日本が「世界一の電力料金」?
ややもったいなくもあり、でもなし。迷う人だな、この人。
私はこの大阪都構想自体には関心がなかったのですが、自民府連と共産党が「共闘」するといういかがわしさが、たまりません。「オールなんとか」というのは、沖縄だけで十分です。
自民党府連が野合連合を選択した段階で、既に勝負あったですが、よくこんな僅差まで追い上げたと評価してやるべきなのかもしれません。
共産・社民、民主の支持基盤の教組、自治労、解同の橋下氏への怨念と、自民党の旧態依然たる利権基盤が勝利したということでもあります。
さて、先週からのお題を続けましょう。私は、電力自由化は、「やりたい人たちがいる」からやると思っています。思い込みに基づく、ある種の妄想のようなものです。
この人たちを、とりあえず「構造改革論者」と呼びます。 自称では、ただ「改革派」と名乗っているようです。
う~ん、カッコイイ言い方ですね。橋下氏ではありませんが、利権の巣窟に挑む白い騎士ってかんじ。
自意識ではこんなかんじかな(笑)。でも、顔が古賀シゲアキさんだったら、ちょっとヤダぞ(笑)。
(乗っているのは氷川きよしだそうです。ウ~ン、ナルシズムの甘き香りよ。わ、はは)
それはさておき、電力自由化で絶対に言われ続けたのが、「日本の電力は世界一高い」という決まり文句でした。
特に福島事故以来、反原発派の電力会社バッシングのネタにされてしまい、彼らのパンフには、必ず「世界一高く、世界一危険な日本の電気」と書いてあります。
では、検証してみましょう。
(図 資源エネルギー庁 為替レートによる電気料金国際比較 住宅用 2000年)
間違いなく、ダントツで世界一高いですね。
私たち国民は、このような数字ばかりを、何回となく見せられてきたはずです。そこで、注入された情報は、「世界一高い」という刷り込みです。
ところが、この算定方式は、為替レートなのです。為替レートは、変動の影響をモロに受けます。
2000年当時の為替レートは107円でした。いっそう為替相場は、悪化していき、菅政権の2010年などは実に87円でした。ちなみに、今は119円です。
さて、同じ電気料金を、購買力平価でみます。購買力平価とは、同じ商品を基準にして物価レベルを加味した指標です。(典拠 上に同じ)
これは、英「エコノミスト」誌が毎年作っている有名な「ビックマック・インデックス」を基にして、算出されます。
マックのビッグマックがが世界基準というわけですが、日本人はそげなマズイもの食わないぞな。ま、いいか。
実はこれも、民主党政権下のようなデフレ放置時代と、今のように意識的にインフレ誘導している時期とは比較するのが難しくのですが、単純な為替レートより公平感があります。
購買力平価で見た、電気料金の国際比較です。
これ見ると、ドイツ、イタリア、英国に継ぐ主要国4位です。
え、統計年が違うって。はい、そのとおりです(笑)。これは2009年です。レートは97円でした。私も、意識的に違いがハッキリする数字を持ってきました。
そのことを言わずに、ポンっと為替レート2000年時を出して、「ほら、こんなに高いだろう。だから・・・」とやる論者があまりに多いので、同じ手法をあえて使ってみました。
でもちゃんと、大きく統計年を表示しているでしょう。これを隠してやると、印象操作となります。よく運動家やマスコミが使うテです。
電気料金は、その国の、その時代の為替レートや金融政策、あるいは電力政策によって大きく影響を受けるものであって、単純な比較は誤解を増幅するだけなのです。
実は、こんな電気料金の国際比較はあまり意味がありません。あえて言うなら、停電率や電気の周波数などの品質を考慮すると、そう高いとはいえないでしょう。
ほんとうにその国の電力を評価したいなら、電力構造に立ち入って検証するべきです。
電力構造というのは、各国で相当にバラ付きがって、その電力構造の総体を見ないで、ひとつの項目だけで断定すべきではないからです。
次回、主要国の電力構造を検証してみますが、あまりに異なるので驚かれるはずです。
いちばんわが国と構造的に違うのは、お隣の韓国と、米国でしょう。
韓国は国策で、電気料金を低く押えています。今や燃料費の方が高くなって、逆ザヤになっていますが、10大財閥だけでGDPの76.5%を占めるような国は、値上げができません。
国の一切の人的資源、財源、税務体系までもが、財閥の繁栄の一点に奉仕しているからです。このような極端な国家構造は、世界広といえど、この韓国だけです。
韓国電力は政府出資比率51%の事実上の国有企業ですが、3年連続大赤字ですが、電気料金値上げは認められず、国の公的資金注入でなんとかしのいでいます。
だから、安全チェックがおろそかになったり、安い偽造部品が、大量に原発に使われといった不祥事の構造的温床を生むわけです。
つまり、税金が電気料金に姿を変えただけというのが、「安い電力」の秘密だったわけです。
一方、米国は真逆です。米国については、後に詳述しますが、電力自由化の行き過ぎで、前回見たように停電率世界一という汚名を着てしまいました。
このように、簡単にひとつの数字だけで、その国の電力を分析するのは、大変に危険なのです。
次回に続けます。
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