米軍基地の負担は沖縄だけか？その１ 「アツギの少年」だった私

いきなりクイズです。下の２枚の写真は共に日本の重要な米軍基地です。さてどこでしょうか？

かなり住宅地がフェンスギリギリまで伸してきています。とすると、ラムズフェルドが言ったというあの有名な「世界一危険な基地」かな？ 

ではもう一枚。ありゃ、これは答えが書いてあるか（笑）。

まぁ、けっこういい勝負ですね。上は神奈川県厚木基地、下は沖縄県普天間基地です。 

この写真を見る限り、むしろ厚木基地のほうが滑走路が住宅地に近い気がします。

それに厚木基地はジェット戦闘機と４発固定翼機を運用していますから、ヘリ（今はオスプレイ）の運用が基本の普天間よりうるさいのではないでしょうか。

沖縄にいた頃に、友人が島酒の飲み過ぎで、「沖縄ばかりに基地負担を押しつけているのは、ケシカラン。全国の７５％が沖縄にあるんだぁ」と、しつこくお約束なことを言うので、ついこう言ってしまったことがあります。 

「ねぇ厚木って知ってる？横須賀は？相模原は？もうひとつおまけに岩国は？」 

いかん、白けた。よそ者のオレがこんな喧嘩売るようなこと言ってどないすると、やや後悔しながら、わが友の顔を見ると、友、シラっとして答えて言うには。 

「なに、それ？どこ？それ地名？」  

これには私のほうが毒気を抜かれて、話はそれまでになってしまいました。知らないんですよ、ウチナンチューは、本土に米軍基地があること自体を（笑）。

だから、ウソかマコトか、彼は米軍基地は全部沖縄だけにあると思っているようなんです。これも秘密の県民show報告ものだな（棒読み）。

信じがたいことにそれは沖縄県民の半分以上でホントです。

なにせ子供の頃から、「米軍基地の７５％は、面積０．６％の沖縄に集中している」って耳にタコができるくらい先生から習ってきちゃった上に、選挙といえば「基地負担」を言わねば始まりません。

先頃の選挙戦でも翁長さんは、それしか言わなかった気さえします。沖縄タイムスの福元記者はこんなことを書いています。

「前那覇市長の翁長氏だ。辺野古移設という手法に反対している。
沖縄戦で捨て石のように扱われ、戦後70年となる今も国土面積の0.6％にすぎない沖縄に、全国の米軍専用施設面積の74％が集中 しているのは異常事態だ。辺野古の施設が完成すれば、耐用年数200年と言われており、この先、子や孫、ひ孫まで基地問題に苦しむ  ことになる選択はできない。そんな主張だ」
http://diamond.jp/articles/-/62146 

まぁ、退屈なくらいよくある定食的発言ですな。むしろそれを言わない候補のほうが珍しいくらいです。

ただ珍しかったのは、それしか言わない自称「保守候補」は初めてだったということくらいです。

沖縄ではよく反基地集会などで子供が雛壇に並ばされて決意表明などさせられていますが、子供と基地、これほど大人の胸をくすぐる組み合わせはありません。

宜野湾の前市長だった伊波陽一氏などよく普天間２小を沖縄基地の被害の生きた実例として、本土の政治家などをよく連れて行ってましたが、私はさほどの驚きは感じませんでした。 

それは、私の母校も似たようなもんだったからです。私もまた東峰夫「オキナワの少年」ならぬ、「アツギの少年」だったのです。

厚木はいまでこそ夜間訓練の硫黄島移転などで夜間離発着が減りましたが、往年のベトナム戦争時などの騒音はそうとうなものでした。

なにせ北爆で黒くすすけたファントムなどが、機体をガタピシいわせながら還ってくるのですから。

当時の厚木基地は、基地の隣の日本の会社が機体を修理したりしていましたし、米軍戦車のほうは、同じ神奈川の相模補給廠で修理していました。

そして艦艇の修理は横須賀というわけで、ある意味この時期は、米軍の戦略上、沖縄より神奈川のほうが重要だったはずです。

それはさておき、私の小学校は防音の二重窓でしたが、クーラーがデパートにしかなかった時代でしたので、夏は窓は開けっ放しで爆音が盛大に侵入してきました。

オスプレイの飛行は本土でも見られましたが、その静かさに逆にたまげたものです。

なに？低周波でノグチゲラか死んだ？アホか、そんなていどで死ぬなら、あの時代の「アツギの少年」たちはみんな死んでいるわ（爆笑）。

もう音というより、ビリビリという振動なんですよね。授業中断などは日常茶飯事でした。おかげで児童は、校庭で遊ぶときには、大声でどなる癖がついたようです。 

耳を手に当てて米軍機を見ている児童の写真が、よく基地反対派のパンフを飾っていますが、あれは私の学校でも同じようなもの。 

ドドッと天が揺れるような音、というより地響きがすると、子供はキャッホーと言いながら、負けるもんかとウワーっと大声を出すんです｡米軍機と張り合ってどうする（苦笑）。 

ある時、新聞記者が私たちが、空をつんざく米軍機に負けじとウワーっと叫んでいるのを見て、写真に撮っていきました。 たしか朝日新聞だった記憶があります。うちも講読していましたからね。

新聞になんと私の姿が載っているではないですか。しかもキャプションつき。

「米軍機に悲鳴をあげる子供たち。難聴児童も増えている」。あの、私たちバカガキは大声で「カッコイイ！」って叫んでたんですが（笑）。すいません、朝日新聞と日教組の先生方。 

わが校の児童が難聴なんて聞いたことがありません。誰がこの記者に吹き込んだんでしょう。 

ご近所の大きな町の大和などは、米兵の町。年中、今は面影もありませんが、商売女を連れた米兵で賑わっていました。両親は教育によくないと、彼らが出没する時間帯には、私を連れて行きませんでした。 

さて、今でも騒音について神奈川県に１年で4000件を越える苦情が寄せられています。  

米軍機の飛ぶ飛行ルートの関係で騒音問題に悩まされている自治体の合計人口は、沖縄県の人口の約2倍になります。

厚木基地周辺では、過去には米軍機の爆音、墜落事故、部品落下などの事故は日常茶飯事でした。米軍の奴はよく部品を落すんだよなぁ。（笑）。

神奈川でも米兵犯罪も沖縄についで多く、共産党によれば1989年から2010年にかけての米軍人の刑法犯検挙数は県別で沖縄の1035件に次いで２番目が神奈川県の444件でした。 

神奈川県での米軍機墜落事件は何件もあり、これまで11人の民間人が亡くなっています。 

かつても横浜市で痛ましい墜落事故が起きて、家族が巻き込まれたこともありました。

そのために、基地周辺の地主が日本政府に対して土地の買い上げを求めた結果、政府も被害の重大性を認め、2度に渡って土地の買い上げを行っています。  

そして大和市、綾瀬市の基地周辺の262戸が1970年までに集団移転しています。 

実は私の実家周辺でも施設庁の申し出に応じて、相当数の住民が引っ越していきました。 

いまでも実家の近辺の宅地に、「防衛施設庁用地」という立て看板が随所に見られます。町が櫛の歯が抜けるようになっていくのは寂しいものです。 

普天間もそれが可能ならするべきでした。進入路にあたる数キロを買い上げて、無人化するべきだったと思います。しかし、さまざまな理由でそれができませんでした。 

そのひとつ理由は、反基地運動の人達が間違いなく「買い上げ阻止、普天間基地撤去」という運動をするのが目に見えていたから手を出せなかったのです。

例の普天間２小も移転話が持ち上がるたびに、反基地運動家の抗議で沙汰止みになってしまっています。

彼らの言い分は「基地を撤去するのが筋だ。小学校を移転するなどは本質をインペイするためのものだ。小学校の移転阻止！」ということのようてす。※異説が存在します。 

やれやれ、普天間基地の移設問題と同じロジックですが、少しずつでも危険を除去しようとする気持ちはないようですから困ったものです。 

私は神奈川県のほうが大変だなどとはまったく思っていませんし、較べてみろとも思いません。 

ただ、すべての米軍基地の負担と苦痛が沖縄だけに集中しているというのは事実に反するので、止めて頂きたいと思っているだけです。 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（続く）