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2015年5月19日 (火)

電力自由化を議論する前に、各国の電力構造を見てみよう 

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電力自由化は、なにを改善するのかアイマイにしたまま、原発事故に便乗して、ひたすら電力会社を分解してしまえばいいようなムードがあります。

1億2千万人が住む、先進工業国のエネルギー・インフラをバラバラにしようとするにしては、ずいぶんと根拠薄弱です。

まずは考える前提として、わが国の電力構造を国際比較する中で、よく知ってから議論したほうがいいと思います。

まず、電力評価の二大指標である、停電率は世界で一番低い方に属すことがわかりました。たぶん停電率オりンピックでもあれば、金メダル確実です。

電力価格も、決して安くはありませんが、その停電率や、周波数などの品質も考慮すれば、妥当なものです。

しかも、福島事故まで、欧米の電力自由化に対応して、細かい電力改革が既に行なわれてきていて、電力価格は下落してきていました。

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(図 一般電気事業者の電力料金推移 資源エネルギー庁 横軸は昭和・平成で表記してあります)

この電力業界の自主改革により、日本の電気料金は目に見えて内外価格差を縮めていました。

産業用の為替レート換算で、電力価格の推移を国際比較しましょう。

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(図 資源エネルギー庁 為替レートによる電気料金国際比較 産業用 2000年-2009年)

価格差が出やすい為替レート換算においても、内外価格差は縮小しています。

しかし、このような流れを断ち切ったのが、福島事故以来の原発停止と、化石燃料輸入増による電力価格上昇でした

事故後、一転してグングン電力価格が上昇を開始するのがわかります。

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 (図 東電HP)

では、改めて各国の電力事情の性格を知った上で、電力自由化を議論していきましょう。

各国の複数の諸指標には、火力燃料費、電気料金、CO2排出原単位、停電率などがありますが、これを総合的にビジュアル化したのが、「包絡分析法(DEA)です。  

これは公共機関や民間企業の効率や、性格の特性を判断する時の材料に使われる手法だそうです。

このスパイダーグラフの線が外周に近づくほどスコアが高くなり、逆に内側に行くほど良くないということになりますので、この面積が大きいほど安定している優れた電源構造を持っているということになります。

なお、我が国は赤線で記してありますので比較してください。(クリックすると大きくなって見やすくなります)

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フランス
①原子力中心の発電により、近年の火力燃料費高騰の影響を受けず、安価な電気料金を実現
②CO2排出が世界で最も顕著に低い
・DEA総合評価・世界最高水準
・原子力に強依存していることを除けば、世界最高の電源構造
※世界に冠たる原発大国
※電力自由化は株式公開と小売りの一部を除きしていない
 

ドイツ
①電気料金が高い
②CO2排出は平均的
③停電率は日本と同程度
・DEA評価・日本と同程度の中位グループ
※脱原発政策・電力改革実施
した結果、合併・買収によりかかって寡占化が進行中

イタリア
①電気料金が高い
②CO2排出量は日本と同程度
③停電率が高い
・DEA評価・先進国としては下位
※脱原発政策
・発送電分離

韓国
①電気料金が政府の財閥企業優先政策により低く抑えられている
②CO2、停電などは我が国と同程度
・DEA評価・中位
※電力自由化はIMF改革により株式公開し自由化するも失敗に終わり、現在は市場型公開企業になる

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米国
①電気料金が突出して安価
②停電率が高い
③CO2排出量が高い
・DEA評価・中位
※電力改革で世界の先陣を切ったが大停電に見舞われる
 

英国
①電気料金は我が国と同じ
②停電率が高い
③CO2排出量は我が国と同程度
・DEA評価・先進国としては下位
※電力改革済み
 

 この欧米のDEA評価を見ると、世界の電力自由化が決してうまくいっていないのがよくわかります。  

電力自由化先進国の米国では、電気料金は確かに安くなった代わりに、停電時間数が激増してしまいました。 

発送電分離のために、発電と送電がうまくマッチしなかったり、送電網インフラの老朽化がひどく、民間企業となった送電会社はそのメンテにあまり熱心ではなかったからです。 

ドイツなどは、電力を輸出していた優秀国から、脱原発と電力自由化の相乗作用で悪い方に滑り落ちてしまいました。 

再生エネルギーの FIT(全量固定買入制度)と、脱原発、電力自由化の3点セットを同時にやった結果、電力供給においては「欧州の病人」になってしまいました。 

ドイツ経済はEUで最も多く恩恵を受けて好調だったにもかかわらず、エネルギー構造が宿痾と化しています。 

イタリアなどは、外国から大量に電力を輸入する構造が完全に定着してしまい、貿易赤字に拍車がかかって財政を圧迫しています。今やすっかり下位に定着です。

ひと頃、反原発運動家が、「脱原発枢軸同盟」(笑)を提唱していましたが、日独伊、いずれも悲惨な状況です。 

どうやらこの三つの国が組むとロクなことがないのは、歴史法則のようです(苦笑)。

英国も結局のところ停電率の増加のために電力自由化失敗国といってよいでしょう。最も多くの、電気を買えない電力貧困層を生んだのはこの国です。 

一方同じヨーロッパでもEU委員会の命令で自由化が進められたにもかかわらず、スウェーデンやノルウェイのような水力発電といったしっかりとした基盤電源を国内に持っている国だけは、例外的にうまくいきました。

このように、国際的に見るなら、「電力自由化」は決して成功とはいえず、ユニバーサル・サービスを自由化することによるリスクのほうが、はるかに目だつ結果になりました。

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コメント

三国同盟って、確か菅原文太が言い出したような。
あの当時、反原発のためならナチスを肯定しても許されるのかと寒気がしたものです。

お互いに無い物を補い合うから同盟の価値があるというのに。フランスと組むというなら分かります。
無い物同士がくっついて意味があるのか・・・それこそ戦争するんですか、てなものですね。

先週、某電力会社の方と酒の席で話しましたが、FITも失政ですが、発送電分離は、間違いなく大失政になると思います。
ハイリスクローリターン?ノーリターン?ですから、普通の企業判断ではあり得ないことをしようとしています。

電気料金は、PPSと競合する都市部で一時的に下がる可能性はありますが、地方との格差を穴埋めするために、結局、ユニバーサルサービス料金をとるか、第3セクター方式に成らざる得ないでしょう。

また、ピーク時の売り惜しみ規制やそれこそ米国方式のスーマートグリッド(半強制の配電制限)の導入がないと料金は上がる一方でしょう。

一つの案として、分離後の送電会社に揚水発電所やダム式発電所等のピーク電源を持たせることも考えられますが、発電会社は嫌がるでしょうね。

まあ、経産省的には、あわよくば、安定したPPSが増えて、第2の天下り先の確保が出来たら…と思っているかも知れませんが。

水力人さん。お待ちしておりました。おっしゃるとおりです。なぜ、安定供給義務をはずしたら売り惜しみが出ないのか、性善説にもほどがあります。

先日水力発電のリスペクトを書いたのですが、お読みになったでしょうか。

今後とも専門家のご意見をお待ちしております。

管理人さん、こんばんは。

5月7日の水力リスペクトの巻、勿論、読みました(笑)

水力の価値(安定した質の高い電気)を適切に評価されており、非常に嬉しく思いました。

水力は太陽光と違って、ステークホルダーが多い分、どうしても開発速度が遅いのがネックですが(^^;

また、度々登場します(笑)


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