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2014年10月29日 (水)

今回のエボラ疑い事件は幸運だった

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昨日のリベリアから帰国した日系カナダ人ともいわれる男性(※)がとりあえず陰性(シロ)だったので、ほっとなさった方も多いと思います。※情報は複数あります。 

今わかっている時系列を追ってみます。 

・27日午後3時35分 リベリア滞在歴があるこの男性、ロンドンから羽田空港に到着
・ 検疫所で医師が熱を測ったところ、37.8度であることが確認
・同日午後6時25分 防護服を着せられて、都内の国立国際医療研究センターへ出発
・同日午後8時20分 塩崎厚労相が記者会見し、「 塩崎厚労相は「きょう、羽田空港に午後、西アフリカに滞在歴のある男性が到着して、発熱されている。万が一のことを考えて、搬送し、検査を行っている」と公表
・同日午後10時30分頃 男性の血液が、遺伝子検査のため、武蔵村山市の国立感染症研究所に搬入
・同時刻頃 男性が乗っていた航空機を運航する全日空では、機内の消毒作業を実施
・28日午前5時30分 男性の検査結果陰性であると発表
・同日午前9時半頃塩崎厚労相記者会見 「(エボラ出血熱は)発症後、3日間は陽性の結果が出ない場合があることから、引き続き入院してもらい、健康管理を行う」と述べた
 

日本の限定された条件の中としては、防疫当局はよくやったと思います。ただし、これはテストケースだと思ったほうがよさそうです。 

今回わかったことは、「感染疑い患者」が出た場合、指定病院への搬送などの手順は守られたようですが、問題は「みなし患者」として扱うべきかどうかについて厚労相の方針が定まっていなかったことです。

そのために、疑似患者である男性と同乗していた乗客は、足止めされることなく帰宅しています。

この措置には疑問を感じます。もし男性が陽性(クロ)だった場合、社会の中に散ってしまった同乗者を同定していかねばならないからです。これが大変な作業だということは、諸外国の例でわかっていたはずです。

おそらく、検疫所は男性に下痢、嘔吐などの症状が出ていなかったために感染疑いが低いと判断したのだと思います。

しかしもしエボラ出血熱だと思われる症状を呈していた場合、そのウイルスをどこで分離して確定診断するのでしょうか。

BSL-4ラボの問題をどのメディアも見事にスルーしていますが、PCR検査でクロ判定が出たら、そこから先の確定診断はどうするつもりだったか、私にはさっぱりわかりません。おそらく厚労省もわからなかったはずです。

私はこの確定診断が出来ない条件下では、徹底して私は「みなし患者」として通常国より厳しい方法で管理すべきだと思います。

エボラ出血熱の初期症状は発熱だけで、ほとんど風邪と誤診されます。

数日後に下痢や嘔吐といった症状が出て、急激に感染力が高まりますが、発熱段階の感染力はウイルスか少ないために感染はないとされています。

ですから、今回は居合わせた人は安全と判断して間違っていないのですが、この体調もまた男性の自己申告に頼るしかないわけです。 

今回の最大の幸運は、男性の自己申告があった(※)ことで、男性がリベリアからの帰国と熱っぽいことを申請しなかった場合は、今回の展開は異なったものになったことになります。 ※申告しなかったが、サーモで引っかかったという説もあります。

男性はリベリアから帰国したために、エボラと症状をただちに結びつけたでしょうが、この渡航地が仮にドバイや広州、あるいはニューヨークやダラスだった場合、エボラとは結びつけなかったはずです。

つまり自己申告は、そんなにあてにならないということです。 

またこの男性は報道関係者で、おそらくエボラ取材に行った帰りだったことも幸いしました。これが一般のビジネスマンならそこまで考えたかどうかといったところです。 

私は、この疑似患者の男性の自己申告をすべて信じるのではなく、安全パイを見て、陰性と数回確認されるまで、同乗者を空港内に隔離してとどめ置くべきだったと思います。

今回の検査はPCR検査に頼っています。シェラレオネの国境なき医師団のエボラ患者管理センターによれば、発症直後のPCR検査が陰性だった14例のうち、9例が2回目の検査で陽性になったといいます。

つまり、初回でシロでも、6割が2回目以降にクロに逆転する可能性が高いのです。

したがって、体内ウイルスか増加するとみられる72時間は、隔離して経過観察をしながら検査を繰り返す必要があります。最低3回検査をする必要かあります。

その結果クロ判定された場合、ただちに個人情報保護を解除して患者の本名を公表するべきです。そうしないと接触感染を防げないからです。

危機管理においては最悪を想定すべきという鉄則を忘れるべきではありません。

その最悪シナリオは、疑似患者の男性が感染者だった場合で、しかも実は下痢、嘔吐などが始まっていたが気がつかなかったくらい少量だった場合です。あるいは、自覚症状を隠していた場合です。

その場合、今回の対処方法では同乗者が同定できません。マスコミはたった1回の検査でシロだったと浮かれて報道していましたが(速報まで出した局があるそうですが)、バッカじゃないかと思いました。あと2回はやらないとわからないのですよ。

Yの感染した医師野場合も2回やってシロ、その間市中を移動し、その間に嘔吐が出て3回目の検査をした結果クロでした。マスコミさん、もう少し勉強しなさい。

同乗者には気の毒ですが、最低3回の検査の判定が出るまで(おそらく72時間以上)隔離観察をしたほうが無難ではないでしょうか。

さてもうひとつの幸運は、空港の水際作戦で引っかかったことてす。しかもサーモの設定温度以下でした。

エボラ出血熱の恐ろしさのひとつは潜伏期間が長いことです。最長21日間もあると言われています。

潜伏期なので発熱がないために空港のサーモをすり抜ける場合が圧倒的多数なはずです。

自宅に帰って、「あれ、熱がある。下痢もあるぞ。風邪かな」と考えては売薬を飲みながら通勤し、とうとう耐えられなくなって地元の病院に駆け込むというケースが圧倒的だと思われます。

その場合、その地元病院は感染症指定病院である幸運はまずないでしょう。医師も看護師も訓練を受けていないと考えたほうがいいわけです。

その場合、ダラスの病院ケースのような2次感染が拡がっていきます。

今回のケースはラッキーだったと考えて下さい。男性もシロ、空港で引っかかった、近くに感染症指定病院もあった、初回で気も緩んでいなかったという幸運に恵まれました。

今回はいわばストライクゾーンに直球で入ったからよかっただけです。次回もまたこのような幸運に遭遇するとは限りません。

防疫当局には、今回のケースを徹底的に分析して、あらゆるケースでのガイドラインを作ることを勧めます。

国境なき医師団への寄附について
https://www.msf.or.jp/donate_bin/onetime.php
※緊急支援対象から「エボラ出血熱 緊急援助2」を選択してください。
電話 0120-999-199 でも受け付けています。(9:00~19:00/無休/通話料無料)
国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。

・私はMSFへの目的指定寄附がもっとも有効にエボラ患者への支援になると考えています。ぜひお願いします。

 

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コメント

多分、近いうちに新型インフルエンザの時のようになし崩し的に地域医療が担うようになるのだと思います。

新型インフルエンザと違う点は、致死率が高いこと。一方で、感染は遅いし治療薬はあるので、みんなバタバタとはならない筈です。パニックに陥らなければ。

未確定な点は、先進国の致死率と、不顕性感染がどれくらいになるかです。
栄養・衛生・風習などの点で段違いの先進国特に日本で、西アフリカと同様に半分も死ぬとは思えませんし、体力があれば発症率も下がります。何より、治療薬があります。

1年後に振り返れば、「なあに、かえって免疫力がつく」なのではないかと予想します。

プーさんの楽観的予想が当たることを心より祈りますが…。
治療薬、確かなデータはまだ無いですよ。ようやく現地で治験に入る段階。

また、本文中にもある通り、PCR簡易検査程度では全く安心できません。
BSL-4レベルの一刻も早い稼働(設備はあるのにレベル3までにしか使われていない)を望みます。このあたりは昨日の記事ですね。
マスコミも空港対応の不備や厚労省の発表の舞台裏なんて、くだらない話題ばかりで核心には触れません。報道協定の圧力でもかかってるのか?と。


インフルエンザも県内で今年初の集団感染(A香港型)が市内で発生して、昨日から学年閉鎖になりました。
みなさんもよくよく注意しましょう。

捕捉です。

体力があれば耐えられるというのは、ウイルス感染には全くの間違い・誤解です。

日々精進してる体力満点で若さ溢れるプロ野球やサッカーチームなど、1人出ればあっという間にチーム全体に拡がります。
だからインフルエンザには特に敏感で、練習後の手洗いやワクチン接種を強制しています。

むしろ身体が強いということは、ウイルスにとっては格好の寄生体なのですよ。

山形様 ありがとうございます。確かに、自分の楽観的観測を保証するデータはありません。
しかし医者としては言わせて戴きたいです。

ウイルス感染と体力の関係は、毎年インフルエンザの死者が小児と高齢者に集中していることから重要であることは確かです。ウイルスに対する抗体の産生力、それまで時間を稼げる余力は大事です。
逆に体力があって困るのはサイトカインストームです。これが病態にどれほど関わっているかが致死率や治療の選択肢に重要になってきます。

一流アスリートは、自分を限界に追い込む点で一般社会と異なります。ウイルスと戦う体力が残っていたら練習に使い切ります。汗をかけば体も冷えます。そういう意味でcompromised hostです。

一方、日本人が西アフリカの人々より優秀な(?)寄生体になることはきっと確かです。軽い症状で受診せずにウイルスをばら撒く危険性は、結構高いと思います。

今回の経過を見ると、
エボラ侵入を防ぐのは
至難の業に思えます。

万が一?…数十分の一?
入ってきた場合の危機管理…
感染拡大防止のシナリオは
存在するのでしょうかね(((^_^;)

新型インフルエンザの
危機管理マニュアル(←あるのか?)

すみません、書きかけで投稿されてしまいました 。(((^_^;)

新型インフルエンザの危機管理マニュアルが応用できるのでしょうか?

私は、日本の人口密度の高さも感染拡大に影響するのでは?と心配しておりますが、…他の飛沫感染の研究成果で否定されていたら、いくらか安心です。

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