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2015年2月 5日 (木)

ISILの標的はヨルダン政府だ

B879phkcmaat1cdISILによってヨルダン空軍中尉ムアーズ・カサースベ氏が殺害されました。ご存知のように、考えるだにおぞましい、檻に入れて生きたまま焼き殺すという非道な手段でした。 

おおよそ人間が考えつく方法とは思えません。彼らの性格が改めてはっきりしました。

非業の死を遂げたカサースベ氏に哀悼の意を捧げます。またご家族、ヨルダン国民すべてに対して、哀悼と連帯の気持ちを捧げます。 

ヨルダンの皆様が、今回の日本人人質事件において見せていただいた温かい気持ちは、多くの日本人に感動を与えました。 

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ムアーズ・カサースベ氏は、享年26歳の若さでした。生まれは首都アンマンの南140キロの古都カラクです。空を飛びまわる少年の夢を叶えて、空軍士官学校を卒業して、少数の選ばれた者のみが許されるファイティング・ファルコンの操縦桿を握ることができました。 

愛機の前で微笑む生前の彼の姿を見ると、プライドを持つ者にしかない落ち着きを感じます。

去年花嫁をもらい、人生においても幸福の絶頂でした。

そして2014年12月24日に、ISILの「首都」ラッカで作戦飛行中に墜落し、悪魔の軍団の虜囚となりました。 

殺害されたのは捕らえられて10日後の1月3日だと、ヨルダン政府は発表しています。 

つまり、1月29日にISILの出したサジダ・リシャウィ死刑囚を日没までに国境線まで連れてこないと、後藤氏とカサースベ氏の両名を殺害するという要求は、既に中尉が殺害されていた以上、まったくデタラメだったわけです。 

後藤氏との「人質交換」と、既に殺していたカサースベ氏を関連づけて、ヨルダン政府と日本政府を共にペテンにかけようとしたのです。 

日本の一部のマスコミが主張していたように、日本政府がヨルダン政府に圧力をかけて後藤氏と死刑囚の「人質交換」に応じさせてしまった場合、どうだったでしょうか。 

おそらく、ISILは死刑囚を奪還したことを大々的に「戦果」として報じた後に、中尉の殺害を得意気に公表したことでしょう。 

ISILの罠に落ちたヨルダン政府と国王の威信は泥にまみれ、そのような圧力をかけて恥辱を与えた日本に対する怒りの声で満ちたと思われます。 

ヨルダンと日本の反目、ヨルダン王室の弱体化、ヨルダンの内紛、対テロ有志連合からの脱落、これこそが、ISILが狙った政治的目的です。 

現在ヨルダン国境周辺に迫るISIL軍がこの内紛に呼応すれば、中東で数少ない安定した国家であるヨルダンもまた、「統治されない空間」の混沌にころがり落ちる危険がありました。 

まことに残虐にして、卑劣な手段ですが、おそらくヨルダン政府は、その優秀な情報機関(GID)から、高い確率で中尉は殺されている情報を掴んでいたように思えます。 

一方、ヨルダン政府は公式声明で安否を確認しています。これはヨルダンが公式、非公式を問わず、ISILと交渉パイプを持たないことを意味しています。 

そのような交渉パイプが存在すれば、当然非公式に中尉の安否情報は再三確認しているはずで、わざわざ公式声明で安否情報を問うのは、それがない証拠です。 

先日の国会で辻本清美氏が首相に、「20日以前の交渉が大事だったのに政府は怠ったのではないか」というような質問していました。 

ビデオ脅迫がある前から日本政府は、後藤氏と湯川氏が捕らえられたことを知っていました。当然11月に後藤氏に来た20億円の身代金要求のことも知っていました。

この状況でありえるオプションとして、フランス型の秘かに身代金を支払うという手段があります。

当然、政府はこれも考慮していたはずです。実際、今までの99年キルギス、07年イランのケースでは、外交機密費から数億の金が支出されたという未確認情報もあります。

あったとしても不思議ではないし、それはそれで秘密裏に行なわれるならば、それもひとつの現実的解決の手段なことは確かです。

しかし、それが不可能になる事態が起きました。それが11月の最初の身代金要求からわずか1か月後に起きた、12月24日のカサースベ中尉の捕虜事件です。

ヨルダン政府は、ISILの要求である人質交換を頑としてはねのけます。

こんな要求を一回呑んでしまえば、ヨルダン政府の威信が地に落ちるだけではなく、ひんぱんにヨルダン軍兵士を拉致して人質要求を繰り返されることが目に見えていたからです。

ヨルダン政府のISILに対する回答は、1月の米軍特殊部隊との協同での実力奪還でした。

このような切迫した状況下で、わが国のみが身代金を秘密裏にでも支払うことが可能でしょうか。

ヨルダンとの信義を全部ぶち壊す気なら可能でしょう。しかし、それはヨルダンの「今、そこにある脅威」であるISILに巨額の資金提供をすることも同じです。できるはずもありません。

こうした中、ISILは事態が膠着したとして、戦術転換を図ります。1月3日にカサースベ中尉を処刑し、20日には日本に対して改めて脅迫ビデオを公表します。

20億円を払うことを拒否している相手が、240億円を払うわけがありません。これは単なるバザール商人もどきの吹っ掛け、ないしは、世界に法外な要求をしてみせることによる力の誇示にすぎません。

ISILのターゲットは当初からヨルダン、正確に言えば、ヨルダン王室でした。このことはしっかりと押えておく必要があります。

ISILは、後藤氏と人質交換を求めることで、ヨルダン国内で、「死刑囚を日本人と交換するより、ヨルダン軍パイロットと交換せよ」という世論を作り出そうとしました。

現にカサースベ氏の父親はそのような主張をして、国王批判を繰り返していました。

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もし、日本がヨルダンに圧力をかけて人質交換を迫った場合、ヨルダン政府批判から王室打倒のデモにまで発展する可能性がありました。

この最悪シナリオは、ヨルダン政府と安倍氏の原則的な対応でからくも回避されました。

さて、20日の脅迫ビデオを見て、すぐに「2億ドル払え。命が大事」と叫んだ皆さん、そして人質交換を拒否したヨルダン政府に対して、「ヨルダン政府が約束を違えたから後藤さんが殺されたのだ」と言ったマスコミ、あなた方が言うとおりにしていたら、一体どんなことになっていたでしょうか。

この日本人人質事件は、ヨルダンのカサースベ中尉捕虜事件とシンクロしており、日本だけの利害では動けなかったことを理解すべきです。

これが決定的に、今まであった日本人人質事件とは本質を異にする点で、国内しか見えない人には理解できないようです。

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コメント

ヨルダン政府はハッキリと『報復』宣言してリシャウィ死刑囚の死刑執行をおこないましたが、あれは国内向けの宣言でしょうね。
死刑の是非は置いといて、その国家において死刑確定囚をいつ執行しようが、決めるのは国ですから。

昨夜NHKのNEWS WEB 24を観ておりましたが、連動ツイート(明らかにNHKが都合良く抽出して表示してますが)する連中、「報復は何も生まない」とか「暴力の連鎖につながるだけでは?」なんて、お花畑なツイートばかりで呆れました。
彼らは、根本的に過激テロ集団と国家を同列に見ているという間違いをしています。

辻元清美かあ、福島瑞穂同様にテンプレそのものの人ですから…。

国会では相変わらず内向きで後ろ向きな議論ばかりが飛び交ってますね。
ああいう風に言ったのがいけなかっただの、こうすべきだっただのと、
揚げ足取りばかりに終始して、何ら建設的な意見が出ません。
まさに木を見て森を見ずとはこのことでしょう。
今回の事件が民主党政権下で起きなかったことだけがせめてもの幸いです。

辻元清美ねえ。
民主党もこういう手合いと手を切らないと、
政権政党を目指しているとは誰からも思われないでしょうね。
害毒以外の何ものでもありません。

ISILも賢いのかバカなのか分かりませんね。
緻密な離間作戦を実行したと思えば大事な人質を殺すなんて。

焼き殺すなんて末端兵士のバカッターです。
しょうがないから聖戦として取り繕ってみた、というところでしょう。

日本政府・ヨルダン政府も踏ん張りどころですが、ここを乗り切った後はISILの方が意外と簡単に崩れてくれるのではないでしょうか。

辻本氏は単なる例示ですので、あまりこの人にこだわらないで下さいね。

少々言葉が過ぎたかもしれません。
ご迷惑掛けて申し訳ありませんでした。

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