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2014年10月 9日 (木)

エネルギー問題をイデオロギー論争の場にした反原発派

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前回お話したように、日本の電力各社が、再エネの接続拒否、あるいは制限に踏み出しました。 

政府も再エネの見直しに入るようですから、日本でも再エネ導入が増加すると、電力供給は宿命的に不安定になっていくという世界常識がやっと少しは認知されてきたようです。  

いや、太陽光は夜間でも発電するんだ、風力は風がなくても大丈夫さぁ、という人はどうぞそのまま信じていて下さい。(笑)  

問題は再エネの恒常性のなさが、再エネだけの世界で終わらないことです。再エネが発電能力が高いか、低いかという発電能力はとりあえずいいとしましょう。 

太陽光が理論的限界値に既に達していることもいいとします。問題はそこではないのです。

再エネの最大の欠陥は、他の電源に対して激しいしわ寄せをして、送電網を大きく歪ませていることです。このことをマスコミはまったく報じてきませんでした。

実際、どのように再エネは系統送電網に組み込まれているのかを示す珍しいグラフがあります。下の図は太陽光が増加したスペインの需給運用のグラフです。(資源エネルギー庁作成)

Photo_2図 「容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える」電力改革研究会より)

この図は、実際に再生可能エネルギーの増減と、他の電源の発電の増減を見たグラフです。
 

図左の赤い楕円部分に注目ください。夜間の電力需要が少ない時間帯に、こともあろうに強風が吹いたのか風力(薄緑)が突然ブンブンとプロペラを回し始めたようです。 

風力の黄緑色が突然増えたために、黄色のガス発電がシュワッチとばかりに発電をほとんど停止してしまっています。 

これは一時に大量の電気を送電網に流されると、ヒューズが飛んだような状態になって送電線がパンクし、大規模停電になるからです。 

逆に、一番電気が欲しい夕飯の支度の時間に、けしからんことに風が止まってしまったようです。 

夜6時から9時(図右端)には風が止んだために、今度はガス火力が27基総動員で発電をかけています。

電力自由化以前の時代ならば、仮に東電なら「ああ、自社の浮島太陽光からの発電が増えてきたな、では火力を減らそうか」というふうに融通が効きます。 

これが自分の発電所なら我慢もできようものでしょうが、発電は発電会社、送電は送電会社、小売りは小売り販売となると、まぁ他社の事情など知ったことかというふうに思って当然です。 

送電網は中央制御でランプアップ・ダウンします。スペインはCECRE (再生可能エネルギーコントロールセンター)で、ドイツは連邦ネットワーク庁が調整しています。

その連携がミリ秒遅れるケースがドイツで頻発しました。その結果起きるのが、瞬間停電です。

ドイツの「シュピーゲル」誌はこう述べています。

ドイツ産業エネルギー企業 (VIK) の調査では、過去3年間にドイツの電力網の短い中断の回数は 29 %です

メルケル首相の脱原発路線が始まって3年間で、電圧や周波数の変動、瞬間停電などが約30%ほど増加しました。安定した電力供給の質が低下したために製造業は混乱しています。

企業の大部分は緊急用蓄電池や発動機を準備しており、その費用も多額に昇ります。

その緊急対策をとっても、ミリ秒といった瞬間停電は避けられず、コンピュータ制御の機械が工程の途中で停止したために製品をオシャカにすることもたびたび起こっています。

ご承知のようにコンピュータは、ミリ秒の停電でも強制終了してしまうからです。

ドイツからは既に企業の海外逃避が始まっており、この状況が改善されないとこの傾向には歯止めがかからない状況です。

ドイツ商工会議所のアンケートでは、60%の企業が瞬間停電や電圧変動などを恐れていると回答し、電力供給の不安定さからドイツ国外へ工場移転した企業がすでに9%、さらに移転計画中が6%ほどあるということです。

瞬間停電など、放射能禍と較べたらという暴論があるようですが、違います。

もし、脱原発をしたいのなら、このような具体的問題をひとつひとつあらかじめ検討して、解決案を作っておく必要があるのです。

それを考えないでムード的に 再エネを増加させると、ドイツのように産業全体の基盤が揺らぐのです

こんな風任せ、天気任せの再エネを、どこぞの党は2050年までに8割なんて公約していました。 

300%無理です。というか、そんなことをしたら日本は工業国からすべり落ちます。 

再エネほうが高くつくとか、いや安いといったコストだけの議論に止まっていますが、もっと重大なことは、再エネが火力による出力調整があって成り立つ非自立的電源なことです。 

こんないびつな尻ぬぐいの構造を許してしまうと、火力発電の設備稼働率は、再生可能エネルギーを受け入れた分だけ低くならざるを得ず、電力料金が高止まりしてしまうのです。 

再エネと原発はそもそもなんの関係もありませんでした。フィーリングでこの両者を結びつけたのが反原発運動でした。 

再エネがナチュラルでカッコイイというだけの感覚的理由で、原発の代替エネルギーにするという妄想に走ったのが、福島事故後の「空気」でした。 

なにも再エネのことを知らないのに、自然エネルギーがこの人たちが好きな言葉で言えば「オルタナティブな世界」を切り開いてくれると錯覚したのです。

「空気」はやがて硬直したイデオロギーに変化していきました。再エネに対する批判をすれば、「原発推進派だ」といわれるのですから、議論になりません。

エネルギーは重要な社会インフラである以上、そんなイデオロギーに支配されれば社会が打撃を受けます。

現に電力会社は再エネの接続制限によって大事な送電網を守ろうとしています。

しかし、これは「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」で免責されているにもかかわらず、原発再稼働するためだろうとバッシングを受けるはめになっています。

反原発機関紙の東京新聞などは前からこう書いていました。

「ライバルの再生エネの普及を遅らせ、原発の再稼働に固執する大半の大手電力にとって、これは当然かもしれない。(略)空き容量の有無や新規の電線敷設などが必要なのか、については大手電力の言いなりがまかり通っている。言い値の接続工費も含め、検証する政府や第三者の機関が必要ではないのか」

東京新聞さん、検証機関が必要なのは再エネ法のほうですよ。この現実を見てまだ目が醒めないのですか。

電力会社を絶対悪、再エネ業者を絶対善、前者が横暴な権力者、後者を可憐な被害者の如く描くこと自体が、もはや客観報道ではなく、ただのプロパガンダなのです。

とまれ私から見れば、再エネなどたかだか本筋の原発とは関係のない電源選択の問題にすぎません。

再エネなんて気難しい電源ではなく、広瀬隆氏もご推奨のガスコンバインド・サイクルなどに転換したほうが現実的なのにと思いますが、どうにも融通の効かない人たちのようです。

これもイデオロギーの所産でしょうか。

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コメント

とても勉強になりました。

風力発電や太陽光発電が、風まかせお天道さんまかせであることは
承知していましたが、その我が儘な振る舞いの尻ぬぐいを
火力発電などが賄うことになるわけですか。なるほど。
発電にとって「恒常性」が必須条件であることがよく理解できました。

>電力会社を絶対悪、再エネ業者を絶対善、
>前者が横暴な権力者、後者を可憐な被害者

どこかで聞いたことのあるロジックだなあと思ったら、
思い出しました、日本共産党だ。

 大企業=悪、中小零細企業=善
 金持ち=性悪、貧乏人=清廉

というやつですな。(笑)

とても勉強になりました!
この内容が新聞やニュースに載るといいなと思いました。
心に響きましたありがとうございます。

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