米軍基地の負担は沖縄だけか？その２ 国道16号線から見える風景

那覇空港から、北に向かって自動車に乗ると、国道５８号線沿いに米軍基地展示場のような風景が拡がっています。 

私がかつてこの島で暮らしていた時に不思議な懐かしさを感じたのは、この実にアメリキャ～ン・フォーシーズ（←巻き舌でね）が、神奈川にも集中していたからです。 

神奈川県がコジャレた県という印象は、国道１６号の２百数十キロを走ってみれば変化するはずです。 

この神奈川県横須賀を起点とし、神奈川、東京、千葉、埼玉を環状に走る国道１６号線上には、実に多くの米軍基地が展開しています。 

そしてこの国道１６号線沿いの１都３県には、日本の人口の実に約３割弱が住んでいます。 

もし、沖縄が0.6％の面積比率にというならば、人口比率の約3割も見なければ公平さを欠くというものです。 

まずは神奈川県だけに限って米軍基地をみてみましょう。その多さと面積の大きさに驚くはずです。 

 国道16号線の起点近くには米海軍横須賀基地があります。ここは2008年9月から原子力空母ジョージﾞ・ワシントンが母港としています。

下のGoogle Earthの中央部にはこのジョージ・ワシントンがデンっと鎮座しているのが写っています。 

沖縄にも那覇軍港（現在は移動）やホワイトビーチがありますが、輸送船や潜水艦などの停泊地にすぎません。 

一方、横須賀基地の巨大さを理解するには、単に軍港施設に限らず付随する膨大な各種施設群をみねばなりません。

米国にとっては、原子力空母を修理するドックは世界で４カ所しかありませんが、そのうち２カ所は米国内、そしてあとの２カ所は日本にのみ存在します。 

これは横須賀第６ドックと佐世保第４ドックですが、大和級巨大戦艦を建造したドックですので（※大和級３番艦信濃は横須賀で建造されました）、世界中探しても米国と日本以外にこのようなドック自体が存在しません。 

佐世保は艦船の電子装備の修繕において、米本土以上に優れた能力を有しています。同じように横須賀もまた、米国以上の船体のメンテナンスが可能であると言われています。 

米海軍関係者は冗談半分に、定期検査と修繕の時期になると世界一の点検を受けさせるために第７艦隊に配転するんだといっているそうです。 

また、第７艦隊の補給を受け持つ弾薬貯蔵施設（秋月、広、川上、嘉手納）の貯蔵能力は実に１２万トンを越えます。 

米国防総省が自ら「ペンタゴン最大のオイルターミナル」と呼んだのは、在日米軍燃料タンク施設（鶴見、佐世保、八戸）です。 

鶴見は国防総省管内のうち米本土まで含めて第２位の備蓄量、第３位は佐世保で、八戸（航空燃料）と合わせると１１０７万バレルを備蓄しています。 

これは米海軍最強の第７艦隊全体の１０回分の満タン量に相当します。米海軍は日本における高い技術力と、本土に蓄えられた燃料・弾薬、装備に支えられて初めて展開可能なのです。

このように横須賀軍港は、米海軍の補給－修理の海外インフラを一手に引き受けているのです。 

この横須賀軍港とワンセットになっているのが、私が育った厚木基地です。

厚木基地は横須賀に空母が入港する度に、その艦載機を陸上に上げて修理やメンテ、訓練をするためにあります。

その修繕のために、日本飛行機という会社が、厚木基地に付属していて、そこで修理を行います。 

実は厚木基地は、防衛省が「日本でいちばん危険な基地」としてあげているものです。

このGoogle Earthをみれば、私が「日本で最も危険な基地」は、普天間基地ではなく、むしろ厚木基地なのではないかと思うのが、多少お分かりいただけると思います。

この厚木から北へ走れば、米軍関係者からリトル・ペンタゴンと呼ばれているキャンプ座間があります。ここには在日米陸軍司令部が置かれています。

また巨大な軍需物資の補給、修理・点検する基地として米陸軍相模総合補給廠があります。

そして神奈川県ではありませんが、この１６号線をさらに北に行けば、東京都福生市には巨大な米空軍横田基地が存在します。

ここには在日米軍司令部があり、嘉手納基地と並んでアジアで枢要な空軍力の拠点となっています。

では神奈川県の公式資料で、その面積を押えておきましょう。 

●神奈川県の米軍基地　※単位ヘクタール　コンマ以下切り捨て
・根岸住宅地区　　・・４２ｈ
・横浜ノース・ドック・・・５２
・上瀬谷通信施設・・・２４２
・鶴見貯油施設・・・１８
・横浜ノースドック・・５２
・吾妻倉庫地区　・・・８０
・横須賀海軍施設・・・２３６
・浦郷倉庫地区　　　　・・・１９
・池子住宅地区　　　・・・２８８
・相模補給廠　　　　　・・・２１４
・相模住宅地区　　　・・・５９３
・キャンプ座間　　　・・・２３４
・厚木海軍飛行場・・・５０６
・長坂小銃射撃場・・・９
－－－－－－－－－－－－－－－－
合計１３施設　　　　２５８５ｈ　　 

沖縄県の米軍基地は２万3千ｈですので、比較するまでもなく、沖縄の総面積のほうがケタひとつ大きいことは確かです。

ただし、そのうち沖縄県民に基地公害の負担をかけているのは、嘉手納基地と普天間基地の２ツの航空基地ではないでしょうか。

では神奈川県の厚木基地と沖縄の航空基地を比較してみます。

・厚木海軍飛行場・・・５０６ｈ
・嘉手納基地　　　・・・１９９５
・普天間飛行場　　・・・４８０

神奈川県の厚木基地は、普天間飛行場よりやや大きく、嘉手納より小さな基地だとわかるでしょう。

ところが、この厚木海軍飛行場と横須賀軍港という日本を代表するような二大米軍基地は、日米共同施設ということで米軍専用施設だけの統計からははずれています。 

いまでも騒音について神奈川県に１年で4000件を越える苦情が寄せられています。 

米軍機の飛ぶ飛行ルートの関係で騒音問題に悩まされている自治体の合計人口は、沖縄県の人口の約2倍になります。 

自衛隊と米軍の共同利用施設は下図です。

沖縄県民が翁長氏のように、「戦後70年となる今も国土面積の0.6％にすぎない沖縄に、全国の米軍専用施設面積の74％が集中 しているのは異常事態だ」というのは一面の事実であるのは否定しません。

この辺野古問題が騒がれてからというもの、「本土も少しは負担しろ」と執拗に言う沖縄の声が絶えません。

もはやこれは沖縄県民にとっても、自家中毒を起こす呪縛に変質していると私は思うようになっています。

私はよくネットで言われている米軍専用で74％だ、共同使用で23パーセントだという議論には与しません。そんなものは取りようによってはどうとでもなるくだらない数字にすぎません。

そのような上っ面の数字ではなく、「アツギの少年」だった私は、自分の育った経験を踏まえて、あえて沖縄の人に、時には自分の状況を相対視してみたらいかがですか、と問うているだけです。 

※お断り　アップした後、指摘のあった誤解を招く表現は修正しました。
繰り返しますが、私は７５％だとか、２３％だとかいうとり方によって変化するような数値にこだわるのは、ナンセンスだと言っています。
「本土はまったく基地負担していない、沖縄にだけ押しつけている」という、沖縄県民独特の誤解を、私の育った神奈川を通して書いただけです。誤解なきように。