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2014年11月 4日 (火)

最悪シナリオを考えようとしない日本

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(前回からの続きです)  

日本のエボラ対策を見ると、日本という国と社会の持つ弱点があぶり出されて来るような気がします。それは最悪シナリオをあえて想定からはずす「悪しき癖」です。体質といってもいいかもしれません。 

たとえばよく自治体は消防訓練をやりますね。あらかじめどこで火災が発生して、どう拡がってということまで予定表には書き込んであります。 

しかし、現実はそんな予定表なんか知ったことではないので(←あたりまえだ)想定にはなかった場所から火が出て、思わぬ風に吹かれて、とんでもない方向へ拡がっていくものです。 

だから、防災とか防疫といった危機管理を本気で考える場合には、いちばん悪い想定をします。 

福島事故の時に支援に入った米国NRC(米原子力規制委員会)に驚かれたのは、日本の原発に全電源喪失という最悪シナリオがなかったことです。

もちろんいくら平和ボケの日本でも、原発事故やテロの訓練はしていたのです。 

しかしそれは2010年APECの時の訓練のように、「成田空港に外国から放射性物質が大量に持ち込まれたという想定は止めて下さい」と釘を押され、セシウム検出訓練もできず、ただ救急車がサイレンを鳴らして走り回るだけのものでした。

あるいは、新潟県のように、原発テロを「想定」しておきながら、県から「被曝者が出たという想定は止めて下さい」、「安定ヨウ素剤は配布しないで下さい」といった現実離れしたものでした。 

日本は、このように原発のセキュリティ(保安)が、セイフティ(安全)の強化につながるという思考が大きく欠落していたのです。

自衛隊や警察のテロ警備担当者からすれば、核テロ対策をしておけば、福島第1原発事故はまったく違った対処があったのにという苦い思いが残りました。

船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン』によれば、1990年代から2000年代初めに核テロ問題を手がけた防衛省高官はこう述べています。

「東京電力に対して、原発が止まって、電源が切れた時にはどうするのかということで、何回も訓練をしようという話を持ちかけたように理解している。それに対して、規制官庁サイドがそんなことをやったら大変だということで出来なかった、という部分がある。」

ここでいう「規制官庁」とは、原発事故の司令塔にならねばならなかった、そして悲惨なまでの無能ぶりをさらけ出して解体されたあの原子力安全・保安院を指します。 

そしてこれらの減災対策は、「官僚制度の縦割り構造と、リスク回避のメンタリティが壁となって、脅威への準備ができていない」(シェファー米駐日大使が本国に出した報告書)現状のまま、我が国は3.11当日を迎えてしまうことになります。

最悪シナリオが練られたのは、なんと事故後のことです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-15e5.html 

では、今回のエボラ出血熱はどうでしょうか。最悪シナリオは考えられているのでしょうか。とりあえず、バイオ・テロは想定からはずしました。今の日本にはとてもじゃないか、対応はまったく不可能だからです。

たとえばこんなシミュレーションも可能です。それは潜伏期だったために空港のサーモグラフィをすり抜けて、自宅で発症するケースです。  

実はこのケースこそが、ダラスで起きた最初の患者のケースです。最悪シナリオがこれです。日本に置き換えてみましょう。

たとえば、あるツアーに参加した旅行者が経由地で感染し、潜伏期間中に空港を通過したとします。なにせエボラウイルスの潜伏期間は最長21日間もあリ、発熱などの症状は出ません

そして自宅に帰って発熱しますが、勤勉なわが民族は38度くらいの熱なら売薬で乗り切って、職場や学校に行くかもしれません。ただしこの発熱ていどでは感染はしないと言われています。

しかし、その間にどんどん症状は悪化し、とうとう下痢や嘔吐が出ます。 

これでもなお、よもやエボラだとは思わないかもしれません。下痢や吐き気に出る風邪などよくありますからね。 

ここで病院に行くとします。渡航先を聞かれるかも知れませんが、当人は西アフリカの渡航はないわけですから、医師は解熱薬ていどの処方で帰宅させます。これも実際に米国の1号患者がそうでした。

数日後ウイスル量が激増し、さらに劇症になるはずです。そして慌てて病院に再来します。ここでやっとエボラの疑いかあると医師は気がつきます。そして大至急でPCR検査に廻します。   

はい、この段階まで日本は今回の疑似患者であるていど経験しました。

問題はそこからです。今回はPCR検査がシロだったのでよかったね、で済ましてしまいましたが、クロだった場合それを確定診断せねばなりません。

ほんとうにレベル4の重篤感染症が国内で発生したかどうかは、患者の体液、血液などの試料から、ウイルスを抽出・分離をしなければ断定できないからです。

これをしないと、患者の体内のウイルス量が測定できず、治療法が決定できないからです。

何度も書いてきましたが、日本にはそのようなレベル4に対応するBSL-4施設がありません。というかありますが、一部「市民の反対」で稼働できないのです。 

Img_3b58465d57b09948111c6337e7181da          (写真 国立感染症研究所村山庁舎のBSL-4ラボ内部 感染症研撮影)

法的ルールをクリアしようと、国民全体の健康問題がかかっていようと、ひと握りの人が反対すれば「近隣住民への配慮」で凍結してしまう、これがわが日本です。

何か起きなければ、人がひとりくらい死ななければ何も動かない、エボラが社会にたっぷりまき散らされた後に「緊急対策」を開始する、それがわが国なのです。

少なくとも国立感染症研は村山庁舎のBSL-4ラボを稼働させねば、クロ判定の場合どうにもならないことを知っているはずです。  

感染症研にお聞きしたい。あなた方はBSL-4ラボを稼働させる要求を政府にしたのでしょうか? 

もししていないのならば、「近隣住民」が騒いでまた一悶着が起きるのが怖くて沈黙していただけではありませんか。

感染症研が、かつての原子力安全・保安院のようでないことを祈ります。 

また政府はそれを認識していたのでしょうか。BSL-4ラボを動かそうとすれば野党に国会で追及されるから知っていても日和見を決め込んでいたのか、ほんとうにただの素人なのか、いずれかです。 

ほんの3年前の原発事故で私たちは、「最悪な事態は起きる」ということを学んだはずです。にもかかわらず、もう喉元過ぎれば熱さを忘れたのでしょうか。

そろそろ止めたいのですが、もう一回続けます。

■写真 霞ヶ浦湖畔から筑波山を見る。遠くのツインピークスが筑波山です。天狗党が挙兵したパワースポットです。

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コメント

 私見ですが、監督省庁ということろは足元というより自分達の身が危険にさらされないと動かない集団だと考えています。権利(予算や監督権限及びその範囲)には貪欲ですが、義務に関しては自身の責任や前例を作るなどの類には及び腰に感じます。
 ここ十数年の災害時の対応を振り返ってみると、政治家が予算を確保して省庁の尻を思いっきり蹴飛ばさないと動かない印象をうけました。
 特に二回の口蹄疫の対応では温度差が明確でした。族議員が予算確保を確約して尻を叩いた一回目、家畜防疫法関連の改正で権限が地方に移ったといえ感染力の強い口蹄疫では周辺への幾つもの強権の発動が必要にも係わらずそれも殆ど無く 政権の関係閣僚とその族議員は動いた気配がなくて大事になってから動き出した二回目。また、担当政権の影響があったのかもしれない(と思いたいのてすが)東日本大震災での対応も悲しくなってきます。福島第1原発を置いといても、各業界が支援に動き出しても反応がなかった事は忘れられません。政権が政府主導・脱官僚を打ち上げていたとは言え。

 その上で族議員を利権という言葉で嫌悪排除しようとする気運には危機感を感じます。その道の専門知識を有するもしくは知識関連の支援のある議員がいれば本来正しく判断対応できる事ができなくなり、最終的には国としての利益不利益の判断よりもイデオロギーを重視してしまい政府の方向性を危ういものもっていく可能性が大きいと感じます。(これにマスコミが便乗したら最悪です。)

 本来ならば、関係閣僚や族議員が主導して監督官庁の尻を蹴り上げながら、判り易いモデルケースを作成して公開し、反対派にはその行為が自身の首に真綿の紐をくくり付ける行為であり、最悪は一瞬にして真綿の紐がザイルになって周囲の人間をも道連れにして足元の板が消える結果になることを理解させるべきなんですが…。

PS.
 防衛省の打診は当然ですよね。大事になれば最終的にはお鉢が回ってくることは分かりきった事ですし、矢面に立たされて逃げ出す事もできませんから。
 できれば、米海軍の原子力空母を参考に専門チームの編成及び事態収拾の協力に関する権限の付与と電力会社の連携を構築して欲しかったです。ご存じの方も多いと思いますが、原子力空母では、通常のダメコンは初期は現場にいた人間が対応しながらダメコン班に引き継ぎますが、原子力機関だけは専門知識を有した専門チームだけが対応します。
 それに災害時に、機材及び人員の運搬能力を有して緊急展開運用できるのは自衛隊だけですから。

すみません。相変わらずの長文乱文となってしまいました。失礼しました。(以後休眠モードへ)。

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