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2015年4月

2015年4月30日 (木)

福島事故 「素人政治家」に屈伏した原子力テクノクラートたち

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昨日までの情景は、菅首相の「もっと検討しろ!もっと詰めろ!」  というところまでてした。 

これを周囲は、海水注入停止命令と受めたのが、連絡官として官邸に詰めていた武黒一郎フェローです。

いちおう、この人物の経歴を見てみましょう。まさに原子力畑一直線なのが分かります。東電のまさにエリート中のエリートです。

19695月東京大学工学部舶用機械工学科卒業1994年原子力研究所軽水炉研究室長 兼主席研究員、1996年柏崎刈羽原子力建設所副所長、1997年原子力管理部長、2000年原子力計画部長2001年取締役柏崎刈羽原発所長2005年常務取締役原子力・立地本部長、2008年取締役副社長原子力・立地本部長、2010年フェロー(副社長待遇)。(※追記 一部誤りがありましたので、修正いたしました)

そして、この武黒フェロー(副社長待遇)が、注水停止を命じた相手が、私たちもよく知る吉田昌郎所長でした。 

彼の経歴も押えておきます。  

東京工業大学工学部卒、同大学院原子核工学専攻修了。1969 年入社。原子力保修課、福島第二原発の発電部長、本店の原子力設備管理部長を経て、2010 年6 月から福島第一原発所長。  

東電のような国家官僚機構を思わせる牢固な組織で、武黒氏は、吉田の5年先に入社し、組織系列上も上司に当たります。ほぼ絶対的指揮権を持つと言っていいでしょう。 

下に政府事故調が作成した、緊急対策時の組織系統図を載せておきます。 

Photo
以下のやりとりは、朝日新聞木村英昭記者が、『官邸の100時間』という本の中で記録しています。 

木村記者は、宮崎知巳記者と共に、東電撤退問題を描いた『官邸の5日間』『東電テレビ会議49時間』、あるいは『福島事故タイムライン』などの著作をものにしています。 

宮崎記者は、あの「美味しんぼ」鼻血風説の源流である、『プロメテウスの罠』第6シリーズのデスクです。

木村、宮崎両記者は取材源の菅氏に接近しすぎたためか、あるいは、そもそも考え方に親和性があったためか、菅氏に大いに入れ揚げました。

そして、東電逃亡撤退説や、海水注入東電説彼などを流布させ、それはたちまち反原発派の定説と化しました。

あげく、菅からリークされたと思われる「吉田調書」をネタ元とする、「所長命令に背いて所員は逃亡」という捏造スクープを放ち、朝日を絶体絶命の窮地に追い込んだことは、記憶に新しいことです。 

朝日特有の「角度」をつけすぎたようです。

では、船橋氏『カウントダウン・メルトダウン』と、木村氏『官邸100時間』をソースにして、以後の状況をみていきます。 

Yjimagehtu4e3x1 (写真 国会証言する武黒フェロー。菅氏の圧力に全面屈伏して、吉田所長に注水を止めるように指示してしまった) 

                        ~~~~~~~~ 

官邸・武黒から吉田所長への携帯電話  

2011年3月12日午後7時過ぎ。官邸から携帯で吉田に電話。
武黒「おまえ、海水注入は」
吉田「やってますよ」
武黒「えっ、おいおい、やってんのか、止めろ」
吉田「なんでですか」
武黒「おまえ、うるせぇ。官邸がグジグジ言ってだよ」
吉田「何言ってんですか」(電話を切る)
 

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国会証言では紳士的な口調で、冷静に語る武黒氏を知る者にとっては、仰天するような雑な調子です。 

もちろん、同じ東電の原子屋という仲で、しかも上司・部下の関係ですからわからないではありませんが、いかに武黒氏かテンパっていたかわかります。 

武黒氏は、もはや原発事故に立ち向かう技術者としてではなく、ただの菅氏のご機嫌を取り結ぼうとする道化と化してしまっています。 

斑目氏に次いで、、余りにも無残なテクノクラートの姿がそこにあります。 

事故に当たったっての彼らの「素人政治家」への屈伏は、日本の原子力安全文化の最終的崩壊を示すものでした。 

海水注水を止められて驚愕した吉田所長は、テレビ電話で清水正孝社長に直訴します。

Av01c0o(写真 清水社長。福島事故において、「嵐になれば現場にみんな駆けつける」モットーは守られなかった)

吉田 テレビ会議で本店の武藤副社長に海水注入の必要を訴える。
東電本店「官邸の了解が得られていない以上、いったん中断もやむをえない」
・吉田、納得せず
東電清水社長「今はまだダメなんです。政府の承認が出てないんです。それまでは中断するしかないんです」
・吉田「わかりました」

O0480036012226679272         (※テレビ会議画像 http://matome.naver.jp/odai/2134425146053938201

吉田氏は、政府事故調への証言の中でこう述べています。 

「指揮系統がもうグチャグチャだ。これではダメだ。最後は自分の判断でやるしかない」

この吉田氏の決意こそが、この事故における「灰の中のダイヤモンド」でした。

本来彼をサポートすべき政府官邸、保安院、東電本店は、すべて将棋倒しのように倒壊してしまいました。

そして吉田昌郎と69名の人々、そしてそれを現場で助ける自衛隊、警察などの現場力の肩に、日本の命運は託されてしまったのです。

次回、このシリーズ最終回です。 

2015年4月29日 (水)

福島事故 原子力安全・保安院の崩壊

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私は反原発運動混迷の原因の一端は、菅直人という人物にあると感じています。 

それは、何も菅氏が運動の旗手だからというわけではなく(おそらくその逆でしょう)、彼が流した「偽造された歴史」が、未だにまことしやかに彼らの世界では生きているようだからです。 

それは事故原因は、すべて東電にあるとする、「東電悪玉説」です。これを流している発信源が、他ならぬ事故対処を誤った菅元首相その人だというのが、苦笑を誘います。 

管氏は事故後になって、自らの保身のために反原発に乗り移ることで、責任転嫁を図ろうとしました。

その時に色々言い散らしますが、それが反原発運動の論拠になってしまったために、菅氏の事故対応までも擁護してしまう空気が発生してしまいました。 

たとえば、去年起きた朝日新聞のスクープ、「所長命令に反して所員は逃げた」という歪曲報道がそうです。

管氏の弁明の核である、「オレが東電の撤退を止めた」という「偽造された歴史」は、訂正されるどころか、逆に強まって定説化しているのではないかとさえ思われます。

Img_1
ところで、当時の海水注入停止命令事件を振り返っています。当時の状況はこのようなものでした。 

①現地オフサイトセンターが壊滅したことで、原災法が想定していた現地対策本部が事実上消滅してしまった。
②現地対策本部に集中されるべき、原発災害情報が、中央にとどかない状況となった。
 

政府事故調の作成した下図を見れば、当時の情報伝達状況の崩壊ぶりか分かります。

「最高司令部」であった官邸には、東電本店経由の情報しか届いていなかったのです。(下図参照) 2
このような情報遮断された中で、あろうことか、最も冷静沈着でいるべき専門家集団が崩壊しました。

政府事故調報告書は、原子力・安全・保安院が災害対応の中心になるどころか、早々と機能停止してしまったことを強く批判しています。

要約すれば
①情報収集機能を適切に発揮できなかった。
②官邸に対して、原子力災害の実態の進展と必要な対策を与えられなかった。
③SPEEDI情報を得ながら、活用できなかった。 

さて、2013年3月12日当日に何か起きたのか、見ていきましょう。

                         ~~~~~  

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 (写真 斑目委員長を見る管氏のスゴイ眼に注目)

※以下、船橋洋一『メルトダウン カウントダウン』上巻・第4章「1号機水素爆発」によって再構成した。  

海江田(経済産業相)東電本社に対して原子炉等規制法64条3項を根拠に海水注入を命じて、官邸に報告。(現場はすでに2時間前に開始していたが、伝わっていない)。 

●[首相官邸]  

午後6時。首相官邸執務室。海水注入をめぐる会議。出席者・菅、海江田、細野、斑目、平岡保安院次長、武黒フェロー(フェロー・副社長格・東電の連絡担当者)

海江田氏から、海水注入を聞いた管氏は激昂します。

菅「塩水だぞ。影響は考えたのか!」

管氏は、塩水を入れると再臨界すると思って、怒鳴っているのが分かります。これが彼が海水注入を停止させようとした唯一の理由です。

どこで仕入れたのか分からない耳学問が、(おそらくは彼がかつて関わっていた反原発運動で聞きかじったものでしょうが)、場所もあろうにこんな国家非常時に炸裂したわけです。

デタラメな知識にびっくりした東電の連絡官である平岡と武黒氏は、慌ててそれを諫めようとします。

平岡「(海水の注水によって)臨界の危険性が高まることはありません」
・武黒「臨界を作ることは芸術的に難しい芸当です。不純物だらけの海水を入れて、そんなの(再臨界のこと)できるはずがありません」

これに保安院次長も同意したために、孤立した格好になった菅氏は、斑目原子力安全委員会委員長に水を向けます。

斑目「(菅に促されて)保安院がそういうなら」

呆れたことに斑目氏は、自分の意見を明確にせずに日和見を決め込もうとします。

菅「自分の判断で言ってくれ。絶対にないんだな」
斑目「あるかもしれません」
菅「どっちなんだ」
斑目「ないと思いますが、ゼロではありません」

もう呆れてものが言えません。斑目氏はこの切羽詰まった状況で、まだ責任回避をしようとしているわけです。もはや科学者の名に値しない怯懦です。

それを聞いて、管氏は彼特有の猜疑心の強さで、自分の再臨界論が正しい、なんらかの理由で、こいつらはオレにリスクを教えないんだ、と勘違いしたようです。

そしてここにいた専門家グループで、最も御しやすい斑目氏に、必殺のパンチを浴びせかけます。

菅「お前、水素爆発もないといったじゃないか」
斑目「(泣きそうな声で)とにかく今水を入れなきゃいけないんです。海水で炉を水没させましょう」

泣きたいのはこっちです。これが、日本の原子力安全行政のトップにいる人間の台詞ですか。

これを聞いた管氏は、こう宣言します。

菅「もっと検討しろ!」「もっと詰めろ!」  

このような台詞が、最高権力者の口から、この状況で出れば、それがどのような意味として周囲に理解されるのか、もはや説明の必要はないでしょう。

それを聞いた武黒氏がなにをしたのか、次回に続けます。

2015年4月28日 (火)

海水注入中止命令前段 なぜ、官邸本部に権限が集中したのか?

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菅首相の事故対応について、証言する関係者のすべてに共通するのは、「あたりかまわず怒鳴り散らし、何を言っているのかわからない」というものでした。 

たとえば、3月12日早朝の福島第1への突然の「現地視察」において、同行した武藤栄東電副社長はこのような証言をしています。

「免震重要棟に入った。そこで交代勤務だと思うが、作業員の人が大勢いた。中には上半身裸というか、除染などの人だと思うのだが、大変だなと思った。その前で菅氏はなんと言ったかというと、「何で俺がここに来たと思っているのだ」と言った。これには呆れました」

池田元久経産副大臣(当時)も手記の中で、「怒鳴り声ばかり聞こえ、話の内容はそばにいてもよく分からなかった」と記述していました。

Bbc18(写真 BBCドキュメント映像。吉田氏は後に、ここに残る者は、ホワイトボードに名前を書いていけと命じたと言っている。それが墓碑銘だと決意したからだ。この69名に日本の命運はかかっていた。この命を賭した人々に対して、菅氏がかけたのは罵倒だけだった)

吉田所長は、調書の中で管氏を名指しで、「なんだ、馬鹿野郎」と吐き捨てるように言っています。 

では、なぜ福島第1への不要不急な視察、現場に混乱をもたらした海水注水中止命令、あるいは、ふたつの対策本部同士の衝突事件である東電本店演説事件などが、相次いで起きたのでしょうか。 

これをすべて、菅氏の人格が及ぼす破壊的エネルギーで片づけるのは簡単です。

残念ながら、事実として菅氏という、ある関係者をして「歩く人災」とまで評された政治家に、事故対応は仕切られてしまいました。

しかし、そこにだけ注目すると、この事態の本質がわからなくなります。 

政府事故調の検証委員たちは、『福島原発事故はなぜ起こったか・政府事故調 核心解説』の中でこう述べています。

「重要なのは、わが国における緊急時における災害対応が、全体として機能したか、否かである」

政府事故調が指摘するとおり、当時1999年東海村JCO事後に、その反省から作られた「原初力災害特別措置法」(原災法)に基づいて作られたはずの「原災害マニュアル」がまったく機能しなかったことこそが、問題とされるべきなのです。 

ではなぜ、原子力安全・保安院の原子力の専門家が、原子力災害はおろか、原子炉の仕組みすら知らない「素人政治家」たちの手に、指揮権を渡してしまったのでしょうか。 

それには、海水注入事件に至る前段までの状況を知る必要があります。 

2011年3月11日19時3分、政府は原子力緊急事態宣言を出します。これにより立ち上がったのが、菅首相を本部長とし、官邸を本部とする原災本部でした。 

原災マニュアルによれば、ここで、現地オフサイトセンターに現地対策本部が作られ、本部から権限を委譲された現地対策本部長(経済産業省副大臣)が、事態の対応に当たるはずでした。 

ところが、この目論見は早々に破綻します。

急遽、現地福島に赴いた池田副大臣たちは、地震により破壊されたオフサイトセンターを眼の前にして呆然とします。

オフサイトセンターは放射能防御の施設がないばかりか、ここに集中されるべき情報が、情報通信機能の破壊によって、官邸に届けられなくなったからです。

初動段階のこの失敗は、単にオフサイトセンターひとつがポシャっただけにとどまらず、大きく緊急対応に影響を及ぼします。

というのは、これで、指揮権が現地に委譲されずに、本来現地対策本部が処理すべき細々とした対応まで、一手に官邸対策本部が担うことになってしまったからです。

後に、管氏は、大きく事故全体を見るのではなく、原発に届けるバッテリーのサイズにまでクチバシを突っ込むようになりますが、これも(もちろん管氏の視野狭窄的性格もありますが)オフサイトセンターの破壊という事態とは無縁ではありません。

本来、この現地対策本部が、このようなことを処理すべきだったのですから。

Fuksusiamagepatujikoyotkougo(写真 この時期の菅氏はほとんど睡眠をとらず、ほとんど狂乱状態だったと、居合わせた関係者全員が証言している。大震災と原発事故という二重のシビアな状況の中で、よく日本が持ったもんだと思う)

しかも、通常、このような原発シビア・アクシデント時に本部が設置されねばならない、官邸地下の危機管理センターは、大震災の災害対策本部が置かれていたために、ただの会議室である官邸5Fに官邸対策本部が置かれることになってしまいました。

なんと、官邸本部は、オフサイトセンターの壊滅だけではなく、官邸の持つ優れた情報・通信機能さえも使用不能だったのです。

かくして以後、官邸本部は、福島第1とのテレビ会議回線を持つ東電本店からの連絡待ち、という本部とも思えない情報過疎状態に置かれることになります。

もはや情報過疎といっていい事態の中に置かれた官邸本部が事故指揮を執る、という恐るべき状況が始まります。

そしてさらに、原災法マニュアルにない事態が起きました。それは、原子力災害の専門家集団である原子力安全・保安院が、使い物にならなかったことです。

原災害法には、原子力安全・保安院が原災本部の事務局を担うととされていますか、これがまったく機能しませんでした。

201105222224510de(写真 斑目委員長。本来この人物がすべての事故対策の指揮を執るべきだったが、リーダーシップ、胆力、共になかった。この人の責任は大きい)

斑目委員長以下保安院の専門家たちについて、政府事故調検証委員は、こう評しています。

「保安院が所与の役割を果たすことができなかったのは、現地や東電からの的確な情報を得られなかったことにもあるが、過去に経験した事故の規模を大きく越える、今回のような原子力災害への備えが能態的にまったくできていなかった点にある」(同)

もし、福島事故と同じ事態が起きた場合、米国においてはNRC(原子力規制委員会)が、フランスではASN(原子力安全機関)が、一元的に事故指揮権を掌握し、指揮全体を執るでしょう。

このような高度の専門知識が要求される原子力災害においては、専門家が指揮を執るのは、あまりにも当然です。

それを一介の「素人政治家」が、首相・本部長という肩書だけで事故指揮に介入すること、それが越権とされるべきなのです。

米仏ならば、相手が大統領であろうと、菅氏のようなまねをすれば、委員長はこう言ったでしょう。

「閣下を部屋の外にお連れしろ。丁寧にな」

しかし残念ながら、原災法には、安全・保安院はただの「本部事務局」という位置づけしか与えられていませんでした。

このあいまいな「事務局」という位置づけを、菅氏は単なるアドバイザーと解釈しました。主従意識が強い彼にとっては、ただの従者であったのでしょう。

菅氏は専門家に対して、「決めるのはオレだ。オレの言うことにだけ答えていればいいんだ」という傲慢きわまりない態度で望むことになります。

菅氏は終始、斑目氏を「お前」と呼び捨て、斑目氏は管氏の怒声の下で忍従を強いられます。

このような菅氏の犬のマウンティングのような行為に対して、ただの気の小さな学者バカでしかない斑目氏はまったく抵抗できず、他の関係者同様、どうやったらこの王様を納得させられるかばかりを気にするという、異常極まる雰囲気が、官邸本部を支配します。

管氏が座をはずすと、官邸スタッフと専門家、東電関係者が、菅氏説得シナリオを作って、発言分担まで決めていたという、笑えない場面すら生じました。

海水注入停止命令事件は、この空気の中で起こったことを頭にいれないと、理解ができません。

ここまでを整理しておきます。

①現地オフサイトセンターが壊滅
②原災法が想定していた現地対策本部が事実上消滅
③現地対策本部に集中されるべき、原発災害情報がほぼ完全に遮断される
④事故指揮を執るべき安全・保安院が機能停止
⑤本部は菅首相の「独裁」的状況

 このような状況下で発生したのが、この海水注入事件でした。 

既に、この一件に関しては、すべての事故調の結論が出揃っています。

・国会事故調 「官邸の直接介入が、指揮命令系統の混乱、現場の混乱を生じさせた」
・政府事故調 「首相が当事者として現場介入することは現場を混乱させるとともに、重要判断の機会を失し、あるいは重要判断を誤る結果を生むことにもつながりかねず、弊害の方が大きい」
・東電事故調 「現場実態からかけ離れた具体的な要求が官邸の政府首脳等から直接・間接になされ、海水注入中止の指示等、緊急事態対応の中で無用の混乱を助長させた」

では、次回もう少しその内情を時系列でみます。

・・・それにしても、なんで私、こんな話題やってんだろう(笑)。沖縄なんかで、論じなきゃいけないテーマはゴマンとあるのに。かなり不毛感あるが、なりゆきだぁ!

 

2015年4月27日 (月)

誰が福島事故の緊急対処を攪乱したのか?

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蒲焼さんから、以下のコメントを頂戴しました。 

「福島原発直後に安倍首相は自身のメルマガで「菅元首相が海水注入中断指示を出した」と書きました。
これは後に東京電力の発表で事実ではないことが明らかになっています。
原発事故の対応に必死になっている当時の首相に対して足を引っ張る様な「デマ」を流す人間が現在の我が国の内閣総理大臣です」
 

正直に言って、まだこんなことを言っているのか、と思いました。 

このテーマは、もう4年前の事故直後からこのブログで詳細に論じてきたもので、古い読者の皆さんには新味がないと思います。

しかし、未だ反原発派の中で、このようなことが言われているとなると、しゃーない、もう一回おさらいするとしますか。

ところで、菅元首相をめぐってはいくつもの論点があります。

①福島第1の「陣頭指揮」事件
②海水注入中止命令事件
③東電本店演説事件
④東電全面撤退を自分が阻止したとする認識
⑤事故後の高岡原発停止要請
⑥事故後の再エネFIT導入

もっとありそうですが、私は、「アベが」、あるいは「カンが」といったレベルの、政治家個人に対する評価ではなく、リスクマネジメントの立場で考えるべきだと思っています。 

おそらく、この人は反アベの立場でしょうが、政治家に対する好悪の感情と、リスクマネジメントとしての判断はまったく別次元なのです。 一緒にしてはダメです。

130127294375016419911                (写真 福島原発の衛星写真 3月14日)

さて福島事故は、従来の原子力安全行政の大きな欠陥を露呈させました。 

ひとつは、原子力安全行政が一元化されていないために、指揮権限が誰にあるのかわからなかったことです。 

原子力安全・保安院なのか、現場指揮を執る東京電力なのか、あるいは政府事故対策本部、つまりは官邸、ひいては本部長の首相個人なのか、ファジーだったのです。 

その結果、当時立ち上がった政府と東電ふたつの対策本部が、相互になんの関連もなく動き、いさかいと反目を続ける結果となり、最後には菅氏がもう一方の東電対策本部に乗り込むという衝突寸前の事態まで引き起こしています。 

1520e6039f5fb185add13a9a6ef00044_2(写真 東電に全面撤退阻止を要請しにいく菅首相。これが彼の最大の武勇伝だが、東電はナニその話だった)

そしてこの「ふたつの司令部」にバインドされた形になった福島第1の現場は、吉田所長の決断で状況を乗り切らざるを得ないところまで、追い詰められていました。 

本来、修羅場を戦う事故現場を、後方の司令部が的確な情報提供と指示を出して支えるのではなく、逆に間違った指示を出して混乱させてしまっているのですから、話になりません。 

もし、吉田昌郎という卓越した指導力と勇気をもった人物が所長にいなければ、私たちは今ここに生活することができなかったことでしょう。

まず、この国家的非常時において、当時の政府対策本部があった官邸の状況を、振り返ってみます。

この時の官邸の空気を、民間事故調(福島原発事故独立検証委員会)は、このように伝えています。

・「官邸が「パニックと極度の情報不足」に陥り、『テンパッた状態』」
・「今回の福島事故直後の官邸の初動対応は、危機の連続であった。制度的な想定を離れた展開の中で、専門知識・経験を欠いた少数の政治家が中心となり、次々と展開する危機に場当たり的な対応を続けた。
・「決して洗練されたものではなく、むしろ、稚拙で泥縄的な危機管理であった。」

・「(菅首相は)言い出したら聞かない」
・「菅首相の)強く自身の意見を主張する傾向が、斑目委員長や閣僚に反論を躊躇させた。」

さて今では、2011年3月12日当日、官邸でなにが起きたのか、詳細に判明しています。再現してみましょう。

果たして、以下の事故後に行った首相の弁明は、正確にこの状況を伝えているのでしょうか。

「(海水)がすでに入っているなら当然入れ続ければいいと思っていた。それを(東電の)武黒フェローが判断して、吉田所長に止めろといった。東電関係者の発言を官邸の意向と表現されるのは間違っている。海水をいれることがいかに重要であるか、そのことが再臨界と関係ないことはプロであればよく分かっているはずだ」(国会事故調)

次回それを検証します。長いので分割しました。

2015年4月26日 (日)

官邸ドローンテロ容疑者のサイト 「テロの平和利用」だってさ

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読者の方から、提供いただいた山本泰雄容疑者のサイト『ゲリラブログ参』です。完全にイッちゃっています。
http://guerilla47.blog.fc2.com/

反原発派で間違いないようです。この男が支持していたという共産党は大変に迷惑でしょう。おそらく組織的裏はないと思われます。あったら、たいへんです。

ちなみに、このサイトでは参考文献としてこんなものを挙げています。

・「ゲリラ戦争」チェ・ゲバラ
・「原発の倫理学」古賀茂明
・「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」矢部宏治
・「原発ホワイトアウト」「東京ブラックアウト」若杉 冽
・「機動警察パトレイバー2 the Movie」押井守
・「原発のウソ」小出裕章
・「官邸崩壊」上杉隆
・「天空の蜂」東野圭吾
・「逆転力指原莉乃
・「NO.1メンタルトレーニング」西田文郎
・「若者奴隷時代」山野車輪
・「関西電力「反原発町長」暗殺指令」齊藤真

2015042201s                (写真 容疑者のサイトより ドローン)

読書傾向から推察すれば、40すぎのルサンチマン男が、上杉、古賀などの電波系原発情報にをたっぷり吸収して、東野圭吾の小説にヒントを得て、押井守の世界を夢見て、処罰規定がないことを知った上で、安全地帯からお騒がせプロパガンダをやらかした、というわけです。

精神年齢としては、少年鑑別所送りが相当ですな。

2be458f4                     (顔はおっさん。心は幼児)

どうも、この男の計画では、福井県知事選前に実行する気だったようです。(サイト記事2参照)

天候不良で翌9日へずれ込むという不運。おまけに、あろうことか、警察が発見してくれない(笑)。

発見されたのが実行日より2週間後で、その時には、福井県知事選も西川氏の圧勝という二重の不運。

この男は、こんなテロが知事選で有利になると考えているのです。

す、すまん。お腹の皮が痛い。なんというピンボケ。真逆だろう。

そして実は、これが初回の計画ではなかったようです。

官邸ドローン・テロの初回計画は、2014年12月24日の第3次安倍内閣発足にあわせて、新閣僚とマスコミが揃う官邸中庭に汚染土積んだドローンを落す計画でした。

ところが、その計画の「壮大さ」に比して、自分の手持ちの「武器」のショボさに自己嫌悪になり中止。ワ、ハハ、ゲバラの「ゲリラ戦争」読んでいて、これかい。

さて私は、某過激党派を背景にする山本太郎氏が出てきたあたりで、そう遠くない将来に、原発施設や人を標的としたテロが起きると予想していました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-2a8d.html

反原発派の中で、下の山本容疑者のような声かならず出ると思ったからです。

山本容疑者は、サイトでこううそぶいています。

デモ 3.11後は盛り上がってた・・・それでも大飯は再稼動した。デモは各地で続いてる・・・らしい・・・マスコミも取り上げなくなった。デモで再稼動は止まらない・・・暴動にもならない再稼動まで時間ないからデモは一旦パス・・・再稼動に反対する活動ではなく再稼動を止める活動をしなくては」

「再稼動を止めるためにはテロをも辞さない。
再稼動すれば加害者・・・なら再稼動を止めて加害者のほうがいい」(2014/07/19 )

この男はこう言いたいようです。

「デモみたいな平和的なことをやっている場合じゃないだろう。
それにデモだってどんどんショボくなっている。4年前の盛り上がりは夢のまた夢だ。
こんなことをしているうちに、実際にアベは、再稼働をどんどん決めているぞ。今は、直接に再稼働を止める行動に出るべきだ。
そのためにはチンタラデモじゃなくて、原発そのものか、政府中枢を破壊せねばダメだ!」
 

これが運動の定向進化という奴です。ほとんどの反権力運動は、大衆的基盤を失っていくにしたがって、ふたつの道を辿ります。

ひとつは、左翼政党の草刈り場になって、党派化が進むことです。

今、反原発運動は、日本共産党と、某過激セクトが支配権を拡大しています。

そしてもうひとつが、従来の合法的な穏健的手段に疑問を持つようになり、より直接的暴力を選択する道を選ぶ者が出現することです。 

かつては70年安保闘争の行き詰まりから、1974年7月には、三菱重工本社を狙った爆弾テロが引き起こされ、死者8人、重軽傷者370人を出す大惨事になりました。

_(三菱重工爆弾テロ。70年安保闘争は権力によって壊滅したのではなく、連合赤軍事件と、この爆弾テロによって国民から激しく嫌悪されることにより、自滅した)

今また、同じように、反原発運動の行き詰まりの中から、この山本容疑者のように、化学テロやバイオテロまで研究するような者が登場しました。

具体的に何をするか・・・何ができるか・・・サリン風の液体や炭疽菌風の粉末をを郵送・・・」

次回は、もっと直接的なテロを用意する者が出るかもしれません。いや、そうとうの確率で、出るでしょう。

そして次回は、このようなローンウルフ型ではなく、少人数の組織されたテロとなると思われます。ちょうど、三菱重工事件を起こした「反日武装戦線」たちのように。

連合赤軍時代の経験者としてひとこと言えば、こういう奴が出るようになったら、もうこの運動は末期です。

反原発派の皆さん、ただちにこの事件について厳しい批判をしないと、一緒にされますよ。

原発テロの基準が甘いといって政府を批判するやいなや、仲間うちが「テロの平和利用」を起こしちゃ世話はない、と世間は見ますからね。

サイトには、熱烈な古賀氏へのエールがあって失笑します。

容疑者からラブコールをもらった古賀氏などは、「方法は間違っているが、その意思は正しい。政府は再稼働への怒りが、ここまで来ている現実に耳を傾けるべきだ」などと言いそうですな(笑)。

なにせこの人、ISすら「反米しているから、一理ある」とやった人ですから。彼のような愚かな知識人が、このような狂人を生むのです。

以下、引用。しかし、じっくり読むと相当に気色が悪い。

                   ~~~~~~~~~

サイト記事1 2015/04/24

■ タイトル「第1の矢」に関してはフィクション
高浜町への汚染土の埋設はしてない
前に書いたけど官邸汚染土ドローンで報道を引き付けた後
自治体間の抗争を演出して官邸から福井知事選に注目を移動するための手段・・・
選挙後(4/12 20:00)にブログを予約更新して「第1の矢」のフィクションを明かす計画・・・
選挙とっくに終わって意味無くなった・・・
官邸を狙うときは2週間前に飛ばさないといけないのか・・・難しい・・・
現状福島の汚染土は持ち出し放題だから・・・脅迫はどこにでも通用する・・・
目に見えない放射線は風評だけでも充分・・・だから汚染土も必要もない・・・
官邸も守れない、汚染土も管理できない国が原発を・・・てのは多分マスコミが言ってくれるか・・・
ドローンに積んだ汚染土は99gでもなく101gでもなく100g
テロにセンスとかコダワリとかはタワゴトだけど・・・
使用した汚染土はこれが全て・・・ここが今の倫理のリミッター・・・
去年退職してからずっと大きな迷いの中・・・
前例ない道を1人で歩くのはシンドイ・・・
核の平和利用vsテロの平和利用・・・
再稼動の進行にあわせてリミッターを解除していけばイスラム国と変わらなくなる・・・
自分の無能さが悲しい・・・

官邸の警備も無能で悲しい・・・歴史が歪んだじゃないか・・・
ドローン1機で右往左往・・・証拠処分してしまえば捕まらないな・・・もう一回やるか・・・
警備を強化した官邸に更に汚染土積んだドローンを落として・・・
そんなことしても再稼動は止まらないしな・・・
でも面白そうだな・・・やるか・・・イヤ・・・やらない・・・
100gのままでいい・・・

■サイト記事2 2015/04/10

計画
4/8 官邸にドローン墜落・・・マスコミ報道
4/9 ブログ公開、警察に出頭・・・ここが選挙3日前
4/12 混乱の中で選挙を迎える
全国から注目される中で12日投開票・・・投票率、票の行方がどうなるか・・・
・・・という投票率アップの特効薬になる計画が頓挫・・・
スケジュールがタイトで修正できなかったのは痛い
ただニュースの寿命は2~3日・・・このタイトさこそが勝算・・・
予備のドローンを用意しておくべきだった・・・ヤスプレイでも敷地内には充分届く・・・
クリスマスに続き自己嫌悪・・・
成功する良いイメージばかり先行して失敗するリスクの洗い出しができていなかった
ある程度の勢いがないとこんな事できんけど・・・計画時の冷静さが欠けていた・・・
・・・とはいえ・・・飛ばせた事でメンタル面はクリア
グリフォンはどこに・・・

週末写真館 薫風に泳ぐ

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2015年4月25日 (土)

土曜雑感 命題を掲げただけで思考停止になる人たち

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首相が「世界一安全な基準」といったら、「コアキャチャーや二重格納容器がないくせに」という声が、反原発主義者たちから起きているようです。 

ここでは、個別の技術談義は置いて、もっと本質的な話をしたいと思います。 

私は、物事というのは初めから完全・完璧はありえない、と考えています。 

なんにでも絶対の安全などないし、リスクはありえます。ノーリスクは、工学的、確率論的に、ありえません。 

だから、リスク評価やリスクマネジメントといった分野があるのです。 

安全基準がらみに話を戻せば、コアキャッチャーは仏アルバの技術です。言い換えれば、フランスという原子力大国が生み出した技術、といってもいいでしょう。 

もし日本で、反原発派の主張がそのまま認められることがあれば、日本の原子力技術はすべて海外へと流出していきます。 

日本には廃炉しか仕事がないのですから、新たな仕事と技術フロンティアを求めて、海外に流出するのはまちがいありません。 

原発に新たな活路を求める国は世界に無数にあるので、彼らは海外での仕事に困ることはないはずです。

03(図 アジアの原発立地予定図。古賀茂明氏は「原発輸出大国ノー」なんてプラカード出してたが、古賀さんは世界各国の原発がメイドイン・チャイナのバッチモン原発で埋めつくされたほうがいいのか?)

「赤い原子力大国」・中国なら、日本の原子力技術者を喜んで雇ってくれるでしょう。 

余談ですが、中国はAIIBを、「中国独自技術で作った」原発輸出に使うつもりだと、日本のエネルギー関係者は噂しています。

あの、グリーンピースの皆さん、お隣の国の大増産はスルーなんでしょうか。ぜひ、辺野古みたいな「非暴力直接行動」をぶちかまして下さい。心から支援します。

ただし、日本の海保と違って、中国の武装警察は、いきなりマシンガンで撃ってきますので、命の保障はしませんが。

それはさておき、では残されたわが国はどうなるのでしょうか。仮に、廃炉に決めたとしても、長い期間、使用済み燃料棒を常に冷却しておかねばなりません。

発電しないで、厳重に保管しておく、というバカなことを延々と何十年、いやヘタをすれば、半永久的にするわけです。 

Ph04(写真 使用済み燃料プール。停止しても延々とこれを冷却し続けねばならない。 日経ビジネスオンライン)

ですから、その処分技術も開発せねばならないでしょう。その間の、原発の保安・安全技術も維持せねばなりません。

「危険だ。危険だ」と叫ぶのは簡単ですが、本気で止めるには、しっかりとした対案がいるのです。

そのための新技術は、常に要求されますが、その時には日本で技術者がいなくなり、すべてメイド・イン・フランスか、チャイナになっているかもしれません。

たぶん十中八九、そうなるでしょう。 

このような技術的植民地は、非常に危険な立場です。自前の技術がないために、なにかあってもすべて外国に指導を仰がねばならないからです。 

このように皮肉なことには、反原発主義者が嫌悪する原子力工学は、原子力産業がなければ、その安全技術さえも維持できないのです。

2015_43s(新基地と、移設とは本質的に違うんですが。新基地=普天間+新基地。移設=現状基地面積-普天間。余り=埋め立て分。まるっきり小学校算数なんだが、ゼッタイに理解しない)

一方、同じようなことは辺野古移設にもいえます。普天間の危険な状況を除去するには、辺野古の海岸を埋めて「新基地」を作るということをせねばなりません。 

もっといい解決方法はあったのかもしれませんが、それらの選択肢は、いろいろな事情で既に潰されてしまっているからです。 

ですから結局、選択肢はふたつしか残りませんでした。普天間固定化か、辺野古移設か、です。

別に本土政府が辺野古を強引に「押しつけた」わけではなく、20幾つかの案をひとつひとつ検討したら、辺野古しか残らなかった、という消去法の話です。

その検討プロセスには、17年間一貫して、沖縄県も参加しています。 辺野古で煮詰まってからは、名護市の細かい注文を聞いて修正を重ねています。

ですから、矛盾していますが、基地負担を減らす為に、埋め立てるという消極的選択は、消極的なるが故に、もう他の選択肢は、存在しないのです。

2015030901_01_1b(こういう写真を反対派のサイトでみると、画一主義、全体主義なんて言葉が浮かんでくる。この人たちが好きなファシズムとは自画像ではないか。きっと、この空気の中で、「いや待てよ。なにか他に解答があるかもしれない」なんて言ったら最後、「同志」たちからタコ叩きにされるだろうな)

えてして原理主義的発想に立つ人は、この矛盾に耐えられません。「基地ノー」と命題をたててしまった地点で、思考停止モードに入ってしまうからです。 

ちょうど、「原発ノー」と立てて思考停止モードに入った人たちと同じように。 

この人たちは、その原理に純粋なためなのか、常に声を枯らして叫び、怒鳴り、警備の人たちとと衝突し、政府を悪しざまに罵っています。 

2015011103405988a(このシュアブ駐車場の工事を受注したのは、翁長知事の支援者で、基地反対派を自称する「金秀」グループ。結局、搬入できなくて、「金秀」には違約金が税金から支払われた。アキサミヨー)

そして、叫べば叫ぶほど、彼らの声は一般の国民には届かなくなってしまっています。 

そして、その遊離した自分の環境を知ると、一段と大きな声で、私たちのような「愚かな大衆」を「推進派」と叱りつけ、あざ笑うので、さらに孤立は深まっていく一方になります。

まるで自分だけが正義で、地球がいつも自分たちだけを中心に廻っていると勘違いしているために、司馬遼太郎さんふうにいえば、「針の先ほどの面積の正義」にのみ固執します。

現実はこの人たちを置き去りにして、先に進んでいきます。17年間もちゅうぶらりんで、国費だけで3000億円も使ってきたのですから、もう後はありません。

「民意で移設ノー」なら、はい、白紙撤回して、普天間に戻りましょうね、ただそれだけです。他に何かあるでしょうか?あれば、教えて下さい。

私個人は、もうメンドーなので、普天間にずっと居てもらったら、反基地運動家も喜ぶし、軍用地主も、行政も万々歳だし、なにより米軍が動きたくないって言っているんだから、八方丸く納まっていいんじゃないかと、最近思っているくらいです。

私ら本土納税者にとって、今まで3千億円、そして今後に3千億以上。おまけに振興予算の上積みを要求されて、数千億。しめてなんと1兆円も投入して、「沖縄差別」とまで言われるなら、もう止めちゃいましょうや。バカバカしい。

基地負担を減らす為には、よりダウンサイジングして、より安全な場所に「新基地」を作る必要も、時にはあります。 

同じように、原子力の安全性を担保するためには、原子力産業を維持しておかねばならないし、原子力に対する強依存を減らすためには、安全を確保した原発を動かしていくしかないのです。 

現実は、ひとつの原理で測れるほど単純じゃないし、いくつもの多元方程式の解のように込み入っていて、矛盾し合っているものなのです。

2015年4月24日 (金)

なぜ民主党の30年代原発ゼロ政策が失敗したのか

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民主党政権はある一時期、真剣に原発ゼロを政策化しようとしたことがあります。 

2012年9月14日、野田政権の時代です。

野田政権は、14日のエネルギー・環境会議で、「革新的エネルギー・環境戦略」として、「2030年代に原発ゼロを可能とする」との目標を政府方針に初めて盛り込み、原発の新増設をしないことや、運転期間を40年とすることも明記しました。 

そして同時期に行なわれていたIAEA年次総会で、山根外務副大臣が、新たな原発建設をゼロにし、2030年代にまですべての原発を廃止する方針を公表する手はずを整えていました。

これを私は興味津々で眺めていました。政府方針で国際公約とする以上、その実現性はきわめて高いし、もし自民党に戻ったとしても、国際公約の歯止めが効くからです。

そして当然のこととして、ここまで踏み切った以上、エネルギー専門家を交えた工程表もあるだろうし、諸外国、特に米国との根回しも完了していると思っていたからです。

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ところが、この政府の決定は、わずか2日後の9月19日にひっくり返ってしまいます。

野田政権は、30年代原発ゼロを閣議決定から、「参考」にまで格下げして、「柔軟性をもって不断の検証と見直しを行なう」という意味不明の文言で、事実上破棄してしまったのです。

そして、「受け入れ地域住民との対話」を強調して、もうしばらく後には、野田首相自ら大飯の再稼働を認めます。

ネット界は、民主党を揶揄する声と、怒りの反応が渦巻きましたが、私はこの背景には、必ず米国というもうひとりの主役かいると感じていました。

というのは、当時の民主党政権にとって、最大の圧力は、自民党ではなく、他ならぬ米国だったからです。

それは、民主党初代首相のハト氏が、日米関係を徹底破壊してしまったために、その後の菅首相も軌道修正するために、いじらしいまでの親米姿勢を見せざるをえなくなったからです。

そのひとつの現れが、APEC横浜会議でのTPP参加「第3の開国」宣言でしたが、今ひとつあります。それが、2011年5月に行なわれた、浜岡停止要請です。 

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ちょっと立ち止まって考えて下さい。なぜ、浜岡だったのでしょうか?

津波を心配するのならば、福島第2でも東海第2でもいいわけですし、東海第2のほうが首都にはるかに近いはずです。

地震ならば、敦賀のほうが当時から活断層問題で揺れていました。

Img_2浜岡だったのは理由があります。それは、横須賀軍港にもっとも近い原発だったからです。 

上図をみれば、浜岡で福島事故と同等の事故が発生すれば、横須賀は完全に被曝エリアに入ってしまうのがわかります。

その場合、横須賀軍港は、当然長期に渡って使用不能となります。 

この横須賀軍港の重要性を、多くの人は忘れていますが、こここそが、米国の世界戦略の要なのです。

2ef3e2(写真 横須賀を母港とするジョージワシントン。横須賀は、米国本土を除いて唯一の修理整備能力を持つ軍港である。他にこのような軍港を米海軍は有していない)、 

ここを母港とする、米国最大の攻撃力を持つ第7艦隊こそが、米国を世界盟主の位置につけています。 

横須賀軍港を長期に渡って使用できなくなれば、佐世保は原子力空母が寄港できない以上、第7艦隊全体がハワイまで退くことになります。 

Zuhyo01010104(図 防衛省「米軍の配備状況およびアジア太平洋地域における米軍の最近の動向」 クリックすると大きくなります)http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2014/pc/2014/html/n1112000.html

これは憶測ではなく、当時の官邸関係者から、これを裏付ける声が漏れ始めてきているようです。 

さて、話を戻します。野田政権は30年代原発ゼロを、米国に通知しに訪米団を送りだしています。そして、面接したホワイトハウス要人は、どう対応したでしょうか。 
※フォントが大きくなっていますが、なぜか修正が効きません。すいません。大きいのは意味ありませんから(汗)。

面会に現れたホワイトハウス要人は、外交的オブラートにくるまずに、「日本政府はNPTをどう考えているのだ」と答えたそうです。

NPTは、1970年3月に発効した核軍縮を目的とした、米、露、英、仏、中の国連常任理事国5ヶ国以外に、核兵器を持たせないための条約です。

おそらく、民主党政権の高官はグッと詰まったと思われます。たぶん、予想だにしない反応だったからです。

米国は、言外にこう言っているのです。

「日本は国際公約を破棄して、米国の核の傘から抜け出して、独自核武装に進むという意思表示だと受け取っていいのだな。それなら、米国はそれなりの対応をさせてもらう」

民主党は、原発ゼロこそ国民受けする政策で、せいぜい代替エネルギーと廃炉の道筋さえつければ、ゼロが達成できるくらいに考えていたはずです。

脱原発宣言なら、メルケルのドイツだってやっているじゃないか、どうして日本がやっちゃいけないんだと思ったはずです。

不勉強な彼らは知らなかったのでしょうが、実はドイツはとっくに「核武装」しています。それが、ニュークリアシェアリングです。

説明すると長くなるので、煎じ詰めれば、米国の許可の下にNATO各国軍が核兵器を保有し、有事においては当該国がそれを使用するシステムです。

この核兵器保有国に、ドイツは入っています。もちろん、有事の際も、一国はもちろん、NATO全体が了承しても、米国が拒否権を行使できます。

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核兵器拡散状況 Wikipedia
  核保有国   ニュークリア・シェアリング   NPTのみ   非核地帯

つまり、ドイツは新たに自国で核兵器を開発する必要がないのです。

ドイツにとって脱原発政策は、純粋にエネルギー安全保障上のテーマとなりえるのに対して、日本は、独自開発する能力と、投射能力を持つが故に、独自の核武装路線を取るという国際問題にまで発展するのです。

そこまで考えて、慎重に米国への根回しをしてからするならともかく、政権担当能力すら怪しい政権が、普天間でガタガタになった日米関係の時期に、思いつき的に言い出してどうかなるほど、脱原発政策はシンプルではないのです。

一方メルケルは、きわめて頑強な支持率に支えられた長期保守政権で、米国との強固な友好関係を持ち、かつ、NATOのニュークリアシェアリング・システムのために「独自核武装」を疑われる心配もありませんでした。

そして、原発を半数止めた後の電力不足に際しては、ヨーロッパ広域送電網から輸入すればいいという保険をかけて、その上で脱原発を宣言したのです。(それでも死ぬ思いを味わっていますが)

日本民主党の、思いつき的ポビュリズムとは雲泥の差です。

これが日独の決定的に異なる点でした。

野党特有のスローガン政治に馴れていた民主党は、よもや核兵器がらみで米国の反対に遭遇するとは夢にも思っていなかったことでしょう。

このように、原発ゼロ政策は、国際的には我が国が45トン(※70トンの異説あり)も備蓄しているプルトニウムをそのまま備蓄し続けて、イランや北朝鮮のように核武装化する意思を持っていることを意味します。 

ある専門家の計算では、今保有するプルトニウムで、約1000発(※5千発の異説あり)の核弾頭が製造できるとのことです。 

共産党のように、「軍事転用を許さないぞ」とシュプレッヒコールだけしていれば、どうにかなるならともかく、真剣に原発を畳むということは、そのような複雑な多元方程式を解くことなのです。

2015年4月23日 (木)

使用済み燃料について考えない反原発主義者

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私は、もし原発に替わりうるエネルギーが現れ、それが原子力と同等の価格で供給可能ならば、今、直ちに全基を廃炉プロセスに入れるべきだと思っています。

しかし、あくまでもそれが可能ならば、という大前提がつきます。おそらく、不可能です。

第1に、原発に替わる30%もの電源を代替できないからです。再エネは話にならない非力かつ、浮気な電源でしかなく、メタンハイドレートなどもまだ研究中の段階です。 

コンバインドサイクルは有望な技術ですが、巨額な投資が必要であって、今の老朽化した火力発電所に置き換えていくまでには、相当な時間がかかります。

また、結局コンバインドサイクルも、しょせんと言ってはなんですが、石油依存のエネルギーにすぎません。

常に政治的に不安定な中東から、これまた中国の海洋進出によって不安定化しているオイル・ロードを辿って、輸入されるものです。

原子力がこの海外輸入への強依存に対処する目的で考えられたものである以上、この問題をはずして考えるべきではありません。

第一、おそらく関西電力などはその前に、経営的に立ち行かなくなって潰れてしまうでしょう。

前の記事に書いたように、毎年数兆円の国富が海外へと流れだし、経済と社会を圧迫し続けます。

また潰せば、電力会社を悪魔のように思っている反原発派の人たちの溜飲は下がるでしょうが、直ちに原発を廃炉にしていく主体と、その費用を誰が出すのかという問題に直面します。

この廃炉問題は大きなテーマなので、別途に考えていきますが、結論だけ言えば、電力会社を潰した場合、廃炉にする主体と費用負担の先行きが見えなくなります。

電力会社の経営が安定して余裕があるからこそ、廃炉にできるのであって、そのためには原発を今は動かすしかないというパラドックスが、反原発主義者にはどうも理解できないようです。 

また、もうひとつの大きな問題があります。それは原発が、火力などと違って使用前の核燃料と、使用済み核燃料の二種類の核燃料を常に抱えていることです。

2011062303写真 福島第1の使用済み燃料プール。すべての原発の原子炉に、これと同じものがあり、約2万8千トンもの使用済み燃料が存在している。これは再稼働とは関係なく、残り続ける

そしてただ今現在、原発の使用済み燃料プールには約2万8千トンに及ぶ核廃棄物が残ったままです。

これを常に使用済み燃料プールに入れて、厳重に保管しておかねばなりません。 

止めた場合、確かにこれ以上増やさないことはできますが、抜本的解決にはつながりません。  

使用済み核燃料の処理方法は、ふたとおりあります。  

ひとつは、再処理することです。 

これは青森六ヶ所村の再処理工場で、ウラン酸化物+ウラン・プルトニウム混合酸化物と、高レベル核廃棄物の二つに分離して、後者のプルトニウムを除去した核廃棄物を300メートル地下の地層処分します。  

Photo                   (写真 六ヶ所村再処理工場)

プルトニウムは、ご承知のように半減期が2万4千年もありますから、これを抜かないと危なくて仕方がないわけです。

またプルトニウムを取り出せば、廃棄物の体積も3分の1に圧縮できる利点があります。  

もうひとつの方法は、そのままプルトニウム+ウランごと埋却してしまう方法です。 

これは再処理工程を省いて、プルトニウム+ウラン入り核廃棄物を、そのままキャスクという特殊なドラム缶に入れて埋めてしまうことです。 

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これを直接埋設するかどうかで、科学者の間でも意見か別れていて、決定的な方法はまだ手探り中です。

小泉さんは、「原発は廃棄物の最終処分の方法がないんだ」と絶叫していましたが、そんなことはあたりまえです。

止めても、原発施設には2万8千トンも残っていることを、都合よく忘れているだけです。 

政府は、3.11前には、リサイクルしてMOX原子炉で使うつもりでいました。これを「核燃料サイクル」と呼びます。  

Moxこれは、日本政府がひとりで決めたということではなく、むしろ国際的な義務でした。

というのは、日本は「プルトニウムを核兵器に転用しない」というIAEA(国際原子力機関)の国際公約を持っているからです。  

これは原発保有国が持つことを義務づけられている国際公約で、既に核保有国であることを宣言している国(常任理事国+印パ)を除いて、原発を持つ場合、そこから出るプルトニウムを余分に備蓄することは許されていません。  

それを許すと、核兵器に転用することがまかり通ってしまい、核兵器の拡散を招いてしまうからです。  

ですから、脱原発派の皆さんが言うような再稼働反対、再処理反対、最終処分反対という立場は、国際社会から見れば、「オレはプルトニウムを持ち続けて、いつか核兵器をつくるつもりだゾ」と宣言しているに等しい暴挙ということになります。

このように原発は、再稼働反対、原発ゼロを叫べば、パッと消え失せるほど簡単な問題ではないのです。

長くなりましたので、次回に続けます。 

               :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+ 

※1 MOX燃料(モックス)
混合酸化物燃料の略称であり、
原子炉使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウム再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4~9%に高めたものである。
主として
高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉燃料ペレットと同一の形状に加工し、核設計を行ったうえで適正な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。(Wikipedia) 

※2 プルサーマル
プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を、通常の原子力発電所(軽水炉=サーマルリアクター)で利用することを「プルサーマル」といいます。これはプルトニウムとサーマルリアクターを組み合わせた造語です。(日本原燃HP)

2015年4月22日 (水)

速報! 鹿児島地裁、川内差し止め仮処分却下 1号夏にも再稼働へ

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鹿児島地裁の川内原発仮処分申請が棄却されました。速報のみアップします。司法の常識で、「仮処分テロ」の連鎖が食い止められたことに、正直、ほっとします。

原発の再稼働そのものより、国民が選択した議会や、政府を超越して、たったひとりの裁判官の気分で、国のエネルギー問題が左右される狂気が、少なくともここ鹿児島でひとまず止められました。

ところで、この原告団は、「司法は死んだ」とでも言うんでしょうか。生きたり死んだり、忙しいことです(苦笑)。

そもそも裁判官ひとりの意思で、生きたり死んだりするような司法が、行政権や立法権を壟断すること自体がおかしいのです。

鹿児島地裁、川内差し止め仮処分却下 1号夏にも再稼働へ

[鹿児島 22日 ロイター]
- 鹿児島県の住民らが九州電力川内原発1・2号(同県薩摩川内市)の運転差し止め仮処分を求めた申請について、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は22日、住民側の請求を却下する判断を示した。この結果、原子力規制委員会から再稼働を前提とした検査を受けている同1号が今夏にも再稼働することがほぼ確実になった。

  <地震、火山、避難の住民側主張退け>

  住民側弁護団によると、同地裁は、住民側が主張した地震動想定の不合理性、火山噴火のリスク、避難計画の不備の3争点について、いずれも訴えを退けた。

  住民側代理人の河合弘之弁護士は決定を受けた後、記者団に対し「先日の高浜原発での(福井)地裁の決定とは全く反対の内容で非常に遺憾。ひるむことなく闘い続ける」と述べた。

  今後は福岡高裁宮崎支部に不服申し立て(即時抗告)を行うとともに、川内原発に関しては宮崎県や熊本県など近隣の裁判所でも同様の法廷闘争を仕掛けるとしている。   今回の決定に対して九州電力の広報担当者は「川内原発の安全性は確保されているとの当社の主張が裁判所に認められ、妥当な決定をいただいた」とコメントした。

  規制委が合格判定を出した原発のうち、関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)高浜3・4号については、今月14日、福井地裁(樋口英明裁判長)が住民らが求めた運転差し止めの仮処分を認める決定を出しており、原発再稼働に対する両地裁の判断が割れた形になった。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ND02T20150422

「原発ゼロ」のツケを払わされる国民と企業

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反原発派の人たちは、自分たちでは気がついていないみたいですが、一種の脅迫観念症になっています。

手をズッと洗っていないと放射能がついて、病気になってしまいそうだと感じて、年中手を洗い続けているわけですが、そのうち仕事も手につかなくなり、手は皮膚がすり切れて、やがてホンモノの病気に罹ってしまいます。

外出から帰ったら手を洗おうね、くらいの程合なら予防になりますが、ここまでになるとさすが健康に害が出てしまいます。

当人だけの問題なら、まぁ、カラスの勝手でしょうなのですが、困ったことには、この反原発脅迫観念症の皆さんは、徒党を組んで弁護士とつるみ、それを社会全体に広めようとしていることです。

というか、いまや、自分たちの主張を押しつけて、支配しようとしてすらいるように見えます。

S20110530b1(反原発・反失業デモ。このふたつはまったく矛盾する命題です。原発ゼロの結果、電気料金は消費税5%分値上がりし、企業活動は苦境に追い込まれて、雇用を圧迫しました)

結果、どうなったかといえば、日本は気がつかないうちに、エネルギー危機が進行してしまいました。

震災以来の過剰な節電、電力供給不安、恒常的な電気料金の値上げは、産業活動を阻害し、ひるがえっては雇用に大きな悪影響を与えています。  

いまや一世帯当たりの電力料金の増加負担は年10万円以上となっていて、産業部門では中小製造業やサービス業に深刻な悪影響を与えています。

その理由は、9割に届こうとしている過剰な化石燃料に対する依存が、高コストとして経済・社会にはね返っているのです。電力9社の電源比率を押えておきましょう
電源別発電電力量構成比 - 電気事業連合会

3bcda6f5_3(図 電気事業連合会。クリックすると大きくなります)

棒グラフの一番下の紫部分が原子力で、緑、赤、オレンジが化石燃料です。いまや88.3%、つまりは約9割です。

一方、震災前に3割を越えていた原子力が、2013年にはゼロになっているのがわかります。

昨日にもアップした化石燃料コストと電気料金の影響のグラフを並べてみます。(図 東電HP)

グラフ中央やや左の事故直後の2011年4月から、青線の燃料コストが上昇するに連動して、電気料金がグングン上昇しているのがわかります。

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では、製造現場の声を聞いてみましょう。   

日本鋳造協会・角田悦啓専務理事はこう語っています。(「月刊エネルギーフォーラム2014年7月号」による) 

・・・鋳造業という業種は、鋳物部品を自動車、機械産業に出荷している製造業の基盤的分野で、産業規模も2兆円規模に登ります。  

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                   (写真 鋳物現場 日経ビジネス2014年7月29日より)  

鋳物業は製品出荷額の1割が電気代です。

「鋳造業は金属を溶かし、鋳型に流し込んで製品をつくります。以前はコークスを燃やすキューポラ(溶解炉)が使われましたが、環境への配慮から電炉が大半を占めるようになりました。
そのために製品出荷額の1割強が電気購入費になります。売上高数兆円の自動車メーカーと、数百億円の鋳造業の会社の電気代が同じ例が数多くあるような、電力多消費産業なのです」

中部、関西と関東地方は、機械・自動車部品が立地するために、鋳物業もそこに多く集中しています。  

電力料金の上昇は、電気を多く使う鋳造業に深刻な影響を与えていて、不況から脱出できていません。  

廃業は、震災以降増加の一途をたどっています。

●協会加盟約1000社中の廃業・倒産
・2011年・・・1社
・  12年・・・12社
・  13年・・・14社

電気料金はこの2年で、原発停止の影響で約2割上昇しています。   

2013年年9月1日に北海道電力と東北電力の電力料金値上げが実施され、これで福島事故翌年の12年からの全国の電力値上げは一巡したことになります。   

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                           (図 関西経済連合会意見書より)

申請許可された電気料金値上げ幅
・家庭用(規制部門)     ・・・6・23%~9・75%
・産業用(工場・オフィスビル)・・・11・0%~17・26% 

このために鋳物業では経常利益が1・8%に圧縮され、利益がでない、先行きが見えない、という状況に陥っています。

「協会員会社の経常利益率は1.8%と他産業に比べて、かなり低い状況です。この電気料金値上げで利益がなくなります。さらに関東・東北地区では、震災直後は計画停電、電力の制限で生産が混乱しました。停電が懸念される今の電力供給の状況を、事業の継続性の観点から不安に思う経営者が多いのです」

電力自由化がされていますが、鋳物業は特殊な電気の使い方をするために、新規参入の電力会社とは契約できない状況です。  

角田氏はこのような悲痛な声を挙げています。 

「電力の安定供給がなければ、鋳造業は経営ができません。工場の設備投資額が企業規模に比べ大きいため、簡単に海外への移転などできません。省エネの努力も行っていますが、効果は限られます」

鋳造業電力料金高騰の影響をまとめてみます。

・経常利益率・・・1・8%に低下
・売り上げに占める電気代・・・1割強
・2割超の電気代で、日本の製造業の屋台骨の産業が揺らぎ倒産が増加

これは鋳物業界に限らず、電気炉、プラスチック加工を中心として関西・九州産業界全体の意見です。  

関西・九州の経済連合会合同の企業アンケートの結果、このような電力不足の実態が分かりました。
「原子力発電所の一刻も早い再稼働を求める-地域 ... - 関西経済連合会

今夏の電力使用量が昨夏より増加する企業・・・全体の22.5% 製造業では33.3%
・昨夏同様の節電率の達成は困難」な企業・・・全体の24.8% 製造業では34.6%(中小規模の製造業では39.4%)

そして同調査では、電力の供給不安およびコスト上昇につながった結果、企業の国内への設備投資マインドを減退させることも明らかになっています。

・電気料金値上げにより、「国内への設備投資の縮小・見送り」の可能性を持つ企業
・昨春の値上げの場合 ・・・7.6%
・今後再値上げした場合・・・15.4%

経営上の懸念は消費税増税を上回って電気料金値上げだったそうです。

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                       (図 関西経済連合会意見書)

●関西・九州経済連合会アンケートによる経営上の懸念事項
・電力コストの上昇     ・・・59.6%
・原油・原材料価格の高騰・・・57.8%
・消費税率引き上げ    ・・・49.8%

(※アンケートは「電力供給および電気料金に関する関西・九州企業への影響調査」。今年3月、関経連が会員企業1064事業所、九経連が934事業所を対象に実施した。回答率は全体で21.8%) 

アンケートを見ると、電気料金値上げが消費税引き上げよりも、経営悪化をもたらしていることに驚かされます。  

関西経済連合会は、規制委員会による余りに遅滞している安全審査に対して危惧し、このままこのような電力不足が続けば、「取り返しのつかないダメージ」を受ける可能性になると警告しています。

「現政権においては、安全が確認された原子力発電所を再稼働する方針を表明されていることは高く評価し、産業界としても強く支持する。
しかしながら、原子力規制委員会による安全審査は長引き、当初「半年程度」とされていた審査期間が既に半年を超過しているにも関わらず、未だ原子力発電所の再稼働の見通しが立っていない。
もしこのまま原子力発電所の再稼働が遅れれば、中小企業や製造業を中心に、地域経済を支えてきた産業は景気回復どころか、取り返しのつかないダメージを受けることになる“失われた20 年”の再来ともなりかねない」

そして角田氏も、このような悲痛な声で訴えを締めくくっています。

「日本に必要な鋳造業が成り立たなくなってしまうかもしれません。

企業移転ができるかという問いに対して、74%にのぼる会員企業が、電力料金が50%以上上がっても、管内からの移転が不可能だとしています。

これはグローバルに国境を越えて、低賃金国へ移動可能な大企業に対して、製造業を中心とする多くの中小零細企業は、地場とのつながりで生きてきたために、移転が難しいと捉えているからです。 

そしてこのような電気料金値上げによる企業の経営負担は、やがて従業員コストの削減に及び、国民は家庭用電気料金の値上げと、企業向け値上げに挟まれる形で、いっそう国民の生活を厳しくしていくことでしょう。

国内経済と社会をダメージを与えてまで脱原発というのは貫く性質のものなのでしょうか。

原発ゼロの外科手術をやったあげく、患者が死んでしまった、ということになりかねません。これでは本末転倒ではないでしょうか。

2015年4月21日 (火)

総否定の「反」原発では何も解決しない

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反原発派の方は、よく「原発ゼロ」と言っていますが、既に原発はゼロです。

2013年9月15日に大飯発電所4号機が停止してから足かけ2年、日本は48基全ての原発が凍結状態になっています。 

「原発ゼロ」の記録は、今後さらに更新されていくことでしょう。 

このために、日本は、社会の基盤となるベース電源の約2割弱相当が喪失したために、大きななしわ寄せが起きています。

代替電源の燃料費としては、LNG(液化天然ガス)に頼っていますが、2011年から14年までで既に12.7兆円もの国費が海外に流出したとみられています。

なんのことはない、わが国はアベノミクスで景気を回復し税収を増やしたとしても、それ以上の国富を流出させていることになります。

ちなみに、アベノミックスの提唱者である浜田宏一エール大名誉教授は、再稼働が可能となればその効果は1.5倍になると語っています。

それはさておき、これではまるで、穴の開いた船底から、がんばってバケツで水を汲んでいるようなものです。 

そしてこれは、電気料金の値上げとして、企業や消費者に廻されます。これは額として、消費税5%に相当します。

国民は、もし再増税がなされていたのなら、10%の消費税+5%の電気料金値上げで、都合15%の重荷を背負ったことになります。

20150416122434464    (全国仮処分テロを宣言する河合弁護士。この人の活動停止を仮処分申請したい)

「国富」といえば、樋口裁判官の大飯原発再稼働判決文に、このような部分があります。

「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件 原発運転停止により多額の貿易赤字が出るにしても、これを国富の流出や 喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活し ている事が国富である。これを取り戻す事ができなることが国富の喪失で ある」

樋口氏は、驚くべきことに、大飯原発が電力供給していた関西、北陸経済圏の現状を一顧だにしていません。

樋口氏は、そもそも「国富」という国の資産から負債を引いた経済指標を、「国民が豊かな国土に根を下ろして」ナンジャラという美辞麗句でブンガクしてしまっています。

違いますよ、樋口さん。「国富」というならば、地域の製造業がなにで苦しんでいるのか、どうして不景気から抜け出せないでいるのかを見ないで、どうして判決文を書けるんです。

あなたが見ているのは、「根を下ろして生活をしている」国民ではなく、反原発イデオロギーにすぎません。

樋口氏は、とにもかくにも「安全」だけが大事で、他はすべて考える必要なし、とまで言っ切っているのですから、これではまるで知恵熱がついた中坊です。

では、樋口判決が言うように、バッサリと経済を切り捨てられるものなのなのでしょうか。

私たちは家庭用電気料金の方に目が行きがちですが、実は家庭用向け電気料金は政策的に安く設定されていますので、ほんとうの電気料金値上げの負担はむしろ産業部門に重くのしかかってきています。

では、電気料金の値上げ状況を押えておきましょう。

下図を見ると、化石燃料コストと電気料金値上がりが、同調しているのがわかります。

Photo

   (図 東電HP) 

これはひとえに、電力会社が原発停止で、燃料コストを増大させているからです。

原発が占める電源比率は会社によっても異なりますが、今、焦点になっている関西電力は、9電力会社中最大の原子力比率です。

これに対しては当然批判もあるでしょうし、私もここまで原子力に寄り掛かった電源比率はバランスがとれたものとはとうてい思えませんが、残念ながらこれが現実だということです。

電力会社電源構成2010年

つまり関西電力は、電源の半分を使用不可能な状態になってしまっているわけです。これでは片肺飛行しろというようなものです。

下図を見ると、関西電力が、年々燃料費コストを増大させているのがわかります。せめて大飯が動いていれば一息つけたのでしょうか、それは樋口第1次判決でふっ飛びました。(下図 日経新聞2014年12月23日)

『日本経済新聞』2014年12月23日朝刊5面かくして関西電力は、2015年3月期・連結最終損益は、1610億円の赤字見込みで、4年連続赤字という悲惨な結果になりました。  

今の再稼働を認めていくというのは、その意味からも妥当な経済政策なのです。

コメントにもありましたが、私は再稼働容認派ですが、原発推進派ではありません。危険な原発は廃炉にしていくべきだ、と考えている漸減派です。

廃炉にしていく主体は国ではなく、電力会社です。その電力会社が経営難になってしまったら、廃炉にかかる膨大なコストは誰が負担するのでしょうか。

国だというなら、それは税金のことですから、国民負担でやれということになります。

それはおかしいでしょう。沖縄などは原発が一基もないのに、公平に負担させられてしまいます。 

まさに悪平等。これこそ「沖縄差別」です。こういう過激なことを言う人たちは、単純な電力会社敵視論に染まっています。

今、電力会社を潰してしまって、全てを再エネにするなどという夢想を実行に移したら、電力供給は壊滅し、製造業は安定した電力を求めて海外逃避するでしょうが、かんじんの廃炉費用すら出なくなります。

皮肉にも廃炉するためには、今、潰れられたら困るのです。

漸減する立場まで、一括して「原発推進派」と批判するのは、「増設」と混同されて受けとられることを狙ったレトリックにすぎません。 

ちょうど、辺野古「移設」を、ほんとうは基地縮小なのに、「新基地建設」と言い換えることで、あたかも「基地増設」にすり替えることと一緒の、印象操作です。 

50tokyo130(あのー、「普天間はいらない」と「辺野古移設は許さない」は、一緒にならんのですが。おまけに「新基地はいらない」ですか。もう概念のチャンプルー状態。運動家たちは、知っていて一緒にしているから問題なんです)

原発が危険だと思うのは無理がない国民感情ですが、その危険性を公平な専門家による公的機関によって洗い出し、対策を考えていくのが、現実的な政策判断、言い換えれば大人の判断じゃありませんか。 

味噌もクソも全部廃炉にしろ、1基たりとも動かすなというのでは小児病です。これでは、「再稼働反対」というスローガンは、漸減を意味する「脱」原発ではなく、ただの「反」原発にすぎなくなってしまいます。

多くの国民は、広い意味での「脱」原発には共感し得ても、狭隘な「反」原発に賛成するでしょうか。 

2015年4月20日 (月)

樋口仮処分という法の名の無法

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同じ樋口裁判官トンデモ判決でも、今回の仮処分決定は直ちに効力をもつだけに、重大な影響を与えます。

今後、司法手続きで仮処分が取り消されない限り、高浜3、4号機は永遠に運転できないことになります。つまり廃炉です。

関西電力は、2015年3月期・連結最終損益は、1610億円の赤字見込みで、4年連続赤字という悲惨な結果になります。

また、企業の体力の指標といわれる自己資本比率も悪化の一途で、来期の2016年3月期は、電気料金の再値上げと今年11月に高浜3、4号機が再稼働することを前提として、赤字を回避する経営計画でしたが、すべてがオジャンになりました。

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                                (図 産経4月15日)

関電は、今回の仮処分決定異議と執行停止を申し立てましたが、樋口裁判官のようにたった2回でスピード結審してくれるはずもないので、早くても1年はかかるでしょう。

それに福井地裁は、トンデモ判決を連発するので悪名高い裁判所ですから、またもやわけのわからない裁判官によって、第3次トンデモ判決が出る可能性すら残っています。

そもそも、現在の停止状態すら、法によらない菅首相の「お願い」から始まっている異常状態です。

Img_0(写真 浜岡原発停止を「要請」する菅首相。もちろん、なんの法的根拠がないただの「お願い」だが、ここから法律によらない停止状況が4年間続いて、今や先行きすら見えない)

そして電力会社が、いくら規制委員会の審査に合格すべく努力し、基準をクリアしたとしても、たったひとり判事の暴走でそれすらふっ飛ぶというのですから、日本はもはやまともな法治国家とはいえません。

菅官房長官は「粛々と進める」と言っていますが、政府が明確な再稼働のガイドラインを明示していないために、このような状態に落ち込んでいるのです。

もちろん、このような法の名の下の無法状態については、法曹内部でも大きな批判を呼んでいます。

「元東大公共政策大学院特任教授の諸葛宗男氏(原子力研究開発政策)は「原発の安全性の判断は規制委が一元的に担う。それを裁判所が強制力をもって差し置くことは認められない」と指摘する」(産経4月16日) 

もっともそんな常識的な専門家の意見は、馬耳東風。反原発派はいまもこう言い続けています。

「電力、ジャブジャブ余っている。再エネで充分だ。なに?足りなければ、節電しろ。火山流が押し寄せたり、4号炉が崩壊したり、大地震が来て、ニッポンは全滅なんだぁ。1基たりとも動かすな!」(←古舘氏の調子でね)

20150415171431014

で、河合弁護団長のように、「全国すべてで再稼働を阻止する仮処分申請を行なう」などと言えるのでしょう。ゾッとします。

おそらく下図の安全審査を申請済み原発すべてで、仮処分申請が出ることは覚悟すべきでしょう。

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                             (図 産経4月16日)

そしてまた樋口裁判官のようなトンデモ判事がいれば、同じことが繰り返されます。

それにしても、植村訴訟といい、ヒダリの人たちの裁判好きは今や異常の域に入っていますね(ため息)。

ある反原発論者などは、「電力不足による値上げなんてたいしたことはない。たかだかコストの数%だ。一般市民はコーヒー代ていどの値上げを我慢すればいいだけ」と放言しています。

この仮処分「暴力」のツケは、関西電力傘下の住民と企業が払うことになります。 

既に、関西電力は電気料金の再値上げを決定していて、この2年間で家庭が20%、企業向けが34%の値上げに、さらにこの「樋口仮処分テロ」(←だんだん表現がキツクなるゾ)3度目の値上げとなります。

そして悪い冗談のようですが、もはやここまでコスト削減が進んだ関西電力首脳部は、こう述べています。

「再稼働が想定以上に遅れれば、火力発電所などの修繕費の削減まで迫られかねず、「赤字回避には火力などの安全面を多少犠牲にするくらいしないと、うちは終わる」。関電首脳の言葉に悲壮感が漂う」(産経2015年4月15日)

皮肉にも、なにが根拠にか知りませんが、規制委員会の安全基準すら緩いと断じた「樋口仮処分テロ」は、電力会社の経営を極度に追い詰め、かくて安全コストの削減で、かえって危険になるという馬鹿馬鹿しい現実を生み出しそうです。

※お断り
お前の記事は長くて死にそうだ、読んでいるうちに寝てしまった、こんな長いのはよほどの暇人しか読まないぞ、お前は携帯で読む人のことを考えているのか、などという声をいくつももらっていますので、後半はカットして、次回に回しました。えーん、そこまで言わなくっても(涙)。

2015年4月19日 (日)

おまけ 爆笑・放射脳デマ拾遺集3 「美味しんぼ」に見るデマの自滅風景

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放射脳デマの最終回です。

反原発運動の中には、国や東京電力を批判するためなら、ありとあらゆる嘘は正当化され、目的が正しいのだから多少の(←多少ではないが)行き過ぎも許容されるべきだという風潮が根強くあります。

それが、この人たちのカルト化につながっているのですが、まだ気がついていないようです。Photo_3

(ホントに放射線による急性被曝なら、山岡、キミはもう死んでいる。まぁ、脳味噌はとっくに死んでいるがな)

さて、放射脳デマの最後を飾るトリといえば、やはり雁屋哲氏の「美味しんぼ」の鼻血デマにトドメを刺します。

今まで岩上、上杉などの雑魚たちでも、いくらナンでもそこまで言わなかった、「福島エクソダス」を堂々と宣言してしまう、という場外ホームランをかっ飛ばしました。

雁屋氏はいち早くオージーに逃亡しましたが、それを掲載した小学館は、福島県や双葉町などからの強い批判を浴びました。

小学館編集部はこう返しています。「事故直後盛んになされた残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて問題提起をしたいという思いもありました」(スピリッツ村山弘編集長)

福島民報(2014年5月15日)は、福島県民の怒りを代弁して、こう述べています。

「5月12日発売号では元町長が鼻血の原因を「被ばくしたからですよ」とし、福島大准教授は「除染をしても汚染は取れない」と話している。
 個人的見解を取り上げたことで、本県の実情が誤って伝わる恐れが生じている。復興への努力を台無しにしかねない。風評という暗黒の海に投げ出され、光の見える海面近くまで懸命に浮き上がってきたところを金づちでたたかれたようなものだ。12日に県が科学的な根拠を示して反証し、偏らない客観的な事実を基にした表現とするよう強く申し入れたのは当然だ。
 そもそも作品の意図が分からない。編集部は議論を深めるためと説明する。県民と支援者の心を傷つけ、復興に使うべき貴重な時間と労力を抗議や反論のために浪費させて何が議論か」(太字引用者)

「検証記事」の内容たるや、今のマスメディアの愚劣さを典型的に象徴しています。

本来、朝日並に第三者検証委員会を作らねばならないものを、抗議文はお印ていどで済ませ、小出裕章京都大学助教、崎山比早子氏、津田敏秀岡山大学教授、野呂美加氏、肥田舜太郎氏、矢ケ崎克馬琉球大学教授、青木理氏などといった、札付きの反原発論者の発言を大々的に載せています。

津田敏秀氏などには、「チェルノブイリでも福島でも鼻血の訴えは多いことが知られています」と語らせてしまっています。

そもそもこの「美味しんぼ」が強く批判されたのは、チェルノブイリと福島を同一視したからです。

チェルノブイリで起きた「鼻血と耐えがたい倦怠感」が福島でも起きた、という井戸川氏の妄想を、松井医師のトンデモ理論で「証明」してみせ、ついで「大阪瓦礫焼却でも出た」と「市民グループ」に言わせるデマの上塗りをすることで、強い批判を浴びました。

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(左か松井氏、右が井戸川氏。井戸川氏は、町長時代、町民を連れて放浪したたあげく、町議会によって罷免されて失職した。今では福島県に住んでいないが、なおも鼻血を出ているそうだ。この漫画についても、自分が町長をしていた双葉町から猛烈な抗議を浴びた)

福島民報が怒るように、どうして「美味しんぼ」のような全巻100冊を越える影響力の大きい漫画に、福島差別を煽るデマが出てしまったのか、そして編集部はどうしてそれを掣肘できなかったのか、といった編集責任を検証するべきなのに、「検証」と称してそのデマに同調する論者をわざわざ何人も引っ張り出すことで、居直ってしまっています。

そして、この時も小学館編集部は、かつての朝日の慰安婦問題と同じ、「解明されていない」「可能性は否定されたわけではない」という、言い方で逃げを打っています。

皆さん、ヘンな情報の発信源が、こんな台詞を使いだしたら、もう9割9分、自分でも反論できなくなっている証拠だと思って下さい。

津田氏に至っては、「『低線量放射線と鼻血に因果関係はない』と言って批判をされる方には、『因果関係がない』という証明を出せと求めればいい」と、ないことをを論証しろという悪魔の証明までもちだす有り様でした。

「オレの言ったウソを証明しろ」というのですから、厚顔無恥もいいところで、そんな義理はないのですが、いったん拡散してしまったデマに対しては、別の人間たちがその不毛な作業をやらざるを得なくなるのです。

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(取材から帰京して鼻血が出たというのが雁屋氏の言い分だが、ならば事故直後からそこに住んでいる福島県民は鼻血地獄だな。残念ながら、そのような話はない)

さて、この「美味しんぼ」が、今までのデマッターたちと一線を画したのは、従来の反原発派が奥歯にもののはさまったような、あいまいな印象操作に終始していた「福島は住めない。福島から逃げろ」という決定的ひとことを、とうとう言ったことです。

偉大なるかな、雁屋哲!

この功績で、雁屋氏は武田邦彦に次いでデマッター元帥の称号を奉られ、風評元帥府に列せられることになりました。

Photo(しかも言わせたのが、海原雄山だ。よく噛みつく山岡ならともかく、雄山御大に言わしたら、もう言い訳は効かない)

たとえば、小出裕章氏なども、低線量被曝と健康被害は、「現在までの科学的な知見では立証できないことであっても、可能性がないとは言えません」というレベルに止まっていました。

あの武田邦彦ですら、「郡山に住むのは法令違反です」とまで言っていながら、「福島は人間が住めない」という決定的ひとことが言えないでいました。

これを、雁屋氏はオージーに逃げ場があるという気安さからか、、はたまた出版界の超大物として自分だけは許されると思ったためか、この一線を軽々と越えてみせてしまいました。

Photo_2

 (右が荒木田氏。地元国立大学の准教授でありながら、このような発言を続けている)

そしてこの「美味しんぼ」デマによって、放射脳デマは新次元に突入したと言えます。

デマは、バイアスが強いほど、発信した当座は衝撃力を持ちます。

しかし、それがウソだと分かった瞬間に、逆噴射となって発した当人の社会的信頼を失墜させ、運動全体を貶めます。

それが幾度となく繰り返されれば、その流れ全体がやがて社会で相手にされなくなっていきます。

まさにこの道を歩んでしまったのが、日本の反原発運動のようです。

※来週から日曜おまけはなしです。1日くらい休みたいので。(←誰も頼んじゃいないって)

●謝辞 先週と同様に、「山本弘のSF秘密基地BLOG」デマがいっぱい から転載させていただきました。ありがとうございます。  

                  :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+ 。 

゛ここでは、過去1年間に主にツイッターで流れた原発・放射線関連のデマの中から、あまりにもひどいものや、笑えるものを選んでみた。これでもデマのすべてではない。

【2011年7月】
●アングルの違いじゃないすかね

http://togetter.com/li/159437
「JNN福島第一原発情報カメラ」に映っている大型クレーンが、東電の「ふくいちライブカメラ」には映っていなかったことから、「ライブカメラの映像は合成」というデマが広がる。原子炉から水蒸気が発生しているのをごまかすため、CGを使っているというのだ。単にアングルが違っていて、クレーンがカメラの視界に入っていなかっただけだった。
 だいたい、JNNのカメラでも写されてる以上、そんな細工したって意味ないんじゃない? 働いてる作業員も大勢いるから、目撃されちゃうよね?

●セブンイレブンのお弁当の食材について衝撃のツイート→ソースは今から探します #genpatsu

http://togetter.com/li/156887
「セブンイレブンのお弁当は放射能汚染地域の食品つかっています」 というデマを発信しておいてから、「情報ソースお持ちの方いらっしゃいますか?」と呼びかける。何なの、この人……。

●急性被曝?この場合は(ヾノ・∀・`)ナイナイ

http://togetter.com/li/165513
 福島第一原発に近い大熊町で発見された遺体から高い放射線量が検出されたことから、大熊町と双葉町で発見された数百体の遺体が「溺死でなく放射能急性被曝死だった」というデマが拡散。
 大熊町の死亡者・行方不明者は47人。双葉町の死亡者・行方不明者は56人。

http://n-switch.upper.jp/eq20110311.html
 つまり見つかった遺体の多くは、この町の人ではなく、津波に呑まれて他から流されてきたものと推測される。そしてもちろん、原発事故が起きるのは津波よりもずっと後だ。
 ちなみに、11日の午後8時50分の時点で福島県対策本部により2km圏内に避難指示が、12日の午前5時44分に総理指示により10km圏内に避難指示が出されているので、1号機で水素爆発が起きた12日午後3時36分の時点では、10km圏内にほとんど住民はいなかったはずである。
だいたい原発内部にいた職員でさえ死んでいないのに、どうして何kmも離れたところにいる人が何百人も死ぬのか。そんなに早く死ぬのなら、被曝量は何百シーベルトとかいう単位のはずなんだけど。

【2011年8月】
●「被曝について診断書を書くと,文科省が医師免許を剥奪すると脅迫している」というデマについて。

http://togetter.com/li/171916
 ある人が主治医に「放射能については診断書は書けない。医師免許を剥奪されたくない」と言われたという話から、「文科省が医師を脅している!」というデマに発展、たちまち拡散する。そもそも医師免許を出すのは厚労省だということも知らない人が多いのにはびっくり。
 おそらく元々の医師の発言(本当にあったとすれば)は、「放射能のせいでもないのに放射能が原因だなんて書けない。診断書に嘘を書いたら医師免許を剥奪される」というニュアンスだったのだろうと思われる。

●アンパンマンカレー

http://togetter.com/li/176831
 永谷園のアンパンマンカレーにガイガーカウンターを当てた人が、放射線が検出されたと言い、「今後一切買いません」と宣言した。その情報が爆発的に拡散。
 おそらくカレーの中に含まれる天然のカリウム40の出すベータ線を拾ったものと思われる。しかも製造年月日は震災前だったらしい。
 しかし流した本人は反省の色なく、「風評被害を生まない為に、企業は努力して、放射能検査を徹底するべきだと思います」などと、のうのうと言っている。風評被害生んでるのはあんただってば(笑)。

●放射線蛍光プラスチック「シンチレックス」の誤解が広まっている

http://togetter.com/li/178218
 放射線が当たると光るプラスチックなのだが、なぜかメガネにしてかけると放射性物質が光って見えると誤解した人続出
 
じゃあ、光に当たると色が変わるサングラスをかけたら、太陽だけが黒く見えるわけ? 理屈で考えればおかしいってすぐ分かるだろうに。

【2011年9月】
●8000Bq/Kg以下の汚泥焼却灰をセメントに使用すること、という厚生省通達が各セメント会社に出たようです(セメント会社の友人から聞きました)

http://togetter.com/li/184641
>夫の会社に厚生省通達で、8000Bq/Kg以下の焼却灰をセメントに使えと言ってきたそうです。通達は絶対で、これからはセメントは全部セシウム入りになるそうです。。。肥料、瓦礫焼却、セメント、、どこにいても放射線から逃れさせないぞ!という国の強い意思を感じます…友人Yさんから。

 そもそも「厚生省」は厚労省の間違いだろうし、厚労省がセメント会社に通達というのは根本的におかしい。無論、9ヶ月以上経った今も、こんな「通達」があったという証拠はどこからも出てこない。

●拡散中の「岐阜の何千メートル級の穴」の件

http://togetter.com/li/188907
>これは言っていいのか。重大なことを知ってしまった。今、岐阜県の山中に巨大な何千メートル級の穴を掘っている。福一の燃料を埋める穴だ。

 おそらく瑞浪超深地層研究所のことが誤って伝えられたものと思われる。この記事にもあるが、放射性廃棄物貯蔵施設などに転用してはいけないことになっている。

http://www.asahi-net.or.jp/~zq9j-hys/040415TONO.htm
 真相が指摘された後の展開も頭が痛い。デマを拡散した人は反省もせず、「原発&放射線の情報収集でしてるだけ」「私がどれほど慎重にしているからかさえ、推して頂けない?」と猛烈に開き直るわ、デマ発信源の人はあくまで事実を認めようとしないわ……。

●スリーマイル奇形情報まとめ

http://togetter.com/li/182827
 2009年にコロラド州で生まれた奇形の牛が、なぜか1979年のスリーマイル原発(ペンシルベニア州)事故の影響にされていたり、バラの貫生花、金魚葉椿、イチョウの葉の切れ目、シロバナマンジュシャゲなど、福島第一原発の事故以前から普通にあるものが、ことごとく放射能の影響にされている。

●産地偽装のために、福島県で他県産の米袋が売られている?

http://togetter.com/li/184915
 他県産の使用済みの米袋をリサイクル利用することは、以前から日本各地で行なわれていたのだが、福島のホームセンターで米袋が売られていたことから「産地偽装のために売られている」というデマに発展。

●八王子市の土壌からアメリシウム241検出の報、でもどうしてα線でなくγ線で検出?

http://togetter.com/li/188790
「プルトニウムより毒性の強いアメリシウム241が、八王子の土壌から1kgあたり74ベクレル検出された」という情報がネットで流れる。
 実際の検査結果はこう。

「Am-241 : < 3.7」

 検出限界値である3.7Bq以下だった。つまり不検出という結果だったのだが、不等号の意味を理解できない誰かがそれを抜いて発表。それを見た別の誰かが、50gのサンプルから3.7Bqのアメリシウムが検出されたと解釈し、その数字を20倍して「1kgあたり74ベクレル」にしたらしい。
この誤報、すぐに打ち消されたものの、その後も何度か復活している。

【2011年10月】
●【放射性物質汚染】モスバーガーの受難【誤報】

http://togetter.com/li/201023

>モスバーガー、問い合わせに対して「原材料については一切公表する気はない、不安があるなら利用しなくて結構」被災地の野菜をこれからも使い続けると断言。

 ある人がツイッターでこうつぶやいたら、そのソースが確認されないまま拡散。流した人は間違いに気づいてツィートを削除したが、時すでに遅く、拡散しまくっていた。
モスバーガーは以前から食材の産地をちゃんと公開している。

モスバーガーHP/今月の産地情報

http://www.mos.co.jp/quality/vegetables/farm_info/

●ある若者の死が“原発事故の犠牲者”としてネットで広がり、否定されるまで
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1111/29/news100.html
 9月に急性リンパ白血病で亡くなった釣り師の男性が、「福島原発30km圏内で野宿し池や川で釣った魚を食べていた」というデマが流れた。実際には男性は福島を通過しただけで、野宿したことも魚を食べたこともなかった。
 そうした事実を指摘されてもなお、嘘をついてまで故人を貶めようとする者もいる。これはもう「人間のクズ」と言っていいレベル。↓

http://togetter.com/li/222071

【2011年11月】
●福島第一原発全滅!死者は4300人だった!

http://togetter.com/li/210282
「原発作業員の死者は既に4300人いるが、各遺族3億円で口止めされてるから、その事実はまだ世間に漏れてないそうです」という途方もないデマが拡散! 何でこんなの信じられるの? 4300家族に3億円ずつ払ったら1兆円オーバーしちゃうんですが。
 こういうデマを信じる人は、「現代日本で4300人の人間が死んでも隠蔽できる」とか「1兆円以上の金がどこからともなく魔法のように湧いて出てこっそり使える」と思っているらしい。そんな思考能力の欠如した人間が大勢いる事実の方が怖い。

●白血病患者数が前年7倍と急増 このデマはなぜ広がったのか

http://www.j-cast.com/2011/11/30114796.html
 新聞記事からの引用を装い、「各都道府県の国公立医師会病院の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した」とするデマが2ちゃんねるに書きこまれ、確認されないまま拡散。実際にはそんな発表はなかった。
 記事へのリンクが貼られていない時点で、怪しいと気づけ。

【2011年12月】
●『スリーマイル化する奇形作物』は完璧なデマ!!桜島大根に失礼です!!

http://togetter.com/li/226976
●野菜が大きいのは気候の影響!!巨大ゴボウは「大浦ごぼう」、もともと大きなゴボウです!!
http://togetter.com/li/222002
 放射能の影響で野菜が巨大化しているというデマが流れる。しかし、そこに貼られていた写真は、ごく普通の桜島大根や大浦ごぼうだった(笑)。しかも、写真はいずれも2011年より前のもの。
 また、2011年の秋は好天だったため、白菜がとてもよく育ち、規格外の大きさになるものが多かったという。
 こういう話を信じてしまう人間は、50年代B級SF映画の見すぎである。

週末写真館 春が来たよ

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2015年4月18日 (土)

土曜雑感 私怨、私闘!樋口判決

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この樋口判決というのは、その内情を知れば知るほど、救いがたいものだと分かってきます。 

まず、そもそも仮処分を持ってくること自体、なんかおかしいなって、感じませんでした?

だって仮処分って、そもそも民事のカテゴリーで適用されるものなんですよ。

仮処分は、民事保全法に基づくもので、本来、金銭債権以外の不動産などの係争物件の権利を保全したりする時によく使われます。

それを、民事は民事でも、この夏場の関西の電力供給にストレートに結びつく、原発再稼働に適用するってこと自体が、いいんですか、そんなことしても、でしょう。

もし、そんなことができるのなら、バンバン気に食わない政策を、おかしな裁判官とつるんで停止に追い込じゃえますね。

たとえば、米軍基地使用差し止め仮処分申請とか、集団的自衛権差し止め仮処分申請なんか出てきそう、いっそ、アンポ条約差し止め仮処分申請なんかどうかな。

もう、議会も政府も関係ないや、裁判官ひとりをオルグしちゃえば、日本は意のままに動かせるんだぁ(笑)。

そう思って聞くと、下の、この訴訟の弁護団の河合弁護士の「(我々反原発派は)最大の武器を手にした」という台詞は、深い、深すぎる(笑)。

20150416122434464

しかし、笑いごとではなく、沖縄だったら、辺野古工事差し止め仮処分なんか本気でやりそうですね。いや、実際、翁長知事だったらやるでしょうね。

この時、那覇地裁に樋口裁判官のようなヘンな人物がいたら最後、「移転は、憲法が定める幸福追及権、人格権より劣位であ~る」なんてトンデモ決定を書きかねません。

もう沖タイ、琉新の1面が目に浮かぶね。「民意の勝利!」「三権分立を守れ!」

しかし、当然、上級審は統治行為論の立場から、そんな決定を蹴飛ばすでしょう。

統治行為論とは、「国家統治の基本に関する高度な政治性を有する国家の行為については、司法審査の対象から除外すべきだ」、という法理論です。

欧米はこの立場に立っていて、日本の最高裁も、司法権行使の限界として、採用しています。

伊方原発訴訟などでも、その立場ですね。

20140522192619fff  (写真 大飯原発。関西圏の電力供給の中心だった。民主党野田政権ですら稼働を認めた)

でも下級審って、オカシナ裁判官は掃いて捨てるほどいるようですから、どんどんヘンな判決を出せちゃうわけです。

しかし、いくら下級審で出しても、日本は三審制ですから、ほぼ確実に上級審で否定されます。司法の安全弁が働くわけです。

だから、確定しないまでは、審理中扱いなので、実は司法判断は未定状態なのです。

今回の樋口裁判長は2014年5月、関電大飯原発3、4号機訴訟で有名な場外ホームランをかっ飛ばしました。 

しかし、、関西電力と原告側双方が控訴措置をとったために、現在、名古屋高裁金沢支部て審理中、つまり未決状態でした。  

おっと、関西電力が法的抵抗手段がなくなるまで頑張るのは当然ですが、なぜ勝った原告側も控訴したんでしょう。

勝ってなにが不満なんだい、と思われるでしょうが、先ほど言ったように、裁判が上級審で継続中は確定していないから、法的拘束力がないのです。  

というわで、再稼働は可能。ここで怒った原告側弁護団が使ったのが、掟破りの仮処分です。こうなるともう、なんでもアリですね。

裁判官は、憲法の基本的人権を出してくるわ、弁護士は不動産差し押えの対抗手段によく使う仮処分を出してくるやら、もう法の名を借りた無法地帯。


しかも、この樋口って人、たった2回の審理で、仮処分「決定」に持ち込んでしまっています。その理由が奮っています。

なんのことはない、自分が4月1日付けで名古屋家裁に「左遷」されるからです。もう力なく笑うしかないですね。

というのは、地裁などの下級裁判所の裁判官についての人事権は、憲法81条によって最高裁が握っています。

それは、最高裁は判例重視という立場に立つからで、一回最高裁で下した判例を下級審が勝手に無視してはいけないのです。

したがって、最高裁は、1992年の伊方原発の安全審査訴訟判決を踏襲することを下級審に要求しています。

伊方判決で最高裁は、「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」という判断を示している以上、下級審はその判例に従うことを求められます。

もし、裁判官がなにか個人的見解を言いたいなら、主文ではなく、別の形で言うしかありません。

この大飯、高浜訴訟などの場合、常識的裁判官ならば、仮に原子力に懐疑的であっても、主文で訴えを棄却した上で、別の箇所で原発の危険性に言及するに留めるでしょう。

ところが、樋口裁判官は、ナニをトチ狂ったのか、大飯判決で真っ向からルール破りを演じました。

はい、この瞬間、樋口氏の裁判官としての未来はなくなりました。

Ccikcdzviaazsct(写真 樋口氏の経歴。大阪高裁から地裁に転落し、さらに家裁に。もう62。退官間際。先はない。最後の花火だ。ど~ん!)

そのために、家裁に飛ばされたわけです。が、これに樋口氏は怒り狂ったのでしょう。

オレは、こんなにいい判決を書いて、マスコミにも褒められているのに、最下級の家裁でやり直しか。いや、もうこの歳でやり直しは効かない。もうオレの人生は真っ暗だ。最高裁、恨むぅぅ~、怨念、ドロドロ~。

というわけで、名古屋高裁が福井地裁判事職務代行の辞令を発令したのを奇貨として、超短縮バージョンで仮処分決定をすることにしたのです。

私怨、私闘だね。

しかし、それにしても、 たった2回の審理ってスゴクないですか。裁判を経験した人なら裁判が1年や2年で終わらないことはよく経験していますよね。

理の初めの2回なんか、オードブル。起訴状朗読とか、そういった形式的な審理で終了してしまいます。

それを、今年の夏場の関西の電力供給に直結することを、たった2回でオシマイにしてしまうというんですから、樋口さん、大胆不敵。ヤケノヤンパチ。

マスコミが味方なんだ、なんでもやってやるぜ、古舘さん、大谷さん、褒めてね、ってところです。

D0174710_23313372(写真 原告側「住民」。垂れ幕を読むと、完全に共産党系の人たちだと分かります)

原告側のオバさんたちを、メディアは「住民」と呼んでいますが、原告代表は大阪市在住なんですよ。

ついでに福井県知事は圧勝で、再稼働容認なんだから、福井県民の「民意」が、なんで、大阪のオバさんの一存で決められなきゃならないの。

とうぜん、公益との調整という観点から福井県を呼ぶべきですし、科学者も立場を違えた各方面から招致すべきでしょう。

そんなこと、あたりまえだつうの。(←だんだん腹が立ってきたぞ) 

規制委員会も、あれだけ馬鹿にした判決文を書くんだったら、呼びなさいよ。  

しかし、樋口氏は、とにかく自分が家裁に「飛ばされる」前に、なにがなんでも仮処分決定を出すのが、至上命題ですから、もう全部省く。 なにがなんても省く。 誰がなんといおうと、省く。

スゴイですね。コワイですね。もはや妄執です。法服を着て訴訟指揮なんかしているより、ジャンパー着て、首相官邸前でタイコ叩いているほうが似合いますね。 

自分の書きたい判決を出したいために、審理を端折り、呼ぶべき専門家も行政も呼ばず、長引くとまともな裁判官に替わっちゃうんで、たった2回の審理でボールを自分でゴールに蹴りこんた、というわけです。  

アッパレ、日本一裁判官に不適格な樋口さん!

「関電側は「争点が多岐にわたり、専門性が高い。仮処分の判断が多方面に影響を及ぼす事案である」として、慎重な審理を求めていたが、樋口裁判長は2015年3月11日に開かれた仮処分申し立ての第2回審尋で、「判断する機は熟した。決定を出す」として審理を終えた」(同)

怒った関電側は審理打ち切りに抗議して、翌12日には「議論を尽くさず、決定を出そうとしたことは不当だ」として、樋口裁判長以下3人の裁判官の交代を求める忌避申し立てをしていますが、名古屋高裁金沢市部により却下。  

「忌避」とは、裁判の公正を妨げる事情があるときに、裁判官の変更を求める手続きを指しますが、そもそも大飯判決を出した樋口氏を担当裁判長にするなど、名古屋高裁自体の指揮も、大いに疑問です。  

かくしてこの忌避棄却により、関西電力は万策尽きました。そしてたった2回の審理で、初めから結論が出ているようなトンデモ判決を迎えることになったというわけです。

紛うことのない、「司法の自殺」そのものです。このような裁判官は、法曹界から追放して、放送界に行って下さい。

樋口さん、ぜひ報ステで、「第二代古賀茂明」を襲名されることを、強くお勧めします。

2015年4月17日 (金)

樋口裁判官のゼロリスク論

075
樋口裁判官は、福井新聞(4月14日)が報じるように、直接に法廷で証言させたわけでもない科学者の意見を、それも曲解して判決文を書くという杜撰なことをしていています。
差し止め決定文に「曲解引用」 困惑する地震動の専門家 原発 ... - 福井新聞 

判決文要旨にはこうあります。※朝日デジタル仮処分決定の要旨

「加えて、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と答えている。地震の平均像を基礎として万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見いだし難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる」

まず判決文に、新聞記事で「読んだ」ということが書き込まれること自体、ありえないことです。 

20141108100329961

ここに出てくる入倉孝次郎・京都大名誉教授は、法廷に呼ばれてもいませんから、これでは「新聞記者が書いていることを聞いた」と同じことになり、伝聞証拠を採用したことになります。 

入倉氏の知見を知りたければ、法廷に呼べばいいのです。その手間を省いたのは、たった2回で審理を終了しないと、自分が名古屋家裁に飛ばされてしまうからです。やれやれ、自己都合かい。

しかも正しく引用するならともかく、当の「提言者」(決定文)である入倉教授から直ちに異議申し立てをされてしまっています。

「全くの事実誤認。決定文にある発言は、新聞記事を元に原告が曲解して書いているものが引用されている。正しい理解のために正確に引用してもらえず非常に残念」(福井新聞4月15日)

画像

(写真 入倉教授が曲解とした2014年3月29日付愛媛新聞インタビュー) 

記事赤線を引いた部分が問題の部分です。この赤線を引いたのは、原告側と同じ立場の、渡辺輝人弁護士です。写真も氏の記事から引用いたしました。ありがとうございます。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150416-00044872/ 

20150415171431014    (写真 脱原発弁護士団体の乱訴宣言)

まずは、用語から押えておきましょう。基準地震動の定義は以下です。

「原発の設計の前提となる地震の揺れで、原発ごとに異なる。周辺の活断層などで起こりうる大地震を想定して、地盤の状態を加味し、原発直下の最大の揺れを見積もる。これをもとに原子炉、建屋、配管などの構造や強度を決める。単位はガルで、1ガルは1秒ごとに1センチずつ加速すること。地球上で物が落ちる時の加速度(重力加速度)は980ガルで1Gともいう」  (2011年6月14日  朝日新聞)    

つまり、原発施設によって異なる地盤を考慮して、起こりうる大地震の最大の揺れの基準値のことです。 

ですから、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。 

さらに入倉教授はこう述べています。
(『原子力発電所の耐震設計のための基準地震動』
http://www.kojiro-irikura.jp/pdf/jishinkougaku_H19.pdf

「地震動の策定については、「『施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動』を適切に策定し、地震動を前提とした耐震設計を行うことにより、地震に起因する外乱によって周辺公衆に対し、著しい放射線被爆のリスクを与えないようにすることを基本とするべきである」としている。
さらに、「残余のリスク」の存在について、「地震学的見地からは、上記のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。このことは、耐震設計用の地震動策定において、『残余のリスク』が存在することを意味する」と記されている」          

ここで、入倉教授が言っていることは、「仮に地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計しろ」ということにすぎません。 

これを樋口氏はこう解釈してしまいます。 

「基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と答えている」(太字引用者)

 だから樋口氏は、「規制委員会の基準値は緩すぎる」と結論づけるわけです。 

おいおいです。いつ入倉教授が「あってはならない」などと言っていますか。

入倉教授は、「リスクはあるかもしれないが、そのリスク対しても安全率のマージン見て基準値を決めるべきだ」と言っているだけです。 

なるほど、樋口氏が言うように、事実「4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が2005年以後10年足らずの間に到来」しています。 

福島第1においても、樋口氏が問題にする基準地震動を越える揺れが襲っています。 (下図参照)

001(図 宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』による 単位ガル クリックすると大きくなります)

上図をご覧いただければ、最大の加速度は2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。

しかし、それによって破壊された原発が1基でもありますか。問題はそこです。

基準地震動など、しょせんは「数字」にすぎません。人間の知見という狭い幅でエイヤっと決めたものです。 

だからこそ、現に耐えたのか、耐えなかったのか、という「現実」の知見のほうが重要なのです。

福島第1は、基準地震動をはるかに超える地震動に耐えて、制御棒が問題なく挿入され、停止モードに入りました。 

くどいほど繰り返さないと、反原発原理主義者のコンクリート頭脳には分からないようですが、福島事故の原因は津波による予備電源の水没です。 

これは4つある事故報告書で、国会事故調を除くすべてが一致して出した結論です。 

つまり、原発は基準地震動をはるかに越える大地震にも充分に耐えたのです。 

国会事故調は、こう結論しています。

「プラントパラメータによれば、地震直後には高圧注水設備(非常用復水器、原子炉隔離時冷却系)が、問題なく動作していると判断され、主蒸気流量、格納容器圧力・温度、格納容器床サンプ(廃液を貯める貯水槽)水位のチャートから、配管の健全性についても、異常はない」

つまり、地震によっては格納容器、蒸気配管、各種細管などは、すべて異常なく、損傷を受けず、耐えました。 

しかし破損したのは、それ以後に襲った送電鉄鉄塔の倒壊、予備電源喪失などによる全交流電源喪失が原因です。 

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どうやら、この樋口という人物は、よくある放射脳オバさんにあるような、「ゼロリスク論者」のようで、戯画化すればこんなかんじです。 

「うわー、また地震が来るぞぉ!400ガルだって、とんでもない700ガルだ、いや1250ガル超が来るかもしれないんだ。それに耐えるゲンパツなんかありっこない。だから全部止めてやるゾ!」 

チャンチャン。樋口さん、あんたホントにズブの文科系だね。学生の頃、法学参考書ばっかり暗記していたろう(笑)。

工学系の発想、ゼンゼン分かってないね。

リスクはあります。なんにでも「想定外」はあるのです。

ただ、その「想定外」をいかにして減らして、「想定外」でなくしていくのかが、現場サイドに立ったテーマなのです。 

だから、そのありえるリスクにマージンを足して安全率を決め、対策も2重、3重、いや4重、5重にかけておくんですよ。

樋口氏には、この「想定外」を想定するからこそ、「想定外」を減らすことができる、というパラドックスがわからないようです。

ちょうど、「戦争が起きることを想定すると、戦争になる」、という観念的平和主義とソックリな精神構造です。ま、やっている人達も同じですが(苦笑)。

「ゼロリスク論」は、津波だろうと、地震だろうと、人為的ミスであろうと、初めから「危険性が万が一でもある」からダメだからダメだという考え方をします。

「ダメだからダメ」という全否定の考え方に立つ限り、現実に原子炉を運営する立場の専門家や、電力会社とは「会話」そのものが成立しません。

原子力事故が起きたらどう対処するのか、その可能性をすこしでも潰していく積み重ねの先に、やっと「安全」があるのであって、あらかじめ「原発は事故を起こすはずだ」、あるいはそのメダルの裏側の「原発は絶対に事故を起さない」では、個別具体の安全性対策が進化していくはずもありません。

なぜなら、思考停止だからです。 しかし、これが長年の、わが国の不毛極まるゼロリスク論と原発安全神話との抗争の風景でした。

工学系は、そもそもリスクはあって当然であり、それをさまざまな対処によって最小限リスクに押しとどめるという発想 が基本なんです。 

そのリスクと安全対策のコスト配分が、大人の知恵じゃないのですか。

行政とは、そういう今ある社会的リスクと、それによる社会的利益を按分して、政策決定することなんですよ。

樋口氏は、その行政も、いや専門家すら呼ばないで、決定文を書いてしまいました。

さぞ、簡単な仕事だったことでしょう。だって、結論は既に書いてあっんたんですからね。

もういいかげん、個別具体的に問題解決をしたらどうなのでしょうか。4年前からまったく進化しない議論に、また樋口判決で、混迷に拍車がかかってしまいました。

もう、心底うんざりです。 いつまでこんな幼稚な議論に、つきあわなきゃならないのか。

2015年4月16日 (木)

地震破壊説の元凶・国会事故調

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この樋口第2次判決の肝は、やはり「福島第1原発が地震で壊れた」ということを、いまだに妄信していることにあるようです。 

樋口裁判官は、福島第1が、地震で破壊されたから、700ガル以上でも以下でも冷却機能が失われ、再び炉心融解が起きるという恐怖を述べています。 

だから、破砕帯だらけの日本では、どこにも原発を作らせないという考えにつながっていくわけです。(欄外参照) 

この津波が押し寄せる前に、地震で壊れていたという説を唱えるのは公式には、国会事故調のみです。 
96958a9c93819481e2e6e2e1e08de2e7e2e(写真 横路衆院議長(右)に福島原発事故の調査報告書を手渡す国会事故調の黒川清委員長(2012年7月5日 国会内日経新聞より)

一方、もうひとつの公式事故報告書を作った
政府事故調は、地震破壊説を否定し、「津波によって破壊された」と述べています。 

まず、「地震破壊説」を取る国会事故調査は、こう述べています。(太字は引用者)
福島第一原発事故と 4 つの事故調査委員会 - 国立国会図書館デジタル

① 平成18(2006)年の耐震設計審査指針に照らした耐震バックチェックと耐震補強が未了であったことから、発電所設備が今般の地震動に耐え得ない可能性があること
② 地震直後に大規模な「冷却材喪失事故」(LOCA)は確認されていないが、小さな配管破断とそれによる炉心損傷や炉心溶融の可能性があること(独立行政法人原子力安全基盤機構の解析結果)
1 号機A 系の非常用交流電源喪失が津波到着前に生じていること
④ 地震発生当時、1 号機の建屋4 階の作業員数人が原因は特定できないものの出水を目撃していること
⑤ 1 号機の運転員は、地震直後の非常用復水器(IC)操作にあたって、配管からの冷却材の漏れを気にしていたこと
⑥ 主蒸気逃がし安全弁(SR 弁)が、2 号機・3 号機には開閉記録があるものの、1 号機にはないため、作動しなかった可能性を否定できないこと

これに対して、「津波水没原因説」を取る政府事故調は、こう述べています。

① 地震によってすべての外部電源(送電線等からの電力供給)が失われたが、非常用ディーゼル発電機が起動し、原子炉の安全維持に必要な電源が確保されたこと
② プラントパラメータによれば、地震直後には高圧注水設備(非常用復水器、原子炉隔離時冷却系)が、問題なく動作していると判断され、主蒸気流量、格納容器圧力・温度、格納容器床サンプ(廃液を貯める貯水槽)水位のチャートから、配管の健全性についても、異常はないこと
③ 観測記録を用いた地震応答解析によれば、安全上重要な機能を有する主要な設備の耐震性評価の計算値は、すべて評価基準値以下であること(地震の影響はないと考えられること)
④ 発電所設備の損傷状況に関する、可能な範囲の目視確認結果
 

国会事故調の「地震破壊説」の論拠はおおむねふたつです。 

ひとつは「1号機の非常用発電機が、津波到達以前壊れた」ということ。 

そして第2に、同じく1号機のSR弁(逃がし安全弁)が作動していなかった」ということです。 

ただし、結論だけ聞くと自信たっぷりのようですが、記述を読むと、必ずしもそうでないことか透けてみえます。 

Ac572087s(写真 委員のひとりの田中三彦氏。サイエンスライター。この地震原因説の部分の執筆者は田中氏だと言われている)

ひとつ目については、「全電源喪失が津波によるといえるのか疑問が残る」として腰が引けており、ふたつめは「発電所設備が今般の地震動に耐え得ない可能性がある」、と可能性の問題にまで後退しています。 

つまり、全部「可能性」があって、「疑問が残る」だけでの地震破壊説が、いつしか一人歩きして、反原発運動の中での定説にまで育っていってしまったわけてす。 

では、主要事故原因だった非常用電源の喪失について、検討してみてみましょう。 

国会事故調は電源喪失の時刻と、津波到来の時刻が整合しているということを理由に挙げています。

①津波の到達時刻            ・・・15時35分
非常用電源喪失時刻(運転員記録)・・・15時36分~37分
 

津波到着時刻は、沖合の波高計の測定時刻ですので、そこからさらに2分30秒で非常用電源のある原発施設に到達したとみられています。 

これを根拠にして、津波による水没前に地震によって非常用電源を破壊した「可能性」を指摘しているわけです。

しかし、ちょっと考えてみれば、このような大津波が眼前に押しかぶさるように接近してくる状況で、運転員が正確な時刻をまったりと記録できたでしょうか。

ありえません。国会事故調の推測は、人間心理を無視したものです。おそらくは、事故の後に、波高計の記録から類推して、運転日誌に書き込んだのではないでしょうか。

実は、この推測を裏付けるもうひとつ記録があります。非常用電源を記録するコンピュータ記録にはこうありました。

非常用電源喪失時刻(コンピュータ記録)・・・15時37分40秒~40分38秒

37分40秒~40分38秒ならば、津波計の示す地震が発電所沖で発生した時刻である35分から、ちょうど2分30秒経過しています。

すなわち、津波が到達してから非常用電源が水没して破壊されたことになります。

明らかに、非常用電源は、地震には耐えたが、その後の津波による水没によって破壊されたのです。

しかも失笑してしまうことには、このコンピュータ記録も、同じ国会事故調の参考資料の中にあるのです。

東電は後にこの運転員の記録を、コンピュータ計測時刻で統一していますが、それもまた国会事故調には証拠の偽造と写ったようです。

なんのことはない、国会事故調は、このコンピュータ記録も知っていて、自説である地震破壊説に有利な運転員記録を採用してしまったことになります。

恣意的なのは一体とちらでしょうか。

ちなみに、国会事故調は、別名「川内事故調」と呼ばれるように、反原発議員である民主党・川内博史(かわうち)氏が強い影響力を行使したと言われています。

川内議員、思い出しませんか。

あの民主党華やかなりし日に、ガソリン値下げ隊や、ハトさんの子分となって、徳之島などを駆けずり回った人です。

最後は、苦し紛れにあのグアム移転まで言い出していましたっけねぇ(遠い眼)。

典型的左派議員で、北朝鮮との対話促進、外国人参政権などで活躍しましたが、哀れ、民主への国民的憎悪によって吹き飛ばされて、現在は落選中。

国会事故調は、彼のトンデモ置き土産だったというわけです。

D054eff2a913d894406aa854c23f6e4b4(写真 大飯再稼働で、仲間の反原発活動家たちから「帰れ」コールをされる川内議員。後に落選)

そのためにか、人選段階から反原発的傾向の強い田中三彦志氏を筆頭にして、石橋克彦氏、崎山比早子氏、児玉達也氏、谷津田達夫氏など多くの反原発派や東電解体派を入れて発足していました。

田中氏などは、工学系の専門委員が、かならずしも自説の地震破壊説に同意してくれないことを、後に雑誌でこぼしています。

まぁだから、「可能性がある」とか「疑問が残る」という、どうとでもとれる表現に落ち着いたのでしょうが。

田中氏のような地震破壊説があってもかまいませんが、それは自分の著書でしてください。

オフィシャル・レポートは国を代表するものです。偏った自分の見解を押しつけるのはいかがなものでしょうか。

このような公平性性を欠く結論が、「国会」の冠を被って世間に流布し、やがて運動の定説と化し、そして樋口判決のような奇怪な大木に成長していくわけです。 

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■読売新聞4月14日)

「決定はまず原発の耐震設計の基本になる基準地震動(想定される最大規模の地震の揺れ)の数値の信頼性を検討。関電は700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とし、規制委も安全審査の合格証にあたる「審査書」でこれを認めた。
 決定は、2005年以降の地震のうち全国4原発で5回、想定の地震動を超えたことを重視し、「高浜の想定だけが信頼に値する根拠はない」と指摘。基
準地震動は発生しうる一番大きな揺れの値ではないとする専門家の意見も挙げ、「理論面でも信頼性を失っている」とした。 また、700ガル未満の地震でも、外部電源が断たれたり、給水ポンプが壊れたりして冷却機能が失われ、炉心損傷の危険があるとした」
 

2015年4月15日 (水)

またあの樋口裁判官がトンデモ判決を出す

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福井地裁の樋口英明裁判官が、またまたやってくれました。 

「高浜3、4号は今年2月、原子力規制委員会から新規性基準に「適合している」と合格判定を受けた。しかし、福井地裁は仮処分の決定文要旨で、「新規制基準は緩やかすぎて、これに適合しても安全性は確保できない」と断定した。
原発の安全審査における最大のポイントとなる基準地震動(地震の揺れの想定)について、地裁は、2005年から過去10年間で想定を超える揺れが4原発で5回あったことに触れながら、「基準地震動は信頼性を失っている」と指摘した」(ロイター4月10日)。

樋口裁判官は、去年の5月に、大飯原発3、4号機再稼働差し止め訴訟判決という、司法史上に残るトンデモ判決を出した人です。 

今度は、関西電力・高浜原発3・4号再稼働の差し止めを求めた仮処分申請に対して運転差し止めです。 

002      (写真 喜び舞い踊る原告側。「司法は生きていた」ではなく、「司法の自殺」です) 

この人に担当させれば、こういう判決を出すのは分かりきったことなのに、福井地裁の司法機関としての公平性を疑います。 

樋口氏は、前回の大飯原発判決が司法内部でも、問題視されていました。

というのは、最高裁は、1992年の伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決骨子で、こう述べているからです。

「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」

つまり、最高裁は、「高度の科学的・技術的知見を要求する原子力政策に、司法判断は関わるな。判断するのは行政である」と言っているわけです。

これに対して、樋口氏は真っ向から最高裁判断を否定したことになります。

それが原因かどうかは定かではありませんが、4月1日付で名古屋家庭裁判所に「左遷」されることになっていました。

しかし、引き継ぎの関係から職務代行が認められたことを利用して、今回の裁判も担当してしまったと見られています。

また原告側も、去年11月に、高浜原発の再稼働の差し止め仮処分申し立てを、大津地裁判で却下されおり、今度は「あの」樋口裁判官がいる福井地裁に、再度申し立てをしたようです。

なんと言うか、かんと言うか、樋口を慕って3千里ですか(涙)。その執拗さは、見上げたもんだと思いますが、自分らの主張が通りそうな地裁を選ぶっていうのは、いかがなもんでしょうかね(笑)。

今度、浜岡でも、どうせ似たような差し止め訴訟するんでしょうから、名古屋家裁にでも申し立てしてください(笑)。

ただし以後、、このような訴訟に対して、電力会社は、あらかじめ想定される損害に対しての補償金を担保するように原告に要求していくことになると思われます。 

既に今年1月、九州電力は川内原発で、差し止めが認められた場合の損害賠償を原告側に求める訴えをしています。 
※http://www.47news.jp/CN/201501/CN2015011701001469.html

樋口英明裁判長 大飯原発訴訟にて

(写真 日本一アブナイ裁判官となった樋口裁判官 なんだか翁長知事に似ているね)

さて、内容的には欄外に抜粋しました。あいかわらず、大飯判決をそっくり踏襲して、地震と人格権だそうです。

信じられん、この御仁、2度までも原発を「人格権」で裁いている!

振動基準値が適正かどうかについては、今まで足かけ4年間も、地質や地震の専門家による立地の地質調査をもとにした議論がなされてきています。  

さて、整理しておきましょう。ポイントはふたつに絞られます。 

ひとつめは、地震に対してどのように考えておくべきなのか、ということ、です。

もうひとつは、そもそも司法に現行法を超越した判決を出す資格があるのかどうなのか、です。

まず、地震については、専門家の間での激論が交わされて、規制委員会内部ですら対立が生じてきました。 

そうした多くの公聴会や事業者のヒアリングを背景にして、規制委員会が安全性審査をしてきているわけてす。 

23d033b4a2358af712e5a77871d972bd                (写真 規制委員会の破砕帯の地質調査風景)

これをまったく専門性を持たない、民事専門の裁判官が数ヶ月ていどの審理で、軽々と「緩やかすぎる」というなら、そんな手間隙のかかることなど、バカバカしいから止めてしまえばいいのです。 

そして樋口氏をトップにする、「新原子力規制委員会」でも作って、審理なしで全部廃炉にしてしまえばいい、ということになりかねません。 

もし樋口氏が、真面目に今の規制委員会を中心とした現行の安全審査に対して異議を唱えたいと言うなら、それだけの地質データを持ってこねばなりません。

地震については、別途に詳述するとして、2点目です。

そもそもこの樋口判決の最大の問題点は、判決が原子炉等規制法を根拠とする規制基準を、「無視してかまわない、いや無視すべきである」という姿勢を取っている点です。

樋口さんに聞きたいのですが、裁判官とは、適法であるのか否かを、法に基づいて判断する立場ではなかったのでしょうか。 

裁判官がそう思っただけで、法をごみ箱に入れてしまっていいなら、司法は立法権と、根拠法に基づいて運用されている行政権の上に君臨する、巨大な独裁的権力を持つということになりますね。

違いますか。そんな権限を、いつ誰が、どのような形で司法に与えたのでしょうか。

現行法では、原子炉に対して停止命令を出せるのは、唯一、原子力規制委員会だけです。

2b6d3ffbc3efe0f9ffbe28b3bc94d659(写真 原子力規制委員会田中俊一委員長。この人はそうとうな反原発派なんだが、どういうわけか、運動家たちは解任を要求しています。いっそ菅直人氏か、河野ジュニアでも据えますかね)

しかも、規制委員会ですら重大、かつ緊急に対処すべき違法行為が発生した場合のみ、停止をかけられるに止まっています。 

樋口氏は、前回の大飯訴訟の判決文でこう述べています。おそらくまったく同じ思想で、今回の判決も書かれているはずです。

「人格権の我が国の法制における地位や条理等によって導かれるものであって、原子炉規制法をはじめとする行政法規の在り方、内容によって左右されるものではない。
したがって、改正原子炉規制法に基づく新規制基準が原子力発電所の安全性に関わる問題のうちいくつかを電力会社の自主的判断に委ねていたとしても、その事項についても裁判所の判断が及ぼされるべきである
し、新規制基準の対象となっている事項に関しても新規制基準への適合性や原子力規制委員会による新規制基準への適合性の審査の適否という観点からではなく、(1)の理に基づく裁判所の判断が及ぼされるべきこととなる」

(大飯差し止め訴訟判決文 太字引用者) 

つまり、樋口氏は原発再稼働に関する適否は、原子力規制庁 という行政権とは無関係に福井地裁の裁判権に属するとしているわけです。 

これは樋口氏が個人的にそう考えた、というだけで、明らかな曲解です。 

現行法体系において、原子炉の停止命令が出せる政府機関は、原子炉等規制法第43条の3の23(※欄外参照)により、原子力規制委員会(庁)だけです。 

その当該部分を、改正原子力規制法から抜粋してみます。

「原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。」(原子炉等規制法第43条の3の23)

読み違える余地もなく、原子炉規制法が安全基準を定めており、「原子炉の停止、改造、修理、移転、運転方法、その他保安のための必要な措置」については、規制委員会が「必要な措置を命ずることができる」としています。

これか原子力規制における唯一の根拠法です、樋口さん。

そうである以上、とうぜんのこととして、停止に関する行政命令権は、規制委員会に属することは自明です。

おそらく樋口氏はそんなことは充分承知のはずです。だから、この現行法を超越できる根拠としてなんと憲法を持ち出してきました。

大飯判決で、樋口氏はこう述べています。

「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。
したがって、この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求できることになる。
人格権は各個人に由来するものであるが、その侵害形態が多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、その差止めの要請が強く働くのは理の当然である。」
(大飯裁判樋口判決文 太字引用者)

第13条は、人権カタログの総括的条項で、14条以下の宗教、思想、信条の自由などを保護の前文となっている条項です。

「第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

集会・結社・思想の言論の自由が制限されている某大国ならいざ知らず、普通の文明国で、この第13条を持ち出せば、なんでも言えるという万能ツールみたいな条文にすぎません。

それぐらいイロハのイ、つまりは抽象度が高い民主主義の「上澄み」のような条項です。

一方、第25条は生存権といわれる条項です。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

これも同様てす。これが司法のプロが書いた判決文だというのが、信じられない。まるで、生徒会活動をしている中坊の作文です。

そもそもこのような一事業者に対して、「国への命令書」である憲法を持ち出すこと自体が、不適切です。 

もし幸福追及権などという、どうとでも解釈できる憲法条項を出してくるなら、電力事業者もまた、私有財産権の侵害を禁じた憲法第29条1項で対抗できてしまいます。

「憲法第29条1 財産権は、これを侵してはならない」

憲法vs憲法という、お笑いの対決になります。樋口さん、どうしてこういう空中戦、神学論争をするでしょうか。

もっとまともな、専門家を交えた議論の場を、裁判所が提供するというならともかく、初めから結論が決まっている、樋口裁判官のご託宣を聞くだけなのですからたまったものではありません。

原子炉規制法は、福島事故の反省を踏まえて改正されており、現実に対応しています。そもそも、原発自体の安全性論議と規制法はまったく別次元の話です。 

裁判官が、自分の勝手な恣意で起訴の法体系を超越することができるならば、法律など不要です。

原告側は「司法はやっぱり生きていた」と叫んでいるようですが、私は今回の樋口判決こそ、「司法の自殺」「司法の独善」だと思います。

樋口裁判官は、これを最後にして、どこかの家裁に転勤するそうですが、そこで離婚調停でもしていなさい。そのていどの人です。

※お断り アップした後に、その後に分った情報を増補し、再編集しました。 

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■読売新聞4月14日  

「決定はまず原発の耐震設計の基本になる基準地震動(想定される最大規模の地震の揺れ)の数値の信頼性を検討。関電は700ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)とし、規制委も安全審査の合格証にあたる「審査書」でこれを認めた。
 決定は、2005年以降の地震のうち全国4原発で5回、想定の地震動を超えたことを重視し、「高浜の想定だけが信頼に値する根拠はない」と指摘。基準地震動は発生しうる一番大きな揺れの値ではないとする専門家の意見も挙げ、「理論面でも信頼性を失っている」とした。
 また、700ガル未満の地震でも、外部電源が断たれたり、給水ポンプが壊れたりして冷却機能が失われ、炉心損傷の危険があるとした。

決定は新規制基準の妥当性にも言及。高浜3、4号機の脆弱性性を解消するには〈1〉基準地震動の策定基準を見直し、想定を引き上げ、根本的な耐震工事をする〈2〉外部電源と給水設備の耐震性を上げる――などの対策が必要だが、新基準は規制対象にしていないとした。

 さらに、事故時の対応場所になる免震重要棟の設置に猶予期間があることについても「地震は人間の計画、意図とは無関係に起きる。規制方法に合理性がないのは自明」と批判。「(新基準は)深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえる厳格な内容にすべきだ」との見解を示した。

 そのうえで「住民らの人格権が侵害される具体的危険性がある」として差し止めの必要性を認めた」

■原子炉等規制法第43条の3の23(施設の使用の停止等)
原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造若しくは設備が第43条の3の6第1項第4号の基準に適合していないと認めるとき、発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認めるとき、又は発電用原子炉施設の保全、発電用原子炉の運転若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵若しくは廃棄に関する措置が前条第1項の規定に基づく原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。 

2015年4月14日 (火)

沖縄の「二人羽織」とは

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「あいうえお」さん。福島と沖縄は、確かに似ている部分かあります。 

それは当然で、国策だったからです。原発の設置、米軍基地の設置、いずれも国家の意志でなされました。 

ですから、地元への了解のための宥和政策として、福島には電源立地対策交付金が与えられ、沖縄には累積100兆円にものほる巨額な振興予算が投入されました。 

結果として、政府から流れ込む税金のために、地元に原発や基地に依存した経済が誕生してしまいました。 

沖縄県では、基地がない地域経済は考えにくいほど、基地と地元財政や経済が一体化しています。 

ただ福島県全体では、沖縄県のような、立地自治体の犠牲の上に県全体が潤うということまでは起きていないのが、決定的に違う点でしょう。 

沖縄県の場合、県全体で、基地を源泉とする振興予算に寄りかかっていて、その強依存が、社会全体を歪めてしまうまでになっています。 

Bmsigzoceae0hb3(写真 笑ってイイかな。普天間ゲート前のオスプレイ反対オバさんのほうか、オスプレイよりうるさいことが判明。実際に、怖くて言い出せないらしいが、早朝からのこの人たちの騒音は、近隣住民の怨嗟を買っている)

一方、依存というのは、反対する側も一緒で、常に「被害者」を探して祭壇に祭り上げてきました。 

というのは、運動というものは、常に社会の耳目を集めねば成り立たないものだからです。 

いつも「こんな悲惨なことが起きている!」と絶叫していなければ、運動は忘れ去られていき、やがて消滅してしまいます。 

だから、年中「被害者」の祭壇に可燃性材料を投下して、ボンボンと火を燃やしていなければなりません。

しかし、運動家たちは、真の解決をする気も、能力もありません。

201203120801059ab(写真 「安心して暮らせる福島」を唱えながら、福島に対する不安心理を煽っている不思議な光景。やっている人の多くは、善意なのだから困る)

「福島の子供を救え」という耳障りのいいことを言っているNANZEN(●核派)の人たちは、国が支援している大規模な自治体の検診活動の足元にも及びません。

「福島は住めない」「福島に行くな」と叫んでいる馬鹿者に至っては、もう復興の邪魔者、いや差別者でしかありません。

彼らの本音はいつまでも福島が荒廃したままで、チェルノブイリのような状態であり続けることなのです。

福島はチェルノブイリではありません。これははっきり断言できます。これについては別稿でお話しすることにします。 

さて、沖縄の場合は、官公労という役人や教師の労組が運動の中心になっています。県や自治体の職員で作る労組ですが、賃金は民間の2倍で、国家公務員並賃金が実現してしまっています。 

01(写真 沖縄平和行進には、官公労と彼らが作った平和センターが全国から押しかける。一種のメッカ詣でのようなもの。組合費で訪沖して、帰りは観光して帰っていく)

とうぜん、全国一の貧困県の沖縄ではダントツのエリートで、島の憧れの仕事ナンバーワンです。 

官公労は条件が良すぎて、労組の本来の目的であるはずの賃上げや、待遇改善などはやる余地がありません。 

暇だというと怒られそうですが、潤沢な予算と人員をすべて反戦・反基地闘争という政治闘争に振り向けています。 

本来、民間の2倍の賃金に安住せずに、貧しい県民のために戦うべきでしょうが、民間労働者の組織化には、とんと無関心を決め込んでいます。 

そのために、沖縄の民間企業は全国的に見てもボトムの組織率です。

これでは組合というより、むしろ左翼党派のようになってしまっています。 

そのための専門組織さえあります。「沖縄平和運動センター」です。あの辺野古ゲートの山賊・山城某が代表をしていますが、彼も県職労組の副委員長様でした。

Bqiucmusaaiodp(写真 昨年、基地に入ろうとした一般住民を襲撃し、「引きずり出せ、叩き殺せ」と叫ぶ沖縄平和センター代表山城某の狂態。恐ろしいことに手で、ドアロックを解除しようとしている。中央のクバ笠の男が山城某) 

このような結果、沖縄は全国て輝ける反戦・反基地運動のスターダムに君臨することになりました。 

有体に言えば、全国でこんなことを今でもやっている県は、沖縄だけなのです。 

しかし彼らにとって恐ろしいことが起きました。なんと、反戦・反基地運動の御本尊であった、大事な大事な普天間基地が移設されてなくなってしまうという「悲報」です。 

こういう言い方をすると誹謗中傷と言われそうですが、反戦・反基地運動は、国や米軍がゼッタイに維持せねばならない、したがってゼッタイに返せないということを、大前提にしているものなのです。 

彼らは「普天間を返せ」とゲートでガナっていますが、国があっさりと「はい、分かりました。返しましょう」と返事したら、あららら~、になっちゃうでしょう。 

「返せ、返せない」というやりとりがあってこそ、この阿吽の呼吸で条件を吊り上げられるわけで、こういうことを弱者の恫喝と言います。 

条件を吊り上げる役割は、保守政治家で、国に予算折衝に行っては、「うちの県民はこんなに怒っているんです。もうなだめられねぇっす」と泣きごとを言って、振興予算の増加をゲットします。

私はこの奇妙な保革の連携を、沖縄の「二人羽織」と呼んでいます。Photo_2

                    (日経新聞・元那覇支局大久保潤氏作成による)

上のグラフは、何度か紹介してきたものでが、沖縄振興事業予算の推移を表しています。面白いことに気がつきませんか。 

グラフ中央部の平成10年(1998年)が4713億円とピークとなって、徐々に減ってきており、現在は2000億~3000億円規模になってきています。

なぜ1998年が図抜けて多いのかと言えば、それは97年に辺野古移設案が固まったからで、当然大反対するだろうと見られていた大田知事を宥和するためです。

皮肉にもこの全国革新勢力のシンボル的存在だった太田知事在任中が、もっとも巨額の本土からの税金が流れ込んでいることになります。

反基地を掲げて当選した反戦知事がしたことは、基地の見返りの増額だったわけです。

基地を恒常化させるための「アメ」である振興資金を取れば取るほど、米軍基地は居座り続けるわけですが、これが実態です。

語弊があリますが、沖縄から「基地」を取ってしまったら、ただの貧乏県でしかない、これが現実です。

ですから、普天間基地がほんとうに返ってくるという前代未聞の事態に、保守も革新も心底ビックリしました。

ありがた迷惑だ、これが沖縄の言うに言えない本心だったのです。

返還される宜野湾市にとっては、返還が本格化した場合、多くの問題を突きつけられることになります。

たとえば、まずは、基地そのものがなくなることによる財源喪失のショック、続いて跡地利用のための財源確保、食い扶持がなくなる軍用地主対策、さらには隣接する自治体との跡地計画のすり合わせ、というエゴの衝突すら覚悟せねばなりませんでした

本音を言えば、本土政治家を普天間2小の屋上に案内して、基地被害を直訴する役割のほうが気が楽だったくらいです。

04okinawa5           (写真 2010年5月、鳩山首相沖縄訪問。普天間2小の屋上で見学)

自治体以上に衝撃を受けたのが左翼陣営でした。彼らの沖縄における唯一の存在理由である基地が返還された瞬間、彼らの闘争目標そのものが、この地上から消滅してしまうからです。

そこて今、沖縄官公労がやっているのが、辺野古をあえて「新基地」と呼んで、さらなる基地負担フンサイという大反対運動をしてみせることでした。

彼らが勝利した場合、とうぜんの結果として、普天間基地は固定化してしまうわけですから、願ったりかなったりというわけです。

一粒で二度おいしい、というわけですね。税金をただ払うだけの本土の国民にとっては、たまったものではありません。

長くなりまくしたので、次回に続けます。

2015年4月13日 (月)

「沖縄」とひと括りにできるような存在はない

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昨日メディア・リテラシーについて書きましたが、私はチェックリストの最初に、「警戒心の欠如」と書きました。 

「自分だけは騙されないという根拠ない自信」と解説しましたが、これは私の大前提のスタンスみたいなものです。 

言い換えれば、自分の立場をガチガチに固定してしまって、そこから帰納していくようなマネはするな、という自分に対する諫めです。 

初めから立場が決まっていると、情報を取捨選択することを無意識にするようになります。 

すると、気に入った情報は、電磁石よろしくどんどんと集まるのに、それとちょっと違うなという情報は、なんとはなしに聞かなくなってしまいます。 

たとえば沖縄というと、「基地のない平和な島」という言い方が、あたりまえの常識のように語られています。 

しかし、では具体的に、沖縄の人たちが「基地」とどのようなつきあい方をしているのか、ということまで突っ込んだ分析はあまり見られません。 

あるのは、「基地の重圧にあえぐ人々」「基地犯罪」「怒る市民たち」「強権を押しつける政府」、といったステレオタイプの絵柄ばかりです。ほんとうにそれだけなのでしょうか。 

この絵柄を丸呑みすると、普天間のゲート前で抗議行動をする「市民の叫び」だけが、沖縄を代表するように、思ってしまいがちです。 

事実、辺野古のカヌー軍団や、ゲート前の抗議行動ばかりが、本土のニュースに登場します。まるで島全体が、「反戦・反基地」一色のようです。 

沖縄に住んでみれば分かりますが、あの人たちのような意見も確かに存在しますが、私には沖縄のある階層の、ある特定意見の代表者にしか見えません。 

あるいは本土では、名護市長選、知事選と続く「民意」こそが、沖縄を代表していると思いがちです。 

これも同じで、名護と県知事選の左翼陣営の勝因を、もう少していねいに分析すれば、簡単に沖縄県民の「民意」はこれだ、と言えなくなるはずです。 

たとえば、歴代の知事は移設容認派でしたし、もちろん翁長氏もその考えでした。

Imag2014111962788_imh_02_l(写真 当選後に初めてかけつけたのが、地元民ゼロどころか、地元から撤去要求が出ているテント村だったという翁長氏。どちらを向いて政治をするのか、よくわかって、心温まらない一コマ) 

では、いきなり今回の選挙で、沖縄県民の考えがコロっと入れ替わったのでしょうか。別にそうではありません。そうそう簡単に人は変わるものではありません。 

今まで移設を容認してきた知事に投票してきたのも沖縄県民であり、今回拒否の「民意」に一票を投じたのも、同じ沖縄県民なのです。 

特に、本土の多くの人間は具体的に沖縄を知る機会が少ないために、この「民意」幻想にコロっと参ってしまっています。 

では果たして、すべての県民が、この「民意」のように米軍が沖縄から即時・全面的に撤退することを望んでいるのか、と問われれば、たぶん違うと思います。

そんなことをされたら、いっぺんに沖縄は干上ってしまいます。干上がらないのは、お役人だけです。

このお役人の労組が官公労で、ある意味、米軍に依存していないのはこの人たちだけだからです。 (別な意味で、官公労は基地に強依存していますが)

何回か書いて来ましたが、基地がある地域のほうが、基地に対する依存と執着が強く、むしろ所得も、自治体財政も豊かだという現実があります。 

ですから、基地がない南部、中部の南側のほうが、理念的「反戦・平和」を言いやすいという風土があるわけです。 

そしてこの振興予算の多くは、土木業に流れ込んでいます。 

そのことから、土木建設業は、振興予算を食い物にしていて、それが沖縄保守の地盤となっているケシカランという、公共事業悪玉論がありました。 

では、土木建築業は、いっそ島にないほうがいいのでしょうか。そんなわけがありません。 

土木建設業は、本土の地方に行っても皆一緒ですが、地域経済の核です。多くの従業員を雇用し、資材業者などの周辺企業まで含めれば、広汎な人々が土木建設業で生活を支えています。

農家さえ、暇な時期には、地元の土建屋でドカチンをしています。 

地方の飲み屋に行けば、ホワイトカラーと観光客が中心の那覇などと違って、建設業関連のオっちゃんのほうがずっと多いのです。 

そしてこのオっちゃんたちが、デモに行ったり、マスコミのインタビューを受けたりすることがあるかといえば、まず絶対にありません。

いわば「地域」という大樹の幹に当たるのが土木建設業で、この感覚は、地方に長く住んでみないと分からないでしょう。

このような人たちが依存しているのが、基地とそれを源泉にする振興予算です。ですから、振興予算をキープしておくためには、基地は絶対に必要な「悪」なのだ、という考えにつながります。

実際に、稲嶺「反戦市長」が、なにをトチ狂ったのか北部振興予算を拒否するという愚行をしたために、いかに名護を中心とする北部が干上がったのか、行ってみればわかります。土建業の倒産が相次ぎました。

また、この人たちは受益者であると同時に、現実の基地公害の被害者です。

頭上にゴォーゴォーと米軍機が飛ぶ自宅に住んで、基地関連の請け負い工事をするという人も多くいます。

辺野古のゲートで阻止行動をしている「市民」は、外人部隊と官公労ばかりで、搬入する工事トラックの運ちゃんの方が、基地の「被害者」であるはずの地元民だったりします。

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このように、「反戦・反基地」の視野からこぼれ落ちるものが沢山あり、逆に国の安全保障論一般からも見えないものも沢山あるのです。

沖縄は一枚岩でもなければ、ひとくくりにできる「沖縄人」などどこにもいません。

これは一定の立場に自分を縛りつけていては、絶望的に見えないことてす。

普通に生きる人たちに近づくこと、あたりまえに飯を喰う島の人たちの側に近づこうと努力すること、矛盾と言われようが精一杯生きている人たちの立場に立とうとすること、それが私のささやかな意志です。

私がもし「保守」だとすれば、それは「保守」という立場が、人の矛盾をおおらかに肯定するからです。

左翼思想の根本的欠陥は、人間や社会に対する眼が甘いことです。

それは、左翼思想の基になっているマルクス主義が設計主義であることです。

社会はこのようにならねばならない、このようにあるべきだという思い込みの教義の枠組が先にあって、逆にそれで生きている人や社会のほうを裁断してしまっています。

現実の人や社会がその枠から外れると、外れたほうが悪いのだ、という発想になってしまいます。

情報も然りですから、その枠組みに合致するものしか、やがて聞こえなくなっていきます。

それでは、何も見えないし、人は幸せになれないのではないでしょうか。

 

2015年4月12日 (日)

おまけ 爆笑・放射脳デマ拾遺集2 チェックリスト付き

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先週に続き、まだまだある、放射脳ワールドの続きです。

こう言っては気の毒ですが、サヨクの人たちの運動の多くは、大部分が誤報、それも意図的デマを出発点にしています。

例えば、古くは慰安婦。これなどはまさに、植村記事の「挺身隊」と「慰安婦」を意図的に混同するという捏造から生れました。

さっさと間違いでしたと訂正すればいいものを、さらに嵩にかかって吉田清治という、これまた100%混りっけなしの詐話師に引っかかって、それを拡大してしまっています。

1992年の秦郁彦氏の済州島実証研究が発表された時点で、強制連行説はジ・エンドなのですから、ここでごめんなさいと謝っときゃよかったのです。

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しかし、自分がいつもの軽い気持ちで着け火した(←やるなよ)慰安婦問題が、韓国政府をも巻き込んだ国際問題にまで発展したために、カミングアウトできなくなりました。

いまや、発信元の朝日に代わって韓国政府が、まるで国家の存亡の一大事のように慰安婦を国是化してしまいました。

気の毒ではありますが、しょせん当時の風俗嬢みたいな存在を、国是にするほうもするほうですが、火をつけた奴が悪いのは、いうまでもありません。

もう、すいませんでしたと、頭をかいていりゃいい問題じゃありません。

これもたったひとつの、吉田-植村ご両人のウソが始まりです。

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沖縄問題をこの間書いて来ましたが、翁長氏が沖縄左翼陣営と一緒に旗を振ったオスプレイ配備問題が大きなきっかけとなっています。

このデマは今なお、訂正されておらず、つい先日も某ラジオ局のキャスターが、「うちの近くを飛ぶんですよ。落ちたらこわいな」と素で言っておりました。バカか。

一機100億円もするバカ高い機体がポンポン落ちたら、米国の納税者と議会が怒り狂うわい。落ちたのは、20年前に作った試作5号機だって。

常識で考えろ、つうの。

しかし沖縄地元紙は11万人も県民抗議集会で集まったと豪語しているんですから、そのうちひとりも常識に照らしたリテラシーをしなかったということになります。

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こういう人たちは、公式に出ている発表を「政府の陰謀」として信じないくせに、ただの風評や、「友人の父の友達の息子」(←フツーはそんなの無関係と言うぞ)の言うことを信じる、という変わった精神構造をしているようです。

2011年3月から半年間は、かなりの国民がリテラシー欠乏症に冒されましたが、まともな情報が出回ってくるにしたがって、急激にその数を減らしていきます。

と、同時にあれほど隆盛を極めた反原発運動も衰退して、党派化していきます。

でも、治癒しない、気の毒な人たちもいまだいるようです。それもなぜか自称インテリに多いのは、いかがしたものでしょうか。

メディア・リテラシーが欠落した人の特徴って、ざっとこんなです。

ご自分の放射脳度を確かめてください。7点以上で、あなたは見事、放射脳!(←うれしかねぇや)

室井佑月さんなどがなぜ、「歩く風評」と言われるのかは、この項目を見るとなんとなくわかっちゃいますね。満点だもん。
※室井さんについての過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-8fd9.html

[今日のこ教訓] 自分が信じることだけが、真実ではない。

警戒心の欠如
自分だけは騙されないという根拠ない自信
注意力の欠如
 新聞で読むのはリードと見出しだけ
論理性の欠如
 筋道立てて思考できない。悪い意味で直感的
知識の欠如
 論じている対象の基礎礎知識がなく、データも収集していないのにしゃべりたがる

伝聞情報が好き
 
知人やネット界隈から仕入れた伝聞や都市伝説を愛好する
権威に弱い
大新聞や大学教授のいうことがいつも正しいと思っている
検証精神の欠如
 少し真面目に調べれば常識の範疇でわかることをしない 
モラルの欠如
モラルは欠落しているが、妙な正義感かある。目的が正しければ、多少間違ってもいいと思っている
陰謀論が好き
 政府がなにか隠して悪い企みをしていると常に信じている
羞恥心の欠如
 デマを拡散したことがあっても平気。批判されても相手は「政府に踊らされている」と思う
学習能力の欠如
騙されたと思ってないから永久に信じて拡散し続ける
間違いを訂正しない
 
間違っているのではなく「負けた」だけだと思っているので、永遠にそのままで放置しておく

●謝辞 先週と同様に、「山本弘のSF秘密基地BLOG」デマがいっぱい から転載させていただきました。ありがとうございます。

以下、山本氏のブログを転載いたしました。

               :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+

 

【2012年1月】
●『福島産の奇形トマト』はただの規格外品!!また画像 up 主が「福島第一原発全滅!死者は4300人だった!」というデマのネタ元である件!!

http://togetter.com/li/243103
 ただの規格外品のトマトが「福島産の奇形トマト」と呼ばれて騒ぎに。
 普段、スーパーに並んでいる野菜は、形や大きさの揃ったものだけが選別されて出荷されているのである。大きすぎたり小さすぎたり形が変だったりで、スーパーに出荷されない規格外品もたくさんある。荒川弘『百姓貴族』にも書いてあるが、ジャガイモなどは収穫されたものの半分近くが規格外品だという。

●【デマ】雪国まいたけの受難【誤解】

http://togetter.com/li/238127
 雪国まいたけは2011年の11月15日にこんなプレスリリースを出した。

>当社では震災後の4月から、原料や製品の放射性物質の自主検査を開始、日々モニタリングを実施してきましたが、お客様からの検査結果公開のご要望が多数寄せられたこともあり、精密な放射性物質検査が可能なゲルマニウム半導体検出器・波高分析装置を導入し、9月15日よりその結果をお客様に公開してきました。
以来、2か月間の毎日のモニタリングの結果、当社検査限界値(20ベクレル/kg)を超えた放射性物質は検出されませんでしたが、消費者の皆様により安心して当社製品を召し上がっていただくため、40 ベクレル/kgを出荷基準値に定めました。これは、世界で最も厳しいとされるウクライナの基準値と同じレベルとなります。

http://www.maitake.co.jp/press/index_4.php

ところがこれがなぜか「出荷基準を20Bq/kgから40Bq/kgに引き上げた」「セシウムが検出された」というデマに発展。雪国まいたけを非難する声が続出した。
 元の文章をちゃんと読めば、まったく逆のことが書いてあるのが分かるはずなんだけど……日本にはこんなにも読解力のない人間が多いのか。愕然となる。

●【誤解】「雪に振り切れるほどのセシウムのピークが!危険です!」→その線はカーソルです【放射性物質】

http://togetter.com/li/246496
 東京に降った雪の放射線量を計測したスペクトルを見て「セシウム137が一番のピークを示している」「振り切れるほどのピークがありますよね?」と主張する人が現われ、東京の雪は危険だと警告する。実はその人が見ていた線はカーソルだった。
 この人には「カーソルさん」という仇名がついたが、その後も珍発言や問題発言を頻発する。『シオン賢者の議定書』を信じてたり、SI単位系に挑戦したり。

【2012年4月】
●友人の父の友達の息子のJA職員からの情報。「兵庫県産の米には2割福島産が混じってる。」どこのJAかは言えない。

http://togetter.com/li/290609
 タイトル通り。都市伝説の定番の「友達の友達」どころか、「友人の父の友達の息子」って……。

●【放射能汚染】「人口が8000万人へ?放射能で関東・東北全滅!?」→以前から統計で人口減少はわかってますけど…

http://togetter.com/li/295565
 野田総理が記者会見で「だんだんと残念ながら日本は人口が減っていきます。8000万人になるかもしれません」と発言。
http://www.youtube.com/watch?v=Z-gzX9_Udgo
 それを「放射能汚染のせいで4000万人が死ぬ」と誤解した人が続出!
 日本の人口が減少に向かってるって、てっきり常識だと思ってたんだが、そんなことも知らないうえにこんなトンデモない勘違いをする人が多いとは……。

●「園児が感謝のポスト清掃で活動」→「福島県で幼稚園児たちが除染活動」に勝手に変えて騒いでいる人たち

http://togetter.com/li/293917
 4月20日の郵政記念日に、福島県伊達市で園児が感謝をこめてポストの清掃をした、という微笑ましいニュースが、「幼稚園児除染チーム」とツイートされたことから、「園児に除染活動をさせた!」と思いこんで激怒する人続出。だから元のニュースちゃんと読もうよ……。

●木下黄太「関東圏のふとんで足がつる」が大人気

http://togetter.com/li/289027
>最近関東圏で製造されたふとんに寝ていて、足がつるなどの身体症状が出るケースがあります。注意してください。

 なんかもうギャグとしか思えないんですけど、この人。

●『東北大学に被“爆”者が搬送され、既に700名近くが死亡』というデマ

http://togetter.com/li/290608
●『東北大学に被“爆”者が搬送され、既に700名近くが死亡』というデマ の発言者の発言で意識が遠くなった
http://togetter.com/li/290608
 典型的な電波さんでした。

【2012年5月】
●ホルムアルデヒドにあの方々が反応するとこうなる。

http://togetter.com/li/306649
>放射性物質によって塩素が変質し、ホルムアルデヒドが発生した可能性がある。

>化学の世界ではベータ線を発する放射性物質が塩素が結合すると、ホルムアルデヒドと クロロホルムが発生するのは常識とのこと。

 知らねーよ、そんな常識(笑)。そもそもホルムアルデヒド(CH
2O)って塩素入ってないじゃん!
 こんなデマを拡散してるのは誰かと思ったら……わあ、またバルパンサーか!

http://kobayashiasao.blog65.fc2.com/blog-entry-3681.html

 引用されている文章はこれ。

環境負荷化合物の分解・除去における放射線利用

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-03-03-04

 タイトル通り、放射線によって排気ガス中や水中の有害な化合物を分解できるんじゃないか……という、まったく逆のことが書いてあるんですけど。

> ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素系炭化水素の濃度が数十ppb~数百ppb程度の水溶液に放射線を照射(線量2kGy)すると、殆どの有機塩素化炭化水素が分解され、検出されなくなり、四塩化炭素とトリクロロエタン水試料のみ1ppb程度残留している。分解生成物として塩化物イオン、分解中間物としてアルデヒドとカルボン酸が検出されている。

 
線量2キログレイ!
 つまり2000シーベルト。
 ああ、まあ、それぐらい浴びせりゃ化合物も壊れるわなー……(遠い目)。
 つまりこの人たちは、「クロロホルムなどの有機塩素系炭化水素に大量の放射線を浴びせたら分解して、アルデヒドとカルボン酸が検出された」という話を、「微量の放射性物質と塩素が結合すると、ホルムアルデヒドとクロロホルムが発生する」と「超訳」してしまったわけである。


●『私がグーグルマップとフォトショップを使って「おそらくこんな感じだろう・・・」と作図したものです。数値的な根拠はありません』
http://togetter.com/li/308995
「北九州、瓦礫焼却による放射能拡散予想図(季節風を考慮)」と称して、おかしな図を発表した人。ソースを問われて「私がグーグルマップとフォトショップを使って「おそらくこんな感じだろう・・・」と作図したものです。数値的な根拠はありません」と返答。それは普通、「デタラメ」と言います!(笑)
 しかもこの絵がすごく雑。明らかに同じサイズのブラシをちゃっちゃと滑らせただけ。10秒もあれば描けるぞ、こんなもん。
 ちなみにこの人、イラストレーターなんだそうだ。ええーっ(笑)。

【2012年6月】
●「菊地直子の逮捕は大飯原発再稼動の目くらまし」

http://togetter.com/li/314645
 一人や二人が言っているならともかく、こんなに大勢の人が言っているという事実に愕然。何でもかんでも原発と結びつけないと気が済まないのか?

●海洋汚染ですか?いいえ、津波です。

http://togetter.com/li/319567
 NOAA(アメリカ海洋大気庁)が発表した、東日本大震災で発生した津波がどのように太平洋に広がったかを示す図が、「フランスの専門機関」が発表した「福島第一による太平洋海洋汚染のシミュレーション」として拡散。
 海洋汚染なら日本近海の海流に乗って広がるはずだから、こんな風に海流を無視して拡散するわけないって、すぐに気づくと思うんだけど。

●Twitterがダウンした理由とは

http://togetter.com/li/325628
>昨晩Twitterダウンしてた。これは高い確率で権力の横暴。今日行われる官邸前の再稼働抗議を連携を取りにくくし、邪魔するつもりだったのだろう。原発利権がここまで露骨だと本当に呆れる。

 高い確率でシステムの問題だと思います(笑)。
 ネタにして楽しむ人も多い反面、信じて拡散する人もいてあきれる。

 

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縮小してありますので、クリックすると大きくなります。ぜひ、大きくしてご覧ください。

2015年4月11日 (土)

土曜雑感 朝日新聞インタビューに見る、翁長氏の「面白さ」について

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「なんだかな」さん。 

なんか勘違いがあるみたいですか、私は別に、翁長氏をけっこう「好き」ですよ。正確にいえは、喰えないタヌキであるうちは好きです。 

今はタテマエばかりで、つまらんと思っていますが、これも芸のうちと生ぬるく見ています。 

むしろ私が苦手なのは、平和センターの山城某のような、「ナイーブまっすぐ君」みたいなタイプです。10代の自分がそうでしたからね。 

たとえば、例が悪いかもしれないが、あの開戦前夜の時期に、東條英機みたいなタイプの指導者を得たのは悲劇でした。 

あの男は、石原莞爾に「上等兵」と小馬鹿にされていたように、部下には優しく、規律を好み、小心で、几帳面、そして純粋でした。 

したがって、こういう男に限って部下に投降の権利を与えないで、自害させてしまう、とんでもない指揮官になっちゃうわけです。 

アングロサクソンは、俘虜になッた場合、「ありとあらゆる方法で脱走しろ」と教えていました。 

脱走によって、それを捜索する部隊を作らねばなりませんから、手間がかかって、戦力が落ちるんです。 

映画『大脱走』の中で、アッテンボローが、すぐに脱走委員会を作り始めますが、あれは実話です。 

しかし、わが東條閣下は、「俘虜の辱めを受けるな」というわけで、主観的にはその兵士の名誉を守ってやっているようで、真逆なわけです。 

ですから、俘虜になった瞬間に日本軍の兵士は、あ~これて戦争が終わってしまったと解釈します。 

日本軍最強の抵抗をした、硫黄島の栗林兵団は、万才突撃と自害を禁じていたのは、偶然ではありません。

山本七平が『一下級将校の見た帝国陸軍』という本の中で、今まで玉砕覚悟で戦っていた日本兵が、尋問にペラペラと答えている情景を書いています。 

これは、いかにもありそうなことで、日本人の脆さを考えさせられました。 

こういう東條みたいなタイプを、山本七平はこう言っています。 

「信仰箇条を挙げるとすれば、社会ハ悪。我は善ナリ。そして、純粋を尊ブベシ」。

指導者も指揮官も同じです。喰えない、清濁併せ呑む「悪者」のほうが、結局は民の利益になるのです。

翁長雄志さん

 さて今私が、翁長さん、どうしちゃったの、というのが、隠れ「翁長ファン」の私の心配です。

あ、誤解を呼びそうな表現ですので、お断りしておきます。

もちろん私は翁長氏の徹底した批判者ですが、翁長氏の人となりに含まれる島人らしいずるさ、こすからさ、たくましさ、しぶとさ、そして生々しさが「好き」だと言う意味です。

私が翁長さんをイイなぁと思うきっかけは、彼の2012年11月24日付けの朝日新聞とのインタビューを読んだあたりからです。※「翁長雄志さんに聞く沖縄の保守が突きつけるもの

このインタビューは、シッチャカメッチャカで、今のようにおエラクなってしまったために、、妙にこじんまりと、「上目線だ」などとブツブツ繰り言を言っている翁長氏とはまったく違って、妙に生々しくて面白い。ぜひご一読を。 

その中で翁長氏はこう言っています。 

――「いまはオールジャパン対オール沖縄だ。沖縄の保守が革新を包み込まねば」と発言していますね。
 「沖縄の中が割れたら、またあんた方が笑うからさ。沖縄は、自ら招いたのでもない米軍基地を挟んで『平和だ』『経済だ』と憎しみあってきた。基地が厳然とあるんだから基地経済をすぐに見直すわけにはいかない、生きていくのが大事じゃないかというのが戦後沖縄の保守の論理。一方で革新側は、何を言っているんだ、命をカネで売るのかと」

いいですね。まさにその通りで、私は一貫して書いてきたつもりですが、沖縄は「基地」というシロモノを「押しつけられた」という側面と、それを利用して生きてきたというふたつの側面があるのです。 

反発と依存と言ってもいい。前者に立てば怒りとなり、後者に立てば諦観となるわけですが、実際には目先の利害に汲々として、一般シマンチュウはそんなメンドーなことは考えてみなかったというのが、おおかたではないでしょうか。 

本土政府が「基地」を寄こすなら金を出せ、と本音を言ってしまったら身も蓋もないから、本土に向って言う時には、大江健三郎みたいに「基地のない平和な島」という建前の方で揺さぶるというわけです。 

だから、本音が保守、建前が革新、このような役割分担でうまくやってきた、とまぁそう思ってわけです。

記者がいみじくも言うように、「保守が革新を包んできた」というのが実態だったのです。 

今回、この磐石の構図を壊しちゃったのが、他ならぬ翁長さんでした。その理由を、翁長さんは率直に、鳩山チャブ台返しが原因だ、と言っています。

「自民党でない国民は、沖縄の基地問題に理解があると思っていたんですよ。ところが政権交代して民主党になったら、何のことはない、民主党も全く同じことをする。
僕らはね、もう折れてしまったんです。何だ、本土の人はみんな一緒じゃないの、と。沖縄の声と合わせるように、鳩山さんが『県外』と言っても一顧だにしない。沖縄で自民党とか民主党とか言っている場合じゃないなという区切りが、鳩山内閣でつきました」

その失望、よく分かります。ただ、そんなヤワなタマじゃないよね、翁長さんは。 

先に言った建前も本音も実は、ひとつの「沖縄県民」が抱え込んでいることで、汚れ仕事を引き受けているのが沖縄保守でした。 

たとえば、秋風が立つ頃になれば、沖縄県の幹部は、自民党政治家を連れて官庁に行くわけです。 

なぜか、不思議とこの時期には、都合よく色々な事件が起きてくれるもんですな。

2011年度の算定の頃には「オスプレイ・デマ」をデッチ上げて、火がない所に火を着けて大火災。消火のために、文句なく増額。 

2012年には何も起きないんで、ケビン・メア氏の「沖縄はゆすりの名人」(本人否定)という言葉を、どこからか地元紙が探し出して、大火災。 

おまけに、その後の沖縄防衛局長の「犯す前に犯すと言いますか」(本人否定)という発言が、暴露されて、文句なく消火のために増額。 

2013年には、仲井真さんのあいまい路線を、クリスマス満額回答で、移設容認にダメ押し。 

こういう、保守と革新陣営のアウンの呼吸とでもいうものが、沖縄政治だったのです。 

保守は、土建屋さんが振興予算の利権を握り、革新は官公労だけが島で唯一、ぬくぬくと本土並賃金を得て富裕階層になってしまいました。

そのマジックのネタは、この保革の二人羽織だったのです。 

このインタビューで、朝日の記者は、挑発的にもこういう質問をします。 

「でも、利益誘導こそが沖縄保守の役割なのではないですか」 

あ~あ、言っちゃった。知っていてこう言ったのならエライ。記者根性ある。知らないで言ったんだからただのバカ。

こう言われたら、沖縄の政治家としては、こう返すしかないじゃないでしかないじゃないですか。

けっこう翁長さん、素で怒ってるね。けど、このテの台詞を、「沖縄の心」みたいに文学的に解釈をしちゃダメです。 

なぜなら、これは本音であると同時に、弱者の恫喝でもあるからです。

「振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくしてください。そのかわり、基地は返してください。国土の面積0.6%の沖縄で在日米軍基地の74%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか」

なおも、朝日は、翁長氏をただの田舎保守政治家と見たのか、しつこく追及します。

「――しかし県議時代には辺野古移設推進の旗を振っていましたよね。
 「苦渋の選択というのがあんた方にはわからないんだよ。国と交渉するのがいかに難しいか」
 「革新勢力は、全身全霊を運動に費やせば満足できる。でも政治は結果だ。嫌だ嫌だで押し切られちゃったではすまない」

うん、面白い。インタビュアーが意識して言わせたのなら、褒めてやる。

翁長氏は、ポスト・ハトの時代に、今までのような沖縄の伝統芸であった、「保守と革新の使い分け」はできない、と言いたいのです。

翁長氏は、革新の連中はノーテンキに「全身全霊を運動に費やしていて」先行きを考えないが、もうそれだけじゃもたないぞ、と言っています。

だって、政府案は普天間基地がなくなっちゃうんですから。普天間の移転が現実のテーブルに上がること。これこそが、翁長氏が心密かにもっとも恐れている事態でした。

彼の考えていることは、きっとこんなことではないでしょうか。(もちろん私の悪意のこもった憶測です。念のため)

「革新陣営さん、いいの。普天間基地がなくれなれば、きみら失業だよ。用なしだよ。ただの本土のサヨクと一緒だよ。ただの島で嫌われている高給取りのお役人さんだよ。
本土みたいに、15、6人で基地前でシラケた集会するだけだよ。『平和運動』のスターダムから転げ落ちるよ。

いつまでもいつまでも、反米・反政府闘争する種を残しておきたいよな。飯の種は大事にしなくちゃね、
死ぬまで普天間基地のゲート前で騒ぎたいだろ。普天間、フォーエバー!
ぜったいに辺野古なんかに移設させちゃダメだって」

一方、翁長氏は保守に対してもこう思っています。

「 仲井真のようにものわかりよくていいの。あいつ、歳で根性なくなっちゃったんだよ。
ヘノコを幕引きしたら、これで沖縄最大の政治ネタがなくなっちゃうんだぜ。
もっとゴネてゴネて、ゴネまくって、話、引っ張らなきゃ、振興予算は5年後から縮小だよ」

そして翁長氏は、このインタビューで唯一本音に近いことを言っています。 

「でも政治は結果だ。嫌だ嫌だで押し切られちゃったではすまない」

おー、なんて「深い」お言葉(笑)!

ここで翁長さんが言う「結果」とは、「基地のない沖縄」なのか、もっと別のナニカなのかは、もう私が書くまでもないでしょう。 

2015年4月10日 (金)

沖縄から米軍が撤退する条件とは

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森本元防衛大臣が、こう述べたことが評判を呼んでいます。 

「海兵隊が沖縄にいなければ抑止にならないという専門家が随分いる。それは軍事的に見ると間違い。有効に抑止力が発揮できる場所であれば必ずしも沖縄でなくてもいいが、政治的には難しいと言っている」(沖縄タイムス2015年3月30日) 

これは沖タイなどですみやかに流布され、想像どおり、「やっぱり本土政府が押しつけていたんだ」と短絡的に理解されたようです。 

森本氏の真意はよく分かりませんが、沖縄の基地は軍事的見て、一般的に思われているより重要じゃないよ、という意味ならば、半分は当たっています。

沖縄は米軍にとって、しょせん出張所ていどの位置づけにすぎません。よく言われる「前方展開基地」というのはその意味です。

米軍にとって、ほんとうに手放したくない在日基地は、すべて本土にあります。具体的には、横須賀、厚木、横田、佐世保です。

これらの基地は、米軍の世界における最重要拠点であって、米国がモンロー主義にでも回帰しない限り、ぜったいに手放さないでしょう。

したがって、中長期的には「出張所」でしかない沖縄の基地は、間違いなく縮小・撤収の方向に進むでしょう。 

ただし、その撤収の時期については分かりません。 

この 米軍の世界的トラスフォーメーション(再編)に伴う流れは、ほぼ決定的で、実際に米軍の世界的再編は、一時その方向に進んでいました。 

例えば2011年4月にワシントンで発行された軍事専門誌『スモール・ウォーズ・ジャーナル』に掲載されたネオプトレモス論文が注目を集めたことがあります。 

ネオプトレモスという名はペンネームで、国防総省高官数名の合同ペンネームだと見られています。 

このネオプトレモス論文は、現在米軍が直面している財政危機。2020年代に不可避だという前提の下に、米軍の世界駐留を日本にだけ集約するという内容です。 

要旨はこのようなものです。
(※国際変動研究所 西恭之訳『10年後、米軍は日本にしかいなくなる』による)
 

①韓国からはスタッフ機能を除いて、陸軍第2師団、空軍などが全面撤退。
②ヨーロッパからは、陸上兵力を全面撤退。基地も使用権のみを残して全面撤退。
③逆にインド洋と太平洋は態勢を強化。日本の海空軍基地は一カ所しか閉鎖しない。
④西太平洋のパトロールは日米が合同で行なう。
⑤米空軍は削減。陸軍も削減。海軍も縮小。
⑥海兵隊第3海兵師団は撤退。
⑦戦略原潜の廃止。
⑧中国との海洋進出についての交渉強化。
以下略
 

まぁ、ざっとこんなかんじです。ここで沖縄に関して注目されるのは、③と⑥です。 

③の「一カ所閉鎖される米空軍基地」とは、明示されていませんか、嘉手納基地以外考えられません。 

これは1996年から中国が福建省に1400基も配備している弾道ミサイルの射程内に、嘉手納基地がすっぽり入ってしまうことによります。

PAC3の迎撃能力には限りがあるために、嘉手納を引き払ってグアム空軍基地まで下げます。 

⑥は、前々から米国内の一部にあった、海兵隊の全面撤収論です。これは、今、行なわれる縮小計画とは別で、第3海兵師団の全面的な本国撤収となります。 

当然、辺野古に新たな移設先が生れたとしても、それも撤収対象となります。 

もちろんネオプトレモス論文は試案にすぎませんが、米国が戦略的オプションとしてここまて考えている、ということを知るにはいい例でしょう。 

しかし現時点においては、ただの試論の域を出ないのは、中国の軍拡が差し迫った問題としてあるからです。 

森本氏発言の「政治的に決まった」という意味が、「沖縄に押しつけやすいから決めた」と、県民には取られたようですが、中国の膨張政策という「政治的」理由ならば、うなずけます。 

中国が、南沙諸島、西沙諸島、台湾、尖閣に対しての領土的野心を捨てさえすれば、沖縄の基地は自動的に大幅に縮小していく可能性があります。 

では、逆に、「なぜ今、在沖海兵隊は撤収できないのか」と考えてみましょう。 

その理由は、2011年7月に台北で開かれた日米台の国際フォーラムでの小川和久氏が述べたことに集約されます。 

「台湾の人は自覚していないかもしれないが、日米同盟は台湾海峡における中国の軍事的展開を阻止する唯一の抑止力となっている。中国の断頭攻撃を抑止しているのは、沖縄の海兵隊基地だ」

 「断頭攻撃」というのは聞きなれない言葉でしょうから、少しご説明します。

中国にとって台湾「解放」は国是です。しかし現在の中国が、かつて国共内戦の末期に見せたようなミニ・ノルマディ上陸作戦のようなことをする可能性は少ない、と思われています。

それが「台湾関係法」です。

具体的に米国が台湾のために用意した保険は、先の小川氏の言う「中国の軍事的展開を阻止する唯一の抑止力」としての沖縄の米軍基地、なかでも海兵隊基地でした。

米軍は、オスプレイを使って、ほぼ数時間以内に海兵隊を即時投入できます。これが、米軍が沖縄にオスプレイ配備にこだわった理由です。

41b8f662aa579cfada7ef567fb545d0b_2         (図 防衛省「MV-22オスプレイ 米海兵隊最新鋭の航空機」)

ちなみに、普天間の佐世保軍港付近への移動というのも検討されましたが、今の海兵隊の投入手段は、かつての強襲揚陸艦から、オスプレイにシフトしてきているため拒否された、という経緯もあります。

中国が台湾に仕掛けてくると思われるシナリオでもっともリアリティがあるのは、台湾の政治的頭脳を特殊部隊を使って、一瞬にして断ち切る戦術です。
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全身をくまなく攻撃するのではなく、頭脳に当たる部分のみをピンポイント攻撃するので、ぶっそうですが「斬首攻撃」と呼ばれているわけです。

これをさせないためには、「そんなことをしたら、自分の方が大火傷しますよ」ということを、中国にいつも見せつける必要があります。

もちろん、沖縄に海兵隊はわずか約1000名ほどしかいませんし、それもローテーション配備といって、あちらこちらに出かけて留守の場合も多いのですが、「沖縄に米海兵隊がいる」というだけで、中国は手を出せません。

だって、米軍に攻撃をしかければ、まちがいなく米中全面戦争に発展しますので、中国にとってもためらうことになります。

これは尖閣についても同様で、尖閣が万が一戦場になった場合、米国はおそらく海兵隊を動かさないかもしれません。

しかし、その可能性が日米安保条約第5条によって担保されているかぎり、その可能性が残り続けていますから、中国は安易な軍事的オプションを取れないのです。

整理しましょう。

まず、米軍は中長期的には、沖縄から撤収する可能性があります。その場合、嘉手納基地と沖縄海兵隊は撤収することになります。

そして米国は日本本土の基地に、軍事機能をすべて集中させます。

しかし、それは今ではありません。明日でもありません。というか、いつかはわかりません。

なぜなら、相手次第だからです。

相手とは、いうまでもなくアジア最大の不安定要素にして、世界で唯一領土的野心を隠さない中国という軍事大国があるからです。

台湾、あるいは尖閣への中国の武力攻撃かありえないと判断されれば、いつでも沖縄からの米軍の撤退可能な条件が整います。

私はその日が来ることを、願って止みません。 

 

2015年4月 9日 (木)

オスプレイ・デマ

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羊を毎日追っていた羊飼いが仕事に飽きて、「オオカミが来たゾ、大変たぁ!助けてくれぇ!」と叫ぶんですね。それに驚いた村人が集まってきて大騒ぎになります。  

羊飼いは味をしめて、「オオカミが来たぞ」と2度3度と繰り返すようになります。ところが、ある日、ほんとうにオオカミはやって来ました。 

羊飼いはまたも、「オオカミが来た!今度はほんとなんだよぉ!」と叫びますが、誰も相手にしません。  

で、結局、羊はみんな食べられてしまいましたとさ、チャンチャン♪、というお話です。  

この話の教訓は、ウソ言って社会を騒がせて得をしようとすると、結局はエライ目にあっちゃうゾ、ということです。  

さて、先日は放射脳を例に取りました。反原発原理主義の人たちは、ろくにネタ元を調べもしないで、偽の恐怖情報ばかりを流布し続けた結果、今やほとんどの国民から相手にされなくなりつつあります。  

もし、しっかりと今後も運動を継続したいのならば、今まで自分が言ってきたデタラメを、「政府が情報を隠蔽するからだ」などと責任を転化しないで、修正していくことです。  

なぜならウソを言いふらしても、目的が正しければ許される、という態度自体が大きな間違いだからです。  

そんなことがあたりまえになれば、何が真実なのか、なにが問題でなにを修正すべきなのか、という社会的基準の「ものさし」自体が狂っていってしまうからです。  

「ものさし」が嘘八百ならば、それから生れた認識や運動もまた虚構、ということになっていってしまいます。 

原理主義運動というのはつらいもの、嘘八百でプロパガンダに励んできたもので、「いや、あれはウソでした。これもウソでした」と認めると、信頼が根底から崩れてしまって、運動自体も立ち行かなくなってしまいます。 

だからあいかわらず、ウソを認めようとしません。

さて、沖縄の反基地原理主義者が、燃えに燃えたテーマが、あのオスプレイ問題でした。

F2560_5_1_2(写真 こんな根拠不明なデマで、これだけ盛り上がるのだから、スゴイといえばスゴイ。「普天間固定化許さないぞ」と書いてあるのは、なにかの軽い冗談か)

よく「米本国やハワイにおいては、騒音に対する住民への考慮などにより訓練が中止されている」と言う人がいます。

まったくの事実誤認です。米国の反対運動は確かに2カ所ありますが、理由はオスプレイが危険だからではありません。

ニューメキシコ州では、空軍型オスプレイ(CV-22)を含む特殊作戦用輸送機の、夜間山岳低空飛行訓練に対してのもので、夜間の低空飛行訓練に反対しているのであって、オスプレイが危険だからではありません。

次にハワイ州ですが、オスプレイによる飛行訓練予定地の一部が、先住民遺跡地区にかかっていたために、遺跡保護が目的の反対運動です。

両者とも航空機一般の飛行に対してのもので、オスプレイの安全性についてではありません。

したがって世界において、沖縄を除いてはオスプレイの安全性問題での反対運動はまったく存在しないのです。  

12futenma2801(写真 配備前日、反対派は基地ゲート3カ所の封鎖まで行い、警官隊と衝突まで演じた。誰かひとりでもちゃんと調べる努力をしたのだろうか)

確かに、オスプレイは、新しい分野の新機軸が沢山盛り込まれていますから、当初は開発が難行しました。  

機械的ミスだけてはなく、配備当初は、ヘリのパイロットがヘリと同じ操縦をしてしまって墜落した、というケースもあります。  

しかし今はそれらはすべてクリアされて、安全が確立されています。むしろ他の航空機より事故率は低いくらいです。

事故については、防衛省の詳細な資料があります。
※防衛省MV-22オスプレイ 事故率について

反対を叫ぶ前に、まずは、このような資料を読んでからにしたら、いかがなものでしょうか。

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上のグラフは、米軍機全体で見た飛行10万時間あたりの事故率です。最少から二番目の、名誉のブービー賞なのがわかります。  

グラフ中程にCH-46とありますが、これがオスプレイに代わって普天間基地から引退した大型ヘリです。今は沖縄で解体されてスクラップになっています。  

沖縄マスコミや基地反対派は、オスプレイ配備反対と主張していましたが、あのまま老朽化が激しく、事故率も高いCH-46のほうが安全でよかったんでしょうか。

少しはものを考えて反対運動を起せよ、と言いたいですね。

Img_0                (NHKニュース) 

上図は米海兵隊全機種の中でのオスプレイの事故件数ですが、平均より少ないのがわかります。

クラスCが多いようにみえますし、それを「オスプレイの事故はこんなに多い」という調子で報道していますが、クラスCとは、飛行機からペンチが落ちたていど軽微な事故のことです。 

よくマスメディアや基地反対派が流している、オスプレイの21年前1991年6月11日の事故映像は、開発初期の試作実験機のものです。

この映像は、「未亡人製造機」の証明のように、繰り返しテレビで流されたのでご覧になったことがあるでしょう。

Fc5b9ac474d1b0b4fb405d92bee70699    (写真 左翼から崩れるオスプレイ試作機。ただの配線ミスでしたとさ。チャンチャン)

しかしそもそも試作機とは、欠点を洗い出すために作るのです。

この事故映像に出てくる試作5号機の事故原因は、機械トラブルでもパイロットミスでもなく、左右のロートレイトジャイロの配線を逆に繋いだという凡ミスだと判明しています。

そして、配備されて運用実績が上がっていくにつれて、安全性が高まるわけです。 

20年前の試作機の事故映像を未だ流し続けているセンスは、報道というよりむしろプロパガンダの垂れ流しと言われても仕方がないでしょう。ね、「報道特集」さん。  

またよくある混同に、空軍型のCV-22と、普天間に配備されている海兵隊型MV-22を、意識的にか、無知なるが故にか、ゴッチャにしたものが後をたちません。  

確かに空軍型はアフガンで事故を起こしていますが、これは空軍型が特殊部隊を運用する特殊作戦機だからです。そのために地表スレスレの飛行をして事故を起こしたようです。 

続いて最近、低周波がどうのと共産党ギャルがバカ丸出し発言した静粛性はどうでしょうか。  

V22sound4_2(図 Final Environmental Impact Statement for the West Coast Basing of the MV-22※リンク切れ

上図はオスプレイの地表からの距離(フィート表示)と静粛性を、大型ヘリと比較しています。
 

飛行中は全ての高度でオスプレイはCH-46より5~9dB(デシベル)静かなことがわかります。 

これは ヘリコプターがローターから出る特有のバラバラという空気を叩くような音(スラップ音)が大きくします。 

私は厚木基地の真横で育ち、今は百里基地の旋回直下住民ですので、よく分かります。

ジェット機は一時的にはうるさいのですが、速度が早いために騒音は長続きしません。

しかしヘリはパタパタという音がそうとうに遠くからも響き、速力がのろいので長時間続きます。

これは前のローターの翼端渦が、後方のローターの回転と干渉するために生じています。しかし、オスプレイは飛行高度に達すると一般の固定翼機と同じ飛行をしますからそのようなスラップ音がしないのです。 

その意味からも、オスプレイは、離陸個後すぐに一般の航空機と同じ飛行をするために、騒音もその継続時間も短いのです。

一説で、大型ヘリより6倍静粛だと言われています。6倍はオーバーでも、それに近い静かさなことは、普天間基地周辺の人たちは既にわかっているはずてす。 

反対派は実際に配備されて静かなことにびっくりしたとみえて、とうとう低周波の健康被害などというカルト的なことを言う始末です。 

あたりまえですが、そんな医学的根拠はゼロです。お願いですから、そんな非常識なことを言わないで下さい。

金平キャスター、もっともらしい顔して、こんなデマともいえないカルト情報を報道すると、恥をかきますよ。 

Sqhs1atnea(写真 金平氏のブログ「ハートに火をつけて」より。彼がニュース23で使えた筑紫氏も同じだったが、彼らのような本土の左翼知識人が、地元2紙のデマを裏書きしてしまい、島の価値観をおかしくした)

このように、オスプレイ問題は、集団的自衛権のように色々な見方があるというものではなく、すべての航空専門家が全員一致でオスプレイの危険性を否定しています。 

マスコミや基地反対派は、オスプレイの安全性問題を、基地問題や安保問題と意図的に混同して、危険な普天間基地の象徴としてオスプレイをやり玉にあげているのです。 

このように反基地とオスプレイを強引に結びつけたために、安全性論議とは無関係に、いつまでもオスプレイ配備反対を言い続けねばならなくなったわけです。 

政府は自衛隊にオスプレイ導入を決定し、佐賀空港に配備する予定です。 

また海兵隊のオスプレイの訓練は本土各地に分散されて、沖縄の負担を軽減することになっています。 

小笠原村は、患者の緊急配送にオスプレイを求めており、その飛来実験が行なわれて成功しました。

沖縄のメディアは治癒不可能な域に達しているから仕方がないとしても、本土のマスコミは少しは頭を冷やして、事実を検証してから報道したらいかがでしょうか。 

このようなオスプレイに対して、デマに基づく闘争に仕立てあげたのが、地方紙2紙と左翼陣営で、これに便乗してとうとう知事にまでなったのが、翁長知事だったのです。

火のないところに煙はたたずといいますが、火のない所でも大火災にする、それがオオカミ少年一族のようです。

こんなことで島一番の権力者になっちゃった翁長サンに、「私が選ぶ 輝け!2014年度沖縄オオカミ少年大賞」を差し上げていいよね。

※謝辞 「週刊オブィエクト」を参考にさせていただきました。

2015年4月 8日 (水)

翁長知事はいかにして「背信者」の刻印から逃れたのか?

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イソップの「オオカミ少年」という寓話があります。イソップの底意地の悪い人間観察が散りばめられている、寓話集『羊飼いの悪戯』に出て来る話です。 

ところで、もし「2014年度 私が選ぶ輝け、沖縄オオカミ少年大賞」を選ぶとしたら、翁長氏で決まりでしょう。 

翁長氏は、オスプレイ配備を奇貨として、反対運動の先頭に立ち、その勢いをかって「オール沖縄」なるものをでっち上げました。

そして、保革を超えたスーパー候補として、ゴールの知事選にまで一気に駆けこんでしまいました。 

ご承知のように、オスプレイ反対運動以前まで、翁長氏は自民党県連の重鎮に納まっていました。 

しかし、実は翁長氏は既に裏切りを決意していました。それは仲井真氏に対する、事務手続き後のマスヒステリー現象を目の前で見たからです。

仲井真氏の容認は、仲井真県政の既定路線であったわけで、鳩山氏によるねじれを元に修正したにすぎなかっただけでした。 

そして、この容認劇は主演・仲井真、助演翁長とでもいうべきもので、翁長氏こそが、2006年に稲嶺知事の下で始まった辺野古移設現行案の沖縄側の事実上の指揮官でした。

第2期仲井真知事の選挙責任者も彼でしたし、県連幹事長として仲井真県政の右腕を務めていたのが他ならぬ翁長氏です。

As20140826004431_comm(写真 菅官房長官と面会後、取材を受ける仲井真氏と翁長。まだこのころは翁長氏は右腕だと思われていたが、実は裏切り工作は始まっていた。朝日新聞)

仲井真氏が罪に問われるのならば、当然のこととして翁長氏も同罪とならねばなりません。     

翁長氏は、この仲井真氏が陥った最大の危機を見て裏切りを決意します。

それも単に離れていくのではなく、リンチする輪に自分も加わり、「それ吊るせ!仲井真をもっと高く吊るせ!」と音頭を取ったのです。 

当時、翁長氏はこう考えたはずです。 

「もう仲井真はダメだ。こんな奴に仕えているとオレまで一緒に沈む。
次はオレに決まっているが、仲井真と同じ容認路線では、地元2紙を敵に回すことになり、勝てないかもしれない。
絶対に勝つなら、革新の連中にも一役買ってもらって、必勝の布陣を作ってやる。
そのために、オレの親爺たちの世代が伝説にしている『島ぐるみ闘争』とやらを、今度はこのオレが作ってやろうじゃないか」

そのときたまたま手元にあった絶好の餌が、翁長氏がかねてから温めていたオスプレイ反対闘争でした。

1年前地元2紙に焚きつけられて高まりつつあった反対の声に、仲井真知事も反対の声を上げていましたが、翁長氏の関わりときたら、後の彼の裏切りを予感させるほどに激しいものでした。

当時、オスプレイ反対に動き始めていた左翼陣営に相乗りして、むしろその反対運動の主導権を自分が握ることで、一挙に「オール沖縄」という構図を作り出したのです。 

Seb201301270024(写真 2013年1月、オスプレイ配備に反対し、横断幕を手に東京・銀座をデモ行進する沖縄県の自治体関係者ら。先頭に翁長氏がいる。朝日新聞)

左翼陣営にしてみれば、これほどうまい話はありませんでした。

保守の重鎮までもが反対運動に加わっている、という大きな名分を得ることができたからです。

これで、オスプレイ反対運動は、かつての復帰運動のような「島全体が立場を超えて立ち上がった」、という大義を得ことが出来たのです。

落日を囲っていた反安保・反基地運動も、一気にこれで蘇りました。

まさに、翁長氏と左翼陣営は、同床異夢の思惑の下に、一時的に生れたwin-winの関係に酔うことができたというわけです。

翁長氏は、通常は官公労や沖教祖の組織動員だけだった反対集会に、那覇自民党市議団や首長を、持ち前の根回しでかき集めて見せ、勢いをかって東京にまで県下首長請願デモも引き連れていく芸当を演じて見せました。

こんなことは、元自民党県連幹事長の箔がなければ、ぜったいに不可能だったことです。

そして翁長氏は、このオスプレイ反対運動の道具立てをそのまま使って、知事選へとなだれ込むことになります。

仲井真氏の容認以降のバッシングに動揺していた党県連の国会議員もまた、間近に迫った総選挙に、激しく動揺していました。

彼らの多くは保守としての矜持も投げ捨てて、自分の首の心配をしたのです。

那覇市議自民党団を中心とする「新風会」を先頭にして、仲井真氏を見捨て、勝ち馬翁長に乗る裏切り者が続出していきます。

中央の石破幹事長の、統制とテコ入れは遅きに失しました。

ゲル氏が本気で知事選に勝つ気ならば、名護市長選の半年以上前から県連のネジを巻かねばならなかったのです。

こんな自民党の自壊現象を見て、左翼陣営の眼には、この時期の翁長氏は神々しくさえ見えたことでしょう。左翼陣営は闘わずして勝利したのですから。

このように、翁長氏はこのオスプレイ反対運動を徹底的に利用して、保革統一候補の資格ホルダーに躍り出たというわけです。

大田昌秀元知事は、翁長氏の本性をよく見ていて、「あいつは危険だ。革新統一候補を出せ」と忠告したそうですが、一回動き出したモメントはもう誰にも止めることはできませんでした。

既にかなり前の時期から左翼陣営は、自らの手で革新統一候補を出せるだけの大衆的基盤を失っており、労組にすがってかろうじて営業しています、という状況だったからです。

翁長氏は、自民党幹部として、この仇敵の苦衷をよく見抜いていたというわけです。

「オール沖縄」という保革統一候補になることは、翁長氏に単なる選挙戦術だけではない、利益をもたらしました。

それはイメージです。あのまま、自民党候補として仲井真氏を切り捨てて保守候補者になっていたら、翁長氏は「主君殺し」の汚名を一生負うことになったでしょう。

しかし、これを「沖縄民族」というナショナリズムの包装紙でくるみこみ、保守革新の枠を超えたスーパースターとなれば話は大いに違います。

「沖縄民族」を裏切って、移設を推進するユダはむしろ仲井真氏であって、自分はそれを諫めたが聞かないために、島の新たなリーダーになることを決意したというストーリーを演出できるわけです。

そしてそれによって自分がしてきた自民党時代の那覇軍港移設・浦添沖埋め立て、那覇空港第2滑走路建設などで海の埋め立てのチャンピオンだったことも、あるいはまた、辺野古移設推進派だったことも、一切合切まとめてチャラにできます。

また翁長氏にとっては、一生まとわりつくであろう、「主君殺し」「裏切り者」「背信者」という暗い刻印を消すことが可能となりました。

これにより翁長氏は、「裏切り者」のレッテルを仲井真氏のみに押しつけ、自分はあたかも島の人々を導くモーゼに変身して見せたのでした。

その導きの教義こそが、沖縄民族主義という今までの島の政治指導者が誰も開けなかった禁断の箱だったのです。

もちろん、選挙戦術としてもきわめて有効で、左翼の集票マシーンの労組、市民団体を活用できるばかりか、無党派の高齢者に多い反戦意識にもアピールできます。

そしてなにより、地元2紙の熱狂的支持をえることができる環境が整いました。

ここまで絵図を書き込めば、自民党の外堀を埋められ、本丸だけとなった仲井真城を陥落させるのは、赤子の腕をねじるようなものだったはずです。

まったく、たいしたタマです。感心するくらいプラグマチックで、ダーティ、そして醜悪です。

私たちは、この翁長氏が開けてしまった「沖縄ナショナリズム」というパンドラの箱から、どんな魑魅魍魎が飛び出してくるのか、これからを見ねばなりません。

この翁長氏の裏切り宮廷劇を支えたウソの小道具こそが、「オスプレイ」だったというわけですが、オスプレイ・ウソについては、次回ということにします。

※枕の部分が長すぎたのでカットし、タイトルを変えました。

2015年4月 7日 (火)

翁長氏知事が菅氏に「キャラウェイのようだ」と言った意味

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菅氏の訪沖について、沖タイや琉新はなぜか勝ドキを上げているようです。まぁ、いつも未来を前向きに生きる地元2紙だけあります。 

会談は予想どおりお定まりでしたが、ただひとつ聞き捨てならないことを、翁長氏は言っています。

「翁長氏は「『粛々』という言葉を何度も使う官房長官の姿が、米軍軍政下に『沖縄の自治は神話だ』と言った最高権力者キャラウェイ高等弁務官の姿と重なる。県民の怒りは増幅し、辺野古の新基地は絶対に建設することはできない」と強く批判した」(琉新4月6日)

キャラウェイ、フー?ちょっと説明しておきましょう。これでは翁長氏のイヤミがまったく通じないでしょうからね。 



ポール・キャラウェイ中将は、1961年から64年までの間、沖縄の高等弁務官という島のミニ・マッカッサーでした。
 

彼は沖縄の経済・社会を遅れているとみなして、米国流の改革をします。電力や銀行制度などの改革を行い、上の写真のように辺鄙な地域にも足を運んでいます。

民政家としては良心的なタイプに入るでしょう。

しかしその半面、軍事的要衝である沖縄には、自治を許さないという方針を貫いています。 

その時に出た言葉が、翁長氏が引用した「沖縄の自治は神話だ」という台詞です。 

この方針が、沖縄に自治権を与えるべきだと考えていたリベラル派のライシャワー大使と、鋭く対立することになり、やがて任を解かれます。 

つまり翁長氏は本土政府の官房長官を、この異民族支配をした米軍政と重ね合わせているわけです。

ずいぶんと侮辱的な言い方をしたもんだと思いますが、菅さんは意味が分からなかったのか、ケンカをしに来たわけでないと考えたのか、聞き流しています。

翁長氏はきっと、「キャラウェイといってわからないのか。ふふん。ヤマトは異民族なんだよ」と腹の中でせせら笑っていたことでしょう。

幸い、このイヤミは菅氏には通じなかったようですが、この言い方に翁長氏が火をつけて廻っている沖縄ナショナリズムの毒がふんだんに込められています。 

翁長発言を市民語訳してみましょう。 

「お前ら本土政府は異民族政府だ。沖縄人を抑圧し、自治を与えない差別者だ。我々は自治権のない植民地人のようなものだ。菅、お前は暴君と呼ばれたキャラウェイだ!」 

これが翁長氏が言う、「上目線」という言葉の内容です。

つまるところ、彼はこの移転問題は、「本土政府と沖縄県」の対立ではなく、「ヤマト民族と琉球民族」の対立だ、と言いたかったのです。 あきれるほど挑発的です。

これが、翁長氏とその支持者たちが流布している、恐ろしくイビツな「構造的沖縄差別論」的発想です。 

この論理が行き着く末は、本土からの「自治権要求」という名の分離独立です。 

ただし現在の沖縄経済は、極端に振興予算に依存した体質ですから、「独立」を支えるだけの自力が欠落しているために、必然的に旧宗主国だった中国にと吸い寄せられる結果となります。 

Cina0178541_9255342_201409172116536(写真 沖縄解放・沖縄を回収するぞ」と叫ぶ中国のデモ。普通選挙を一回もしたことのない人達に「解放」などされたくはないと思いますが、いかがですか県民の皆さん)

さて近々、翁長氏は中国に行くそうですが、何を話してくるのでしょうか。 

習近平は、福建省の党書記として実に17年間を過ごしました。彼の価値観は、ここで培われたといっていいでしょう。 

 福建省は台湾海峡をはさんで真向かいにある地方です。しゃべる言葉も、閩南語(びんなん)語で、台湾と同じです。 

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 ( Google Earth 福建省の対岸に台湾が位置し、その先に先尖閣諸島、宮古、石垣、本島、南西諸島、九州と連なることがわかる。中国が海洋進出するためには、この日本の領海の間をすりぬけねばならない)

そして彼が省党副書記時代の1996年3月に、中国世界で初めての民主選挙が行なわれ、台湾独立派の李登輝が総統に選出されます。

まさにこの中国世界が激動した時期に、習はその対岸にいたことになります。 

民主選挙に危機感を持った中国は、軍艦とミサイルで恫喝を加えますが、米国が空母インディペンデンスに台湾海峡を通過させるという抑止的示威をしたために、ミサイル発射を中止せざるをえませんでした。

米海軍の圧倒的パワーの前に、中国海軍がひれ伏した屈辱の日ともなったわけです。 

当時の習書記には2人の盟友がいました。これが福建省海軍基地司令官だった呉勝利と、省幹部の劉賜貴の二人です。

当時を知る人はこう回想しています。

「三人はしょちゅう宴会でつるんでは、将来自分の時代になったら、米軍を第1列島線から駆逐する。そして台湾と釣魚島(尖閣諸島)を取り返し、偉大な中華民族の時代を築くのだと誓い合っていました」(近藤大介『日中再逆転』)

2012092922085216b (図 赤線の手前が中国が言う「第1列島線」。青線がシーレーン。沖縄がその枢要な位置にあるのがわかる)

この血盟は守られることになります。2012年2月、習は20年来の盟友二人を、総書記・党軍事委員会主席となるや、権力の一角に据えます。

まず、呉勝利が海軍司令官となり、この中国海軍の最高指揮官となった呉こそが、この間の南シナ海や東シナ海における中国の軍事的海洋膨張の立役者となっていきます。

そしてもうひとりの「義兄弟」である劉賜貴は、習によって福建省から中央に呼び寄せされて、閣僚級ポストである国家海洋局長に抜擢されます。

習の後ろ楯を持った劉は、海洋取り締まり4局を「中国海警」に統合し、中小国の海軍並の組織に成長させて、ひんぱんに尖閣や南シナ海で波風をたてているのは、ご承知の通りです。

今や、この習の「福建マフィア」たちはいずれも、海洋にまで版図を伸ばす中国の海軍と海警のトップに位置しています。

この「福建マフィア」を従えて、「偉大な中華民族」の海洋版図拡大を意識した皇帝こそが、この習近平だったのです。

ところで中国は、沖縄を自国領土だと主張しています。中国共産党準機関誌「環球時報」(2010年9月19日)は、このように主張し始めていました。

「琉球(沖縄県)は明治政府が19世紀末に清国から奪い取ったもので、日本政府は今も沖縄住民の独立要求を抑え込んでいる」 (党外交機関誌「環球時報」2010年9月19日)

さらにこの記事は、「中国政府は尖閣で日本と協議に入ってはならない」と続けます。

なぜならそれは、交渉のテーブルに日本を引き出した成果と引き換えにして失うものがあると言うのです。

「境界線外にある琉球の主権が日本にあると認めることになる。こうなれば日本の琉球占領は合法的な根拠を得て、琉球民衆の独立要求は鎮圧されることになる」

つまり中国は、尖閣を交渉対象とはしない、なぜなら交渉することで、沖縄の領有権が日本にあることを認めてしまうからだと言うのです。

言い換えれば、「日帝が奪った神聖な中国領土である」尖閣と沖縄は、軍事力を用いて奪還しろ、主張していることになります。

20130722022237783(写真 中国サイトより。キャプションに「揭秘琉球独立运动 中国共产党好友会标语现身日本」)

これに呼応する沖縄内部からの勢力として、中国ははっきりと「琉球独立」運動を位置づけています。

この福建省に、太田知事は中国側から接待漬けでおだて上げられたのか、2億8450万円という巨額の税金を使って「沖縄福建友好会館」を作りましたが、沖縄側の入居者が3社しかないために、結局福建省側の所有となっています。

ちなみに、この時の福建省側責任者は、他ならぬ習近平です。

だまし取られたも同然の出費だったはずなのに、まだ懲りず次の稲嶺知事は中国西北航空の上海-那覇直行便に夢を託し、またもや2000年9月に1億3800万円の赤字補填を観光対策誘致事業費で出費しています。

そして翁長氏は那覇市長時代に、那覇市若狭に1億6千万円かけて龍柱などいうやくたいもないものを建造しようとしました。

これらの中国に騙されたに等しい金は、本土政府からの振興予算という名の税金が投入されています。

一括交付の振興予算を何に使おうと勝手ですが、中国にすり寄るための資金にするのだけは、本土の人間としてはご勘弁願いたいものです。

このようにして、翁長氏は、今までの県知事が革新系であったとしても守ってきた一線を踏み越えつつあります。

それは沖縄県民を「外国人」とし、沖縄を「外国」にすることで、その先には中国の属領となる道が待っています。

翁長氏は、このようなぼかした表現でブラフをかけるのではなく、真正面から「独立」を掲げるべきです。いいかげん聞いているこちらも、うんざりしますので。

 

2015年4月 6日 (月)

「民意」に従って、どこまで時計を巻き戻したらいいのだろうか?

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菅氏と翁長氏が会談したようです。特になにもないので、本日のテーマにいくことにします。 

え、そりゃないだろうって。う~ん、だって、お互いに自分の背景に対してのエクスキューズをするための儀式なのは、初めから分かりきっていましたしね。こういうのを政治的「儀式」と呼ぶのです。 

まず菅氏は、「現地と話し合いを拒否するのか」という批判を覚悟で、今まで翁長氏を「干して」いたわけですが、そろそろ「大人の話」ができるていどに脳味噌が冷えたのか、一度会って確かめようということです。

「13年末に安倍首相が前知事に表明した21年度まで3000億円台とする沖縄振興予算の確保について「約束は守っていきたい」と述べた。また、基地負担の軽減に努力する考えにも時間を割くなど、沖縄への配慮を随所に示した」(4月4日読売)

状況が変化すれば予算縮小もあり得るということを含んで、「翁長さん、とりあえずこちらは、敵対関係になる気はありませんよ。落ち着いてテーブルに着きなさい」と政府は言っているのです。

これは、官邸がただ会うのもナンでしょう、と菅氏の腰にぶら下げた土産にすぎません。

菅氏は、首相との会談にも言及したようですが、 それはあるていど「会談の下地」ができる政治環境が整わねばダメなわけで、夏の本格着工までに自分で落し所を考えてみろ、ということです。

ボールはしっかりと翁長氏に投げ返して、菅氏は帰って来たというわけです。(下写真 朝日4月5日)

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「これに対し、翁長氏は、「上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れ、怒りは増幅していくのではないか」と反発。その上で、「辺野古の新基地は絶対に建設することができないという確信を持っている」と述べ、移設計画の中止を求めた。翁長氏は安倍首相と早期に会談したい考えを伝えたが、菅氏は明言を避けた。ただ、菅氏は会談後、記者団に対し、「沖縄の考え方を聞く中で、進めていきたい」とも述べた」(同)

これも定番ですね。

翁長氏が、「そりゃありがたい。反対していても、振興予算が丸々もらえりゃ、ズッと孫子の代まで反対していますよ。こりゃ坊主丸儲けてすわな。わ,はは」などと言ったら面白かったのですが、もちろん言うわけがありません。 

苦虫を噛みつぶしたような顔のひとつも見せて、「上目線だ」などというイヤミのひとつも言わなければ、共産党、社民党、社大党、そして何よりコワイ地元2紙の「同志諸君」からお許しが出ません。 

本気で本土政府とファイトする気なら、下の写真のような構図になります。 

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これは就任挨拶で、沖縄県庁を訪れた野田首相に、かりゆしルックで立たずにお出迎えの仲井真知事の様子です。 

スゴイね、野田さん。腰90度だよ。サラリーマンは、こういうお辞儀は不始末のお侘びの時にやるもんですがね。松下政経塾はこんなことまで教えているのか、さすがだなぁ(笑)。 

仲井真氏は、沖縄県の立場が政府なんぞより圧倒的に強い力関係だ、という大前提の下にこういう態度を取っています。 

「民主党さん、一回ハトさんがちゃぶ台返ししたのは、謝ったくらいでは原状復帰は出来ませんぞ」と言っているのです。

言い換えれば、「ハトのチャブ代返しの以前の合意水準より、いっそう要求ハードルを高くしますよ、覚悟しなさい」というボディランゲージなのです。 

実際、以後の本土政府との交渉は、一貫して「沖高政低」の気圧配置で展開されました。この力関係を作ったのは仲井真氏です。 

よく、左の人たちは「沖縄をイジめまくる本土政府」と言いたがりますが、とんでもない。2人の首相を、這いつくばらせたのは仲井真さんですよ。、

では、歴史をちょっと見バックします。 

ハトさんがちゃぶ台返しをしただけが、私たちの記憶に残ってしまっているのですが、それは正確ではありません。 

ハトさんが宇宙から降臨される以前までこの移設問題は、実に14年間の間、あーでもないこーでもない、拒否、合意、拒否、合意という定期的波動を繰り返していました。 

その波動がいったん収束したのが、麻生政権時の2007年10月のことです。 

今まで事務処理を拒んでいた仲井真知事は「環境アセス手続きの一つとして受け取らざるを得ない」として、方法書の受け取り保留を解除を決めたのです。 

この時点の名護市長は島袋氏で、市長も苦悩の末に合意に達していましたから、この段階で、なんと初めて政府-沖縄県-名護市-辺野古現地の4者が、惑星直列に達したわけです。おー、奇跡的瞬間だぁ。

ところが、2009年12月、これをたったひとりで、一瞬にしてフンサイしたのが、自称「友愛の使徒」、実は強力無比の破壊神であらせられるハト首相です。 

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ハト氏は、就任前の2008年から「国外・最低でも県外」ということを述べており、これに呼応するかのように、2009年1月に稲嶺「反戦」市長が当選してしまいます。

ところが、さすがはハト氏、もちろんナンの「腹案」もあったわけではありません。

突如、地元に根回しのひとつもしないで「ボク、徳之島に決めちゃったもん」と言い出して、地元から大反対を受けることになったことなど、今は懐かしく思い出します(←遠い眼)。

結局、「あそこだ、ここにするんだ」と狂瀾怒濤の挙げ句、わずか半年でギブアップ。その間に、オバマからノータリンと呼ばれたことなどがありました。

5月23日に、すごすごと県庁にやってきて、仲井真知事に「ボク、頑張ったんですけど、全部ダメでしたんで、やっぱり辺野古移設にしました。ご、ごめんなさーい。しくしく」と言いに来たというわけです。

下の写真がその時のものです。まるで仲井真校長に呼び出された坊やです。知事応接室は校長室かって。

しかし、ハト氏は謝りに来るのに、ずいぶんとラフな格好ですな。まぁ、社会生活したことほとんどない人だからな(ぬるい笑い)。

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それはともかくハト氏は、5月28日に日米両政府が辺野古崎地区とこれに隣接する水域を移設先とする共同声明発表し、ハト氏は訪沖後1週間後の6月4日に首相退陣と相成りました。

そして代わったカン氏は、就任と同時に揉め事はもうイヤとばかりに、日米合意の踏襲を明言しました。

実はここから、仲井真氏のハードルを上げまくったタフネゴシエータぶりが発揮されることになりますが、省くことにします。

そして2013年12月27日、仲井真知事は、沖縄防衛局の移転に関する環境評価証明を承認しました。

ハト氏が移設合意体系という積み木細工を破壊してから、ちょうど丸4年後のことです。

政権党に復帰した安倍氏と仲井真氏の会談の様子は、下の写真のとおりです。

なんだ仲井真さん背広持っているじゃないの、しかも立ってる、と新鮮な驚き。そういえば、服装は態度の現れとよくいいますなぁ。上2枚と比較してください。

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確認しておきますが、この時防衛局が提出した埋め立て申請は、先ほど述べたように既に2010年5月28日に、他ならぬハト氏の日米合意表明に基づいています。

つまり、ほんとうはこの時点において、既に政治決着済みであって、あとは沖縄県内部の「県内政治」にすぎません。

それよく知っていながら、実に3年間も本心を隠したまま言を左右にしてゴネまくって、本土から妥協を取りつけて来るという喰えないジイさんが仲井真氏でした。

翁長さんにこんなマネができるかと思いますが、仲井真氏の右腕だったのが、なにを隠そう「仲井真の次」と言われていたこの人物でした。

しかし「民意」に敏感な風見鶏の翁長氏は、この頃から裏切りを画策し始めたようです。翁長氏はこう考えました。

「もう一期仲井真氏がやると、オレは歳をとりすぎてしまう。今なら自民党県連内部にも那覇市議を中心に子分も増えたことだし、金秀、かりゆしグループなどの財界の一部も支持すると言ってる。これに左翼陣営を取り込んで、沖縄ナショナリズムで丸め込めば、オレの裏切りの大義名分もつく。そしてオレは晴れて知事だ」

県内政治をよく知る稲嶺元知事はこう述べています。

「これは保守分裂ではなく、基地運動に頼ってきた革新が自前候補を出せないほど衰退したということ。保革対立がパッと消えたら(日本の一部を担う)沖縄県人的な意識と、(本土と対抗する)琉球人的な意識の矛盾点が浮かび上がった」
(『沖縄県知事選と「国場組」』(「新潮45」11月号常井健一)
 

とまれ、翁長氏は擬似的「島ぐるみ」を演出することで「民意」を作り出し、一気に仲井真氏の寝首をかく陰謀を決意をしたわけです。

ここは戦国時代かって、思いますが、住めば分かりますが、沖縄県民ほど政治好きな県民は全国でも珍しいほどなのですよ。

そして翁長氏は、たまたまこの事務承認の前に、新型機オスプレイが普天間に導入されることを奇貨にして、「殺人機を配備するのか」とブチ切れてみせ、「オール沖縄」というという疑似的「島ぐるみ」をデッチ上げたのです。

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そして今また、翁長氏の第2次ちゃぶ台返し事件が始まります。

最後に簡単に経緯を整理しておきます。

・2007年10月 麻生政権-名護市移設で合意
・2009年12月 鳩山政権「国外・最低でも県外」公約
・2010年5月  鳩山氏撤回し、県に謝罪
・同年6月   鳩山氏移設についての日米合意
・同年6月   菅首相、合意継承
・2013年12月 仲井真知事埋めたて事務承認
・2014年12月 翁長知事移設反対
・2015年3月  コンクリートブロックの作業停止を指示
・同3月     農水大臣、知事指示効力停止

このような経過を見ると、沖縄地元2紙が言う「民意に従え」というのは、どの時点まで時計を巻き戻したらいいのでしょうか。

これまでにつぎ込まれてきた移転のための調査費用、予算などは3千億円にのぼりますから、税金を払っているだけ本土の人間には、いいかげんにしろ、という気持ちが拡がりました。

そして、翁長氏が煽った、本土を差別者にする沖縄ナショナリズムと、他県民には到底理解しかたい奇怪な「県内政治」に飽き飽きした本土人の中には、「嫌沖感情」につながっていく芽が生れてくることになります。

2015年4月 5日 (日)

おまけ 爆笑・放射能デマ拾遺集 1

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ボツ原稿の中に、こんな記事がありました。1年前に書いたものです。

今でも伊藤隼也氏らが拡散した「作業員4000名死亡」などがでているようなので、埃を払ってアップしておきます。

私は11年の事故時からいままで、この「放射脳」という表現は使っていませんでした。

というのは11年から2年間くらいは、政府公表のデータや事故報告も出揃っておらず、まぁそういう気分も分かるかなぁ、程度に思っていたせいです。

しかし、今でもしっつこく、それはも気持ち悪いくらいにシツッコクくだらないデマを飛ばしている人たちは、もうこりゃ「放射脳」と呼ばれてもしゃ~ないな、と。

皆さんも似たようなものをご覧になったことがおありでしょう。

事故から何年たってもいまだ、脳内放射能ワールドの人達のサイトでは寄ると触ると、こんなかんじです。浜の真砂が尽きるとも、世にデマの種は尽きるまじ、ってことですな。

「フクイチで核爆発だぁ。ロシア軍が認めたぞ」
「フクシマ(なぜかカタカナ表記)で甲状腺ガンが急増しているが、政府が福島医大と結託してインペイしているそうだ」
「奇形が発生しているらしいが、病院が秘匿した」
「北極のシロクマ
が放射能で大量死」
「フクシイチの作業員が大量死しているが、みんな放射能とは関係のない病名で闇から闇に葬られたそうだ」

仲間内だけなら、一種の趣味みたいなものですので、知ったこっちゃないのですが、震災瓦礫のように群を成して攻撃モードに入ったり、元首相がこの「情報」を信じて都知事選に出馬したりすると恐怖感を覚えます。

いいかげん、リテラシーを覚えてほしいものです。 

HNミイさんもおっしゃっていましたが、この人たちは「オスプレイが飛ぶと、低周波でノグチゲラが死ぬぅ」と言ってみたり、、「アベが後藤さんを殺したんだよぉ」「I am not Abe」なんて言っている人たちとほぼ一緒の人たちであるのは、社会学的に考察の対象になりそうです。

以下、「山本弘のSF秘密基地BLOG」デマがいっぱい から転載させていただきました。 有り難うございます。

山本氏は、このようなコメントを記しています。

「僕は昔から反原発派である。
 だったら何で放射能デマを批判するかというと、理由は簡単で、
「「奴らを貶めるためならウソをついてもいい」という考え方は、断じて正義ではない。悪である」というのが僕の基本スタンスだからだ。
 こういうデマを生み出す卑劣な人間や、よく考えずにデマを拡散する頭の悪い人間がいることは、反原発派の恥だし、原発推進派の格好の攻撃材料である。だから反原発の姿勢を貫くためには、こうした「放射能デマ」と戦わねばならないと思っている」

私も1年前までは脱原発穏健派と自称していましたが、あまりの運動家たちの暴走ぶりに呆れ果てて、批判者に回った経過がありますので、よく理解できます。

ただ山本さん、残念なことに、まともなエネルギー論議や事故論議ができる人は運動内では極小派であって、今やこのようなデマを盲信する人たちが主流となってしまったようです。

というのは、デマッターたちは居直り続けていて、誤りを認めないどころか、「政府陰謀論」に転化しているからです。

そしてこれを党勢拡大に利用する左翼政党が、反原発運動のイニシャチブを握ってしまいました。もう、訂正は効きません。

なぜなら、左翼政党はこのデマッターたちのデタラメを、意識的にプロパガンダに積極的に利用した時期があって、この誤りを認めることは、いわば「朝日新聞慰安婦誤報事件・反原発バージョン」となりかねないからです。

明日からは通常運転に戻って、沖縄をテーマにします。

            :;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+

 

健康関連
●「福島県警の警察官3名が急性白血病で死亡」

http://togetter.com/li/437797
 福島県警は即座に否定。

●「福島の妊婦、7人中5人がダウン症や奇形児、流産の恐怖」

http://www.asyura2.com/12/genpatu25/msg/552.html
 発信者はデマだと気づいたらしく削除したが、すでに阿修羅に転載されて拡散しており、信じる人続出。
 当然、福島の人たちはそんな話、聞いたことがない。

http://togetter.com/li/337825

●「秋田で震災がれき作業員7人が死亡:放射能被曝で」
http://topsy.com/blog.goo.ne.jp/fukushine777/e/6db59815e2e43066a172bba799ae32a6/
 発信者は上の「7人中5人がダウン症や奇形児」と同じ人。デマだと気づいて書き直したらしいが、すでに(以下略)。

●「福島イタイイタイ病」

http://togetter.com/li/401686
「福島エイズ」
http://togetter.com/li/213542
「放射性大腸炎」
http://togetter.com/li/359708
「東海病」
http://togetter.com/li/455238
 次々に新しい病名が生まれている。

●「佐藤福島県知事が家族をメキシコに避難」
http://togetter.com/li/439714#c930109
「蓮舫の子供が海外に留学」と同じパターン。

●「地井武男さん死去は散歩で放射性物質吸いすぎたから」

http://togetter.com/li/328973
●「松田直樹選手の死因は被曝」
http://togetter.com/li/170821
●「飯野賢治さんの死因は放射能」
http://togetter.com/li/460116
●「中村勘三郎さん急死 被曝死の疑い」
http://togetter.com/li/418131
●「放射能ではないのですか? 桑名正博さんが脳幹出血で倒れて意識不明の重体」
http://kobayashiasao.blog65.fc2.com/blog-entry-4132.html
●「大塚範一アナの白血病は福島の野菜を食べたから」
http://togetter.com/li/472680
●「坂口良子さんの死は放射能の影響」
http://togetter.com/li/479244
 有名人が亡くなったり病気になったりするたびに流れるデマ。もういいかげんにしてほしい。
 白血病の原因が放射能しかないように思っている人も多いようだけど、中川勝彦や夏目雅子や本田美奈子やアンディ・フグのことを、もう忘れちゃってるんだろうか?

異常な放射線量?】
●「千葉県東松戸市(2011年8月6日)。車内で 23、3μSV」

http://togetter.com/li/172877
 写真までちゃんと載ってるのに、「μR」(マイクロレントゲン)を「μSv」(マイクロシーベルト)と読み間違える人がものすごく多数! 「R」がどうして「Sv」に見えるの? 信じられない!
 あと、「東松戸市」という市はない。


●「JR東京貨物ターミナルに被災地から瓦礫が届いたら、周辺が35マイクロシーベルト以上」
http://togetter.com/li/210122
 これもおそらく「35μRem/h」を「35μSv/h」と読み間違えたと思われるが、本人は訂正せず。
 例によっていつものメンバーが拡散する。

●「福島県双葉町の工業団地前の苔から57万Bq/kgのプルトニウムが検出」

http://ameblo.jp/hina8989/entry-11385636216.html
http://ameblo.jp/hina8989/entry-11385958027.html
 福島民友の誤報。こんな数字が出た時点で「怪しい」と思わなきゃだめ。

●「福島県の魚介類からプルトニウムを検出」

http://togetter.com/li/327949
 2012年の6月に流布した話だが、元は2011年6月の資料で、しかも単位がミリベクレル/kg。

●「日本の地下水が放射能汚染されている」

http://www.zukeran.org/shin/d/2012/12/04/radiation-map-on-wsj/
 空間放射線量(しかも正常値)を示す図だった。

●「福島原発で異常事態発生中か!?」

http://togetter.com/li/473006
 もしかして「MBq/km2」という単位の意味が分かってない?

食品・環境関連
●「ケンタッキーは福島県産鶏肉なのでお薦めできません」

http://togetter.com/li/334101
 30年以上前の「マクドナルドは猫の肉」の頃から進歩がない。

●「福島で生産された野菜などは、廃棄されていない。それはいったん北へ送られて、その後出荷されている」

http://togetter.com/li/380625
 福島産の農産物って、普通に表示されて売られてますけど。

●「福島産野菜が先週あたりから市場に突然出始めたらしい」

http://togetter.com/li/344039
 夏野菜が夏に出荷されるのは当たり前です。

●「都内で3mのひまわりが!」

http://togetter.com/li/369949
「植物系の工作員」という新語が誕生(笑)。 

●「ポーランドが日本食品全面禁輸検討」
http://togetter.com/li/327283
 ポーランド政府観光局が即座に否定。
 このデマを拡散した人は、以前にも

●「東北大学に被爆者が搬送されており、すでに700名近くが死亡」「東京都内の多くの病院に被爆者が隔離されている」などというデマも流している。
http://togetter.com/li/290469
http://togetter.com/li/314926

●「アメリカの西海岸で漁禁止!太平洋側の魚はほぼ全滅」
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/4f8d083596e777fb87c65223430a4593
http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/08e21f19299c780747c10c2ac94caee4
 リンク先は一目で分かるトンデモサイト。
 本当なら大騒ぎになっていてニュースでも流れてるはずだけど。

●「がれき焼却について、アスベストの飛散量が多大であると、アメリカ政府から環境省にクレーム

http://togetter.com/li/374414
 そんなの、言ってくるわけがない。日本からアメリカまで、どれだけのアスベストが届くっていうんだ?

●「野田総理が出発前に選手たちにお守りとして福島の瓦礫で作ったバッジのせいでオリンピック開会式を退場させられた」
http://ceron.jp/url/togetter.com/li/349311
 これも常識で考えれば「そんなことあるわけない」と分かる話。

日曜写真館 櫻堤の朝

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櫻の短い季節はたちまちすぎていきます。曇天、春一番の強風、季節違いの氷雨。

今年はいい花見ができませんでしたね。皆さん、いかがでしたでしょうか。

櫻ほど難しいテーマはありません。毎年、成功したことがないのです。引きすぎればモワっとしたピンクの固まりとなり、接近したらべつに櫻じゃなくってもいいよ、という写真になっちゃいます。

私は櫻というのは、生命力の象徴に思えます。そして束の間の時間を得て咲き、そして散っていきます。まるで迫った死の予感の象徴のようでもあります。

今年、花を沢山撮っているのですが、テーマというほどオーバーではありませんが、花を「暗く」撮りたいと考えています。

椿で色々試しました。露出をこれ以上ないほどアンダーにしたり、爛漫に咲く椿を、全部排除して、たった一輪にしたり。ぞくっとするような哀しげな椿に挑戦したのですが、意あって力足らず(泣く)。

難しいですね。やっぱり花は明るく撮るのが王道なのかしら。

というわけでもないですが、朝日に匂う櫻花を撮ってみました。

※追記 昨日の記事の前半を大幅に加筆修正しました。よろしければ、もう一回ご覧ください。

2015年4月 4日 (土)

土曜日雑感 原発事故でガンは増えたか?増補版

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いまなお、福島でことあれかしと祈っている困った人が絶えません。

この人たちは、恐る恐る福島に来ると、「ヒロシマ・ナガサキ・チェルノブイリ・フクシマ」と叫んで、空気と土に触れないように駆け足で帰っていきます。 

この人たちは差別的にも、かならず「フクシマ」と表記します。

どうか福島県が「ヒロシマ」のようであって欲しい、チェルノブイリのようであってほしい、という願いが込められているようです。

マッターの殿堂入りを果たした岩上安身氏などは、つい本音が出て、「お待たせしました、奇形が出ました」というツイッターを出した経歴があります。

岩上氏のツイッターの現物を添付しておきます。

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反原発原理主義者は、まるで「フクシマ」がなくなると困るかのようです。

2011年当時は切実な危機感があって一般市民も多く駆けつけましたが、今でもこんなとをしている人たちは、もはやある種の「プロ」になってしまっています。

最大のデマッターのひとりで、私自身この男だけは永遠に許さないと思っている、武田邦彦氏の講演ビデオ写真を添付しておきます。 

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武田氏は、2012年04月27日ブログ゙で、こう言っています。

若干の内部被曝なども加味して、三重県の外部からの被曝が15ミリになるのは、20121月から34ヶ月後となります。つまり、201541日になると、三重県には住めなくなるという計算結果です。(中略)
三重県はほぼ日本の平均的な線量率ですから、ほぼ日本に住めなくなることを意味しています。このブログでも再三、書いてきましたし、国会の委員会でも参考人で述べましたが、「福島の除染、汚染された野菜、瓦礫の運搬」を続けていると日本はすめなくなります。福島原発から漏れた領が80京ベクレルであることから、これは日本に拡散したら日本は住めなくなる数値である
http://takedanet.com/archives/1013802442.html

同様に早川由紀夫氏は、こうツイッターで発信しています。

「セシウムまみれの水田で毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者と同じことをしてる。福島の農家が私を殺そうとしている」
「貧乏人は福島の米を喰って死ね」

もはや常人の発言ではありません。このような人間が、大学教授の肩書のまま、いまもなお社会的に断罪されていないほうが不思議です。

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あるいは、これも「高名」な竹野内真理氏はこんなツィートを出しています。被曝が遺伝するという学説は存在しません。

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このようなハッタリじみたデマゴギーがはびこったのが、2011年から丸々2年間でした。

それが治まったかに見えた去年、再び出てきたのが、雁屋哲「美味しんぼ」(「福島の真実」)でした。

彼についてはそうとうに書いたので漫画のコマを貼るに留めますが、雁屋氏は「参戦」が遅すぎたのです。

彼が「福島の真実」と銘打って登場した時には、既に日本国民の多くは正しい情報を理解する時期になっていました。

これが4年前なら、武田、早川、岩上、上杉などといった小物とは、比較にならない負の影響を与えたでしょう。

しかし、1週遅れのトップランナーの悲しさ、福島県、双葉町などから猛烈な抗議を受けて、オーストラリアの安全地帯に逃げ帰ることになったのは、記憶に新しいところです。

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彼らが流すデマが拡散されることによって、なにがほんとうに起きたのか、そして今はその影響がどれだけ残っているのかについて、正しく判断する基準が狂ってしまいました。

それは放線防護や放射線医学の専門家が、一括して「原子力村」としてパージされてしまったからです。

今日、この記事を書くに当たって参考にした中川恵一医師などは、ネット上のすさまじいばかりのバッシングと、治療している病院にまで妨害行動をされた経験があります。

そのために、大部分の放射線の専門家は、黙り込み、状況を傍観することになります。

そこでできた「科学の空白」に登場したのが、「反原発村」とでも呼ぶべき非専門家のアジテーター集団でした。

彼らの影響力はメディアをつけているだけに強力でした。様々な地域で、特に主婦を中心とする勉強会が作られ、1000人以上といわれる自主避難者をだしています。

結果、多くの人々の行動が、理性に基づかないものになっていき、政策すらもがおかしくなっていきました

※お断り 以上の部分は、コメントで品がないと指摘された部分を修正し、岩上、武田、早川各氏の言動の記録を添付して、加筆しました。以下はそのままです。

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さて、現状に話を戻しましょう。

福島県で、小児甲状腺ガンが「激増」していると言う者がいます。確かに福島県の小児甲状腺ガンは、数値上は「増えて」います。

福島島県の県民健康調査では、事故発生時に18歳以下の37万人を定期的に調査していますが、受診した約30万中86人で甲状腺ガンが見つかっています。「疑い」を含めると109人になるそうです。

こういうことが発表されると、必ず反原発原理主義者の人達は、お約束でなぜか嬉しげに「福島はガンだらけになっている。政府はもっと悪いデータを隠しているんだ。福島はもう人間が住めない。逃げろ!」と絶叫します。

こういう人達に、落ち着いてこの数値を考えてみたら、といっても無駄です。もはや一種の「信仰」と化してしまっていているからです。

さきほどの約30万人中86人という数値が、福島第1の事故と関係あるのならば、その事故時の被曝線量と相関関係していなければなりません。

被曝線量が高ければ、沢山ガンが発症し、少なければ発症が少ない、という関係が成り立ちます。

あたりまえですよね。相関関係が認められれば、このガンは原発事故が原因なのです。

避難区域、浜通り地方(いわき市)、中通り地方(福島市)では、いずれも35人で推移しています。

はい、このとおり相関関係はありません。増えたというのは、検診の頻度が増えた為にすぎず、専門医が「自然発生型」に分類するタイプです。

これは、原発事故とは関係なく、成人になってからも発症する可能性があったものが、早期に出てしまっただけのものです。

たとえば、小児甲状腺ガンが「激増」していると言う者がいます。確かに福島県の小児甲状腺ガンは、数値上は「増えて」います。

これは、福島のガンのタイプの遺伝子変異のタイプを見ると裏付けられます。

チェルノブイリでは小児癌が多発しましたが、その遺伝子タイプと、この福島の検診で見つかったガンの遺伝子タイプに相似性があれば、原発事故との関連が疑われるからです。

調査した福島医科大学は、検診で見つかったガンは、大人の甲状腺ガンと同じタイプだと結論づけました。

つまり、自然発生型なのです。

甲状腺がんは、若い世代に多いのが特徴です。高校生くらいでも見つかるのは珍しくありません。

年寄りには、検診すればほぼ全員がなんらかの甲状腺ガンを持っているといわれますし、別に手術して取り除かなくてもいいケースが大部分です。

むしろ慌てて切除すると、以後一生甲状腺ホルモンを飲む必要が出てしまいますから、医師は切らないで、自然消滅を待つ選択をすることも多いそうです。

ちなみに、韓国は、日本の農水産品を輸入禁止にしていますが、自分の国では1993年から2011年までに甲状腺ガン患者が15倍に激増しています(笑)。

ひと頃ネットでは韓国のケンチャナヨ原発がとうとうボンっといっていたのを隠していたからかと騒がれました。

そうであっても、ちっとも不思議じゃないのですが、そうではなくて、予算がついたので検診回数と調査母集団を増やしたからです。

ね、このように統計数字というのは、その背景を知らないと、印象操作になってしまうという例です。

小児ガンの5年後生存率は100%です。膵臓ガンの生存率が2%なのに対して、いかに大騒ぎする必要がないガンなのか分かりますね。

福島県は県民健康調査で、2011年から3年間の新生児の先天性奇形やダウン症、早産、低体重を調査しましたが、全国の発生率と変わりがありませんでした。

同じく、県内の地域ごとのばらつきもありませんでした。

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..                        (図 東海村ガン検診資料)

放射能によるガンは、4年から5年以上たたないと発生が見られません。

現時点では、気の毒というのもなんですが、反原発主義者の大きな「期待」を裏切って、「40万人がガンで死ぬ」というバズビー尊師の予言は、まったくはずれたようです。

県沿岸部の海中のセシウム濃度も、事故前に戻ってきています。(欄外参照)

これでもなお、「福島の真実」で「鼻血はでているんだぁ」と今でも叫んでいる雁屋哲氏に対して、日本放射線影響学会は抗議文を出しています。

反原発原理主義者の皆さん。あと1年以内にガン発生のラインが上の表のように90度で垂直上昇しなかったら、もう手仕舞にしたらいかがでしょうか。

あなた方こそが、福島復興のもっとも大きな障害物になっているのですから。

・参考 東大病院放射線科准教授・中川恵一「ガンの練習帳」(←中川氏と聞いただけで、失神する原理主義者の人も多いでしょうね)

 

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■海水セシウム事故前水準に 第一原発の周辺以外 福大研究所報告
福島民報 3月20日 

福島大環境放射能研究所の第1回成果報告会は19日、福島市の同大で開かれた。研究所の青山道夫教授は、東京電力福島第一原発周辺部以外の海水中の放射性セシウムが、原発事故前の水準に戻っているとの調査結果を示した。魚の筋肉への放射性セシウムの移行が、ほとんどの魚種で濃度低下していることも明らかにした。

 青山教授はフランス放射線防護・原子力安全研究所、金沢大、電力中央研究所、県水産試験場などと進めている県沿岸部の調査、研究成果を説明した。 

 ウクライナの計算機・計算システム問題研究所環境モデリング部長から福島大環境放射能研究所特任教授に就任したマーク・ジェレズニヤク氏は、放射性物質の水系への移行予測モデル開発について発表した。チェルノブイリと本県との環境の違いを説明し、長年の研究から得た知見を本県の除染推進に生かしていく考えを示した。 

 成果報告会では、高橋隆行所長があいさつした。14件の研究報告の他、特別講演が行われた。 
 研究所は原発事故後の森林、河川、海洋などへの放射性物質の動態研究を目的に、文部科学省国立大学改革強化推進補助金の支援を受け、平成25年7月に設立された。 
 

福島民報社 

■「美味しんぼ」福島の真実編へのコメント
                                      日本放射線影響学会

http://jrrs.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=13900 

「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号に掲載された「美味しんぼ」の放射線による身体的影響に関する内容について、日本放射線影響学会有志の見解を示します。漫画雑誌に掲載された内容に関して、学術団体がコメントすることの是非に関する議論もしましたが、当該週刊誌の発行部数が直近の2014年1~3月において188,385部(一般社団法人 日本雑誌協会)と多いことと表題が「福島の真実(・・)編」であることから社会的影響が大きいと考え、表明するものです。

 「美味しんぼ」では、低線量放射線の身体的影響に関して、以下のように描かれています。まず、登場人物が東京電力福島第一原子力発電所を視察した後に、鼻からの出血や疲労感を訴える場面が描かれています。また、大阪府・大阪市が実施した岩手県の震災がれき焼却によって身体的不調を訴える人が大勢いたことを専門家が説明する場面も描かれています。

 低線量放射線の身体的影響については、これまでに数多くの学術研究が行われており、以下のことが明らかになっています。
 放射線被ばく後、数週間以内に現れる身体的な異常を放射線による早期影響といいます。放射線による早期影響は、ある一定の被ばく線量を超えると現れます。被ばくした100人に1人以上の割合で影響が現れる最低線量をしきい線量と呼び、これまでに数多くのしきい線量に関するデータが蓄積されてきました。成人で最も低い線量で現れる影響は、睾丸への被ばくによる一時的不妊で、しきい線量は100 mGyと推定されています(国際放射線防護委員会2007年勧告, ICRP Publication 103)。これより低い線量の被ばくでは、鼻血や全身倦怠を含めて臨床的に観察可能な放射線が直接原因となる身体的影響は報告されていません。

 残念ながら、作品中では登場人物の被ばく線量に関する記載がありません。もし、これはフィクションであると言うのであれば、「福島の真実(・・)」という言葉は不適切ということになります。もし、実測値があるならば公表すべきですし、今後の放射線防護のためにも正確な状況の記述が重要です。

 震災がれきは岩手県由来のものであり、福島県のものではありません。がれきを焼却した焼却工場周辺において、住民の被ばく線量が焼却以前に比べて高くなるような測定値は存在せず、大阪市・大阪府は発行元の小学館へ正式に抗議しています (http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000266273.html)。したがって、作中で描かれた放射線の身体的影響に関して、これまでのところ、これらを支持する学術研究結果はありません。

 私達、放射線影響学会員は、放射線の生物影響を遺伝子、細胞、動物、及びヒトなど様々なレベルで研究しています。偶然ではなく、再現性をもって放射線が原因となる生物影響とそのメカニズムを明らかにしようと不断の努力を積み重ねています。しかし、生物影響の現れ方は多様で、動物実験が困難な研究もあります。そのため、放射線の人体影響については、未知のことが多く残されています。作中では、放射線がフリーラジカルの生成を通して身体を構成している細胞にあらゆる悪い作用を及ぼすような描写があります。しかし、被ばくして直ぐに生命に関わるような影響でない場合、影響が明らかになるまでに人体では十年単位の長い時間がかかります。したがって、放射線によるフリーラジカルの発生だけが生物影響を及ぼすということでは片付かないことは明らかです。
 事実(・・)と真実(・・)は、明確に分けて描くべきであり、事実を描くのであれば、どのような状況でどのようなことが起こったのかについてできる限りの丁寧な表現をする必要があります。
 「真実」と言う言葉は極めて重く、安易に使うべきものではありません。今回の漫画作品での取り上げ方から、放射線の生物影響を解明することは、私達、日本放射線影響学会員への付託と重く受け止め、今後も益々研究に精進する所存であります。

日本放射線影響学会員有志
同 代表
  福本 学

2015年4月 3日 (金)

翁長知事の革命外交 「オレは約束は守らないが、お前は守れ」

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菅官房長官(沖縄担当)が、翁長知事と面談するようです。

「翁長知事は、去年の名護市長選挙と沖縄県知事選挙、それに先の総選挙でも辺野古沖への移設に反対する候補が勝ったと指摘した上でこのように語り、菅官房長官との初めての会談の際に移設反対を、直接伝える考えを示しました。
 また、全国のアメリカ軍施設の74%が沖縄県に集中していることについて「日本の安全保障は日本国民全体で考えてもらいたい」と語りました。
一方、菅官房長官は「移設に反対する人もいれば、普天間の危険除去について一日も早く解決してほしいという多くの民意もある。普天間基地の危険除去が辺野古移設の原点だから、粛々としっかり対応するのが政府の役割だと思っている」と語りました。(TBS4月2日)

おそらく大多数の沖縄県民がそう思っているように、なんの進展もないでしょう。

というのは、国としては知事選の結果に関わらず、既に政府と沖縄県の間で解決済みの事案だからです。

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翁長氏は、「移設に反対する候補が勝ったからひッくり返すのだ」と言っていますが、これではまるでどこぞの国の「革命外交」です。

前知事の約束は、「革命政権」ができれば、簡単にちゃぶ台返しできるとでも?

そもそも、県には安全保障事案について許認可権はありません。あるのはただの公水面埋め立ての承認作業だけです。

日本は原発や基地関連などについて過度に当該自治体の意見を聞いてきたために、あたかも、当該自治体が建設についての許認可権のすべてを有しているかのような錯覚が定着してしまいました。

もちろん勘違いです。国は意見を聞いているだけで、建設そのものの許認可権を与えたわけではないのです。

もし仮に、これが守屋元次官と小川和久氏が推したシュアブ陸上案だったのなら、埋め立てが伴わないために、県がクチバシを入れる余地など、まったくなかったでしょう。

しかし、それでも国は県の意向を聞いて、迷惑料をだしたかもしれません。左の人たちはそう思わないでしょうが、国はかくも下手なのですよ。

沖縄県は、仲井真知事との合意による公水面埋め立て作業の承認と引き換えにして、振興予算2兆4000億円を8年間分として受けとることに合意しています。

さすがにこの思い切った積み増しに、民主党野田政権時代にはニコリともしなかった仲井真氏も、「有史以来だ」と驚いたといいます。

しかも「一括交付」ですから、何にどう使おうと沖縄県の自由自在です。

これを地元2紙は「金で海を売ったユダ」というすさまじいバッシングを始めて、共産、社民、社大は百条委員会まで作って、老齢て退院したばかりの仲井真氏をリンチにかけました。

その非道な様を思い出すと、今でも私は苦いものが口に湧いてきます。そんなことは、わずか半年前の出来事だったのです。

翁長氏の要求は2点です。

ひとつ、移設は中止しろ。
ふたつ、振興予算は減額するな。

「半年前前にもらう約束をした『迷惑料』2兆4000億円は約束どおり寄こせ。しかし、お前ら政府との約束は白紙撤回だ」、というわけです。

はいはい。何を言っているのか分かって言っていますね、翁長さん。こういうのを世間では横車を押すと呼ぶんですよ。

どちらかです。振興予算か白紙撤回か、二者択一です。どちらもくれなんて、子供じゃあるまいに。白紙撤回したいのなら、振興予算はどんどん減額されていきます。

こう言うと、沖縄2紙は必ず「札束で頬を叩くのか」と書きます。

しかし減額すると今度は、「元に戻せ」と叫びます。どっちでも怒り狂うのは一緒ですから、放っておくしかありません。

他の膨大にある補助措置や補助金はもまた、どんどん減っていきます。そして翁長さんが知事にいる限り、それは元に戻ることはあり得ません。

政府はもうあなたとはまともな協議ができないと、完全に見切ったでしょうから、次の知事は4年後に元に戻す交渉をするしかない、ことになります。まぁその頃には、大分できてしまっていますがね。

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おそらく「勝てる勝負しかしない」翁長氏は、もう少し先まで話を引っ張って、水面下で妥協点を引き出したかったはずです。

しかし、今の翁長県政の官僚にはヒラメは沢山いても、パイプ役を担えるだけの人材がいません。

むしろ本土政府のほうが,前知事公室長で、仲井真氏の腹心だった又吉進氏を、外務省参与にして、パイプをつけてやっている始末です。

管氏は硬軟の使い分けができる人なので、夏の本格着工前になんらかの落とし所を、翁長氏に与える可能性は残ります。

しかし、ここまでこじれてしまっては、これもかなり困難な道で、このあまりに拙劣な翁長氏の先制攻撃は、彼にとっても禍根の種となりました。

今や「同志」となってしまった左翼陣営は、いつまでも海での当たり屋と、ゲート前の飛び込みだけでは闘争がキープ出来ないので、新たな可燃性材料を欲していました。

10428092_793620317384706_4815683756(写真 辺野古ゲート前で警官に暴行を加えて逮捕された仲宗根容疑者。抗議運動のリーダーのひとりだzた。常時ゲート前にいるのは、官公労と沖教祖の退職組の暇な皆さん。現地住民はひとりもいないどころか、本土からの活動家までいるのは本土でもようやく知られるようになった)

そこで、翁長氏は左の「同志」達を慰撫するために、コンクリートブロックの杭打ち承認拒否などという攻撃をしかけたわけですが、これがとんでもない悪手でした。

本来は矢継ぎ早に、二の矢三の矢を撃ち込まねば効果がないのに、一の矢があまりにお粗末だったために、これにて知事の組織的抵抗は終了、となってしまいかねない事態になりました。

翁長氏にとって、もはや公約の「移設阻止」は不可能です。あとは本土政府が与えた細々としたパイプだけを残しつつ、一方で口先だけの抵抗路線で左翼陣営を宥めるだけしか道は残されていません。

こういう状況を、ひとことで言えば自壊、ないしは自滅といいます。

会談ではもう特に話すこともなさそうですから、いっそ密室にして、お互い同時期に在学していた法政大学の昔話にでも花を咲かせたらいかがでしょうか(笑)。

いずれにせよ、革命外交はもう通用しませんよ。

                        ~~~~~~

さて、昨日の記事の続きに戻りましょう。私は、「基地」という存在が、いかに沖縄経済と社会に根を張った存在かということを見てきました。

実は基地公害を受けるのは、周辺住民だけにすぎません。本島南部の那覇、豊見城などには基地がないために、空高く飛んでいる米軍機を見るていどです。

面積的に大きな基地があることになっている北部も、ジャングル戦の訓練場があるだけなので、静かなものです。

しかし、本土政府の迷惑料である振興予算は、満遍なく県全体に行き渡ります。

また今回の移設場所を提供した名護市には、北部振興予算という別枠が用意されていました。稲嶺市長がなぜか吹き飛ばしただけです。

つまり、沖縄県民と<基地>は相利共生関係なのです。

では、もう少し<基地>と沖縄県民との関係を探っていきましょう。 

沖縄県民は、地元2紙が主張するように、イデオロギーを巡って生きているわけではありません。 

たとえば、2006年の仲井真氏と糸数氏との知事選は、今回の知事選よりもっと分かりやすい米軍基地そのものを争点とした選挙でした。 

糸数慶子氏は、知念ウシ氏の先輩のような女性で、ゴリゴリの沖縄民族主義者です。 

国連人権委員会に「先住民族の自治権要求」を掲げて、日本政府を提訴しに行ったという強者です。

なんと先住民族ですぜ。中国の露骨な海洋膨張の時代に、「民族の自決権要求」ですって。

あなた方オキナワン・ヤンパンの下心は、見えていますよ、糸数さん。また黄龍旗ならぬ、五星紅旗を振って「宗主国」の胸元に「祖国復帰」したいんでしょう。

私が好きな紅型をこのように使わないでほしい。 

42a3e02baa2253c704f14f3e941e36e0(写真 2014年、先住民族世界会議に参加した糸数慶子参院議員。札に書いてあるIndigenous peoplesとは、当該国の主要構成民族から みて原住民と呼ばれることの多かった者で、当該国に編入する以前から住んでいた者の ことを指す。果たして、沖縄県人がそのような存在だったのだろうか?) 

その選挙の集計結果と、米軍基地収入の自治体財政に占める割合、そして基地面積の相関関係を見てみましょう。このデータはなんどか記事にしていますが、実に興味深い。 

当時、普天間の辺野古移設容認を掲げていた仲井真氏の得票率が、50%を超える市町村は以下です。 

・国頭村・・・仲井真得票率70%  基地占有率23%
・伊江村・・・         68%         35%
・金部町・・・         65%         59%
・東村 ・・・          3%         42%  
・嘉手納町・・・       57%         83%
・名護市・・・         56%         11%
・恩納村・・・         55%         29%
・沖縄市・・・         54%         36%
・宜野湾市・・・       52%          33%

 以上の得票率を見ると、基地現状維持派が5割を超えるのは、いずれも基地のある北部から中部にかけての自治体と分かります。 

逆に、基地撤去を掲げた糸数候補が勝利した基地依存度が高い自治体はふたつ、北谷町(ちゃたん)と読谷(よみたん)村に限られています。 

そのうち読谷村は、糸数候補の地元であり、北谷のあるキャンプ瑞慶覧は縮小が決定していました。 

一方、糸数候補が勝利した自治体は、南部の住宅地である西原町、豊見城(とみぐすく)市、南風原(はえばる)市などです。 

いずれの自治体にも基地はありません。豊見城市に典型なように県外移住者も含めて人口が激増しており、企業進出も盛んで、経済成長が著しい地域です。 

この選挙結果から見えるのは、北部から中部にかけて、「基地経済」に強く依存している地域ほど、基地の現状維持を願っていることです。 

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翁長氏は「基地が最大の阻害要因」などと言っていますが、この人のような古狸からいわれるとなんだかなぁ、です。

これは単なる沖縄の顕教にすぎず、実態はそんな単純なものではありません。

見てきたように、「基地経済」とは、自治体への地代や、見返りとしての振興策など有形無形の基地に依存した経済のことですが、これに寄り掛かれば寄り掛かるほど自治体経済が安定するという結果になっています。 

その意味で、北部から中部にかけての地域において、「基地は資産」であり、「経済か基地か」ではなく、「基地で経済を」が実情なのです。 

実際に2009年の県内所得ランキング゙で、上位を占める自治体は以下です。 

・第1位・・・嘉手納町(基地占有率82.5%)
・第2位・・・北谷町(同53%)
 

また、1996年から2009年までの県内所得の伸び率ランキング
・第1位・・・東村(基地占有率41%)
・第2位・・・嘉手納町(上に同じ)
 

ここで2回も嘉手納町が上位にくるのは、いうまでもなく嘉手納飛行場、弾薬庫、油貯蔵施設などが集中しているためです。 

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(写真 嘉手納基地周辺の売地情報のあれこれ。これをみると、基地が住民を食い物にしているのではなく住民が基地を食い物にしているのが分かる。ぜひこの軍用地売買サイトをご覧ください。基地の実態がかいま見られます。http://www.kamiya-pro.jp/2010-buken/10gt028/10gt028.html 

その結果、とうぜんのことながら住民所得は、基地に大きく依存しています。 

・嘉手納町の米軍軍用地代 ・・・124億9200万円(年間)
・同町の町民分配所得    ・・・387、5億円(町民所得の約32%)
・同町の建築業就労率    ・・・12.5%(全国平均7.5% 県平均9.2%)
 

このように中部から北部にかけての自治体経済から、基地をがなくなってしまった場合、即たちゆかなくなるのは自明です。 

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一方、地域に基地がなく、基地公害と無縁な中部地域の南側及び南部地域は、沖縄の建て前どおり「反戦・反基地」という左翼陣営のスローガンを受け入れやすい風土があります。 

沖縄を本土の人が見る場合必ず誤るのは、イデオロギー対立で見てしまうことです。「保守対革新」、「基地経済か基地撤去」かと二項対立の枠内で判断しがちです。 

同じく゛沖縄で米軍基地が全国の74%を引き受けているというおなじみの数字も、それだけでは無意味な数字にすぎず、自治体レベルまでその数字を落とし込まないと何も見えてきません。 

よく、本土のマスコミが那覇の国際通などで通行人に、「移設に賛成ですか、反対ですか」などと聞いていますが、まったく無意味な質問だとお分かりになったでしょうか。 

基地のない地域では、沖縄県民は、沖縄のタテマエどおり「反戦平和」を言うに決まっているのですよ。(まぁだから、聞くんだろうけどね) 

いっそ金平キャスターのように、沖タイ社屋から中継していただければ、非常に分かりやすくてけっこうですが。 

ですから、経済発展を続ける南部とその周辺にとって基地は邪魔なだけであり、貧困と過疎から抜け出せないでいる中部・北部地域にとって基地経済は失うことのできない重要な経済手段、つまり「資産」なのです。 

その意味で、普天間問題は沖縄における南北問題でもあるといってもいいでしょう。 

そして、もうひとつ「基地が資産」だと考えている階層がいます。それが左翼陣営です。 

これについては月曜に。結局また、長くなってごめんなさい(涙)。 

2015年4月 2日 (木)

「基地反対」か「基地建設推進」ではわからない

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翁長知事は、早くも打つ手なしといった状況です。こんな杜撰な戦いを挑めば、政府から一蹴されることは目に見えていました。

この人は知事に当選するためには、時間をかけた地盤固め、裏切り、仇敵へのすり寄りなど、「勝てる戦いしかしない」で有名な人でしたから、もっと手堅い戦いをしかけて来るかと思いました。

意外ですね。こんなていどの人だったんだぁ、というのが私の偽らざる実感です。

24671(写真 前々回知事選において仲井真選対本部長をしていた当時の翁長氏。当然、仲井真氏の次は翁長氏だったが、70をすぎてしまうために待ちきれずに、世紀の大裏切り大会をすることに)

一方政府は、仲井真前知事の側近を、振興予算に強い影響力がある沖縄振興開発金融公庫を理事に据えました。

「菅氏は1日の記者会見で又吉氏が米軍基地問題に長年かかわってきたことを挙げ、「豊富な経験、専門的な知識を有している。助言を受けるのに最適な人だ」と説明した。この日、政府系金融機関の沖縄振興開発金融公庫では、仲井真前県政で副知事を務めた川上好久氏(61)が理事に就任した」(毎日4月1日)

あきらかに対翁長シフトです。菅さんが翁長氏と4日会うようですか、これは沖縄県とも話し合いをしていますよ、というタテマエ作りです。

翁長氏もまた、タテマエどおりに「美しい海をなんじゃらかんじゃら」と棒読みするだけに終わるでしょうね。

政治と財政の両面から締めつけられて、これで翁長氏は投了寸前となりました。こんな調子だと、翁長氏にとって長~いレームダック時代が始まることになります。

さて私は、沖縄を「矛盾の島」だと思っています。沖縄は猥雑で明るく、しぶとく矛盾の海を泳いでいます

翁長氏は「オール沖縄」という、オール阪神・巨人みたいなネーミングを自分の陣営につけていますが、そんなものは選挙用キャッチフレーズにすぎません。

だいたいひとつの利害で括れる「沖縄県民」など、どこにもないのです。

基地は色々な意味でその地域の「資産」です。文字どおりの「資産」は、軍用地主階層です。

多くの軍用地は私有地で、年間約900億円もの地代が支払われています。

この軍用地が、有利な投資物件として売買の対象にすらなっているのは、最近は本土でも知られてきました。

普天間移設問題で、移設反対派には普天間の軍用地主会も加わっており、ある意味もっとも頑強な反対派だとすら言われています。

軍用地主以外にも、基地雇用者は約9千人もいて、基地関連まで拡げるとその倍に登るでしょう。

これらの人の多くは、「基地利権を辺野古に持っていかれてたまるもんか」と思っているはずです。

まぁブッチャケ、跡地がどれだけで売れるか、手堅い軍用地代とどっちが得か、天秤にかけている地主も多いかもしれません。

沖縄において、基地の移設というのはそれほどまでに大きな利害関係のシフトを伴うものなので、これを「海を守れ」「基地のない平和の島を」みたいなキレイな包装紙だけでは理解できなくなります。

知念ウシ氏だけで、沖縄を判断すると誤りますよ、朝日さん。

よくある沖縄文化人の言い草に、「基地をチビチビ返すから問題がでるのだ。まとめて返せば矛盾がなくなる」という主張があります。

これは一見、正論。しかし実はとんでもない暴論です。

基地を「まとめて一括返還」された場合、中部、北部の自治体は一気に困窮することになります。

Photo       (写真 普天間基地を囲む宜野湾風景。いかに基地が都市化を阻害しているのかわかる)

そういえば、普天間基地がある宜野湾前市長・伊波洋一氏は、琉大生の頃からのゴリゴリの左翼活動家だったためもありますが、都市化が進んだ自治体らしい、こういう認識を示していました。

「もはや沖縄経済は基地依存ではない。基地は沖縄の発展を妨げている。即時基地撤去すべきだ」

これもよくある沖縄の大学の先生などにある言説です。後から見ますが、中部、北部の自治体首長でここまではっきりと言い切れる人は少ないはずです。

反戦・反基地というイデオロギッシュな言い分はさておいて、この人は典型的な南部の人の感覚でものを言っています。

北部の首長なら、こんな歯切れのいい言い方はできません。

B876ruoiqaafygv  (写真 海保に自制を求めるトンデモ要請をする稲嶺名護市長。自制を求める方向がちがうだろう)

いや、稲嶺名護市長がいるだろうって。

稲嶺市長は確かに当選しましたが、反対派が「これこそが人民の民意であるぞよ」と言えるほど磐石な勝利ではありませんでした。

名護市の沖縄統一市町村選挙の結果を見てみましょう。

・稲嶺市長支持派(移設反対派)・・・14票
・稲嶺市長反対派(移設容認派)・・・11票
・公明党                ・・・2票

ご覧のように、公明党が与党を裏切って稲嶺陣営につかなければ、1票差にまで迫ります。

さらに当時那覇市長だった翁長氏が自民党陣営を切り崩さなければ、まったくどちらにころんだかわからない結果でした。

反対派が黄門様の印籠のように叫ぶ、「現地の民意」などというのは、まぁこの程度のものなのですよ。

翁長氏と知事を争った民主党政権で閣僚だった下地幹郎氏は、地元で有名な大米建設の副社長でした。

大米建設は、下地氏の父親が創設したもので、沖縄の多くの建設業と同じく、基地建設で成長しました。下地氏の兄は沖縄県建設業協会会長をしています。

下地氏は普天間移設問題では、一貫して嘉手納統合案を主張しており、この案には当時民主党県連会長の喜納昌吉氏も賛成しています。

喜納氏は、昌吉といったほうが通りがいいほど有名なミュージシャンですが、もうひとつの顔は、嘉手納基地の城下町・旧コザ市(現沖縄市)出身だということです。

県知事の仲井真氏は、沖縄電力会長出身で、沖縄経済団体会議の会長と防衛協会会長を兼任していました。

この沖縄県経済団体会議の会長は、防衛協会会長も兼任することが多く、先代の国場幸一氏は県内最大手の建設会社国場組の社長でした。

52cdb9b26aaeefae74aa9686ce1dfd90(写真 翁長知事誕生の瞬間の呉屋選対本部長・金秀会長。「沖縄県民の尊厳を回復した」。基地で太った土建業屋の親父がよく言うよと思う)

そして、翁長陣営の選対部長にしてパトロンについたのは、金秀という反国場勢力筆頭の土建業とスーパーチェーンの呉屋氏でした。

金秀は、辺野古の立体駐車場の建築にも参加していましたが、身内の反対派の阻止行動で工事ができずに撤退。しかし、しっかりと違約金は税金からもらっています。

脱線しますが、反対派の皆さんの阻止行動は、結局、税金で穴埋めしているんですからね、そこのところを分かってからやってね。ま、ムリか(苦笑)。

このように見ると、沖縄現地での普天間問題のキイパーソンである、与党幹事長の下地氏、県知事の仲井真氏、そして当時与党の県連会長の喜納氏という3名が惑星直列よろしく揃って米軍基地に強い利害関係を持っている人たちだと分かります。

さて、よく本土のマスコミが勘違いしている「保守対革新」か、あるいは、「基地撤去か経済発展か」、という構図がだんだん怪しくなってきましたね。

あまり長いので、ここで一回切ることにしました。携帯で読む方は大変ですもんね。

続きは明日に増補して掲載します。

2015年4月 1日 (水)

沖縄民族主義vsヤマト民族主義の対立構図を煽る人々

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数年前から、本土の世論の中に「嫌沖論」が生れてきています。 

「嫌沖論」・・・実にいやな響きです。沖縄を中韓と同列に並べ、「もうお前らの恨み節は聞き飽きた、自分らを異民族だと言うなら、こちらも同胞だとは思いたくない、中国にでもなんでも行って自治区にでもなればいい」・・・、そういう発想です。

流行りの嫌韓論のコリアのポジションを、沖縄に代挿したものだと思えばいいでしょう。 

ニュアンスには、理屈抜きの皮膚感覚的な嫌悪感が込められています。正直に言って、ここまできたのかと嘆息しました。

私は大変に嫌いですが、この「嫌沖論」が生れた発端は、はっきりしています。 

鳩山氏が蒸し返した例の普天間基地の「国外・最低でも県外」発言から始った、沖縄と本土の大きな断絶感です。 

沖縄県民は本気でその方法があると信じました。その「信じる」熱量の高さに、本土の人間は驚き、そして違和感すら覚えました。

なぜなら、それは既に14年間もかけて実証済みのことであって、鳩山氏が今さらのように言い出した「国外・最低でも県外」などという虫のいい「解決」など、この世にないことを多くの人は分かっていたからです。 

まず、テーマは「普天間基地の危険性の除去」にあったはずでした。これについて、本土の人間は、一も二もなく諸手を上げて賛成しました。 

当然だろう、当然すぎるほど当然の要求だと応援したのです。

しかし、普天間を除去すれば、辺野古が残る、そういう小学校算数のような設問に、鳩山氏は一年以上もかけたあげく、当然の如く失敗し、問題を投げ出しました。 

しかしやっかいなことには、鳩山氏の無責任の極みのただの思いつきによって生れた、沖縄県民の「熱」だけは残ってしまったのです。 

C77445bfa81bd684b8f158921698f8d2(写真 知念ウシ氏。ペンネームのウシは琉球王朝の頃の名。近代においても、その名残でカマドやウシ、ナベなどという雑器や家畜の名称を、女性がつけられていた。女性蔑視の匂いがする。知念氏は知ってつけたのか?衣装と髪形は琉装。これもいまではほぼ残っていない

たとえば沖縄の若い世代の論者としてひんぱんに登場する知念ウシ氏などは、こう述べています。 

「鳩山氏は多くの人の心の中にあったものを政策にしたが、日本人はそれを支えなかった。だれが沖縄に基地を押しつけているのかが見えたのです」
(朝日新聞2012年5月10日)
 

「本土人は、鳩山氏の理想主義的政策を助けなかったではないか。沖縄の基地を引き受けなかったではないか、ならばお前ら本土人は、沖縄人を差別しているんだ」、そう彼女は言いたいようです。 

そして彼女は、これをただの「差別」ではなく、「構造的差別」だと位置づけています。ただの差別とどう違うのでしょうか。

この「構造的」というのは、特に何かがあって差別があるのではなく、いつもいつも日常的に、あんたが本土人で、自分が沖縄人な以上「構造的」として差別があるんだという意味です。

スゴイですね。本土人は何もしなくても、差別意識を持とうが持つまいが、本土人というだけで「差別者」にされてしまっています。

「差別がある以上、差別する側とされる側を分けざるを得ません」(同)

この言い方は、よく解同などが使う論理ですが、差別者と被差別者の間には大きく高い壁があって、ぜったいに交わることがない。永遠にその立場は変わることがない、という意味です。

恐ろしいほどに非和解的です。彼女に何があったかしりませんが、ここまで憎まれれば本望です。

そして「日米安保が必要なのは日本人だ。私たち沖縄人ではない。基地を置くのは差別なのだ」と言っています。 

ここで知念氏が、意識的に自らのことを「沖縄人」と呼び、そして本土人を「日本人」と呼んでいることに注意してください。 

もはや、沖縄県民と本土人は異人種なのだ、と言いたいのです。いうまでもなく、言語体系、DNA系統において、沖縄県民と私たち本土人はまったく同民族です。

方言で本土のことを「ヤマト」と呼びます。その直訳は「日本」ですが、知念氏はそれを意識的に、異民族にまで増幅して使っています。 

さらに、朝日新聞(2012年5月10日)には、「沖縄人は豚ですか?」という記事が載りました。 

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この女性は、沖縄県民自らを「豚」に例えて、「『豚』が人間になれるわけがない。ほんとうは差別されているんだよ」と語っています。 

この芝居の主催者である比嘉陽花氏は、特に本土人が沖縄県民を「豚」呼ばわりする差別事件が起きたから「豚」だと言っているのではなく、沖縄県民が日常的に本土から「豚」扱いされる被差別者だから「豚」なんだ、と言っています。 

私を含めた本土人が今でも強い贖罪感を持っている沖縄戦や、その後の米国統治、そして1975年の復帰時には、生れてすらいなかった比嘉氏や知念氏などの若い世代が、こんなことを言うことに、私はへこみました。

あ、この人たちは「復帰ではない」と言っていますので、参ったね(苦笑)。

大阪の雑踏で、読者である「日本人」をにらみ据える比嘉氏の写真は、全身で「日本」を拒否しているようにすら見えます。

事実、知念氏は 池澤夏樹氏のような気のいい沖縄シンパまで一括して、「植民地主義支配の上で遊んでいる差別者」とレッテルを貼って沖縄から追放しようとします。

実際、池澤氏は彼女との対談に強い衝撃を受けて、本土に帰ってしまいました。

このような沖縄と本土を、あたかも異民族紛争のように捉えて、その原因を基地問題にあるとするのが朝日です。大手紙としての常識を疑います。

朝日は気楽に、いつものどおりの反基地闘争を応援するていどだったのでしょうが、これは、今に続く影響を残します。それが、沖縄民族主義の台頭です。 

朝日にお墨付きをもらったと考えたのか、沖縄地元2紙にも「基地は差別」という主張が踊り、沖縄の政治家も堂々と「日本政府」とあたかも外国政府のような呼び方をあたりまえにするようになります。 

稲嶺名護市長は、当選そうそうに「日本政府」と呼びましたし、翁長知事も堂々とそう呼んでいます。

この、まるで沖縄県民が日本人ではないかのような表現は、今や基地反対派の普通の表現にすらなってしまいました。

これを聞いた本土人は、これが沖縄県民が「日本人をやめました」と宣言しているように理解するようになりました。 

私たち本土人は、沖縄を「沖縄人」と呼んだことはなかったし、ましてや「豚」だなどと呼ぶ本土人がいたら、連れて来てほしいものです。 殴ってやりたい。

苛烈な沖縄戦に胸を痛め、復帰に際してはわがことのように喜びました。 

「お帰り、そして本当にすまなかった。つらかっただろう、沖縄の人達」、そういう素朴な感情をもって、沖縄県民を見ていたはずです。

ところで、私は、本島中部といい勝負の、神奈川県厚木基地の真横で育ちました。小学生時代の「秘密基地」は、基地のフェンスの穴から入った、米軍機のスクラップでした。 

ペイデイ(給料日)の後には、街には娼婦たちがうろつき、酔った米兵がドルをバラ撒いていたことを記憶しています。米軍機が近くに墜落したこともありました。

知念さんや比嘉さんにお聞きしたい。この私と「オキナワの少年」はどこが違うのですか。

あなた方は、自分たちの経験だけを唯一至上のものにして、「日本でこんな経験をしたのは沖縄だけだ」と盲信しているのではありませんか。 

その上、厚木基地は、仮に沖縄にあるすべての基地が撤去された後も、米国の世界戦略の重要な要として残りつづけることでしょう。 

ならば、私は「豚」扱いされて「構造的差別」とやらに苦しむ「神奈川人」なのですか? 

知念さんは、ある時本土の大学教授に、こう言ったそうです。 

「基地を持って帰ってくれますか」 

いえ、とっくに「持って帰って」います。本土で引き受けられる基地は引き受けています。

どうしても沖縄でなければ機能しない基地だけお願いしているのです。その負担の重さもよく理解しています。

だからその償いとして、累積10兆円、毎年3000億円の一括交付金をお渡ししているのです。いうまでも、全国で特出した交付金額です。

そして基地縮小も遅い足どりなのは申し訳ありませんが、継続しています。訓練も一部は本土でやるように努力しています。

信じがたいことですが、知念さんは、そんなことを知らないのです。

この人たちの抗議の対象は、常に「日本」であり、共に苦しんでいるはずの本土の基地周辺住民などは眼中にありません。 

そして自分たちの体験だけを至上として、排他的な沖縄民族主義を煽って、ただそれを「日本」にぶつけているだけです。 

普天間移設問題は、基地問題として解決しない限り、知念氏のいう「構造的差別」は解決しません。 

それを、「植民地主義支配」にまで拡大解釈してしまうのが、本土の人間だというのも何かの悪い冗談のようです。

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「沖縄民族主義」の宣伝家である、野村浩也広島修道大学教授は、こう述べています。 

「日本人は、右から左まですべて、在日米軍基地の負担 を沖縄に押しつけることによる利害を共有しているのだ。この利益を守るために、もっと悪質な植民地主義言説こそ、沖縄から日本への米軍移転に反対するものではないのか」
(部落解放同盟『部落解放』2002年9月号)

発表媒体が、解同という札つきの職業的差別糾弾団体であることに留意してください。この団体は、共産党さえもう消滅したといっている「被差別部落」が今でも、いや来世紀にも残り続けていると主張する集団です。

なんのためにですって。もちろん利権に決まっています。

解同はどうでもいいや。野村氏は、こう続けます。

「ウチナーンチュは『方言』って平気で言っている。沖縄の言葉は劣等な言語である、日本語よりも下位に位置づけられている劣等な言語である、と」(同)

沖縄県民から言われるならまだ我慢しますが、同じ本土人、しかも基地周辺住民の経験もないのほほんと暮らしてきた人物にこんな言われ方をすると、心底うんざりします。

なにが「植民地支配」ですか。よく言う。

まさに事実誤認だらけです。仮に、薩摩藩による琉球侵攻を植民地支配と呼ぶならまだしも、それははるか400年前のことです。いったいそれからどれだけの時間がたっているのでしょうか。

この人たちは、「第2次琉球処分」以降の近代沖縄の歴史も、まるで暗黒の皇民化の歴史のように描きますが、出来たばかりの国民国家として、共に初等教育や、交通・通信インフラを作りだしたことを忘れ去っています。

琉球王国には初等教育という概念すら不在で、交通・通信インフラはないに等しく。農地は王家のもので、農民には私有地すらありませんでした。農民は事実上、農奴でした。

このような王家は、幕末の激動に耐えられるはずもなく、旧宗主国の中華帝国に助けを呼びにいくという醜態を見せます。

「琉球処分」というと何か大悲劇のように感じますが、全国どこにでもあった廃藩置県の一コマにすぎません。

奥羽越列藩同盟に参加した東北・北陸諸藩などは、はるか彼方の苛烈な僻地にまで追いやられた悲劇を経験しました。

琉球王国のケースは、これと較べればはるかに宥和的対応だと言えます。

全国どこの藩も一律に消滅したわけですが、それをいちいち「「紀伊処分」とか「水戸処分」などと呼ばないだけです。

野村氏が問題とする「方言札」も、よく沖縄では差別の象徴のように言われていますが、東北や九州にも存在しました。

沖縄の近代以前の支配者だった鹿児島などは、鹿児島人自らが作った明治政府によって沖縄並の標準語教育がなされています。

つまり、沖縄民族主義者がいう「皇民化」とは、国民国家を作るための中央集権化のプロセスにつきものの全国どこにでもあった現象にすぎないのです。

この歴史を見る眼においても、沖縄民族主義者は、自分たちの歴史を、唯一至上のものに祭り上げています。

もしそれを行なわなかったら、日本は帝国主義の時代に、各地方がそれぞれバラバラなったままで亡国を迎えたというだけです。

近代の歴史は、どの国にも必ず明と暗があります。

その両義性を認識しないで、暗黒面のみを徒らに強調するような、「植民地主義」論者は、濃厚にマルクス主義者の影響を受けています。

知念氏や野村氏の意見を新鮮だと、朝日は思っているようですが、私から見ればありきたりの陳腐なマルクス主義歴史観を、新しい包装紙で包んだだけのものにすぎません。

むしろ、今、それは大変に危険な言説となっています。

沖縄民族主義者のように、冷静に歴史や状況を見ないで、感情的に沖縄ナショナリズムを煽ればどうなるでしょうか。彼らはこうアジっているのです。

「恨みは忘れない。なにもかも日本が悪い。言葉を奪われ、基地を押しつけられた植民地だ。日本人は本土に基地と一緒に帰れ!癒されなんかにくるな!」

たしかにコリアに酷似しています。こんなことを大きな声で言い続ければ、とうぜん本土の強い反発を招きます。それが「嫌沖論」です。

長くなりましたので、次回に続けます。

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