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土曜雑感 朝日新聞インタビューに見る、翁長氏の「面白さ」について

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「なんだかな」さん。 

なんか勘違いがあるみたいですか、私は別に、翁長氏をけっこう「好き」ですよ。正確にいえは、喰えないタヌキであるうちは好きです。 

今はタテマエばかりで、つまらんと思っていますが、これも芸のうちと生ぬるく見ています。 

むしろ私が苦手なのは、平和センターの山城某のような、「ナイーブまっすぐ君」みたいなタイプです。10代の自分がそうでしたからね。 

たとえば、例が悪いかもしれないが、あの開戦前夜の時期に、東條英機みたいなタイプの指導者を得たのは悲劇でした。 

あの男は、石原莞爾に「上等兵」と小馬鹿にされていたように、部下には優しく、規律を好み、小心で、几帳面、そして純粋でした。 

したがって、こういう男に限って部下に投降の権利を与えないで、自害させてしまう、とんでもない指揮官になっちゃうわけです。 

アングロサクソンは、俘虜になッた場合、「ありとあらゆる方法で脱走しろ」と教えていました。 

脱走によって、それを捜索する部隊を作らねばなりませんから、手間がかかって、戦力が落ちるんです。 

映画『大脱走』の中で、アッテンボローが、すぐに脱走委員会を作り始めますが、あれは実話です。 

しかし、わが東條閣下は、「俘虜の辱めを受けるな」というわけで、主観的にはその兵士の名誉を守ってやっているようで、真逆なわけです。 

ですから、俘虜になった瞬間に日本軍の兵士は、あ~これて戦争が終わってしまったと解釈します。 

日本軍最強の抵抗をした、硫黄島の栗林兵団は、万才突撃と自害を禁じていたのは、偶然ではありません。

山本七平が『一下級将校の見た帝国陸軍』という本の中で、今まで玉砕覚悟で戦っていた日本兵が、尋問にペラペラと答えている情景を書いています。 

これは、いかにもありそうなことで、日本人の脆さを考えさせられました。 

こういう東條みたいなタイプを、山本七平はこう言っています。 

「信仰箇条を挙げるとすれば、社会ハ悪。我は善ナリ。そして、純粋を尊ブベシ」。

指導者も指揮官も同じです。喰えない、清濁併せ呑む「悪者」のほうが、結局は民の利益になるのです。

翁長雄志さん

 さて今私が、翁長さん、どうしちゃったの、というのが、隠れ「翁長ファン」の私の心配です。

あ、誤解を呼びそうな表現ですので、お断りしておきます。

もちろん私は翁長氏の徹底した批判者ですが、翁長氏の人となりに含まれる島人らしいずるさ、こすからさ、たくましさ、しぶとさ、そして生々しさが「好き」だと言う意味です。

私が翁長さんをイイなぁと思うきっかけは、彼の2012年11月24日付けの朝日新聞とのインタビューを読んだあたりからです。※「翁長雄志さんに聞く沖縄の保守が突きつけるもの

このインタビューは、シッチャカメッチャカで、今のようにおエラクなってしまったために、、妙にこじんまりと、「上目線だ」などとブツブツ繰り言を言っている翁長氏とはまったく違って、妙に生々しくて面白い。ぜひご一読を。 

その中で翁長氏はこう言っています。 

――「いまはオールジャパン対オール沖縄だ。沖縄の保守が革新を包み込まねば」と発言していますね。
 「沖縄の中が割れたら、またあんた方が笑うからさ。沖縄は、自ら招いたのでもない米軍基地を挟んで『平和だ』『経済だ』と憎しみあってきた。基地が厳然とあるんだから基地経済をすぐに見直すわけにはいかない、生きていくのが大事じゃないかというのが戦後沖縄の保守の論理。一方で革新側は、何を言っているんだ、命をカネで売るのかと」

いいですね。まさにその通りで、私は一貫して書いてきたつもりですが、沖縄は「基地」というシロモノを「押しつけられた」という側面と、それを利用して生きてきたというふたつの側面があるのです。 

反発と依存と言ってもいい。前者に立てば怒りとなり、後者に立てば諦観となるわけですが、実際には目先の利害に汲々として、一般シマンチュウはそんなメンドーなことは考えてみなかったというのが、おおかたではないでしょうか。 

本土政府が「基地」を寄こすなら金を出せ、と本音を言ってしまったら身も蓋もないから、本土に向って言う時には、大江健三郎みたいに「基地のない平和な島」という建前の方で揺さぶるというわけです。 

だから、本音が保守、建前が革新、このような役割分担でうまくやってきた、とまぁそう思ってわけです。

記者がいみじくも言うように、「保守が革新を包んできた」というのが実態だったのです。 

今回、この磐石の構図を壊しちゃったのが、他ならぬ翁長さんでした。その理由を、翁長さんは率直に、鳩山チャブ台返しが原因だ、と言っています。

「自民党でない国民は、沖縄の基地問題に理解があると思っていたんですよ。ところが政権交代して民主党になったら、何のことはない、民主党も全く同じことをする。
僕らはね、もう折れてしまったんです。何だ、本土の人はみんな一緒じゃないの、と。沖縄の声と合わせるように、鳩山さんが『県外』と言っても一顧だにしない。沖縄で自民党とか民主党とか言っている場合じゃないなという区切りが、鳩山内閣でつきました」

その失望、よく分かります。ただ、そんなヤワなタマじゃないよね、翁長さんは。 

先に言った建前も本音も実は、ひとつの「沖縄県民」が抱え込んでいることで、汚れ仕事を引き受けているのが沖縄保守でした。 

たとえば、秋風が立つ頃になれば、沖縄県の幹部は、自民党政治家を連れて官庁に行くわけです。 

なぜか、不思議とこの時期には、都合よく色々な事件が起きてくれるもんですな。

2011年度の算定の頃には「オスプレイ・デマ」をデッチ上げて、火がない所に火を着けて大火災。消火のために、文句なく増額。 

2012年には何も起きないんで、ケビン・メア氏の「沖縄はゆすりの名人」(本人否定)という言葉を、どこからか地元紙が探し出して、大火災。 

おまけに、その後の沖縄防衛局長の「犯す前に犯すと言いますか」(本人否定)という発言が、暴露されて、文句なく消火のために増額。 

2013年には、仲井真さんのあいまい路線を、クリスマス満額回答で、移設容認にダメ押し。 

こういう、保守と革新陣営のアウンの呼吸とでもいうものが、沖縄政治だったのです。 

保守は、土建屋さんが振興予算の利権を握り、革新は官公労だけが島で唯一、ぬくぬくと本土並賃金を得て富裕階層になってしまいました。

そのマジックのネタは、この保革の二人羽織だったのです。 

このインタビューで、朝日の記者は、挑発的にもこういう質問をします。 

「でも、利益誘導こそが沖縄保守の役割なのではないですか」 

あ~あ、言っちゃった。知っていてこう言ったのならエライ。記者根性ある。知らないで言ったんだからただのバカ。

こう言われたら、沖縄の政治家としては、こう返すしかないじゃないでしかないじゃないですか。

けっこう翁長さん、素で怒ってるね。けど、このテの台詞を、「沖縄の心」みたいに文学的に解釈をしちゃダメです。 

なぜなら、これは本音であると同時に、弱者の恫喝でもあるからです。

「振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくしてください。そのかわり、基地は返してください。国土の面積0.6%の沖縄で在日米軍基地の74%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか」

なおも、朝日は、翁長氏をただの田舎保守政治家と見たのか、しつこく追及します。

「――しかし県議時代には辺野古移設推進の旗を振っていましたよね。
 「苦渋の選択というのがあんた方にはわからないんだよ。国と交渉するのがいかに難しいか」
 「革新勢力は、全身全霊を運動に費やせば満足できる。でも政治は結果だ。嫌だ嫌だで押し切られちゃったではすまない」

うん、面白い。インタビュアーが意識して言わせたのなら、褒めてやる。

翁長氏は、ポスト・ハトの時代に、今までのような沖縄の伝統芸であった、「保守と革新の使い分け」はできない、と言いたいのです。

翁長氏は、革新の連中はノーテンキに「全身全霊を運動に費やしていて」先行きを考えないが、もうそれだけじゃもたないぞ、と言っています。

だって、政府案は普天間基地がなくなっちゃうんですから。普天間の移転が現実のテーブルに上がること。これこそが、翁長氏が心密かにもっとも恐れている事態でした。

彼の考えていることは、きっとこんなことではないでしょうか。(もちろん私の悪意のこもった憶測です。念のため)

「革新陣営さん、いいの。普天間基地がなくれなれば、きみら失業だよ。用なしだよ。ただの本土のサヨクと一緒だよ。ただの島で嫌われている高給取りのお役人さんだよ。
本土みたいに、15、6人で基地前でシラケた集会するだけだよ。『平和運動』のスターダムから転げ落ちるよ。

いつまでもいつまでも、反米・反政府闘争する種を残しておきたいよな。飯の種は大事にしなくちゃね、
死ぬまで普天間基地のゲート前で騒ぎたいだろ。普天間、フォーエバー!
ぜったいに辺野古なんかに移設させちゃダメだって」

一方、翁長氏は保守に対してもこう思っています。

「 仲井真のようにものわかりよくていいの。あいつ、歳で根性なくなっちゃったんだよ。
ヘノコを幕引きしたら、これで沖縄最大の政治ネタがなくなっちゃうんだぜ。
もっとゴネてゴネて、ゴネまくって、話、引っ張らなきゃ、振興予算は5年後から縮小だよ」

そして翁長氏は、このインタビューで唯一本音に近いことを言っています。 

「でも政治は結果だ。嫌だ嫌だで押し切られちゃったではすまない」

おー、なんて「深い」お言葉(笑)!

ここで翁長さんが言う「結果」とは、「基地のない沖縄」なのか、もっと別のナニカなのかは、もう私が書くまでもないでしょう。 

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コメント

自分もそんなに若くないので、こんな大人はアリだと思うようになりました。
しかし今は・・・

同じような人が本土にも・・・小泉さんですが。

投稿: プー | 2015年4月11日 (土) 22時26分

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