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2015年5月21日 (木)

エンロン・ショック エネルギーインフラを性善説に任せていいのか?

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何気なく電力自由化を聞いていると、「いいじゃない、独占なんて悪いに決まっているでしょう。他の産業分野がとっくにやっているンだもん。国鉄だって、電話だってうまくいったもんね」、と思います。 

そんな簡単なことかどうか、検証していますが、まずは昨日の米国カリフォルニア州のケーススタディのおさらいをしておきます。

①電力自由化は安定供給義務からの解放。売る、売らないは、会社次第。
②再エネは自由化の攪乱要因。
③電力自由化は、電力の需給ギャップがある時にやると大火傷を起こす。

さて、カリフォルニア州では、電力自由化の結果、電力の売り買いを自由にするために電力取引所を作ることが必要でした。 

電力やガスなどを自由に売買できるようにするには、新しく電力取引所(卸売り市場)を作ることが必要でした。 

聞き慣れない言葉ですが、日本でも、日本卸電力取引所(JEPX)が既にあります。 

すべてネット上で売買され、売り手買い手は匿名。翌日に売りたい電気を、前日までに入札し、売買を成立させる大きな仮想市場です。全国どこで発電しようとも、どこで買い手がつくかも自由です。

800pxenron_complex_2(写真 エンロン本社のあるエンロン・コンプレックスの威容。テキサス州ダラス。Wikipedia)

ジャーン、では皆様ここで、スタンディング・オベーションならぬ、スタンディング・ブーイングでお迎えを。本日の主役であるエンロン社をご紹介します。
 

エンロン社は、この電力取引所を利用した巨大経済犯罪をやってのけた、全米7位、従業員数2万を誇る巨大コングロマリット(複合企業集団)です。 

後に、ハリウッド映画にもなり、エンロン・ショックとまで言われる、大スキャンダルに発展していきます。 

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エンロン社は、エネルギーの卸売り会社(エネルギー商社)で、そのシェアは米国とヨーロッパの実に2割を占めていました。 

このエンロン社のビジネスモデルは、IT上で「エンロン・オンライン」という仮想エネルギー引き市場を立ち上げて、電力、原油、天然ガス、石炭などのエネルギー商品を取引するものです。 

後に、エネルギーだけではなく、紙パルプ、鉄鋼、化成原料、タンカーや貨物船の運賃、光ファイバーケーブルの利用権、排出規制がある二酸化硫黄の排出権、世界諸都市の気温変化の先物商品などまで、取引対象としていきます。 

そもそも、この米国の電力自由化の火付け役はこのエンロン社です。

創設者でCEOケニス・レイは、米国政界に巨額献金をばらまきましたが、その中心はブッシュ父子でした。レイはブッシュ・ジュニアを通して、電力市場の規制緩和を進めていきます。

Muto01(漫画 エンロンは巨額献金の送電網で政治家を操っている。左がブッシュ、右がチェーニー。象は共和党のシンボル。奥の左がホワイトハウス、右は議会議事堂)

エンロン社が、最大の利益を上げたのは、この2000年でしたが、それはカリフォルニア州電力危機が起きたからです。そしてこの電力危機を演出したのがエンロン社です。

そのやり口はこうです。

エンロン社は、電力会社が採算不良で売却した発電所を買収します。そして、発電所を、検査中・整備中として多くを意図的に停止させました。  

さらに送電網を、実在しない送電線使用の空買いを急増させて、エンロンが押えてしまいました。  

理由は言うまでもなく、発送電の急減による、電力市場における電力価格の高騰のためです。  

まさに犯罪です。後に、エンロン社の社員の電話が暴露されますが、その中で、電気が止まって困っているお年寄りをあざ笑っています。

彼らは、この自らが火付け強盗をしているという罪の意識がないのがわかります。これもITを使った仮想現実が舞台だったからでしょうか。

エンロン社は、売り惜しみだけではなく、空売りによるデリバティブ操作と、粉飾決算も同時にしていました。

まさに資本主義の悪徳の花園ですが、上から下まで腐り切っていたようです。

こういった中で、2000年から01年まで大規模な停電と計画停電、そして電力会社の倒産が相次いで起こる事態になりました。 

その結果、州政府は慌てて、発電量を増加計画を立てたり、他州から電力を買電しようとしたりしたが、間に合わず計画停電となりました。  

当時カリフォルニアに住んでいた邦人によれば、「計画停電」といっても実態は突然停電してしまうことが頻発したそうです。  

というのは、計画停電の警告が、「停電する地域の順番は電気代の請求書に書かれた地域番号による」と説明されているだけで、そんなコードは一般消費者は知る由もなかったからです。

州政府はエンロンに相応の値段で電力供給を求めますが、エンロンはそれを拒否します。

呆れたことには、鼻薬が効いたのか、ブッシュ政権までもが、「自由市場の原則を曲げる政策をとるわけにはいかない」として支援を突っぱねるありさまです。

この国の介入の遅れで、いっそうカリフォルニアの電力危機は長引き、エンロンは肥え太ることになります。

電力危機が一段落した後、責任を追及されたカリフォルニア州政府は、エンロン社に対してスポット市場で売り惜しみをした疑いをかけ、相場を不正に操作して高騰させたとして90億ドルを返還するよう求めました。

レイCEOは、この状況を眺めて、「自由化が不十分だから危機が起きたの」だと言ってのけます。たいしたタマです。

168710601_4_2(写真 逮捕されたケニス・レイ創設者・CEO 悪相だぞ。写真の下には、カットされているが、手には手錠、腰には逃亡防止用の縄がつけてある。服も収監者用のもののようだ)

もちろん事実は真逆です。

この自由化を進めたグレイ・デービス知事はリコールでクビとなり、代わって選ばれたのが、あのアーノルド・シュワルツェネッガー氏だったという余話までついています。  

この悲惨な「世界の盟主国」の内部で起きた大停電に、この影響はカリフォルニアだけでにとどまらず、ネバダやオクラホマ、アーカンソー、ニューメキシコ、モンタナなどの他州の電力自由化をストップさせることになりました。

海を越えて、第1次電力自由化をするつもりだった日本の経済産業省内・改革派官僚たちも、涙を呑んでいったん引かざるを得なくなります。

彼らの野望が復活したのは、実に10年後の福島事故の後のことでした。

なお、2001年6月、エンロン社は粉飾決算がバレて、倒産に追い込まれます。米国史上最大の倒産でした。これをエンロン・ショックと呼ぶそうです。

自由化とは、このように自由競争をおのれの暴利のために悪用する者がいない、という性善説の上に成り立っています。 

しかし、現実には、作為的発電量の削減、電力取引所に対する売り惜しみ、小売りの買い占めなどによって、自由に電力供給量と価格を操作することが可能です。

それを証明したのが、このカリフォルニア電力危機でした。

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コメント

このようなことが我が国でも起こりうると( ̄0 ̄;)

元官僚の古賀が推進していたものの正体ですね

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