アフリカ・リベリアから東京・羽田空港に到着した男性に発熱症状があり、厚生労働省は、エボラ出血熱に感染しているかを含めて確認するため、男性の血液などを現在、検査している。
 関係者などによると、男性は40代のジャーナリストで、リベリアに滞在したあと27日午後、羽田空港に到着した時に発熱症状があったという。厚生労働省は、エボラ出血熱に感染しているかどうかを含め確認するため男性を都内の特定医療機関に搬送し、現在、血液などを検査していて、28日未明に検査結果が判明する予定だという。
 

■エボラ出血熱:国内検査に懸念…危険ウイルス扱えず
毎日新聞 2014年10月16日
 

 エボラ出血熱への対策が国際的な課題となっているにもかかわらず、日本では感染が疑われる患者が見つかってもウイルスを調べる体制が整っておらず、確実な診断ができないことに懸念が広がっている。危険性が高いウイルスを扱う能力を備えた施設はあるが、制度上、取り扱いが許されていないためだ。厚生労働省の担当者は「現状では感染の疑いの有無までしか調べられない」という。

 国は、ウイルスの危険度を4段階に分類し、危険度の段階に応じて扱える施設を定めている。エボラウイルスは最も危険度が高く、最高レベルの設備を有した施設でなくては扱うことができないことになっている。この制度は、世界保健機関(WHO)がウイルスの危険度「バイオセーフティーレベル」(BSL)から定めた4段階の施設基準に準じている。  

 厚労省によると、日本では約30年前、最高レベル(BSL4相当)の設備が国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)と理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)に整えられたが、地元住民の同意が得られないなどの理由から、現在も最高レベルでの運用は許可されていない。   

 このため、仮にエボラ出血熱の可能性がある患者が見つかった場合、感染研村山庁舎で患者の血液や尿、のどから採取した粘膜などを検査するが、ウイルスを取り出したり、培養したりすることは許可されておらず、確実に感染しているとの判断はできない 

 日本学術会議のメンバーとして今年3月、BSL4施設の必要性を提言した江崎孝行・岐阜大教授(病原微生物学)は「今は特効薬がなく、効果があるのか分からない薬を患者に投与している。ウイルスを培養できればいきなり人体に投与しなくても薬の効果を研究できる」と施設の重要性を指摘する。  

 感染研ウイルス第1部の西條政幸部長も、ウイルスの感染能力の有無やウイルスがどこから来たのかを調べるには、ウイルスの培養が必要という。ただ、西條部長は「万一、エボラ出血熱が国内に入ってきても準備態勢は整えてあり、制限はあるが対応はできる」と話す。

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外国任せのエボラ出血熱確定診断

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2週めのエボラ・シリーズとなりました(苦笑)。

こんなに長くなるとは思っていませんでしたが、調べてみればみるほど、ウチワがどうしたと騒いでエボラ対策など議論にもならないわが国のあまりの危機感のなさに私の方が熱が出そうです。

政治家は国民の健康を守るのが最大の使命ではないですか。

さて、ノンキに大臣の首を取るのが仕事だと思っている野党の皆さん、日本にはエボラ出血熱の確定診断を下す施設がないことをご存じでしょうか?

したがって、日本でエボラ出血熱と思われる患者が発生しても、なすすべもなく外国の検査機関に送って結果を待つしかありません。

おいおい、これでは西アフリカ並じゃていかと言われそうですが、はいそのとおりです。これは国立感染症研究所自身も認めていることです。゛ 

2014年8月15日 - 2014 Apr 16)によると、確定例の臨床症状は、発熱、下痢、嘔吐であり、検体を採取した段階では、ほとんどの症例で出血症状は認められても. 日本では国立感染症研究所 村山庁舎にグローブボックス式P4施設が1981年に設置されたが現在までBSL-4施設としては稼働されていない」(エボラ出血熱とは - 国立感染症研究所 

ですから、米国か台湾にでも送って確定診断を待つしかありません。 

行って帰って一体どのくらい時間がかかるのでしょうか。日本で発生するくらいですから、その時には米国も自国の確定診断でおおわらわで外国のものなど後回しでしょうね。 

エボラ出血熱は時間との勝負なのですか、なんと呑気なことよ。その間の確定診断が来るまでの数週間どうしているのかといえば、厚生労働省によれば、「感染疑い段階」という「みなし診断」で対策をしていくことになります。 

簡易診断ならば日本の国立感染症研究所で可能だからというわけですが、感染力が強く、患者の立ち回り先で接触した人をすべて同定して、検査せねばならない伝染病だというのに。 

もちろんこんな「みなし診断」ではしっかりした診断や防疫は不可能ですから、本格的な防疫体制を作るためにはウイルスを抽出・分離して確定診断を下す必要があります。 

ところがそのためにはBSL-4(バイオセーフティレベル)施設が絶対に必要なのですが、これがないわけです。

BSL-施設とは、現在国内で唯一建設を検討している長崎大学の説明にはこうあります。 

感染力、感染した場合の重篤性等から判断して、危険性が極めて高いと考えられる感染症の病原体を最も安全に取り扱うための設備を備え、かつ最も厳重な管理運営がなされる施設です。WHO(世界保健機関)のマニュアルにおいてリスクグループ4に分類されるエボラウイルスやラッサウイルスなどの病原体を十分な管理のもと安全に取り扱うことができ、それらに対するワクチンや診断方法、治療薬、治療方法の開発などを行うことができます長崎大学が検討するBSL-4施設について|長崎大学 

Level                           (図 長崎大学)

エボラ出血熱は、初期の段階では、インフルエンザなどと間違われやすい症状しか出ません。

先週のNYでの医師・クレング・スペンサー氏の発症例などを見るとも、潜伏期で17日空港をスルーし、22日頃から発熱、下痢の症状が出て、23日に緊急入院しています。その間に地下鉄やタクシー、ボーリング場などを使用しています。

このようにエボラ出血熱の症状は、38・6度以上の発熱、激しい頭痛、筋肉痛、脱力感、下痢、嘔吐、腹痛、原因不明の出血が上げられていますが、全部の症状が一斉に発症するわけではないから判定しにくいのわけです。 

米国で最初の感染者になったダンカン氏も、発熱程度しか症状がなかったために「なにかのウイルスを貰いましたね。はい解熱剤を出しておきますからね。お大事に」で、家に帰されてしまいました。 

この時に彼はリベリアからの帰国を病院スタッフに申告したのですが、医師に届いていなかったのです。 

最近流行ったデング熱を思い出して下さい。偶然にデング熱を知っていた医師が疑いを持って確定診断を試みたから判定できただけで、症状が発熱だけならただの「ひどい風邪」ていどで始末されていました。

今までの米国の4例をまとめてみれば、このような教訓が取り出せます。

①潜伏期では症状がでないために、空港のサーモグラフィは役に立たない。したがって、いわゆる水際防疫は不可能に等しい
②潜伏期から発症初期は発熱と下痢症状しか呈していないために、インフルエンザなどと誤診されやすい
③来院しても、病院側に受け入れ施設や医療従事者の訓練がない場合が多い

幸か不幸か、今回の米国の症例はいずれも西アフリカからの帰国者でしたから、エボラと関連づけることができました。

しかし感染者が第3国からの帰国の場合、おそらく医師はエボラだと疑うことは困難だと思われます。

防ぐ方法は、唯一疑わしきケースは、できるだけすみやかにウイルス分離をして確定診断をするしかないのです。

さもないと、「ただの風邪」と誤診されて、その間に感染者がウイルスを撒いて歩くことになり、感染拡大をすることになります。

しかし、この確定診断する施設がない、それがわが「医療先進国」・日本の現状です。いや、正確にはあるのですが、使えないのです。

このような事態で想定されることをWHO新興・再興感染症対策チームの経験を持つ村中璃子医師はこう指摘します。

エボラと確定すれば、隔離され、治療を受けることはできる。しかし、レベル4施設が正式稼働せず、エボラ治療の基本である血中のウイルス量測定すら出来ないこの国では、入院時の状態や治療の評価はおろか、「回復した」という判断を下すこともできないのだ。レベル4を正式稼働しないとは、医療者に手探りで医療を施せと言っているようなもの。患者が回復し、仮に退院できるとなっても、まだ感染源であるかのようなスティグマ(※)を押されてしまう事態も懸念される」(※スティグマ 刻印)

エボラの対処薬はあっても受け入れ病床がわずか92(※)しかなく、医師はウイルスの量的測定もできないので治療すらままならず、仮に治っても退院すらできない、いやそれどころか確定診断すらできないからなにも出来ない、「できない」尽くし、これがわが日本なのです。
※特定感染症指定医療機関http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02.html

ではなぜBSL-4施設を稼働できないのか、その理由を次回に考えていきます。

※初回アップ時の後半部分は長いので、明日に回しました(汗)。

■写真 日の出前の水平線上にたちのほるような朝日。初めは対岸の街の灯かと思いましたが、時間が立つにつれて朝日に変わっていきます。

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■死者は4922人 WHO=世界保健機関が発表
NHK2014.10.26

西アフリカを中心に感染が拡大するエボラ出血熱について、WHO=世界保健機関は25日、感染者が1万人を超えたと発表しました。
西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネを中心に患者が増え続けているエボラ出血熱について、WHOは日本時間の25日夜、最新の状況を発表しました。
それによりますと、今月23日の時点で、感染やその疑いのある人は合わせて1万141人に上り、このうち死者はマリで初めての患者となった2歳の女の子を含む4922人に上っています。
ギニア政府が今年3月にエボラ出血熱の感染拡大を報告してから7か月で感染者は1万人を超えましたが、西アフリカでは保健当局が把握しきれないケースも多く、実際の感染者の数はさらに多いとみられています。
また西アフリカでは、患者の治療に当たる医療従事者の感染も相次いでおり、WHOは感染した医療従事者は450人に上り、このうち半数以上の244人が命を落としたとしています。
エボラ出血熱のさらなる感染拡大を防ぐため、西アフリカでの医療態勢の充実に加えて、国際空港や港などでの水際対策の強化も急務となっており、WHOや各国政府は対応に追われています。

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週末写真館 怖いような旭日

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毎日のように霞ヶ浦の朝夕を撮っていても、このような怖いほど美しい朝日に遭遇することは稀です。
木星の大気のように壮大な縞のグラデーションを描きながら、天空一杯に拡がります。
大気は冷えきり、水鳥すらも声を潜めているようです。

もういつのまにか晩秋。渡り鳥が渡ってきます。

ちなみにオオハクチョウは、こんな長距離の移動をします。

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(図 宮城県で送信機を装着したオオハクチョウの移動状況(東京大学生物多様性科学研究室平成23年10月31日現在)
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/migration_route.html

一切の画像処理をしていません。ぜひクリックして大きくしてご覧ください。縦アングルは下が切れますのでご了承ください。

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米国CDC(疾病対策センター)のもうひとつの顔

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CDCとWHOは表面的には協調していますが、実態は競合関係にあります。 

既に世界でエボラウイルスに感染した医療者の数は、テキサス州の看護師の2名のケースを加えると合計実に418人。うち234人がすでに死亡していますが、WHOはそんなアブナイ場所には行きません。

WHOから派遣された「国際公務員」は、各国の首都にある空調の効いた官庁の一室に常駐して、各国の関係官とデータを収集するのが仕事です。 WHOは現実の医療支援をする組織ではないのです。

エボラウイルスの患者の血を浴びかねない修羅場に出向いて、医療行為や医療支援に携わるのは、自前のロジスティクス(物流システム)を持つ米国CDC(疾病対策センター)や「国境なき医師団」などの国際的NGOです。 

今回の感染拡大でも米国は、3000名の軍隊を派遣してCDCの支援にあたらせようとしています。 (欄外参照)

さて、CDCが伝染病の専門的知見について他国に追随を許さないのには理由があります。 

それは世界でもっとも多くのウイルスサンプルをストックし、多くの遺伝子解析をおこなっているからです。 

このエボラ出血熱のゲノム解析に成功したのもCDCで、07年に特許を申請(取得は12年)しています。各国の研究機関はCDCから提供されたデータを基にして研究しています。

ではなぜ、CDCはそんな膨大なウィルスサンプルを持っているのでしょうか? それはCDCの「もうひとつの顔」を知らねばなりません。

よくマスコミはCDCを「日本の国立感染症研究所のようなもの」と解説していますが、半分正解、半分ハズレです。 

他国の伝染病研究機関とDCDか決定的に異なるのは、CDCが生物兵器の攻撃も想定している「準軍事的」色彩を持っているからです。 

CDCに与えられた任務は、一般的な伝染病制御だけではなく、米国に対する生物兵器の攻撃を防御することです。それは冷戦期から一貫して変わりません。

冷戦期に米国は、旧ソ連に対抗してみずからも生物兵器を保持し、逆に旧ソ連の生物兵器の攻撃を恐れてABC(核、生物、化学兵器)防護を準備していました。

その「槍」に当たるのが、陸軍感染症医学研究所(ユーサムリッド/フォートデリック)で、「楯」に当たるのがCDCというわけです。

先に述べた西アフリカへの軍隊派遣されるであろう部隊には、必ずフォートデリックの生物兵器の専門家が含まれているはずです。

たとえばこのような憂鬱なシナリオがありえるかもしれません。

ボコ・ハラムはアルカイダの基地で訓練されていますが、彼らテロリストが感染国に侵入して、感染者の体液や汚物などを採取したとします。

テロリストが自爆テロを行うつもりなら自ら感染して、潜伏期間中に移動することでしょう。そして旅行者のふりをして、非感染国からドバイを経由してヨーロッパに移動します。こうすることで西アフリカからの痕跡を消せます。

そしてEU域内の警戒の薄い国から英米独などの主要国を目指します。米国の場合はメキシコなどに立ち寄ってから陸路で米国内に侵入します。

いったん国内に潜入すれば、交通機関やターミナル駅、公共施設、ショッピングモールなどでウイルスをバラまけば、あとは想像したくもありません。

とうぜん米国は、テロリストのバイオテロを想定しないほど、お人好しではありませんから、セキュリティ・レベルは上げているでしょうが、このようなテロをあらかじめ防御することは極めて困難です。

ですから、発生した場合、直ちにファビピラブルなどのような治療薬を配布して、初動制圧を図るしかないわけです。

つまり、バイオテロは「貧者の核爆弾」なのです。

このようなシナリオを想定している国が米国であり、そのためにあるのがCDCなのだということを忘れるべきではありません。

なお、日本といえば、来週に書きますが、エボラウイルスの確定判定ができるBSL-4施設すらない有り様ですから、なにをかいわんやです。

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エボラ対策で米軍3000人派遣、オバマ大統領が追加支援表明
ロイター[アトランタ/モンロビア 16日 ロイター]
 

 オバマ米大統領は16日、西アフリカで拡大しているエボラ出血熱は世界に安全保障上の脅威をもたらす可能性があるとし、3000人の軍展開を含む支援拡大を表明した。  派遣される3000人にはエンジニアや医療関係者も含まれ、もっとも被害の大きいリベリアの首都モンロビアに地域司令部を設置する計画。このほか、100床を完備した治療施設17カ所を設置するという。  

大統領は、アトランタの疾病対策センター(CDC)本部で「現実に、(エボラ熱の拡大状況は)改善するより悪化するほうが先となるだろう。だがいまなら、数えきれないほどの命を救うチャンスがまだ残っている。いま世界には、行動する責任がある」と述べた。

 

 

 

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エボラウイルスは本質的変異をしたのか?

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エボラ出血熱は、1979年のスーダンの発生以来、実に10回あまりも発生を繰り返してきました。  

いままでと違ってなぜここまで拡がっているのかについて疑問が出始めています。(図Wikipedia)

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地域内伝播が活発な国は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア(※)、セネガルなどです。 (※ナイジェリアは解除されました)

また、小規模であって伝播が中断している諸国は、ガンビア、ギニアビサウ、ベナン、南アフリカ、ケニア、サウジアラビア、スペイン、アメリカ、イギリスなどです。

これまで大規模なアウトブレイクは初めてです。
 

インフルエンザのような感染症一般にも言えることですが、ウイルス特有の変異を遂げた可能性が出てきました。 

エボラの遺伝子が変異したというStephen K. Gireなどのハーバード大学研究グループによる報告が最新号(14年9月)に載ったことをブルームバークが伝えています。(欄外参照)http://www.sciencemag.org/content/345/6202/1369.full#aff-3  

この研究の過程でエボラ出血熱で2名の研究者を失っており、論文末尾に追悼の辞が付けられています。

「その最も大きい発生でエボラ ウイルスの病気はギニア、リベリア、シエラレオネ、およびナイジェリアを通じて広がっている。 (略)感染症の最初の数週間にわたってウイルス伝達のパターンを特徴付けることができる interhost(中間宿主) と接続する遺伝的変異の急速な蓄積を観測した。
この西アフリカの亜種は2014年に中央アフリカの血統から分岐し、シエラレオネ、 ギニアからの遺伝子と交差しつつ、(略)その後、持続的なヒト-ヒト感染を呈している」(編集者サーマリー 拙訳)

つまり14年現在、西アフリカで流行しているエボラ株は、2004年5月に中央アフリカでアウトブレイクを起こしたウイルス系統のものです。  

その後にヒトや動物との間で感染を繰り返しながら、ギニアを経由してシエラレオネに到達する間に、幾つもの遺伝子変異を起こし、持続的なヒト-ヒト感染をする性質に変化した可能性があります。 

ただしこの変異の結果、エボラ・ウイルスが根本的な性格を変異させたという証拠はありません。 

たとえはその重要な指標のひとつは、空気感染できるようになったのか、という点です。現在エボラ出血熱は飛沫感染に止まっています。 

国立感染症研究所は、エボラ出血熱についてこう説明しています。

「感染したヒトの血液、分泌物、臓器、その他の体液に、創傷のある皮膚や粘膜を介して直接的接触することにより、またはそのような体液で汚染された環境への間接的接触でヒト-ヒト感染が起こる」(同研究所HP ウイルス第一部/感染症疫学センター)http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/vhf/ebora/392-encyclopedia/342-ebora-intro.html

飛沫感染と空気感染の違いは、排出された粒子が飛ぶ距離の違いです。とうぜん、粒子が小さい空気感染の方が遠くまで飛びます。 

排出された環境中での病原体の生存性が、感染力の強さに関係します。エボラウイルスは環境中では極めて不安定ですが、生存性が極めて強く、わずかの飛沫で感染を引き起こします。 

通常、飛沫感染の感染距離は1.5m前後と言われています。

感染者のくしゃみや咳によって、インフルエンザウイルスを含んだ気道分泌物の小粒子が周囲に飛び散ります。この小粒子を飛沫といい、その数は、1回のくしゃみで約200万個、咳で約10万個といわれます。粒子は比較的大きいのですが、感染者からおよそ1~1.5メートルの距離であれば、直接に周囲の人の呼吸器に侵入してウイルスの感染が起こります。また、目などの粘膜から直接侵入することもある」(サラヤ株式会社HP)

ウイルスの生存性が高まれば、空気感染の可能性が出ます。しかし現状では答えはノーだと多くの研究者は見ています。 

ウォールストリートジャーナルはこう述べています。※http://jp.wsj.com/news/articles/SB10345363700595394421004580219092919996162

「エボラ・ウイルスが絶えずその遺伝子構造を変えていることに疑いはないが、これまでのところ重大な変化が起きているとはみられていない。科学者らは、ウイルスが突然、空気感染するようになったというようなことはなく、今後もその公算は小さいと確信している。
英レディング大学のウイルス学教授、イアン・ジョーンズ博士は「エボラ・ウイルスは多かれ少なかれ(これが発見された)1976年当時と同じだ」とし、「ほとんどのウイルスは、いったん生きる形態を定めると、そのままになる」と述べた」(14年10月17日)

WHOも10月始めのアセスメントで同様の見解を発表しています。 

「エボラ・ウイルスが空気を介して人から人に容易に感染できるような形に変異する可能性があるとの見方は、エビデンスが全くない憶測だ」(同) 

またエボラ熱の感染ルートも変わっていません。

「エボラ熱は通常、感染者の体液、特に血液、排せつ物、吐しゃ物の近くにいた場合、あるいは直接触れた場合に感染する。このウイルスは―汚染された物などを通じて―間接感染することがあるが、そのリスクは低く、消毒によってリスクを低減させることができる。同ウイルスはドアノブなどの乾燥した所で数時間生きられるが、簡単に殺すことができる」(同)

これらのことから、今回の感染はよりヒト-ヒト感染をしやすい変異を起こしつつも、発見当時と本質的な変異はなされていないとみるべきでしょう。

「エボラ・ウイルスは多かれ少なかれ(これが発見された)1976年当時と同じだ」
「ほとんどのウイルスは、いったん生きる形態を定めると、そのままになる」(英レディング大学のウイルス学教授、イアン・ジョーンズ博士)

わが国のエボラ出血熱についての認識は薄く、遠い西アフリカでのアウトブレイクを、同情が混じった呑気な気分で眺めているようです。 

しかし、米国が拡大封じ込めに失敗した場合、ウイルス変異のもうひとつの特徴であるパンデミックに繋がる可能性が出現します。

米国のみならず、中東ドバイなどのハブ空港には西アフリカから大勢の人々が来訪しており、日本との便も多く飛んでいます。

備えを固めるのなら今、この時期しか残されていないにも関わらず、わが国の天下太平さには呆れるばかりです。

 

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■エボラ、流行長引けばウイルスが変異-感染力が強まる恐れ   
10月15日ブルームバーグ
 

現在西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱のウイルスは既に、従来の株とは型が異なる。  

変異が何を意味するかを科学者らは完全に理解しているわけではないが、病原体の進化が新たなリスクをもたらす可能性が一部で懸念されている。  

サイエンス誌に先月掲載された報告によれば、研究者らは今回のエボラ流行で既に300以上のウイルス突然変異を発見している。こうした変異がウイルスの感染力を強めていないかの調査を研究者らは急いでいる。  

現時点ではそれを示す科学的データはないものの、流行が長引けばヒトからヒトへの感染力が強い型にウイルスが変化するリスクは高まると、カリフォルニア大学サンフランシスコ校でエボラを研究している伝染病専門医のチャールズ・チウ氏は指摘する。      

「流行が長期間続いたり風土性のものになったりすれば、伝染力が強い型に変異しかねない。これを予測するのは困難だ」と同氏は述べた。 

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朗報!富士フィルムのエボラ薬 仏が臨床試験へ

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朗報です! 

もっとも詳細なNHKによれば、フランス政府は21日富士フィルムグループの一般名ファビピラビル、商品名「アビガン錠200mg」を正式に現地で臨床試験することに決定したそうです。(写真NHKニュース・記事欄外参照)

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ファビピラビル、商品名「アビガン」(以下ファビピラブル)は、エボラ用に作られた薬ではなく耐性型のインフルエンザに対応したものです。 

簡単に原理から説明します。インフルエンザやエボラウイルスは、遺伝物質としてRNA(リボ核酸)をもつことから、RNAウイルスと呼ばれる種類です。大きさはわずか100nm(ナノメートル1nm=10億分の1m)と超微小です。 

インフルエンザやエボラウイルスは、それ自体の身体を持ちませんから、宿主となった人の細胞をジャックします。 

いままでのウイルス研究は、ヒトの細胞膜から感染して細胞内に侵入することを防ぐことを目的にしていました。たとえば有名なインフルエンザ治療薬のタミフルなどがそうです。 

しかし、宿主細胞への侵入や脱出に関係するウイルス遺伝子には変異を起こしやすいものが多く、タミフル耐性のインフルエンザウイルスが既に出現しています。 

これに対して発想を変えてウイルスの侵入を防ごうというのが、今回のファビピラブルの考え方です。 

インフルエンザやエボラウイルスといったRNAウイルスは、DNAでなくRNAをゲノム(※1)とするウイルスです。専門用語でRNA依存性RNAポリメラーゼ(※2)というそうです。

ファビピラビルはこれを阻害することによりウイルスの増殖を抑えることができます。正式な学術名は、「RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤」というそうです。ああ長い。

元来はインフルエンザ耐性ウイルスに対して作られたものですが、原理的に同じ一本鎖マイナス鎖RNAウイルスの場合、同じ効果が得られると考えられています。

実際に、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ポリオウイルス、RSウイルス、ラッサウイルス、ノロウイルスには効果を示したという実験があるそうです。

となると同じ一本鎖RNAのエボラに効いてもなんの不思議もないわけです。

これが臨床実験で確認されれば、ウイルス変異という不確定要素はありながらも、まったく新しい地平のウイルス感染症薬剤が日本で誕生したことになります。しかも、その対応範囲はめちゃくちゃに広い!

また、ファビピラビル(え~ファビで切ってピラブルと続けてね)は大変に使い易い薬です。それは錠剤だからです。

これだと医療設備が整った病院でしか投与できなかったものが、奥地においても簡単に配布できて服用できます。

ファビピラブルを共同開発した白木公康富山大大学院医学薬学研究部教授は、感染早期の投与を強く勧めています。(欄外参照)

「白木教授によると、エボラウイルスに感染した場合、2~21日の潜伏期間を経て頭痛、嘔吐(おうと)、出血などの症状が現れる。感染から6日経過すると、体内のウイルス量が増加し、発熱や肝機能障害が起きるという。
 エボラウイルスに感染させたマウスを使った実験では、感染から6日後にファビピラビルを投与した場合、8日経過しても5匹全てのマウスが生き残った。
 一方、感染から8日後に投与したマウスは、症状に改善傾向がみられたものの、生存率は0%だった。白木教授はマウスと人間の病態は異なるとした上で「人間の場合は遅くとも、発熱が始まった日からの投与開始が望ましい」と推測する」(北日本新聞 10月16日)

白木教授によれば、感染から6日以上たつと体内ウイルスの増加によって、高熱や肝機能障害が起きてしまうために、それ以前の投与が必要だとしています。

このように感染初期でウイルスを叩くためにも、簡単に配布して服用できる錠剤タイプはまさにうってつけだったわけです。

ファビピラブルのもうひとつの有利な点は、現在日本が在庫ストックを持っていることです。

今まで現地で使われた薬剤は、本国でも未承認の試験的なものだったために在庫僅少で、あっという間に使い切ってしまいました。

しかしファピピラブルは違います。それはこの薬がそもそもインフルエンザに対して用意されて備蓄されていたためです。

現在の日本では、耐性型インフルエンザやヒト-ヒト感染が疑われる新型ウイルスのリスクは抑えられているために、ファビピラブルを使用しなくてもいいと、政府は判断しています。

したがって、薬剤として今年3月に承認されているものの、病院における投与は国が判断することになっています。

現在、富士フィルムによれば2万人分の錠剤と、30万人分の原薬を保有しているそうです。なんと頼もしい。

逆にいえは、在庫たっぷりあるわけです(笑)。しかも富士フィルムはこのエボラウイルスの凄惨な状況を考慮して、大増産をかけると宣言しています。(欄外参照)

「当社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有しています。今後、さらなる臨床使用が進む場合に備え、エボラ出血熱向けとしての「アビガン錠」の生産を11月中旬より行います。感染規模がさらに拡大した場合においても十分な量を継続的に供給可能とするため、追加生産により備えておくべきと判断いたしました」(富士フィルム10月20日)

いままでいくつかの薬剤が試験的に投与されましたが、いずれも効果を上げていないことから、ファビピラブルの西アフリカ現地での効果に期待が集まっています。

このようなことで日本が世界に貢献できるとすれば、これほど嬉しいことはありません。 

※1ゲノム 単相の細胞に含まれる全染色体をいう。 通常の生物の体細胞は、2組のゲノムをもつ。
※2 
単量体を結合させて重合体を合成する酵素DNAポリメラーゼRNAポリメラーゼ、でんぷん合成酵素

■写真 霞ヶ浦右岸の日の出です。あまりの荘厳さに私もびっくりしました。一切の画像処理はしていません。ぜひクリックして大きくしてご覧ください。

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日本企業のエボラ薬 仏が臨床試験へ
NHK
10月21日
  

エボラ出血熱の患者が増え続けている西アフリカのギニアで、医療支援を続けているフランス政府は、日本の企業が開発した薬の効果と安全性を確かめる臨床試験を現地で始めると発表しました。  

フランス政府は21日、エボラ出血熱の治療に効果が期待されている富士フイルムのグループ会社が開発した薬「ファビピラビル」について、来月中旬からギニアで臨床試験を行うと発表しました。
臨床試験をするのは、フランスの国立保健医学研究機構の研究チームで、パリで記者会見したチームのメンバーは、この薬を選んだ理由について、すでにまとまった量の薬が製造されており手に入れやすいことや、経口薬であるために投与しやすいことなどを挙げています。
  

試験は、ギニア南部の治療施設で、最初はおよそ50人の患者への投与から始めるということで、来年1月ごろには臨床試験の結果が出る見通しだとしています。
そして、薬に効果がある可能性が高いと判断されれば、2月以降さらに大規模な臨床試験を行って、効果や安全性を確かめたいとしています。
  

研究チームでは、「西アフリカで本格的に臨床試験が行われるのは初めてで、よい結果を期待している」と述べ、エボラ出血熱に有効な治療薬がない中で行われる臨床試験の結果に期待を示しました。 

ファビピラビルとは  

ファビピラビルは富士フイルムのグループ会社がインフルエンザの治療薬として開発した薬です。
エボラ出血熱の治療薬としては承認されていませんが、これまでに、西アフリカでエボラウイルスに感染したあとフランスに帰国して治療を受けた看護師や、スペインで二次感染した看護助手などに緊急の対応として投与されました。
 

フランスの看護師は退院し、スペインの看護助手も回復しつつあるということですが、治療にあたってはほかの未承認薬などと併用して投与されることも多く、この薬がエボラ出血熱に効果があるのかはまだはっきりとはしていません。 

富士フイルムは現在、この薬を2万人分保有していますが、今回の臨床試験でエボラ出血熱に対する効果や安全性が認められた場合、ほかの国からも薬の提供を求められる可能性があるとして、来月中旬から追加生産することを明らかにしています。  

有効な治療薬がない状況に変わりはない  

エボラ出血熱の患者は西アフリカを中心に増え続けており、感染やその疑いがある人はすでに9200人を超え、早ければ今週中にも、1万人を超える可能性があるとみられています。
ギニア政府がWHO=世界保健機関にエボラ出血熱の感染拡大を報告してから7か月がたちましたが、有効な治療薬がない状況に変わりはありません。
  

アメリカの企業が開発を進めている未承認薬で、一部の患者が投与後、回復したとされている「ZMapp」については、在庫がなくなったとされ、次にいつ、生産されるのか明らかになっていません。一方で、「ファビピラビル」は、富士フイルムが現時点で2万人分を保有しており、すでにまとまった量があるという利点があります。  

エボラ出血熱への効果が期待される薬の臨床試験が西アフリカで行われるのは初めてで結果が注目されています。
治療薬の開発に向けては、WHOも、イギリスのオックスフォード大学やNGOの国境なき医師団などとともに、早ければ来月にも西アフリカで臨床試験を始めたい考えで、現在、臨床試験を行う薬について検討を進めています。
  

エボラ患者に早期投与を ファビピラビル、白木富山大大学院教授が強調
北日本新聞 10月16日   

エボラ出血熱の治療薬として、各国で活用が広がる富士フイルムグループの富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」。富山化学工業とファビピラビルの共同研究に取り組んだ白木公康富山大大学院医学薬学研究部教授は、エボラ出血熱の患者の治療について「早期投与が大切だ。生存率に大きく影響する」と強調した。 

 白木教授によると、エボラウイルスに感染した場合、2~21日の潜伏期間を経て頭痛、嘔吐(おうと)、出血などの症状が現れる。感染から6日経過すると、体内のウイルス量が増加し、発熱や肝機能障害が起きるという。

 エボラウイルスに感染させたマウスを使った実験では、感染から6日後にファビピラビルを投与した場合、8日経過しても5匹全てのマウスが生き残った。

 一方、感染から8日後に投与したマウスは、症状に改善傾向がみられたものの、生存率は0%だった。白木教授はマウスと人間の病態は異なるとした上で「人間の場合は遅くとも、発熱が始まった日からの投与開始が望ましい」と推測する。
  

ファビピラビルは錠剤のため、へき地でも服用しやすいことや、耐性ウイルスができにくいというメリットも指摘。エボラ出血熱に感染し、ファビピラビルを含め複数の薬を投与されたフランス人女性看護師が回復しており「一例一例の積み重ねで有効性が評価され、世界の医療に貢献できれば喜ばしい」と話した。   

富士フイルム、エボラ熱向け薬を追加生産へ
朝日新聞2014年10月20日
 

 富士フイルムは20日、エボラ出血熱に感染した患者に緊急的に使われているインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名:ファビピラビル)」を追加生産する、と発表した。感染がさらに広がった場合に備えて、約30万人分を錠剤にするという。  

 アビガン(ファビピラビル)は富士フイルム傘下の富山化学工業が開発した。日本では3月にインフルエンザの薬として承認され、ほかの治療薬では効果が十分でない場合などに政府の要請で生産することになっている。  

 エボラ熱では未承認の薬だが、今回の感染の広がりを受けて世界保健機関(WHO)がエボラ熱にも効く可能性があるとして患者への投与を容認した。9月以降にフランスドイツなど欧州4カ国で患者に投与され、このうちフランス人の女性1人が退院した。  

 生産は11月半ばから富山市内の工場で始める。アフリカ西部のギニアで、同じ11月半ばにエボラ熱患者に対するアビガンの臨床試験が始まる予定で、富士フイルムは錠剤を現地の患者に無償で提供する方針だ。   

■「アビガン®錠200mg」のエボラ出血熱向け生産について
                                    富士フイルム株式会社
                                        2014年10月20日
 

富士フイルム株式会社(社長: 中嶋 成博)は、エボラ出血熱患者への投与拡大に備え、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(*1)(一般名:ファビピラビル、以下「アビガン錠」)をエボラ出血熱対策として海外での使用を目的とした追加生産を決定しましたのでお知らせいたします。 

「アビガン錠」は、富士フイルムグループの富山化学工業株式会社が開発した抗インフルエンザウイルス薬であり、エボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとのマウス実験の結果が公表されています。これまでに、西アフリカから欧州に緊急搬送されたエボラ出血熱患者複数人に対し、緊急対応として投与されました。これらは、緊急搬送先の政府機関および医療機関から「アビガン錠」提供の要請があり、日本政府と協議の上、応えたものです。  

11月中旬よりフランス政府とギニア政府が、ギニアでエボラ出血熱に対する「アビガン錠」の臨床試験を始める予定です。この臨床試験に対して、当社は「アビガン錠」と薬剤情報提供の要請を受け、フランス、ギニア、日本の関連当局と連携し協力していきます。 

本臨床試験で「アビガン錠」のエボラ出血熱に対する効果並びに安全性が認められた場合は、より大規模な臨床使用のための薬剤の提供要請が見込まれます。当社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有しています。今後、さらなる臨床使用が進む場合に備え、エボラ出血熱向けとしての「アビガン錠」の生産を11月中旬より行います。感染規模がさらに拡大した場合においても十分な量を継続的に供給可能とするため、追加生産により備えておくべきと判断いたしました。 

日本政府は、感染が広がるエボラ出血熱に対して、日本の企業が開発した治療に効果の見込める薬を提供する準備があることを表明しています。富士フイルムは、日本政府と協議しながら、感染者のいる各国からの要請に応えていきます。   

*1 : 「アビガン®錠200mg」:
富山化学工業株式会社が開発した薬剤で、日本で抗インフルエンザウイルス薬として平成26年3月に薬事承認を取得している。

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米国初のエボラ出血熱患者を時系列で追う

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自衛隊の派遣は、連絡官をドイツ・シュトゥットガルトの米アフリカ軍司令部に派遣するもののようです。情報収集が主任務だと思われます。西アフリカの人には不人情ですが、正直、安心しました。

さて米国疾病感染症センター (CDC)は、ダンカン氏(※)のエボラ出血熱の診断が確定した9月30日午後7時にCDC職員がアトランタからダラスに到着しています。(※トーマス・ダンカン「トーマス氏」と表記される場合もある)  

CDCは感染拡大阻止への3ステップとして、次の措置をとったと発表しています。

① 感染した患者への集中治療
②今後、患者の治療に当たる病院スタッフへの感染予防の徹底
③これまでにダンカン氏と接触し感染の可能性のある人の同定

しかし、CDCの公式発表と現実は食い違っています。時系列でダンカン氏を追ってみます。

リベリアで、結婚を間近に控えて婚約者の待つダラスに急ぐダンカン氏の前に、妊婦の娘が現れました。

彼は苦しんでいた彼女をタクシーに乗せる手伝いをします。優しい心根の青年だったのでしょう。

その瞬間に娘から彼に、エボラウイルスは乗り移っていました。

9月19日 ダンカン氏リベリアを出国する直前に、19歳の妊婦が病院行きのタクシーに乗るのを介助した。この妊婦は同日夕刻にエボラ出血熱で死亡。介助の際にダンカン氏は妊婦の血液或いは何らかの体液に触れたと思われる。
9月19日 ダンカン氏出国に際して、「エボラウイルスに感染した人に接触したことはない」と申告。帰路は、ベルギー・ブリュッセル空港及びワシントン・ダレス国際空港を経由。
9月20日 ダラスに帰国。出入国時に発熱などの症状なし。
9月24日 発熱・腹痛が始まる。
9月25日夜10時 プレスビテリアン病院救急外来を受診したが、軽症と判断され、抗生剤の処方で帰宅となった。保険がないためとも言われる。受診時にダンカン氏は病院スタッフにリベリアから渡国したことを申告した。しかし、この情報は医師に伝達されていない。
9月28日 ダンカン氏容体悪化。救急車で再びプレスビテリアン病院の救急外来を受診し、緊急入院。意識レベルは会話がかろうじてできるていどに低下。

9月30日午後1時 PCR検査(高感度なウイルス遺伝子検査法)で2回検査陽性。米国初のエボラ患者と判明。陰圧室に隔離。集中治療するが死亡。遺体は病原性を保持しているため、点滴チューブや気管挿管チューブを外すことなく、2重のプラスチック袋に埋葬され、直ちに火葬。
※ダンカン氏の婚約者など接触した可能性のある48名は現時点で陰性である。

整理すればこうなります。

エボラ感謝と接触したという自覚がないケースもあり、当人の「患者とのい接触はない」という自己申告は信用性に欠ける
潜伏期間中に空港をすり抜けることがありえる
③伝染病隔離施設がない病院に緊急外来で来院するケース
がある
エボラウイルスの訓練をされていない病院が大部分である
⑤看護師の2次感染がありえる
エボラ対策の施設、訓練が不十分な場合、病院が感染ハブになる可能性がある

の際にダンカン氏の看護をした看護師のニーナ・ファム氏と、もう一名の看護師アンバー・ビンソン氏にも院内感染を引き起こしていました。(※実名に関して、米政府は今回重大事態のために個人情報保護を解除している) 

全米看護師組合は、15日大統領に対してこのような要請書簡を公表しています。  

政府はすべての医療機関に対し、高い安全基準と対応の手順を定める必要がある」(産経10月18日)   

これには理由があります。ダンカン氏の受け入れに際して恐るべき病院側の無神経さが明らかになったためです。 

同病院の複数の看護師からの聞き取りに基づく指摘で、死亡患者は症状が出ていたが数時間も他の患者と同じ区画に置かれ、初期段階で使われた防護服は首の部分がカバーされていなかったという。組合幹部は「感染した看護師は防護手順を守らなかったと批判されたが、手順そのものが存在しなかった」と指摘している」(毎日新聞 2014年10月16日)  

組合によれば、エボラ患者が死亡した後にもカバーをかけられただけで治療室に数時間置かれ放しであり、少なくとも7人の他の患者が同じ治療室にいたといいます。

つまり、日本でいえば第一種感染症指定医療機関に隔離収容するのは状況的に無理だったにせよ、完全に他の患者と完全に隔離すべきなのにもかかわらず、病院はその措置を怠ったことになります。

病院がエボラウイルスについて無知であった、と批判されてもやむを得ないところです。もっともわが国でも、おそらくこれ以下の対応しかできないでしょうが。

2次感染者を医療従事者から出した全米看護師組合側(※)は、死亡患者の治療を担当していた看護師は、他の患者の看護も続けており、その間まったくエボラ出血熱に対して予防措置を講じていないと述べています。 ※感染した看護師は組合には加盟していなかった。 

受け入れ前の、エボラ治療に関する事前セミナーも必修ではなく、受講者も少なかったようです。

また組合側の主張では、当時ダンカン氏は「激しい下痢や嘔吐」の症状を呈しており、濃厚なエボラウイルスが嘔吐物や便などでまき散らされていたにもかかわらず、担当看護師に支給された防護服は手首と首の部分が開いているような欠陥防護服でした。 

おそらく着脱や嘔吐物の始末などの対処方法も、訓練なしのぶっつけ本番だったと思われます。

ベイラー大学病院ベイラー研究所の滝田盛仁氏は現地レポートで、病院側の発表と看護師組合の主張を比較しています。

「なぜ、病院で2次感染?――具体的にどのような作業が原因で、2人の看護師がエボラウイルスに感染したか未だ不明である。病院の説明では、2回目にトーマスさんが救急搬送されて以降、医療スタッフは全員、CDCのガイドラインに沿って、ガウンや手袋、マスクなどの血液・体液感染を想定した感染防御対策をしていたという。エボラウイルスに感染した2人の看護師は、1回目にトーマスさんが救急外来を受診した際に診療に携わっておらず、感染防御対策を開始した2回目の来院からトーマスさんの治療に当たっている。
これに対し、全米看護師連合 (National Nurses United)の調査によれば、(1)トーマスさんは救急搬送後、数時間、個室に隔離されていなかった, (2)手首や首が完全に締まらない簡易タイプのガウンが看護師に支給された, (3) 看護師を対象とした実地訓練は実施されていなかったなど、病院の受け入れ体制に不備があったと言う。病院長はトーマスさんの1度目の救急外来受診について対応のミスを認め、公式に謝罪した。現在、CDCが真相を究明中だ」
(ベイラー大学病院ベイラー研究所滝田盛仁医師Vol.239 現地レポート(2): 拡大した米国でのエボラウイルス感染)
  

なお、一回目のダンカン氏の受診について病院長は謝罪しています。リベリアからの帰国を聞きながら医師に伝えず、抗生物質ひとつ与えただけでダンカン氏を追い返したのですから、罪は深いといえます。

さてこれでCDCの不手際は終わったわけではありませんでした。まだ続きはあります。  

エボラ患者のダンカン氏を看護したふたりの看護師のひとりであるビンソン氏は、10日にダラスから中西部オハイオ州クリーブランドまで空路で移動しています。

Photo

 (図 産経新聞10月18日)

この2次感染者二人も時系列で追ってみましょう。

●10月10日(※8日という説もある) テキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院看護師アンバー・ビンソン氏はオハイオ州クリーブランドへフロンティア航空1142便で向かう。
●10月13日 同地からダラス・フォートワース行きのフロンティア航空1143便で移動。
●10月16日 ダラスからファム氏ワシントンへ移動。(便名不明)。

CDCのトーマス・フリーデン長官は、記者会見で「(ビンソン氏は)渡航すべきでなかった」と遺憾の意を表明し、同時に「彼女は嘔吐、出血といった症状を確認しておらず周囲が感染したリスクは極めて低い」と述べています。

そのダラス便に登場したときに、既にビンソン氏は37.5度の発熱をしていました。発症していたのです。

ですからこのビンソン氏の移動は爆弾をバラ撒いているのも同然なことでした。

フリーデン長官は「渡航すべきでなかった」などと責任転嫁を図っているようですが、エボラ出血熱について知識をもっていた看護師のビンソン氏は、搭乗前にCDCに問い合わせて搭乗してよいかどうかを相談しているのです。  

それに対してこともあろうに、防疫の総本山であるCDCはあっさりと許可してしまいました。重大な誤判断です。  

後にCDCフリーデン長官は、「許可すべきではなかった」と認めていますが、後の祭りでした。  

現在、この機内に居合わせた人々は厳重な監視下に置かれていますが、エボラ出血熱は最長21日間の潜伏期間がありますので、予断を許しません。  

いずれにしても、「エボラ出血熱が米国にたどり着けることはありえない」と豪語していたオバマ氏の楽観を裏切って、米国内で静かに感染拡大が拡がっているとみるかどうか、ここ数週間が山場となります。

れにしても、世界がエボラ出血熱のパンデミックに備えているこの時期に、ウチワがどうたら、天童よしみショーがこうたらと、大臣の首を取った取ったとはしゃいでいる日本のマスコミには心底うんざりします。  

                                              (続く)

■写真 霞ヶ浦のカモメの三段飛び 。クリックしてね。

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エボラ出血熱 「アメリカで広がったら日本にも来るだろう」

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いったん電力自由化を離れて、リクエストを頂戴したエボラ出血熱について考えてみましょう。実はたまたま安生正の『生存者ゼロ』を読んだばかりなので、非常にコワイ。 

さて米国CDC(疾病対策センター)は、あくまでもコンピュータシミュレーションですが、来年1月の末に最悪のケースで感染者が50万人を越える可能性があると発表しました。 

「エボラ感染50万人超の試算 最悪ケースと米疾病対策センター
[ワシントン共同]米通信社ブルームバーグなどの米メディアは20日、西アフリカで流行するエボラ出血熱の感染者数が、最悪のケースで来年1月末に50万人を超える 可能性があるとする米疾病対策センター(CDC)の試算を伝えた。
 流行の封じ込めに向けた各国の追加対策が講じられなかった場合を想定したコンピュータ 予測の結果。ただ、米国がすでに軍の3千人を動員して感染国を支援すると表明。
国連主導で各国の支援団を派遣する動きもあり、来週以降に正式公表される試算では 数字が変わる可能性がある」
 

WHOが発表した感染状況レポートによると、9月14日現在で患者5335人、死者2622人だったものが、一月足らずの10月13日現在で患者9216人、死者4555人は、わずか1カ月間で患者が3881人、死者が1933人も増えています。

国連のエボラ出血熱対策チーフは国連安全保障理事会に西アフリカからテレビ中継で出席してこう述べています。

「エボラ出血熱を今止められなかったら、世界は完全に未曽有の事態になる」「12月までの60日間に感染者の70%を療養施設に収容し、死亡者の70%を二次感染なく埋葬しなければ、感染拡大は止まらない」

これを受けて日本政府も、自衛隊の医療チームの派遣を決定したようてす。私は自衛隊の海外協力には賛成ですが、今回に限っては、大きな不安を持っています。

エボラを知り抜いた医療従事者からも死亡者がでているからです。くれぐれも気をつけて、そして万が一にもウイルスを持ち帰らないように願います。 

さて、にわかには信じがたいことには、米国にエボラが上陸しました。 

米国においてエボラ感染者が複数出ました。「複数」と書いたのは、確認されたのは3名ですが、おそらくこんな感染者数ではありえないはずだからです。 

米国はここで重大なミスをふたつしています。 

まず、9月30日、テキサス州ダラスのテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院でリベリア人男性トーマス・ダンカン氏がリベリアからの帰国を病院側に告げたにもかかわらず、帰宅を命じられて、後に重篤になり入院したものの8日に亡くなっています。 

その理由はあまりにも米国らしい理由です。

「ダンカンさんは今月8日に死亡。親類は地元紙への寄稿で、ダンカンさんは医療保険に加入おらず、支払い能力がないとみなされて帰宅させられた」(産経10月18日

この記事で親類が「医療保険がなかったため」と言っているいう「保険」とは、ア●ラックのような民間医療保険のことです。 

米国は日本のような皆保健ではなく、大部分の国民は高額な民間医療保険に入るか、無保健状態です。 

特にダンカン氏のようなリベリアからの移住者の多くは、保険がないために医療の外に置かれています。 

今回ダンカン氏は、高熱を押して病院を訪れ、リベリアから帰国した直後だと正直に告知したにもかかわらず、「お前は金がないから帰れ」と言われたわけです。 

このような米国医療の歪みが、こともあろうにエボラ感染症という局面で露になりました。 

9月中旬にオバマ大統領が誇らしげに言ったような、「エボラ出血熱の感染症は米国にたどりつくことはありえない」どころか、簡単に国境をすり抜けてしまいました

それは病院のマヌケさだけではなく、水際防御が不可能なことを教えています。

空港でできることはサーモグラフィ(※)で体温をスクリーニングするくらいしか方法がありません

しかもウイルスが潜伏期間は通常7日(最短2日、最長3週間以上)で、発症していないために高熱がでません。

したがって、感染者がこの時期に空港をすり抜けると、国内の社会にもぐり込んでしまい、もはや大海にボートを探すようなことになります。ダンカン氏のように自己申告して病院に来るほうが少ないのです。

実際、米国は8月からサーモグラフィを設置していましたが、ダンカン氏は潜伏期間内だったためにこれをパスしてしまっています

また米国においては、ダンカン氏のような移住者はエスニックコロニーに住んでいて、他の集団との接触が少ないケースも多いために、初期においては単なる風邪程度だと考えて売薬を飲むことで済ます人も多いでしょう。

似たケースに中国の新型インフルエンザがあります。中国の場合も、国民の多くを占める無保険層は症状が出ても怪しげな漢方薬で済ました結果、感染をアンダーグラウンドで拡大してしまいました。

私はダンカン氏のようなケースは複数あり、いまだ相当数の感染者が潜伏していると考えるほうが自然だと思います。

このような米国事例を見た日本のエボラ患者収容可能な医療機関の医師はこう言ったそうです。

アメリカで広がったら日本にも来るだろう。日本の医療現場で対応できるのか

日本の特定感染症指定医療機関・第一種感染症指定医療機関は、現時点で全国で45施設92床にすぎません。つまり、わずか92人しか受け入れられないということになります。

今、厚労省が取ろうとしているサーモグラフィでの空港検査はほぼまったく無意味でしょう。

そして最悪シナリオを考えると、潜伏期間中に空港をすり抜けた場合、勤勉なわが民族は多少の発熱に耐えて通勤するでしょう。

そして電車で、あるいはバスで、職場や家庭にウイルスを拡大していくことがありえます。

米国で発生した以上、西アフリカとの直行便がないだけで安心してはいけない、そのような段階になったのです。

                                                (続く) 

※サーモグラフィ 対象物から出ている赤外線放射エネルギーを検出・可視化 して、温度測定・温度計測・温度分布の画像表示を行なう装置あるいはその方法。

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週末写真館 蓮田の夕陽

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なにもかもが黄金色に輝く時間が一日に二度あります。それが早朝と夕刻です。
今回は夕陽の蓮田を撮りに行きました。壮大な夕陽のパノラマを見ると俗人の私も宗教的な気分にすらなります。
この後に来るのは、茜色の時間が続き、暗闇に沈んでいきます。

例によってクリックしていただければ、画像が拡大されます。縦アングルは上しか拡大されませんのでご了承ください。一度A3くらいで引き伸ばしてみたいなぁ。


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電力自由化にむらがる火事場泥棒たち

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では、なぜこんなデタラメなFITなどという制度を作ったのでしょうか。  

それははFITだけ見ていてはわかりません。あくまでもFITは大きな電力自由化の一部にすぎず、そのための起爆剤だからです。 

「脱原発」を錦の御旗として再エネを爆発的に普及させることで、わが国のエネルギー源の中に再エネをドイツ並に無視し得ぬ規模で位置づけてしまいます。

そのことによって大きなひずみが出るはずです。とくに大きなしわ寄せを受ける送電網は不安定になっていきます。ここまでは、既に現実になりかかっています。

目論見と違ったのは、再エネの馬脚が現れるのが早すぎたために、FITが消滅か縮小の危機にあることでしょうか。もし民主党政権ならば、それでも邁進したことでしょうが。 

そしてむしろこの再エネの不安定を理由として、ドイツが取った政策である次の一手を仕掛けて来たはずです。

それが電力の完全自由化と、再エネ支援を理由にした新たな送電網建設で、その送電網は全国をひとつにするスマートグリッドです。

現にドイツでは北海沿岸から南部まで、再エネだけのために厖大なコストをかけて長大な送電網建設をしています。

この構想の日本の代表的人物といえば、仕掛け人のひとりである某大手通信業の社長でしょうか。

彼は、東電を悪玉にして責任転嫁を図りたい憲政史上稀な愚人首相をたぶらかし、再エネこそが脱原発の切り札であるかのように持ちかけました。 

そして作らせたのが再生エネ法(再生可能エネルギー特別措置法)というFIT制度です。 

FITはご承知のように、20年間長期固定価格買い取りというトンデモ制度ですが、それは彼にとって単に取っかかりでしかありませんでした。 

某社長の器は、そこらへんのメガソーラーの分譲屋どもとは次元が違って、グレートかつグローバルという横文字なのです。あ、ホントに米国籍だったっけ(笑)。

もちろん某社長は、一番金がかかるメガソーラーから基幹線への送電線などは、ハナから電力会社に敷かせるつもりでした。(特例条項を見逃したのは痛恨だったですが) 

再エネにこだわったのは、火力、水力と較べるのも愚かなほどプラモデル並にお手軽で安上がりなのと、再エネ特有の晴れたり曇ったりによる発電量の不安定を解消するには、将来的に全国規模のスマートグリッド(※1)を導入するしか解決方法がないからです。

再エネを引き返し不能地点まで増やしてしまえば、電力の安定供給のために送電網を国が保証せねばならなくなります

送電網は高い技術と維持管理コストがかかるわりに儲かりません。だから社長にはそんなシンドイことをやる気はさらさらなく、電力会社か国に作らせるつもりでした。

しかし、電力会社が原発停止のために青息吐息ならば、いっそ送電網を全国規模で国有化してしまいます。

電力自由化の理論家であり、FITの提唱者であった飯田哲也氏は、電力自由化の理想は送電部門の国有企業化だと既にいい始めています。

理想型は、安定供給部門を一体とした一時国有化である。その上で送電事業は、東電から分離させることはもちろん、他電力会社の送電部門も統合して、全国で一体運営を目指すべきだ。すると、地域間の電力融通や自然エネルギーの拡大が可能となる」※http://diamond.jp/articles/-/12918

飯田氏はこの文の中で図々しく、「電力の安定化」を目的に挙げていますが、脱原発の旗を振って電力会社攻撃の最先鋒となり、再エネこそが救世主だくらいに叫んでFITを導入させ、電力供給を不安定にした張本人のひとりが他ならぬあなたじゃないですか。

自分で矛盾を作り出し、自分で解決方法を提示するとは、マッチポンプそのものですな。図々しいたらありゃしない。

米国では確かにスマートグリッドが普及してきましたが、その原因は電力自由化によって停電が頻発したために、電力融通をする必要があったからです。

一方日本は安定的に供給されてきましたから、そもそもこんなバカ高い買い物であるスマートグリッドを作る必然性などはなかったのです。

だからその「理由」を人為的に作ってやる必要がありました。それが再エネ法であり、そのブースターであるFITなのです。

それは送電部門が儲からない部門であり、電力自由化をしたとしても新たな企業参入が見込めず、新しい新規投資である再エネのための送電網やスマートグリッド建設をするわけがないからです。

だから税金でやらしてしまおうということです。 

そして、スマートグリッドによって念願の送電網と通信網を一体化したら、もちろんこれにタダ乗りします。 

え?送電網作りは全部他人のフンドシかって。当然でしょう。電力自由化の本質はフリーライド(ただ乗り)だからです。 

自分でやるくらいなら参入しません。「電力の公共性」に目をつけて、既存の利益構造の一角に食い込み、そのパイを強奪するのが目的だからです。 

某社長はそのために反原発を叫ぶ必要があっただけです。FITはこのような思惑の重要な一部で、電力自由化の一段目ロケット部分だったのです。

こんなハゲタカを「真の愛国者」なんて持ち上げたのが『あんぽん』を書いた佐野眞一氏ですが、その眼は節穴ですか。

今後さらに大きな「電力改革」という名の電力をめぐるショック・ドクトリン(※2)が行なわれることでしょう。 

FITは電力自由化劇場のひとつの場面にすぎないと同時に、もっとも電力自由化の醜悪さが凝縮している部分でもあるのです。 

反原発運動家の仮面を被ったハゲタカのような市場原理主義者たちのパイの取り合いの饗宴がFITであり、電力自由化の本質なのです

※1スマートグリッド
電力インフラと通信インフラを融合させた次世代のエネルギー供給システムです。通信技術を利用した制御により、電力の需要と供給のバランスを取ることで、再生可能エネルギーの有効利用と、送電ロスの低減や電力の安定供給が図れることが期待されています。また、消費者と電源とのスマートな双方向連携(デマンドレスポンス)を実現し、省エネルギーに貢献します。 (東芝HP)

 ※2ショックドクトリン 米国のナオミクラインが書いた著書の名に由来して、国家的危機や大災害を背景にして、平時なら行なえないような極端な市場原理主義的改革を行なうこと。

※佐野眞一氏の名前をミスタイプしましたので、訂正いたしました。申し訳ありません。

 

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太陽光発電 5年たったら早くも6割

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FITで噴出した問題は、脱法詐欺とラベルの貼り替えだけでは済みませんでした。

これも予想されたことですが、太陽光パネルの急激な性能劣化が生じました。  

WEDGE誌は、沖縄県糸満市市役所の太陽光パネル大規模劣化事件を報じています。 

よく町中で見るように、大規模ショッピングモールや、公共施設に太陽光パネルを張りめぐらすというのは、エコをアピールできると思うらしく大流行です。  

下の写真は、ずっしりと大量の太陽光パネルをまとった糸満市市役所です。  

Img_45a738903e4a81f08fb712c43ce6679                          (写真 WEDGE Infinity) 

糸満市HPを見るとなかなか意欲的なもので、一昔前なら全国事例として見学が殺到したような公共施設です。

「本市新庁舎においては、屋上部分に145.3kw、南壁面に50.3kw,の太陽光発電パネルが計画されており、鉄骨材及びPC材による架台で固定されている。これらは、単に太陽光発電パネルを支持するだけでなく、沖縄における強い日射を遮るシェルター・ルーバーとしての機能をもつ。
 建物の省エネルギー計画においては、建築的な省エネルギー化(熱負荷の低減)を十分に図った上で、各設備の省エネルギー化(エネルギーの効率的な利用)を図ることが望ましいと考えられる。建築的には建設地の気象条件等を考慮した断熱・日射遮蔽の最適設計を行なうことにより省エネルギー化が期待できる。本計画においては太陽光発電パネルの架台自体も建物のぺリメーターゾーン(窓際及び屋上に面する内部空間)の空調負荷(PAL)低減に役立つ」(糸満市HP)
http://www.city.itoman.lg.jp/docs/2013020104540/

これだけの施設にかかった巨額な沖縄振興予算や地方交付金を思うとややユーウツになりますが、とりあえずいいとしましょう。 

問題はむしろ、この巨大ソーラーパネルがまともに動かなかったことです。 

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                                (図 WEDGE Infinity) 

年間標準発電量を100とした場合、完成直後の03年には100を上回る発電量だものが、5年後の07年には実に6割台まで下落します。 

周辺機器の修理を2000万かけた後にはさすがに再び100を取り戻しますが、それも4年後の12年には再び6割台にまで下落しています。 

これは12年度の調査でわかったことですが、パネル内部の封止材の劣化が原因だそうです。 

沖縄電力・沖縄県宮古島のメガソーラー実証研究設備(※)においても同様の劣化が見られています。ちなみにこの設備は東芝製です。※http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20131224/324542/ 

これはPID現象と呼ばれるもので、高温高湿な気象条件で発生し、封止材が劣化して、シリコンそのものが性能低下をひき起こすためだと思われています。

PID(Potential Induced Degradation)現象とは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)などで太陽光パネル(太陽電池モジュール)を多数、直列に接続して高電圧下で運用した場合に発現する劣化現象で、発電量が大幅に低下するのが特徴。2005年に中国の太陽光パネルメーカーが初めて報告し、その後、欧米のメガソーラーで大幅に出力低下する現象が報告され問題となってきた。2010年頃からドイツの研究機関などで研究が本格化した。
 発生メカニズムについては、まだ完全に解明されているわけではないが、最近の研究から徐々に原因が分かってきた。最も有力な説では、比較的、高温高湿の条件下で、太陽電池モジュールに高電圧がかかると、ガラス基板からナトリウムイオンが封止材中に拡散して、シリコンセルの表面や内部に侵入することが原因とされている」(日経テクノロジー)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20131010/308603/ 

日本においては例年の夏のように30度を越える高温と高湿がつきものです。おそらく太陽光パネルにとって、寒冷なドイツより過酷な自然条件だと思われます。 

日本製品はPID現象を克服したとされていましたが、実態は既に設備されているパネルに欠陥が見つかってきているのが現状です。 

このPID現象自体は、そう遠くない将来には技術的に克服が可能でしょうが、既にFIT制度で大量に設備されてしまった厖大な太陽光パネルが一斉に数年後に大幅な出力低下を見る憂鬱な日は間近なようです。

ここにもまた、確実に太陽光発電を伸ばしていけば生じなかったはずのFITのひずみが見られます。

■写真 沖縄の代表的な花であるフーゲンビリアです。

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FIT メイドインジャパンはラベルだけ

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メルケルの脱原発政策が残した教訓のひとつに、FIT(全量・固定価格買い取り制度)では国内のグリーン産業が育たないという教訓があります。 

脱原発政策開始時に、ドイツの誇る世界有数の太陽光パネルの製造会社だったゾロン、ソーラーミレミアムは倒産し、世界一のシェアを持っていたはずのQセルズも市場から駆逐されてしまいました。 

これは「グリーンニューディール」を掲げた第1期オバマ政権も一緒で、大手パネル会社ソリンドラを始め、軒並み経営破綻しています。 

どこに?もちろん原因は言うまでもなく、あの中国製品のダンピング攻勢に敗北したのです。 

元来、太陽光パネルは単純な半導体デバイスでしかありません。製造プラントだけあれば、たいした技術もなしにタイ焼きのようにポンポン出来ていまいます。まさにおあつらえの中国向け工業製品だったわけです。 

中国は未熟な市場経済特有の生産調整の弁がバカになっています。 

結果、経済合理性を度外視した企業拡大に走ったあげく、倉庫には売れ残った製品が山と積まれることになります。  

自動車、家電、鉄鋼、セメント、住宅、そして太陽光パネルなと、ほとんどの業種で厖大な生産過剰に陥っています。 

太陽光パネルメーカーだけで呆れたことに十数社ありますが、最近その大手LDKソーラーも倒産し、社長は国外逃亡して行方知れず、太陽光発電資材メーカーのGCLも倒産寸前で、不良在庫ウエハーはなんと2億枚! 

パワーコンデショナー(インバーター)の世界シェア4割を握るSMAソーラーは、太陽光発電関連資材の暴落を受けて売り上げ激減で、とうとうリストラに踏み切り、株価大暴落で風前の灯火状態。  

そして最大手サンテックパワーすら倒産し、中国経済全体の信用不安の連鎖を招きました。 

これらが欧米、日本市場向け製品として叩き売られているのですから、まっとうな価格競争原理などは通用するはずがありません。 

さて、欧米よりやや遅れて始まった日本の太陽光ブームにおいて、推進議員たちは多少はこの状況を理解していたようで、「国内景気浮揚のための産業政策としてグリーン産業を育てるのだ。国産品を盛り立てる」という説明をしていました。 

しかし蓋をあければ資源エネルギー庁も認めるように「純粋な国産の比率は3割程度」に陥っています。 

しかし一方では、太陽光発電協会(JPEA)は「国産ブランド比率75%」と豪語しています。 

ずいぶんと資源エネ庁の数字とは倍以上違うようですが、これはなぜでしょうか。 

答えは簡単です。大手企業がよくやるテですが、「ラベルの貼り替え」、つまりOEM(相手先ブランド製造)をしたのです。 

ブランドだけ見れば75%が国産、しかし実は中国製OEMが大部分というのが手品の種明かしです。 

これを国内太陽光パネルのリーディング企業だったシャープが率先して行い、パナソニックも追随しました。 

日本人には、国産のほうが高性能だろうという強い思い込みがあります。 

しかし実のところ、このような既に理論的限界値がわかってるようなローテク工業製品においては中国製と日本製の性能差は想像より低いのです。 

ならば圧倒的に安い中国製に走るというのは、一面やむを得ない面もありますが、それでもOEMであっても国産にこだわる理由はむしろ金融面にあります。 

たとえば、わが国においてメガソーラー建設にはほとんどEPC契約が付随しています。 

EPC契約とはこのようなことです。

「建物や工場、発電所などの建設に関する契約の一つが、「EPC契約」である。設計( engineering)、調達(procurement)、建設(construction)を含む、建設プロジェクトの 建設工事請負契約を指す。EPCを提供すること」(日経テクノロジー)http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20131015/309062/  

このEPCサービスが、海外製品の信頼性と性能保証では難しいということで、国産品が有利と銀行などは判断しました。 

また、中国サンテックパワーの倒産がFIT開始後に来たために、金融や保証のトラブルを警戒して不信を持ったようです。 

20年間稼働させているうちにプラントが壊れた、製造会社はとっくに潰れていましたでは話になりませんからね。 

しかも、次回にふれますが、太陽光パネルは5年たたずして性能低下現象が起きることがわかっています。ならば、国産品を融資条件にするのは当然です。 

しかし、その「メイドインジャパン」の内実は、実は中国製造のOEMのラベルの貼り替えで、メイドインジャパンはラベルだけだったわけです。 

FITという歪んだ制度は、市場の需要関係を無視し、競争を排した長期間・固定買い取り制度なために、技術競争自体が存在しません 

技術が売り物の日本企業ですら技術投資を控えて、このようにOEMに走ってしまいました。 

急進的なFIT政策によって再エネを増やそうとした結果、地道に経験や技術を積み上げていけばいいものを、熱にうなされたような太陽光バブルを作り出し、粗悪品の山を築いたあげく、中国製品に征圧されてしまったというわけです。

 

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FIT終了の原因 「空枠取り」「ブローカー」「小分け」詐欺

025
経済産業省がようやくメガソーラーの新たな認定を一時停止し,既に認定した事業者の増設も凍結すると発表しました。(欄外参照)

既報のように、小渕優子経済産業相は9月26日の閣議後記者会見で、「再生エネルギーの最大限の導入に向け、あらゆる角度から検証する」と述べて有識者会議の中に専門部会を立ち上げて検討に入ると言っていますから、来年度からの大幅見直しが始まるのは確実です。

原因はFIT制度そのものが詐欺的手口の温床になっていることに、やっと資源エネ庁も気がついたというところでしょう。

「電力会社が太陽光など再生可能エネルギーを一定価格で買い取る「固定価格買い取り制度」を巡って、九州電力など電力5社が新規受け入れを停止した問題で、経済産業省は11日、大規模な太陽光発電の新規認定を一時停止する検討に入った。既存の太陽光発電事業者の新増設も凍結するなどして、太陽光発電に集中している再生エネの供給量を制限する。15日の同省審議会で固定価格買い取り制度見直しの具体化に入り、年内に方向性をまとめる」(毎日新聞10月11日)

FITの実態を知る者には遅すぎた決断ですが、今この時点ならばまだ最小限の傷で済ますことができます。

原発が停止し続け、再稼働の見通しが見えず、中東情勢の悪化に伴った原油価格の天井状態が続き、加えて円安という要素が重なると、日本のエネルギー価格は破滅的になることが予想されていただけに、ひとまずはよかったというべきでしょう。

反原発主義者の皆さんからは悪罵を投げつけられることは必至ですが、見直しがなければ再エネの健全な発展もないことを知るべきです。

さてこの記事にもありますが、FITは一部の風力を除いてほぼすべてが太陽光に集中しました。

「固定価格買い取り制度」が導入された12年7月から今年6月までに政府の認定を受けた再生エネ設備の出力は計7178万キロワット。うち大型の太陽光発電(出力10キロワット未満の住宅用以外)は6604万キロワットと約9割を占める。風力や地熱よりも事業開始手続きに時間がかからないため、再生エネの新規参入事業者は太陽光に集中してきた」(同)

実は、ドイツも太陽光には手を焼きました。スペインにも起きたこの太陽光ブームは財政を圧迫し、電気料金は高騰させたために、火消しに回らねばならなくなっています。

下のグラフは、ドイツが太陽光FIT鎮静化の特効薬である買い取り価格を下げた時に、発電量がどのように動いたのかを見たグラフです。  

Img_d42bf4a6f4c42610c366f55bdb55ac1                            (図 WEDGE Infinity)

FITが始まった09年には40ユーロセント/kW時(1ユーロ120円換算で48円)だったものが、今やその4分の1以下の10ユーロセントまで下げています。

面白いと言ってはナンですが、必ず価格が下がる時には駆け込み設置か増えます。 

グラフで飛び抜けて青い棒が飛び出している時期が設置量が急増した時期で、キッチリと買い取り価格が下がる直前に対応しています。

ニンゲンの欲には東西はないもんです。 ドイツやスペインでは、北海道様のコメントにあったように太陽光バブルが発生しました。

農家は納屋や牛舎の屋根にパネルを張りめぐらし、風力発電の出資のための市民ファンドが続々と生まれました。なぜって、そりゃ濡れ手に粟だからです。

とうぜんのことですが、わが国でも似た現象が起きています。(図 出典同)

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日本はリベラルメディアが醸成した脱原発の「空気」に酔って、42円/kW時という世界一の高額固定買い取り、おまけに20年間固定というFITという砂糖菓子を作ってしまいました。

あなたの家に電気量販店から勧誘の電話がありませんでしたか。あるいは空き地や屋根の募集のチラシは?年間200万保証などという甘い言葉が踊っていませんでしたか? 

ちなみにFIT開始当時のドイツの相場はだいたい30円くらいですから、そのていどにしておけばよかったものをと思わざるを得ません。 

事実、FIT前に参入していた業者は28円で充分にペイすると試算していました。 

さて、このバカ値は13年度3月期末で終わるというので、そこに向けてグングンと認定量が伸びているのが分かります。

そして大規模に出現したのが、制度の隙間を突く「FIT脱法詐欺」でした。WEDGE誌は「FIT脱法詐欺」の事例を報じています

法的には合法なので、「脱法詐欺」と呼ぶしかないのですが、こんないいかげんな制度を作ったほうが悪いのです。 

やり口はこうです。高値の12年度中に申請書類だけ作って、とりあえずどこかの空き地に土地を確保し、工事中ということにして申請だけ出してしまいます。認定を受ければしめたもの。 

そして、実際には監督が杜撰なことをいいことに空き地のままで放っておきます。これが「空取り」です。 

もちろん発電などはサラサラやる気などなく、「42円」を確定させて権利を得ることだけが目的ですから、これを転売してしまいます。 

これが「ブローカー」ですが、そのまま大きな敷地のままでは買い手がつかないので50kW未満の低圧連系で「小分け」します。 

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                     (写真 WEDGE Infinity)

低圧連携となると、色々とメリットがあります。まず、電気主任技術者が要りませし、電力会社系統接続の事前検討も免除されます。 

ですから、仮に1万kWのメガソーラーならば、50kW未満ギリギリの49.9kWで200件に「小分け」して販売してしまいます。 

また「小分け」にすると、本来発電事業者が負担すべき柱上変圧器等の系統対策コストが買い手である電力会社負担になってしまうそうです。 

まったく買う側の電力会社にとっては、送電線を敷く費用から、柱上変圧器からなにからを押しつけられて、甘い汁を一方的に吸われるのですからたまったものではありません。 

このようなメガソーラー分譲地は全国いたる所に発生しています。特にひどいのは太陽光発電適地と言われる九州だといいます。 

かくしてそのツケは電力会社に回り、さらに電気料金の値上げとして消費者に回って来ることになります。

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大規模太陽光:参入凍結 経産省検討、電力量を制限
毎日新聞 2014年10月11日

電力会社が太陽光など再生可能エネルギーを一定価格で買い取る「固定価格買い取り制度」を巡って、九州電力など電力5社が新規受け入れを停止した問題で、経済産業省は11日、大規模な太陽光発電の新規認定を一時停止する検討に入った。既存の太陽光発電事業者の新増設も凍結するなどして、太陽光発電に集中している再生エネの供給量を制限する。15日の同省審議会で固定価格買い取り制度見直しの具体化に入り、年内に方向性をまとめる。

 福島第1原発事故を踏まえて、政府は再生エネの導入推進を掲げてきた。固定価格買い取り制度は再生エネ発電への新規参入を促す柱と位置付けられてきたが、抜本的な見直しを迫られ、制度設計の甘さを露呈した格好だ。

 経産省は、固定価格買い取り制度を2016年度から見直す方向で検討を進め、改正法案を15年度に国会に提出する方針。政府による再生エネの認定量や買い取り額に上限を設ける総量規制や、太陽光発電の買い取り価格を引き下げるなどの見直しも検討している。認定済みの再生エネ設備の稼働を優先し、小規模な住宅用の太陽光発電の認定も継続する方向だ。風力や地熱など再生エネ全体のバランスを図る狙いもある。

 「固定価格買い取り制度」が導入された12年7月から今年6月までに政府の認定を受けた再生エネ設備の出力は計7178万キロワット。うち大型の太陽光発電(出力10キロワット未満の住宅用以外)は6604万キロワットと約9割を占める。風力や地熱よりも事業開始手続きに時間がかからないため、再生エネの新規参入事業者は太陽光に集中してきた。

 新規事業者には送電網がなく、大手電力各社が買い取りを義務付けられてきた。だが、電力各社は認定された電力をすべて受け入れると、管内の全需要を上回り、需給バランスが崩れて周波数や電圧が乱れ、大規模停電や発送電設備の故障などにつながりかねないと主張。九州のほか、北海道、東北、四国、沖縄の各電力会社が再生エネの新規受け入れを停止し、再生エネの事業者に混乱が広がっている。

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英有力紙にも失敗を宣告されたメルケルの脱原発政策その2

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中日新聞がすんばらしい論説記事を書いています。(10月13日)http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2014101202000097.html

ドイツ環境・建設・原子力安全省気候変動対策・エネルギー転換局長(←長いよ)のトーステン・ビショッフ氏という人物の大演説をまんま載せています。全編こんなかんじ。

「エネルギーベンデとは、電源の転換だけではありません。送電網も含めたエネルギーシステム全体の大転換を意味しています。
日本では、再エネの買い取り申請が増えすぎて、大手電力会社が受け入れを中断し始めた。不安定な再エネ電力が送電線に殺到すると、周波数が乱れ、停電を引き起こす恐れがある…。ドイツではできない言い訳です。
もう一つ、エネルギーベンデに欠かせないのが、電力消費者の理解でしょう。
再エネの買い取り料金が賦課されて、家庭の電気料金が値上がりしたのは確か。ところが世論調査では、ドイツ市民の九割以上が惑うことなくエネルギーベンデを支持しています。石油やガスを輸入しなくていい社会、原発事故や温暖化の心配がない未来への投資だと、割り切っているからです」

ものスゴイですね。一億火の玉ならぬ、8千万ドイツ国民は艱難辛苦をものともせずに、「石油やガスを輸入しなくていい未来」に猪突猛進しているみたいです。

「石油やガスを輸入しなくていい社会」ですって!よく言うよ、このドイツ役人。ロシアの天然ガスを切れなくて、ウクライナでおたついたのはどこの国だったんですかね。

下図はドイツの電源比率です。13年を見ると、石炭に15.4%、石炭に19.6%、天然ガスに10.5%と言ったところで、原子力すら15.4%もあります。Photo_2

つまり火力発電に45.6%、それに原子力を入れれば61%が火力・原子力由来です。このどこが「石油やガスを輸入しないでいい国」ですか(苦笑)。

しかも後述しますが、メルケルは20年までに火力発電100万キロワット級をあと10基作ると公約しているのです。

送電網の再エネによる不安定化すらこう書いているのですから爆笑ものです。もはや大戦末期の軍部の発表みたいなファナティック(※)な精神論です。

「再エネが主なリズムを奏で、他の電源がそれを補う」と表現します。送電線の中では再エネの電力が最優先、火力や原子力は常に、道を譲らなければなりません」

私が知る限りでも、ドイツの「シュピーゲル」、米国「ニューズウィーク」、そして今回の英国「フィナンシャルタイムス」などという有力媒介は、メルケルの脱原発の裏側について突っ込んだ記事を書いています。

少なくとも中日新聞のような、担当者の美辞麗句だけで記事にするような怠惰はしていません。

さてこんな「ドイッチュラント・ユーバー・アレス」(※)というような独善的傾向が強いドイツ人に対して、プラグマチストの英国人が皮肉な調子でこう述べています。

「メルケル氏の8年間の首相任期中で最悪の決断に注目が集まるのも当然だろう。それは、ドイツのエネルギー政策から原子力という選択肢を消し去るという政策判断である」 

つまりヨーロッパの周辺国は、「ドイツさん、いつそんな馬鹿な政策をやめるのかだけが、私等の関心なんですがね」と言っているわけです。大分わが国のノーテンキなマスコミとは違います。 

しかし、メルケルはあまりにも深く脱原発にのめってしまったために、大きな重荷をドイツ経済に背負わしてしまいました。 

「原子力発電をやめれば、こうした困難な事情はさらにやっかいになるだろう。」 

そのひとつは増え続ける化石燃料による発電です。 

「原発を廃止すると、国内のエネルギー需要を満たすため、より多くの石炭を燃やさなくてはならないことだ。太陽光、風力による発電はなお不安定で、ドイツは原子力の代替として化石燃料に頼らざるを得ない。発電源の25%近くを占める原子力を排除することによる石炭消費量の急増はすでに始まっている。このままでは10~15年に9基の石炭火力発電所を稼働させることになる。昨年は、とうとう石炭による発電が1990年以来の最高水準に達した」 

2011年6月9日のメルケルは首相演説でこう脱原発の方針を語っています。 

メルケル演説の骨子はこのようなものです。

供給不安をなくすために2020年までに少なくとも1000万kWの火力発電所を建設(できれば2000万)すること
②再生可能エネルギーを2020年までに35%にまで増加させること。但し、その負担額は3.5セント/kWh以下に抑えること
③太陽光や風力発電などの変動電力増加に伴う不安防止のため、約800㎞の送電網建設すること
④2022年までに全ての原子力を停止する

日本のマスコミは①から③までの火力発電初増設の部分を都合よくすっ飛ばして、④の2022年までに原発を停止」という部分のみ報道しました。 

歪曲報道とまではいいませんが、欠落報道です。実際のメルケルは、「脱原発政策をしたければ火力発電の増設しかないなのだ」と言っているのです。悪意に報道すれば、「メルケル、地球温暖化政策を放棄」と伝えるところです。 

1000万キロワットということですから、日本でも最大規模の東電鹿島火力発電所5、6号機(各00万キロワット)を10基近く建てようということです。 

800㎞の送電網もすごいですね。東京-広島間の距離に相当します。 

現実に、このメルケル演説の翌年の2012年には、化石燃料が全電源比率70%を占めてしまいました。 

この段階で原発は16%が動いていますから、原子力と火力に9割弱依存しているわけなのに、対外的には「ドイツこそ世界に冠たるエコ大国」というイメージを打ち出したのですから、たいしたタマです。 

あながち皮肉というわけはありませんが、ドイツはイメージ作りがうまい国だなと妙な感心をしてしまいます。 

しかも、火力とひと口に言っても、日本と違って低品位の国産褐色炭が半分を占める石炭火力が42%です。 

わが国のように既に国内の炭鉱部門が消滅した国と違って、ドイツは石炭部門が健在です。 

これは炭鉱部門の雇用維持が目的で支払われたもので、1958年から2002年まで1580億ユーロ(18兆円)もの補助金を出してきました。 

2006年現在でも年間3500億円という政府支出中最大の補助金枠をもっており、国内でも厳しい批判にさらされています。 

この補助金上げ底をしてもなお、ドイツ産石炭価格はロシア、東欧からの輸入石炭の3倍以上であり、徐々に輸入石炭の比率を増やしていく措置が取られています。 

ちなみに日本は先進国中でもっとも原子力に冷淡、かつ過激な「原発ゼロ政策」をとっています。結果、当然のこととしてドイツには及びませんが化石燃料に強依存しています。

と言っても、石炭依存度は16.8%(01年)で、石炭火力に対する空気汚染対策は世界最高の水準にあります。 

この辺のことを国際社会にアピールしないために、原発を6基も動かしていて石炭火力まみれのドイツと比較して「いまだ再生可能エネルギー1.6%にすぎないエコ後進国」という批判を受けている有り様です。 やれやれ。

それはさておき、フィナンシャルタイムズはこうドイツのエネルギー政策の矛盾に警告を鳴らしています。

「ドイツのエネルギー政策のパラドックス(逆説)は無視できない。ドイツは二酸化炭素(CO2)の排出量削減に取り組む一方、石炭火力発電所を増設しようとしている。太陽光にはたいして恵まれていないのに、太陽光発電に多くを託してきた。採算のとれていた原発を閉鎖する一方、フランスの原発から電力を輸入している」 

そして強い調子でこのような馬鹿げた脱原発政策を再考するように述べています。

「メルケル首相はいまでも欧州で最も有力な政治家であるかもしれない。だが、エネルギー政策の面では、矛盾によって生じた高いコスト負担を国に強いている。メルケル首相は、このやり方を考え直さなければならない

※ファナティック 他人の意見や批判を聞く余裕がないほど一途に信じる人。 冷静な判断ができないほど信じるさま。熱狂的なさま。
※ドイツ帝国国歌「世界に冠たるドイツ」の意味

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週末写真館 湖にも秋の空

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同じような写真ばかり撮っています。我ながらよく飽きないものです(苦笑)。
毎日おなじように早朝に霞ヶ浦の湖畔を巡り、湖と川、森と丘、そして空を見上げて、はっとするとシャッターを押しています。

こうして一年中定点観測のように同じ空を見上げていると、季節が変わった「瞬間」みたいなものに気がつきます。それが今です。
夏の空に猛々しく勢いよく伸びる積乱雲は完全に消えて、台風一過の空は美しい高層雲と絹雲が飾っています。

一気に高くなった空を見ると、秋を感じます。

[蛇足]
昨夜の夕方ニュースの9条ノーベル賞待望ムードはなんなんてすか。どの局も一様に早く来い来い、第9条なんですから、どっ白けました。
ある局(テレ朝?)など、わざわざ北京やソウルでインタビューまでしていました。なにを言わせたいのか、あまりにも見え見えで情けなくなります。マニラか、ハノイで聞いて来いといいたくなります(笑)。

そもそもなぜ、9条の意味を分かるはずもないノルウェーの人間たちに評価をもらわねばならないのかと護憲派は思いませんか。

憲法が日本国民のものなら、日本人がしっかり議論すべきことでしょう。私はマッカーサーに貰ったから価値がないとは思いませんし、それなりによくできた憲法だと思っています。
しかし、今やそこかしこが現状に合わなくなっています。日本人がしっかりと議論すべき時が今ではありませんか。

そう言う時に、どうして「外圧」ですか。
こういう国内政治問題を外国に持ち出して、外国の黒船効果で国内政治に圧力をかけるという手法そのものが陳腐です。
こういう手法は朝日新聞や社会民主主義勢力が一貫してやり続けた方法で、慰安婦誤報で破綻したと思ったのですが、まだ続くのですか。

憲法くらいしっかりと「外圧」を借りずに議論したいものです。

※いつものお願い。クリックして見てください。多少は違って見えます。

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英有力紙にも失敗を宣告されたメルケルの脱原発政策

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日経新聞が、最新のフィナンシャルタイムズ(2014年10月7日)のドイツの脱原発政策論評を転載していましたので、ご紹介します。 

いまだにベタベタに甘い脱原発讃歌から脱しきれていない日本マスコミを尻目に、欧米の論評のベースは、脱原発政策に対して容赦ない突き放したトーンが主流となっています。

タイトルは、「FIT・ドイツの脱原発政策は矛盾だらけ」です。

「メルケル首相の内政における判断がすべて正しかったわけではない。ドイツ経済に影が差すなか、メルケル氏の8年間の首相任期中で最悪の決断に注目が集まるのも当然だろう。それは、ドイツのエネルギー政策から原子力という選択肢を消し去るという政策判断である」  

ドイツはEUの基軸国として、今や「メルケルの第四帝国」と皮肉られるようにまでの地位についていますが、メルケルの最大の弱点はその過激な脱原発政策と見られています。 

この記事にもあるように、欧米では「いつ脱原発政策から撤退するのか」に関心が移っているようです。

いまや、再エネが前エネルギーの中に占める割合は23%で、常識的に考えればこれですら行き過ぎた数字と考えるべきなのに、メルケルはアクセルから足を離そうとしていません。 

未だ意気軒昂に、2035年までに65%に拡大させることを政策化しています。 

このしわ寄せは、国民と企業に向けられていて、沸点にちかづきつつあると欧米マスメディアは見ています。 

「一方、再生可能エネルギーを重視する政策が家計や企業の負担を大きくしている。ドイツ政府が再生可能エネルギーを発電に利用する電力会社に支払う補助金は、消費者に転嫁される。このため、ドイツ国内の電気料金は欧州平均を48%上回る」

国民はEU平均の48%、つまりは約5割にも達する高額電気料金の虜になっています。下図はドイツの電力料金の1998年から2012年までの推移を見た表です。

これには少し説明が必要でしょう。  

上図をみると、青色の発電・送電・配電コストという実費はこの10年来大きな変化はありません。

問題は、オリーブ色とグレイの再エネ法賦課金(※ドイツの場合は税金と同じ)と熱源供給型発電所促進税とアズキ色の電力税(環境税)の部分が年々重くのしかかって、電気料金を押し上げていることです。

なんとドイツでは、36.3%が各種再エネがらみの税金なのです。これで不満がでないわけがありません。

その原因は、ドイツが原発に替わる代替エネルギーとして再エネを見込んでしまい、それに累積23兆円もの過剰な補助金を投入してしまったからです。

しかも初め20年間は固定価格で全量買い上げるという再エネ法(EEG)では、再エネが通常の電気買い取り価格よりケタ違いに高く買われてきました。

特に、太陽光発電は群を抜いて高い買い上げ価格が設定されました。

これは単に高い固定価格だけではなく、いったん設定された価格を20年間の長期にわたって固定して全量買い上げるというプレミアムまでついています。

ということは、20年間電気料金は下がらないわけです。 日本はまだ始まって月日が浅いので、このFITの固定価格の累積が軽い状況です。

日本ではほとんどの人が理解していませんが、小学校算数でわかるように、FITは20年間固定買い取りなために、賦課金が毎年その分が積み重なっていきます

仮に初年度は各家庭に賦課金(※日本の場合、電気料金に上乗せ)40円とすれば、まぁこの程度で安全・安心が替えればいいやていどですが、翌年は80円、その翌年は120円という具合に増え続けると、気がついたらとんでもない金額が上乗せされます。
(※正確には毎年買い取り価格は下落しますから、必ずしもこうはなりませんが)

すから10年もすると大変なことになります。これがFITという制度の逆スライド制の底無しの怖さです。

日本においては止めるなら、まだ傷の浅い今しかないと私が思うのはそのためです。

しかしドイツではFITが長期間に渡ったために、もはや引き返し不能地点に達しています。

ドイツの平均的な所帯の電気代は年間225ユーロ(2万6550円)増加し、300ユーロ(3万5400円)を越えることが予想されています。 

特に低所得者層への影響は大きく80万所帯が電気代の滞納をし、電気を止められそうになっています。

ドイツ連邦環境庁のフラスバート長官はコメントでこう述べています。

「エネルギー政策の転換によって生じるコストは、公正に分担されなければならない」
「過剰な電力料金が貧困者を生み出すような事態になってはならない。支払い能力のない消費者に対しては国が補助金を出すべきだ」

一方企業向けはといえば、こちらも目を覆いたくなる高さで、中小企業のコストは米国の2倍に達します。これでは企業の海外転出が止まりません。

「中小企業を巡る環境はさらに厳しい。中小企業のコストはドイツが米国の2倍である。米国の中小企業の多くは低価格のシェールガスの恩恵を享受している。景気が減速する現状では、こうした負担がドイツ経済に重くのしかかる」

これもグラフで確認してみます。Photo イツがFIT(固定価格・全量買い取り制度)を開始した以前と以後を、産業用電力で比較してみます。
・1999年・・・8.51ユーロセント/kWh
・2012年・・・8.52
 

こちらも発電コストはほぼ変化はありません。一番違っているのは、賦課金と税金の類です。

・1999年賦課金・税金の計・・・0..35ユーロセント/kWh(3%)
・2012年同上        ・・・5..35(39%
 

産業界は、ドイツでの国内生産をあきらめて、別の国に逃避する企業が増えました。ドイツの化学薬品会社として世界的企業であるバイエルのマライン・デッカーズCEOはこう言っています。
エネルギー・コストの上昇が止まらないなら生産拠点を外国に移転する。」(「ニューズウィーク2011年10月31日)

これはバイエルに限らず多くの企業も考えていることです。自動車産業も米国に拠点を移す計画です。

ドイツの紡績会社では、電気料金の上昇か従業員一人あたりに換算すると年間5000ユーロ(50万円)の負担増になっている会社もあり、このままでは従業員の人件費をカットするしかないところまで追い詰められる会社が増えていきました。

繊維衣料品産業連盟のバウマン代表は、「エネルギー転換によって生じるコストは雪だるま式に膨れ上がる恐れがあり、計り知れない」として、再生可能エネルギーの助成金のために生じるEEG(FITのドイツ名)の分担金は違憲であるとの見解を表明し、提訴に踏み切りました。 

ドイツ商工会議所がドイツ産業界の1520社を対象に行なったアンケートによれば、エネルギー・コストと供給不安を理由にして、5分の1の約300社が国外に出て行ったか、出て行くことを考えているという衝撃的数字が出ました。

●ドイツ産業界へのエネルギーコストによる影響のアンケート結果
・「生産が減少または大きく減少する」           ・・・72.8%
・「国内における設備投資が減少または大きく減少する」・・・55.3%
・「海外における設備投資が増加または大きく増加する」・・・38.9%
・「収益が減少または大きく減少する」           ・・・96.5%
  

産業界は、ドイツでの国内生産をあきらめて、別の国に逃避する企業が増えました。ドイツの化学薬品会社として世界的企業であるバイエルのマライン・デッカーズCEOはこう言っています。
エネルギー・コストの上昇が止まらないなら生産拠点を外国に移転する。」(「ニューズウィーク2011年10月31日)
 

これはバイエルに限らず多くの企業も考えていることです。自動車産業も中国や米国に拠点を移す計画です。 

このように再エネの大量導入による産業基盤の弱体化により、ドイツ経済はリーマンショック以来の深刻な状況が続いています。

最近のドイツの経済指標は異例なほどさえない。今週発表された8月の製造業受注と鉱工業生産は、世界金融危機が最も深刻だった2009年以降で最大の落ち込みだった。
IFO経済研究所の業況指数も5カ月連続で低下しており、9月のドイツ製造業購買担当者景気指数(PMI)はこの1年3カ月で初めて活動縮小を示す水準になった。
7日にはIMFがドイツの今年の成長率見通しを1.9%から1.4%に、来年も1.7%から1.5%にそれぞれ引き下げた」(この部分のみロイター2014年10月9日)

ドイツの場合、一国だけに影響が止まらず、EU域内全体に暗い影を投げかけているために、域内国は「メルケルさん、早く脱原発道楽をやめてくれ」というのが本心です。 

このようなドイツの脱原発政策の現状を、日本のマスコミはまったく伝えず、いまだに「再エネを妨害し、再稼働に走る電力業界はけしからん」と言っているのですから、周回遅れもいいところです。

                                            (続く)

お詫び 同じ統計を重複しましたので、一方を削除しました。

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エネルギー問題をイデオロギー論争の場にした反原発派

021
前回お話したように、日本の電力各社が、再エネの接続拒否、あるいは制限に踏み出しました。 

政府も再エネの見直しに入るようですから、日本でも再エネ導入が増加すると、電力供給は宿命的に不安定になっていくという世界常識がやっと少しは認知されてきたようです。  

いや、太陽光は夜間でも発電するんだ、風力は風がなくても大丈夫さぁ、という人はどうぞそのまま信じていて下さい。(笑)  

問題は再エネの恒常性のなさが、再エネだけの世界で終わらないことです。再エネが発電能力が高いか、低いかという発電能力はとりあえずいいとしましょう。 

太陽光が理論的限界値に既に達していることもいいとします。問題はそこではないのです。

再エネの最大の欠陥は、他の電源に対して激しいしわ寄せをして、送電網を大きく歪ませていることです。このことをマスコミはまったく報じてきませんでした。

実際、どのように再エネは系統送電網に組み込まれているのかを示す珍しいグラフがあります。下の図は太陽光が増加したスペインの需給運用のグラフです。(資源エネルギー庁作成)

Photo_2図 「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」電力改革研究会より)

この図は、実際に再生可能エネルギーの増減と、他の電源の発電の増減を見たグラフです。
 

図左の赤い楕円部分に注目ください。夜間の電力需要が少ない時間帯に、こともあろうに強風が吹いたのか風力(薄緑)が突然ブンブンとプロペラを回し始めたようです。 

風力の黄緑色が突然増えたために、黄色のガス発電がシュワッチとばかりに発電をほとんど停止してしまっています。 

これは一時に大量の電気を送電網に流されると、ヒューズが飛んだような状態になって送電線がパンクし、大規模停電になるからです。 

逆に、一番電気が欲しい夕飯の支度の時間に、けしからんことに風が止まってしまったようです。 

夜6時から9時(図右端)には風が止んだために、今度はガス火力が27基総動員で発電をかけています。

電力自由化以前の時代ならば、仮に東電なら「ああ、自社の浮島太陽光からの発電が増えてきたな、では火力を減らそうか」というふうに融通が効きます。 

これが自分の発電所なら我慢もできようものでしょうが、発電は発電会社、送電は送電会社、小売りは小売り販売となると、まぁ他社の事情など知ったことかというふうに思って当然です。 

送電網は中央制御でランプアップ・ダウンします。スペインはCECRE (再生可能エネルギーコントロールセンター)で、ドイツは連邦ネットワーク庁が調整しています。

その連携がミリ秒遅れるケースがドイツで頻発しました。その結果起きるのが、瞬間停電です。

ドイツの「シュピーゲル」誌はこう述べています。

ドイツ産業エネルギー企業 (VIK) の調査では、過去3年間にドイツの電力網の短い中断の回数は 29 %です

メルケル首相の脱原発路線が始まって3年間で、電圧や周波数の変動、瞬間停電などが約30%ほど増加しました。安定した電力供給の質が低下したために製造業は混乱しています。

企業の大部分は緊急用蓄電池や発動機を準備しており、その費用も多額に昇ります。

その緊急対策をとっても、ミリ秒といった瞬間停電は避けられず、コンピュータ制御の機械が工程の途中で停止したために製品をオシャカにすることもたびたび起こっています。

ご承知のようにコンピュータは、ミリ秒の停電でも強制終了してしまうからです。

ドイツからは既に企業の海外逃避が始まっており、この状況が改善されないとこの傾向には歯止めがかからない状況です。

ドイツ商工会議所のアンケートでは、60%の企業が瞬間停電や電圧変動などを恐れていると回答し、電力供給の不安定さからドイツ国外へ工場移転した企業がすでに9%、さらに移転計画中が6%ほどあるということです。

瞬間停電など、放射能禍と較べたらという暴論があるようですが、違います。

もし、脱原発をしたいのなら、このような具体的問題をひとつひとつあらかじめ検討して、解決案を作っておく必要があるのです。

それを考えないでムード的に 再エネを増加させると、ドイツのように産業全体の基盤が揺らぐのです

こんな風任せ、天気任せの再エネを、どこぞの党は2050年までに8割なんて公約していました。 

300%無理です。というか、そんなことをしたら日本は工業国からすべり落ちます。 

再エネほうが高くつくとか、いや安いといったコストだけの議論に止まっていますが、もっと重大なことは、再エネが火力による出力調整があって成り立つ非自立的電源なことです。 

こんないびつな尻ぬぐいの構造を許してしまうと、火力発電の設備稼働率は、再生可能エネルギーを受け入れた分だけ低くならざるを得ず、電力料金が高止まりしてしまうのです。 

再エネと原発はそもそもなんの関係もありませんでした。フィーリングでこの両者を結びつけたのが反原発運動でした。 

再エネがナチュラルでカッコイイというだけの感覚的理由で、原発の代替エネルギーにするという妄想に走ったのが、福島事故後の「空気」でした。 

なにも再エネのことを知らないのに、自然エネルギーがこの人たちが好きな言葉で言えば「オルタナティブな世界」を切り開いてくれると錯覚したのです。

「空気」はやがて硬直したイデオロギーに変化していきました。再エネに対する批判をすれば、「原発推進派だ」といわれるのですから、議論になりません。

エネルギーは重要な社会インフラである以上、そんなイデオロギーに支配されれば社会が打撃を受けます。

現に電力会社は再エネの接続制限によって大事な送電網を守ろうとしています。

しかし、これは「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」で免責されているにもかかわらず、原発再稼働するためだろうとバッシングを受けるはめになっています。

反原発機関紙の東京新聞などは前からこう書いていました。

「ライバルの再生エネの普及を遅らせ、原発の再稼働に固執する大半の大手電力にとって、これは当然かもしれない。(略)空き容量の有無や新規の電線敷設などが必要なのか、については大手電力の言いなりがまかり通っている。言い値の接続工費も含め、検証する政府や第三者の機関が必要ではないのか」

東京新聞さん、検証機関が必要なのは再エネ法のほうですよ。この現実を見てまだ目が醒めないのですか。

電力会社を絶対悪、再エネ業者を絶対善、前者が横暴な権力者、後者を可憐な被害者の如く描くこと自体が、もはや客観報道ではなく、ただのプロパガンダなのです。

とまれ私から見れば、再エネなどたかだか本筋の原発とは関係のない電源選択の問題にすぎません。

再エネなんて気難しい電源ではなく、広瀬隆氏もご推奨のガスコンバインド・サイクルなどに転換したほうが現実的なのにと思いますが、どうにも融通の効かない人たちのようです。

これもイデオロギーの所産でしょうか。

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FIT 世にも安直なビジネスモデルの破綻

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(昨日より続く)

こんなFIT(全量固定価格買い取り制度)のような制度が「脱原発先進国」ドイツにたまたまあったから模倣しろと言ったお調子者がいたわけですが、家元のドイツですら、日本で導入した当座には財政上の理由から足抜けを模索していたといった代物でした。 

全量ということは裏返せば、電力供給の義務がないというオソロシイことを意味します。 

いままでの電力供給体制は、年間の需給見通しに従って、しっかりとした発電量をキープしてきました。それが電力会社の義務だったからです。 

電気は生ものですから、作りすきても、足りなくても困ります。リアルタイムで必要な消費電力量に合わせて発電所を止めたり、動かしたりし、送電網を日夜保守し続けていたわけです。

このような厳しい送電義務が課されてこその地域独占制度であり、総括原価方式だったわけです。

この電力会社の「権利と義務」をはずしてしまって、ただ電気さえ再エネで作ればいいよ、とやってしまえばどうなるのか、たぶんこの制度設計者はまったく考えてみなかったのでしょう。

再エネの根本的な欠陥は、お天道様が機嫌がよければ沢山発電し、曇ったり雨ならばまったく発電しないということです。

下図は東電浮島太陽光発電所の発電状況のグラフですが、12時頃をピークとして崖型に発電量が推移するのがわかります。

ちなみにこの日は3月という太陽光のベストシーズンで、しかも 好天に恵まれた春うららの一日で、発電波形は理想的なパターンを描いています。 

ひどい日には、フライパン型や、ノコギリ型などはザラです。この理想型でも朝6時以前と夕方4時以降はまったく発電をしなくなります。曇と雨ならただの箱です。

Photo

こんな3歳の子供でも分かることを、ちっとも考えなかったほうがおかしいですね。

飯田哲也氏は専門家としてそれをわかっていましたから、スーパーグリッドで、晴れた地方の電気を曇った地方に瞬時に切り換えて持ってくるのだ、などと説明していました。

当時から思っていましたか、誰が作るんでしょうね、これが根本問題なのです。

飯田氏ははっきり財源は言っていなかったようですが、おそらく公共投資として一部の再エネ業者のため日本を縦断した櫛形大規模送電網を作ると構想していたはずです。

それが飯田氏のモデルにしていたドイツがやったことだからです。ドイツは風力発電所が多くある北海沿岸から、南の工業地帯まで大規模送電網を、再エネだけのために敷こうとして苦労しています。

2009年にドイツ政府は、「送電網拡充法」を立てて、再生可能エネルギーに必要な送電網を計画したところ実に総延長1807キロにも及び、かかる費用は570億ユーロ(1ユーロ=118円換算で6兆7260億円)という莫大なものになりました。

ドイツはそれまでにFITだけで累積23兆円税金(賦課金)として投入していますから、この新送電網と合わせて実に再エネだけに約30兆円をつぎ込んだことになります。

これだけのヨーロッパの中規模国の国家予算規模を再エネだけに湯水のようにをつぎ込んで、ドイツの再エネ比率は22%しか達成されていないのです。

ドイツ人は、他のヨーロッパ人から、「規律正しく狂う」と呼ばれているそうですが、まさに。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-3002.html

こんなものを今の日本で誰が作るのでしょう。後に触れますが、それを再エネ発電業者自身がやってくれるのなら、なんの問題もなかったのです。

しかし、発送電分離・電力自由化をしてしまえば、送電網は送電網の会社が作ることになりますから 、送電網会社はそんな馬鹿な出費はするわけがありません。

したがって、「誰が作るのか」という根本問題を考えなかったスーパーグリッドなど、日本でできるはずがないのです。税金で作れ、などと言わないでくださいよ、飯田さん。 

いっそ発電ゼロならば、初から電力会社は再エネなんて期待していないのですから、火力の出力を高めればいいだけです。

問題はむしろ今回の九電のように「作りすぎ」のほうです。 しかも瞬間的にオーバーフローですから始末におえない。

風力もそうですが、いったん風が吹き出したり、天気がよくなれば、作りたい放題で発電計画なんかありゃしませんから、ドッと送電網に電力を流し込んできてすました顔です。 

すると送電網に突如過剰な電力が流し込まれた買電側は容量オーバーを起こして、逆に大規模停電の原因になります。

FIT以前なら系統送電網に流してもなんとか済む程度の量だったのですが、これが東北地域で予定されている1140万キロワットにもなると冗談ではすみません。

れが、天気に左右されて、ドッときたかと思えば、なくなるという繰り返しを発作的に繰り返すのですから、買電側は悲鳴を上げました。 

九州電力は再エネ発電を申請どおりに受けると送電容量超過、東北電力なども9割まで近づいているそうです。 

ならば、「電力会社が送電網を増強すればいいじゃないか、買い取りは義務だぞ」、と勝手なことを言うのが再エネ業者たちです。

一方、「なを言っていやがる。自分でやれ、できなきゃ買わない」というのが電力会社です。 

だって、送電網の増強と言うのはカンタン、現実には数兆円のコストがかかってしまいます。 

主力電源の原発を止められて、その維持費だけで数百億円の赤字。その上にこの原油高、円安で経営基盤すら傾いている電力業界にそんな余力はありません。 

もし再エネのためだけに送電網増強をするならば、またもや電力料金の値上げに頼るしかなくなり、国民や企業の負担がまた増えてしまうわけです。 

そもそも、今の日本に必要なのは、突如ガバッと増える瞬間発電量ではありません。淡々と同じだけの定められた計画発電量をキープする恒常的電源なのです。

天気がよければできる、風が吹けば回るようないいかげんな再エネには、そんな電源インフラを支える力はないのです。 

とまれ、よくもこんなデタラメな制度をデッチ上げたものです。FIT制度などという民主党政権の最後ッペを清算する時期に入ったということは確かです。 

それができないなら、再エネ業者に送電網コストの負担を義務づけをするしかありません。

消費者に平等にかかって、しかも年々重くなる賦課金の問題もしたいのですが、別の機会に譲ります。

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とうとうFIT制度が爆発した

006
台風の目に入るという珍しい体験をしました。と言っても、いわれなければわからないくらいに突然暴風雨が止んで、静かになるだけなんですが、妙なものです。

おかげさまで被害はありませんでした。ご心配ありがとうございました。

さて九州電力が、9月25日から再エネの固定買い取り制度を止めたというので、バッシングされているようです。

「再エネという脱原発エネルギーに歯向かうのかぁ。電力会社は原発再稼働を優先する準備を始めたゾォ!」と、説明会に集まった人たちは叫んだそうです。

ホントは原発にはなんの関係もないのに、そんな調子で報道したマスコミも多かったみたいですね。 

日経新聞(9月25日)は電力会社が再エネの接続を制限したことを、こう冷静に伝えていますので、要約しておきます。(欄外参照)

・東北電が太陽光発電設備から購入する電力出力は8月末時点105万キロワット達する
・国が新潟県を含む東北7県で設備認定した再生エネ出力は5月末1149万キロワットに達した
・京セラなどは長崎県離島で43万キロワットのメガソーラーを検討中だが、送電網への接続が最大課題
・再生エネ急拡大に送電網能力が追いつかない事態は他の電力会社でも発生
・東京電力は群馬、栃木など5県の一部で太陽光発電設備などの送電線接続を制限

九電が今回の措置に踏み切ったのは、直接には京セラの45万キロワットのメガソーラー建設が直接のきっかけでしょう。

こんなバカデカイものをつなげられては、送電網がもたないということでしょう。

東北電も同日に同じ判断をかけ、東電も一部地域での受け付け制限、四国電力も同じく一部地域の制限です。 

興味深いのは、原発がない沖縄電力すら再エネの接続を保留に決めたことです。沖電も「電力の安定供給」を理由としています。http://www.okiden.co.jp/shared/pdf/news_release/2014/140930.pdf

沖電が言うように「順次完成すれば、天候による発電量の急な増減を吸収できず電力の安定供給に影響を及ぼす恐れがある」(日経同上)ということに尽きます。

電力の安定供給を脅かすような再生エネ買取らないというだけのことで、原発とはなんの関係もありません

9月26日に政府は、この電力会社の見直しの動きを受けて、政府は再エネ特別措置法の3年ごとの見直し期限である2017年頃より、早まって手を打つようです。 

小渕優子経済産業相は26日の閣議後記者会見で「再生エネルギーの最大限の導入に向け、あらゆる角度から検証する」と述べたようで、有識者会議の中に専門部会を立ち上げて検討に入るようです。 

やっと菅直人氏が「オレを辞めさせたければ」と、彼になんとかして首相から辞めてもらいたかった与野党を脅してまで作った、この再エネ法にもメスか入るようです。 

よく電力の自由化と簡単に言いますが、小売りなどはカンタンですが、送電は孫正義氏が言うように経営的にうま味がありません。

送電網は日本の山がちな地形では、急峻な斜面に鉄塔を立てねばならず、その建設と保守には多大なコストと専門知識が要求されます。

再エネでも特に買い取り価格が一番高かった太陽光には異業種が大挙して押し寄せて、ちょっとしたブームになりました。 

その理由は、一にも二にも法外な買い取り価格があったからです。経済合理性を無視して、価格決定委員会で時の首相の権力を笠に着た孫正義氏が42円を強硬に主張しました。 

しかもなんと20年間継続して同じ価格で買い取ろうというのですから、当時の首相閣下のように頭のネジが飛んだ制度だといえるでしょう。 

しかも、火力発電所を作れとか言うなら、大変な投資や゛環境アセスが必要ですが、ペラペラのそこらで投げ売りしている中国製の太陽光パネルを、プラモデルでも作るようにポンポンとつなぎ合わせ、ただ同然の土地に作れば一丁上がりというのですからエグイ。 

あとは申請して許可されれば、売電側、つまり既製の電力会社に、「買ってくれよォ」と言いさえすればよかったわけです。

その上、申請だけして行政から割り当てをもらったら、その資格を転売したりする悪徳業者が大量にいたというのでニュースネタにもなりました。

ああ、なんという安直なビジネスモデルがあったもんでしょうか。濡れ手に泡とはこのことです。なにが「地球に優しいエコロジー」だか(苦笑)。  

じゃんじゃん作るだけ作っても、全量買い取ることが売電側に義務化されているわけですから、中国人バイヤーまでが札束掴んで、送電線近くの空き地を買い漁りに走るという現象が全国各地で起きました。

わが村にも、「遊休地高価借り上げます。エコ発電事業予定」なんてチラシが何度も舞い込みました。遊んでいた県の複合団地にはメガソーラーができています。

まさに太陽光バブル狂想曲ですが、法外な買い取り価格だけじゃなくてまだ特典はありました。

それが今問題となっている全量固定買い取りです。

「電気を作れば、作っただけ20年間、黙って全部買いますよォ」、なんていうのですから、この制度作った人の頭は大丈夫だったんでしょうか。あ、菅直人氏だったっけね(爆笑)

                                               (続く) 

:               ;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+

■再エネ受け入れを九電が拒否、東北電も保留
日経新聞9月25日
  

東北電力の海輪誠社長は25日の記者会見で、再生可能エネルギーの発電事業者からの送電網への接続申し込みについて回答を保留する検討を始めたことを明らかにした。九州電力が同日から回答保留を始めた九州では、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の開発を計画していた事業者などに戸惑いが広がっている。   

 東北電が外部の太陽光発電設備から購入する電力の出力は8月末時点で105万キロワット。これに対し、国が新潟県を含む東北7県で設備認定した再生エネ施設全体の出力は5月末で1149万キロワットに達する。順次完成すれば、天候による発電量の急な増減を吸収できず電力の安定供給に影響を及ぼす恐れがある 

 再生エネの固定価格買い取り制度を使った売電を前提にしていた発電事業者は計画変更を迫られることになりそうだ。京セラなどは長崎県の離島で世界最大級の出力43万キロワットのメガソーラーの事業化を検討中。送電網への接続が最大の課題に浮上し「協力する各企業と連携し、九電と協議していきたい」(京セラ)と話す。九州で複数のメガソーラーを計画中のソフトバンクも「計画変更を余儀なくされるかもしれない」と警戒する。   

 再生エネの急拡大に送電網の能力が追いつかない事態は他の電力会社でも起きている。東京電力は群馬、栃木など5県の一部で太陽光発電設備などの送電線接続を制限している。送電網の拡充支援や買い取り制度の見直しが必要になりそうだ。

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東電は貞観地震を無視していたのか?

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前回、記事のテーマがズレるので、いったんアップしてから割愛した東電と貞観地震の部分をまとめました。 

あの11年夏の世間の「空気」を覚えていますか?飯田哲也氏や古賀茂明氏などのようなゴリゴリの反原発論者が、あたりまえの顔をして昼のワイドショーでコメンテイターをしていたものです。 

ネット界など、反原発と東電処罰論一色。東電を擁護することはおろか、風評被害に対して冷静にと呼びかけた私など、「この東電の手先め。いくら貰った」と言われてしまう時代でした。 

当時の「世論」は、東電こそ極悪の巨大企業で、事故の原因のすべては東電と、それまでの自民党の原子力政策にあると決めつけていました。なにせ当時の首相自らが音頭取って世論を煽っているんですから、コワイですよ(苦笑)。 

一方、電力会社の言い分を冷静に聞く空気はまったくありませんでした。 

特に東電が非難されたのは、例の撤退論と貞観地震の大津波を知りながら、それを無視したという罪状です。 

貞観地震時の津波はいつしか田原総一郎氏のように「十数mあった」という俗説に変わっています。 

「俗説」と私が呼ぶのは、そんなデータは存在しないにもかかわらず、「10数m説」が一人歩きしているからです。少し検証してみましょう。  

まず、前提として先日述べたように、元地震予知学会会長の島崎邦彦氏が告白するように、地震予知「理論が根本から間違っていた」ような事態でした。

地震学会の常識では、宮城県沖のような「古いプレート」は沈み込まないとされていたからです。にもかかわらず、大きく沈み込んでマグネチュード9の大地震を引き起こしました。  

これを事前に「予知」し得たのは、日本で極めて少数の専門家しかいませんでした。おそらく私が知る限りでは数人です。  

そのひとりが産業技術総研の活断層・地震研究センターの岡村行信氏で、氏は、佐竹健治氏らの『石巻・仙台平野における869年の貞観津波の数値シミュレーション』を参考にして、マグネチュード8.5クラスの地震が、仙台よりさらに南に、つまり宮城沖まで来る可能性を指摘していました。(※「地震・津波・地質・地盤合同ワーキンググループ」第32回会議・09年6月24日)  

しかし、これをもって地震学会全体が警告を発したかというとまったくそういうことはなく、2013年3月11日午後2時46分の運命の時間まで、誰しも考えもしなかったわけです。 

ただし、この09年の岡村提言を活かしておれば、というのは、おそらく当時東電本社で原子力設備管理部長をしていた吉田昌郎氏にとって痛恨であったことは間違いないことでしょう。

公開された調書のなかで、冷静な吉田氏が色をなして怒っているのが、この貞観地震対策の部分だったことでも分かります。 

この岡村氏の説を根拠にして、東電は貞観地震を知っていながら無視したという批判がなされ、さらに菅氏主導の東電撤退論が重なって東電=悪玉論へと肥大していきます。  

さて、東電は、この貞観地震について無視していたわけではありませんでした。東電の政府事故調への証言によると、東電はこのような津波の調査をしています。 

まず、2006年9月に安全委員会の耐震設計審査指針が改定されました。  

2002年7月の地震調査委員会は、三陸沖から房総沖にかけての日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの地震が起きた場合、福島県沖で10m超の地震津波を想定していました。 

東電は福島第1、第2、女川(※女川は東北電力管轄)などの原発に津波が到達する可能性を探るために、現地の地質学調査を実施しています。  

それによると、2009年から10年にかけて、東電は福島県内の5箇所で貞観地震の津波堆積物現実に調査しており、南相馬市で高さ3mの地点では地震による堆積砂が見られたが、4m地点ではなかったために、貞観地震の津波は最大で4m以下と推定されました。  

これでわかるように、東電は貞観地震の津波の影響調査をしており、それが数百年のスパンの周期であるために、すぐに対策を立てる必要のある危険とは判断しなかったのです。  

869年に起きた貞観地震の周期は推定で約1100年という超長期スパンです。  

東電はこれを無視したと言って非難されているわけですが、11世紀スパンの周期ですので、何十年も、時には百年単位の誤差が生じてあたりまえで、30年以内の確率は0.1%でした。 

東電が0.1%の確率を想定していなかったと言って、どうして責められねばならないのでしょうか。 

しかしだからといって、私は東電が無謬であるなどとは思いません。 

同じ津波を浴びた女川原発が高台を削らずにいたために助かったことなども考えると、建設用地を15m削ってしまったのは明らかに津波が来る可能性を甘く想定した判断だと言われても仕方がないでしょう。 

吉田氏は政府事故調の証言で津波対策についてこう述べています。

「それが10(メートル)だと言われれば10(メートル)でもいいし、13(メートル)なら13(メートル)でもいいんですけれど、こう言う津波が来るよという具体的なモデルと波の形をもらえなければ、何の設計もできないわけです。ちょっとでもというのは、どこがちょっとなのだという話になるわけです」

確かに、吉田氏が言うように、津波の「波源の場所、波の高さ、あるいはその形状などが、施設の設計に使えるように具体的にモデル化されていないでは具体的対処をしようがないではないか」、という指摘は企業のリスク管理としては間違っていません。

企業は計量化できる脅威に対して、それを排除するための対策を構築するものだからです。

いつか、どこかに、規模すら不明なものが「来る可能性がある」と言われても、対処しようがないのです。 

しかし、あくまでも結果論を承知で言うのですが、もう少し突っ込んだ対応が東電側にあれば、防波堤の嵩上げという大工事は出来ずとも、配電盤、予備ディーゼルエンジンの高所への付け替えていどの簡単な防護対策が取れたのではないかというのも、私の偽らざる感想ではあります。 

この貞観地震に対する東電の判断は、今回の御嶽山噴火について気象庁がレベル1設定をなぜ、噴火口から1キロ付近までの入山を禁じるレベル2に引き上げられなかったのか、という問題に似たものを感じます。 

つまり、私の結論としては誤りではなかったが、最善ではなかったということではないでしょうか。 

 

■写真 なにかよくわからないかもしれませんが、実は早朝のソバ畑です。 

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週末写真館 宇品港の朝

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広島に所用があって出かけてきました。たまたま宿泊した知人宅が宇品港のそばだったので、数キロ先の港まで毎朝通って歩き回りました。 

広島名物の路面電車の道をてくてくと歩きます。人気のない見知らぬ街というのもいいもの。まだライトを点けた路面電車が動いています。広島カープのデカイ広告もいいですね。私もファンになりそうです。 

着いた瀬戸内の朝の港は、いつも見慣れている霞ヶ浦とはまた違った素晴らしさがあります。多くの島々が美しく霞み、その間を漁船や連絡船が行き交います。 この宇品港(広島港)から宮島などに連絡船が出ています。

ふと見ると港の端のバースに、巨大な自動車運番船がタッグボートを従えてゆっくりと接岸していくところでした。少年のように岸壁に着くまで追いかけてしまいました。

そのうち日本全国の写真旅行でもしたいものです。いつになることやら。

クリックして大きくしてご覧ください。

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「予知」という幻想を捨てて、国土強靱化の一環として観測体制を整備しろ

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御嶽山の噴火は大惨事になりました。心よりご冥福をお祈りします。

さて、このような痛ましい事故死があると、必ず噴火や地震の「予知」が可能なはずなのにといわんばかりのマスコミがいます。

確かに地震より噴火のほうが、火山性微動を直前になれば把握することが可能だと言われていますが、今回も「平常」をあらわす「警戒レベル1」で噴火しています。

御嶽山は、全国にある110の活火山のうち、活動が活発な火山として選ばれて恒常的観測を行なう23の火山に含まれています。

「気象庁は今月上旬から、やや活発な地震動を観測していたが、過去の噴火データが乏しく、噴火につながると判断できなかった。噴火の明確な前兆となる地殻変動なども探知されなかった」(読売新聞9月28日) 

また気象庁が、爆発の前兆を捉えたのも直前の山全体の膨張を傾斜計が捉えたのが最初でした。爆発したのはそのわずか7分後のことです。(欄外参照)

これでは警報を出すどころではありません。

火山観測は、いまだ充実しているとは言い難く、しっかりした観測体制は、鹿児島県桜島と長野・群馬県境の浅間山などに限られています。

同じく、万が一の事態で避難するシェルターも一部を除いて整備には手かつけられていません。

なまじ「火山噴火予知連」というい名だけはリッパな組織があるために幻想を抱きますが、これではおみくじていどの期待しか持てないのが現状でしょう。 

地震や噴火の「予知」には、国から多額な補助金が出るからといってやたら組織名称に「予知」を被せるのはやめてほしいものです。 

一方地震は、気象庁も素直に認めるように、現状で地震予知が「ひょっとしてできるかなぁ、でもなぁ自信ねぇよな」ていどの範囲にかろうじて入っているのは、観測体制が整備された東海地震くらいなものです。  

つまりは、日本において東日本大震災クラスの大地震すら予知する能力はなかったということです。

きっぱりと「予知できる」などという幻想は、あくまで現時点ではですが、捨てましょう。 

元国立極地圏研究所所長の島村英紀氏は、「地震予知はウソだらけ」の中でこのように述べています。

「地震の予知は短期の天気予報と違う。それは地震は、地下で岩の中に力が蓄えられていって、やがて大地震が起きることを扱える方程式は、まだないからである。つまり天気のように数値的に計算しようがないのである。その上、データも地中のものはなく、地表のものだけである。これでは天気予報なみのことができるはずがない」

ですから、「わからない」ということを前提として観測体制の整備を整えていくことになるのではないでしょうか。

矛盾しているようですが、安易に「予知」という言葉を濫用せずに、幻想を捨てて徹底的に国土強靱化計画の一環として地震・火山噴火の観測体制を見直して、整備する必要があります。 

それを忘れて、「予知できなかった」「予知できたはずだ」というのはいいかげんやめたらいかがでしょうか。 まったく建設的ではありません。

■お断り 初稿にあった東電の貞観地震の津波堆積砂調査の部分は、切り離して別途に掲載します。よくやるんだよな、オレは。すいません。

■写真 朝もやの田園 小さいとなんだか心霊写真みたいなので、クリックして見てください。

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気象庁によると、山体の変化を観測したのは、山頂の南東3キロに設置した、地面の傾きを精密に測ることができる傾斜計という装置。噴火前の27日午前11時45分から山体が膨らみ始め、7分後の52分には沈下に転じていた。膨らんだ状態が沈んだ状態に変わった52分に噴火が始まったとみている。
 噴火直前にはこのほかに、11時41分から
火山性微動が発生している。ただ、頂上付近の火山性地震は9月上旬にいったん増えた後減少し、マグマの上昇を示すような山体の大きな膨らみも観測されなかったため、北川貞之火山課長は「前兆をとらえ予知するのは難しかった」と説明している。予知連も今回の噴火を「突発的に起こることが多く、予知は非常に難しい」(藤井会長)とされる水蒸気噴火と認定している」
(朝日新聞9月29日)

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地震・噴火予知は出来るのか? 東日本大震災を例にして

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火山の噴火や地震が起きるたびに、ほとんど法則的に起きるマスコミ論評が「避けられたはずだ」「予知できたはずだ」というものがあります。

このような議論を私は「はずだ論」と呼んでいますが、今かまびすしいのは、川内原発に桜島の溶岩流が流れ込む「危険を否定できない という一部の火山学者の意見があるからです。

これを報じたのは、またあのテレ朝の報ステです。

つい最近も川内原発がらみで火山と竜巻の評価を間違えた上に、田中委員長の発言を意図的にねじ曲げて報道して、社長謝罪に追い込まれました。親会社と同じ捏造体質のようですね。※http://www.sankei.com/entertainments/news/140930/ent1409300007-n1.html

こんな「危険を否定できない」という言い方を、さんざん聞いたことがあります。例の低線量被曝の「危険を否定できない」論でした。

100ベクレル以下の低線量域での発癌などの健康被害は、ないか、無視し得るものなのにも関わらず、一部の学者とマスコミは「危険を否定できない」という言い方で恐怖を宣伝し続けました。低線量被曝の健康被害が確率論であることを逆手にとって、「危険の可能性がある」という言い方です。

現実には他のリスクに紛れ込んで無視しえるノイズていどの「危険」であっても、このような人にかかるとあたかも無限大の「危険」に膨張します。

それがあの「美味しんぼ」事件につながっていきますが、雁屋哲氏は登場人物に「福島は人が住める場所ではなくなった。避難する勇気を持て」と煽動し、地元自治体から猛反発を受けました。

反原発運動にはこのような詭弁論理が多すぎます。確かに「可能性」としては残るわけで、科学には100%がない以上、「危険は残る」わけです。

ですから、こういう表現をとって「危険」を必要以上に煽る学者を、私はあまり信用しません。

この学者たちに言わせると、姶良(あいら)カルデラは桜島を含む錦江湾全体が、かつて海底爆発してできたということです。「昔」といっても、ほんの3万年前のことです(笑)。

地球科学がやたらと時間スパンが大きいのはわかっていますが、それで「爆発することを否定できない」と言われてもねぇ。

これについて、田中俊一規制委員長がこうクールに言っています。

「最近の研究によりますと、カルデラ噴火の場合には噴火の数十年前くらいからマグマの大量の蓄積があるということです。当然地殻変動とか何かっていうことが察知できるというふうに判断されています」(2014年8月25日議事録【PDF:416KB】 - 原子力規制委員会

私がこのテの「はずだ論」に大変に懐疑的なのは、マグネチュード9の東日本大震災といった最大級の大地震すらまったく予知できなかったことです。

あるいは、御嶽山の噴火すら分からなかった連中が、3万年前に南九州一円を火砕流や火山灰で覆い尽くしたという姶良カルデラの巨大爆発の再来をどうして予知できるのでしょうか

すいません、失笑してしまいました。

京都大学の平原和朗教授は東日本大震災について、正直にこう言っています。 

「マグネチュード9は衝撃的だった。宮城県沖で想定していたものよりはるかに越え、イメージさえ出来なかった」(朝日新2012年4月11日) 

イメージすら出来なかったのですから、予知など何をか況んやです。 

後に原子力規制委員会の代表代理になる、地震予知連絡会会長の島崎邦彦氏もこう言って地震学の無力さを告白しています。 

「三陸沖の基本的な想定の枠組みが根本から間違っていた。ここでマグネチュード9はないと考えていた」(朝日新聞2012年4月12日)

ここで島崎氏が、地震学の根本理論すら間違っていたと言っていることに注目してください。 

これは現代地震学が依拠するプレート・テクニクス理論によれば、大地震を引き起こすプレートの沈み込みは「若いプレート」であるチリ沖やアラスカ沖でしか起きないというものでした。 

ですから、「古いプレート」である日本海溝沿いの宮城県沖で「発生するはずがない」わけでした。 

しかし現実には起きてしまったわけで、いかに地震学というのが結果論の学問なのかわかります。

つまり、起きたことは説明できるが、これから起きることを予知する学問水準にはないという冷厳たる事実です。

だから、「危険を否定できない」というようなあいまいな表現で煽ることも可能ですし、逆に現場のリスク管理としては無視してかまわないという判断もありえるわけです。 

ところが、福島事故の後に、菅政権主導で始まる東電叩きで、もっとも大きく糾弾されたのが、「東電の地震想定に甘さがあった」というものでした。 

それは、福島事故人為説をとる反原発派が唱えたもので、東電は貞観地震を知りながら対策を怠っていたというものです。 

これについて、当時東電本社で地震対策に当たっていた、他でもない吉田昌郎所長は、調書の中でこう答えています。http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=82849 

―女川原発では869年の貞観津波を考慮している。第1原発ではどうだったか。
 「福島県沖の波源(津波の発生源)というのは今までもなかったですから(略)」
―別の原発で貞観津波を考えているのに、第1原発で考えないのはおかしいとは思わないか。
 「貞観津波を起こした地震よりももっと大きなものが来たわけですから。日本の地震学者、津波学者の誰があそこにマグニチュード9が来るということを事前に言っていたんですか。貞観津波を考えた先生たちもマグニチュード9は考えていないです(略)」
 「貞観津波の波源で考えたときに、うちの敷地は3メートルか4メートルぐらいしか来ないから、これは今の基準で十分もつという判断を1回しているわけです」
 

吉田氏の口調には怒りすらこもっています。少し補足しましょう。 

ひとつは、地震学者の9割9分が、日本海溝沿いの宮城県沖では、マグネチュード9クラスの大地震は発生しないと断言していたことです。 

これは先に述べた地震予知学会会長の島崎氏が告白するように、地震予知「理論が根本から間違っていた」ような事態でした。 

これを「予知」し得たのは、日本で極めて少数の専門家しかいませんでした。そのひとりが産業技術総研の活断層・地震研究センターの岡村行信氏でした。 

岡村氏は、佐竹健治氏らの『石巻・仙台平野における869年の貞観津波の数値シミュレーション』を参考にして、マグネチュード8.5クラスの地震が、仙台よりさらに南に、つまり宮城沖まで来る可能性を指摘していました
(「地震・津波・地質・地盤合同ワーキンググループ」第32回会議・09年6月24日)
 

これを震災後に根拠にして、東電は貞観地震を知っていながら無視したという批判が盛んになされるようになります。

しかし東電は吉田氏が調書で反論しているように、手をこまねいてばかりいたわけではありませんでした。

長くなりましたので、それは次回に。

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噴火と地震の「予知」について

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御嶽山の噴火で痛ましい死者が大勢出ました。ご冥福をお祈りします。
 

さて、噴火の予知できなかったというので、ずいぶん騒いでいる人がいますね。不思議なことにというか、思ったとおりというか、だいたい反原発の皆さんのようです。 

川内原発再稼働と桜島を引っかけたいようです。 

まぁ、オスプレイを今回の噴火に関連づけている(←ホント)「9条の会会員」もいらっしゃるようなので、なんとかと膏薬はなんにでもつくというヤツですね。http://pbs.twimg.com/media/ByhNfEtCIAArBh-.jpg 

マスコミは、地震がこれだけ起きていたのになんで入山規制をしないのだ、気象庁は予知ができたはずだと書いていましたが、そんなに簡単じゃありません。

AFPはこう報じています。

「岐阜県と長野県の県境にある御嶽山の突然の噴火について、フランスの火山学者、ジャックマリー・バルダンツェフ氏(パリ第11大学)は28日、非常にまれな現象で、事前に対応策を講じることは不可能だったとAFPに語った」
」(9月29日AFP)

これが妥当な火山学者の意見だと思われます。 

今回はまだ全容は解明されていませんが、水蒸気爆発だと思われていますが、先ほどのバルダンツェフ教授によれば、このようなメカニズムです。

「「火山の内部には地下水がたまっていることがある。マグマが上昇すると、その熱で地下水が急速に気化し、圧力鍋のように火山内部で高圧が発生する。この圧力が地表の抵抗力よりも強ければ、岩石が全て断片状に粉砕され、火山弾となって飛散する」(同)

このような噴火は、発生前に明確な兆候があまりないそうです。ですから状況的には突発的に噴火したように感じられます。 

現状の火山学では、火山内の状況が急激に変化するために、「現在の地震感知器では「残念ながらどうすることもできない」と指摘しています。

噴火予知は、地震より簡単だとされています。噴火は測定危機の性能向上と、活火山の24時間監視によって一定程度可能ですが、地震はそうはいきません。 

地震は、場所、時間、大きさを予知せねば難しいからです。

「地震を予知するということは、地震の起こる時、場所、大きさの三つの要素を精度よく限定して予測することです。例えば「(時)一年以内に、(場所)日本の内陸部で、(大きさ)マグニチュード5の地震が起こる」というようなあいまいな予測や、毎日起きているマグニチュード4程度以下の小さな地震を予測するような場合はたいてい当たりますが、それは情報としての価値はあまりないと考えます
少なくとも「(時)一週間以内に、(場所)東京直下で、(大きさ)マグニチュード6~7の地震が発生する」というように限定されている必要があります。時を限定するためには、地震の予測される地域で科学的な観測が十分に行われ、常時監視体制が整っていることが欠かせません。そのような体制が整っていて予知のできる可能性があるのは、現在のところ(場所)駿河湾付近からその沖合いを震源とする、(大きさ)マグニチュード8クラスのいわゆる「東海地震」だけです。それ以外の地震については直前に予知できるほど現在の科学技術が進んでいません。」
気象庁-地震予知について-太字引用者 

地震が活断層によるものだというのは、一面事実ですが、いくら活断層だといっても、地震の時に動かない限り問題にはなりません。 

というのは、日本の地層は掘ればそこらじゅうになんらかの地層の「ズレ」があるからです。 

それが活断層だったり、破砕帯だったりするのですが、地震時に問題になるだけで、その上で私たちは平和に暮らしているわけです。 

つまり「10年以内に地震が起こる可能性はナン%です」ていどの大きな網はかけられても、1週間以内に起きるか起きないかなどは誰もわからないのです。 

よく東大地震研のなんとか先生が、南海トラフの巨大地震も30年以内に60~70%の確率で起こるとなどと「予知」しますが、先ほどの気象庁に言わせれば、そんなことは「予知」ではなく「予言」だということです。 

もちろん、観測精度を上げることや、活火山を中心に観測体制をもっと整備していかねばなりませんが、「そのていど」のものだということを頭に置いておいたほうがいいでしょう。 

今回、気象庁が予知をなぜできなかったと責められていますが、気象庁は9月16日に、9月10日からの火山性地震について「警戒するように」と呼びかけていました。 

「予知」はできていたわけですが、だからといってといって入山規制まで取るか取らないかは、自治体行政の判断です。 

つまり、気象庁の「予知」に基づいて、今のような観光シーズンに入山規制を出すか、出さないかは科学の「外」の判断なのです。 

予知がはずれたことによる多大な経済的損失と、それでもなおそのリスクを取るかは自治体の判断責任なのです。 

噴火や地震には大きなブレというか、「幅」があり、それを承知で現実の防災にどう役立てるかは政治の領域の問題だということをわきまえましょう。 

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