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2015年4月28日 (火)

海水注入中止命令前段 なぜ、官邸本部に権限が集中したのか?

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菅首相の事故対応について、証言する関係者のすべてに共通するのは、「あたりかまわず怒鳴り散らし、何を言っているのかわからない」というものでした。 

たとえば、3月12日早朝の福島第1への突然の「現地視察」において、同行した武藤栄東電副社長はこのような証言をしています。

「免震重要棟に入った。そこで交代勤務だと思うが、作業員の人が大勢いた。中には上半身裸というか、除染などの人だと思うのだが、大変だなと思った。その前で菅氏はなんと言ったかというと、「何で俺がここに来たと思っているのだ」と言った。これには呆れました」

池田元久経産副大臣(当時)も手記の中で、「怒鳴り声ばかり聞こえ、話の内容はそばにいてもよく分からなかった」と記述していました。

Bbc18(写真 BBCドキュメント映像。吉田氏は後に、ここに残る者は、ホワイトボードに名前を書いていけと命じたと言っている。それが墓碑銘だと決意したからだ。この69名に日本の命運はかかっていた。この命を賭した人々に対して、菅氏がかけたのは罵倒だけだった)

吉田所長は、調書の中で管氏を名指しで、「なんだ、馬鹿野郎」と吐き捨てるように言っています。 

では、なぜ福島第1への不要不急な視察、現場に混乱をもたらした海水注水中止命令、あるいは、ふたつの対策本部同士の衝突事件である東電本店演説事件などが、相次いで起きたのでしょうか。 

これをすべて、菅氏の人格が及ぼす破壊的エネルギーで片づけるのは簡単です。

残念ながら、事実として菅氏という、ある関係者をして「歩く人災」とまで評された政治家に、事故対応は仕切られてしまいました。

しかし、そこにだけ注目すると、この事態の本質がわからなくなります。 

政府事故調の検証委員たちは、『福島原発事故はなぜ起こったか・政府事故調 核心解説』の中でこう述べています。

「重要なのは、わが国における緊急時における災害対応が、全体として機能したか、否かである」

政府事故調が指摘するとおり、当時1999年東海村JCO事後に、その反省から作られた「原初力災害特別措置法」(原災法)に基づいて作られたはずの「原災害マニュアル」がまったく機能しなかったことこそが、問題とされるべきなのです。 

ではなぜ、原子力安全・保安院の原子力の専門家が、原子力災害はおろか、原子炉の仕組みすら知らない「素人政治家」たちの手に、指揮権を渡してしまったのでしょうか。 

それには、海水注入事件に至る前段までの状況を知る必要があります。 

2011年3月11日19時3分、政府は原子力緊急事態宣言を出します。これにより立ち上がったのが、菅首相を本部長とし、官邸を本部とする原災本部でした。 

原災マニュアルによれば、ここで、現地オフサイトセンターに現地対策本部が作られ、本部から権限を委譲された現地対策本部長(経済産業省副大臣)が、事態の対応に当たるはずでした。 

ところが、この目論見は早々に破綻します。

急遽、現地福島に赴いた池田副大臣たちは、地震により破壊されたオフサイトセンターを眼の前にして呆然とします。

オフサイトセンターは放射能防御の施設がないばかりか、ここに集中されるべき情報が、情報通信機能の破壊によって、官邸に届けられなくなったからです。

初動段階のこの失敗は、単にオフサイトセンターひとつがポシャっただけにとどまらず、大きく緊急対応に影響を及ぼします。

というのは、これで、指揮権が現地に委譲されずに、本来現地対策本部が処理すべき細々とした対応まで、一手に官邸対策本部が担うことになってしまったからです。

後に、管氏は、大きく事故全体を見るのではなく、原発に届けるバッテリーのサイズにまでクチバシを突っ込むようになりますが、これも(もちろん管氏の視野狭窄的性格もありますが)オフサイトセンターの破壊という事態とは無縁ではありません。

本来、この現地対策本部が、このようなことを処理すべきだったのですから。

Fuksusiamagepatujikoyotkougo(写真 この時期の菅氏はほとんど睡眠をとらず、ほとんど狂乱状態だったと、居合わせた関係者全員が証言している。大震災と原発事故という二重のシビアな状況の中で、よく日本が持ったもんだと思う)

しかも、通常、このような原発シビア・アクシデント時に本部が設置されねばならない、官邸地下の危機管理センターは、大震災の災害対策本部が置かれていたために、ただの会議室である官邸5Fに官邸対策本部が置かれることになってしまいました。

なんと、官邸本部は、オフサイトセンターの壊滅だけではなく、官邸の持つ優れた情報・通信機能さえも使用不能だったのです。

かくして以後、官邸本部は、福島第1とのテレビ会議回線を持つ東電本店からの連絡待ち、という本部とも思えない情報過疎状態に置かれることになります。

もはや情報過疎といっていい事態の中に置かれた官邸本部が事故指揮を執る、という恐るべき状況が始まります。

そしてさらに、原災法マニュアルにない事態が起きました。それは、原子力災害の専門家集団である原子力安全・保安院が、使い物にならなかったことです。

原災害法には、原子力安全・保安院が原災本部の事務局を担うととされていますか、これがまったく機能しませんでした。

201105222224510de(写真 斑目委員長。本来この人物がすべての事故対策の指揮を執るべきだったが、リーダーシップ、胆力、共になかった。この人の責任は大きい)

斑目委員長以下保安院の専門家たちについて、政府事故調検証委員は、こう評しています。

「保安院が所与の役割を果たすことができなかったのは、現地や東電からの的確な情報を得られなかったことにもあるが、過去に経験した事故の規模を大きく越える、今回のような原子力災害への備えが能態的にまったくできていなかった点にある」(同)

もし、福島事故と同じ事態が起きた場合、米国においてはNRC(原子力規制委員会)が、フランスではASN(原子力安全機関)が、一元的に事故指揮権を掌握し、指揮全体を執るでしょう。

このような高度の専門知識が要求される原子力災害においては、専門家が指揮を執るのは、あまりにも当然です。

それを一介の「素人政治家」が、首相・本部長という肩書だけで事故指揮に介入すること、それが越権とされるべきなのです。

米仏ならば、相手が大統領であろうと、菅氏のようなまねをすれば、委員長はこう言ったでしょう。

「閣下を部屋の外にお連れしろ。丁寧にな」

しかし残念ながら、原災法には、安全・保安院はただの「本部事務局」という位置づけしか与えられていませんでした。

このあいまいな「事務局」という位置づけを、菅氏は単なるアドバイザーと解釈しました。主従意識が強い彼にとっては、ただの従者であったのでしょう。

菅氏は専門家に対して、「決めるのはオレだ。オレの言うことにだけ答えていればいいんだ」という傲慢きわまりない態度で望むことになります。

菅氏は終始、斑目氏を「お前」と呼び捨て、斑目氏は管氏の怒声の下で忍従を強いられます。

このような菅氏の犬のマウンティングのような行為に対して、ただの気の小さな学者バカでしかない斑目氏はまったく抵抗できず、他の関係者同様、どうやったらこの王様を納得させられるかばかりを気にするという、異常極まる雰囲気が、官邸本部を支配します。

管氏が座をはずすと、官邸スタッフと専門家、東電関係者が、菅氏説得シナリオを作って、発言分担まで決めていたという、笑えない場面すら生じました。

海水注入停止命令事件は、この空気の中で起こったことを頭にいれないと、理解ができません。

ここまでを整理しておきます。

①現地オフサイトセンターが壊滅
②原災法が想定していた現地対策本部が事実上消滅
③現地対策本部に集中されるべき、原発災害情報がほぼ完全に遮断される
④事故指揮を執るべき安全・保安院が機能停止
⑤本部は菅首相の「独裁」的状況

 このような状況下で発生したのが、この海水注入事件でした。 

既に、この一件に関しては、すべての事故調の結論が出揃っています。

・国会事故調 「官邸の直接介入が、指揮命令系統の混乱、現場の混乱を生じさせた」
・政府事故調 「首相が当事者として現場介入することは現場を混乱させるとともに、重要判断の機会を失し、あるいは重要判断を誤る結果を生むことにもつながりかねず、弊害の方が大きい」
・東電事故調 「現場実態からかけ離れた具体的な要求が官邸の政府首脳等から直接・間接になされ、海水注入中止の指示等、緊急事態対応の中で無用の混乱を助長させた」

では、次回もう少しその内情を時系列でみます。

・・・それにしても、なんで私、こんな話題やってんだろう(笑)。沖縄なんかで、論じなきゃいけないテーマはゴマンとあるのに。かなり不毛感あるが、なりゆきだぁ!

 

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コメント

>・・・それにしても、なんで私、こんな話題やってんだろう(笑)。沖縄なんかで、論じなきゃいけないテーマはゴマンとあるのに。かなり不毛感あるが、なりいきだぁ!

いやいや、これだけ判り易く解説してくれる所は有りません。
何度も読み返しています。
有難うございます。

辺野古埋め立てを検索してこちらへたどり着き、興味深い記事揃いで楽しく拝読しております。

福島も分かりやすくて助かります

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