野田元首相の危ない企み
相手が怒っていれば、とりあえず人間関係を損なわないように頭を下げて緊張した場を和ませてから話合いに入る、これが日本人のほとんど本能的とも言える習慣です。
「イヤー、申し訳ありませんでした。さて、その件に関しましてはですね・・・」という奴です。
「申し訳ない」、直訳すれば「弁解の余地がない」と言っておきながら、そこから話が始まるのですから、まったくわれらが民族ときたら・・・(苦笑)。
この作法は日本人同士ならまったく問題ないのですが、異民族、ことに夫婦喧嘩は家から飛び出して道路で、「アンタが悪い。ご通行中の皆さん、コレコレで亭主が悪い!」という風習を持つ中韓には通用しません。
日本がそうであるように、韓国人もまた、民族的習俗の虜なのです。
バククネ大統領は、この「家から飛び出して、路上で自分が正しいと叫ぶ」という朝鮮風作法を、まさにワールドワイドに展開してくれました。
2013年5月に就任後初めて訪米すると、初対面のオバマ大統領に対していきなりかましたのが、「日本は正しい歴史認識を持つべきてある」です。
おいおい、いきなりかい、と日本人はたまげました。
しかしこれはほんのオードブルで、その後の、米議会で演説でも延々と北東アジア地域の「歴史問題」についてレクチャーし、ほとんど眠っている議員を前に意気軒昂たるご様子でした。(←場が読めない人ね)(写真 2013年米国議会でのパク大統領の演説風景。議長以下全員が深い瞑想にふけっている)
その後の欧州歴訪では、行く先々で「告げ口」をしたために、「Tale-bearer Diplomacy」(告げ口外交)という英語名称の外交用語が出来たという噂があるほどです(笑)。
さらには、同年9月末に、日本の集団的自衛権などの合意を要請しに訪韓したヘーゲル米国防長官を相手に、「慰安婦の女性は今も深い傷を負っているのに、日本は謝罪どころか侮辱を続けている。だから集団的自衛権は反対だ」と、訳の分からない論法をかまして、顔をしかめさせました。
そりゃそうです。集団的自衛権の最大の受益者は韓国なのですから、なんでハンタイなのかヘーゲル氏にはさっぱりわからなかったことでしょう。
さて当時、このクネさんの場違いな怒りを向けられた我々は大いに戸惑ったものですが、これには、彼女を失望させた理由があったのが、先日わかりました。
なんと中韓は、クネさんが就任する直前の12年秋に、慰安婦問題で二回目の謝罪と補償をする合意に秘かに達していたのです。
なんだかナニワのお笑いコンビ「次長課長」みたいね(笑)。記事とはナンの関係もありませんが、比較参考のために一枚ペタリ。
これが公表されたのは、イ・ミョンバク前大統領が自伝を発刊して、その中に野田政権と慰安婦問題で合意直前であったが、政権崩壊のために至らなかったと書いてあったのです。
実はこれは、野田政権の「密使」として韓国に渡った斉藤勁( つよし)官房副長官が、去年にやや自慢げに朝日新聞に漏らしていたのですが、当の野田氏が否定したので宙に浮いた形になっていことです。
今回韓国側大統領の証言が飛び出したことで、どうやら事実であったことが確認されました。
朝日新聞(2013年10月8日)によれば、野田首相はイ・ミョンバク政権と秘かに交渉を行い、以下の3点でほぼ合意に達しました。
※朝日新聞ttp://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201310070533.html
※http://ianfukioku.blogspot.jp/2013/10/blog-post_8.html
「当時の複数の日韓政府高官によると、次官は
(1)政府代表としての駐韓日本大使による元慰安婦へのおわび
(2)野田首相が李明博(イミョンバク)大統領と会談し、人道的措置を説明
(3)償い金などの人道的措置への100%政府資金による支出
――の3点を提案した」
合意に至らなかった理由について斉藤氏は
「詰めの協議をしているうちに、首相が党首討論で解散を宣言してしまい、一方で韓国も完全に大統領選モードに入っていた。表現は、やる気さえあれば乗り越えられる問題だった。もう少し時間があれば合意できていた」
「慰安婦問題の支援団体は日本の法的な責任の認定を求めており、納得させられないのでは」との指摘に対して
昨年、解決に向けた努力をする中で、日韓の支援団体の方々とも会った。団体側も実際にはかけ離れた主張をしているわけではないことがわかった。日本側の提案に一定の評価さえも受けたほどだ」
斉藤氏の口ぶりでは、韓国政府とは微妙な謝罪文言の詰め段階まで進んでおり、挺対協や太平洋戦争遺族会などの慰安婦支援団体とも面談していたようです。
前回の村山政権時のアジア女性基金をぶち壊したのはゴリゴりの反日ロビーの挺対協ですから、ここから「評価を受けていた」となると、そうとうに「踏み込んだ」謝罪文言が野田政権側から提示されていたと思われます。
さて、ここに登場する斉藤官房副長官は、いままで名前を聞いたことすらない地味な政治家でしたので、ウィキで調べると政治的バックがよく透けて見える人物のようです。
今はこの密約直後の総選挙で落選。官房副長官という要職から一転して「ただの人」になってしまったようですが、地盤でもない山梨で再起を図ろうとしているようです。
(政治活動中の斉藤センセのお姿がほとんど見つからないので苦労しました)
正直言って、なんの感慨も湧かない人ですが、いちおうやってきた政治活動としては
・旧社会党出身
・神奈川県横浜が地盤
・参院当選2回・衆院当選1回
・2009年「政権交替選挙」において比例下位で当選
・国旗国家法反対
・戦時性的強制被害者問題解決促進法案の成立を目指す活動
・慰安婦の戦後補償要求活動
・在日韓国人の地方参政権運動
・植民地支配の反省とその子孫たちへの充分な補償を求める政治活動
・あの天木直人センセから「ほんものの護憲政治家」と激賞される
はい、ご苦労さまでした。ま、そういう、なんだかなぁ~というお人です。ひとことで言うなら、韓国の代理人、つまりバリバリのコリアン・ロビイストですね。
ただ問題は、それまでなんの政治実績もなく、政府や党の要職にも就いたこともなく、政治手腕も調整能力も未知数な斉藤氏を、なぜ官房副長官という要職に据えたかです。
当初から野田氏は、韓国と慰安婦問題の密約をしたいと思っていて、斉藤氏のコリア・ロビイストとしてのパイプを使いたかったということになります。
この謎を解くには、当時の民主党政権の対コリア外交の基調を知る必要があります。
それにしても、ひとりくらいはフツーな人かいるかと思いましたが、野田氏が首相のくせに自陣の<ゴールポストを動かす>とは!揃いも揃って、はぁ~(ため息)。
これらのことを国会に諮って審議した場合、衆参のねじれも加わって、このうちどれひとつとして通らなかったはずです。党内議論ひとつまとまらなかった政党だったのですから。
そのためか、民主党3代の首相かやった手口は共通して、首相が独断で党内討議も経ずに外で「言ってしまう」ことで、それをもって既成事実化していくという方法でした。
いみじくもカン氏は、政権をこう規定していましたっけ。「選挙で選ばれた時限つき独裁だ」と。
例によって長くなりそうなので、次回に続けます。
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コメント
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「tale」というと、おとぎ話や作り話、という意味合いが強いですから、やはり外国からは相手にされていない、ということですね。
しかし朴槿恵さんの怒りも全くの事実無根ではなく、野田政権で交渉中の慰安婦賠償が急に反故にされたのは、「国際的義務」に反する、と言うことは出来ます。
日本としては、合意などしてない、と突っぱねることが出来るしそうすべきだと思います。
投稿: プー | 2015年2月23日 (月) 08時50分
プーさん。
いやいや、(幸いにも)なにも締結されてはいませんから、国際公約違反などには当たりません。
我が国は、あくまで原則論で対処すべき事案です。
なんの国益にもならないことを、密約なんぞで解決を計ろうとしたバカどもこそ糾弾されるべきっていうだけの話。
いやあ、あのまま進んでいたら…恐ろしいですね。
投稿: 山形 | 2015年2月25日 (水) 15時28分