FIT 世にも安直なビジネスモデルの破綻
こんなFIT(全量固定価格買い取り制度)のような制度が「脱原発先進国」ドイツにたまたまあったから模倣しろと言ったお調子者がいたわけですが、家元のドイツですら、日本で導入した当座には財政上の理由から足抜けを模索していたといった代物でした。
全量ということは裏返せば、電力供給の義務がないというオソロシイことを意味します。
いままでの電力供給体制は、年間の需給見通しに従って、しっかりとした発電量をキープしてきました。それが電力会社の義務だったからです。
電気は生ものですから、作りすきても、足りなくても困ります。リアルタイムで必要な消費電力量に合わせて発電所を止めたり、動かしたりし、送電網を日夜保守し続けていたわけです。
このような厳しい送電義務が課されてこその地域独占制度であり、総括原価方式だったわけです。
この電力会社の「権利と義務」をはずしてしまって、ただ電気さえ再エネで作ればいいよ、とやってしまえばどうなるのか、たぶんこの制度設計者はまったく考えてみなかったのでしょう。
再エネの根本的な欠陥は、お天道様が機嫌がよければ沢山発電し、曇ったり雨ならばまったく発電しないということです。
下図は東電浮島太陽光発電所の発電状況のグラフですが、12時頃をピークとして崖型に発電量が推移するのがわかります。
ちなみにこの日は3月という太陽光のベストシーズンで、しかも 好天に恵まれた春うららの一日で、発電波形は理想的なパターンを描いています。
ひどい日には、フライパン型や、ノコギリ型などはザラです。この理想型でも朝6時以前と夕方4時以降はまったく発電をしなくなります。曇と雨ならただの箱です。
こんな3歳の子供でも分かることを、ちっとも考えなかったほうがおかしいですね。
飯田哲也氏は専門家としてそれをわかっていましたから、スーパーグリッドで、晴れた地方の電気を曇った地方に瞬時に切り換えて持ってくるのだ、などと説明していました。
当時から思っていましたか、誰が作るんでしょうね、これが根本問題なのです。
飯田氏ははっきり財源は言っていなかったようですが、おそらく公共投資として一部の再エネ業者のため日本を縦断した櫛形大規模送電網を作ると構想していたはずです。
それが飯田氏のモデルにしていたドイツがやったことだからです。ドイツは風力発電所が多くある北海沿岸から、南の工業地帯まで大規模送電網を、再エネだけのために敷こうとして苦労しています。
2009年にドイツ政府は、「送電網拡充法」を立てて、再生可能エネルギーに必要な送電網を計画したところ実に総延長1807キロにも及び、かかる費用は570億ユーロ(1ユーロ=118円換算で6兆7260億円)という莫大なものになりました。
ドイツはそれまでにFITだけで累積23兆円税金(賦課金)として投入していますから、この新送電網と合わせて実に再エネだけに約30兆円をつぎ込んだことになります。
これだけのヨーロッパの中規模国の国家予算規模を再エネだけに湯水のようにをつぎ込んで、ドイツの再エネ比率は22%しか達成されていないのです。
ドイツ人は、他のヨーロッパ人から、「規律正しく狂う」と呼ばれているそうですが、まさに。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-3002.html
こんなものを今の日本で誰が作るのでしょう。後に触れますが、それを再エネ発電業者自身がやってくれるのなら、なんの問題もなかったのです。
しかし、発送電分離・電力自由化をしてしまえば、送電網は送電網の会社が作ることになりますから 、送電網会社はそんな馬鹿な出費はするわけがありません。
したがって、「誰が作るのか」という根本問題を考えなかったスーパーグリッドなど、日本でできるはずがないのです。税金で作れ、などと言わないでくださいよ、飯田さん。
いっそ発電ゼロならば、初から電力会社は再エネなんて期待していないのですから、火力の出力を高めればいいだけです。
問題はむしろ今回の九電のように「作りすぎ」のほうです。 しかも瞬間的にオーバーフローですから始末におえない。
風力もそうですが、いったん風が吹き出したり、天気がよくなれば、作りたい放題で発電計画なんかありゃしませんから、ドッと送電網に電力を流し込んできてすました顔です。
すると送電網に突如過剰な電力が流し込まれた買電側は容量オーバーを起こして、逆に大規模停電の原因になります。
FIT以前なら系統送電網に流してもなんとか済む程度の量だったのですが、これが東北地域で予定されている1140万キロワットにもなると冗談ではすみません。
これが、天気に左右されて、ドッときたかと思えば、なくなるという繰り返しを発作的に繰り返すのですから、買電側は悲鳴を上げました。
九州電力は再エネ発電を申請どおりに受けると送電容量超過、東北電力なども9割まで近づいているそうです。
ならば、「電力会社が送電網を増強すればいいじゃないか、買い取りは義務だぞ」、と勝手なことを言うのが再エネ業者たちです。
一方、「なを言っていやがる。自分でやれ、できなきゃ買わない」というのが電力会社です。
だって、送電網の増強と言うのはカンタン、現実には数兆円のコストがかかってしまいます。
主力電源の原発を止められて、その維持費だけで数百億円の赤字。その上にこの原油高、円安で経営基盤すら傾いている電力業界にそんな余力はありません。
もし再エネのためだけに送電網増強をするならば、またもや電力料金の値上げに頼るしかなくなり、国民や企業の負担がまた増えてしまうわけです。
そもそも、今の日本に必要なのは、突如ガバッと増える瞬間発電量ではありません。淡々と同じだけの定められた計画発電量をキープする恒常的電源なのです。
天気がよければできる、風が吹けば回るようないいかげんな再エネには、そんな電源インフラを支える力はないのです。
とまれ、よくもこんなデタラメな制度をデッチ上げたものです。FIT制度などという民主党政権の最後ッペを清算する時期に入ったということは確かです。
それができないなら、再エネ業者に送電網コストの負担を義務づけをするしかありません。
消費者に平等にかかって、しかも年々重くなる賦課金の問題もしたいのですが、別の機会に譲ります。
« とうとうFIT制度が爆発した | トップページ | エネルギー問題をイデオロギー論争の場にした反原発派 »
「原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事
- 北電薄氷の電力供給 電力なき地方創生はありえない(2018.09.18)
- ブラックアウトとステーション・ブラックアウトの本質的違いについて(2018.09.10)
- 今回の北海道大停電は北電の特殊事情だ(2018.09.08)
- 北海道全域停電はどうして起きたのか(2018.09.07)
- 鳥越氏 知事になったら250㎞範囲の原発は止める(2016.07.26)
納税者をバカにした美味しい事業でした。
あまりに美味しいので皆が殺到してしまい、
問題がすぐに噴出したので、まだラッキー
でした。
責任は誰も取らないでしょう。政・官・
政商はもう利益を得る仕込みは出来たの
で、後は知ったこっちゃありません。
中小民間・納税者にブン投げるだけです。
いつもの構図です。
私も含め、アホでマヌケでお人好しな者
が国民である限り、どうにもなりません。
せめて、管理人さんに末永く発信してい
ただいて、アホが治るように希望するし
かありません。
昔の人は、死ななきゃ治らない、とは言
ってはいるのですがねぇ。
投稿: アホンダラ | 2014年10月 8日 (水) 13時42分
菅と孫の謀(はかりごと)
姦と損
姦=よこしま、正道に背く、悪賢い
損=国民の損、孫の利益
正道に背く邪な政策で、国民が損をし、孫が利益を得る。
投稿: 下請です | 2014年10月 8日 (水) 20時10分
こんばんは。
菅直人氏はとんでもない置き土産を残しましたね。
再生可能エネルギー,特に太陽光が不安定で送電網に混乱をもたらすことなど,ちょっと考えればわかりそうなものですが,あの方はまあ,わかっていてやったのでしょう。「再生可能エネルギーは善,原発は悪」という空気に迎合というか,積極的に空気を作った側ですね。
一部マスコミは予想通り買取中止を川内の再稼働と結び付けて報じているようです。
再生可能エネルギーが原発の代替になり得ない,というのは,あの広瀬隆氏も再三指摘しているんですがねえ。再生可能エネルギーは不安定だから原発の代替は火力発電の高効率化によるべきという広瀬氏の主張は,彼の主張の中でおそらく唯一正しい主張ですw
昔は火発も多くの反対運動に遭ったそうですが。
投稿: ecchu | 2014年10月 9日 (木) 00時08分