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2014年10月23日 (木)

エボラウイルスは本質的変異をしたのか?

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エボラ出血熱は、1979年のスーダンの発生以来、実に10回あまりも発生を繰り返してきました。  

いままでと違ってなぜここまで拡がっているのかについて疑問が出始めています。(図Wikipedia)

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地域内伝播が活発な国は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア(※)、セネガルなどです。 (※ナイジェリアは解除されました)

また、小規模であって伝播が中断している諸国は、ガンビア、ギニアビサウ、ベナン、南アフリカ、ケニア、サウジアラビア、スペイン、アメリカ、イギリスなどです。

これまで大規模なアウトブレイクは初めてです。
 

インフルエンザのような感染症一般にも言えることですが、ウイルス特有の変異を遂げた可能性が出てきました。 

エボラの遺伝子が変異したというStephen K. Gireなどのハーバード大学研究グループによる報告が最新号(14年9月)に載ったことをブルームバークが伝えています。(欄外参照)http://www.sciencemag.org/content/345/6202/1369.full#aff-3  

この研究の過程でエボラ出血熱で2名の研究者を失っており、論文末尾に追悼の辞が付けられています。

「その最も大きい発生でエボラ ウイルスの病気はギニア、リベリア、シエラレオネ、およびナイジェリアを通じて広がっている。 (略)感染症の最初の数週間にわたってウイルス伝達のパターンを特徴付けることができる interhost(中間宿主) と接続する遺伝的変異の急速な蓄積を観測した。
この西アフリカの亜種は2014年に中央アフリカの血統から分岐し、シエラレオネ、 ギニアからの遺伝子と交差しつつ、(略)その後、持続的なヒト-ヒト感染を呈している」(編集者サーマリー 拙訳)

つまり14年現在、西アフリカで流行しているエボラ株は、2004年5月に中央アフリカでアウトブレイクを起こしたウイルス系統のものです。  

その後にヒトや動物との間で感染を繰り返しながら、ギニアを経由してシエラレオネに到達する間に、幾つもの遺伝子変異を起こし、持続的なヒト-ヒト感染をする性質に変化した可能性があります。 

ただしこの変異の結果、エボラ・ウイルスが根本的な性格を変異させたという証拠はありません。 

たとえはその重要な指標のひとつは、空気感染できるようになったのか、という点です。現在エボラ出血熱は飛沫感染に止まっています。 

国立感染症研究所は、エボラ出血熱についてこう説明しています。

「感染したヒトの血液、分泌物、臓器、その他の体液に、創傷のある皮膚や粘膜を介して直接的接触することにより、またはそのような体液で汚染された環境への間接的接触でヒト-ヒト感染が起こる」(同研究所HP ウイルス第一部/感染症疫学センター)http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/vhf/ebora/392-encyclopedia/342-ebora-intro.html

飛沫感染と空気感染の違いは、排出された粒子が飛ぶ距離の違いです。とうぜん、粒子が小さい空気感染の方が遠くまで飛びます。 

排出された環境中での病原体の生存性が、感染力の強さに関係します。エボラウイルスは環境中では極めて不安定ですが、生存性が極めて強く、わずかの飛沫で感染を引き起こします。 

通常、飛沫感染の感染距離は1.5m前後と言われています。

感染者のくしゃみや咳によって、インフルエンザウイルスを含んだ気道分泌物の小粒子が周囲に飛び散ります。この小粒子を飛沫といい、その数は、1回のくしゃみで約200万個、咳で約10万個といわれます。粒子は比較的大きいのですが、感染者からおよそ1~1.5メートルの距離であれば、直接に周囲の人の呼吸器に侵入してウイルスの感染が起こります。また、目などの粘膜から直接侵入することもある」(サラヤ株式会社HP)

ウイルスの生存性が高まれば、空気感染の可能性が出ます。しかし現状では答えはノーだと多くの研究者は見ています。 

ウォールストリートジャーナルはこう述べています。※http://jp.wsj.com/news/articles/SB10345363700595394421004580219092919996162

「エボラ・ウイルスが絶えずその遺伝子構造を変えていることに疑いはないが、これまでのところ重大な変化が起きているとはみられていない。科学者らは、ウイルスが突然、空気感染するようになったというようなことはなく、今後もその公算は小さいと確信している。
英レディング大学のウイルス学教授、イアン・ジョーンズ博士は「エボラ・ウイルスは多かれ少なかれ(これが発見された)1976年当時と同じだ」とし、「ほとんどのウイルスは、いったん生きる形態を定めると、そのままになる」と述べた」(14年10月17日)

WHOも10月始めのアセスメントで同様の見解を発表しています。 

「エボラ・ウイルスが空気を介して人から人に容易に感染できるような形に変異する可能性があるとの見方は、エビデンスが全くない憶測だ」(同) 

またエボラ熱の感染ルートも変わっていません。

「エボラ熱は通常、感染者の体液、特に血液、排せつ物、吐しゃ物の近くにいた場合、あるいは直接触れた場合に感染する。このウイルスは―汚染された物などを通じて―間接感染することがあるが、そのリスクは低く、消毒によってリスクを低減させることができる。同ウイルスはドアノブなどの乾燥した所で数時間生きられるが、簡単に殺すことができる」(同)

これらのことから、今回の感染はよりヒト-ヒト感染をしやすい変異を起こしつつも、発見当時と本質的な変異はなされていないとみるべきでしょう。

「エボラ・ウイルスは多かれ少なかれ(これが発見された)1976年当時と同じだ」
「ほとんどのウイルスは、いったん生きる形態を定めると、そのままになる」(英レディング大学のウイルス学教授、イアン・ジョーンズ博士)

わが国のエボラ出血熱についての認識は薄く、遠い西アフリカでのアウトブレイクを、同情が混じった呑気な気分で眺めているようです。 

しかし、米国が拡大封じ込めに失敗した場合、ウイルス変異のもうひとつの特徴であるパンデミックに繋がる可能性が出現します。

米国のみならず、中東ドバイなどのハブ空港には西アフリカから大勢の人々が来訪しており、日本との便も多く飛んでいます。

備えを固めるのなら今、この時期しか残されていないにも関わらず、わが国の天下太平さには呆れるばかりです。

 

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■エボラ、流行長引けばウイルスが変異-感染力が強まる恐れ   
10月15日ブルームバーグ
 

現在西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱のウイルスは既に、従来の株とは型が異なる。  

変異が何を意味するかを科学者らは完全に理解しているわけではないが、病原体の進化が新たなリスクをもたらす可能性が一部で懸念されている。  

サイエンス誌に先月掲載された報告によれば、研究者らは今回のエボラ流行で既に300以上のウイルス突然変異を発見している。こうした変異がウイルスの感染力を強めていないかの調査を研究者らは急いでいる。  

現時点ではそれを示す科学的データはないものの、流行が長引けばヒトからヒトへの感染力が強い型にウイルスが変化するリスクは高まると、カリフォルニア大学サンフランシスコ校でエボラを研究している伝染病専門医のチャールズ・チウ氏は指摘する。      

「流行が長期間続いたり風土性のものになったりすれば、伝染力が強い型に変異しかねない。これを予測するのは困難だ」と同氏は述べた。 

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