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2015年5月15日 (金)

構造改革せねばならないほど、日本の電力は劣悪なのか?

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構造改革とは、社会的な手術のことです。それもハンパではないリスクを伴う手術です。失敗すれば社会がガタガタになってしまいます。

手術を、健康な人にするバカはいませんね。

では、落ち着いて、そこから考えてみましょう。果たして、日本の電力事情は、そんな大手術をするほど劣悪なのでしょうか? 

電気における需要者の利益は、電気料金が安いこと、そして停電が少ないことのふたつの指標で見ます。 

この二大条件がより良くならねば、電力を自由化した意味そのものが疑われます。「改革」した結果より悪くなりましたでは、なんのこっちゃですからね。 

まずは、わが国停電率(SAIDI)はどうでしょうか。停電をしない、すなわち、電力が安定供給できている というのは、ある意味、電気料金よりも重要なことです。

もし、瞬間的に千分の1秒でも停電が発生したら、コンピュータ制御の工場は瞬時で麻痺してしまいます。

その結果、製造ライン上では、オシャカの山が築かれることになって大損害です。

こんな危ない国には安心して工場を置けなくなって、その国は空洞化していくことになります。これは現実に、脱原発政策後のドイツで起きたことです。

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(図 「電力の各国比較」資源エネルギー庁 2007年) 

さて上図を見ると、ダントツにわが国で停電が少ないことが分かります。主要国でもっとも低い停電停電率です。

はい、これで証明終了。結論、わが国での電力自由化の必要はありません。

とまぁ、それではあまりに愛想がありませんから、図の左から順番に各国を見ていきましょう。

まずは、「電力改革先進国」であるはずの米国は惨憺たるものです。特にカリフォニア州がひどいのですが、年中どこかで大停電をやらかしています。 

しかし今や、細かく民営化してしまって送電網を分割してしまったために、スマートグリッドがなくては安心できない状況に落ち込んでしまいました。

え、何ですって、スマートグリッドは、通信と電力を一体化したものだから、先進的ですって。何をおっしゃる、ウサギさん。あんなものは電力自由化政策の失敗のツケにすぎません。

そもそもスマートグリッドなどは、年中どこかの地域が停電しているか、しそうなので、慌てて別の地域から電気を回してもらう必要から生れたのです。

たしかにITネットも一緒に乗せて便利そうですが、そんなことは別に送電網の本質的役割ではありません。

そんな余技のようなことは、今のような電力逼迫期にやることではありませんし、ましてや飯田哲也さんが提唱する再エネ導入のためなら、本末転倒もいいところです。

なんで数兆円という巨額投資をまでして、再エネなどという不安定なエネルギー源に追加投資をせねばならないのか、私にはさっぱりわかりません。 寝言は寝てから言え、つうの。

次に英国です。ここも相当に悲惨です。

英国は世界でも初期に自由化に取り組んだ国ですが、「改革」した結果、いっそうひどくなって、とうとう「電力貧困層」という電気代すら払えないで、寒さに震える貧困階層が大量に生じてしまいました。

電気は金持ちの贅沢品かって。今や中国のAIIBにすがるほど落ちぶれた英国ですが、その一因には、この電力自由化の失敗があります。

ドイツは別個に詳述せねばならないほど、問題山積ですが、かつては安定した供給体制を誇っていたドイツが、今や脱原発と電力自由化のダブルパンチで見る影もなくガタガタになりかかっています。

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(図 主要国電源比率 薄い緑色が原発。日本はバランスよく様々な電源を配置しているのがわかる)

次にフランスはどうでしょうか。この国の電力事情の最大の特徴は、世界に冠たる原発太国で半分の電力は原子力なことです。

ガンガン原発作って、余剰電力は輸出品にするというのが国策です。しかしどうも、途中の送電網に問題があるようで、日本の実に4倍弱の停電率です。 

あ、そうそう、電気って、日本では想像もつきませんが、貿易で売り買いするものなのです。

ドイツが脱原発をできた最大の保険は、このヨーロッパ広域送電網があったからです。そんなまねが不可能な日本ではどうするんでしょうね。

Photo

(図 Integration of large scale wind in the grid - The Spanish Experience, REE 社 ,2008 )

韓国はこの統計当時はよかったのですが、原子炉部品の性能証明書を偽造するという前代未聞の恥ずかしい事件を起こして、全23基の原発のうち7基が停止中で、今や夏場のブラックアウトを心配せねばならない事態になっています。

さて、我が国ですが、お分かりのように、主要国の中でもっとも低い停電率を誇っています。 

では我が国だけが、これらの諸国と較べて自然条件が特出して良くて、送電線が嫌う大風も大水もない、ということなのでしょうか。 

いや、むしろ逆に、諸外国の中で一番自然条件が苛烈なのは、自慢ではありませんが、世界一の災害大国たる日本です。 

南北2千キロ、東西2千キロにおよぶ島々からなる列島であり、その中央部には2千メートル級の脊梁山脈が伸び、平野部は狭く、山岳地域の地質は崩落しやすい風化岩であり、そして河川はそれに沿って急流で海まで下り落ちます。  

積雪地域は国土の60%に達し、いったん豪雪となると、たちまち交通機関が麻痺します。  

星の数ほどある離島は、時化れば食料不足に陥ります。 急病人もヘリで搬送せねばなりませんが、人が住む限り電気は供給されています。  

そしてご丁寧にも、3つプレートが集合している所に国土があるために、世界の0.25%の地表面積しかないにもかかわらず、マグネチュード7以上の大地震の実に20%が我が国で発生しています。 

こんな過酷な自然条件の中で、配電網が山間僻地、離島に至るまでくまなく張りめぐらされているのは、世界的に類を見ないもので、日本人はもっとこれを誇りに思っていいでしょう。 E_sumitomoc11_1220_011_s(写真 今や海底ケーブルは日本のお家芸で、海外にも技術輸出している。台湾にて)

あの東日本大震災の時ですら、激甚災害にあった地方も、わずか1カ月足らずで復旧してみせています。

大災害ではなく、 平時における各国の停電状況修復までの時間を比較してみます。

我が国では1時間ていどで再開していますが、米国は丸々1日以上かかってしまっています。 

米国は毎年襲ってくる大型ハリケーンのたびに、1カ月以上の大停電が定期的に起きています。公平に見ても、我が国の送電網のほうが比較にならないほど優秀だといえます。 

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 (図 「最近の基幹送電設備故障による停電」 電力改革研究会)

このような停電率を見ずに、米国で電力自由化があれば、「それ、自由化が先進国の証だ」と騒ぎ、スマートグリッド導入が盛んになれば、その理由も考えずに、「米国の素晴らしいスマートグリッドをすぐにマネしよう!」と騒ぐのは、バカ丸出しというものです。

このように、電力自由化は、やらねばならない相応の理由があってするのではなく、ただひたすら「やりたい人がいるからやる」、にすぎないように見えてきます。 

わが国の停電率は、世界で最も低いもので、わざわざ改革をせねばならないものではないのです。

次回、もう少し掘り下げてみます。 

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コメント

もちろん私の独断であくまでザックリと分けてですが、
革新系の多くの人は何十年も前から保守派政権(自民)に対しては、ことあるごとに「国際標準とか言いながら、ただの欧米シンパで他国を見ていない。日本はおかしい」などと散々批判してましたが(それはまだ分かる)、
こと、電力自由化となると「ドイツを見ろ!アメリカを見ろ!」
なんなんでしょう?この後味の悪い掌返し。

という感想。

とても解りやすい、改めて日本は凄いと…しかしこれからは

私なんかは完璧に発送電分離推進派の説に躍らされてた口ですね。
電力会社&官僚=悪のイメージを知らぬ間に刷り込まれていたように思います。
分けも分からず雰囲気に流されるというのは厳に慎まなければなりませんね。

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