中国は国連創設国ではない
全体として見ると、中国王毅外相(外交部長)の、国連創設70年を記念する安全保障理事会の討論会における演説はそれなりに自制されていて、わが国への部分で、つい衣の下の鎧が出てしまったのでしょう。
議長席で、パンキムン事務総長が深くうなづいて、ニコニコと拍手せんばかりの姿が目に浮かびますね(笑)。
さて、パン事務総長の生温かい視線に励まされたのか、王外相は調子に乗って、こんなことまで言ってしまっています。
「戦後70年間、国連の創設メンバーで、安保理の常任理事国の中国は、常に国連憲章の精神に従い、国連の役割を支え、平和と安定を守ることに尽くしてきた。今日の開かれた討論会が、反ファシスト戦争勝利と国連創設70年の記念の序幕になることを望む」(25日付読売新聞)
日本へのジャブよりも、むしろこちらのほうが重要です。中国がどのように自分の国の現代史を見せたいのかということが、実によく現れています。
いわぱこれが中国の、「世界に見せたいボクの自画像」というヤツです。
整理します。
①中国は国連創設メンバーであった。
②戦後一貫して「平和と安定」を支えてきた。
③反ファシスト戦争は中国が戦った。
まぁ、よくもウソばかりと思いますが、まずは、①の「国連創設のメンバー」という部分です。すいません、笑わせないでください。
「国連」が創設された1945年10月時点において、中華人民共和国は「創設メンバー」どころか、国家ですらありませんでした。
戦後の枠組み作りのための「サンフランシスコ会議」(「国際機構に関する連合国会議」)は、日本がボロボロになっていた1945年4月から6月26日に開催されました。
6月23日が沖縄陥落ですから、日本に止めを刺すべく広島、長崎の原爆が準備されている時期でした。
このサンフランシスコ会議に、主要「連合国」として招聘されたのは、米英ソ、そして中華民国でした。
下の写真は、この会議の2年前の1943年11月に開かれたカイロ会談の写真です。蒋介石が中国を代表しているのがお分かりでしょう。
この構図は、国連から中華民国が「追放」される1971年まで変わることのない国際認識でした。
基本的に、これにソ連を加えた構図がサンフランシスコ会議に継承され、「国連」を作り上げていきます。
ですから、当時の正統な「中国政府」とは、国民党政府のことです。
中華人民共和国が建国されたのは1949年10月1日のことで、国連が創設されてから4年後のことでした。
この日本敗戦の1945年から1949年までの間、なにが中国大陸で起きていたのかといえば、対日戦争よりいっそう激烈であったと言われる第2次国共内戦でした。
皮肉にも、日中戦争による日本軍の支配により維持されていた「平和」は、日本軍が撤退すると同時に崩壊し、中国全土を戦乱にまきこんだわけです。
ちなみに、中国が出す日中戦争の犠牲者数は、この国共内戦時のものとゴッチャにしてカウントされることがたびたびありますので、ご注意ください。
中国が国連に加盟したのは、1971年の第26回国連総会でのことで、国連が創設てから実に26年間も経過してからの加盟でした。
未だ国連憲章23条安保理常任理事国の条項に、記されているのは「中国」とは中華民国のことであって、中国は、アルバニア決議によって追放された中華民国に替わって権利を継承したにすぎません。
決議案の名称「中華人民共和国の合法的権利の回復」は、タイトル自体が問題で、そもそも国連には中国は加盟してすらいませんでした。
正確に言い換えるならば、「合法的権利の回復」ではなく、「合法的権利の取得」、あるいは「中華民国からの合法的権利の継承」にすぎません。
念のため国連広報センターが出している、国連憲章を参照してみることにしましょう。
※国際連合憲章 | 国連広報センター
●第23条
- 安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。
総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。
と、まぁご覧の通りです。当時から中国代表権問題は、もめていました。(図ウィキ)
緑が賛成国 赤が反対、青が棄権ですが、日米が反対に回り、社会主義圏が賛成票を投じています。
アルバニア案となっていますが、これを画策したのは、当時まだ蜜月時代にあったソ連です。
ソ連は、常任理事国内で、常に米英仏中の4票に押されていたために、それを盛り返すために、「中」の駒を親米の中華民国ではなく、反米の中華人民共和国にしたかったわけです。
これか今に至るも、国連の機能不全の最大の原因となっている中露の拒否権発動という事態へとつながっていきます。
というわけで、中国は「国連」創設当時は、中国大陸周辺部の山岳地帯で活動するゲリラ集団にすぎませんでした。
国ですらなかったものが、「国連の創設メンバー」になれるはずがありません。王さん、図々しいよ。
次回に続けます。
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国連(先勝国)の核クラブ(安保理)なんて、いかにいい加減なものやら…ということです。なんで中国(共産党)が入り込んでんだ?という。
で、加入すら認められなかった南朝鮮から、いきなり総長が出てきて…何もしない、という無能全開(笑)
ああ、吐き気がしてきた。
投稿: 山形 | 2015年3月 3日 (火) 08時26分
王毅さんて中国の中ではそこそこまともな人かと思ってましたが、
やっぱり同じ穴のなんとやらですか・・・
思いっきり人の褌で相撲をとってるわけですが、
まあ手刀で零戦を真っ二つに出来る国なんで何でもありなんでしょう。
こういうのを厚顔無恥というんでしょうね。あ、中国だから紅顔無恥かな。(笑)
日本語訳された中国の掲示板への書き込みを時々見るんですが、
中国が日本に勝った事なんて抗日ドラマ以外には無いとか、
一般の人達は結構冷静で共産党に対して批判的なのに驚きます。
共産党の一党独裁も遠からず瓦解するのかもしれません。
ただそうなったらそうなったで、
今の中東のようなカオス状態になってしまうのも困りますが。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2015年3月 3日 (火) 13時01分
大変勉強になりました。
中国が国連に加盟しているのかどうか、
よくわからなかったのです。
これまでのいきさつがわかり、理解しました。
私は国連を全くわかっていなかったと思います。
けれど私のように、平和の為に存在している、と誤解している人は多いのではないかと思うのです。
この団体は何の意味があるのか、不思議です。
投稿: ちかです | 2015年3月 8日 (日) 16時16分