植村記者を「受難のヒーロー」に祭り上げさせるな
私は植村記者を追いかけ廻すことには賛成できません。そんなつまらないことは、やめたほうがいい。
この植村隆氏という人は、日本のマスメディアという腐った大きな枯れ木の一部でしかありません。しかも本体から捨てられてさまよう、切除された盲腸のような存在にしかすぎません。
職場に抗議文を送る人が大勢いたようですが、何をしたいのかさっぱり分かりません。雇用先に文句をつけてどうなるというんでしょうか。
要するに、彼の言説に対する批判を、彼の社会的生活の抹殺と重ね合わせてしまっているわけで、問題のとり違いもはなはだしいと思います。
言論には言論で決着をつける、これが鉄則です。もちろん、その言論に応じようとしない植村氏にも大いに問題がある訳ですが、だからといって北星学園相手にしてどうなるんです。
そういうことをしているもんだから、朝日と同じ穴のムジナの連中から、植村氏の社会的迫害を取り上げて、彼の言説がまるで正しかったかのようなすり替えが起きてしまう結果となります。
慰安婦論争の論理内容で手も足もでなくなったために、今度は「植村記者」を英雄にでっち上げて、お涙頂戴で挽回しようとするさもしいやり方です。
かくて今や植村氏と北星学園の学長は、「言論の自由を脅かす勢力と戦う自由の戦士」ということに祭り上げられてしまったわけです。
こんなつまらない角の突き合いしていると、どんどんと本質的議論から逸れていってしまいます。
朝日新聞のようなバイアス・メディアには、逸れれば逸れるほど好都合でしょうが、今まで地道に慰安婦問題を追いかけてきた者にとっては、たまったものではありません。
実際に、TBSのNEWS23(12月23日)は植村氏特集を組み、こう報じています。この中でキャスターの膳場貴子氏はこう言い放っています。(下写真)
(写真 TBS NEWS23より)
「暴力によって言論を封殺して大学の自治を脅かすって、これ絶対に許しちゃいけないことですからね。それから気になるのは、この一連の圧力の背景に、歴史の事実とかそういうものを変えようとする、そういう勢力がバックにいるっていう、そこが非常に気になるところです」
おっと、これは聞き捨てなりませんね。なんですか、その「歴史の事実を変えようという勢力」とは。まるで、「歴史修正主義者のネオナチめ」とでも言わんばかりの言い方です。
まさに今現在、その「歴史の事実」を巡って、日本で激しい論争が起きているわけで、その過程で朝日は大敗し、誤報の事実を認めたわけです。
それでも読者にきちんと向き合った検証をしていなかったので、朝日自身が選んだ識者による第三者委員会から手厳しく批判されているのは、このブログでも取り上げました。
それを「歴史の事実を変えようという勢力」と切って捨てる言い方を平気でするTBSに対して、私はふざけるな、と言いたい。
早晩こういうことを言うマスコミが出てくるだろうとは思っていました。
池澤夏樹、内田樹、香山リカ、姜尚中、森村誠一、和田春樹、そして野中広務といったお約束の面々が作った「負けるな北星の会」が出てきた時、テーマをこの方向に逸らすつもりかなとは思っていましたが、こうも早いとは驚きです。
なんとTBSは朝日新聞第三者委員会の報告書とまったく同時期にぶつけてきたのですから、朝日謝罪によるインパクトを「言論に対する強迫や暴力との闘い」という別次元の方向に逸らす意図があるのは明白です。
こういったバイアス・メディアは、朝日や植村氏の対応にはひとことも言及していません。
朝日は、慰安婦問題における他のメディアからのさまざまな批判に対して一貫して、「取材は事実に基づいていているので、間違いない」の一点張りでした。
植村氏に至っては、多くのメディアのインタビュー依頼をはねつけて、築地の本社深く匿われて音無の構えでした。
このような彼らの批判を黙殺するが如き対応が、怒りを増幅させたのは疑いないことです。
ところが、植村氏が朝日の庇護から離れた為に、彼個人にバッシングが集中しただけの話で、それにはそれなりの理由があるのです。
それを「歴史の事実を変えようという勢力がバックにいる」などと、まるで抗議する人たちを操る陰謀団でもいるみたいです。バカか。
とくに慰安婦問題におけるTBSの悪質さは突出しています。TBSは、いままでに報道特集やザ・スクープなどを使って、慰安婦強制連行説を拡大してきました。
朝日に並ぶ慰安婦歪曲報道の当事者に相当するといってよいでしょう。
(写真 1991年12月TBS報道特集。「強制連行」とはっきり表現していることに注意)
私はこの報道特集をリアルタイムで見ています。今改めて再録された同番組(※)を見ると、吉田はこう述べています。
※https://www.youtube.com/watch?v=fFiHshGm55A
(写真 報道特集で紹介される吉田清治。右は村上雅通氏。吉田の詐欺師ヅラが気色悪い)
「撲は1,000人ばかりの女性を連行した。家の中から引っ張り出して道路に座らして、慰安婦として使えそうな女を警察のトラックに部下たちが、棍棒で殴り付けて放り込んで連れてった」
「女の徴用で一番気をつけなきゃならんのは自殺。もう朝鮮を出る時から、とにかく自殺防止だけしか考えてない。よく自殺されたよ、海に飛び込んでしまうもんね」
「何万人の植民地女性を国家最高の大本営がこれを実施した。これを私は証言する」
上の写真にある吉田の自称肩書の「山口県労務報国会・動員部長」は詐称です。
吉田は確かに労務報国会下関支部に在籍してはいましたが、動員部長ではありませんでしたし、そもそも報国会は勤労動員のための組織であって、慰安婦募集とはなんの関係もありません。
また仮に百歩譲って、済州島で慰安婦狩りをしたとのが真実だとしても、朝鮮総督府管内には朝鮮労務協会が存在していて、越境行為になります。
まして吉田はこの慰安婦狩りに兵隊を連れて行ったというのですが、報国会に軍に対する指揮権はありません。
吉田は、慰安婦狩りの命令書も偽造して本に乗せていますが、その<西部軍⇒山口県知事⇒主下関警察署長⇒労務報国会>という命令系統はデタラメで、行政や警察は軍の下部組織ではありません。
なお、本名も清治ではなく雄兎で、わずかこの一枚の写真の中だけで、真実は何もないというシロモノです。
このような、少し調べれば分ることを、まったく裏取りもしないで、そのままTBSは報じたわけです。
あげくに報道特集は、「吉田に命令を下した上層組織」を大本営と断定し、ナレーションの背景に靖国神社と菊の御紋をクローズアップして、国の関与を印象づけています。
またこの番組の中で村上雅通報道記者は、こうも言っています。
「実際、私が取材しましたが、旧日本軍とか強制連行の担当者は、当時の終戦後、資料をすべて燃やしてしまったと証言しています」
これが事実ならば、匿名でもかまわないので、ぜひ歴史家のインタビューを受けさせるべきです。
そのような人物がいたとすれば、これこそ決定的な証人だといえるからですが、不思議なことにそれ以降、そんな人物4は音沙汰がありません。
今になって見ると、よくもこれだけ嘘八百をと苦々しく思いますが、リアルタイムで見た当時の私にとって、抽象的に「日本軍の侵略」などと言われるよりも、あざといまでに生々しく具体的なこの吉田証言は、深い自国への失望と嫌悪の念を芽生えさせたのは確かでした。
おそらくこれを見た多くの視聴者も、同じ感想をもったはずです。
私の知人には、テレ朝のドラマのワンシーンにあった、木剣を振るいながら韓国の婦女子をトラックに詰め込む憲兵の場面を、長く真実だと思い込んでいた人もいます。
映像というのは、ある意味活字よりはるかに訴求力が強いのです。
さて、朝日への批判の影に隠れて、TBSは頬かむりと居直りを決め込んでいます。石原TBS社長はこう傲慢に言い放ちます。
「証言の一つとして吉田氏の発言を使った。番組全体として偏ったわけではないので、特段問題はないと考えている」(共同14年10月1日))
嘘をつけ、なにが「証言のひとつ」なものか、全体が吉田の偽証を大々的に報じ、その上に「証拠隠滅の証人がいる」などという誤報まで付け加えています。このどこが「偏っていない」ですか。
同じことを、朝日第三者委員会報告が出た後も言えるのか、石原社長に聞きたいものですが、この社長の通り一遍のコメントとNEWS23の内容を見れば、どうもそのつもりのようです。
自分たちは慰安婦強制連行を率先して報道してきておきながら、強制連行説が破綻したとなると一転して、「報道の自由」の問題にする姿勢は、まさに議論のすりかえ以外の何者でもありません。
問題は、「報道の自由」などではなく、ましてや「学園の自治」などではさらになく、報道の誤謬による歴史の歪曲なのです。
歴史の偽造を続けてきたTBSに、「歴史の事実を変える」なんて言われたくはないですな。
TBSさん、決めつけとすり替えはもういいですから、自社の慰安婦報道の検証をされたらいかがでしょうか。
« 週末写真館 湖岸の散歩 バランスのよい歴史観を求めて | トップページ | 新聞社は運動体ではない »
膳場さんももう少しマトモな人だと思ってたんですが、これはエグいですねえ。
TBS、悪質です。
昨日も「報道の日スペシャル」なんて延々とやってましたが、こと政治・軍事関係については印象操作編集のオンパレードで、関口宏さんが相変わらずの安倍自民憎しの憶測発言ばかり。どこが「報道」なんだか…。
かつて「報道のTBS」なんて言葉もあったくらいですが、見る影もありませんな。
同系の毎日新聞1面トップ見出しなんて、予算の都合で未だに装備していなかったイージス艦のデータリンクを漸く付ける話を、
「海自艦に集団的迎撃装置付加」
でした。これじゃ明らかなミスリード狙いの印象操作。
投稿: 山形 | 2014年12月29日 (月) 06時25分
いつも楽しみに見ています。そして勉強させてもらってました。
TBSはオウム真理教坂本弁護士一家殺害の原因となったビデオ問題で本当は廃業になるべきでした。その後、この慰安婦問題に乗じて反政府、反日体制を強化したように感じます。
自分も両親が朝日新聞愛読者でこの慰安婦問題も本当だとずっと信じてきました。つまりメディアの望む左翼日本人になっていました。
この番組も両親と見て日本とはどんなひどい国だったかとショックを受けた記憶があります。
日本のメディアを取り締まる機関の権限を強めたいけど表現の自由を掲げられ誰も手を出せない状態なんですね。
国民一人一人が目覚めるしかないのでしょうか?
投稿: 岩手 | 2014年12月29日 (月) 12時51分
朝日の次はTBS。
毎度の自作自演の言論封殺。
今の自分なら騙されませんが、まだまだテレビは強いですね。
投稿: プー | 2014年12月29日 (月) 17時47分
こういった偏向報道を続けて誰が困るか。 結局自分たちに返ってくるだけであろうと思います。
時間が経てば経つほど見る人間、読む人間は減っていきます。また捏造か偏向か、日本を貶めてるよ、もうウンザリだという風に。
今、彼等は真綿で自分たちの首を絞めていることに気づいてない、あるいは気づいてもまだ大丈夫だと思っているのでしょう。
投稿: Q州 | 2014年12月29日 (月) 20時51分