ギリシア、弱者の恐喝・瀬戸際外交
ギリシアが今、EU相手にやっているのは、北朝鮮ばりの瀬戸際外交です。
「オレは金は借りたが、返したくないゾ。さぁ、取れるなら取ってみやがれ。オレはスッポンポンだぁ!オレが自爆したら、お前らも巻き添えじゃぁ!」(←文太さんの声でね)とばかりに、証文の上でフンドシ一丁、ポリタンとマッチを持ってタンカを切っているのがギリシアです。
なんか昔の極道映画のワンシーンみたい。
怒らせると本気で火をつけそうでコワイ。つまりハード・デフォールト(債権不履行)という最終手段を取る可能性があります。
なんせ借金は積もり積もってもはや天文学的的ですから。
(図 ギリシアとユーロゾーン平均のGDP対比債務残高。青線がギリシア。緑線がEU平均 出典Wik)
実際に取った場合、ギリシア経済は一時的に壊滅状態になって、国民の生活はどん底になりますが、ユーロ離脱⇒独自通貨ドラクマへの復帰にはもはやこの手しかないかもしれませんね。
ユーロはこのヤケのヤンパチを折り込み済みなのは確かですが、なんとか折り合いをつけようとしています。
ユーロ圏財務相会合がこの16日に開かれるようです。もちろん議題はこの瀬戸際外交をしている困ったクンです。
「デイセルブルム議長(オランダ財務相)13日、ギリシャの債務問題をめぐり来週16日のユーロ圏財務省会合で合意が得られるか、「非常に悲観的」な見通しを持っていると述べた」(ロイター2月14日)
やる前から議長のオランダが、無理じゃないっすか、と言っているのが悲しい。
というわけで、ギリシアのEU離脱は折り込み済みと言いながらも、ギリシアに貸し込んでいるユーロ各国の金融機関の連鎖的崩壊が始まったら一大事だ、というのも悩みのようです。
この悲観的状況を受けてギリシアの国債金利は、10%前後で推移するという危険ラインを動いています。
いや、これで驚くのは早い。2011年の10年ものなどなんと36.5%ですぞ。
すごい高利ですねぇ。今買っておけば、大変な利子がつきますが、よほどの物好きじゃなければかわないでしょうな。
長期国債はとうぜんのこととして、単年度の短期国債ですら、パーッになる可能性が高いもんね。
日本の10年物国債の利回りが今週0.5%を最近下回っていて、1%を切るというだけでも驚きなのに、今は0.5%を下回っているのと対照的です。
ちなみにドイツは0.3%、フランスは0.64%と軒並み超低利です。同じ財政危機のポルトガルでさえ2.39%ですから、ギリシアのひとり負けです。
いかに買い手がつかないか分かりますね。
日本がギリシアみたいになるぞとオオカミ少年していた財務大臣、後に総理のカンさん、反原発もいいけど、国債市場も見ているか~い。
同じことを言っていた財務省の論者の皆さん、元気ですかぁ。
金融緩和をすると国債の不信任が生じて、金利が上がるとの財務省と一部のエコノミストの強い期待を裏切って、日本国債は目下世界最低水準を驀進中です。
これは日本の国債が、ほぼすべて国内債権市場で捌けてしまうからです。日本の場合国内銀行が約39%、生保が約21%、社会補償基金が10%と、ほぼ完全に国内で売れてしまいます。
刷るそばから売れるんですから、大変です。しかも100%円建てです。
これは日本製在の安全・安心の財産であると同時に、いかにデフレが長期化していて、国内で設備投資などの資金の借り手がいないということでもあります。
つまり、国内で資金需要が不足しているために、手堅い国債を買い込んでいるわけです。ですから、国債を発行して、日銀が買い込むという芸当も可能です。
この自分で国債を刷って、中央銀行が自分で買うというのは、米国の連邦準備制度理事会(FRB)も大ぴらにやっている、デフレ対策ですが、ギリシアには絶対に不可能です。
なせなら、ユーロ圏にいるためにユーロという通貨は「みんなの通貨」(共通通貨)で、ギリシアの勝手は許されないからです。
かつての独自通貨ドラクマ時代なら、2ツの手が使えました。ひとつは通貨量を増やしてドラクマ安にもっていく為替政策であり、もうひとつが国債の中央銀行買い取りです。
この手段が使えないのが、致命的です。ギリシアは経済政策的に自力でこの経済崩壊・財政崩壊から脱出するのは無理ということになります。
今のような経済破綻と財政破綻が重なると、ギリシアの銀行すらギリシア国債を買いません。
むしろ安全なドイツ国債を買うでしょう。他国にいたっておやです。誰がこんな紙切れになる心配のあるギリシア国債を買うわけがありません。
国債が売れなければ、金が政府に集まりません。それでなくても脱税文化がはびこっているのですから、徴税からも絶望的です。
あとは、公務員の大量解雇や、公共事業の大幅削減、社会保障費の大幅切り下げなどのドイツがやらしたがっている緊縮財政ですが、「国民の生活が一番」という小沢さんみたいなことを掲げて当選した左翼政権には絶望的に不可能です。
となると、気の毒ですが、もうなにも手段が残っていませんね。
そこでゼネストとか、国民投票、あるいは左翼政権による「革命」という「経済外的手段」に頼るしかかないことになります。
国民投票は前のパパンドレウ政権が緊縮要求受け入れの時にチラつかせたのですが、そもそも経済政策を国民投票で決めること自体がバカです。
安全保障や経済政策は、国民投票や住民投票で決定すべきことではありません。行き過ぎた民主主義です。
政府から「あんた方の生活が苦しくなるのに賛成か、反対か」と聞かれて、はい賛成ですなんて答える国民はいません。
そういえば、今、与那国で自衛隊の配備を、外国人や子どもまでに投票権を与えて実施しようとしていますが、ギリシア並にありえません。
それはさておき、かくて、今やっているのか、弱者の恐喝である瀬戸際外交というわけです。
ここまで来ると、単なる経済・財政破綻というより、「国家の信任」という最大の価値が崩壊しかかっていますから、今後はもうイチかバチかのデフォールトしかないということになります。
いつまでもクズ債権の上で、マッチを持って「棒引きにしろ。いやなら歴史問題持ち出すゾォ」とすごんでいるわけにもいかないんですから。
根本的な問題として、もはやユーロという「壮大な実験」は出口が見えてきたといえるのではないでしょうか。
最適通貨圏である独・仏・ベネルックス諸国あたりでストップすべきだったのです。
この範囲なら充分に安定していたのでしょうか、南欧州諸国や、ましてやギリシアなどまで入れたために、収拾不能になりつつあります。
そういえば、私の記憶が確かならば(←料理の鉄人かって)、東アジア共同体なんて言っていたクルクルパーがいましたが、中国と韓国との共通通貨でも考えていたんでしょうかね(大爆笑)。
共通通貨ほどコワイもんはないのにね。
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コメント
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ギリシャの今の無理ゲー度は、例え首相が高橋是清でも朴正煕でもソフトランディングは不可能なレベルでしょうね。
時間と共に債務は膨らんでいくので、むしろ無能な人にやらせて早く破綻させた方がまだしも損害が少ないというものです。
投稿: プー | 2015年2月16日 (月) 10時57分
いつも勉強させてもらっています。
日本国債については現状では管理人様の指摘の通りですが、そのまま推移する保証はありません。「いかにデフレが長期化していて、国内で設備投資などの資金の借り手がいない」かは、喜ぶべきか悲しむべきか微妙です。日本経済が回復基調になれば、国債も今のように消化はできなくなるでしょうし、このまま回復しないのも・・・という心配もあります。
より深刻なのは、働く世代が減ってきますので、これまで貯蓄をしていた世代が消費に回ります。すなわち退職後の資金を使い始めます。これは労働者世代が減少し、年金世代が増えて行く以上、不可避です。そのため、これまでのようには国債は消化できなくなりますので、今は大丈夫でも早めに国債発行額を減らせるようにすることは重要だと思うところです。
投稿: 東風 | 2015年2月17日 (火) 12時19分