翁長雄志氏が登場したことでマスコミは「保守分裂選挙」という言い方をしています。それは正しくはありません。
まずは支持団体からみていきましょう。
・仲井真弘多(無所属)・・・自民推薦
・翁長雄志(自民党) ・・・共産・社会社民大衆・生活・自治労・沖教組支持
・下地幹朗(そうぞう) ・・・維新・そうぞう支持
・喜納昌吉(民主除名)・・・なし
これで見る限り翁長氏は、共産党まで含んだただの革新候補ですが、実はこれだけ見ても何も語ったことにはなりません。
というのは、翁長氏の支持団体に革新が名を連ねていることは、革新系が統一候補を立てられないほど衰弱しただけのことに過ぎないからです。
これについて元県知事の稲嶺恵一氏がいみじくもこう語っています。
「これは保守分裂ではなく、基地運動に頼ってきた革新が自前候補を出せないほど衰退したということ。保革対立がパッと消えたら(日本の一部を担う)沖縄県人的な意識と、(本土と対抗する)琉球人的な意識の矛盾点が浮かび上がった」
(『沖縄県知事選と「国場組」』(「新潮45」11月号常井健一)
間違いなく、沖縄の革新陣営はどん詰まりの衰弱期に入っています。
それは太田秀昌元知事が推す高良鉄美氏を革新統一候補としてまとめ切らずに、結局うさん臭さ一杯の背信政治家・翁長氏に相乗りすることを選択せざるを得なかったことを見れば分かります。
表面的には革新陣営が支持母体ですが、あくまでも革新陣営は「翁長党」に相伴する脇役でしかありません。
彼ら革新の無力さは、「承認拒否」を最後まで掲げられなかった所に象徴されています。
それは、長年に渡って官公労と教組にのみ頼った運動構造が硬直化し、いつの間にか島内勝ち組だけによるイデオロギー闘争に明け暮れてしまったためです。
おそらく革新陣営の選対責任者たちの集まりでは、翁長氏をどこまで信じるかについて激論があったはずです。
それは、立候補表明してもなお、「承認撤回」を言い切らず、ああ言い、こう言いしているヌエ的な翁長氏の態度をみれば、不信感を覚えて当然です。
翁長氏は支持母体の革新陣営からも責められ、対立する仲井真陣営からも公開質問状を突きつけられてもなお、厚顔にも公約を変えようとしませんでした。
改めて翁長氏の公約と称するものを見ればこの調子です。まるで中学生の作文です。
「県民は埋め立て承認の撤回や取り消しを望んでいると思う。知事選に勝ってから、相談しながら撤回や取り消しのあり方を考えていきたい」
つまり、翁長氏が知事に当選したとしても、承認撤回はしないということです。
もし、翁長氏が知事になりさえすれば普天間は閉鎖され、辺野古移設は拒否されるという期待を持っておられる方がいるなら、その望みは残念ながら叶えられません。
その理由は、「翁長党」のスポンサーは革新団体ではなく、沖縄財界反主流派だからです。
今回の知事選で翁長陣営についた沖縄財界のメンツを見てみましょう。
・金秀グループ会長 ・・・呉屋守将
・かりゆしグループCEO・・・平良朝敬
・沖縄ハム会長 ・・・長濱徳松
これらの人々がどのような人達なのかと言えば、沖縄財界反主流派です。それは代表格の金秀グループ会長の呉屋氏をみれば納得がつくでしょう。
呉屋氏は、「スーパーかねひで」を県内40店舗持つかたわら、県内4位の土建屋でもあります。
そして呉屋氏は、国場幸之助氏(自民党衆議院議員)の出身である国場組と激しい対抗意識を燃やしていることで知られています。
国場組はいうまでもなく県内1位の大手土建業ですが、呉屋氏の金秀はその下請けでした。
そして呉屋氏の父親は、国場幸昌社長の選対責任者をしながらも国場組からは「金秀は選挙のおかげで大きくなった」と嘲笑われたといいます。
この屈辱を舐めた金秀が、スーパー部門が当たって、今や国場組を凌ぐ力をつけ、それがこの知事選において、国場氏が推す仲井真氏に対して翁長氏をぶつける沖縄財界の下克上につながっていきます。
那覇市内で開かれた翁長氏の激励会は千人を越える盛況ぶりだったそうですが、来客はもっぱら呉屋氏との名刺交換にいそしみ、翁長氏の演説は添え物だったそうです。
そこには革新陣営の顔ぶれもあったわけですが、主賓はあくまでこの金秀を率いる総帥の呉屋氏でした。
翁長激励会に集まった人達にとって翁長氏すら添え物で、今後沖縄財界を率いていくであろうと期待した呉屋氏や平良氏、長濱氏となんとかコネを作りたいというのが本音だったのでしょう。
ここにあるのは、かつての革新候補の決起集会にある赤旗とシュプレッヒコールではなく、国策として今後も移設事業で落される巨額のカネの匂いを嗅ぎつけて群がる欲に目が眩んだ蟻たちの光景です。
彼ら欲ボケ蟻が望むのは、沖縄利権の新たな胴元に金秀が座り、ゼニをバラ撒いてくれることです。それが彼らを選挙へと駆り立てているのです。
なんのことはない、保守分裂ではなく、ただの財界の勢力争いです。
島内の数少ない産業である建設業では国場組と金秀の、観光業では沖縄観光コンベンションビューローとかりゆしグループとの、勢力図をかけた戦いの場が、選挙戦へと変わっただけともいえます。
だからこそ、翁長氏は革新陣営の不信を尻目に涼しい顔をして「承認拒否」の一項を公約に入れることを頑として拒んだのです。
したがって、翁長氏が、知事になってまずすることは、いままでの土建の割り当てのメーンを占めていた国場組傘下から、金秀へとシフトすることでしょう。
そして国に対しては、あくまでも「反対の声を伝える」に止まり、革新陣営が強く望む「阻止」などは間違っても口にすることはありません。
翁長氏がしたいのは辺野古移設「阻止」などというヤボなことではなく、それをネタにした振興予算のさらなる上積みと、基地の返還交渉条件の獲得でしかありません。
これこそが彼がいう「政治とは結果」の意味です。それは彼が、「オール沖縄」とやらの署名を首長たちの間で集めた時の言葉でわかります。
「南城市の古謝景春市長は、翁長氏が41市町村の代表が政府に提出した建白書をまとめる際に『反対することで振興策が多く取れる』と発言したと主張し、『さまざまな疑念がある』とした」(沖タイ10月29日)
翁長氏、いや「翁長党」と呼ぶべきでしょうか、彼らにとっては辺野古移設問題は金のなる樹、金の卵を生むガチョウでしかありません。
彼ら「翁長党」は反対を唱えれば高く売れると思っている連中です。
彼らの眼中に写るのは、尖閣沖の中国公船でもなければ、中国の防空識別圏でもなく、ただひたすらカネ、カネ、カネしかありません。なんともやりきれない利権亡者の連中です。
だからこそ、その原資である移設工事を白紙にしたら元も子もないわけで、口先では県民の民意をダシにして「反対」しながら、内実では容認することになります。
当初の期待を裏切られた共産党や社民党は与党会派として、猛然と抗議するでしょうが、もはや翁長氏にとって彼ら左翼は用済みであって、むしろ彼らのハネ上がりは目障りなものにすきません。
ここに至ってようやく革新陣営は翁長氏の正体に気がつくはずです。すなわち、これは保守分裂ではなく「沖縄財界分裂」だったことを。しかし、その時はもう遅いのです。
まずは共産党が憤然として与党会派に離縁状を叩きつけ、次々と革新陣営は櫛の歯が欠けるるように脱落していきます。
そして生粋の「翁長党」である新風会の那覇市議たちが、沖縄県政の中核を担うはずです。
私は、「沖縄一危険な男」は翁長雄志氏であると思っています。彼には政治家が依って立つべき理念がありません。
しかしこのような人物に特有の時代を読む嗅覚だけは鋭敏です。
翁長氏は、次の時代が中国から吹いてくると読み、中国に媚びる龍柱を建て、娘を中国の大学に送り込み、中国要人と太いパイプを作ったと豪語し、尖閣など見向きもしません。
むしろ、尖閣は県との共同開発をしたらどうかていどに考えているかもしれません。
その一方で、新興の財界人に下克上を勧めました。
そして新たな対立軸は保守と革新ではなく、内地とウチナンチューの対立だと煽りました。
さらには一国二制度でも作って「琉球独立」も悪くない、その時は中華帝国が助けてくれるさぁ、と考えている節すらあります。
私は翁長氏がいずれ沖縄県の住民投票条例でも作り、「高度な自治権」を要求をする日が来ると考えています。
彼は出身母体の自民党を裏切って新風会という「翁長党」を作り、「建白書」を裏切って県内移設容認をささやき、革新陣営の支持母体を裏切って最後まで「承認拒否」を掲げませんでした。
この人物には「信」という言葉はないようです。
「翁長党」が唯一誠実なのは、ひと握りの沖縄財界の面々に対してだけです。その裏切りを代償として翁長氏は「琉球王」の座につく野望を持ったのです。
県民の皆さん。お願いがあります。県知事の権限は、政令指定都市がない限り、県内では一国の首相よりも大きいといいます。
そのような強力な権力を翁長氏と「翁長党」に与えないでください。大変に危険です。
あさっての投票において、移設賛成、反対の別なく、この裏切りの常習犯、詐欺師のような人物にだけには絶対に一票を与えてはなりません。
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