• As20241225001545_comm
  • 20250115-143858
  • 20250113-081014
  • 20250114-011659
  • 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250114-062849
  • 20250112-044948

« オスプレイ・デマ | トップページ | 土曜雑感 朝日新聞インタビューに見る、翁長氏の「面白さ」について »

2015年4月10日 (金)

沖縄から米軍が撤退する条件とは

173

森本元防衛大臣が、こう述べたことが評判を呼んでいます。 

「海兵隊が沖縄にいなければ抑止にならないという専門家が随分いる。それは軍事的に見ると間違い。有効に抑止力が発揮できる場所であれば必ずしも沖縄でなくてもいいが、政治的には難しいと言っている」(沖縄タイムス2015年3月30日) 

これは沖タイなどですみやかに流布され、想像どおり、「やっぱり本土政府が押しつけていたんだ」と短絡的に理解されたようです。 

森本氏の真意はよく分かりませんが、沖縄の基地は軍事的見て、一般的に思われているより重要じゃないよ、という意味ならば、半分は当たっています。

沖縄は米軍にとって、しょせん出張所ていどの位置づけにすぎません。よく言われる「前方展開基地」というのはその意味です。

米軍にとって、ほんとうに手放したくない在日基地は、すべて本土にあります。具体的には、横須賀、厚木、横田、佐世保です。

これらの基地は、米軍の世界における最重要拠点であって、米国がモンロー主義にでも回帰しない限り、ぜったいに手放さないでしょう。

したがって、中長期的には「出張所」でしかない沖縄の基地は、間違いなく縮小・撤収の方向に進むでしょう。 

ただし、その撤収の時期については分かりません。 

この 米軍の世界的トラスフォーメーション(再編)に伴う流れは、ほぼ決定的で、実際に米軍の世界的再編は、一時その方向に進んでいました。 

例えば2011年4月にワシントンで発行された軍事専門誌『スモール・ウォーズ・ジャーナル』に掲載されたネオプトレモス論文が注目を集めたことがあります。 

ネオプトレモスという名はペンネームで、国防総省高官数名の合同ペンネームだと見られています。 

このネオプトレモス論文は、現在米軍が直面している財政危機。2020年代に不可避だという前提の下に、米軍の世界駐留を日本にだけ集約するという内容です。 

要旨はこのようなものです。
(※国際変動研究所 西恭之訳『10年後、米軍は日本にしかいなくなる』による)
 

①韓国からはスタッフ機能を除いて、陸軍第2師団、空軍などが全面撤退。
②ヨーロッパからは、陸上兵力を全面撤退。基地も使用権のみを残して全面撤退。
③逆にインド洋と太平洋は態勢を強化。日本の海空軍基地は一カ所しか閉鎖しない。
④西太平洋のパトロールは日米が合同で行なう。
⑤米空軍は削減。陸軍も削減。海軍も縮小。
⑥海兵隊第3海兵師団は撤退。
⑦戦略原潜の廃止。
⑧中国との海洋進出についての交渉強化。
以下略
 

まぁ、ざっとこんなかんじです。ここで沖縄に関して注目されるのは、③と⑥です。 

③の「一カ所閉鎖される米空軍基地」とは、明示されていませんか、嘉手納基地以外考えられません。 

これは1996年から中国が福建省に1400基も配備している弾道ミサイルの射程内に、嘉手納基地がすっぽり入ってしまうことによります。

PAC3の迎撃能力には限りがあるために、嘉手納を引き払ってグアム空軍基地まで下げます。 

⑥は、前々から米国内の一部にあった、海兵隊の全面撤収論です。これは、今、行なわれる縮小計画とは別で、第3海兵師団の全面的な本国撤収となります。 

当然、辺野古に新たな移設先が生れたとしても、それも撤収対象となります。 

もちろんネオプトレモス論文は試案にすぎませんが、米国が戦略的オプションとしてここまて考えている、ということを知るにはいい例でしょう。 

しかし現時点においては、ただの試論の域を出ないのは、中国の軍拡が差し迫った問題としてあるからです。 

森本氏発言の「政治的に決まった」という意味が、「沖縄に押しつけやすいから決めた」と、県民には取られたようですが、中国の膨張政策という「政治的」理由ならば、うなずけます。 

中国が、南沙諸島、西沙諸島、台湾、尖閣に対しての領土的野心を捨てさえすれば、沖縄の基地は自動的に大幅に縮小していく可能性があります。 

では、逆に、「なぜ今、在沖海兵隊は撤収できないのか」と考えてみましょう。 

その理由は、2011年7月に台北で開かれた日米台の国際フォーラムでの小川和久氏が述べたことに集約されます。 

「台湾の人は自覚していないかもしれないが、日米同盟は台湾海峡における中国の軍事的展開を阻止する唯一の抑止力となっている。中国の断頭攻撃を抑止しているのは、沖縄の海兵隊基地だ」

 「断頭攻撃」というのは聞きなれない言葉でしょうから、少しご説明します。

中国にとって台湾「解放」は国是です。しかし現在の中国が、かつて国共内戦の末期に見せたようなミニ・ノルマディ上陸作戦のようなことをする可能性は少ない、と思われています。

それが「台湾関係法」です。

具体的に米国が台湾のために用意した保険は、先の小川氏の言う「中国の軍事的展開を阻止する唯一の抑止力」としての沖縄の米軍基地、なかでも海兵隊基地でした。

米軍は、オスプレイを使って、ほぼ数時間以内に海兵隊を即時投入できます。これが、米軍が沖縄にオスプレイ配備にこだわった理由です。

41b8f662aa579cfada7ef567fb545d0b_2         (図 防衛省「MV-22オスプレイ 米海兵隊最新鋭の航空機」)

ちなみに、普天間の佐世保軍港付近への移動というのも検討されましたが、今の海兵隊の投入手段は、かつての強襲揚陸艦から、オスプレイにシフトしてきているため拒否された、という経緯もあります。

中国が台湾に仕掛けてくると思われるシナリオでもっともリアリティがあるのは、台湾の政治的頭脳を特殊部隊を使って、一瞬にして断ち切る戦術です。
Hinrichtung_ludwig_des_xvi
全身をくまなく攻撃するのではなく、頭脳に当たる部分のみをピンポイント攻撃するので、ぶっそうですが「斬首攻撃」と呼ばれているわけです。

これをさせないためには、「そんなことをしたら、自分の方が大火傷しますよ」ということを、中国にいつも見せつける必要があります。

もちろん、沖縄に海兵隊はわずか約1000名ほどしかいませんし、それもローテーション配備といって、あちらこちらに出かけて留守の場合も多いのですが、「沖縄に米海兵隊がいる」というだけで、中国は手を出せません。

だって、米軍に攻撃をしかければ、まちがいなく米中全面戦争に発展しますので、中国にとってもためらうことになります。

これは尖閣についても同様で、尖閣が万が一戦場になった場合、米国はおそらく海兵隊を動かさないかもしれません。

しかし、その可能性が日米安保条約第5条によって担保されているかぎり、その可能性が残り続けていますから、中国は安易な軍事的オプションを取れないのです。

整理しましょう。

まず、米軍は中長期的には、沖縄から撤収する可能性があります。その場合、嘉手納基地と沖縄海兵隊は撤収することになります。

そして米国は日本本土の基地に、軍事機能をすべて集中させます。

しかし、それは今ではありません。明日でもありません。というか、いつかはわかりません。

なぜなら、相手次第だからです。

相手とは、いうまでもなくアジア最大の不安定要素にして、世界で唯一領土的野心を隠さない中国という軍事大国があるからです。

台湾、あるいは尖閣への中国の武力攻撃かありえないと判断されれば、いつでも沖縄からの米軍の撤退可能な条件が整います。

私はその日が来ることを、願って止みません。 

 

« オスプレイ・デマ | トップページ | 土曜雑感 朝日新聞インタビューに見る、翁長氏の「面白さ」について »

沖縄問題」カテゴリの記事

コメント

中共が、平和裏に民主化してフツーの国になる
などとは、どー考えても想像できません。現実
的には「その日」は来ないとしか思えません。

沖縄の人の多くが被害妄想的になるのは、仕方
無いことだと思います。地政学的に、アノ位置
は東南アジアのヘソそのものです。中共も欲し
くて欲しくて堪らないハズです。

例え、何処の国に属することになろうが、沖縄
地元民は大国のエゴにより島民の都合は後まわ
しにされるのは、歴史的にも既定路線だと思わ
れます。厳しい現実ですが、そこから考えない
と取り返しのつかない事態になりそうです。

なんとか当座は火遊びせず、現状維持の方向で
進めて欲しいものですわ。

「その日」が来るとしたら、中共王朝の自壊が
その時でしょうが、14億人が難民候補になると
考えると、これ又そのような日は来て欲しくな
いです。沖縄など、いったい何隻の難民船が押
しよせて来るのか空恐ろしくなります。

アホンダラさん。コメありがとう。
ちょっと違います。

沖縄の地勢学的位置は仰せのとおりですが、それが意味をもって来たのは、東西冷戦以降の情勢の中です。
戦前は、中国の海洋進出がありえなかったために、日本はほとんど軍隊を駐留させていなかったほどです。(※海軍は佐世保と台湾にいました)

よく、「日本は基地を置くために植民地にした」という沖縄民族主義者がいますが、それは冷戦以降の話で、正確ではありません。
日本は沖縄を取り戻す前に,日本の意志とは関係なく、基地を既に作られてしまっていたのです。

ですから対峙すべき対象が消滅、ないしは圧力が軽減した場合、地政学的な意味はそれほど重要ではなくなります。

今の対峙している対象国は、いうまでもなく中国ですが、中国の将来的シナリオは以下です。
①このまま諸矛盾を抱えたまま肥大化して共産党支配のまま,世界帝国になってしまう。
②民主化の道を辿って、統一民主国家となる。
③経済の崩壊によって、民族紛争、宗教紛争が一体化した内乱的状況になり、やがて、5ツていどに分裂する。

いずれのシナリオかわかりませんが、③がもっともリアリティを持っています。もちろん、私は占い師ではありませんから、間違っていたら、ごめんなさい。

さて、テーマは「沖縄の基地がなくなるのか」です。言い換えれば、基地を米軍が持つ必要が残るか、です。

①の場合は、仰せのとおり半永久的固定化です。というか、それ以前に局地紛争の可能性すらありえます。
②微妙ですが、①よりは軽減します。
③基地を維持しておく必要は、ほぼなくなります。

したがって、中国がいかなる理由にせよ、膨張政策を取る能力がなくなれば、米軍は沖縄に大規模な基地を持つ理由はありません。
米軍には撤退してもらって、通常の国土防衛として、自衛隊が駐屯すればいいだけになります。

内乱の場合の避難民などは、別の次元のことであって、一緒にすべきではありませんし、そもそも、それに対して米軍を期待するのは筋がちがいます。自衛隊で対処すべきです

というわけで、私は沖縄の米軍基地がなくなるということについて、悲観的ではありません。

簡潔に勉強になります。
本文より大事な文章かもしれませんね。

翁長鳥には身の振り方次第でまだ生き残る道がありますが、
山城氏の活動は失業が目に見えていますね。

管理人さんへ
米軍の海空基地閉鎖の件、あの極東一の嘉手納基地を閉鎖する事ってあるんでしょうか。

宜野湾市民さん。蒲焼さんへのお答えありがとうございます。
私も実感がないことは言うなと言いたかったのですが、今は県外にいるもので遠慮していました。

さて沖縄の左翼は、絶対に沖縄基地が返還される可能性がないことを見越して、返還しろと言っています。
よく地元2紙が言うグアムがどーたらというのは、単にアドバルーンで、ほんとうなら、彼らは闘争目標が消滅してパニくるはずです(苦笑)。

まず前提として、沖縄の米軍基地は、今の米国の対中シフトであるピボット戦略上は重要です。即応力だからです。
嘉手納に限定した場合ふたつケースがあります。
ひとつは、中国が今以上に軍事大国になる場合です。その場合は、嘉手納は福建の中距離弾道弾の射程内に入ってしまいます。

その場合、撤収して、移動もないとは言えません。その場合はグアムのアンダーセン基地に統合することになるでしょう。
ただし、それは、アジア有事に対する即応力の著しい衰退ですので、米国のアジアの撤退という外交シグナルに取られる可能性かあります。それをどう判断するのか微妙な問題です。

もうひとつは、逆に中国の国力が分裂-消滅に向う可能性です。
この場合も、似たことになります。ただし、気分は真逆ですが。
つまり、中国次第なのです。

今、嘉手納を維持しているのは、漠然と居たいからではなく(あたりまえだ)直接には、台湾海峡有事、朝鮮半島有事に供えた航空優勢を確保するためです。
広い意味では、アジア有事に対応しています。
ですから、今の保有機数で判断してはダメで、平時は約100機ですが、有事には米本土からの応援を入れて4倍の約400機になります。
えてして、我々は有事に増えるということを忘れて計算しています。
ちなみに普天間もそのていどになります。


コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« オスプレイ・デマ | トップページ | 土曜雑感 朝日新聞インタビューに見る、翁長氏の「面白さ」について »