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ケーススタディ・ドイツ 自由化をしたら独占が強化されてしまった

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ドイツの脱原発政策が、何を生み、何をもたらしたのかについては、そのうちしっかりとやります。たぶん1週間くらいでは終わらないボリュームがあります。 

今回は、電力自由化にだけ絞って見ていきます。 

何かにつけわが国の反原発派と構造改革派、そして不勉強なマスコミは、安易に「ドイツに学べ」と言うのが、習い性になっているようですが、そうとうに事情は違います。 

まず第1に、ドイツはヨーロッパ広域送電網の一角にあることです。「欧州広域連携系統」(UCTE)といいます。 

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これは日本との決定的違いで、この広域送電網があるために、メルケルの脱原発政策による発電量の減少や不安定を、随時電力を輸入することでカバーすることができました。 

まぁ、うちの国でも広域送電網は、孫正義さんなどが提唱していましたっけね。韓国の電気が逆ザヤで、政府が政策的に安くしているからです。

外国の税金使って安い電気を買うという発想が、いかにもあの人のフリーライド体質を表しています。 ま、いいか。

しかし、かの国と送電網などを結ぶと、「軍艦島の強制連行を謝罪しないと、電気を切るゾ」と脅かされるかもしれませんがね。 

しかし、コリアのしつこさこそ、世界文化遺産だね(苦笑)。

第2に、ドイツにとって、電力自由化はEUの方針で抵抗できないことです。

EUは、域内を「一国」とみなしますから、ドイツだけ得手勝手な自国の都合を押し通すことができません。 

そのために、ドイツの電力自由化は、「ブリュッセルの官僚」たちと皮肉を込めて言われるEU委員会の命令に基づいていす。 

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これによって、ドイツの電力業界は、参入を求めて来る外国の電力会社との熾烈な争いに突入することになりました。 

日本で言えば、自由化をしたら経営のぐらついた電力会社の発電所と小売りのおいしい部分を、ごっそりとあのエンロンが買っていったというようなものです。おー、コワ。

実際、エンロンは、日本法人を立ち上げて、参入計画まで作っていたと言います。 

しかし一方、似た部分もあります。それは電力の歴史がよく似ているからです。 

ドイツでは戦前の地域ごとに別れて多数あった電力会社が、ナチス政権による1939年の「エネルギー経済法」によって地域独占に統合され、第2次大戦前夜に総力戦に備えていっそう電力会社の独占が保護されいった歴史があります。 

軍需工場をフル稼働するには、電力の安定供給が必須だったからです。  

平和になった戦後も、いったん作られた電力制度は、それなりに堅牢で安定していたために、逆に強化さてしまいました。 

ドイツの場合、西ドイツは1957年に電力会社の地域独占を守るために「競争制限禁止法」という法律を作って、以後39年間もその態勢を維持してきました。 

東ドイツは、共産主義なのですから、あたりまえに国家の一元的独占です。  

日本の場合、戦前の自由市場市場が統合されて戦時電力会社になり、戦後に9電力会社に分割されたという歴史の流れですから、ここまではそっくりです。

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ここからが違います。1996年12月にEU指令96/92号「電力単一市場に関する共通規則」が出て、ドイツはそれまでの電力会社10社による地域独占体制を廃止せざるをえなくなりました。  

これは価格カルテルや地域棲み分けをなくすだけではなく、「よそ者」に自分の会社の送電網を使わせねばならないという電力会社からすれば「屈辱的」な内容を含んでいました。 

そして2年後の1998年に、早くもライプチヒで電力自由市場が生まれています。これにより電力取引は自由化されるはずですが、そうは問屋が卸しませんでした。

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というのは、大手電力会社は、それまでの地域独占を取り消されたことを逆手に取って、逆に買収と合併に走ったからです。

なぜでしょうか?  それは自由化とは、自国市場内部のみならず、競争は外国のそれとのバトルでもあるのです。

事実ドイツは、電力市場解禁をしたとたんに、外国の電気会社勢力との激しい競争にさらされることになります。 

バッテンフォール・ヨーロッパのように、北欧の電力大国スウェーデンの電力会社に買収される会社まで現れたりします。

しかしこのことがかえって、電力安定供給の守護神であるドイツ電力会社の闘志に火を点けたようです。彼らは今までの縄張り意識を捨てて、経営統合を図ります。  

結局、2011年段階で国内発電量の83%が整理統合され、4社の寡占になってしまう皮肉な現象が起きてしまいます。

結局、これでは電力自由化だか、電力の独占強化だか分からない、ということになってしまいました。

怒った「ブリュッセルの官僚」たちから、「いちばん自由化の遅れたドイツ」という警告までもらう始末です。

また電力自由化に伴って、雨後の竹の子のように登場した再エネを中心とした新電力会社(PPS)や、企業の剰余電力の売電も行われるようになりましたが、これも競争のふるいにかけられていきます。

ドイツでは新規参入した発電会社は、1998年の「改革」開始から7年間で、100社からわずか6社にまで減ってしまいました。

なんとPPSは、たった6%しか生き残らなかったのです。

ここで登場したのが、2000年のシュレイダー政権による悪名高きFIT(固定全量買い上げ制)です。日本の再エネ法はこのパクリです。

これがいかにメチャクチャな電気料金値上げや、北海から南部までの新規送電網建設による財政負担など、新たな問題をまき散らしたのかについては、別稿でふれることにします。

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結局、電力自由化と脱原発を同時に遂行するというアブナイ政策によって、ドイツは自由化の恩恵を享受したのでしょうか。

競争メカニズムが健全に働いているかどうかの目安に、大口需要者(企業向け)の電気購入先の切り換えがありますが、英国、ノルウエイなどの諸国の平均は50%以上なのに対して、ドイツはわずか6%にすぎません。  

またもうひとつの競争指標である電力料金は、大口需要者料金が2004年調べでEU平均がメガワット当たり58ユーロなのに対して、ドイツは69ユーロ(6900円)で、ヨーロッパ一高い料金となってしまいました。

このように結果として、ドイツは電力自由化をしましたが、新電力会社(PPS)は伸びず、電力料金は脱原発の影響をモロに受けて2倍になり、肝心の電力会社の独占はかえって強化されることになってしまいました。

結局このドイツの場合、電力自由化がかえって電力会社の危機感を募らせて買収・統合に走らせ、かえって独占が強化されてしまった「逆走事例」といってよいでしょう。  

わが国でも似たようなケースは想定できます。現在わが国の9電力会社は、原発停止による化石燃料の負担によって、どの電力会社も青息吐息です。

経営体力がある電力会社はこの際とばかりに、弱小電力会社のシェアを奪いにかかるかもしれません。

既に関西電力と、東電の新規事業などの乗合が進んでいます。本格的な自由化となれば、どのような再編が起きるか予断を許しません。

おそらく、多少の再稼働が認められ、化石燃料圧力が減った段階で、思い切った経営統合もありえるでしょう。

その場合、もっとも儲からず、しかし電力事業のある意味、核心である送電網がどのようになっていくのか、注視していかねばなりません。

すると結局は、ドイツと同じように電力の自由化によって、電力9社体制から4、5社体制に独占強化されてお終いとなってしまう可能性も、大いにあり得ます。

最後に、ドイツのケースをまとめておきます。

教訓1 ドイツのように、脱原発と電力自由化という劇薬を同時に服用してはならない。
教訓2 ドイツの電力自由化はEU指令で始まった。
教訓3 ドイツは、自由化をしたつもりが、かえって独占が強化された。
教訓4 ドイツだけは見習ってはならない。70年前の帝国陸軍になるゾ。

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