再エネトリック
こんなような論調を、よく聞きませんでしたか。
一つめは、「電力会社は原発を動かしくれと言うが、止まっていても問題なく、電力には不足していないじゃないか。電力会社は苦しいフリをしているだけさ」、とする電力ジャブジャブ余っている論。
二つめは、「ドイツなどのヨーロッパ諸国は、再エネに切り替わっているぞ。再エネがコストが高いなどというのは嘘で、電力会社が原発を動かしたいから再エネの普及をジャマしているんだ」、という世界の再エネバスに乗り遅れるな論。
そして三つめは、福島事故を起こした「原子力村のボスである電力会社を解体して、地域独占と発送電分離をすればよりクリーンに、より安い電力供給ができるはずだ」、という電力自由化論。
もひとつおまけに、四つめ。「再エネは燃料代がかからないから、安い自給自足的エネルギーだ」。という、再エネ格安論。
この四つは、「懲りない原発推進派」批判として、よく流布しているものです。これがモワッとした空気のような雰囲気として、今の日本社会を覆っています。
民主党などは自分の事故処理の失敗を棚にあげ、さらには2030年代までに原発をゼロにするとした新エネルギー政策がコケたことも都合よく忘れて同調し、与党でも、河野ジュニアや塩崎氏を中心として、30名ていどの反原発グループが作られているようです。
このようなモワッとした原発アレルギーの空気は、再稼働ができないことによる電力料金の値上がりだけでは済まず、別の大きな負担を国民に背負わせることになりました。
それが再エネという偽薬です。2012年7月から再エネ法によって、FIT(全量・固定価格買取制度)が施行され、偽薬を好むと好まざるとに関わらず、再エネ法によって服用を義務づけられました。
ちなみに作ったのは、またあの菅政権です。
FITとはこういう制度です。おそらく福島事故の直後でなければ、国会を通らなかったでしょう。
この制度は、再エネで発電した電気を、電力10社が固定価格で10~20年間買い取ることを義務付ける仕組みです。
買取費用は、電力会社がいったん買い取って(無条件全量買い取りが原則)、家庭や企業の電気料金に上乗せしています。
一般家庭の場合、毎月の電気料金明細票をよく見ると小さな字で、「再エネ発電賦課金」と書かれているのがそれです。
2015年3月19日、経済産業省・資源エネルギー庁プレスリリースを読むと、ゲッという巨額の金が再エネに注ぎ込まれているのが分かります。
※http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150319002/20150319002.pdf
上図の①の買い取り価格をご覧ください。昨年度買取費用は9千億であったのか、今年2015年度はいきなり倍の1兆8370億円です。
このペースで進行すれば、おそらく2016年には2兆円を越えると言われています。
毎年倍々ゲームをやらかしているわけですが、なぜ、こんな頭のネジがふっ飛んだような現象が起きるのでしょうか。
下図のFITの構造の模式図をご覧ください。
FITは、20年間固定価格で買い取る、という価格原理を無視した発電側に有利な制度です。
初年度に世界最高値の42円で買い取ったのですが、いったん決まったら最後、これは20年間ズッとその買い取り価格でいきます。
売る側にとってこんなおいしい話はないために、あらゆる業種が我も我もと参入し、とうとう中国(外国の方)の電力会社までが参入する始末です。
これが、あの不健康な太陽光バブルでした。
太陽光に集中したのは、プラモデル並に簡単にできて、しかも最も高い買い取り価格だったからです。
さて、ここであれ?と思いませんでした。どうして、毎年負担金が下がっていかないのでしょうか?
それは、当初に再エネ派から「高いのは初年度だけ。毎年どんどん下げていくから大丈夫」と説明されていたために、錯覚を起こしたのです。
確かに、この初年度買い取りは毎年下がっていきます。仮に年に2円ずつ下がっていくとすれば次年度は40円ですが、これも20年間固定。
以下毎年下がっていっても、ひたすらこの買い取り価格の層がパイの皮のように重なっていくだけのことです。
そして、これでは大変だと気がついて、制度を廃止してもこれはそのまま残ります。そして、仮に5年後に廃止したとしても、延々と25年間も発電業者に払い続けねばなりません。
たしか、スタートした時には、「ペットボトル一杯分で原子力を使わないで済むならいい」みたいなことで始めてみたら、今や、国全体では2兆円、家庭負担もやがて千円を越えるようになっていくという現実が見えてきたわけです。
どこかの党が、「一回やらせてくれ」と言って゛結局4年も居すわったみたいなもんですかね(笑)。ま、この非常にタチの悪いFIT制度も、あの党が作ったんだけど。
まるで再エネ詐欺ですね。
そして、肝心の発電量ときたら貧弱にして不安定そのもの、という現実にぶつかります。
それについては次回。
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