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2015年4月17日 (金)

樋口裁判官のゼロリスク論

075
樋口裁判官は、福井新聞(4月14日)が報じるように、直接に法廷で証言させたわけでもない科学者の意見を、それも曲解して判決文を書くという杜撰なことをしていています。
差し止め決定文に「曲解引用」 困惑する地震動の専門家 原発 ... - 福井新聞 

判決文要旨にはこうあります。※朝日デジタル仮処分決定の要旨

「加えて、活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と答えている。地震の平均像を基礎として万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見いだし難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる」

まず判決文に、新聞記事で「読んだ」ということが書き込まれること自体、ありえないことです。 

20141108100329961

ここに出てくる入倉孝次郎・京都大名誉教授は、法廷に呼ばれてもいませんから、これでは「新聞記者が書いていることを聞いた」と同じことになり、伝聞証拠を採用したことになります。 

入倉氏の知見を知りたければ、法廷に呼べばいいのです。その手間を省いたのは、たった2回で審理を終了しないと、自分が名古屋家裁に飛ばされてしまうからです。やれやれ、自己都合かい。

しかも正しく引用するならともかく、当の「提言者」(決定文)である入倉教授から直ちに異議申し立てをされてしまっています。

「全くの事実誤認。決定文にある発言は、新聞記事を元に原告が曲解して書いているものが引用されている。正しい理解のために正確に引用してもらえず非常に残念」(福井新聞4月15日)

画像

(写真 入倉教授が曲解とした2014年3月29日付愛媛新聞インタビュー) 

記事赤線を引いた部分が問題の部分です。この赤線を引いたのは、原告側と同じ立場の、渡辺輝人弁護士です。写真も氏の記事から引用いたしました。ありがとうございます。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150416-00044872/ 

20150415171431014    (写真 脱原発弁護士団体の乱訴宣言)

まずは、用語から押えておきましょう。基準地震動の定義は以下です。

「原発の設計の前提となる地震の揺れで、原発ごとに異なる。周辺の活断層などで起こりうる大地震を想定して、地盤の状態を加味し、原発直下の最大の揺れを見積もる。これをもとに原子炉、建屋、配管などの構造や強度を決める。単位はガルで、1ガルは1秒ごとに1センチずつ加速すること。地球上で物が落ちる時の加速度(重力加速度)は980ガルで1Gともいう」  (2011年6月14日  朝日新聞)    

つまり、原発施設によって異なる地盤を考慮して、起こりうる大地震の最大の揺れの基準値のことです。 

ですから、個別の原発によって想定される最大震度は違っています。 

さらに入倉教授はこう述べています。
(『原子力発電所の耐震設計のための基準地震動』
http://www.kojiro-irikura.jp/pdf/jishinkougaku_H19.pdf

「地震動の策定については、「『施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動』を適切に策定し、地震動を前提とした耐震設計を行うことにより、地震に起因する外乱によって周辺公衆に対し、著しい放射線被爆のリスクを与えないようにすることを基本とするべきである」としている。
さらに、「残余のリスク」の存在について、「地震学的見地からは、上記のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。このことは、耐震設計用の地震動策定において、『残余のリスク』が存在することを意味する」と記されている」          

ここで、入倉教授が言っていることは、「仮に地震動を策定しても、それを上回る強さの限界的地震動が来る可能性は否定できない。だから、そのような『残余のリスク』を想定して耐震設計しろ」ということにすぎません。 

これを樋口氏はこう解釈してしまいます。 

「基準地震動を超える地震はあってはならないはずである。断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない」「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」と答えている」(太字引用者)

 だから樋口氏は、「規制委員会の基準値は緩すぎる」と結論づけるわけです。 

おいおいです。いつ入倉教授が「あってはならない」などと言っていますか。

入倉教授は、「リスクはあるかもしれないが、そのリスク対しても安全率のマージン見て基準値を決めるべきだ」と言っているだけです。 

なるほど、樋口氏が言うように、事実「4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が2005年以後10年足らずの間に到来」しています。 

福島第1においても、樋口氏が問題にする基準地震動を越える揺れが襲っています。 (下図参照)

001(図 宮野廣法政大学教授『福島原発は地震で壊れたのか』による 単位ガル クリックすると大きくなります)

上図をご覧いただければ、最大の加速度は2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。

しかし、それによって破壊された原発が1基でもありますか。問題はそこです。

基準地震動など、しょせんは「数字」にすぎません。人間の知見という狭い幅でエイヤっと決めたものです。 

だからこそ、現に耐えたのか、耐えなかったのか、という「現実」の知見のほうが重要なのです。

福島第1は、基準地震動をはるかに超える地震動に耐えて、制御棒が問題なく挿入され、停止モードに入りました。 

くどいほど繰り返さないと、反原発原理主義者のコンクリート頭脳には分からないようですが、福島事故の原因は津波による予備電源の水没です。 

これは4つある事故報告書で、国会事故調を除くすべてが一致して出した結論です。 

つまり、原発は基準地震動をはるかに越える大地震にも充分に耐えたのです。 

国会事故調は、こう結論しています。

「プラントパラメータによれば、地震直後には高圧注水設備(非常用復水器、原子炉隔離時冷却系)が、問題なく動作していると判断され、主蒸気流量、格納容器圧力・温度、格納容器床サンプ(廃液を貯める貯水槽)水位のチャートから、配管の健全性についても、異常はない」

つまり、地震によっては格納容器、蒸気配管、各種細管などは、すべて異常なく、損傷を受けず、耐えました。 

しかし破損したのは、それ以後に襲った送電鉄鉄塔の倒壊、予備電源喪失などによる全交流電源喪失が原因です。 

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どうやら、この樋口という人物は、よくある放射脳オバさんにあるような、「ゼロリスク論者」のようで、戯画化すればこんなかんじです。 

「うわー、また地震が来るぞぉ!400ガルだって、とんでもない700ガルだ、いや1250ガル超が来るかもしれないんだ。それに耐えるゲンパツなんかありっこない。だから全部止めてやるゾ!」 

チャンチャン。樋口さん、あんたホントにズブの文科系だね。学生の頃、法学参考書ばっかり暗記していたろう(笑)。

工学系の発想、ゼンゼン分かってないね。

リスクはあります。なんにでも「想定外」はあるのです。

ただ、その「想定外」をいかにして減らして、「想定外」でなくしていくのかが、現場サイドに立ったテーマなのです。 

だから、そのありえるリスクにマージンを足して安全率を決め、対策も2重、3重、いや4重、5重にかけておくんですよ。

樋口氏には、この「想定外」を想定するからこそ、「想定外」を減らすことができる、というパラドックスがわからないようです。

ちょうど、「戦争が起きることを想定すると、戦争になる」、という観念的平和主義とソックリな精神構造です。ま、やっている人達も同じですが(苦笑)。

「ゼロリスク論」は、津波だろうと、地震だろうと、人為的ミスであろうと、初めから「危険性が万が一でもある」からダメだからダメだという考え方をします。

「ダメだからダメ」という全否定の考え方に立つ限り、現実に原子炉を運営する立場の専門家や、電力会社とは「会話」そのものが成立しません。

原子力事故が起きたらどう対処するのか、その可能性をすこしでも潰していく積み重ねの先に、やっと「安全」があるのであって、あらかじめ「原発は事故を起こすはずだ」、あるいはそのメダルの裏側の「原発は絶対に事故を起さない」では、個別具体の安全性対策が進化していくはずもありません。

なぜなら、思考停止だからです。 しかし、これが長年の、わが国の不毛極まるゼロリスク論と原発安全神話との抗争の風景でした。

工学系は、そもそもリスクはあって当然であり、それをさまざまな対処によって最小限リスクに押しとどめるという発想 が基本なんです。 

そのリスクと安全対策のコスト配分が、大人の知恵じゃないのですか。

行政とは、そういう今ある社会的リスクと、それによる社会的利益を按分して、政策決定することなんですよ。

樋口氏は、その行政も、いや専門家すら呼ばないで、決定文を書いてしまいました。

さぞ、簡単な仕事だったことでしょう。だって、結論は既に書いてあっんたんですからね。

もういいかげん、個別具体的に問題解決をしたらどうなのでしょうか。4年前からまったく進化しない議論に、また樋口判決で、混迷に拍車がかかってしまいました。

もう、心底うんざりです。 いつまでこんな幼稚な議論に、つきあわなきゃならないのか。

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コメント

地震か津波かが何の問題なのか、よく分からなかったのですが、お陰様で理解出来ました。

福島第一原発の事故が津波によるものなら、立地か壁か電源を高くすることで対策が容易。

一方、地震によるものなら大きいものは防ぎようがなく、ダメよーダメダメ。
こっちの結論に持っていきたいのですね。

管理人さん、お久しぶりです。
全く同感です。
個人的には、原発が停止していることで恩恵を受けている立場ですが(^-^;、この樋口英明裁判官は生粋の文系ですね。
これだけ社会が複雑化している中で、専門性が要求される訴訟に対して、その分野にドシロウトの裁判官が判決を下して良いのかと(^-^;
これから先、工学系、理学系を専門とした裁判所があったほうが良いかもしれませんね。
もちろん、リスクマネジメントが解る裁判官じゃないと意味ありませんが(笑)

仮処分とは直接関係ないけれど,
テロやミサイル攻撃によるリスクは,自然災害によるリスクに比べてたいしたことないんでしょうか.

大雪の日に「共和国」の工作員が送電鉄塔を爆破するのでしょうかね。

冷戦の最中にも起こらなかったことです。
日本国土の破壊を望む勢力などいませんよ。
ISILだって、そのバックを考えれば手を出しては来ません。

送電線など鉄塔を破壊しなくても,ドローン数台でいともかんたんにやられちゃう気がするんですが,まあそれはそれとして,
長期的な地政学リスクに対する感覚の違いには唖然とするばかりで何も言うことはありません.

方法論だけならいくらでもあるでしょう。

今まで行われてこなかった理由。
重度の放射能汚染を受けた日本国など、誰も欲しくない、ということです。

プーさん

ISISやその他テロリストにはあなたの理屈は通用しないよ
テロ攻撃は領土的野心を満たすものではなく
文字通り相手の「恐怖」を煽り政治的要求を満たそうとすること
テロリストからしたら放射能汚染なんか知ったこっちゃねぇ、ってことでしょ
日本では原発のテロ対策なんかほとんど考えられてません
それでも「世界最高の安全基準」笑

しつもんさん。

昼のニュース観たんですね。
ドローン数台では原発は破壊できません。まさか超小型核弾頭でも開発したのでしょうか?
ドローンなんぞより気球で高空爆発させて都市にEMP攻撃したほうが、よほど効果的です…って、あなたは
テロリストですか


また、地政学的認識云々も、具体的に言ってもらわないと全く意味不明です。

遠い将来には日本列島が海溝に飲み込まれる時代の話でしょうか。

ねんねさん。

日本のテロ対策に関して無知なのはあなたのほうでしょう。
もちろん充分だとはとても言えませんが、一部の装備や訓練などはマスコミにも公開されています。

本当におねんねさんなのね…。
自衛隊の特殊部隊でも常駐させればご満足でしょうか?

しつもんさん。

テロは、やっちゃったら終わりなのですよ。
脅すから意味があります。

後藤健二さんも、人質である間は大騒ぎだったのに、殺害が明らかになった途端に静かになったではありませんか。

ねんねとかいう人。テロ対策ですか。不十分に決まっているでしょう。

そのうちこの原発テロもテーマにしますが、福島第1でも、丸腰のガードマンだけでした。もろんSATなど夢物語。

どうしてですか?
あなたたちのような反原発原理主義者の皆さんが、そのような対テロ対策をしたら大騒ぎしたからですよ。
SATなど置こうものなら、その計画あるだけでどう言いますか。たぶんこうだ。

「テロの危険がある原発ハンターイ!」「原発の特殊部隊配備を許さないぞ!」

なるほど、テロのリスクに対して日本はリスクヘッジをという当然のことをしてこなかった。それは事実です。

しかも単に職員の身元の確認なんかだけじゃなくて(それについては公安調査庁がしていますよ。秘密でね)、最大のリスクである全電源ブラックアウトという事態を想定していなかったのです。

しかしその理由はなぜか?それはノーリスクを絶対視する非科学的な人たちか、マスコミや運動側にごまんといたからです。

共に安全を考えていこうじゃなくて、「絶対安全原発」を要求する運動側と、だから「絶対安全」を言わざるを得ない電力会社側という、不毛な二項対立が、福島事故の遠因でもあるのです。

絶対安全もなければ、絶対危険もない。テロはありえるだろうし、ないだなんて誰にも言えない。

だったら、ちっとは真面目に、「今ある」原発のリスクを真面目に、そしていろんな人たちと共に考えてみたらどうなんです。

街頭で叫ぶだけが、原発ゼロの道じゃないぜ。

山形さん

「もちろん充分だとはとても言えませんが」
ご自分で原発のテロ対策における不備を認めていらっしゃる…?

原発の防衛の為に専門の部隊を置くことも悪いアイディアではありませんね
とりあえず原発の作業員の身元確認の法制化を見送ったのは失点だと思うよ

ここは何が何でも再稼働させたい人たちの憩いの場(笑)のようなので水を差すのも悪いね

ではでは

しつもんさんではなく、ねんねさん宛の返事でした。
すみません。

何が何でも再稼働を止めたい人たちの憩いの場にお帰りいただければ幸いです。

(狂信的な)数人のグループでも,大した資金がなくても,ドローンを使えば,(送電線の切断か単なるショートさせるだけでも?)まとめて原発への交流電源をストップできてしまうのではないのか,すごい心配です.

後藤さんの事件は、そんな感じの末端の少数のバカがその場の気分で殺してしまったのでしょうね。
で、ISILごと強烈な報復を受けて今や滅亡寸前です。

ですが、原発を爆破しても何のメリットも無いのですよ。溜飲を下げる人たちはいそうですね。

ごく少数、後先も自分の命も考えないで爆破テロを企てる輩はいるでしょうが。

原発を爆破しても日本政府は倒れません。やるなら官邸や議事堂へのテロの方が有効です。

軍事・経済その他、数多あるリスクの中で、原発へのテロばかり重視するのはアンバランスだ、ということです。

プーさん。とはいえ、原発施設の破壊というのは、経済的打撃だけではなく、社会不安の醸成の上で大変に有効な手段なのです。
福島事故だけで、これだけの後遺症が残っていますし、もう一回原因がなんであれ、事故が起きた場合、日本において原子力が残る可能性はかぎりなく、ゼロです。

私は、島崎委員のように、地震にあれだけ執拗にこだわる規制委員会が(事故原因は地震ではなく、津波であるにかかわらず)、なぜ核テロについて無関心なのか理解に苦しんでいます。

このことに関しては、反原発派の諸君の批判は、聞くべきものをもっていると思っています。

ねんねさん。

どうせもう見てないかもしれないけど、
どうやったら「どうしても再稼働したい人たちの憩いの場」などと決めつけるのやら。しかも(笑)付きで。ただの冷やかしなら迷惑です。

真面目に原発をたたむ方法とエネルギー言う政策に関して論議してるだけだが…やはり0か1かでしか判断できない、残念なオツムの方ですね。
盲目な急進的サヨクさんのいう「あっち側」だと言われればそうでしょう(苦笑)。
ですが、皆真面目に「どうやったら最終的に原発を無くすことができるのか?」を考えています。

ブログ主は、一貫して脱原発ですよ。
茨城県の農業なんか、それこそ「風評被害」に直撃された場所です。変な邪推は止めて下さい。

管理人さんありがとうございます。

マスコミ等があのように煽らなければなあ、とも思いますが、深刻な風評被害が立ったのは事実ですね・・・

本当にお疲れ様です。

樋口裁判官に影響を受けたのかは知りませんが、とあるブログで「伊勢志摩サミットの最中に東南海地震が起こったらどうするんだ!!東日本大震災から学ばなかったのか」と吠えてる人がいました。そんなこと言い出したら、日本中地震が起こったらどうするってだけで何もできなくなりますよ。管理人さんのおっしゃる通り、想定外を想定内にする対策を政府はしっかりしてほしいですね。

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