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2014年10月30日 (木)

WHOの無能・無気力・無責任

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エボラ出血熱が年12月にザイールで発生して以来、途中で米CDCが加わったといえど、その闘いは国境なき医師団(MSF)という一NGOが一身に担ってきました。  

MSFは、実に計16人の医療従事者がエボラ熱に感染し、うち9人が死亡しています。いかにMSFが感染現場に密着し、人々を死の淵から救い上げたのかがわかって胸が詰まります。 

今月になってNYで感染が確認された患者も、MSFの一員として、最前線で戦った若き医師でした。

では、肝心の多くの予算と「国際公務員」という特権を享受しているはずのWHOの姿は、どこに消えたのでしょうか。

CNNやニューズウィークは相次いで、AP通信のWHOの内部文書報道を取り上げています。米国でこのような追随報道が出るのは、裏が取れたということです。(欄外参照)

「AP通信が内部文書の内容として伝えたところによると、WHOは『エボラ熱対応にかかわった者はほぼ全員、明らかな予兆を見逃していた』『事態は最悪の状況に向かって進行していた』との認識を示し、西アフリカでの発生以降、拡大阻止の機会を逃してきた経緯を振り返っている。
伝統的な伝染病封じ込め作戦がこの地域では通用しないことに、WHOの専門家は気付いていなかったとも指摘している。
同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた」(CNN10月19日)

事実CDCなどから「感染者数を少ない見積もりすぎている。事実はその倍だ」などの痛烈な批判を浴びているのは事実です。

今回は「エボラ対策を助けるどころか妨げになっている」と現地の保健当局や支援団体から批判されているというのです。ひとことで言えば、いないほうがましということになります。

WHOは、これは内部文書の下書きだと弁明していますが、下書きだろうとなんだろうと、このようなWHOの評価は西アフリカ現地の医療関係者の間では定着しているということにほかなりません。

WHOは明らかな初動ミスをしています。それは余りに感染規模を少なく見積もったために、限られた人員と予算しか組まなかったために、そのために初動制圧に失敗し、感染を拡げてしまいました。

つまり、WHOは危機管理においてしてはならないといわれる、「楽観論で見積もり、悲観論で実施する」ことをしたのです。

そのひとつの原因はWHO内部の硬直した官僚主義だ、とニューズウィーク(10月28日)は伝えています。 

アフリカ各国の事務所長の人選は、アフリカ担当部長の好き勝手に左右されたために、独立王国となってしまっています。 

その上に、マーガレット・チャン事務局長は指導力が欠如した上に、アフリカに進出が著しく、大きな利害関係を持つ中国の利害に影響されているとの指摘もあります。 

02(写真 ニューズウィーク10月28日 パンギムン氏とマーガレット・チャン氏の凍えるようなツーショット。チャン氏のファッションセンスもまた底冷えしそう。辞めた大臣みたいに勝負カラーなんだろうか)

 「同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた」(CNN)http://blog.livedoor.jp/fukokukyouhei/archives/15240665.html 

では、これも時系列で今回のエボラ出血熱の動きをみてみましょう。 

2013年12月6日 ギニアで最初の患者が死亡
●14年3月20日(※以下同年)ギニア保健省 2月9日の時点で病名不明の患者36名が罹患、うち23名死亡
●3月23日 ギニアの患者、仏政府リヨン研究所でエボラと確定診断。罹患80人、死亡59人
3月23日 ギニア政府WHOにエボラの発生を通告し、WHOがエボラの発生を宣言
●3月25日~29日 ギニア東部に拡大。モーリタニア国境制限(29日に完全閉鎖)
●28日 EU50万ドルを拠出
●30日 西アフリカ諸国経済共同体から2.5万ドル拠出
●31日 米国CDCチーム5名を派遣
●4月1日 サウジ、ギニア、リベリアからの巡礼のビザ交付を停止
●4月16日 欧州モバイル研究所の移動検査室で07年のコンゴ株と97%同一と判定
●5月27日 シェラレオネで発生
●6月17日 リビア、モロビアで7名発生
6月23日国境なき医師団、制御不能と発表
●6月26日WHOレスポンス強化と発表
●7月中 シェラレオネ全域に拡大
●8月1日 マーガレットチャン事務局長、西アフリカ諸国大統領とエボラ対策強化を話し合い
※WHOの活動は8月から始まる
 

13年12月6日に発生して、3月23日にフランスリヨン研究所でエボラと確定診断されるまでの3カ月間、感染現場で孤軍奮闘してのは国境なき医師団です。 

それに遅れて3月31日に米国CDCが加わります。 

では記事冒頭の問いに戻りましょう。昨年12月から今年3月までというもっとも重要な感染初期に、WHOは何をしていたのでしょうか?

なにもしていません。漫然とフランス政府の確定診断を受けて、3月23日に発生を宣言しただけです。 

ここからさらに無駄に時間は費やされ、拡大がギニアの国境を越えて西アフリカ全体へと拡がる状況に、とうとう6月23日に国境なき医師団が「制御不能」を宣告します。 

これを聞いて3日後にWHOはあわてふためいて「レスポンスの強化」を発表しますか、具体的には担当官を派遣して情報収集する程度だったと思われます。

第一「レスポンス」とはなんなのでしょう。「応答の強化」ということでしょうが、いかにエボラ発生現地の情報をここまで火が広がるまで無視してきたのかバレてしまう台詞です。 

そしてこの国際公務員たちは、現地に出かけても首都のクーラーの効いた部屋に閉じこもって、感染現場で医療支援をすることはありません。 

この後、エボラはどんどんと拡大を続けてとうとう7月にはナイジェリアでも発生をみます。 

つまり、発生国がリビア、モロビア、シェラレオネ、リベリア、ナイジェリアなど複数国にまたがったわけです。 

このような状況が、NGOとCDCだけでコントロールできるはずがありません。それは感染症医療が、厖大な医療機材の輸送、人員の確保、感染対処やデマへの教育などがあるからです。今回派遣される米陸軍も、この輸送業務にあたります。 

このような巨大なエボラ制圧作戦が、崩壊国家と呼ばれる西アフリカ諸国に担えるはずもなく、それを支えた国境なき医師団には頭が下がる思いです。 

これに対しては、いうまでもなく国際社会が総力で制圧に当たるしかなく、それを組織するのがWHOと国連の本来の任務だったはずてす。 

にもかかわらすWHOと国連は無能をさらけ出しました。もはや任務放棄に等しい罪です。 

「国境なき医師団」(MSF)のジョアンヌ・リュー会長は、先月国連でこう訴えています。 

「国際社会の反応は常に不充分でスピード感にかけている」「世界はこの感染症を封じ込めるのに失敗しつつある」(ニューズウィーク同上) 

会長は直接名指しは避けていますが、エボラの拡大をまったく顧みなかったWHOと国連に対するものと思っていいでしょう。 

申し訳のようにパンギムン事務総長は、エボラ対策の支援金を1億ドル募りましたが、呆れた国際社会からの反応はたった10万ドルだったそうです。

WHOと国連が重い腰を上げたのが8月。既にエボラの火が燃え盛ったあとでした。

かつてパンギムン事務総長を評した言葉を思い出します。

「歴史的にレベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能。核拡散の脅威や難民危機にも関心を示さない潘のおかげで、国連はあってもなくても関係ない存在に堕ちた」(2009年06月23日ナショナル・インタレスト誌)

この言葉は、もうひとりの「国連・無能の殿堂」入りを果たしたマーガレット・チャンWHO事務局長にも与えられるべきでしょう。

※マーガレット・チャン関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/3-31ed.html

国境なき医師団への寄付金については(MSFは目的指定基金ができます)http://www.msf.or.jp/news/detail/special_1686.html  

                  :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+  

■初期対応に失敗」 WHOの内部文書が流出 エボラ熱流行
CNN.co.jp 10月19日  

世界保健機関(WHO)がエボラ出血熱についての内部文書の中で、初期対応の失敗を認めていることが19日までに分かった。AP通信が伝えた。一方、WHOは内部文書は事実確認などを経ていない下書きにすぎないと説明している。  

AP通信が内部文書の内容として伝えたところによると、WHOは「エボラ熱対応にかかわった者はほぼ全員、明らかな予兆を見逃していた」「事態は最悪の状況に向かって進行していた」との認識を示し、西アフリカでの発生以降、拡大阻止の機会を逃してきた経緯を振り返っている。

伝統的な伝染病封じ込め作戦がこの地域では通用しないことに、WHOの専門家は気付いていなかったとも指摘している。

同文書によれば、WHOで当時ポリオ撲滅を担当していたアイルワード事務局長補は今年6月、チャン事務局長へのメールで、現地の保健当局や支援団体からWHOに対し、エボラ熱対策を助けるどころか妨げになっているとの批判があると警告していた。

WHOは18日、この文書は事実確認や審査を経ていない下書きの段階だと主張。当面は事態への対応に全力を注ぎ、流行が収まった時点で徹底的な検証を公表するとの方針を示した。

WHOによると、エボラ熱への感染が確認された患者はこれまでに9200人、死者は4500人を超えている。診察を受けられなかったり隠れていたりする患者を含めると、実際の人数はさらに多いと推定される。

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コメント

WHO…まさにWho?
って感じですね。
いや、別に上手いことを言おうとしたわけではなく。
役に立たないどころか邪魔してカネもらってるだけってのは、あまりにもいただけません。

マーガレット・チャン氏の無能ぶりも、以前の新型インフルエンザで分かってたわけで「あんた、まだいたの?」という印象です。
中国指導部の命令優先なんですかね。

そう言えば、中国でエボラ感染って聞かないですね。
水際対策が良いのか報道規制が強いのか知りませんが。

中国指導部としては、アメリカや日本で流行させて国力を削ぐことと対策の見学という動機は十分にあります。

もし水際対策がうまく行ったとしても、バイオテロは防げません。自分が当局のボスだったら、風俗街からの感染を指示します。

会社の部長が突然血を吐いた、とかいって病院に運ばれて、会社と病院の両方を機能停止に追い込めます。

最初から患者ないし疑い例とラベルできていれば普通の病院だって対応できますが(技術的には)、後から分かった場合は悲惨です。


批評批判は他に任せ、国内で感染者が認められた際に備えるための、提案や提言にフォーカスされんことを願ってやみません。前例がないことに対処できないのが、平和呆けして、利権絡められ、硬直した組織であることを誰よりも知っているのでしょうから。

イチニホンジンさん。ご批評は理解できますが、エボラは国際的規模の伝染病です。この実像を私なりに把握するためには、今どのような事態になっているのか、その理由はなんなのかを知る必要があります。

国内感染者が認められた場合には、BSL-4ラボの不在のために、確定診断ができずウイルス量が計測できません。したがって治療に限界があります。

またまず感染疑いの患者が行くのは地元の地域病院です。ここにレベル4の対応を求めるのは酷でしょう。
ならば指定感染症治療施設との連携を模索するしかないわけですが、その数も不足していますし、どのように搬送するのかもわかりません。

このような状況には政治の決断で解決する必要がありますが、くだらない政治と金問題で国会は空転しているありさまです。

さてどうしたものか、というのが門外漢である私の偽らざる感想です。

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